車両前照灯
【課題】所望の配光パターンを得るようにした車両前照灯を提供する。
【解決手段】光源としてLEDを備えた複数個の光源モジュール12a’、12b’、12c’、12d’及び光源モジュールからの光を所定の照射領域に照射する光学系13a、13b、13c、13dからなる第一組の照明部11a、11b、11c、11d第二組の照明部、及び第三組の照明部を備え、上記照明部が、配光パターンにおける集光領域、拡散領域、及び中間領域のそれぞれの照射領域に対応して領域ごとに異なる光学系の構成を有し、上記それぞれの照射領域に対応した各照明部の照射光を重ね合わせることにより、全体として一つの配光パターンを形成する。
【解決手段】光源としてLEDを備えた複数個の光源モジュール12a’、12b’、12c’、12d’及び光源モジュールからの光を所定の照射領域に照射する光学系13a、13b、13c、13dからなる第一組の照明部11a、11b、11c、11d第二組の照明部、及び第三組の照明部を備え、上記照明部が、配光パターンにおける集光領域、拡散領域、及び中間領域のそれぞれの照射領域に対応して領域ごとに異なる光学系の構成を有し、上記それぞれの照射領域に対応した各照明部の照射光を重ね合わせることにより、全体として一つの配光パターンを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として複数個のLED素子を利用した前照灯,補助前照灯等の車両前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、白色LEDの高出力化,高輝度化に伴って、車両前照灯用の光源として白色LEDを利用することが検討されてきており、LEDを使用することによる非交換光源化,消費電力の低減そして灯具自体の小型化等の利点が期待されている。
【0003】
しかしながら、白色LEDの高出力化とはいっても、一つのLED光源では、従来のハロゲン電球やHID等の放電灯を利用した光源と比較して、光束や輝度が共に低く、現状ではハロゲン電球の約20分の1,HIDの約60分の1程度の光束である。そして、将来的にもLEDがHIDと同等の光束や輝度に達することは困難であると考えられることから、車両前照灯の光源としてLEDを使用するためには、複数個のLEDを利用した光学系により車両前照灯を構成する必要がある。
【0004】
そして、このような車両前照灯としては、例えば図25〜図27に示す車両前照灯が開示されている。
【0005】
まず、図25に示す車両前照灯1は、前方に向かって凹状の基板表面に、複数個のLED2aを並べて実装した光源モジュール2と、光源モジュール2の前方に配置された投影レンズ3と、投影レンズ3の光源側の焦点位置F付近に配置された遮光部材4と、から構成されている。
【0006】
上記光源モジュール2の各LED2aは、それぞれその光軸が投影レンズ3の焦点位置Fに向いて配置されており、それぞれ図示しない駆動部から駆動電流が供給されることにより、発光するようになっている。
【0007】
上記投影レンズ3は、凸レンズから構成されており、光源モジュール2の各LED2aから出射する光を、前方に向かって集束して照射するようになっている。
【0008】
上記遮光部材4は、すれ違いビームの配光パターンとなるようなカットオフを形成するように、その端縁4aが形成されている。
【0009】
このような構成の車両前照灯1によれば、光源モジュール2の各LED2aが駆動電流を供給されることにより発光し、各LED2aから出射した光が、それぞれ投影レンズ3の焦点位置Fに向かって進んで、投影レンズ3により集束され前方に向かって照射される。
【0010】
その際、上記光は、遮光部材4によりカットオフを形成されることにより、図26に示すように、所謂すれ違いビームの配光パターンLの範囲で、前方に向かって照射されることになる。これにより、対向車や歩行者に対して眩惑光を与えないようになっている。
【0011】
また、図27に示す車両前照灯5は、前方に延びる中心軸の周りに環状に配置された複数個のLED6aから成る光源モジュール6と、光源モジュール6からの光を前方に向かって反射させるリフレクタ7と、リフレクタ3からの反射光を集束させる投影レンズ3と、すれ違い配光のためのカットオフを形成する遮光部材4と、から構成されている。
【0012】
上記光源モジュール6の各LED6aは、図27(B)に示すように、それぞれ光軸が中心軸から半径方向外側に向かって延びるように配置されている。
【0013】
上記リフレクタ7は、例えば回転楕円面から構成されており、その第一の焦点位置付近に光源モジュール6の各LED6aが配置されていると共に、その第二の焦点位置が投影レンズ3の光源側の焦点位置付近に位置するようになっている。
【0014】
このような構成の車両前照灯5によれば、光源モジュール6の各LED6aが駆動電流を供給されることにより発光し、各LED6aから出射した光が、それぞれリフレクタ7で反射されて、リフレクタ7の第二の焦点即ち投影レンズ3の焦点位置Fに向かって進んで、投影レンズ3により集束されて、前方に向かって照射される。
【0015】
その際、上記光は、遮光部材4によりカットオフを形成されることにより、図26に示すように、所謂すれ違いビームの配光パターンLの範囲で、前方に向かって照射されることになる。これにより、対向車や歩行者に対して眩惑光を与えないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001−266620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、このような構成の車両前照灯1においては、何れもハロゲン電球や放電灯を前提とした光学系から構成されていることから、光源としてLEDを使用するには適しておらず、所望の配光パターンを形成することが困難であった。このため、個々のLEDから出射する光を効率良く利用して前方に向かって照射することができない。
【0018】
さらに、図26に示すように、前照灯のすれ違いビームにおいては、中心方向即ち所謂HV付近においては、例えば6000cd乃至20000cd程度の光度が必要である。
【0019】
これに対して、光を投影レンズによって集束させる光学系においては、光度値は投影レンズの焦点位置付近での光の密度(光束発散度)と灯具面積に比例する関係にある。従って、ハロゲン電球やHID等の放電灯と比較して輝度が著しく低いLEDを光源として使用する場合、リフレクタや投影レンズを利用する前述した従来の光学系により上述した光度を得るためには、光学系の大きさが非常に大きくなってしまう。
【0020】
特に、図25に示した車両前照灯1の場合、光源モジュール2の各LED2aと投影レンズ3の焦点位置Fとの距離が大きくなるにつれて焦点位置F付近における光の密度が疎になってしまうので、高い光度を得ることができなくなってしまう。逆に、光源モジュール2と焦点位置Fを近づけると、光源モジュール2上に集積できるLED2aの個数が少なくなってしまう。このようにして、車両前照灯1においては、何れの場合にも、所望の光度を得ることは困難である。
【0021】
また、図27に示した車両用照灯5の場合、リフレクタ7によって光源モジュール6の各LED6aが拡大投影されることになってしまい、同様にして所望の光度を得ることは困難である。
【0022】
これに対して、例えば図28に示すような車両前照灯8も考えられる。
【0023】
図28において、車両前照灯8は、縦横にマトリックス状に配置された複数個のLED9aに対して、それぞれリフレクタ9b,投影レンズ9c及び遮光部材9dを設けて、各LED9a毎に対応するリフレクタ9b及び投影レンズ9cにより、各LED9aの像を前方に向かって投影するように構成されている。
【0024】
しかしながら、このような構成の車両前照灯8においては、リフレクタ9b及び投影レンズ9cによる光学系が、車両前照灯5の場合と同様に、ハロゲン電球や放電灯を前提とした構成であることから、同様に光源としてLEDを使用するには適していない。
【0025】
さらに、上述した各車両前照灯1,5,8においては、対向車の運転者を幻惑しないように、道路の一側(左側通行の場合には、左側)をより明るく照射するようなすれ違いビームの配光パターンを画成するために、遮光部材4,9dを備えており、この遮光部材4,9dにより不要な光を遮断することにより、上述したすれ違いビームの配光パターンを得るようにしている。 その際、すれ違いビームの配光パターンに対してカットオフを形成するためには、各LED2a,6a,9aの光軸付近の最も輝度が高い部分で遮光部材4,9dによりカットオフを形成する必要がある。従って、各LED2a,6a,9aからの発光光量のうち、例えば約40%近い光量が、遮光部材4,9dにより遮断され、損失光となってしまうことから、LEDの面発光という光学的特徴を生かすことができず、光の利用効率が非常に低くなってしまう。
【0026】
これに対して、遮光部材4,9dを使用せずに、リフレクタ7,9bのみによって配光パターンの制御を行なうようにすれば、損失は最低限に抑制され得るので、光の利用効率は約70%程度まで高めることができるが、個々のLEDの輝度が低いことから、H線(水平線)やエルボライン(斜め15度の傾斜線)における明暗境界線での十分なコントラストを得ることが困難になってしまう。
【0027】
本発明は、以上の点から、光源として複数個のLED素子を使用して、所望の配光パターンを得るようにした、前照灯,補助前照灯等に適した車両前照灯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的は、本発明によれば、光源としてLEDを備えた複数個の光源モジュール及び上記光源モジュールからの光を所定の照射領域に照射する光学系からなる第一組の照明部、第二組の照明部、及び第三組の照明部を備え、上記照明部が、配光パターンにおける集光領域、拡散領域、及び中間領域のそれぞれの照射領域に対応して領域ごとに異なる光学系の構成を有し、上記それぞれの照射領域に対応した各照明部の照射光を重ね合わせることにより、全体として一つの配光パターンを形成し、上記第一組の照明部が、さらに複数組のサブ照明部からなり、各サブ照明部がLED光源を備えた光源モジュールと、当該光源モジュールに対応する光学系を備え、上記サブ照明部の光学系は、異なる焦点距離の光学系とされ、それぞれの照射範囲を重ねて前方に向かって投影し、上記第一組の照明部による配光特性が、サブ照明部からの照射全体として輝度分布を有することを特徴とする、車両前照灯により、達成される。
【発明の効果】
【0029】
上記構成により、本発明は、光源として複数個のLED素子を使用して、所望の配光パターンを得るようにした、前照灯,補助前照灯等に適した車両前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による車両前照灯の第一の実施形態の構成を示す概略図である。
【図2】図1の車両前照灯における第一組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図3】図2の第一組の照明部における光源モジュールの構成を示す拡大斜視図である。
【図4】図2の第一組の照明部の変形例の構成を示す概略側面図である。
【図5】図4に示した第一組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図6】図1の車両前照灯における第二組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図7】図6の第二組の照明部における光源モジュールの発光部の形状の一例を示す概略図である。
【図8】図6の第二組の照明部における光源投影像を示す概略図である。
【図9】図6の第二組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図10】図6の第二組の照明部における光源モジュールの発光部の形状の他の例を示す概略図である。
【図11】図6の第二組の照明部における光源モジュールの発光部の形状のさらに他の例を示す概略斜視図である。
【図12】図1の車両前照灯における第三組の照明部の構成の一例を示す概略側面図である。
【図13】図1の車両前照灯における第三組の照明部の構成の他の例を示す概略側面図である。
【図14】図1の車両前照灯における第三組の照明部の構成のさらに他の例を示す概略側面図である。
【図15】図12の第三組の照明部の変形例を示す概略側面図である。
【図16】図12の第三組の照明部の他の変形例を示す概略側面図である。
【図17】本発明による車両前照灯の第二の実施形態の構成を示す概略図である。
【図18】図17の車両前照灯における第一組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図19】図17の車両前照灯における第二組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図20】図17の車両前照灯における第三組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図21】図18の第一組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図22】図19の第二組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図23】図20の第三組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図24】図17の車両前照灯による配光パターンを示すグラフである。
【図25】従来の車両前照灯の一例の構成を示す概略側面図である。
【図26】すれ違いビームの配光パターンを概略的に示すグラフである。
【図27】従来の車両前照灯の他の例の構成を示す概略側面図である。
【図28】従来の車両前照灯のさらに他の例の構成を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の好適な実施形態を図1乃至図24を参照しながら、詳細に説明する。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【実施例1】
【0032】
図1は、本発明による車両前照灯の第一の実施形態の構成を示している。 図1において、車両前照灯10は、三組の照明部11,21,31から構成されている。
【0033】
第一組の照明部11は、所謂すれ違いビームの配光パターンのうち、エルボライン等の明暗境界線を含む最大光度である集光域に対して光を照射するように構成されている。
【0034】
また、第二組の照明部21は、上記配光パターンのうち、エルボラインの必要のない広い範囲の領域である拡散域に対して光を照射するようになっている。
【0035】
さらに、第三組の照明部31は、上記配光パターンのうち、上記集光域と拡散域の配光のコントラストを円滑に接続するように、その間の中間域に対して光を照射するようになっている。
【0036】
まず、集光域のための第一組の照明部11について説明する。
【0037】
第一組の照明部11は、図2に示すように、光源モジュール12及び光学系13から構成されている。
【0038】
光源モジュール12は、図3に示すように、LEDチップを蛍光体により包囲したLEDから成る発光部12aを備えており、例えば樹脂製のレンズハウス12bによりパッケージ化されている。上記発光部12aは、外部からリード12cを介して給電されることにより、LEDチップから出射した光が蛍光体に当たり、LEDチップからの光と蛍光体による励起光の混色光が外部に出射するようになっている。
【0039】
上記光源モジュール12は、さらに発光部12aの前方にレンズ12d及び遮光部材12eを備えており、発光部12aからの光を、遮光部材12eにより光を切り取りカットオフを形成しており、水平ライン及び凸レンズ(投影レンズ)を用いて投影するだけですれ違いビームの配光パターンの特徴である中心から例えば15度で斜め上に延びるエルボラインを成立するようになっている。
【0040】
上記光学系13は、凸レンズから成る投影レンズであって、図2に示すように、光源モジュール12の中心軸上に光軸が一致するように、そしてその光源側の焦点位置が光源モジュール12の発光部12a手前の遮光部材12e付近に位置するように、配置されている。
【0041】
これにより、光源モジュール12の各LED12aからの光が光学系13により前方に向かって集光されることにより、図2にて符号Laで示す配光パターン領域(集光域)を形成するようになっている。
【0042】
ここで、光学系13は、集光光学系であることから、他の構成の集光光学系も使用することが可能ではあるが、配光パターンにおける集光域での最大光度値は、二次光学系即ち光学系13の焦点位置付近における輝度と、光学系13の面積に比例することから、光源モジュール12の発光部12aを投影レンズによって直接に集光域に向かって投影する図2に示した構成が、最も効率良く最大輝度を得ることができる。
【0043】
これに対して、光源モジュールのレンズ外面付近に配置された遮光部材12e付近に投影レンズの焦点位置を配置した場合には、輝度が大幅に低下することになるので、最大光度値も大幅に低下してしまう。
【0044】
また、リレーレンズを使用して、発光部12aの像を遮光部材12e付近に結像させて、この像を投影レンズにより集光域に向かって投影するような構成の光学系の場合には、光学系が複雑になって、部品コスト及び組立コストが高くなり、さらに車両前照灯全体の奥行きが大きくなってしまうと共に、焦点位置における発光部12aの像の輝度が低下することになり、集光域における最大光度値も同様に低下してしまう。
【0045】
ここで、上記第一組の照明部11は、配光パターンの集光域にて任意の輝度分布を付与することは困難である。このため、図4に示すように、複数個(図示の場合、4個)の第一組の照明部11a,11b,11c,11dを設けて、光源モジュール12a',12b',12c',12d'からの光L1,L2,L3,L4を、それぞれ互いに異なる焦点距離の光学系13a,13b,13c,13dにより前方に向かって投影することにより、図5に示すように、各照明部11a,11b,11c,11dごとに照射範囲を適宜に重ねて設定することにより、全体として輝度分布即ちグラデーションを有する配光特性を備えることができる。
【0046】
次に、拡散域のための第二組の照明部21について説明する。
第二組の照明部21は、図6に示すように、光源モジュール22及び光学系23から構成されている。
【0047】
光源モジュール22は、LEDによる例えば長方形等の一つ以上の直線的な稜線のある発光形状、例えば図7に示すように長方形の発光部22aを備えている。
【0048】
また、光学系23は、この場合、前方に向かって凹状の例えば回転放物面や回転楕円面などの組み合わせから成るリフレクタから構成されており、光源モジュール22の軸に対向して、その焦点位置が光源モジュール22の発光部22a付近に位置するように、配置されている。
【0049】
これにより、光源モジュール22の発光部22aからの光が、光学系23により反射され、図6にて符号Lbで示す配光パターン領域(拡散域)を形成するようになっている。
【0050】
この場合、光源モジュール22が面発光であり、ランバーシアン指向特性を備えている利点を生かして、光源モジュール22の発光部22aから出射する光の利用効率は、約70%以上になると共に、リフレクタの形状を適宜に選択することにより、所望の配光パターンを形成することができる。
【0051】
その際、光源モジュール22の発光部22aの直線的な稜線を水平方向に配置して、光学系23により前方に向かって投影することにより、この稜線を配光パターンの水平ラインのカットオフ形成に利用することができる。
【0052】
さらに、上記第二組の照明部21は、好ましくは上記光学系23を構成するリフレクタが、複数の反射面に分割されたマルチリフレクタとして構成され、個々の反射面が適宜に形成されることによって、光源モジュール22の発光部22aを図8に示すように、投影する。この場合、反射する位置により発光部22aの投影像は回転して投影される。
【0053】
これにより、配光パターンの拡散域は、各反射面による発光部22aの投影像が互いに重ね合わせられることによって、図9に示すように、光度分布即ちグラデーションを有する配光特性を備えることができる。
【0054】
尚、光源モジュール22の発光部22aは、長方形に限らず、図10に示すように、ほぼ半円形状の外形を有するように形成されていてもよく、また図11に示すように、複数個のLEDチップを一方向に並べて配置するようにしてもよい。
【0055】
最後に、中間域のための第三組の照明部31について説明する。
【0056】
第三組の照明部31は、図12に示すように、光源モジュール32及び光学系33から構成されている。
【0057】
光源モジュール32は、図2における光源モジュール12から遮光部材12eを除いた構成であって、発光部12aの表面が、光学系33の光軸に沿って配置されている。尚、この場合、光源モジュール32の発光部32aの形状は、制約がないが、光学系33の投影レンズ33bへの入射効率を高め、さらに光学系サイズを小型化するためには、発光部32aはできるだけ小さく、輝度が高いものが好ましい。
【0058】
光学系33は、リフレクタ33a,投影レンズ33b及び遮光部材33cから構成されている。
【0059】
ここで、リフレクタ33aは例えば回転楕円面から構成されており、一方の焦点位置が光源モジュール32の発光部32aの中心付近に、他方の焦点位置が前方にて光学系33の光軸上に位置するように配置されている。
【0060】
投影レンズ33bは、凸レンズであって、その光源側の焦点位置が、リフレクタ33aの前側の焦点位置付近に位置するように配置されている。
【0061】
さらに、上記遮光部材33cは、投影レンズ33bの光源側の焦点位置付近に配置されており、その端縁33dが上端にてカットオフを形成するようになっている。
【0062】
尚、上述した構成では、発光部32aが上向きに配置されており、リフレクタ33aが上半分のみに配置されているが、これに限らず、図13に示すように、上記発光部32aに加えて、下向きの発光部32a'を備えると共に、リフレクタ32aと上下に対した、下半分のリフレクタ33a'を備えるようにしてもよい。
【0063】
また、図14に示すように、遮光部材33cを光軸に沿って配置して、その端縁33dが前端にてカットオフを形成するようにしてもよい。これにより、遮光部材33dの表面の一部に入射する光が、反射されて、前方に向かって照射されることにより、光の利用効率を50%以上に高めることができる。
【0064】
その際、図15に示すように、カットオフラインにおけるコントラストをより高めるために、発光部32aが後方に向かって僅かに傾斜して配置されていてもよい。
【0065】
尚、図16における光学系ではLED光源が面発光であり、反射面はレンズ中心より上方もしくは下方にしか存在しない場合、投影レンズ33bの中心より下面もしくは上面にしか光が入射しなくなるため、投影レンズ33bの上方半分もしくは下方半分をカットすることにより、上下方向に関して小型化を図ることができると共に、より高光度の配向パターンを得るために、複数個の照明部31を上下方向に重ねて配置する場合に、上下方向により密接して配置することが可能になる。
【0066】
本発明実施形態による車両前照灯10は、以上のように構成されており、各照明部11,21,31の光源モジュール12,22,32がそれぞれ給電されることにより発光する。
【0067】
これにより、光源モジュール12の発光部12aから出射した光は、遮光部材12eによりカットオフを形成され、光学系13の投影レンズにより集光されて、前方に向かって照射され、配光パターンの集光域Laを形成する。
【0068】
また、光源モジュール22の発光部22aから出射した光は、光学系23のリフレクタにより反射されることにより、前方に向かって照射され、配光パターンの拡散域Lbを形成する。
【0069】
さらに、光源モジュール32の発光部32aから出射した光は、光学系33のリフレクタ33aにより反射され、さらに投影レンズ33bにより集束されると共に、遮光部材33cによりカットオフを形成されて、前方に向かって照射され、配光パターンの集光域Laと拡散域Lbの間の中間域を形成する。
【0070】
これにより、各照明部11,21,31からの照射光が互いに重なりあって、前方に向かって所謂すれ違いビームの配光パターンが形成され得ることになる。 その際、配光パターンの複数の領域、即ち集光域,拡散域及びその間の中間域が、それぞれ第一組の照明部11,第二組の照明部21及び第三組の照明部31によって形成されることになる。ここで、各照明部11,21,31がそれぞれ対応する領域に最適化して構成されているので、各領域そして配光パターン全体が所望の光度分布で、そして最大光度にて形成されることになる。
【0071】
このようにして、本発明による車両前照灯10によれば、光源として複数個のLEDを使用して、所望の配光パターン、例えば所謂すれ違いビームの配光パターンを得ることができる。
【実施例2】
【0072】
図17は、本発明による車両前照灯の第二の実施形態の構成を示している。
【0073】
図17において、車両前照灯40は、前述した車両前照灯10の具体的な実施形態であって、図1に示した車両前照灯10と同様に、三組の照明部41,51,61から構成されている。
【0074】
この場合、集光域に対応する第一組の照明部41は、図1に示した車両前照灯の第一組の照明部11とほぼ同様に構成されており、左8度から右8度までの範囲に対して光を照射するようになっている。
【0075】
また、拡散域に対応する第二組の照明部51は、図1に示した車両前照灯の第二組の照明部21とほぼ同様に構成されており、左50度から右50度までの範囲に対して光を照射するようになっている。
【0076】
さらに、中間域に対応する第三組の照明部61は、図1に示した車両前照灯の第三組の照明部31とほぼ同様に構成されており、左20度から右20度までの範囲に対して光を照射するようになっている。
【0077】
尚、各領域、即ち集光域,中間域及び拡散域に対する配光割合(光束割合)は、好ましくは1:2:4となるように設定されている。
【0078】
上記第一組の照明部41は、図18に示すように、複数個(図示の場合、4個)の光源モジュール42a,42b,42c,42dと、それぞれ対応する投影レンズ43a,4
3b,43c,43dと、から構成されている。 各光源モジュール42a,42b,42c,42dは、それぞれ車両前照灯10の第一組の照明部11における光源モジュール12と同様に構成されている。
【0079】
また、各投影レンズ43a,43b,43c,43dは、図4に示す構成と同様にして、互いに異なる焦点距離を有している。
【0080】
そして、各投影レンズ43a,43b,43c,43dの焦点距離を適宜に選定することによって、スクリーン上における光度及び投影サイズが得られるようになっている。
【0081】
上記第二組の照明部51は、図19に示すように、複数個(図示の場合、2個)の光源モジュール52a,52bと、それぞれ対応するリフレクタ53a,53bと、から構成されている。
【0082】
各光源モジュール52a,52bは、それぞれ車両前照灯10の第二組の照明部21における光源モジュール22と同様に構成されており、左右方向に背中合わせに配置されている。
【0083】
ここで、各光源モジュール52a,52bの発光部は、例えば長方形のような一つ以上の直線的な稜線を備えており、この稜線は、従来のハロゲン電球のフィラメントやHIDのアーク電極形状より長く、例えばフィラメントの二倍の長さを有していることが望ましい。特に、図11に示すように、所謂マルチチップタイプの複数個のLEDチップを一つのパッケージ内に直線的に配置した光源パッケージを使用することにより、光源パッケージ自体の光束を増大させることができると共に、車両前照灯全体を小型に構成することが可能である。
【0084】
また、各リフレクタ53a,53bは、それぞれ車両前照灯10の第二組の照明部21におけるリフレクタ23と同様に構成されており、左右方向に拡がるように配置されている。
【0085】
これにより、上記光源モジュール52a,52bの発光部が比較的長い直線的な稜線を有していても、リフレクタ53a,53bの形状に基づいて、発光部の投影像位置を任意にコントロールすることが可能であり、発光部からの光束の70%以上を前方に向かって照射することができる。
【0086】
上記第三組の照明部61は、図20に示すように、複数個(図示の場合、3個)の光源モジュール62a,62b,62cと、それぞれ対応するリフレクタ63a,63b,63cと、一つの投影レンズ64と、遮光部材65と、から構成されている。
【0087】
各光源モジュール62a,62b,62cは、それぞれ車両前照灯10の第三組の照明部31における光源モジュール32と同様に構成されていると共に、中心軸の周りに等角度間隔で配置されている。
【0088】
ここで、各光源モジュール62a,62b,62cの発光部は、できるだけ小さく、例えば従来のハロゲン電球のフィラメントやHIDのアーク電極形状より小さく選定されていることが望ましい。
【0089】
また、各リフレクタ63a,63b,63cは、それぞれ車両前照灯10の第三組の照明部31におけるリフレクタ33aと同様に構成されており、各光源モジュール62a,62b,62cに対応して、光軸の上方及び両側に配置されている。
【0090】
さらに、投影レンズ64は、それぞれ車両前照灯10の第三組の照明部31における投影レンズ33bと同様に構成されており、光軸上に一つだけ配置されている。
【0091】
また、遮光部材65は、それぞれ車両前照灯10の第三組の照明部31における遮光部材33cと同様に構成されており、投影レンズ64の光源側の焦点位置付近に配置されている。
【0092】
尚、直線的な発光部を備える光源モジュールを使用する場合、左右方向に拡がる配光パターンを形成するためには、光軸より上方に位置するリフレクタに対応する光源モジュールは、その発光部の長手方向を光軸に対して垂直に配置することが望ましい。また、光軸の側方に位置するリフレクタに対応する光源モジュールは、その発光部の長手方向を光軸に対して平行に配置することが望ましい。これにより、リフレクタによる発光部の投影像が、水平方向に長く延びることになり、配光パターンをより容易に形成することができる。
【0093】
このような構成の車両前照灯40によれば、第一の照明部41は、図21に示すように、集光域に対して光Laを照射し、第二の照明部51は、図22に示すように、拡散域に対して光Lbを照射すると共に、第三の照明部61は、図23に示すように、集光域と拡散域の間の中間域に対して光Lcを照射する。
【0094】
そして、各照明部41,51,61による配光パターンLa,Lb,Lcを重ね合わせることにより、図24に示すように、すれ違いビームに適した配光パターンLを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
上述した実施形態においては、車両前照灯10,40は、それぞれ集光域,拡散域及び中間域に対応する照明部11,21,31または41,51,61を備えているが、これに限らず、中間域に対応する照明部31,61が省略されていてもよい。また、これらの照明部に対して、例えばデータイムランニングランプ,コーナリングランプの補助灯や、フォグランプ灯の補助前照灯または所謂AFSランプの機能を実現する配光パターンを備える照明部を追加し、あるいは配光パターンをより多くの領域に分割して、分割領域に対して新たな照明部を追加することによって、多機能の配光パターンを一つの車両前照灯により形成することが可能になる。
【0096】
その際、新たに追加する照明部を着脱可能に構成しておくことにより、当該照明部をオプションにより任意に追加したり、外したりすることができる。
【0097】
さらに、上述した実施形態においては、すれ違いビーム用の配光特性として、左側通行の場合に限定して、自動車の前方に向かって右側に関して、対向車に幻惑光を与えないように、遮光板12e,33c,65の端縁が形成されているが、これに限らず、右側通行の場合には、車両前照灯において、遮光板の端縁の配置が左右逆転されることにより、同様の効果が得られることになる。
【符号の説明】
【0098】
10…車両前照灯、11…第一組の照明部、12…光源モジュール、12a…発光部(LED)、12e…遮光部材、13…光学系(投影レンズ)、21…第二組の照明部、22…光源モジュール、22a…発光部(LED)、23…光学系(リフレクタ)、31…第三組の照明部、32…光源モジュール、32a,32a'…発光部(LED)、33…光学系、33a,33a'…リフレクタ、33b…投影レンズ、33c…遮光部材、40 …車両前照灯、41…第一組の照明部、42a,42b,42c,42d…光源モジュール、43a,43b,43c,43d…光学系(投影レンズ)、51…第二組の照明部、52a,52b…光源モジュール、53a,53b…光学系(リフレクタ)、61…第三組の照明部、62a,62b,62c…光源モジュール、33…光学系、63a,63b,63c…リフレクタ、64…投影レンズ、65…遮光部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として複数個のLED素子を利用した前照灯,補助前照灯等の車両前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、白色LEDの高出力化,高輝度化に伴って、車両前照灯用の光源として白色LEDを利用することが検討されてきており、LEDを使用することによる非交換光源化,消費電力の低減そして灯具自体の小型化等の利点が期待されている。
【0003】
しかしながら、白色LEDの高出力化とはいっても、一つのLED光源では、従来のハロゲン電球やHID等の放電灯を利用した光源と比較して、光束や輝度が共に低く、現状ではハロゲン電球の約20分の1,HIDの約60分の1程度の光束である。そして、将来的にもLEDがHIDと同等の光束や輝度に達することは困難であると考えられることから、車両前照灯の光源としてLEDを使用するためには、複数個のLEDを利用した光学系により車両前照灯を構成する必要がある。
【0004】
そして、このような車両前照灯としては、例えば図25〜図27に示す車両前照灯が開示されている。
【0005】
まず、図25に示す車両前照灯1は、前方に向かって凹状の基板表面に、複数個のLED2aを並べて実装した光源モジュール2と、光源モジュール2の前方に配置された投影レンズ3と、投影レンズ3の光源側の焦点位置F付近に配置された遮光部材4と、から構成されている。
【0006】
上記光源モジュール2の各LED2aは、それぞれその光軸が投影レンズ3の焦点位置Fに向いて配置されており、それぞれ図示しない駆動部から駆動電流が供給されることにより、発光するようになっている。
【0007】
上記投影レンズ3は、凸レンズから構成されており、光源モジュール2の各LED2aから出射する光を、前方に向かって集束して照射するようになっている。
【0008】
上記遮光部材4は、すれ違いビームの配光パターンとなるようなカットオフを形成するように、その端縁4aが形成されている。
【0009】
このような構成の車両前照灯1によれば、光源モジュール2の各LED2aが駆動電流を供給されることにより発光し、各LED2aから出射した光が、それぞれ投影レンズ3の焦点位置Fに向かって進んで、投影レンズ3により集束され前方に向かって照射される。
【0010】
その際、上記光は、遮光部材4によりカットオフを形成されることにより、図26に示すように、所謂すれ違いビームの配光パターンLの範囲で、前方に向かって照射されることになる。これにより、対向車や歩行者に対して眩惑光を与えないようになっている。
【0011】
また、図27に示す車両前照灯5は、前方に延びる中心軸の周りに環状に配置された複数個のLED6aから成る光源モジュール6と、光源モジュール6からの光を前方に向かって反射させるリフレクタ7と、リフレクタ3からの反射光を集束させる投影レンズ3と、すれ違い配光のためのカットオフを形成する遮光部材4と、から構成されている。
【0012】
上記光源モジュール6の各LED6aは、図27(B)に示すように、それぞれ光軸が中心軸から半径方向外側に向かって延びるように配置されている。
【0013】
上記リフレクタ7は、例えば回転楕円面から構成されており、その第一の焦点位置付近に光源モジュール6の各LED6aが配置されていると共に、その第二の焦点位置が投影レンズ3の光源側の焦点位置付近に位置するようになっている。
【0014】
このような構成の車両前照灯5によれば、光源モジュール6の各LED6aが駆動電流を供給されることにより発光し、各LED6aから出射した光が、それぞれリフレクタ7で反射されて、リフレクタ7の第二の焦点即ち投影レンズ3の焦点位置Fに向かって進んで、投影レンズ3により集束されて、前方に向かって照射される。
【0015】
その際、上記光は、遮光部材4によりカットオフを形成されることにより、図26に示すように、所謂すれ違いビームの配光パターンLの範囲で、前方に向かって照射されることになる。これにより、対向車や歩行者に対して眩惑光を与えないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001−266620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、このような構成の車両前照灯1においては、何れもハロゲン電球や放電灯を前提とした光学系から構成されていることから、光源としてLEDを使用するには適しておらず、所望の配光パターンを形成することが困難であった。このため、個々のLEDから出射する光を効率良く利用して前方に向かって照射することができない。
【0018】
さらに、図26に示すように、前照灯のすれ違いビームにおいては、中心方向即ち所謂HV付近においては、例えば6000cd乃至20000cd程度の光度が必要である。
【0019】
これに対して、光を投影レンズによって集束させる光学系においては、光度値は投影レンズの焦点位置付近での光の密度(光束発散度)と灯具面積に比例する関係にある。従って、ハロゲン電球やHID等の放電灯と比較して輝度が著しく低いLEDを光源として使用する場合、リフレクタや投影レンズを利用する前述した従来の光学系により上述した光度を得るためには、光学系の大きさが非常に大きくなってしまう。
【0020】
特に、図25に示した車両前照灯1の場合、光源モジュール2の各LED2aと投影レンズ3の焦点位置Fとの距離が大きくなるにつれて焦点位置F付近における光の密度が疎になってしまうので、高い光度を得ることができなくなってしまう。逆に、光源モジュール2と焦点位置Fを近づけると、光源モジュール2上に集積できるLED2aの個数が少なくなってしまう。このようにして、車両前照灯1においては、何れの場合にも、所望の光度を得ることは困難である。
【0021】
また、図27に示した車両用照灯5の場合、リフレクタ7によって光源モジュール6の各LED6aが拡大投影されることになってしまい、同様にして所望の光度を得ることは困難である。
【0022】
これに対して、例えば図28に示すような車両前照灯8も考えられる。
【0023】
図28において、車両前照灯8は、縦横にマトリックス状に配置された複数個のLED9aに対して、それぞれリフレクタ9b,投影レンズ9c及び遮光部材9dを設けて、各LED9a毎に対応するリフレクタ9b及び投影レンズ9cにより、各LED9aの像を前方に向かって投影するように構成されている。
【0024】
しかしながら、このような構成の車両前照灯8においては、リフレクタ9b及び投影レンズ9cによる光学系が、車両前照灯5の場合と同様に、ハロゲン電球や放電灯を前提とした構成であることから、同様に光源としてLEDを使用するには適していない。
【0025】
さらに、上述した各車両前照灯1,5,8においては、対向車の運転者を幻惑しないように、道路の一側(左側通行の場合には、左側)をより明るく照射するようなすれ違いビームの配光パターンを画成するために、遮光部材4,9dを備えており、この遮光部材4,9dにより不要な光を遮断することにより、上述したすれ違いビームの配光パターンを得るようにしている。 その際、すれ違いビームの配光パターンに対してカットオフを形成するためには、各LED2a,6a,9aの光軸付近の最も輝度が高い部分で遮光部材4,9dによりカットオフを形成する必要がある。従って、各LED2a,6a,9aからの発光光量のうち、例えば約40%近い光量が、遮光部材4,9dにより遮断され、損失光となってしまうことから、LEDの面発光という光学的特徴を生かすことができず、光の利用効率が非常に低くなってしまう。
【0026】
これに対して、遮光部材4,9dを使用せずに、リフレクタ7,9bのみによって配光パターンの制御を行なうようにすれば、損失は最低限に抑制され得るので、光の利用効率は約70%程度まで高めることができるが、個々のLEDの輝度が低いことから、H線(水平線)やエルボライン(斜め15度の傾斜線)における明暗境界線での十分なコントラストを得ることが困難になってしまう。
【0027】
本発明は、以上の点から、光源として複数個のLED素子を使用して、所望の配光パターンを得るようにした、前照灯,補助前照灯等に適した車両前照灯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的は、本発明によれば、光源としてLEDを備えた複数個の光源モジュール及び上記光源モジュールからの光を所定の照射領域に照射する光学系からなる第一組の照明部、第二組の照明部、及び第三組の照明部を備え、上記照明部が、配光パターンにおける集光領域、拡散領域、及び中間領域のそれぞれの照射領域に対応して領域ごとに異なる光学系の構成を有し、上記それぞれの照射領域に対応した各照明部の照射光を重ね合わせることにより、全体として一つの配光パターンを形成し、上記第一組の照明部が、さらに複数組のサブ照明部からなり、各サブ照明部がLED光源を備えた光源モジュールと、当該光源モジュールに対応する光学系を備え、上記サブ照明部の光学系は、異なる焦点距離の光学系とされ、それぞれの照射範囲を重ねて前方に向かって投影し、上記第一組の照明部による配光特性が、サブ照明部からの照射全体として輝度分布を有することを特徴とする、車両前照灯により、達成される。
【発明の効果】
【0029】
上記構成により、本発明は、光源として複数個のLED素子を使用して、所望の配光パターンを得るようにした、前照灯,補助前照灯等に適した車両前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による車両前照灯の第一の実施形態の構成を示す概略図である。
【図2】図1の車両前照灯における第一組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図3】図2の第一組の照明部における光源モジュールの構成を示す拡大斜視図である。
【図4】図2の第一組の照明部の変形例の構成を示す概略側面図である。
【図5】図4に示した第一組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図6】図1の車両前照灯における第二組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図7】図6の第二組の照明部における光源モジュールの発光部の形状の一例を示す概略図である。
【図8】図6の第二組の照明部における光源投影像を示す概略図である。
【図9】図6の第二組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図10】図6の第二組の照明部における光源モジュールの発光部の形状の他の例を示す概略図である。
【図11】図6の第二組の照明部における光源モジュールの発光部の形状のさらに他の例を示す概略斜視図である。
【図12】図1の車両前照灯における第三組の照明部の構成の一例を示す概略側面図である。
【図13】図1の車両前照灯における第三組の照明部の構成の他の例を示す概略側面図である。
【図14】図1の車両前照灯における第三組の照明部の構成のさらに他の例を示す概略側面図である。
【図15】図12の第三組の照明部の変形例を示す概略側面図である。
【図16】図12の第三組の照明部の他の変形例を示す概略側面図である。
【図17】本発明による車両前照灯の第二の実施形態の構成を示す概略図である。
【図18】図17の車両前照灯における第一組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図19】図17の車両前照灯における第二組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図20】図17の車両前照灯における第三組の照明部の構成を示す概略斜視図である。
【図21】図18の第一組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図22】図19の第二組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図23】図20の第三組の照明部による配光パターンを示すグラフである。
【図24】図17の車両前照灯による配光パターンを示すグラフである。
【図25】従来の車両前照灯の一例の構成を示す概略側面図である。
【図26】すれ違いビームの配光パターンを概略的に示すグラフである。
【図27】従来の車両前照灯の他の例の構成を示す概略側面図である。
【図28】従来の車両前照灯のさらに他の例の構成を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の好適な実施形態を図1乃至図24を参照しながら、詳細に説明する。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【実施例1】
【0032】
図1は、本発明による車両前照灯の第一の実施形態の構成を示している。 図1において、車両前照灯10は、三組の照明部11,21,31から構成されている。
【0033】
第一組の照明部11は、所謂すれ違いビームの配光パターンのうち、エルボライン等の明暗境界線を含む最大光度である集光域に対して光を照射するように構成されている。
【0034】
また、第二組の照明部21は、上記配光パターンのうち、エルボラインの必要のない広い範囲の領域である拡散域に対して光を照射するようになっている。
【0035】
さらに、第三組の照明部31は、上記配光パターンのうち、上記集光域と拡散域の配光のコントラストを円滑に接続するように、その間の中間域に対して光を照射するようになっている。
【0036】
まず、集光域のための第一組の照明部11について説明する。
【0037】
第一組の照明部11は、図2に示すように、光源モジュール12及び光学系13から構成されている。
【0038】
光源モジュール12は、図3に示すように、LEDチップを蛍光体により包囲したLEDから成る発光部12aを備えており、例えば樹脂製のレンズハウス12bによりパッケージ化されている。上記発光部12aは、外部からリード12cを介して給電されることにより、LEDチップから出射した光が蛍光体に当たり、LEDチップからの光と蛍光体による励起光の混色光が外部に出射するようになっている。
【0039】
上記光源モジュール12は、さらに発光部12aの前方にレンズ12d及び遮光部材12eを備えており、発光部12aからの光を、遮光部材12eにより光を切り取りカットオフを形成しており、水平ライン及び凸レンズ(投影レンズ)を用いて投影するだけですれ違いビームの配光パターンの特徴である中心から例えば15度で斜め上に延びるエルボラインを成立するようになっている。
【0040】
上記光学系13は、凸レンズから成る投影レンズであって、図2に示すように、光源モジュール12の中心軸上に光軸が一致するように、そしてその光源側の焦点位置が光源モジュール12の発光部12a手前の遮光部材12e付近に位置するように、配置されている。
【0041】
これにより、光源モジュール12の各LED12aからの光が光学系13により前方に向かって集光されることにより、図2にて符号Laで示す配光パターン領域(集光域)を形成するようになっている。
【0042】
ここで、光学系13は、集光光学系であることから、他の構成の集光光学系も使用することが可能ではあるが、配光パターンにおける集光域での最大光度値は、二次光学系即ち光学系13の焦点位置付近における輝度と、光学系13の面積に比例することから、光源モジュール12の発光部12aを投影レンズによって直接に集光域に向かって投影する図2に示した構成が、最も効率良く最大輝度を得ることができる。
【0043】
これに対して、光源モジュールのレンズ外面付近に配置された遮光部材12e付近に投影レンズの焦点位置を配置した場合には、輝度が大幅に低下することになるので、最大光度値も大幅に低下してしまう。
【0044】
また、リレーレンズを使用して、発光部12aの像を遮光部材12e付近に結像させて、この像を投影レンズにより集光域に向かって投影するような構成の光学系の場合には、光学系が複雑になって、部品コスト及び組立コストが高くなり、さらに車両前照灯全体の奥行きが大きくなってしまうと共に、焦点位置における発光部12aの像の輝度が低下することになり、集光域における最大光度値も同様に低下してしまう。
【0045】
ここで、上記第一組の照明部11は、配光パターンの集光域にて任意の輝度分布を付与することは困難である。このため、図4に示すように、複数個(図示の場合、4個)の第一組の照明部11a,11b,11c,11dを設けて、光源モジュール12a',12b',12c',12d'からの光L1,L2,L3,L4を、それぞれ互いに異なる焦点距離の光学系13a,13b,13c,13dにより前方に向かって投影することにより、図5に示すように、各照明部11a,11b,11c,11dごとに照射範囲を適宜に重ねて設定することにより、全体として輝度分布即ちグラデーションを有する配光特性を備えることができる。
【0046】
次に、拡散域のための第二組の照明部21について説明する。
第二組の照明部21は、図6に示すように、光源モジュール22及び光学系23から構成されている。
【0047】
光源モジュール22は、LEDによる例えば長方形等の一つ以上の直線的な稜線のある発光形状、例えば図7に示すように長方形の発光部22aを備えている。
【0048】
また、光学系23は、この場合、前方に向かって凹状の例えば回転放物面や回転楕円面などの組み合わせから成るリフレクタから構成されており、光源モジュール22の軸に対向して、その焦点位置が光源モジュール22の発光部22a付近に位置するように、配置されている。
【0049】
これにより、光源モジュール22の発光部22aからの光が、光学系23により反射され、図6にて符号Lbで示す配光パターン領域(拡散域)を形成するようになっている。
【0050】
この場合、光源モジュール22が面発光であり、ランバーシアン指向特性を備えている利点を生かして、光源モジュール22の発光部22aから出射する光の利用効率は、約70%以上になると共に、リフレクタの形状を適宜に選択することにより、所望の配光パターンを形成することができる。
【0051】
その際、光源モジュール22の発光部22aの直線的な稜線を水平方向に配置して、光学系23により前方に向かって投影することにより、この稜線を配光パターンの水平ラインのカットオフ形成に利用することができる。
【0052】
さらに、上記第二組の照明部21は、好ましくは上記光学系23を構成するリフレクタが、複数の反射面に分割されたマルチリフレクタとして構成され、個々の反射面が適宜に形成されることによって、光源モジュール22の発光部22aを図8に示すように、投影する。この場合、反射する位置により発光部22aの投影像は回転して投影される。
【0053】
これにより、配光パターンの拡散域は、各反射面による発光部22aの投影像が互いに重ね合わせられることによって、図9に示すように、光度分布即ちグラデーションを有する配光特性を備えることができる。
【0054】
尚、光源モジュール22の発光部22aは、長方形に限らず、図10に示すように、ほぼ半円形状の外形を有するように形成されていてもよく、また図11に示すように、複数個のLEDチップを一方向に並べて配置するようにしてもよい。
【0055】
最後に、中間域のための第三組の照明部31について説明する。
【0056】
第三組の照明部31は、図12に示すように、光源モジュール32及び光学系33から構成されている。
【0057】
光源モジュール32は、図2における光源モジュール12から遮光部材12eを除いた構成であって、発光部12aの表面が、光学系33の光軸に沿って配置されている。尚、この場合、光源モジュール32の発光部32aの形状は、制約がないが、光学系33の投影レンズ33bへの入射効率を高め、さらに光学系サイズを小型化するためには、発光部32aはできるだけ小さく、輝度が高いものが好ましい。
【0058】
光学系33は、リフレクタ33a,投影レンズ33b及び遮光部材33cから構成されている。
【0059】
ここで、リフレクタ33aは例えば回転楕円面から構成されており、一方の焦点位置が光源モジュール32の発光部32aの中心付近に、他方の焦点位置が前方にて光学系33の光軸上に位置するように配置されている。
【0060】
投影レンズ33bは、凸レンズであって、その光源側の焦点位置が、リフレクタ33aの前側の焦点位置付近に位置するように配置されている。
【0061】
さらに、上記遮光部材33cは、投影レンズ33bの光源側の焦点位置付近に配置されており、その端縁33dが上端にてカットオフを形成するようになっている。
【0062】
尚、上述した構成では、発光部32aが上向きに配置されており、リフレクタ33aが上半分のみに配置されているが、これに限らず、図13に示すように、上記発光部32aに加えて、下向きの発光部32a'を備えると共に、リフレクタ32aと上下に対した、下半分のリフレクタ33a'を備えるようにしてもよい。
【0063】
また、図14に示すように、遮光部材33cを光軸に沿って配置して、その端縁33dが前端にてカットオフを形成するようにしてもよい。これにより、遮光部材33dの表面の一部に入射する光が、反射されて、前方に向かって照射されることにより、光の利用効率を50%以上に高めることができる。
【0064】
その際、図15に示すように、カットオフラインにおけるコントラストをより高めるために、発光部32aが後方に向かって僅かに傾斜して配置されていてもよい。
【0065】
尚、図16における光学系ではLED光源が面発光であり、反射面はレンズ中心より上方もしくは下方にしか存在しない場合、投影レンズ33bの中心より下面もしくは上面にしか光が入射しなくなるため、投影レンズ33bの上方半分もしくは下方半分をカットすることにより、上下方向に関して小型化を図ることができると共に、より高光度の配向パターンを得るために、複数個の照明部31を上下方向に重ねて配置する場合に、上下方向により密接して配置することが可能になる。
【0066】
本発明実施形態による車両前照灯10は、以上のように構成されており、各照明部11,21,31の光源モジュール12,22,32がそれぞれ給電されることにより発光する。
【0067】
これにより、光源モジュール12の発光部12aから出射した光は、遮光部材12eによりカットオフを形成され、光学系13の投影レンズにより集光されて、前方に向かって照射され、配光パターンの集光域Laを形成する。
【0068】
また、光源モジュール22の発光部22aから出射した光は、光学系23のリフレクタにより反射されることにより、前方に向かって照射され、配光パターンの拡散域Lbを形成する。
【0069】
さらに、光源モジュール32の発光部32aから出射した光は、光学系33のリフレクタ33aにより反射され、さらに投影レンズ33bにより集束されると共に、遮光部材33cによりカットオフを形成されて、前方に向かって照射され、配光パターンの集光域Laと拡散域Lbの間の中間域を形成する。
【0070】
これにより、各照明部11,21,31からの照射光が互いに重なりあって、前方に向かって所謂すれ違いビームの配光パターンが形成され得ることになる。 その際、配光パターンの複数の領域、即ち集光域,拡散域及びその間の中間域が、それぞれ第一組の照明部11,第二組の照明部21及び第三組の照明部31によって形成されることになる。ここで、各照明部11,21,31がそれぞれ対応する領域に最適化して構成されているので、各領域そして配光パターン全体が所望の光度分布で、そして最大光度にて形成されることになる。
【0071】
このようにして、本発明による車両前照灯10によれば、光源として複数個のLEDを使用して、所望の配光パターン、例えば所謂すれ違いビームの配光パターンを得ることができる。
【実施例2】
【0072】
図17は、本発明による車両前照灯の第二の実施形態の構成を示している。
【0073】
図17において、車両前照灯40は、前述した車両前照灯10の具体的な実施形態であって、図1に示した車両前照灯10と同様に、三組の照明部41,51,61から構成されている。
【0074】
この場合、集光域に対応する第一組の照明部41は、図1に示した車両前照灯の第一組の照明部11とほぼ同様に構成されており、左8度から右8度までの範囲に対して光を照射するようになっている。
【0075】
また、拡散域に対応する第二組の照明部51は、図1に示した車両前照灯の第二組の照明部21とほぼ同様に構成されており、左50度から右50度までの範囲に対して光を照射するようになっている。
【0076】
さらに、中間域に対応する第三組の照明部61は、図1に示した車両前照灯の第三組の照明部31とほぼ同様に構成されており、左20度から右20度までの範囲に対して光を照射するようになっている。
【0077】
尚、各領域、即ち集光域,中間域及び拡散域に対する配光割合(光束割合)は、好ましくは1:2:4となるように設定されている。
【0078】
上記第一組の照明部41は、図18に示すように、複数個(図示の場合、4個)の光源モジュール42a,42b,42c,42dと、それぞれ対応する投影レンズ43a,4
3b,43c,43dと、から構成されている。 各光源モジュール42a,42b,42c,42dは、それぞれ車両前照灯10の第一組の照明部11における光源モジュール12と同様に構成されている。
【0079】
また、各投影レンズ43a,43b,43c,43dは、図4に示す構成と同様にして、互いに異なる焦点距離を有している。
【0080】
そして、各投影レンズ43a,43b,43c,43dの焦点距離を適宜に選定することによって、スクリーン上における光度及び投影サイズが得られるようになっている。
【0081】
上記第二組の照明部51は、図19に示すように、複数個(図示の場合、2個)の光源モジュール52a,52bと、それぞれ対応するリフレクタ53a,53bと、から構成されている。
【0082】
各光源モジュール52a,52bは、それぞれ車両前照灯10の第二組の照明部21における光源モジュール22と同様に構成されており、左右方向に背中合わせに配置されている。
【0083】
ここで、各光源モジュール52a,52bの発光部は、例えば長方形のような一つ以上の直線的な稜線を備えており、この稜線は、従来のハロゲン電球のフィラメントやHIDのアーク電極形状より長く、例えばフィラメントの二倍の長さを有していることが望ましい。特に、図11に示すように、所謂マルチチップタイプの複数個のLEDチップを一つのパッケージ内に直線的に配置した光源パッケージを使用することにより、光源パッケージ自体の光束を増大させることができると共に、車両前照灯全体を小型に構成することが可能である。
【0084】
また、各リフレクタ53a,53bは、それぞれ車両前照灯10の第二組の照明部21におけるリフレクタ23と同様に構成されており、左右方向に拡がるように配置されている。
【0085】
これにより、上記光源モジュール52a,52bの発光部が比較的長い直線的な稜線を有していても、リフレクタ53a,53bの形状に基づいて、発光部の投影像位置を任意にコントロールすることが可能であり、発光部からの光束の70%以上を前方に向かって照射することができる。
【0086】
上記第三組の照明部61は、図20に示すように、複数個(図示の場合、3個)の光源モジュール62a,62b,62cと、それぞれ対応するリフレクタ63a,63b,63cと、一つの投影レンズ64と、遮光部材65と、から構成されている。
【0087】
各光源モジュール62a,62b,62cは、それぞれ車両前照灯10の第三組の照明部31における光源モジュール32と同様に構成されていると共に、中心軸の周りに等角度間隔で配置されている。
【0088】
ここで、各光源モジュール62a,62b,62cの発光部は、できるだけ小さく、例えば従来のハロゲン電球のフィラメントやHIDのアーク電極形状より小さく選定されていることが望ましい。
【0089】
また、各リフレクタ63a,63b,63cは、それぞれ車両前照灯10の第三組の照明部31におけるリフレクタ33aと同様に構成されており、各光源モジュール62a,62b,62cに対応して、光軸の上方及び両側に配置されている。
【0090】
さらに、投影レンズ64は、それぞれ車両前照灯10の第三組の照明部31における投影レンズ33bと同様に構成されており、光軸上に一つだけ配置されている。
【0091】
また、遮光部材65は、それぞれ車両前照灯10の第三組の照明部31における遮光部材33cと同様に構成されており、投影レンズ64の光源側の焦点位置付近に配置されている。
【0092】
尚、直線的な発光部を備える光源モジュールを使用する場合、左右方向に拡がる配光パターンを形成するためには、光軸より上方に位置するリフレクタに対応する光源モジュールは、その発光部の長手方向を光軸に対して垂直に配置することが望ましい。また、光軸の側方に位置するリフレクタに対応する光源モジュールは、その発光部の長手方向を光軸に対して平行に配置することが望ましい。これにより、リフレクタによる発光部の投影像が、水平方向に長く延びることになり、配光パターンをより容易に形成することができる。
【0093】
このような構成の車両前照灯40によれば、第一の照明部41は、図21に示すように、集光域に対して光Laを照射し、第二の照明部51は、図22に示すように、拡散域に対して光Lbを照射すると共に、第三の照明部61は、図23に示すように、集光域と拡散域の間の中間域に対して光Lcを照射する。
【0094】
そして、各照明部41,51,61による配光パターンLa,Lb,Lcを重ね合わせることにより、図24に示すように、すれ違いビームに適した配光パターンLを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
上述した実施形態においては、車両前照灯10,40は、それぞれ集光域,拡散域及び中間域に対応する照明部11,21,31または41,51,61を備えているが、これに限らず、中間域に対応する照明部31,61が省略されていてもよい。また、これらの照明部に対して、例えばデータイムランニングランプ,コーナリングランプの補助灯や、フォグランプ灯の補助前照灯または所謂AFSランプの機能を実現する配光パターンを備える照明部を追加し、あるいは配光パターンをより多くの領域に分割して、分割領域に対して新たな照明部を追加することによって、多機能の配光パターンを一つの車両前照灯により形成することが可能になる。
【0096】
その際、新たに追加する照明部を着脱可能に構成しておくことにより、当該照明部をオプションにより任意に追加したり、外したりすることができる。
【0097】
さらに、上述した実施形態においては、すれ違いビーム用の配光特性として、左側通行の場合に限定して、自動車の前方に向かって右側に関して、対向車に幻惑光を与えないように、遮光板12e,33c,65の端縁が形成されているが、これに限らず、右側通行の場合には、車両前照灯において、遮光板の端縁の配置が左右逆転されることにより、同様の効果が得られることになる。
【符号の説明】
【0098】
10…車両前照灯、11…第一組の照明部、12…光源モジュール、12a…発光部(LED)、12e…遮光部材、13…光学系(投影レンズ)、21…第二組の照明部、22…光源モジュール、22a…発光部(LED)、23…光学系(リフレクタ)、31…第三組の照明部、32…光源モジュール、32a,32a'…発光部(LED)、33…光学系、33a,33a'…リフレクタ、33b…投影レンズ、33c…遮光部材、40 …車両前照灯、41…第一組の照明部、42a,42b,42c,42d…光源モジュール、43a,43b,43c,43d…光学系(投影レンズ)、51…第二組の照明部、52a,52b…光源モジュール、53a,53b…光学系(リフレクタ)、61…第三組の照明部、62a,62b,62c…光源モジュール、33…光学系、63a,63b,63c…リフレクタ、64…投影レンズ、65…遮光部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源としてLEDを備えた複数個の光源モジュール及び上記光源モジュールからの光を所定の照射領域に照射する光学系からなる第一組の照明部、第二組の照明部、及び第三組の照明部を備え、
上記照明部が、配光パターンにおける集光領域、拡散領域、及び中間領域のそれぞれの照射領域に対応して領域ごとに異なる光学系の構成を有し、
上記それぞれの照射領域に対応した各照明部の照射光を重ね合わせることにより、全体として一つの配光パターンを形成し、
上記第一組の照明部が、
さらに複数組のサブ照明部からなり、各サブ照明部がLED光源を備えた光源モジュールと、当該光源モジュールに対応する光学系を備え、
上記サブ照明部の光学系は、異なる焦点距離の光学系とされ、それぞれの照射範囲を重ねて前方に向かって投影し、
上記第一組の照明部による配光特性が、サブ照明部からの照射全体として輝度分布を有することを特徴とする、車両前照灯。
【請求項1】
光源としてLEDを備えた複数個の光源モジュール及び上記光源モジュールからの光を所定の照射領域に照射する光学系からなる第一組の照明部、第二組の照明部、及び第三組の照明部を備え、
上記照明部が、配光パターンにおける集光領域、拡散領域、及び中間領域のそれぞれの照射領域に対応して領域ごとに異なる光学系の構成を有し、
上記それぞれの照射領域に対応した各照明部の照射光を重ね合わせることにより、全体として一つの配光パターンを形成し、
上記第一組の照明部が、
さらに複数組のサブ照明部からなり、各サブ照明部がLED光源を備えた光源モジュールと、当該光源モジュールに対応する光学系を備え、
上記サブ照明部の光学系は、異なる焦点距離の光学系とされ、それぞれの照射範囲を重ねて前方に向かって投影し、
上記第一組の照明部による配光特性が、サブ照明部からの照射全体として輝度分布を有することを特徴とする、車両前照灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2013−48111(P2013−48111A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247545(P2012−247545)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2011−84961(P2011−84961)の分割
【原出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2011−84961(P2011−84961)の分割
【原出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]