説明

車両修正装置及び車両修正装置を固定する方法

【課題】車両が損傷している場合における複数の牽引力を必要としない修理処理作業と牽引力を必要とする車両フレームの牽引作業を同時に行うことが可能な車両修正装置を提供する。
【解決手段】車両修正装置Sは、架台本体20の長手方向に摺動可能に設けられた延長支持部材31と、延長支持部材31の移動を規制するシャフト33と、シャフトを昇降装置10の動きに合わせ案内する作業用凹所の外側の床に設けられたシャフト33を規制する固定機器35と、を有している。シャフト33は固定機器35によって昇降装置10の動作に沿って延長支持部材31をガイドし、昇降装置10が停止した所定位置で固定機器に固定されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両修正装置及び車両修正装置を固定する方法に係り、特に衝突等によって変形した車両フレームを修復することが可能な車両修正装置及び車両修正装置を固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衝突等によって変形した車両を修復するために車両を固定して車両の特定部分の修理や車両フレームの修理のために、車両を引っ張って修正することが可能な車両の修正装置が知られている。
従来の車両の修正装置においては、車両の足回りなどの特定部位の修理等のために、作業用ベンチ(架台)に載せるが、この作業用ベンチ(架台)に載せるための車両進入側が特定されている。また、同時に作業用ベンチ(架台)を上下させて車両を載せる必要があるため、作業場の床面を広く使用できないという不都合があった。また、車両は作業用ベンチ(架台)に載置された高さで固定され、作業者は無理な姿勢で作業を強いられる等の不都合があった。このため、車両を作業し易い適当な高さに固定して、効率良く作業を行う技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1の技術によれば、床面に対し平行に上昇可能で車両固定装置を有する第1架台(第1の作業用ベンチ)と、この第1架台(第1の作業用ベンチ)に対し平行に上昇可能な第2架台(第2の作業用ベンチ)と、上記第1架台(第1の作業用ベンチ)に取り外し可能で、装着される牽引装置(車両の局部的位置を牽引する装置)とを備えたものが開示されている。なお、牽引装置は、架台(作業用ベンチ)によって水平軸線を中心に揺動可能に支持され、牽引装置の牽引駆動源装置を水平軸線上に配置したものとして開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1の技術は、第1の作業用ベンチ(第1架台)に車両を乗せるために、傾斜板を用いる必要があり、依然として、修理しようとする車両を作業場や計測用ベンチに載置するには段差を乗り越えて移動させる必要があるなどの問題がある。
実際に、車両が著しく損傷している場合には、動かすことすら困難であり、傾斜板を介して移動することは非常に難しいという不都合がある。特許文献1のような最も広く用いられている作業用ベンチ(或いは計測用ベンチ)には、パンタグラフ型(或いは鋏状)昇降装置と組み合わされた台によって構成されるものがあり、最も低い位置にあるときの地上からの高さは、特許文献1と同様に、40〜50cmとなってしまう。従って、車両を押して、作業用ベンチ(架台)に載せるためには、上記のような高さの差を乗り越える必要があり、傾斜板を介したとしても、車両が著しく損傷して動かすことが困難な状態での作業は、非常に困難な作業であった。
【0005】
一般に、車両が損傷している場合には、車両のフロント側、リア側、ボディ、フレームの歪み、車輪の歪みなどを修復する必要があり、より細かくは、例えば、フロント修理時には、ラジエターコアサポート下部(フロントクロスメンバー)の基準穴、メカニカルパーツ取付け部の基準穴、フロントサイドメンバー先端の基準穴、フロントサスペンション取付け部、フロアーメンバー前側またはフロントサイドメンバー後側の基準穴、リアサスペンション取付け部等に適切な治具を用いて修理する必要がある。
【0006】
さらに、リア修理用としては、フロントサスペンション取付け部、フロアーメンバー後側(またはリアサイドメンバー前)の基準穴、リアサスペンション取付け部、リアクロスメンバーの基準穴(またはリアサスペンション取付け部)、リアサイドメンバーの基準穴(または牽引フック取付け部等)等に適切な治具を用いて修理する必要がある。
また、特許文献1の図6で示す修理作業と、昇降装置で車両を所定高さにして図7で示すような牽引作業とは、昇降装置に牽引力を及ぼすため、同時に行うことができなかった。
【0007】
上記牽引作業以外の作業は、非常に多くの時間がかかり、また、牽引作業には、昇降装置に負担がかからないように配慮する必要があるために、特許文献1の図6で示す修理作業は牽引作業以外を行い、図7で示す作業(主に牽引作業)は、昇降装置に影響がないような状態として行うようにしている。つまり、牽引作業は昇降装置に影響を及ぼさない状態にして行う必要があるため、それぞれの作業は、択一的に行う必要があった。換言すると、これら図6と図7で示す作業を同時に行うことができず、それぞれ個別に作業を行う必要があり、作業効率が悪く、多くの作業時間を必要としていた。
【0008】
また、上記特許文献1で示される作業用ベンチの高さに関する不都合を解決するために、床に組み込まれた作業用ベンチも知られている。この技術は、床に作業用凹所を形成し、この作業用凹所の底部に、例えば電気或いは流体式のパンタグラフ型昇降ユニットからなる作業用ベンチ用昇降装置を配設している。この作業用ベンチは、作業用凹所を覆うような平面形状をしており、車両を乗せた作業用ベンチの上面が完全に低下したときに、床面と実質的に面一となるようになっている。このようにすることにより、高さの違いによる問題を生じることなく車両を作業用ベンチの上に移動させた後、作業用ベンチと共に上昇させることが可能となる。
【0009】
そして、このような作業用凹所の底部に作業用ベンチの用昇降装置が配設された技術をよりよく改良して、構造的に簡単で、作業者が著しい危険に晒されることなく、また、工具を損傷する危険を伴うことなく、車両の昇降が可能な技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−2067号公報(第1〜2頁、図1〜図7)
【特許文献2】特表2010−508189号公報(請求項、図1〜図3)
【0011】
上記特許文献2の技術によれば、第1昇降手段が、上記車両用ベンチが作動する部屋の床に設けられた作業用凹所の底部に配設されており、上記作業用凹所が設けられた床と実質的に面一となる位置から、上記床より上昇した位置まで、上記車両用ベンチの台を垂直方向に移動することが可能であって、上記車両用ベンチの台は、上記作業用凹所の平面視形状を実質的に補完する形状を有している車両用ベンチである。そして、上記作業用凹所の底部と上記車両用ベンチの台との間に配設されるプラットホームのための第2昇降手段を備えており、上記プラットホームは、上記作業用凹所の平面視形状を補完する形状を有し、上記第2昇降手段は、上記作業用凹所内に下降した位置から、上記作業用凹所を塞ぐような上昇位置までの移動を可能とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献2の技術は、車両を載せる際に、床面と面一となる支持台を備え、床に設けられている作業用凹所内に組み込まれた車両用ベンチを用いることが可能となり、車両が乗り越えなければならないような段差が生じないようにできるという効果を得られる。
しかし、特許文献2の技術では、段差が生じないために、修復・修正すべき車両を支持台に載置することは可能であるが、特許文献1と同様に、車両が損傷している場合における複数の修理処理作業を同時に行うことは困難で、特にフレームの牽引作業については、垂直方向に移動させる第1昇降手段に対して、この垂直方向とは異なる方向への牽引が行われるために、第1昇降手段への負荷が掛かってしまうことになる。このため、前記特許文献1と同様に昇降手段への影響がない状態である床面と面一の状態にして第1昇降手段への負荷をなくして、牽引作業を行う必要があるという不都合があった。特に、支持台が所定の高さに位置した場合に、支持台と昇降手段とが固定できないため、牽引作業を行うと、昇降手段への負荷が生じて、昇降手段を破損してしまうという不都合もあった。
このため、特許文献2においても、特許文献1と同様に、複数の修理処理作業と車両フレームの牽引作業を同時に行うことが困難であり、これらの作業を個別に行う必要があるため、作業時間がかかり、作業効率が悪いという不都合があった。
【0013】
本発明の目的は、車両が損傷している場合における複数の牽引力を必要としない修理処理作業と牽引力を必要とする車両フレームの牽引作業を同時に行うことが可能で、作業時間を短縮して、社業効率が良好な車両修正装置及び車両修正装置を固定する方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、車両を搭載した支持手段(架台本体)を所定の高さにして牽引作業を行っても支持手段を破損せず、支持手段の高さ位置に影響されずに、車両フレームを牽引して矯正することが可能な車両修正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、本発明の車両修正装置によれば、床に形成された作業用凹所に配設された昇降手段と、該昇降手段上に設けられた車両の支持手段と、該支持手段を前記昇降手段の動作に応じて案内する案内手段と、前記支持手段上で前記車両の前後方向に移動可能に配設される第1治具ベースと、該第1治具ベースに支持され前記支持手段の幅方向に配設された横架手段と、該横架手段に配設された第2治具ベースと、該第2治具ベースに配設された治具と、前記治具によって固定された車両を牽引する牽引手段と、を備えた車両修正装置であって、前記案内手段は、前記支持手段を支持手段の長手方向に摺動可能に設けられた延長支持手段と、該延長支持手段の移動を規制する移動規制手段と、該移動規制手段を前記昇降手段の動作に応じて案内する前記作業用凹所の外側の床に設けられた前記移動規制手段の固定手段と、を有し、前記移動規制手段は、前記固定手段によって前記昇降手段の動作に応じて前記延長支持手段をガイドし、前記昇降手段が停止した所定位置で前記固定手段によって位置が固定されること、により解決される。
【0015】
このように前記案内手段は、支持手段の長手方向に摺動可能に設けられた延長支持手段を有しているので、支持手段の範囲の外側位置で支持手段を案内でき、また移動規制手段により延長支持手段の移動を規制するので、支持手段に力が加わっても、支持手段を所定位置に保持することが可能である。
【0016】
特に移動規制手段が昇降手段の動きに合わせ案内するように構成されているので、支持手段の高さ位置に合わせて、移動規制手段が位置することになり、昇降手段が停止した所定位置で、固定手段によって位置を固定することが可能となり、車両を搭載した支持手段の高さに影響されずに、車両フレームを牽引して矯正することが可能となる。このため、修復・修正すべき車両について、セットアップするための治具等の取り付け作業、牽引力を必要としない修復・修正作業と、牽引力を必要とする修復・修正作業について、順序等を問わずに作業することが可能となる。このように作業を同時並行に行うことが可能となるため、作業時間を大幅に減らし、作業効率を高めることが可能となる。
【0017】
また、前記固定手段は、前記作業用凹所に隣接した位置に埋設され、床面より下の配置位置の底面に配置される基部と、該基部と連結された中空の案内部材と、該記案内部材の上面に位置して前記移動規制手段を案内する規制手段案内部と、該規制手段案内部を形成して床面と面一となる平面部と、前記移動規制手段を固定するための固定手段を係合する係合手段と、前記基部側に形成された補強手段と、を備えて形成されると、と好適である。
このように構成すると、固定手段は基部と補強手段が底面で埋設されることになり、外力に対して強固に所定位置に保持される。また、中空の案内部材によって、移動規制手段が案内されるので、移動規制手段を昇降手段の動きに合わせ案内することが確実にできる。また、床面と面一となる平面部を有しているので、牽引手段が移動するときに障害とならないように構成できる。
【0018】
さらに、作業用凹所の外側の床面には、案内レールが配設され、該案内レールには、前記牽引手段が案内され、前記作業用凹所の外側の所定位置で固定され、前記昇降手段の位置に拘わらず前記車両の所定部位を牽引可能とするように構成することが好ましい。
このように構成すると、上記のように固定手段が床面と面一となる平面部を有しているので、牽引手段は障害なく、案内レールに合わせた所定位置で、牽引手段を配置することが可能となる。また、作業用凹所の外側の所定位置で固定されるので、作業用凹所での作業に影響を与えずに、牽引手段を配置することが可能となる。このため、牽引作業と修復・修正作業を同時に或いは順序に関係なく個別に行うことが可能となる。
【0019】
また前記延長支持手段は、前記支持手段内に収容可能な長尺体であって、収容される前記支持手段と反対側の端部側に案内部が形成され、該案内部に前記移動規制手段が案内されるように構成すると、好適である。
このように、延長支持手段の案内部が支持手段と反対側の端部側に形成されているので、支持手段側に作業上の影響を及び左図に案内することが可能となる。
【0020】
さらに前記固定手段は、前記平面部と、前記係合手段を除き、床下に埋設されるように構成すると好適である。
このように、固定手段は床下に埋設されるが、平面部と係合手段は埋設されていないので、段差が生じず、また係合を容易に行うことが可能となる。
【0021】
また、前記固定手段は、前記案内レールよりも前記車両の支持手段側に配設されて構成すると好適である。
このように固定手段が案内レールより支持手段側に位置しているので、固定手段が障害とならず牽引手段を案内レールで案内して固定でき、支持手段側に位置する車両を牽引することが可能となる。
【0022】
また、前記移動規制手段には、固定手段から常に外部に露出した露出手段が形成されていると好適である。
このように、固定手段から常に外部に露出した露出手段が存在することにより、固定手段内に移動規制手段が入り込んで取り出せないという不都合が生じることがない。
【0023】
前記課題は、本発明の車両修正装置を固定する方法によれば、請求項1乃至7のいずれか一項の車両修正装置を固定する方法であって、前記支持手段から延長支持手段を引き出す引出工程と、該引出工程で引き出した延長支持手段の移動を移動規制手段で規制する規制工程と、前記移動規制手段を床に設けられた固定手段によって固定する固定工程と、と、を備え、前記固定工程は、車両修正装置の昇降手段の動作に応じて前記延長支持手段をガイドし、前記昇降手段が停止した所定位置で前記固定手段によって位置を固定すること、によって解決される。
このように、昇降手段によって支持手段が上下したときに、昇降手段と支持手段が移動規制手段によって固定でき、移動規制手段によって、支持手段の高さに合わせて固定することが可能となる。これによって、車両を搭載した支持手段を所定の高さにして牽引作業を行っても支持手段の破損が防止され、支持手段の高さ位置に拘わらず固定できるので、支持手段の高さ位置に拘わらず車両フレームを牽引して矯正することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、車両を搭載した支持手段(架台本体)の高さに影響されずに、車両フレームを牽引して矯正することが可能となり、修復・修正すべき車両について、セットアップするための治具等の取り付け作業、牽引力を必要としない修復・修正作業と、牽引力を必要とする修復・修正作業について、順序等を問わずに作業することが可能となる。このように作業を同時並行に行うことが可能となるため、作業時間を大幅に減らし、作業効率を高めることが可能となる。このように、本発明によれば、修復・修正のためにシャーシを含めたフレームの牽引作業が他の部分の修復・修正と同時に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】車両修正装置の作業状態を示す説明図である。
【図2】昇降手段と支持手段とを示す斜視図である。
【図3】支持手段、横架手段、第1治具ベース、第2治具ベース、治具と延長支持手段の関係を示す部分説明図である。
【図4】作業用凹所の説明図である。
【図5】移動規制手段の固定手段を設置するときの説明図である。
【図6】図5の断面説明図である。
【図7】移動規制手段の固定手段の斜視図である。
【図8】移動規制手段の固定手段の側面図である。
【図9】移動規制手段の固定手段をD方向からみた図である。
【図10】延長支持手段を規制する移動規制手段の斜視図である。
【図11】図10の移動規制手段の側面図である。
【図12】図10の移動規制手段の正面図である。
【図13】延長支持手段と移動規制手段と固定手段との関係の説明図である。
【図14】移動規制手段の固定手段の使用状態の平面図である。
【図15】延長支持手段と移動規制手段との係合状態を示す説明図である。
【図16】図14のE−Eからみた詳細説明図である。
【図17】図14のF−Fからみた詳細説明図である。
【図18】固定手段の使用状態の説明図である。
【図19】固定手段の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の第一の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明に限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0027】
図1〜図19は本発明の一実施形態に係るものであり、図1は車両修正装置の作業状態を示す説明図、図2は昇降手段と支持手段とを示す斜視図、図3は支持手段、横架手段、第1治具ベース、第2治具ベース、治具と延長支持手段の関係を示す部分説明図、図4は作業用凹所の説明図、図5は移動規制手段の固定手段を設置するときの説明図、図6は図5の断面説明図、図7は移動規制手段の固定手段の斜視図、図8は移動規制手段の固定手段の側面図、図9は移動規制手段の固定手段をD方向からみた図、図10は延長支持手段を規制する移動規制手段の斜視図、図11は図10の移動規制手段の側面図、図12は図10の移動規制手段の正面図、図13は延長支持手段と移動規制手段と固定手段との関係の説明図、図14は移動規制手段の固定手段の使用状態の平面図、図15は延長支持手段と移動規制手段との係合状態を示す説明図、図16は図14のE−Eからみた詳細説明図、図17は図14のF−Fからみた詳細説明図、図18及び図19は固定手段の使用状態の説明図である。
【0028】
一般に、カーメーカーでは車両ボディを組み立てる際に、各車両ボディパーツに基準穴を形成しており、車種別の専用ジグ(治具)に、各車両ボディパーツの基準穴(「ロケートホール」ともいう)を整合させて組み立てを行っている。事故等で損傷した車両の修正は、車両修正装置で車両を持ち上げて行うことが一般的である。このときの車両修正装置の持ち上げ及び車両の固定においても、これらの基準穴を利用するが、治具は、基準穴だけでなく、サスペンション等のメカニカルパーツを取付けるポイントも特定し、修理の必要な車両を確実に固定する。そして、車両修正装置に車両を固定した後で、修復や修正を行う。
【0029】
車両にはカーメーカーによって、車種別の仕様基準に基づいて製造されており、車両の固定には、それぞれのカーメーカーの仕様基準に沿って修理する必要がある。このため車両修正装置は、車両にあった固定を行う必要がある。
本発明は、これらの多様な車種に対応できる車両修正装置であり、背景技術で説明した車両のフロント側、リア側、ボディ、フレームの歪み、車輪の歪みなどを修復する車両修正装置であり、特に修復・修正のためにシャーシを含めたフレームの牽引作業が他の部分の修復・修正と同時に行うことが可能な車両修正装置を提供するものである。
【0030】
本実施形態の車両修正装置Sは、車体工場の作業者が使用する、いわゆるベンチと称される車両支持面を構成する形式のものであり、例えばその代表的な平面構造は、車両を任意に載置することができるような幅で設けられた2つの前後方向進路を備えた、架台本体20に渡り板90(図14参照)を載置したものとなっている。本実施形態では、架台本体20に第1治具ベースであるクロスビームギアサポート80を取り付け、クロスビームギアサポート80によって横架手段としてのクロスビーム40を取り付けるように構成している。そして、このクロスビーム40上に、架台本体20の中空鋼材21(後述)に沿って渡り板90を取り付けている。
【0031】
このように、渡り板90を取り付けた架台本体20は、車両を載せる際に床と面一となるように構成される。したがって、車両が乗り越えなければならないような段差が生じないように構成されている。そして、これらの前後方向の架台本体20に横架手段であるクロスビーム40を配して、このクロスビーム40と共に、渡り板90を載置した構造で、渡り板90を利用して修復・修正すべき車両を搭載した後で、後述するように、各種治具ベース及び治具を取り付けるように構成されている。
【0032】
本実施形態の車両修正装置Sは、図1及び図2で示すように、床に形成された作業用凹所H1に配設された昇降手段としての昇降装置10と、この昇降装置10の上部に設けられた支持手段としての架台本体20と、この支持手段である架台本体20を前記昇降装置10の動作に沿って案内する案内手段30と、前記支持手段である架台本体20の上で前記車両の前後方向に移動可能に設けられた第1治具ベースとしてのクロスビームギアサポート80と、このクロスビームギアサポート80に支持され架台本体20の幅方向に配設された横架手段としてのクロスビーム40と、このクロスビーム40に配設された第2治具ベースとしてのスライドサポート50と、このスライドサポート50に配設された治具60と、この治具60によって固定された車両を牽引する牽引手段としての牽引装置70と、を備えている。
【0033】
そして、本実施形態の案内手段30は、延長支持手段としての延長支持部材31と、この延長支持手段である延長支持部材31の移動規制手段としてのシャフト33と、移動規制手段としてのシャフト33を固定する固定手段としての固定機器35とから構成されている。
【0034】
作業用凹所H1は、図4で示すように、床に形成されるもので、この作業用凹所H1は、本実施形態では矩形状をしており、所定の深さを持って形成されている。そして本実施形態の作業用凹所H1の前後位置で作業用凹所H1の外側位置には、移動規制手段の固定手段としての固定機器35が配置される配置凹所H2が各2か所の合計4か所が形成されている。また、この作業用凹所H1及び配置凹所H2の外周には、後述する牽引手段を作業用凹所H1の外周で移動するための案内レールRが配置されている。この案内レールRは作業用凹所H1から常時一定距離となるように配設される。
【0035】
本実施形態の固定手段としての固定機器35は、剛性のある鋼材から構成され、図7乃至図9で示すように、基部としてのベース部35aと、案内部としての中空の案内パイプ部35bと、規制手段案内部としての案内穴部35dと、規制手段を係合する係合手段としての固定穴部35eと、補強手段としての補強部35fとを主要構成要素としている。なお、固定手段としての固定機器35としては、剛性があり、案内部と規制手段案内部と係合手段と補強手段が最低必要な構成である。
【0036】
本実施形態の基部としてのベース部35aは、配置凹所H2の底面に配置され、このベース部35aには案内部としての中空の案内パイプ部35bと連結されている。前記案内パイプ部35bの上面には、案内部としての案内穴部35dが形成されており、移動規制手段としての前記シャフト33を案内する。この案内穴部35dの上面には、平面部としてのプレート部35cが形成され、このプレート部35cは案内穴部35dに連通した開口を有しており、床面と面一となるものである。
【0037】
上記案内パイプ部35bの上部側には、係合手段としての固定穴部35eが形成され、この固定穴部35eには固定手段としての固定棒91bを挿入可能となっており、これによって後述するシャフト33の連結孔33dと係合してシャフト33を固定するものである。
また、固定機器35に強大な力が加わっても、より安定して固定機器35を強固に埋設するためのベース部35a側には補強手段としての補強部35fが形成されている。
【0038】
本実施形態の補強部35fは角棒状で形成された例を示しているが、これに限らず、上記補強機能を有するものであれば、形状その他は特に限定されない。また、固定機器35の上方位置には、固定棒91bを差し入れる空間を形成するための上方が開口された空間確保部35gが形成されている。
この空間確保部35gの上部位置には、プレート部35cの一部であるが、二股部35hが形成され、この二股部35hは空間確保部35gの上部空間を確保する。これにより固定穴部35eへの固定棒91の挿入を容易に行えるようになっている。
【0039】
また、プレート部35cには、固定機器35を固定するための穴35iが形成されており、このプレート部35cの下部で案内パイプ部35b側には、図8で示すように、空間確保部35gを閉塞すると同時に、強度を維持するための補強プレート部35jが形成されている。
本実施形態の固定機器35は、上述のように構成されているが、シャフト断面が矩形の場合には、案内パイプ部35bも矩形にするなど、シャフト33の断面形状に合わせて、案内パイプ部35b、その他の形状を変更することが可能である。
【0040】
固定機器35は配置凹所H2内に埋設されるものである。図5及び図6は、固定機器35を埋設するときの設置施工を示す図であり、設置の途中を示すものである。すなわち、配置凹所H2にベース部35aを位置させた後、位置決めプレート95を用いて、所定位置に配置して、コンクリート等で埋設するものである。この位置決めプレート95の詳細は省略するが、ベース部35aと補強部35fが配置凹所H2内に入るように、案内レールRを利用して案内し、床面Gと同時に水平を保つように固定機器35を固定するものである。
【0041】
本実施形態の昇降手段としての昇降装置10は、図4で示されるような作業用凹所H1の内側の底面に配設されているが、図1及び図2で示すように、公知のパンタグラフ式の昇降装置10を用いている。パンタグラフ式の昇降装置10の作動は、作業者が不図示の操作装置を用いて操作可能な電子制御ユニットによって制御される。本実施形態の昇降装置10及びその制御手段等は、公知の技術を用いることができるもので、昇降装置10としては、車両を載置できて所定位置に上下方向に移動できるような構成であれば、パンタグラフ式でなくてもよい。
【0042】
そして、この昇降装置10の上には、支持手段としての架台本体20が固着されている。本実施形態の架台本体20は、図1及び図2で示すように、2つの長手方向の中空鋼材21,21が所定間隔で平行に連結部22で連結されて形成されている。この架台本体20には、芯出し治具やそのほかの計測装置を固定することができるようになっている。
上記中空鋼材21は、図2及び図3で示すように、延長支持部材31が内部に摺動して収容可能な開口部21aと、この開口部21aに連続して開口部21aより小さいガイド開口部21bが形成されている。
【0043】
延長支持部材31には、図3で示すように、ガイド部31aが設けられており、このガイド部31aが上記ガイド開口部21bに入り込み、安定的に摺動できると共に、延長支持部材31と中空鋼材21がガタ付かないように構成されている。これにより、延長支持部材31を用いても、車両幅方向(左右方向)において、中空鋼材21と一体になって位置を正確に確保することが可能となる。
【0044】
そして、架台本体20に、第1治具ベースとしてのクロスビームギアサポート80を取り付ける。このクロスビームギアサポート80に横架手段としてのクロスビーム40を取り付けた後で、着脱自在の板体からなる渡り板90(図14参照)を配設するもので、車両を載置するときに、車輪が渡り板90の上を移動(走行)可能なように構成されている。なお、この渡り板90は、後述するように、車両を搭載し治具等を配設するたび、或いはジャッキ等でクロスビーム40より上方に位置させた後で、取り外されるもので、図1は渡り90板を外して車両を修復・修正している状態を示している。
【0045】
上記中空鋼材21の外側側面には、図2及び図3で示すように、ギアプレート23が配設されている。本実施形態のギアプレート23には、下端部にギア部23aが設けられている。またギアプレート23の側面には目盛23bが形成されており、第1治具ベースとしてのクロスビームギアサポート80を中空鋼材21に配置したときに、クロスビームギアサポート80の移動量(搭載された車両の前後方向の移動量)を計測することが可能となっている。
【0046】
一方、このクロスビームギアサポート80が配置された後で、このクロスビームギアサポート80の上方位置に、支持手段である架本体台20の幅方向に横架手段としてのクロスビーム40が配設されるが、このクロスビームギアサポート80はクロスビーム40を保持する。このクロスビーム40には、目盛42が目視可能に設けられている。つまり、本実施形態のクロスビーム40は、内側に切欠きがある断面C字状の長尺体41,41を、所定距離を置いて二本向い合せにして形成され、これらの長尺体41,41の外側をクロスビームギアサポート80で支持されて配設される。
【0047】
本実施形態のクロスビーム40の上部位置には、第2治具ベースとしてのスライドサポート50が二本の長尺体41,41を跨るようにして配設される。このスライドサポート50は、クロスビーム40上を幅方向に移動可能に構成されている。
スライドサポート50には治具60が配設されるが、このスライドサポート50の上部には、ギア(図示せず)を内蔵した上下調整部材51が設けられている。本実施形態では、治具60として、下部に脚部61を有する部材を用いており、脚部61の所定位置には、図3で示すように、上記ギアと噛合するラック61aが設けられている。これにより、治具60は上下方向に移動でき、高さ調整が可能となる。なお、治具60には、本実施形態で示されるようなものの他に、さらにトップ治具(図示せず)、車両の種類や修復・修正する状況に応じて、形状の異なる各種の治具を車種や修理箇所に適切な治具を用いることができる。
【0048】
本実施形態の案内手段30は、前述のように、延長支持手段としての延長支持部材31と、この延長支持部材31の移動規制手段としてのシャフト33と、このシャフト33を固定する固定手段としての固定機器35とから構成されている。
延長支持部材31は、前述のように、架台本体20に収容でき、架台本体20の長手方向に延長可能であるが、その両端部には、図3(一端側のみ図示)で示すように、シャフト33を上下方向に保持して規制するリング部32が固着されている。リング部32は挿通穴32aを有しており、シャフト33が挿通できるようになっている。
【0049】
本実施形態の移動規制手段としてのシャフト33は、図10乃至図12で示すように、上記挿通穴32aの径より外径が小さい円柱状の部材であり、本体部33aと、この本体部33aの一端側には先細り部33bが形成され、他端側にはシャフト33が固定機器35内に脱落しないように、露出手段としての係合棒33cが形成されている。また、本体部33aの係合棒33c側の所定位置で、上記係合棒33cと同方向に連結孔33dが形成され、先細り部33b側の所定位置で、上記係合棒33cと直交するように連結孔33eが形成されている。本実施形態における上部側の連結孔33dは、図15で示すように、連結棒91aを用いてリング部32とシャフト33との連結固定用のものであり、下部側の連結孔33eは、図13で示すように、固定棒91bを用いて固定機器35とシャフト33との固定用のものである。
【0050】
なお本実施形態では、連結孔33d,33eは、二か所に形成しているが、架台本体20の停止位置に合わせて複数個所に形成することもできる。これによって、架台本体20の上昇位置に対応するように構成することができる。また、シャフト33は円柱状の部材を用いているが、楕円形状・矩形状・三角形状・多角形状のもの或いはこれらの形状を組み合わせたものでもよく、この場合には、延長支持手段としての延長支持部材31に形成されたリング部32は、中空楕円形・中空矩形・中空三角形・中空多角形のものとすることができる。さらに、シャフト33をリング部32の中に入れるような形態としているが、シャフト33の外側で固定できるように形成するなど各種改変することは可能である。シャフト33の外側で固定する場合には、シャフト33に固定用の係合部、例えば凹部或いは凸部を形成し、一方、上記リング部32に相当する部分には、シャフト33に形成された凹部或いは凸部に係合できるような凸部或いは凹部を形成し、これらをボルト等で固定するように構成することが可能である。要は、シャフト33と延長支持部材31が所定の位置で固定できるような構成であればよい。
【0051】
牽引装置70は、上述のように、治具60によって固定された車両を牽引する牽引手段である。本実施形態の牽引装置70は、公知のものを使用できるが、図1で示すように、基台71と、この基台71上に設けられた回転支持体71bと、この回転支持体71bの上部に配設された牽引支柱72と、基台71と連結部75で連結されて基台71を固定する固定手段74とを備えている。
【0052】
固定手段74は、図1で示すように、ハンドル74aと、このハンドル74aと連結された連結体74bと、この連結体74bの下面に設けられた支持面74cとから構成されており、ハンドル74aを回動することによって、支持面74cが床面を押下して、この支持面74cの押下によって、牽引装置70が固定されるように構成されている。牽引装置70の固定手段は、上記に限られるものではなく、適宜公知手段を用いることが可能である。なお、固定手段としては、本実施形態に示したものに限らず、牽引装置70を固定できる機能を有するものであれば、各種公知の技術を用いることが可能である。
【0053】
また基台71の下部には、不図示の係合突起が設けられ、この係合突起が案内レールRに係合されて、案内レールRに沿って移動可能に形成されている。このように、車両修正装置Sの架台本体20の外周の所定位置に、牽引装置70を配置させることが可能となっている。
牽引支柱72は、水平断面がコの字形で、コの字形の両先端部に牽引高さを決定するためのピン(不図示)を嵌めることのできるように、上下方向に複数の孔73が設けられている。この複数の孔73は、断面コ字形の間に牽引チェーン或いはロープ等の索条96の一端側を配置して、ピンで係合させ、このピンを孔73に嵌めるように構成されている。なお牽引手段は、上記構成に限られるものではなく、案内レールRに沿って移動可能で牽引できるものであれば、公知の技術のものを用いることができる。なお、本実施形態では、牽引装置70が案内レールRによって移動可能にしているが、これに限らず台車、或いは牽引装置70自体に移動手段として移動車を取り付けたもの等、公知の牽引装置70を用いることができるのは勿論である。
【0054】
次に、上記構成からなる車両修正装置Sについて、車両のセットアップについて説明する。
架台本体20上に渡り板90を配置して、その上に車両を載置して、車両に対応する各種治具の取付け(セットアップ)、つまり車両に適した専用治具をセットする治具セットアップの代表的なものには、セットアップチャートによる治具セットアップ、車両と市販寸法図による治具セットアップ、車両だけでの治具セットアップの3通りの治具セットアップがある。
【0055】
専用のセットアップチャートによるセットアップは、一目で分かる立体図で、治具の組み付け方を表示しセットアップチャートを用いるものである。車両と市販寸法図によるセットアップは、マーキングチャート(各自が自分で作るセットアップチヤート)と、寸法図計算表(寸法図の寸法を本実施形態の目盛に容易に換算)の用紙とを用いるものである。車両だけでのセットアップは、車両の左右対称を確認(計測と固定)しながら、直接ボディの修復・修正を行うものである。
【0056】
本実施形態の車両修正装置Sでは、上記治具セットアップのどれでも用いることができるが、ここでは、セットアップチャートによるセットアップを行う場合について説明する。なお、セットアップの方法は異なるが、本発明に係る車両修正装置Sはいずれの場合においても、何ら不都合なく適用が可能なものである。
【0057】
本実施形態において、説明するセットアップチャートによるセットアップを行うには、先ず、セットアップチャートを選択する。このとき、車名、型式、年式及びフロント修理、リア修理によってセットアップチャートを選択する。
【0058】
次に、架台本体20にクロスビームギアサポート80を取り付ける。そして、クロスビームギアサポート80にクロスビーム40を取り付ける。このようにクロスビーム40を取り付けた後で、渡り板90を配置する。この作業は、架台本体20を昇降装置10で上昇させ、或いは床面と同じにして、作業しやすい位置でおこなう。
【0059】
そして昇降装置10を調整して、架台本体20に渡り板90を載置した状態のものを床面と面一にする。次に、修復・修正が必要な車両を、適宜の手段(台車、牽引クレーン或いは手動による押力等、その手段は問わない)によって、架台本体20上(渡り板90上)に載置する。
そして、架台本体20を構成する中空鋼材21から延長支持部材31を引出して(引出工程)、図13及び図15で示すように、シャフト33をリング部32の挿通穴32aに挿通させ、上部側の連結孔33dには、図15で示すように、連結棒91aを装着させてリング部32とシャフト33とを連結し(規制工程)固定させる。一方、シャフト33の先端側の先細り部33bを固定機器35のプレート部35cに形成された案内穴部35dに係合させ、下部側の連結孔33eには、図13で示すように、固定棒91bを用いて固定機器35とシャフト33とを固定させる(固定工程)。これにより、中空鋼材21はシャフト33により移動が規制されることになる。また、昇降装置10の上下動に沿って、中空鋼材21はシャフト33に案内されて上下動する。これにより、架台本体20は、どのような引っ張り力(牽引力)が加わっても、このシャフト33によって上下動以外の移動が規制されることになる。なお、上下移動に合わせて、前述したように、連結孔33d,33eは、二か所に形成しているが、架台本体20の停止位置に合わせて複数個所に形成することもできる。
【0060】
次に、車両を浮かすが、専用スタンドまたはリフト等で、クロスビーム40から車両を浮かす。このようにクロスビーム40から車両を浮かした状態で、渡り板90を外す(つまり修復・修正すべき車両に治具を取り付けながら、順次渡り板90を取り除く。)。このとき、ジャッキ等でクロスビーム40より上方に位置させた後で、一挙に、架台本体20から渡り板90を取り除き、各種治具の取り付けることもできる。次に、セットアップするために各種ポイント(修理ポイント、治具取り付けポイント等)の確認を行う。
【0061】
このとき、車両とセットアップチャートとのポイントが一致するように事前に確認する。このようにして、各種治具の取り付けを終了した状態が、図1で示す状態である。
そして、クロスビーム40に第2治具ベースとしてのスライドサポート50を配置する。スライドサポート50をクロスビーム40に取り付けた後で、スライドサポート50に治具60を配設する。このとき昇降装置10を調整して、作業を行う高さに修復・修正すべき車両を位置させる。
【0062】
修復・修正すべき車両の状態を確認するためには、一般に、不図示のアッパーゲージによって、修正すべき車両に関する寸法等を測定する。詳細は省略するが、ストラット位置だけでなくドアヒンジの位置やピラー上部の位置も計測するものであり、架台本体20に取付けた不図示の門型のゲージによって、車両のボディの上面および側面の測定を行う。この、アッパーゲージは、三次元寸法を測定し、ボディ上部の左右対称を確認、ボディ側面の左右対称を確認することができる。
【0063】
例えば、事故によって修復や修正が必要になった車両の場合に、事故のダメージの影響を確認する。このとき、車両のリアとフロントの所定のポイントでのダメージを確認し、修正すべき車両を架台本体20に対して平行および水平になるように配置する。その後、アンダーボディークランプなどにより車両の固定と、車両の固定ポイントを保護する。
このとき、前述のように車両を昇降装置10によって所定の高さ位置において、車両を治具60によって上下方向に移動したり、クロスビームギアサポート80を調整して前後方向に移動したりして、車両位置、治具位置等を調整する。
【0064】
このように、車両への治具60の取り付けは、昇降装置10によって架台本体20の位置を調整して、所定位置に固定することで、作業を行うことが可能となる。特に本実施形態では、移動規制手段としてのシャフト33は、固定機器35によって昇降手段10の動作に沿って延長支持部材31をガイドし、昇降手段10が停止した所定位置で固定機器35に固定されるように構成されているので、架台本体20に牽引力が加わっても、シャフト33によって無理な力が架台本体20に加わって、昇降装置10に影響を及ぼすことを防止できることになる。これにより、牽引装置70を用いた修復・修正作業も、昇降装置10によって、車両が所定高さにあっても、行うことが可能となっている。
【0065】
車両の修復・修正作業には、部品等の交換や修理用のハンマーや当て治具等を用いて修理などを行うが、作業し易い位置に、昇降装置10で車両を位置させて行う。そして、車両のダメージの無いポイントおよび修復や修正の終了したポイントは、高さ、幅、長さ、トップ治具の各固定ボルト(ナット)を確実に締めて、ポイントをロックする。このとき、治具に引っ張り力(牽引力)が加わらないようにする。
【0066】
一方、フレームやシャーシ等の歪みなどを修正するためには、牽引装置70によって牽引して行うが、牽引するときに、固定したポイントのすぐ近くを引く等して、1個のトップ治具に2TON以上の力を加えないようにする。車両に固定した治具60、例えばトップ治具を直接牽引する際は、トップ治具の所定位置にベルトを巻いて牽引する。直接トップ治具に牽引力が加わらないように、ポートパワー等の手段で押す場合はパット付のフラットベース等を使用、或いは当て木をしてトップ治具に牽引力をかける。
【0067】
このように、車両修正装置Sによれば、案内手段30によって、架台本体20に加わる引っ張り力を昇降装置10に直接加わらないように、シャフト33で移動規制を行えるので、昇降装置10によって車両が所定の高さ位置にある場合であっても、牽引装置70による牽引作業を行うことができる。
したがって、修復・修正すべき車両について、セットアップするための治具等の取り付け作業等の牽引力を必要としない修復・修正作業と、牽引力を必要とする修復・修正作業について、順序等を問わずに作業することが可能となる。このように作業を同時並行に行うことが可能となるため、作業時間を大幅に減らし、作業効率を高めることが可能となる。
【0068】
なお、リアセットアップと、フロントセットアップは、その構造上別個に行う必要がある。いずれの場合にも車両と架台本体20の平行及び水平出しを的確に行い、幅合わせを行う(車両を左右に移動して、リアおよびフロントのセットアップポイントの幅目盛を合わせてロックする)。
長さ合わせ(治具の高さロックを確認した後、クロスビーム40を移動して、リアおよびフロントセットアップポイントの長さ目盛を合わせてロックする)、セットアップとされる全てのポイントに所定の治具60をセットし、ダメージの量と引っ張る方向を確認する。
このときの注意点は、トップジグを取り除くか、治具に引っ張り力が加わらないように、高さ、幅、長さの各固定ボルト緩めて牽引する。
【0069】
車両と市販寸法図によるセットアップは詳細を省略するが、市販寸法図がある場合の作業の概要は、寸法図の寸法をスーパースターの高さ、幅、長さの各目盛に換算し、治具をセットしてボディの修復・修正を行う(セットアップチャート使用時と同じ要領)。そしてセットした治具の内容を記録する。
【0070】
また、車両だけでのセットアップは、車輪がほぼ水平になるように4点のセットアップポイントに治具を取り付ける。またメジャーで車両の所定の高さや長さを計り、車両が架台本体20に対して水平になるように各種治具の高さ目盛を調整する。各ポイントの高さ、幅、長さ目盛を車両の左右で比較し、ボディを修復・修正する。
【符号の説明】
【0071】
10 昇降装置(昇降手段)
20 架台本体(支持手段)
21 中空鋼材
21a 開口部
21b ガイド開口部
22 連結部
23 ギアプレート
23a ギア部
23b 目盛
30 案内手段
31 延長支持部材(延長支持手段)
31a ガイド部
32 リング部
32a 挿通穴
33 シャフト(移動規制手段)
33a 本体部
33b 先細り部
33c 係合棒(露出手段)
33d,33e 連結孔
35 固定機器(固定手段)
35a ベース部(基部)
35b 案内パイプ部(案内部)
35c プレート部
35d 案内穴部(規制手段案内部)
35e 固定穴部(係合手段)
35f 補強部(補強手段)
35g 空間確保部
35h 二股部
35j 補強プレート部
35i 穴
40 クロスビーム(横架手段)
41 長尺体
42 目盛
50 スライドサポート(第2治具ベース)
51 上下調整部材
60 治具
61 脚部
61a ラック
70 牽引装置(牽引手段)
71 基台
71b 回転支持体
72 牽引支柱
73 孔
74 固定手段
74a ハンドル
74b 連結体
74c 支持面
75 連結部
80 クロスビームギアサポート(第1治具ベース)
90 渡り板
91a 連結棒
91b 固定棒
95 位置決めプレート
96 索条
H1 作業用凹所
H2 配置凹所
R 案内レール
S 車両修正装置
G 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に形成された作業用凹所に配設された昇降手段と、
該昇降手段上に設けられた車両の支持手段と、
該支持手段を前記昇降手段の動作に応じて案内する案内手段と、
前記支持手段上で前記車両の前後方向に移動可能に配設される第1治具ベースと、
該第1治具ベースに支持され前記支持手段の幅方向に配設された横架手段と、
該横架手段に配設された第2治具ベースと、
該第2治具ベースに配設された治具と、
前記治具によって固定された車両を牽引する牽引手段と、
を備えた車両修正装置であって、
前記案内手段は、
前記支持手段を支持可能で、支持手段の長手方向に摺動可能に設けられた延長支持手段と、
該延長支持手段の移動を規制する移動規制手段と、
該移動規制手段を前記昇降手段の動作に応じて案内する前記作業用凹所の外側の床に設けられた前記移動規制手段の固定手段と、を有し、
前記移動規制手段は、前記固定手段によって前記昇降手段の動作に応じて前記延長支持手段をガイドし、前記昇降手段が停止した所定位置で前記固定手段によって位置が固定されることを特徴とする車両修正装置。
【請求項2】
前記固定手段は、前記作業用凹所に隣接した位置に埋設され、床面より下の配置位置の底面に配置される基部と、該基部と連結された中空の案内部材と、該案内部材の上面に位置して前記移動規制手段を案内する規制手段案内部と、該規制手段案内部を形成して床面と面一となる平面部と、前記移動規制手段を固定するための固定手段を係合する係合手段と、前記基部側に形成された補強手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両修正装置。
【請求項3】
前記作業用凹所の外側の床面には、案内レールが配設され、該案内レールには、前記牽引手段が案内され、前記作業用凹所の外側の所定位置で固定され、前記昇降手段の位置に拘わらず前記車両の所定部位を牽引可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両修正装置。
【請求項4】
前記延長支持手段は、前記支持手段内に収容可能な長尺体であって、収容される前記支持手段と反対側の端部側に案内部が形成され、該案内部に前記移動規制手段が案内されることを特徴とすする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両修正装置。
【請求項5】
前記固定手段は、前記平面部と、前記係合手段を除き、床下に埋設されてなることを特徴とする請求項2記載の車両修正装置。
【請求項6】
前記固定手段は、前記案内レールよりも前記車両の支持手段側に配設されてなることを特徴とする請求項3記載の車両修正装置。
【請求項7】
前記移動規制手段には、固定手段から常に外部に露出した露出手段が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両修正装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項の車両修正装置を固定する方法であって、
前記支持手段から延長支持手段を引き出す引出工程と、
該引出工程で引き出した延長支持手段の移動を移動規制手段で規制する規制工程と、
前記移動規制手段を床に設けられた固定手段によって固定する固定工程と、を備え、
前記固定工程は、車両修正装置の昇降手段の動作に応じて前記延長支持手段をガイドし、前記昇降手段が停止した所定位置で前記固定手段によって位置を固定することを特徴とする車両修正装置を固定する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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