説明

車両パネル構造体

【課題】、部品点数を抑えつつ外板端部の補強構造を実現できる車両パネル構造体を提供する。
【解決手段】車両パネル構造体10では、フレーム部材40に沿って補強板50が延在しており、この補強板50によって補強部材30の頂部31とフレーム部材40の突出部42とが連結されている。これにより、フレーム部材40の内側には、当該フレーム部材40と、外板20の端部20aと、補強部材30の端部30aと、補強板50とによって囲まれた閉断面Sが形成されるため、フレーム部材40を含めた外板20の端部20aの補強構造を実現できる。このような補強構造は、当接部51と屈曲部52とからなる単純な構造の補強板50の接合によって形成可能であるので、補強構造の実現にあたっての部品点数の増加も抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両パネル構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の分野の技術として、例えば特許文献1に記載の鉄道車両構体がある。この従来の鉄道車両構体では、外板に対して断面ハット型の第1の補強部材(ハット型材)が一定のピッチで接合されている。外板の端部には、第1の補強部材と交差する方向に配置された第2の補強部材が第1の補強部材の頂部に接合され、剛性の強化が図られている。
【0003】
また、外板の端部には、窓用フレーム部材やドア用フレーム部材が取り付けられる場合がある。例えば特許文献2に記載の鉄道車両構体では、ハット型材を第2の補強部材として採用し、この第2の補強部材の一方のフランジ部を第1の補強部材の頂部に接合し、かつ他方のフランジ部を外板に接合している。そして、第2の補強部材の頂部とフレーム部材の内側部分とにそれぞれ接合された補強板を更に設け、フレーム部材を補強板の端部で支持することでフレーム部材の強度も同時に確保している(引用文献2の図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−27366号公報
【特許文献2】特開2008−126757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレーム部材を含めた外板端部の補強構造は、鉄道車両の強度を確保する上で有意義である。しかしながら、車両の軽量化という観点から見ると、補強構造に用いる部材の部品点数は、極力削減しておくことが望ましい。また、外板、補強部材、及びフレーム部材の組み立てには複数回の接合工程を伴うので、組み立て易さの観点からも部品点数の削減が重要となる。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、部品点数を抑えつつ外板端部の補強構造を実現できる車両パネル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のため、本発明に係る車両パネル構造体は、鉄道車両の外壁となる外板と、外板の内面に並設され、鉄道車両の長手方向に延在する断面ハット状の補強部材と、外板の端部に接合され、外板から前記鉄道車両の内側に向かって突出する突出部を備えたフレーム部材と、フレーム部材に沿って延在し、補強部材の頂部とフレーム部材の突出部とを繋ぐように接合された補強板とを備えたことを特徴としている。
【0008】
この車両パネル構造体では、フレーム部材に沿って補強板が延在しており、この補強板によって補強部材の頂部とフレーム部材の突出部とが連結されている。これにより、フレーム部材の内側には、当該フレーム部材と、外板の端部と、補強部材の端部と、補強板とによって囲まれた閉断面が形成されるため、フレーム部材を含めた外板端部の補強構造を実現できる。また、この補強構造は、単純な構造の補強板の接合によって形成可能であるので、補強構造の実現にあたっての部品点数の増加も抑えられる。
【0009】
また、補強板は、外板の端部に対向した状態で補強部材の頂部に接合される第1の面部と、第1の面部からフレーム部材の突出部に沿って屈曲し、突出部に当接した状態で接合される第2の面部とを有していることを特徴としている。この場合、フレーム部材が補強板の第2の面部でしっかりと支持されるので、フレーム部材の強度の向上が図られる。また、フレーム部材と補強板とが面で接触して十分な接合代が得られるので、組み立て易さも確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品点数を抑えつつ外板端部の補強構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る車両パネル構造体を適用してなる鉄道車両構体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】車両パネル構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2に示した車両パネル構造体の分解斜視図である。
【図4】図2に示した車両パネル構造体をフレーム部材の延在方向から見た場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る車両パネル構造体の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る車両パネル構造体を適用してなる鉄道車両構体の一実施形態を示す斜視図である。同図に示すように、鉄道車両構体1は、床構体2と、側構体3と、屋根構体4と、妻構体5とを備え、これらの各構体が相互に接合されることにより、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。
【0014】
床構体2は、車両の床部を構成する構体として鉄道車両構体1の底部に配置されている。側構体3及び妻構体5は、車両の側部を構成する構体として、床構体2の左右の縁部及び前後の縁部に立設されている。側構体3には、乗客・乗員が乗り降りするためのドア部6が等間隔に複数(例えば3箇所)設けられている。
【0015】
また、ドア部6,6間と側構体3の両端部とには、窓部7が設けられている。妻構体5には、乗員・乗客が車両間を行き来するための出入口部8が設けられている。屋根構体4は、車両の屋根部を構成する構体として配置されている。屋根構体4の上部には、車内の温度を調整するためのエアコンディショナーやパンタグラフなどが設置される。
【0016】
次に、側構体3に適用された車両パネル構造体の構成について更に詳細に説明する。図2は、第1実施形態に係る車両パネル構造体の構成を示す斜視図であり、図3はその分解斜視図である。また、図4は、図2に示す車両パネル構造体をフレーム部材の延在方向から見た場合の図である。図2〜図4においては、車両パネル構造体の一方の端部のみを図示しているが、他方の端部についても同様の構成である。
【0017】
図2〜図4に示すように、車両パネル構造体10は、外板20と、補強部材30と、フレーム部材40と、補強板50とを備えている。外板20は、車両の外壁を構成する部材である。外板20は、例えば厚さ1.2mm程度のステンレス鋼(SUS301L)からなり、長さ940mm程度の矩形状をなしている。
【0018】
補強部材30は、長方形状の頂部31と、頂部31の幅方向の両側部から起立するウェブ部32,32と、ウェブ部32,32の先端から外側に突出するフランジ部33,33とを有する断面ハット状の部材(ハット型材)である。補強部材30は、例えば厚さ0.8mmのステンレス鋼(SUS301L)からなり、外板20の長さに対応して車両の長手方向に延在している。また、頂部31の幅は例えば50mm程度となっており、ウェブ部32の高さは、例えば35mm程度となっている。
【0019】
そして、補強部材30は、頂部31が車両の内側を向くようにして例えば200mmピッチで車両の高さ方向に並列配置され(図2及び図3参照)、フランジ部33,33に沿ってスポット状に形成されたレーザ溶接部W1によって外板20の内面に強固に接合されている。これにより、補強部材30と外板20との間には、補強部材30の長手方向に沿って中空部が形成されている。
【0020】
フレーム部材40は、側構体3におけるドア部6又は窓部7の外枠の少なくとも一部を画成する部材である。例えば厚さ4.5mmのステンレス鋼(SUS301L)からなり、外板20の端部20aに沿って車両の高さ方向に延在している。このフレーム部材40は、外板20の端部20aの外面側に当接する当接部41と、当接部41から屈曲して車両の内側に突出する突出部42と、突出部42の先端から当接部41と略平行に外板20の端部20a側に折り返された折返部43とによって、断面略コの字状をなしている。
【0021】
そして、フレーム部材40は、当接部41と外板20の端部20aとの当接部分に沿ってスポット状に形成されたレーザ溶接部W2によって、外板20の端部20aに強固に接合されている。なお、フレーム部材40において、当接部41から屈曲する突出部42の屈曲角度は、例えば60°程度となっている。また、外板20の端部20aと突出部42との間は所定の間隔が設けられているが、外板20の端部20aと突出部42とが接触していてもよい。
【0022】
補強板50は、例えば厚さ1.5mm程度のステンレス鋼(SUS301L)からなり、フレーム部材40に沿って車両の高さ方向に延在している。補強板50は、外板20の端部20aに対向した状態で各補強部材30の頂部31に当接する当接部(第1の面部)51と、当接部51からフレーム部材40の突出部42に沿って車両の内側に屈曲し、突出部42の内面に当接する屈曲部(第2の面部)52とを有している。
【0023】
補強板50は、当接部51と補強部材30の頂部31との当接部分に対応して形成されたスポット状のレーザ溶接部W3によって補強部材30に強固に接合され、屈曲部52とフレーム部材40の突出部42の内面との当接部分に沿って形成されたスポット状のレーザ溶接部W4によってフレーム部材40に強固に接合されている。
【0024】
このような補強板50の接合により、図4に示すように、車両パネル構造体10をフレーム部材40の延在方向から見た場合に、フレーム部材40の内側には、当該フレーム部材40と、外板20の端部20aと、補強部材30の端部30aと、補強板50とによって囲まれた略台形状の閉断面Sが形成されている。
【0025】
以上説明したように、車両パネル構造体10では、フレーム部材40に沿って補強板50が延在しており、この補強板50によって補強部材30の頂部31とフレーム部材40の突出部42とが連結されている。これにより、フレーム部材40の内側には、当該フレーム部材40と、外板20の端部20aと、補強部材30の端部30aと、補強板50とによって囲まれた閉断面Sが形成されるため、フレーム部材40を含めた外板20の端部20aの補強構造を実現できる。
【0026】
このような補強構造は、当接部51と屈曲部52とからなる単純な構造の補強板50の接合によって形成可能であるので、補強構造の実現にあたっての部品点数の増加も抑えられる。部品点数の増加が抑えられることで、補強構造を鉄道車両構体1の各ドア部6及び各窓部7に適用した場合でも、車両の軽量化を図ることができる。また、組み立て現場への部材の搬送や、接合に用いるレーザ溶接機の配置などが容易となる。
【0027】
また、車両パネル構造体10では、補強板50は、外板20の端部20aに対向した状態で補強部材30の頂部31に接合される当接部51と、当接部51からフレーム部材40の突出部42に沿って屈曲し、突出部42に当接した状態で接合される屈曲部52とを有している。この場合、フレーム部材40が補強板50の屈曲部52でしっかりと支持されるので、フレーム部材40の強度の更なる向上が図られる。また、フレーム部材40と補強板50とが面で接触してレーザ溶接部W4を形成する際の十分な接合代が得られるので、組み立て易さも確保できる。
【0028】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、フレーム部材40の当接部41が外板20の端部20aの外面側に当接しているが、この当接部41は外板20の端部20aの内面側に当接していてもよい。また、上記実施形態では、補強板50の屈曲部52が車両の内側に向かって屈曲しているが、この屈曲部52は車両の外側に向かって屈曲していてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…鉄道車両構体、10…車両パネル構造体、20…外板、20a…端部、30…補強部材、31…頂部、40…フレーム部材、42…突出部、50…補強板、51…当接部(第1の面部)、52…屈曲部(第2の面部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の外壁となる外板と、
前記外板の内面に並設され、前記鉄道車両の長手方向に延在する断面ハット状の補強部材と、
前記外板の端部に接合され、前記外板から前記鉄道車両の内側に向かって突出する突出部を備えたフレーム部材と、
前記フレーム部材に沿って延在し、前記補強部材の頂部と前記フレーム部材の前記突出部とを繋ぐように接合された補強板とを備えたことを特徴とする車両パネル構造体。
【請求項2】
前記補強板は、
前記外板の端部に対向した状態で前記補強部材の頂部に接合される第1の面部と、
前記第1の面部から前記フレーム部材の突出部に沿って屈曲し、前記突出部に当接した状態で接合される第2の面部とを有していることを特徴とする請求項1記載の車両パネル構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−25784(P2011−25784A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172087(P2009−172087)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)