説明

車両ネットワークの通信管理装置

【課題】車両ネットワークの負荷を適正に維持しつつ、車両ネットワークに接続される情報端末や外部ネットワークに対する車両データの円滑な送信を可能とする車両ネットワークの通信管理装置を提供する。
【解決手段】通信管理部200は、車両ネットワークに送信される車両データの送信状況を監視しつつ、該車両データの送信状況に応じて、各車載制御装置104及び105が処理する車両データに代替可能な車両の状態量に関するデータを車両ネットワークの外部に存在する情報端末310から取得する。そして、通信管理部200は、この取得したデータを各車載制御装置104及び105により処理される車両データに代えて情報端末310に転送する。また、通信管理部200は、各車載制御装置104及び105と情報端末300とのデータ通信を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有線通信や無線通信を通じて情報端末や外部のネットワークに接続される車両ネットワークの通信を管理する車両ネットワークの通信管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車等の車両には、ナビゲーションシステムを構成する車載制御装置をはじめ、エンジンやブレーキ等の各種車載機器を電子的に制御する車載制御装置、車両の各種状態を表示するメータ等の機器を制御する車載制御装置などの多くの車載制御装置が搭載されている。そして、車両内では、それら各車載制御装置が通信線により電気的に接続されて車両ネットワークが形成されており、この車両ネットワークを介して各車載制御装置間での各種車両データの送受信が行われている。
【0003】
一方、各車載制御装置による車両データの処理内容や処理量等は車両の走行状態などによって変化し、これに伴って各車載制御装置間での通信頻度も変動する。そして、こうした通信頻度の変動が積み重なると、各車載制御装置間での車両データの送受信が集中的に行われることもあり、この場合には、車両ネットワークの通信負荷が増大して通信遅延等が発生する虞がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載の装置では、車両ネットワークの通信負荷の変化を検出し、この検出した通信負荷の変化に応じて通信速度を変更したり車両ネットワークに接続された他の装置への車両データの通信速度を変更したりするようにしている。すなわち、車載制御装置の通信頻度が低く、車両ネットワークの負荷が低いときには、車両ネットワークによる車両データの通信速度が高められる。逆に、車載制御装置の通信頻度が高まり、車両ネットワークの負荷が増大すると、車両ネットワークによる車両データの通信速度の低下が図られる。これにより、車両ネットワークの負荷が過剰に増大することが抑制され、車両ネットワークを介した車両データの送受信が円滑に行われるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−211644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近は、情報端末や車両外部のネットワークを車両ネットワークに接続し、車両ネットワークで送受信される車両データを情報端末や車両外部のネットワークでも利用できるようにしたシステムの開発も進められている。このシステムでは、例えば車両に搭載された速度センサ、加速度センサやGPS(グローバルポジショニングシステム)の検出結果を処理する車載制御装置から出力される車両データが車両ネットワークを介して情報端末に適宜送信される。これにより、情報端末では、例えば車両ネットワークを介して取得された速度センサ、加速度センサやGPSの検出結果を示す車両データを利用する各種アプリケーションが実行される。
【0007】
しかし、車両ネットワークとは、前述のように、複数の車載制御装置間で車両データを授受するために車両内に形成された専用のネットワークである。よって、本来は車両ネットワークに接続されることのない外部の情報端末等に対して車両データを送信しようとすると、通信負荷の増大を招き、各車載制御装置間での本来の車両データの送受信が阻害されることにもなりかねない。また、こうして外部の情報端末が接続された状態で、上記特許文献1に記載の装置のように、車両ネットワークの負荷の増大に伴い通信速度が低減させられるようなことがあると、車両データが情報端末に送信される速度も低下する。すなわち、この車両データを利用して実行される情報端末でのアプリケーション等の実効速度が低下することとなってしまう。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両ネットワークの負荷を適正に維持しつつ、車両ネットワークに接続される情報端末や外部ネットワークに対する車両データの円滑な送信を可能とする車両ネットワークの通信管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、複数の車載制御装置の間で車両データの送受信が行われるとともに、有線通信もしくは無線通信を通じた情報端末との車両データの通信が可能な車両ネットワークにあってその通信データの管理を行う車両ネットワークの通信管理装置であって、前記車両ネットワークに送信される車両データの送信状況を監視しつつ、該車両データの送信状況に応じて、前記車載制御装置が処理する車両データに代替可能な車両の状態量に関するデータを前記車両ネットワークの外部から取得し、この取得したデータを前記車両データに代えて前記情報端末に転送する通信管理部を備えることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、例えば、車両ネットワークを介して或る車両データが情報端末に送信されている状況下において、各車載制御装置間の通信頻度が高まり、車両ネットワークの負荷が増大すると、車両ネットワークの外部にて取得された車両の状態量に関するデータが、車両ネットワークに送受信される車両データに代えて情報端末に転送される。このため、車載制御装置から情報端末へと車両データを送信する必要がなくなった分、車両ネットワークの負荷を低下させることが可能となる。
【0011】
また、情報端末には、この情報端末に送信すべき車両データに代替可能なデータが通信管理装置から送信される。よって、情報端末には、この情報端末に送信すべき車両の状態量に関するデータが継続して送信されることとなる。またこのように、車両ネットワークの外部から車両データに代替可能なデータを取得することとすれば、たとえ車両ネットワーク内の負荷が増大し、車両ネットワークの通信速度が低下したとしても、その影響を受けることなく車両の状態量に関するデータを情報端末に送信することが可能になる。これにより、車両ネットワークの負荷を好適に抑制しつつ、安定した転送速度のもとに情報端末にデータを送信することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両ネットワークの通信管理装置において、前記通信管理部は、前記取得したデータの転送に際して前記車載制御装置と前記情報端末とのデータ通信を規制し、この規制したデータ通信に代えて前記車両ネットワークの外部から取得したデータを前記情報端末に転送することを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、上記データの転送時、すなわち、車両ネットワークの負荷が増大したときには、情報端末と車両ネットワークの外部から取得可能なデータに対応する車両データを処理する車載制御装置とのデータ通信が規制される。このため、車両ネットワークの負荷は、車載制御装置と情報端末とのデータ通信が規制された分だけ確実に低減される。これにより、情報端末に対して車両データを円滑かつ継続的に提供しつつ、車両ネットワークの負荷が増大することが的確に抑制されるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両ネットワークの通信管理装置において、前記通信管理部は、前記車両ネットワークの外部における通信手段と前記車両ネットワークとの通信の確立先の切り換えにより、前記情報端末へのデータの転送元を動的に変更することを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、通信管理部による通信の確立先が、車両ネットワークの負荷に応じて車両ネットワークとその外部における通信手段とに適宜切り換えられる。このため、例えば、一旦増大した車両ネットワークの負荷が低下したときには、通信管理部による通信の確立先が外部の通信手段から車両ネットワークへと切り換えられる。逆に、一旦増大した車両ネットワークの負荷が低下したときには、通信管理部による通信の確立先が外部の通信手段から車両ネットワークへと切り換えられる。その後、一旦低下した車両ネットワークの負荷が増大すると、通信管理部による通信の確立先が、車両ネットワークから外部の通信手段へと再び切り換えられる。これにより、車載制御装置が搭載される車両の状態に応じて適宜変化する車両ネットワークの負荷に対応する態様で、情報端末へのデータの転送元が柔軟に変更されるようになり、情報端末に対するデータ転送をより円滑に行うことが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両ネットワークの通信管理装置において、前記車両ネットワークの外部から取得されるデータが、前記データの転送先となる情報端末とは異なる情報端末によって取得された車両の状態量に関するデータであることを要旨とする。
【0017】
最近の高機能電話機器等の情報端末には、例えば、GPSなどのように車両に搭載される機器が搭載されている。そして、こうした情報端末が車両内で利用されるときには、この情報端末が備えるGPSなどによって、車両の移動量等、車両の状態量に関するデータを取得することが可能である。また、こうした情報端末は、車両に搭乗する複数の乗員が有していたり、車両に車両用情報端末として予め搭載されていることも多く、この場合には、一台の車両内に複数の情報端末が存在するととなり、上記通信管理部を介した各情報端末間のデータ通信を実現することが可能となる。また、こうした情報端末は、例えば、その通信機能による無線通信や車両内に設けられたデータ・リンク・コネクを介した有線通信などにより、通信管理部との通信を容易に確立することが可能である。
【0018】
そこで、上記構成によるように、データの転送先とは異なる情報端末によって、車両データに代替可能なデータを取得する。そして、この情報端末と通信管理部との通信を通じて、車両の状態量に関するデータが通信管理部により取得され、この取得されたデータがその転送先となる情報端末に送信される。これにより、車両内で利用されるために通信管理部との通信が容易でかつ車両の状態量に関するデータを的確に取得可能な情報端末を有効に活用して、上記データの転送を行うことが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両ネットワークの通信管理装置において、前記車両ネットワークには、前記車載制御装置の間のデータ通信及び前記通信管理部を介した前記車載制御装置と前記情報端末とのデータ通信を中継するとともに、当該車両ネットワークの負荷を監視する負荷監視部を備えたゲートウェイが設けられてなり、前記通信管理部は、前記負荷監視部による監視結果に基づいて前記車両データの送信状況を監視するとともに、この監視結果により当該車両ネットワークの負荷が増大したと判断されるとき、前記ゲートウェイを介した前記車載制御装置と前記情報端末とのデータ通信を中断させることを要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、通信管理部は、多数の車両データが中継されるために車両ネットワークの状態を常時把握可能なゲートウェイを通じて、車両ネットワークの負荷を監視することが可能となる。また、上記構成によれば、ゲートウェイを通じて、各車載制御装置から出力される車両データの送信規制を容易に行うことが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両ネットワークの通信管理装置において、前記通信管理部は、前記車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量を示すデータの種別情報が予め登録された情報格納部を有し、該情報格納部に登録されたデータ種別情報によって示されるデータを前記情報端末へ転送することを要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、通信管理部は、情報格納部の参照を通じて、車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量に関するデータを容易に把握することが可能となる。このため、通信管理部は、車載制御装置にて処理される車両データに代えて情報端末に転送すべきデータを的確に把握することが可能となる。これにより、情報端末が必要とするデータを同情報端末に的確に提供することが可能となり、情報端末に対するデータ転送にかかる信頼性が高められるようになる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両ネットワークの通信管理装置において、前記情報端末は、車両の状態量に関するデータを利用して特定のアプリケーションを実行するものであり、前記情報格納部にはさらに、前記アプリケーションの実行に必要とされるデータを示すアプリケーション必要データ情報が登録されており、前記通信管理部は、前記情報格納部に登録されたアプリケーション必要データ情報に基づき前記情報端末に転送すべきデータを識別するとともに、この識別したデータを前記車載制御装置もしくは前記車両ネットワークの外部から取得し、この取得したデータを前記アプリケーションを実行する情報端末に転送することを要旨とする。
【0024】
情報端末で利用可能なアプリケーションとは、その種類も様々であり、各種アプリケーションの実行に際して必要となるデータも各々相違する。
この点、上記構成によれば、通信管理部は、各種アプリケーションを実行するために必要なデータを的確に把握することが可能となり、情報端末に提供すべき各種データを的確に同情報端末に転送することが可能となる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両ネットワークの通信管理装置において、前記車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量を示すデータとは、車両の走行速度、加速度、減速度、及び絶対位置の少なくとも1つを示すデータであることを要旨とする。
【0026】
車両の走行速度、加速度、減速度、及び絶対位置に関するデータは、情報端末での各種車両アプリケーションなどに利用される可能性が高く、また、車載制御装置以外の手段によっても取得することが容易である。
【0027】
この点、上記構成によれば、こうしたデータを車両側からのデータとして情報端末に送信する上で、情報端末に対するデータの継続的かつ円滑な送信が実現されるようになり、車両の走行速度、加速度、減速度、及び絶対位置に関するデータを利用したアプリケーションの円滑な実行も実現されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる車両ネットワークの通信管理装置の一実施の形態について、その概略構成を示すブロック図。
【図2】情報格納部に登録された情報の一例を示す図であり、(a)は、車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量を示すデータの種別情報の一例を示す図。(b)は、アプリケーションの実行に必要とされるデータを示すアプリケーション必要データ情報の一例を示す図。
【図3】本実施の形態の通信管理部による車両データの送信手順の一例を示すフローチャート。
【図4】本実施の形態の通信管理部による車両データの送信態様の一例を示すシーケンス図。
【図5】車両ネットワークの負荷の推移例を示す図であり、(a)及び(b)は、従来の装置による車両ネットワークの負荷の推移例を示すタイミングチャート。(c)及び(d)は、本実施の形態の車両ネットワークの通信管理装置による車両ネットワークの負荷の推移例を示すタイミングチャート。
【図6】本発明にかかる車両ネットワークの通信管理装置の他の実施の形態について、その概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明にかかる車両ネットワークの通信管理装置を具体化した一実施の形態について図1〜図5を参照して説明する。なお、本実施の形態は、車載制御装置間での信号の授受を、例えば、イベントトリガ方式で各種通信データが授受されるCAN(コントロール・エリア・ネットワーク)を介して行うものである。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態の通信管理装置が適用される車両には、この車両に搭載された各種車載機器の制御等を行う複数の車載制御装置101〜106が搭載されている。
【0031】
このうち、車載制御装置103には、例えば、車両の状態量である車両の走行速度を検出する車速センサ103aが接続されている。車速センサ103aは、車両の車輪の回転速度を検出し、この検出した回転速度に応じた信号を車載制御装置103に出力する。車載制御装置103は、車速センサ103aから入力された信号に基づき、車両の走行速度の推移を示す車両データを生成する。
【0032】
また、車載制御装置104には、例えば、車両の状態量である車両の加速度や減速度を検出する加速度センサ104aが接続されている。加速度センサ104aは、車両の加速度及び減速度を検出し、この検出した加速度及び減速度に応じた信号を、車載制御装置104に出力する。車載制御装置104は、加速度センサ104aから入力された信号に基づき、車両の加速度及び減速度の推移を示す車両データを生成する。
【0033】
さらに、車載制御装置105には、例えば、車両の状態量である車両の絶対位置を検出するGPS105aが接続されている。GPS105aは、車両の絶対位置を検出するためのGPS衛星信号を受信し、この受信したGPS衛星信号に基づき車両の緯度経度を検出する。そして、GPS105aは、この検出した車両の緯度経度を示す信号を車載制御装置105に出力する。車載制御装置105は、GPS105aから入力された信号に基づいて、車両の緯度経度の推移を示す車両データを生成する。
【0034】
また、例えば、車載制御装置101〜103は、車両ネットワークを構成する通信線からなるバスBS1に接続されている。また一方、例えば、車載制御装置104〜106は、車両ネットワークを構成する通信線からなるバスBS2に接続されている。そして、各車載制御装置間101〜106は、こうしたバスBS1及びBS2を介して車両データを授受することにより、車両に搭載された各種車載機器を制御したり、各種運転支援制御などを行う。
【0035】
また一方、こうしたバスBS1及びBS2の間には、ゲートウェイ110が設けられている。ゲートウェイ110は、バスBS1及びBS2を跨いだ車両データの授受を中継する。また、本実施の形態のゲートウェイ110には、バスBS1及びBS2による車両データの送信状況を監視する負荷監視部111が設けられている。負荷監視部111は、バスBS1及びBS2による車両データの送信状況を監視することにより、バスBS1及びBS2の使用率を求める。そして、負荷監視部111は、この求めた使用率を示す情報を、車両データ等の通信データを管理する通信管理部200に出力する。
【0036】
通信管理部200は、負荷監視部111からバスBS1及びBS2の使用率を示す情報を取得すると、この使用率に基づきバスBS1及びBS2の負荷を監視する。本実施の形態の通信管理部200は、例えば、バスBS1及びBS2の使用率が約「40%」以内であるとき、車両ネットワークが低負荷であると判断する。一方、通信管理部200は、例えば、バスBS1及びBS2のいずれかの使用率が約「40%」を超えているときには、車両ネットワークが高負荷であると判断する。
【0037】
また、本実施の形態の通信管理部200は、車両の乗員が所有する携帯電話機器等の情報端末300、310に搭載された通信部301、311との間で無線通信や有線通信を行う通信部210を備えている。
【0038】
本実施の形態の通信部210は、例えば、情報端末300にインストールされたアプリケーションに利用される車両データを、情報端末300とのデータ通信を通じて同情報端末300に送信する。また、本実施の形態の通信部210は、情報端末300とは異なる情報端末、すなわち、情報端末310ともデータ通信を行う。なお、アプリケーションとしては、例えば、車両の走行速度や絶対位置を示す車両データを利用する「メータアプリケーション」や「疑似運転アプリケーション」などが挙げられる。
【0039】
また、本実施の形態の情報端末310には、車両の状態量を取得可能な手段として、同情報端末310の加速度及び減速度を検出する加速度センサ312、同情報端末310の絶対位置を検出するGPS313が設けられている。なお、情報端末310が車両内で利用されるときには同情報端末310が車両とともに移動することとなる。よって、この情報端末310も搭載された加速度センサ312及びGPS313の検出結果は、車両に搭載された加速度センサ104a及びGPS105aの検出結果に近似する値となる。
【0040】
通信部210は、例えば、アプリケーションを実現するプログラムがインストールされた情報端末300から、アプリケーションが起動された旨を示す起動信号が送信されると、このアプリケーションの実行に際して必要な車両データを要求する信号をゲートウェイ110に送信する。ゲートウェイ110は、通信部210から車両データを要求する信号を受信すると、例えば、車載制御装置103、車載制御装置104、及び車載制御装置105に対し、車速センサ103a、加速度センサ104a、及びGPS105aの検出結果を示す車両データの送信要求を行う。
【0041】
こうして、車両データの送信要求があると、各車載制御装置103〜105は、それぞれ車速センサ103a、加速度センサ104a、及びGPS105aの検出結果を示す車両データを、ゲートウェイ110を介して通信管理部200に送信する。通信部210は、各車両データを受信すると、受信した各車両データを情報端末300に送信する。
【0042】
情報端末300は、通信部210と通信部301との通信を通じて車両データを取得すると、この取得した車両データを利用してアプリケーションを実行する。
さらに、本実施の形態の通信管理部200は、車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量を示すデータに関する情報が予め登録された情報格納部220を備えている。本実施の形態の情報格納部220には、図2(a)に例示するように、車両内で利用される端末として予め登録された情報端末に関する情報が、各情報端末により取得可能なデータとともに登録されている。すなわち、情報格納部220には、車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量を示すデータの種別情報が登録されている。また、情報格納部220には、図2(b)に例示するように、各情報端末で実行されるアプリケーションの種別、各アプリケーションの実行に際して必要とされる車両データに関する情報がアプリケーションの別に登録されている。すなわち、情報格納部220には、アプリケーションの実行に必要とされるデータを示すアプリケーション必要データ情報がアプリケーションの別に登録されている。
【0043】
一方、このように構成される通信管理部200は、各車載制御装置101〜106間や情報端末300と車載制御装置103〜105との間で授受されるデータ量が増大したことによりバスBS1もしくはバスBS2の使用率が約「40%」を超えると、情報端末300に送信すべきデータの取得元の一部もしくは全部を情報端末310に切り換える処理を実行する。
【0044】
すなわち、情報端末300と車載制御装置103〜105との間で授受される車両データのうち、車両の加速度及び減速度、並びに位置情報に関するデータについては、車両内で利用される情報端末310に設けられた加速度センサ312並びにGPS313により取得可能である。よって、本実施の形態の通信管理部200は、バスBS1及びBS2の使用率が約「40%」を超えると、情報格納部220の参照を通じて、情報端末310との通信を確立するとともに車載制御装置104及び105との間で確立した通信を切断する。これにより、車両の加速度及び減速度並びに絶対位置に関するデータの取得元が、車載制御装置104及び車載制御装置105から情報端末310へと切り換えられる。
【0045】
こうして、通信管理部200は、情報端末310との通信を確立すると、情報端末310から車両の加速度及び減速度並びに位置情報に関するデータを取得し、この取得したデータを情報端末300に転送する。
【0046】
また、これに伴いゲートウェイ110は、車載制御装置104及び105に対し、それら車載制御装置104及び105に要求した車両データの送信を停止させるための停止信号を送信する。車載制御装置104及び105は、ゲートウェイ110から車両データの停止信号を受信すると、ゲートウェイ110に対する車両データの送信を停止する。この結果、ゲートウェイ110を介した車載制御装置104及び105と情報端末300との間での通信が規制されることとなる。また、これに伴って約「40%」を一旦超えたバスBS1及びBS2の使用率が約「40%」以下に低下する。
【0047】
また、車両の状態が変化し、各車載制御装置101〜106間で授受される車両データの通信量が低下すると、通信管理部200は、例えば、情報端末310との間で確立した通信を切断し、車載制御装置104及び105との通信を再び確立する。そして、通信管理部200は、これら車載制御装置104及び105から車両データを取得し、この取得した車両データを情報端末300に送信する。
【0048】
こうして、アプリケーションを実行するために必要な車両データが通信管理部200により管理されることによって、車両の状態量を示すデータがバスBS1及びBS2の負荷の増減の影響を受けることなく継続的かつ円滑に情報端末300に提供されるようになる。
【0049】
次に、本実施の形態の通信管理部200による車両データの送信手順を図3を参照して説明する。
図3に示すように、ステップS100において、情報端末300にインストールされた特定のアプリケーションが実行されると、通信管理部200は、情報格納部220に登録されているアプリケーション必要データ情報に基づいて、同アプリケーションを実行するために必要な車両データを識別する。そして、通信管理部200は、この識別結果に基づき、例えば、ゲートウェイ110を介して、車載制御装置104及び105により処理された車両データを取得する。次いで、通信管理部200は、この取得した車両データを情報端末300に送信する(ステップS101)。
【0050】
次いで、通信管理部200は、車両ネットワークを構成するバスBS1及びBS2の負荷の増大に伴って、バスBS1もしくはバスBS2の使用率が例えば約「40%」を超えているか否かを判断する(ステップS102)。
【0051】
そして、バスBS1もしくはバスBS2の使用率が約「40%」を超えていると(ステップS102:YES)、通信管理部200は、情報格納部220に登録されたデータ種別情報に基づき、情報端末310により取得可能なデータが車載制御装置104及び105から出力される車両データに代替可能なデータであると判断する。そして、通信管理部200は、この情報端末310との通信を確立する(ステップS103)。また、通信管理部200は、情報格納部220に登録されたアプリケーション必要データ情報に基づき、情報端末310に搭載された加速度センサ312及びGPS313により取得されたデータが情報端末300に転送すべきデータであると識別する。
【0052】
そして、通信管理部200は、識別したデータを情報端末310から取得し、この取得したデータを情報端末300に転送する(ステップS105)。また併せて、通信管理部200は、車載制御装置104及び105と情報端末300との間でのデータ通信を規制する。
【0053】
一方、先のステップS102において、バスBS1及びBS2の使用率が例えば約「40%」以下であると判断されたときには(ステップS102:NO)、車載制御装置104及び105と情報端末300との間でのデータ通信が維持される。そして、車載制御装置104及び105により処理された車両データは、情報端末310に継続して送信される。
【0054】
以下、本実施の形態の車両ネットワークの通信管理装置の作用を、図4を参照して説明する。
図4に示すように、情報端末300にインストールされた特定のアプリケーションが起動すると、同アプリケーションの起動した旨を示す起動信号が情報端末300から通信管理部200に送信される。
【0055】
通信管理部200は、情報端末300から起動信号を受信すると、起動されたアプリケーションの実行に際して必要となる車両データが車載制御装置104及び105により処理される車両データであると識別する。次いで、通信管理部200は、識別した車両データの送信要求を、同車両データを処理する車載制御装置104及び105に対して行う。
【0056】
車載制御装置104及び105は、通信管理部200から車両データの送信要求を受信すると、当該車載制御装置104及び105が処理した各車両データを通信管理部200に送信する。
【0057】
通信管理部200は、車載制御装置104及び105から送信された車両データを受信すると、この受信した車両データを情報端末300に転送する。
ここで、例えば、車両内でイベントが発生したことにより車載制御装置106と車載制御装置101との間でデータ通信が開始されると、これに伴ってバスBS1、バスBS2の使用率が高まり、車両ネットワークの負荷が増大する。
【0058】
そこで、本実施の形態の通信管理部200は、増大した車両ネットワークの負荷を低減すべく、車載制御装置104及び105により処理される車両データに代替可能なデータを取得することのできる端末が車両内に存在するか否かを判断する。
【0059】
そして、通信管理部200は、例えば、車載制御装置104及び105により処理される車両データに代替可能なデータを車両内に存在する情報端末310が取得することができる旨判断すると、車載制御装置104及び105との通信を切断し、それら車載制御装置104及び105から情報端末300への車両データの送信を停止させる。また、通信管理部200は、情報端末310との通信を確立し、車載制御装置104及び105により処理された車両データと代替可能なデータを同情報端末310から取得する。すなわち、通信管理部200は、データ通信の確立先を車両ネットワーク内の車載制御装置104及び105から情報端末310へと切り換える。そして、通信管理部200は、情報端末310から取得したデータを情報端末300に転送する。
【0060】
ここで、例えば、車載制御装置101と車載制御装置106との間での車両データの授受が終了したことにより車両ネットワークの負荷が低減すると、通信管理部200は、データ通信の確立先を車両ネットワーク外部の情報端末310から車載制御装置104及び105へと切り換える。そして、通信管理部200は、車載制御装置104及び105により処理された車両データをそれら車載制御装置104及び105から再び取得し、この取得した車両データを情報端末300に送信する。
【0061】
こうして、本実施の形態では、車両ネットワークの負荷の変動に応じて、情報端末300に送信すべきデータの転送元が、車両ネットワークの内部に設けられた車載制御装置104及び105と車両ネットワークの外部に存在する情報端末310とに動的に切り換えられる。これにより、車両ネットワークの負荷が増大したときには、車両ネットワークの本来行われることのなかった車両ネットワークの内部と外部との間でのデータ通信が規制されることにより、車両ネットワークの負荷が低減されるようになる。また、これにより、車両ネットワークの負荷の影響を受けることのない情報端末310によって取得されたデータが情報端末300に転送されることから、この情報端末300にはアプリケーションの実行に必要なデータが継続的かつ円滑に送信されることとなる。
【0062】
次に、図5を参照して、車両ネットワークの負荷の推移例を従来の装置による車両ネットワークの負荷の推移例との対比のもとに説明する。なお、ここでの例では、情報端末300にインストールされたアプリケーションの実行に際して必要になる車両データとして、例えば、車載制御装置103により処理された車速を示す車両データと車載制御装置105により処理された車両の絶対位置を示す車両データとが規定されている。
【0063】
また、図5において、破線で示す推移L1は、例えば車載制御装置103により処理されて通信管理部200に入力される車両データの推移例を示しており、破線で示す推移L2は、例えば車載制御装置105により処理されて通信管理部200に入力される車両データの推移例を示している。また一方、一点鎖線で示す推移L3は、例えば車載制御装置101により処理されて車載制御装置106に入力される車両データの推移例を示しており、実線で示す推移Lnは、例えばバスBS2の使用率の推移例を示している。
【0064】
まず、図5(a)に推移L1及びL2として示すように、車載制御装置103及び105により処理された各車両データが通信管理部200を介して情報端末300に送信され、それら車両データを用いてアプリケーションが実行されていたとする(期間Ta)。また、このときのバスBS1及びBS2の負荷は、推移Lnとして示すように、例えば約「30%」程度になっている(期間Ta)。
【0065】
ここで、推移L3として示すように、タイミングt1において、車載制御装置101により処理された車両の走行速度を示す車両データに基づき車両を制御すべく車載制御装置101と車載制御装置106との間でのデータ通信が開始され、車載制御装置106から車載制御装置101へと車両データが送信されたとする。すると、推移Lnとして示すように、例えば、バスBS2の使用率は約「30%」程度から約「60%」付近まで増大する。
【0066】
そこで、従来の装置では、バスBS2の使用率を低減させるべく、バスBS2による車両データの通信速度が低下させられる。この結果、図5(b)に推移L1〜L3として示すように、タイミングt1以降、各車両データの単位時間当たりの車両データの送信量が減少する(期間Tc)。これにより、バスBS2の使用率は、例えば約「40%」程度に維持される。しかし、この場合には、情報端末300に送信される車両データの送信速度も低下することから、この車両データを利用するアプリケーションの実行速度も低下することとなってしまう。
【0067】
これに対し、本実施の形態では、図5(c)に示すように、タイミングt1において車載制御装置101と車載制御装置106との間でのデータ通信が開始されると、同図5(c)に推移L2として示すように、情報端末310にて代替取得可能な車載制御装置105による車両データの送信が規制される(期間Td)。これにより、バスBS2の使用率が例えば約「40%」程度に維持され、バスBS2の使用率が過剰に高まることが抑制される。
【0068】
そして、図5(d)に推移L4として示すように、情報端末310により取得された車両の絶対位置を示すデータが、車載制御装置105により処理された車両データに代えて情報端末300に送信される。これにより、バスBS2の使用率が過剰に高まることを抑制しつつ、情報端末300に対して継続的かつ円滑に車両データを送信することが可能となる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態にかかる車両ネットワークの通信管理装置によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)通信管理部200により、車両ネットワークを構成するバスBS1及びBS2に送信される車両データの送信状況を監視した。そして、この車両データの送信状況に応じて、各車載制御装置101〜106が処理する車両データに代替可能な車両の状態量に関するデータを車両ネットワークの外部から取得し、この取得したデータを車両データに代えて情報端末300に転送することとした。このため、車両ネットワークの負荷が増大したときには、車両ネットワークの外部にて取得された車両の状態量に関するデータを、車両ネットワークに送受信される車両データに代えて情報端末300に転送することが可能となる。これにより、車両ネットワークに接続された車載制御装置104及び105から情報端末300に車両データを送信する必要がなくなった分、車両ネットワークの負荷を低下させることが可能となる。また、たとえ車両ネットワーク内の負荷が増大したことに起因して、車両ネットワークの通信速度が低下したり車両ネットワークによるデータの転送能力が低下したとしても、その影響を受けることなく車両の状態量に関するデータを情報端末に送信することが可能になる。これにより、車両ネットワークの負荷を好適に抑制しつつ、安定した転送速度のもとに、情報端末300が必要とするデータを同情報端末300に送信することが可能となる。
【0070】
(2)車両ネットワークの外部から通信管理部200が取得したデータの転送に際して、車載制御装置104及び105と情報端末300とのデータ通信を規制し、この規制したデータ通信に代えて車両ネットワークの外部から取得したデータを同情報端末300に転送することとした。このため、車両ネットワークの負荷は、車載制御装置104及び105と情報端末300とのデータ通信が規制された分だけ確実に低減されることから、本来、車両ネットワークを介して各車載制御装置101〜106間で授受すべき車両データを、円滑に送信することが可能となる。これにより、情報端末300に対して車両データを円滑かつ継続的に提供しつつ、車両ネットワークの負荷が増大することが的確に抑制されるようになる。
【0071】
(3)車両ネットワークの外部における通信手段である情報端末310の通信部311と車両ネットワークとの通信の確立先の切り換えにより、情報端末300へのデータの転送元を動的に変更することとした。このため、各車載制御装置101〜106が搭載される車両の状態に応じて適宜変化する車両ネットワークの負荷に対応する態様で、情報端末300に対するデータの転送元が柔軟に変更されるようになる。これにより、車両ネットワークもしくは同車両ネットワークの外部からデータがその都度の車両ネットワークの負荷に応じて情報端末300に転送されることとなり、情報端末300に対するデータ転送をより円滑に行うことが可能となる。
【0072】
(4)車両ネットワークの外部から取得されるデータとして、データの転送先及び利用先となる情報端末300とは異なる情報端末310によって取得された車両の状態量に関するデータを用いることとした。このため、情報端末310が有する加速度センサ312及びGPS313により取得可能なデータについては、車載制御装置104及び105が処理する車両データに近似するものとして流用することが可能となる。これにより、情報端末300に送信すべき車両データに近似するデータを情報端末300に転送することが可能となり、このデータを車両の状態量を示すデータとして情報端末300に利用させる上で、その信頼性も好適に維持されるようになる。
【0073】
(5)各車載制御装置101〜106の間のデータ通信及び通信管理部200を介した各車載制御装置101〜106と情報端末300とのデータ通信を中継するゲートウェイ110を車両ネットワークに設ける構成とした。また、このゲートウェイ110に、車両ネットワークの負荷を監視する負荷監視部111を設ける構成とした。そして、負荷監視部111による監視結果に基づいて車両データの送信状況を通信管理部200に監視させることとした。また、この監視結果により車両ネットワークの負荷が増大したと判断されるとき、ゲートウェイ110を介した車載制御装置104及び105と情報端末300とのデータ通信を中断させることとした。これにより、通信管理部200は、多数の車両データが中継されるために車両ネットワークの状態を常時把握可能なゲートウェイ110を通じて、車両ネットワークの負荷を監視することが可能となる。また、これにより、通信管理部200は、ゲートウェイ110を通じて、車載制御装置104及び105から出力される車両データの送信規制を容易に行うことが可能となる。
【0074】
(6)通信管理部200に、車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量を示すデータの種別情報が予め登録された情報格納部220を設ける構成とした。そして、この情報格納部220に登録されたデータ種別情報によって示されるデータを通信管理部200から情報端末300に転送することとした。このため、通信管理部200は、車両ネットワークの外部から代替取得可能なデータを的確に把握することが可能となる。これにより、通信管理部200は、情報端末300が必要とするデータを同情報端末300に的確に提供することが可能となり、情報端末300に対するデータ転送にかかる信頼性が高められるようになる。
【0075】
(7)上記車両データの送信の対象とする情報端末として、車両の状態量に関するデータを利用して特定のアプリケーションを実行する情報端末300を採用した。また、このアプリケーションの実行に必要とされるデータを示すアプリケーション必要データ情報を、アプリケーションの別に情報格納部220に登録した。そして、通信管理部200によるデータの転送に際し、情報格納部220の参照を通じて、通信管理部200に転送すべきデータを識別するとともに、この識別したデータを各車載制御装置101〜106もしくは情報端末310から取得し、この取得したデータを情報端末300に転送することとした。これにより、通信管理部200は、情報端末300による各種アプリケーションの実行に必要なデータ、換言すれば、情報端末300に提供すべき各種データを的確に把握することが可能となり、この把握したデータを情報端末300に転送することが可能となる。
【0076】
(8)車両の状態量を示すデータとして、車両の加速度及び減速度並びに絶対位置を示すデータを、加速度センサ312並びにGPS313が搭載された情報端末310から取得することとした。これにより、これら車両の加速度及び減速度並びに絶対位置を示すデータを車両側からのデータとして情報端末に送信する上で、情報端末300に対するデータの継続的かつ円滑な送信が実現されるようになり、車両の加速度、減速度、及び絶対位置に関するデータを利用したアプリケーションの円滑な実行も実現されるようになる。
【0077】
なお、上記実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・車両ネットワークが高負荷であるか否かを、バスBS1もしくはバスBS2の使用率が約「40%」を超えているか否かを基準として判定した。さらに、バスBS1及びバスBS2の使用率が共に約「40%」を超えているか否かを基準として車両ネットワークが高負荷であるか否かを判定するようにしてもよい。もしくは、バスBS1及びバスBS2の使用率の平均値が約「40%」を超えているか否かを基準として車両ネットワークが高負荷であるか否かを判定するようにしてもよい。また、車両ネットワークが高負荷であるか否かを判定する使用率とは、約「39」%以下であっても、約「41」%以上であってもよい。要は、車両ネットワークの負荷が増大したか否かを判別可能なものであれば、通信管理部200によるデータ転送の指標として用いることが可能である。
【0078】
・情報端末300に転送すべきデータを、車載制御装置104や車載制御装置105に対して車両データの送信要求を行うことによって、それら車載制御装置104や車載制御装置105から取得することとした。これに限らず、例えば、車載制御装置101と車載制御装置104と間でバスBS1及びBS2を跨いだ通信が行われることにより、車載制御装置104により処理された車両データがゲートウェイ110に入力されるときには、この車両データを通信管理部200から情報端末300に転送するようにしてもよい。すなわち、この場合には、各車載制御装置101〜106に対する車両データの送信要求は行われない。なお、この場合には、車両ネットワークの負荷が増大したとしても、車載制御装置101と車載制御装置104と間で行われるデータ通信を維持すべく、車載制御装置104に対する車両データの送信規制は行われないこととなる。
【0079】
・車両の状態量を示すデータとして、車両の加速度、減速度、及び絶対位置を示すデータを情報端末310から取得することとした。これに限らず、例えば、情報端末310に搭載されたGPS313により検出される車両の絶対位置の変化量に基づき、車両の走行速度を求めるようにしてもよい。そして、この求めた走行速度を示すデータを、車速センサ103aの検出結果が入力される車載制御装置103により処理された車両データに代えて情報端末300に転送するようにしてもよい。またこの他、例えば、車両に搭載された車載カメラにより撮像されて車載制御装置により処理される画像データを、情報端末310に取り込ませるようにしてもよい。そして、この情報端末310が取り込んだ画像データを、車載制御装置により処理される画像データに代えて情報端末300に転送するようにしてもよい。この場合には、画像データといったデータ量が多くなるデータを、通信管理部200を介して情報端末310から情報端末300へと転送することが可能となる。これにより、車両ネットワークを介して車載制御装置から情報端末300へと画像データを転送する必要がなくなり、情報端末300に画像データを転送する上で車両ネットワークの負荷が大幅に低減されるようになる。また例えば、車両の状態量を示すデータとしては、車両内部もしくは車両外部の気温や湿度、さらには天候等を示すデータであってもよい。これらの場合には、情報端末に搭載される温度センサや湿度センサの検出結果を示すデータが、車両に搭載された温度センサや湿度センサの検出結果が入力される車載制御装置の車両データに代えて、車両データの利用先となる情報端末に転送される。この他、車両の状態量に関するデータとは、車両ネットワークの外部から取得可能なデータであればよく、適宜変更することが可能である。
【0080】
・情報端末300によるアプリケーションの実行に必要とされるデータを示すアプリケーション必要データ情報を、アプリケーションの別に情報格納部220に登録した。そして、通信管理部200によるデータの転送に際し、情報格納部220の参照を通じて、通信管理部200に転送すべきデータを識別するとともに、この識別したデータを各車載制御装置101〜106もしくは情報端末310から取得し、この取得したデータを情報端末300に転送することとした。これに限らず、アプリケーション必要データ情報を通信管理部200に登録しない構成とし、情報端末300によるアプリケーションの実行に際しては、各種アプリケーションの実行に必要なデータを、当該情報端末300が通信管理部200に対して要求するようにしてもよい。この場合には、通信管理部200は、情報端末300から要求のあったデータを各車載制御装置101〜106もしくは情報端末310から取得し、この取得したデータを情報端末300に転送する。なお、この場合であれ、アプリケーションの実行に必要なデータが情報端末300からの要求に応じて各車載制御装置101〜106もしくは情報端末310から当該情報端末300に転送されることから、アプリケーションの実行に必要なデータを継続的かつ円滑に情報端末300に提供することが可能となる。
【0081】
・上記情報端末として、車両の状態量に関するデータを利用して特定のアプリケーションを実行する情報端末300を対象とした。これに限らず、通信管理部200によるデータの転送先とは、車両の状態量に関するデータを利用する端末であればよく、アプリケーションが利用される端末であってもよい。
【0082】
・通信管理部200に、車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量を示すデータの種別情報が予め登録された情報格納部220を設ける構成とした。そして、この情報格納部220に登録されたデータ種別情報によって示されるデータを通信管理部200から情報端末300に転送することとした。これに限らず、情報格納部220を割愛する構成とし、例えば、通信管理部200が、情報端末310との通信を通じて、同情報端末310から取得可能な車両の状態量を示すデータを判別することも可能である。そして、この判別したデータを情報端末310から取得し、この取得したデータを通信管理部200から情報端末300に転送するようにしてもよい。
【0083】
・ゲートウェイ110に、車両ネットワークの負荷を監視する負荷監視部111を設ける構成とした。そして、負荷監視部111による監視結果に基づいて通信管理部200による車両データの送信状況の監視を行うこととした。これ限らず、例えば、通信管理部200に負荷監視部を設ける構成としてもよい。なお、この場合には、通信管理部200は、当該通信管理部200に設けられた負荷監視部による監視結果に基づいて、車両ネットワークによる車両データの送信状況を直接的に監視することとなる。
【0084】
・車両ネットワークに、各車載制御装置101〜106の間のデータ通信及び通信管理部200を介した各車載制御装置101〜106と情報端末300とのデータ通信を中継するゲートウェイ110を設ける構成とした。これに限らず、車両データが送受信される車両ネットワークとはゲートウェイ110を備えないものであってもよい。
【0085】
・車両ネットワークの外部から取得されるデータとして、データの転送先及び利用先となる情報端末300とは異なる情報端末310によって取得された車両の状態量に関するデータを用いることとした。これに限らず、先の図1に対応する図として例えば図6に示すように、データの転送先及び利用先となる情報端末300Aそのものが加速度センサ302やGPS303等を備えることにより、同情報端末300Aが車両の状態量に関するデータを取得可能な場合には、この情報端末300Aにより取得された車両の状態量に関するデータを通信管理部200に取得させるようにしてもよい。そして、この通信管理部200が取得したデータを、その利用先となる情報端末300Aに転送するようにしてもよい。すなわち、通常、車両データを利用するアプリケーションは、車両の状態量に関するデータを車両側から取得するように規定されており、このアプリケーションを実行するためには車両側で取得されたデータを情報端末に提供する必要がある。そこで、情報端末300Aにより取得された車両の状態量に関するデータを、車両側に設けられた通信管理部200を一旦介して同情報端末300Aに転送することで、このデータを車両側で取得されたデータとして取り扱わせることが可能となる。これにより、車両内に一つの情報端末300Aしか存在しない場合であれ、情報端末300Aが必要とするデータを同情報端末300Aに継続的にデータを提供することが可能となる。
【0086】
・各車載制御装置101〜106により処理される車両データに代替可能なデータとして、情報端末により取得されたデータを用いることとした。これに限らず、例えば、車両データの利用先となる情報端末が利用される車両と同車両の周辺を走行する他車両との車車間通信を通じて、他車両の車両データを通信管理部200に取得させるようにしてもよい。そして、通信管理部200が取得した他車両の車両データを、自車両の車両データに代えて、車両データの利用先となる情報端末に転送するようにしてもよい。またこの他、例えば、車両データとして車両周辺の気温や天候等に関する車両データを情報端末に提供する場合には、インターネットワーク等を介して車両の走行エリアの気温や天候等を示すデータを情報端末により取得するようにしてもよい。そして、この取得したデータを、各車載制御装置により処理される車両データに代えて、車両データの利用先となる情報端末に転送するようにしてもよい。
【0087】
・車両ネットワークの外部における通信手段と車両ネットワークとの通信の確立先の切り換えにより、情報端末300へのデータの転送元を動的に変更することとした。これに限らず、車両ネットワークの負荷の増大に伴って通信管理部200との通信の確立先が車載制御装置から車両ネットワークの外部における通信手段に切り換えられて以降は、通信管理部200との通信の確立先を、例えば、車両ネットワークの外部における通信手段に所定期間固定するようにしてもよい。
【0088】
・通信管理部200によるデータの転送に際して、車載制御装置104及び105と情報端末300とのデータ通信を規制し、この規制したデータ通信に代えて車両ネットワークの外部から取得したデータを情報端末300に転送することとした。これに限らず、通信管理部200によるデータの転送に際しては、車両ネットワークの外部から取得したデータを車両データに代えて情報端末300に転送するのみとし、車載制御装置104及び105と情報端末300とのデータ通信を規制しないことも可能である。この場合であれ、情報端末300には、車両データに代替可能なデータが継続的かつ円滑に提供されることとなる。
【0089】
・車両ネットワークを、2つのバスであるバスBS1及びBS2によって構成した。これに限らず、車両ネットワークとは一つのバスによって構成されるものであってもよい。この場合であれ、一つのバスに接続された車載制御装置と情報端末300とのデータ通信に伴って車両ネットワークの負荷が増大し、車両データの通信速度が低下したとしても、車両ネットワークの外部にて取得されたデータが情報端末300に転送されることとなる。これにより、一つのバスにより構成される車両ネットワークの負荷の影響を受けることなく、情報端末が必要とするデータを同情報端末に提供することが可能となる。
【0090】
・車両データや同車両データに代替可能なデータを、一つの情報端末300に転送することとした。これに限らず、車両データを利用する情報端末が車両内に複数存在するときには、車両データに代替可能なデータを複数の情報端末に転送するようにしてもよい。なお、この場合には、複数の情報端末と車両ネットワークに接続された各車載制御装置との間でデータ通信が行われることによって車両ネットワークの負荷が特に増大しやすくなる。しかし、この場合であれ、車両ネットワークの外部から取得されたデータが車両データに代えて各情報端末に転送されることにより、車両ネットワークの負荷の増大を好適に抑制することが可能となる。
【0091】
・車両データに代替可能なデータを、情報端末に転送することとした。これに限らず、車両データや同車両データに代替可能なデータを、車両データを必要とする端末等が接続された外部ネットワークに転送するようにしてもよい。この場合であれ、外部ネットワークには車両データや同車両データに代替可能なデータが継続的かつ円滑に提供されることとなる。
【0092】
・上記車両ネットワークとして、CANを採用することとした。これに限らず、車両ネットワークとしては、車両データや外部データを送信可能なものであればよく、例えばフレックスレイを上記車両ネットワークとして採用することも可能である。この場合であれ、外部データの送信規制を通じて、各種車両データの円滑かつ確実な送受信を実現することが可能となる。またこの他、例えば制御系の車両ネットワークとしてIDB−1394(登録商標)を採用したり、ボデー系の車両ネットワークとして、BEAN、LINを採用することも可能である。同様に、情報系の車両ネットワークとしてAVC−LANを採用することも可能である。これらの場合であれ、車両ネットワークに対する外部データの送信規制を通じて、車両データの円滑かつ送受信を実現することが可能となる。またこの他、バス型の車両ネットワークであれば、本発明の適用は可能である。
【符号の説明】
【0093】
101…車載制御装置、101−106…車載制御装置、103a…車速センサ、104a…加速度センサ、105a…GPS、110…ゲートウェイ、111…負荷監視部、200…通信管理部、210…通信部、220…情報格納部、300、300A…情報端末、301…通信部、302…加速度センサ、303…GPS、310…情報端末、311…通信部、312…加速度センサ、313…GPS、BS1、BS2…バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載制御装置の間で車両データの送受信が行われるとともに、有線通信もしくは無線通信を通じた情報端末との車両データの通信が可能な車両ネットワークにあってその通信データの管理を行う車両ネットワークの通信管理装置であって、
前記車両ネットワークに送信される車両データの送信状況を監視しつつ、該車両データの送信状況に応じて、前記車載制御装置が処理する車両データに代替可能な車両の状態量に関するデータを前記車両ネットワークの外部から取得し、この取得したデータを前記車両データに代えて前記情報端末に転送する通信管理部を備える
ことを特徴とする車両ネットワークの通信管理装置。
【請求項2】
前記通信管理部は、前記取得したデータの転送に際して前記車載制御装置と前記情報端末とのデータ通信を規制し、この規制したデータ通信に代えて前記車両ネットワークの外部から取得したデータを前記情報端末に転送する
請求項1に記載の車両ネットワークの通信管理装置。
【請求項3】
前記通信管理部は、前記車両ネットワークの外部における通信手段と前記車両ネットワークとの通信の確立先の切り換えにより、前記情報端末へのデータの転送元を動的に変更する
請求項1または2に記載の車両ネットワークの通信管理装置。
【請求項4】
前記車両ネットワークの外部から取得されるデータが、前記データの転送先となる情報端末とは異なる情報端末によって取得された車両の状態量に関するデータである
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両ネットワークの通信管理装置。
【請求項5】
前記車両ネットワークには、前記車載制御装置の間のデータ通信及び前記通信管理部を介した前記車載制御装置と前記情報端末とのデータ通信を中継するとともに、当該車両ネットワークの負荷を監視する負荷監視部を備えたゲートウェイが設けられてなり、
前記通信管理部は、前記負荷監視部による監視結果に基づいて前記車両データの送信状況を監視するとともに、この監視結果により当該車両ネットワークの負荷が増大したと判断されるとき、前記ゲートウェイを介した前記車載制御装置と前記情報端末とのデータ通信を中断させる
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両ネットワークの通信管理装置。
【請求項6】
前記通信管理部は、前記車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量を示すデータの種別情報が予め登録された情報格納部を有し、該情報格納部に登録されたデータ種別情報によって示されるデータを前記情報端末へ転送する
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両ネットワークの通信管理装置。
【請求項7】
前記情報端末は、車両の状態量に関するデータを利用して特定のアプリケーションを実行するものであり、
前記情報格納部にはさらに、前記アプリケーションの実行に必要とされるデータを示すアプリケーション必要データ情報がアプリケーションの別に登録されており、
前記通信管理部は、前記情報格納部に登録されたアプリケーション必要データ情報に基づき前記情報端末に転送すべきデータを識別するとともに、この識別したデータを前記車載制御装置もしくは前記車両ネットワークの外部から取得し、この取得したデータを前記アプリケーションを実行する情報端末に転送する
請求項6に記載の車両ネットワークの通信管理装置。
【請求項8】
前記車両ネットワークの外部から取得可能な車両の状態量を示すデータとは、車両の走行速度、加速度、減速度、及び絶対位置の少なくとも1つを示すデータである
請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両ネットワークの通信管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−89996(P2013−89996A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225749(P2011−225749)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】