説明

車両制御システム

ハイブリッドドライブを有する車両用の本発明に係る車両制御システムは,ハイブリッドドライブの内燃エンジンに割り当てられたエンジン制御ユニット(2)と,変速機に割り当てられた変速制御ユニット(7)と,ハイブリッド管理制御ユニット(6)とを含む第1制御装置が第1データバス(1)に接続され,また,ハイブリッド管理制御ユニット(6)と,電動パワートレインにおける更なる制御ユニット(9,10,11,12)とを含む第2制御装置が第2データバス(8)に接続されている。ハイブリッド管理制御ユニット(6)のための,第2データバス(8)に接続されている1つの制御ユニットと,電動パワートレインにおける前記更なる制御ユニットの全てに対して,アプリケーションに依存するデータ入力のために一元的なアプリケーションデータを供給し,電動パワートレインにおけるその他の制御ユニットは,当該制御ユニットに対するデータ入力を行わず,もっぱらアプリケーションに依存しないプログラムデータのみを保持するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,内燃エンジン及び電気機械を含むハイブリッドドライブを有する車両を対象とする,請求項1の上位概念部分に係る車両制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドライブユニットとして内燃エンジンのみを有する従来の車両においては,車両における全ての制御ユニットが少なくとも1つの共通データバスに接続されており,これらの制御ユニットは共通データバスを介してデータの送受信を行う構成とされている。このデータバスは,「CAN‐データバス」とも称されている。この場合,共通データバスに接続される制御ユニットには,特に,エンジン制御ユニット,変速制御ユニット,診断制御ユニット,ブレーキ管理制御ユニット及び車速制御ユニットが含まれている。
【0003】
ドライブユニットとして,内燃エンジンと電気機械とを含むハイブリッドドライブを備える最近の車両にあっては,従来の車両にも使用される制御ユニットに加えて,ハイブリッドドライブにおける電動パワートレインに割り当てられた更なる制御ユニットが設けられている。この場合,電動パワートレインに割り当てられた制御ユニットは,「ハイブリッド‐CAN‐データバス」とも称される第2共通データバスに接続されている。そして,当該制御ユニットは,第2データバスを介してデータの送受信を行うものである。
【0004】
車両の制御ユニットは,一方ではプログラムデータを,他方ではアプリケーションデータを処理する。この場合,プログラムデータはアプリケーションに依存しない静的データであり,アプリケーションデータはアプリケーションに依存する動的データである。
【0005】
現に実用化されている既知の車両制御システムにおいては,車両制御システムの各制御ユニットのために,個々の制御ユニットについて少なくともアプリケーションに依存するデータに関する所謂「パーツリスト」を作成・保持しておくことにより,欠陥等によって制御ユニットの交換が必要となった場合に,対応するアプリケーションデータが入力されている制御ユニットを調達できるようにしておく必要がある。
【0006】
従って,現に実用化されている既知の車両制御システムでは,車両制御システムの制御ユニットにおいて,アプリケーションに依存するデータが個別的に入力されているため,車両制御システムの個々の制御ユニットについて,データの保守管理のために多大なコストが発生する。また,車両制御システムにおける異なる制御ユニットを適切に連携させる必要があるので,車両制御システムの各制御ユニットにおいて個別的にデータの保守管理を行う場合,各制御ユニットの車両制御システムへの統合によってロジスティクスに多大なコストが発生することとなる。アプリケーションに依存するデータ入力に関して適合する制御ユニットのみが,車両制御システムに統合できるからである。
【0007】
その結果,車両の寿命において車両制御システムの制御ユニットにおける適切な連携作動を保証するため,アプリケーションに依存する種々のパラメータに対応して,多様な仕様に適合する制御ユニットを調達可能としておく必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのために,本発明の課題は,ハイブリッドドライブを有する車両用の新規な車両制御システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は,請求項1に記載した車両制御システムによって解決される。すなわち,本発明は,ハイブリッド管理制御ユニットのために第2データバスに接続されている1つの制御ユニットと,電動パワートレインにおける更なる制御ユニットの全てに対して,アプリケーションに依存するデータ入力のために一元的なアプリケーションデータを供給し,電動パワートレインにおけるその他の制御ユニットは,当該制御ユニットに対するデータ入力を行わず,アプリケーションに依存しないプログラムデータのみを保持する構成としたものである。
【0010】
本発明に係る車両制御システムでは,電動パワートレインにおける1つの制御ユニットのみがアプリケーションに依存するアプリケーションデータを保持している。そして,電動パワートレインにおけるその他全ての制御ユニットは,第2データバスに接続されている,アプリケーションデータに依存する制御ユニットと同様に,それ自身アプリケーションに依存しないプログラムデータのみを保持している。これらの制御ユニットに対して,アプリケーションに依存するアプリケーションデータは,電動パワートレインにおける一元的なアプリケーションデータ管理を受け持つ制御ユニットから提供される。
【0011】
本発明は,電動パワートレインにおける1つの制御ユニットのみにより,アプリケーションに依存するデータに基づいてパーツリストを確実に保守管理する構成としたものである。そして,欠陥等によって制御ユニットを交換しなければならない場合には,アプリケーションに依存しない制御ユニットを車両制御システムに接続し,該ユニットに対して,アプリケーションに依存するアプリケーションデータを,一元的なアプリケーションデータ管理を行う制御ユニットから供給する。これにより,一方では,車両制御システムの制御ユニットにおけるデータ保守管理コストを削減することができ,他方では制御ユニットの多品種化を回避することができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態は,従属請求項及び以下の説明から明らかである。次に,図面を参照して本発明の実施形態を詳述するが,これは限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両制御システムを示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は,ハイブリッドドライブを有する車両用の車両制御システムに関するものである。ハイブリッドドライブは,内燃エンジン,電気機械及び電気エネルギ蓄積手段を備えている。ハイブリッドドライブにおける電気機械は,電動機及び発電機として作動させることができる。電機機械は,電動モータとしての作動モードにおいて,電気エネルギ蓄積手段を放電させながら電気エネルギを機械エネルギに変換する。また,電気機械は,発電機としての作動モードにおいては,電気エネルギ蓄積手段を充電させながら機械エネルギを電気エネルギに変換するものである。
【0015】
図1は,ハイブリッドドライブを有する車両を対象とする車両制御システムの基本構造を示す。本発明において,第1データバスには制御ユニット2,3,4,5が接続されている。これらの制御ユニット2,3,4,5は,従来形式のドライブを有する車両にも適用可能な第1制御装置を構成するものであり,例えば,内燃エンジンを制御するためのエンジン制御ユニット2,ブレーキを制御するためのブレーキ管理制御ユニット3,走行速度を制御するための車速制御ユニット4,及び第1診断制御ユニット5に該当する。
【0016】
制御ユニット2,3,4,5は,第1データバス1を介してデータの送受信を行う。
【0017】
図1に示す制御システムは,第1制御装置における各ユニット2,3,4,5以外に,ハイブリッド管理制御ユニット6を含んでいる。ハイブリッド管理制御ユニット6も第1データバス1に接続されており,第1データバスを介してデータの送受信を行う。図1に示す制御システムは,変速制御ユニット7を更に含んでいる。変速制御ユニット7も第1データバス1に接続されており,第1データバス1を介してデータの送受信を行うものである。
【0018】
図1に示すように,第1データバス1に接続されているハイブリッド管理制御ユニット6には,第2制御装置における制御ユニット9,10,11,12が縦続接続されている。ハイブリッド管理制御ユニット6と,第2制御装置における制御ユニット9,10,11,12は,第2データバス8に接続されている。図1に示すように,第2データバス8には変速制御ユニット7も接続されている。制御ユニット6,7,9,10,11,12は,第2データバス8を介してデータの送受信を行う。しかし,制御ユニット9,10,11,12は,ハイブリッド管理制御装置6のみに縦続接続しており,変速制御装置7には縦続接続していない。したがって,ハイブリッド管理制御ユニット6に縦続接続している制御ユニット9,10,11,12は,もっぱらハイブリッド管理制御ユニット6とデータ交換を行い,変速制御ユニット7とはデータ交換を行わない。
【0019】
第2データバス8に接続され,ハイブリッド管理制御ユニット6に縦続接続されている制御ユニット9,10,11,12で構成される制御装置は,車両の電動パワートレインに関連して配置され,特に電動パワートレインの制御に使用される。従って,第2制御装置における制御ユニット9は,ハイブリッドドライブにおける電気エネルギ蓄積手段の制御ユニットに対応させることができる。制御ユニット10は,電気機械における出力段の制御ユニットに対応させることができる。制御ユニット11は,リターダの制御ユニットに対応させることができる。更に,制御ユニット12は,第2診断制御ユニットに対応させることができる。
【0020】
ハイブリッド管理制御ユニット6を,一方では第1データバス1に,そして他方では第2データバス8に接続し,第1データバスと第2データバスとの間のデータ交換のためのセンター・インターフェースとして使用する。ハイブリッド管理制御ユニット6は,データのプロトコル及び/又はコンテンツを第1データバス1と第2データバスとの間で双方向的に変換するものである。
【0021】
本発明によれば,ハイブリッド管理制御ユニット6のために第2データバス8に接続された1つの制御ユニットと,電動パワートレインのための更なる制御ユニット9,10,11,12の全てに対してセントラル・アプリケーションデータを供給することにより,アプリケーションに依存するデータをこれらの制御ユニット6,9,10,11,12に入力する。更に,電動パワートレインにおけるその他の制御ユニットは,その制御ユニットに対するデータ入力を行うものでなく,もっぱらアプリケーションに依存しないプログラムデータのみを保存している。
【0022】
好適には,この一元的なアプリケーションデータの供給により,ハイブリッド管理制御ユニット6は,ハイブリッド管理制御装置6と,第2データバス8に接続されている制御ユニットのうち,車両の電動パワートレインにおける変速制御ユニット7以外の制御ユニット9,10,11,12についての中核的な制御ユニットとして使用する。
【0023】
本発明においては,電動パワートレインにおける各制御ユニット6,9,10,11,12のアプリケーションに関するアプリケーションデータを,ハイブリッド管理制御ユニット6により一元的に保持,管理及び運用する。本発明に係る車両制御システムは,電動パワートレインにおけるその他の制御ユニット9,10,11,12を,アプリケーションに依存しない中立的な制御ユニットとして使用するものである。
【0024】
車両制御システムの初回の立ち上げに際し,ハイブリッド管理制御ユニット6は,電動パワートレインにおける全ての中立的な,アプリケーションに依存しない制御ユニット9,10,11,12に対応するアプリケーションデータを入力し,その際にアプリケーションデータを,所定のデータサービスを利用しつつ第2データバス8を介して送信する。すなわち,電動パワートレインにおけるアプリケーションに依存しない,又は中立的な制御ユニット9,10,11,12については,そのアプリケーションに依存するアプリケーションデータをハイブリッド管理制御ユニット6によって一元的に保持するものである。
【0025】
従って,ハイブリッドドライブを有する車両用の車両制御システムにおいて,電動パワートレイン用の中立的な,又はアプリケーションに依存しない制御ユニットを構築することが可能であり,それによって一方では制御ユニットのデータ管理コストを,そして他方では維持又は調達すべき制御ユニットの多品種化を回避することができる。
【0026】
本発明では,電動パワートレインにおける1つの制御ユニット,好適にはハイブリッド管理制御ユニット6のみが,アプリケーションデータに基づいてパーツリストを管理・維持する。そして,電動パワートレインにおけるその他の制御ユニットの何れも,ハイブリッド管理制御ユニット6からアプリケーションデータを受信するものである。
【符号の説明】
【0027】
1 第1データバス
2 第1制御装置におけるエンジン制御ユニット
3 第1制御装置におけるブレーキ管理制御ユニット
4 第1制御装置における車速制御ユニット
5 第1制御装置における第1診断制御ユニット
6 ハイブリッド管理制御ユニット
7 変速制御ユニット
8 第2データバス
9 第2制御装置における電気エネルギ蓄積手段
10 第2制御装置における電気機械出力段の制御ユニット
11 第2制御装置におけるリターダ制御ユニット
12 第2制御装置における第2診断制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン及び電気機械を含むハイブリッドドライブを有する車両用の車両制御システムであって,ハイブリッドドライブの内燃エンジンに割り当てられたエンジン制御ユニット(2)と,変速機に割り当てられた変速制御ユニット(7)と,ハイブリッドドライブのハイブリッド管理制御ユニット(6)とを含む第1制御装置(2,3,4,5,6,7)が第1データバス(1)に接続され,ハイブリッド管理制御ユニット(6)と,電動パワートレインのための更なる制御ユニット(9,10,11,12)とを含む第2制御装置(6,7,9,10,11,12)が第2データバス(8)に接続されている車両制御システムにおいて,ハイブリッド管理制御ユニット(6)のための,第2データバス(8)に接続されている1つの制御ユニットと,電動パワートレインにおける前記更なる制御ユニットの全てに対して,アプリケーションに依存するデータ入力のために一元的なアプリケーションデータを供給し,電動パワートレインにおけるその他の制御ユニットは,当該制御ユニットに対するデータ入力を行わず,アプリケーションに依存しないプログラムデータのみを保持することを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて,ハイブリッド管理制御ユニット(6)及び変速制御ユニット(7)が,一方では第1データバス(1)に,他方では第2データバス(8)に接続されていることを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両制御システムにおいて,第1データバス(1)に,エンジン制御ユニット(2)と,ハイブリッド管理制御ユニット(6)と,変速制御ユニット(7)と,第1診断制御ユニット(5)と,ブレーキ管理制御ユニット(3)と,車両の内燃エンジンパワートレインにおける更なる制御ユニット(4)とが接続されていること特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の車両制御システムにおいて,第2データバス(8)に,ハイブリッド管理制御ユニット(6)と,変速制御ユニット(7)と,第2診断制御ユニット(11)と,ハイブリッドドライブにおける電気エネルギ蓄積手段と,車両の電動パワートレインにおける更なる制御ユニット(10,11)とが接続されていることを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の車両制御システムにおいて,ハイブリッド管理制御ユニット(6)が,ハイブリッド管理制御ユニット(6)と,第2データバス(8)に接続されている車両の電動パワートレインにおける全ての制御ユニット(9,10,11,12)とに対して,アプリケーションに依存するデータを供給することを特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車両制御システムにおいて,ハイブリッド管理制御ユニット(6)が,第2データバス(8)に接続されている変速制御ユニット(7)以外の全ての制御ユニット(6,9,10,11,12)に対して,アプリケーションに依存するデータを一元的に供給することを特徴とする車両制御システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の車両制御システムにおいて,該車両制御システムの初回の運転に際して,ハイブリッド管理制御装置(6)が,第2データバス(8)に接続されている電動パワートレインにおける全ての制御ユニット(9,10,11,12)に対してアプリケーションデータを供給し,該アプリケーションデータは,データサービスを使用し,かつ,第2データバス(8)を介して送信するものであることを特徴とする車両制御システム。

【図1】
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【公表番号】特表2013−511420(P2013−511420A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539257(P2012−539257)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066773
【国際公開番号】WO2011/061057
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】