説明

車両検査装置

【課題】多くの人手と危険を伴う作業を必要とせず、狭い場所でも簡単に設置できる移動式の車両検査装置を提供する。
【解決手段】装置本体1をトラック2に積載して検査場所まで搬送し(図1a)、検査場所に到着したらアームユニット3を操作して装置本体1をトラック2から積み下ろし(図1b)、装置本体1を検査場所に設置する(図1c)。これより車両検査装置の据え付けを完了する。検査が終了したらアームユニット3を操作して装置本体1をトラック2へ積み上げ(図1b)、車両検査装置の撤去を完了する。積み下ろし・積み上げ時は、後傾姿勢の装置本体1をローラユニット4と接地輪5に支持して装置本体1を前後にスライドし、設置時は水平姿勢の装置本体1を接地脚6に支持して定置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査機器一式をトラックに積載して搬送するようにした移動式の車両検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動式の例として特許文献1がある。これを図5に示すと、大型の箱体Aの内部に各種の点検機器を装備して、箱体Aごとトレーラに載せ搬送するようになっている。目的地に着いたら、備え付けのアウトリガージャッキBを伸ばして箱体Aを持ち上げ、トレーラを引き出し、次に箱体Aの床下に支柱Cを挿入し、箱体Aを地上に据えつける。
車両の点検作業が終ったら、支柱Cを取り外して箱体Aの下方にトレーラを差し入れ、アウトリガージャッキBを縮小して箱体Aをトレーラの荷台に載せ、これを牽引車で牽引して次の目的地に移動する。
【0003】
このように従来の装置は、据え付け・撤去を行うのにアウトリガージャッキBを操作して大型の箱体Aを持ち上げたり、下ろしたりする作業や、トレーラを動かして箱体Aの下から引き出したり、箱体Aの下に差し入れたりする作業や、さらには箱体Aの下にもぐりこんで支柱Cを挿入したり、取り除いたりする作業など、多くの人手と危険を伴う作業を必要とした。
また、検査装置を搬送するのに大型のトレーラを必要とし、狭い場所に設置するのが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−72044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は以上のとおり移動式装置特有の作業性や安全性などである。
本発明は、多くの人手と危険を伴う作業を必要とせず、狭い場所でも簡単に設置できる移動式の車両検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明は、装置本体に、装置本体の前面をコ字形に取り囲むフロントフレームと、検査車両を載せて足回りをテストする検査台と、装置本体をスライド自在に支持する一方のローラユニットと、装置本体の後端をスライド自在に支持する接地輪と、装置本体を水平に支持する接地脚とを備え、トラックの荷台に、前記フロントフレームの外側に軸接続して装置本体の積み上げ・積み下ろしを行うアームユニットと、装置本体をスライド自在に支持する他方のローラユニットとを備え、前記装置本体をトラックの荷台に積載して検査場所まで搬送し、検査場所に到着したら前記アームユニットを操作して装置本体を積み下ろし、これより検査装置の据え付けを完了し、検査が終了したら前記アームユニットを操作して装置本体をトラックの荷台に積み上げ、これより検査場所に設置した検査装置を撤去することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、アームユニットを操作して装置本体を積み下ろすと同時に据え付けができ、アームユニットを操作して装置本体を積み上げると同時に撤去ができ、さらにアームユニットを操作して装置本体をトラックの荷台に積み上げることで搬送ができる。
従って、人手と危険を伴う作業なしで安全に検査装置の据え付け、撤去、搬送ができる。また、搬送用に大型のトレーラを必要としないので、狭い場所でも簡単に設置できる。
【0008】
また、ローラユニットが装置本体をスライド自在に支持するので、アームユニットの操作だけでトラックの荷台上の装置本体をスムーズに移動できる。また、接地輪が装置本体の後端をスライド自在に支持するので、アームユニットの操作だけで地上の装置本体をスムーズに移動できる。また、接地脚が装置本体を水平に支持するので、アームユニットの操作だけで装置本体をしっかり地上に固定できる、等々の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を実施した車両検査装置の側面視概略図である。
【図2】検査台7の平面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】フック受け73の要部を拡大した斜視図である。
【図5】従来の移動式車両検査装置の側面視概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1に、本発明を実施した車両検査装置の側面視概略図を示す。
車両検査装置は、装置本体1をトラック2に積載して検査場所まで搬送し(図1a)、検査場所に到着したらアームユニット3を操作して装置本体1をトラック2から積み下ろし(図1b)、装置本体1を検査場所に設置する(図1c)。これより車両検査装置の据え付けを完了する。検査が終了したらアームユニット3を操作して装置本体1をトラック2へ積み上げ(図1b)、車両検査装置の撤去を完了する。積み下ろし・積み上げ時は、後傾姿勢の装置本体1をローラユニット4と接地輪5に支持して装置本体1を前後にスライドし、設置時は水平姿勢の装置本体1を接地脚6に支持して定置する。
【0012】
装置本体1は、前方に装置本体1と一体のフロントフレーム11を立設し、後方に検査台7を固定載置する。
フロントフレーム11は、装置本体1の前面をコ字形に取り囲み、内側に発電機やコンプレッサなどの補機類を収納して固定する。これにより移動時のガタや損傷を防ぐ。なお、補機類の配置は検査作業の効率を考慮して決定する。
また、フロントフレーム11は長方形に組んだ部材の各接合箇所を剛接合したラーメン構造とし、これよりアームユニット3からの外力による接合箇所への応力集中を分散してフレーム剛性を高める。
【0013】
アームユニット3は、L字アーム31と油圧シリンダ32で構成し、L字アーム31の作用点軸31aをフロントフレーム11の軸点に、支点軸31bをトラック2の荷台フレーム21の軸点に、力点軸31cを油圧シリンダ32のプランジャ33の軸点にそれぞれ連結する。油圧シリンダ32の支点軸32aはトラック2の荷台フレーム21の軸点に連結する。
【0014】
ローラユニット4は、ガイドレール41とガイドローラ42で構成し、ガイドレール41にガイドローラ42を係合させて装置本体1とトラック2の荷台フレーム21との間に左右一対配置する。ガイドレール41は装置本体1底面内側の前後方向に沿って配置し、ガイドローラ42はトラック2の荷台フレーム21に軸支する。
【0015】
接地輪5は、装置本体1底面末端に左右一対配置する。
【0016】
接地脚6は、装置本体1底面内側のガイドレール41の外側に左右一対・片側3本ずつ配置する。
【0017】
図2と図3に、検査台7の平面図と側面図を示す。
検査台7は、床の中央にマルチテストローラ71を露出し、床の入口と出口に上り勾配と下り勾配の鉄板72を敷設する。これにより検査台7の強度を高めると同時に検査車両9の乗り降りをスムーズにする。マルチテストローラ71は、スピードテスト、ブレーキテスト、サイドスリップテストをマルチで行う。
【0018】
また、両側面にそれぞれ左右一対のフック受け73を取り付け、各々にスロープ板8をフック結合して検査車両9が乗り降りするための坂道を設置する。
スロープ板8は、検査台7との結合部を傾斜させて検査台7への進入角度を平坦にし、検査車両9が乗り降りする際に腹を擦らないようにする。
また、検査台7床上の末端縁にスロープ板8の脱落を防止するテールボード74を植立する。
スロープ板8は、先端をフロントフレーム11の内側に係止し、末端をテールボード74に係止して装置本体1の上方に斜めに架け渡す。これにより縦方向に長いスロープ板8の搬送時の収納を容易にする。
【0019】
フック受け73は、図4に示すように、断面略コ字形に形成し、これにスロープ板8の先端に設けたフック形状のツメ81を引っ掛けてスロープ板8を検査台7に固定する。
これによりスロープ板8の取り付けを前後方向に安定させる。また、フック受け23に幅を持たせてスロープ板8の横方向の取り付け位置を変更できるようにする。これにより検査車両9のホイール間隔に応じて左右のスロープ板8の設置間隔を調整できるようにする。
【0020】
車両検査装置は以上のような構成で、油圧シリンダ32を伸長すると、L字アーム31の力点軸31cが押し上げられて、L字アーム31が支点軸31bを中心に反時計回りに回転し、L字アーム31の作用点軸31aが後方に移動して装置本体1をトラック2の外に押し出す。このときトラック2の荷台フレーム21に軸支したガイドローラ42が遊転して係合するガイドレール41が滑らかにスライドする。これにより底面にガイドレール41を配置した装置本体1を横ずれなしにスムーズに移動させることができる。
【0021】
油圧シリンダ32をさらに伸長すると、装置本体1が後傾して床下に取り付けた接地輪5が先に着地する。着地した後は、接地輪5の遊転とガイドローラ42の遊転が相俟って後傾姿勢の装置本体1がスムーズに後方移動する。
【0022】
油圧シリンダ32が伸長側ストロークエンドに達すると、接地輪5が地上から離れ、代わりに接地脚6が着地して装置本体1を水平に支持する。
【符号の説明】
【0023】
1 装置本体
11 フロントフレーム
2 トラック
21 荷台フレーム
3 アームユニット
31 L字アーム
31a 作用点軸
31b 支点軸
31c 力点軸
32 油圧シリンダ
32a 支点軸
33 プランジャ
4 ローラユニット
41 ガイドレール
42 ガイドローラ
5 接地輪
6 接地脚
7 検査台
71 マルチテストローラ
72 鉄板
73 フック受け
74 テールボード
8 スロープ板
81 ツメ
9 検査車両
A 箱体
B アウトリガージャッキ
C 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に、
装置本体の前面をコ字形に取り囲むフロントフレームと、
検査車両を載せて足回りをテストする検査台と、
装置本体をスライド自在に支持する一方のローラユニットと、
装置本体の後端をスライド自在に支持する接地輪と、
装置本体を水平に支持する接地脚と、
を備え、
トラックの荷台に、
前記フロントフレームの外側に軸接続して装置本体の積み上げ・積み下ろしを行うアームユニットと、
装置本体をスライド自在に支持する他方のローラユニットと、
を備え、
前記装置本体をトラックの荷台に積載して検査場所まで搬送し、
検査場所に到着したら前記アームユニットを操作して装置本体を積み下ろし、
これより検査装置の据え付けを完了し、
検査が終了したら前記アームユニットを操作して装置本体をトラックの荷台に積み上げ、
これより検査場所に設置した検査装置を撤去することを特徴とする車両検査装置。
【請求項2】
前記フロントフレームを柱と梁の各部材を方形に組み合わせて剛接合したラーメン構造としたことを特徴とする請求項1記載の車両検査装置。
【請求項3】
前記フロントフレームの内側に補機類を収納して固定したことを特徴とする請求項1記載の車両検査装置。
【請求項4】
前記検査台の車両の進入口と出口に、
それぞれ上り勾配と下り勾配の鉄板を敷設したことを特徴とする請求項1記載の車両検査装置。
【請求項5】
前記検査台の側面に断面略コ字形のフック受けを取り付け、
このフック受けにスロープ板の先端に設けたフック形状のツメを引っ掛けてスロープ板を検査台に固定したことを特徴とする請求項1記載の車両検査装置。
【請求項6】
前記フック受けに幅を持たせてフック結合する前記スロープ板の横方向の取り付け位置を変更可能にしたことを特徴とする請求項5記載の車両検査装置。
【請求項7】
前記スロープ板の検査台との結合部を傾斜させて検査台への進入角度を平坦にしたことを特徴とする請求項5記載の車両検査装
【請求項8】
前記検査台にテールボードを植立し、
このテールボードにスロープ板の末端を係止し、
スロープ板の先端を前記フロントフレームの内側に係止してスロープ板を装置本体の上に掛け渡し、
これより前記スロープ板を装置本体に収納したことを特徴とする請求項5記載の車両検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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