説明

車両点検用リフトとそれを備えた車検設備

【課題】 車両点検時等に使用する工具類をリフトの下部に配置し、リフト周囲が広く、作業時の工具類使用が簡易で作業性の良い車両点検用リフトを提供すること。
【解決手段】 床面GLから垂直方向に上昇して車両をリフトアップする車載台2と、この車載台2を垂直方向に上昇させた時に床面下から上昇して車載台2の床面部分を床面とほぼ面一にカバーするカバープレート5と、前記車載台2を垂直方向に上昇させた時に車載台2の下面から垂れ下がる工具収納可能なリフト収納ボックス12とを設け、このリフト収納ボックス12を、車載台2が下降してリフト収納ボックス12の下面が前記カバープレート5に当接したら車載台2の下面に向って格納されるクロス型リンク13で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両の点検や整備に使用する車両点検用リフトと、この車両点検用リフトを備えた車検設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の点検や整備を行う場合、車両をリフトアップするための車両点検用リフトが用いられている。この車両点検用リフトには、整備工場等の床面から垂直方向に突出する車載台と、この車載台を突出させたピット開口部を床面とほぼ面一にカバーするカバープレートとが設けられている。このような車両点検用リフトは、車載台を格納した状態では車載台の上面が床面とほぼ面一となるように構成されている。
【0003】
この車両点検用リフトは、例えば、車両の法定点検〔12ヶ月点検、24ヶ月点検(車検含む)〕時や部品交換時等に車両をリフトアップするために用いられる。法定点検時(車検時)を例にすると、この車検時の法定点検項目としては、かじ取り装置や制動装置、走行装置、緩衝装置、動力伝達装置、電気装置、原動機、エグゾースト・パイプ及びマフラ等において、約60項目が定められている。
【0004】
そして、これらの点検項目の中には、車両をリフトアップして行わなければならない項目もある。例えば、制動装置の点検箇所である、ブレーキ・ディスク及びパッドのすき間や摩耗及び損傷等の点検は車両側面から行われ、動力伝達装置の点検箇所である、プロペラ・シャフト及びドライブ・シャフトの連結部の緩みやダスト・ブーツの亀裂や損傷等の点検は車両下面から行われている。そのため、これらの点検時には、前記車両点検用リフトによって車両を作業者の腰部程度の中部位置や頭部よりも上方の上部位置にリフトアップして行われている。
【0005】
また、このような点検は、作業工場によって異なり、1人の作業者が1台の車両を全て点検する場合や、複数の作業者で1台の車両を点検する場合等がある。この点検時には、タイヤの取外しや点検箇所を確認するための工具等が、それぞれの作業者用の工具収納台(工具収納キャディ)に準備され、各作業者が自分の工具収納台を点検箇所近傍へ持って行き、その工具収納台から必要な工具を取り出して点検している。
【0006】
さらに、この点検時には、通常、作業工場の天井から垂れ下がったエアー源を使用するエアー工具や、作業工場の床面をはわせた電源コードを使用する作業灯等も使用される。
【0007】
なお、車検に関する従来技術として、車検時に点検、検査箇所をリアルタイムで確認し、その状態に応じた修理、部品交換等を指示することができ、また検査履歴を用いて、将来的な車両状態を使用者に知らせるフォローアップ機能を備えた車検業務運用方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3571311号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記したように各作業者がそれぞれの工具収納台を使用して車検を行う場合、この工具収納台が点検車両周囲の場所を占有するので車両点検用リフトの周囲に多くのスペースが必要となる。しかも、前記した車検時における約60項目の点検箇所を各作業者が個々の判断で工具台を移動させながら作業毎に工具収納台から工具を取り出して作業を行うと、非常に煩雑な作業となり、1台の車両を点検するために数時間を要する場合がある。このような作業者による点検が、車検時において最も時間を要する部分である。その上、時間を要するので、多くの車両を点検する時期には数日待ちの場合もある。
【0009】
また、このような作業時には、天井から垂れ下がったエアー源を使用したエアー工具を用いたり、床面をはうように設けられた電源コードを使用した作業灯を用いて行われるので、車両の周囲にホースやコード類が散乱した煩雑な状態での作業となっている。
【0010】
さらに、一般的な車検では、その作業は工場内で独自に行われるので、使用者(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、車両の使用者をいう。)がその結果を確認できるのは「定期点検記録簿」と点検工場からの説明のみであり、現実の状況を的確に把握することは難しい。
【0011】
なお、前記特許文献1は、車検時の点検箇所等をリアルタイムで確認して状況に応じた修理、交換作業等を指示したり、使用者が自車の状況を正確に把握できるようにするものであり、その作業時の煩雑さを解消できるようなものではない。
【0012】
そこで、本願発明は、車両点検時等に使用する工具類をリフトの下部に配置し、作業時の工具類使用が簡易で、リフト周囲が広くて作業性の良い車両点検用リフトと、それを備えた車検設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本願発明の車両点検用リフトは、床面から垂直方向に上昇して車両をリフトアップする車載台と、該車載台を垂直方向に上昇させた時に床面下から上昇して該車載台の床面部分を床面とほぼ面一にカバーするカバープレートと、前記車載台を垂直方向に上昇させた時に該車載台の下面から垂れ下がる工具収納可能なリフト収納ボックスとを設け、該リフト収納ボックスを、車載台が下降してリフト収納ボックスの下面が前記カバープレートに当接したら車載台の下面に向ってリフト収納ボックスを格納するリンク部材で支持している。これにより、車検等の車両整備時において、車両をリフトアップした車載台の下部から垂れ下がるリフト収納ボックスに工具等を収納し、車両の側部で迅速な点検整備を行うことができる。このリフト収納ボックスは、車載台を下降させると車載台の下面に格納される。
【0014】
また、前記車両点検用リフトにおいて、前記車載台の下面に上部スライドレールを設け、前記リフト収納ボックスに下部スライドレールを設け、該下部スライドレールと上部スライドレールとに前記リンク部材を設け、前記リフト収納ボックスの上部に、該リフト収納ボックスを車載台の下面に格納した時に前記上部スライドレールとリンク部材とを格納する格納部を形成してもよい。これにより、リフト収納ボックスをコンパクトに格納することができる。
【0015】
一方、本願発明の車検設備は、前記車両点検用リフトを備えた車検設備であって、入庫した車両に対し、前記車両点検用リフトでリフトアップし、該車両点検用リフトに備えたリフト収納ボックス内の工具で車両の両側部から異なる作業者が同時に法定点検を行う点検と、車検時に点検する消耗部品と新品部品とを比較して展示する消耗部品展示部と、該法定点検の状況を作業者が使用者に説明する立ち会い場所とを設けた第1ブースと、該第1ブースで点検した車両に対し、ブレーキ検査と、スピード検査と、排気ガス検査と、ヘッドライト検査とをテスター機器で行う検査と、該検査状況を作業者が使用者に説明する立ち会い場所とを設けた第2ブースとを、車両の進行方向に縦列配置し、前記第1ブースと第2ブースとで行う点検及び検査の状況を作業の流れに沿って外部記録媒体に記録する記録装置を設けている。これにより、作業者が行う点検等を車両点検用リフトでリフトアップした車両の両側部で迅速に行うとともに、その後のテスター機器で行う検査も迅速に行い、しかもこれらの点検・検査を使用者の立ち会いの下で行って、その点検・検査の状況を記録装置で記録するので、透明性の高い迅速な車検を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の車両点検用リフトによれば、点検等を行う時に、車両をリフトアップする車載台の両下部に工具類が装備されているので、迅速な点検整備作業を行うことが可能となる。また、車検設備によれば、迅速な点検作業を行って大幅な時間短縮が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本願発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本願発明に係る車両点検用リフトの一実施形態を示すリフトアップ時の斜視図である。図2は同車両点検用リフトのリフトアップ時を示す図面であり、(a) は正面図、(b) は側面図である。図3(a) は図2(a) に示すA−A拡大断面図であり、(b) は図2(b) に示すB−B拡大断面図である。図4は図1に示す車両点検用リフトのリフトダウン時における床収納ボックスの蓋を開放した状態の平面図である。
【0018】
図1,2に示すように、車両点検用リフト1には、床面GLから所定高さまで上昇する左右2基の車載台2と、これらの車載台2を昇降させる支柱3と、これらの車載台2を上昇させた時に床面下から上昇してきて床面GLのピット4上部を床面GLの表面とほぼ面一にするカバープレート5と、昇降する車載台2の外側側部床内に形成された床収納ボックス6とが備えられている。以下の説明では、両車載台2の対向する中央側を「内側I」、両車載台2の開放された側を「外側O」という。
【0019】
前記車載台2は、左右2基が同期して昇降するように構成されており、同一の構成のものが左右対称配置されている。これらの車載台2は、垂直方向に伸縮する支柱3によって支持されている。この支柱3の昇降は、床面下に設けられた液圧シリンダ7によって同期して行われる。なお、車載台2を液圧シリンダ7で下降させると、この車載台2が前記カバープレート5を床面下に押し下げて、車載台2の上面が床面GLとほぼ面一になる。
【0020】
また、両車載台2の外側部分には、車両に応じて使用するスイングアーム8(図4参照)が設けられている。車載台2のスイングアーム8が設けられた部分は厚く形成され、その内側部分は天板9の厚みのみで形成されている。この車載台2の下面には、エアカプラ10が設けられており、このエアカプラ10に駆動エアを供給するエアホース11がカバープレート5から車載台2の下面まで延びている。このエアホース11は、車載台2の昇降に連動して、カバープレート5の下部に設けられたエアホースリールから繰出し又は巻取られるように構成されている。
【0021】
そして、この車載台2の下部には、この車載台2を上昇させた時に垂れ下がった状態となって使用可能となるリフト収納ボックス12が設けられている。図2(a),(b) にも示すように、このリフト収納ボックス12は、車載台2の長手方向にそれぞれ2個が設けられている。このリフト収納ボックス12は、車載台下部のスイングアーム8が設けられていない天板9の下部の位置のみに設けられている。すなわち、車載台2のスイングアーム8が設けられて厚くなった外側Oを除く内側Iに設けられており、車載台2を上昇させた時に、この車載台2の下面から垂れ下がった状態となるように構成されている。
【0022】
図3にも示すように、このリフト収納ボックス12は、リンク部材たるクロス型リンク13によって車載台2の下面から垂れ下がるように設けられている。クロス型リンク13の車載台内側は、上部は車載台2に設けられた上部支持軸14によって軸支され、下部はリフト収納ボックス12に設けられた下部支持軸15によって軸支されている。クロス型リンク13の車載台外側は、上部は車載台2に設けられた上部スライドレール16に沿って転動するローラ17が設けられ、下部はリフト収納ボックス12に設けられた下部スライドレール18に沿って転動するローラ19が設けられている。上部スライドレール16は、車載台2の下面の、外側Oから内側Iに向けてほぼ水平に設けられ、下部スライドレール18は、リフト収納ボックス12の外側Oから内側Iに向けてほぼ水平に設けられている。この下部スライドレール18は、リフト収納ボックス12の上端から前記上部スライドレール16の高さ分以上で入り込んだ位置に設けられている。また、クロス型リンク13の下部支持軸15も同様に、リフト収納ボックス12の上端から入り込んだ位置に設けられている。
【0023】
したがって、このリフト収納ボックス12は、車載台2が上昇すると、その自重によってクロス型リンク13のローラ17,19が車載台内側に転動し、このローラ17,19が上部スライドレール16に設けられたストッパ20に当接する位置まで下方へ垂れ下がる。
【0024】
つまり、このリフト収納ボックス12は、車載台2の上昇に伴って、車載台2の下部から垂れ下がるようにして出現する。このリフト収納ボックス12が車載台2から垂れ下がる量としては、このリフト収納ボックス12内に設けられる工具類を作業者が取り出したり収納したりし易い寸法に設定され、前記上部スライドレール16に設けられたストッパ20の位置によって決定される。ストッパ20は他の位置に設けても、他の構成であってもよい。
【0025】
また、図3に示すように、リフト収納ボックス12の外側を除く両側部と内側との3面は、所定の間隔で外板21と内板22とが設けられた2重構造となっている。両側部の外板21と内板22との内側間隔は、前記クロス型リンク13が畳まれた時に、このリンク13と上部スライドレール16が入り込む間隔で形成されている。この外板21と内板22との間が、クロス型リンク13等の格納部となる。内側Iの外板21と内板22との内側間隔は、前記クロス型リンク13が畳まれた時に上部の支持軸14が入り込む間隔で形成されている。したがって、クロス型リンク13が畳まれてリフト収納ボックス12が車載台2の下面に近接する格納時(図3(c) )には、上部スライドレール16と上部支持軸14とがリフト収納ボックス12の上端面から入り込んで、上部に形成された格納部に格納されるようになっている。
【0026】
このように、リフト収納ボックス12の高さ(深さ)方向の寸法を、車載台2のスイングアームが設けられた部分の厚みから天板部分の厚みを除いた分とすることにより、車載台2を格納する時にカバープレート5との間に格納できるようにしている。つまり、車載台2の天板9とカバープレート5とのすき間を利用して、リフトアップ時に使用可能となる、深さのあるリフト収納ボックス12を形成している。しかも、車載台2を最下降させた時に、上面が床面GLとほぼ面一になる構成は保たれている。
【0027】
リフト収納ボックス12内には、各種工具類やボディカバー、部品等を収納しておくことができる。また、内部に磁石を置くことにより、工具類や部品類が落下しないようにでき、ゴムマット等を敷くことにより騒音発生も防ぐことができる。
【0028】
このリフト収納ボックス12の形態としては、外側(車載台のスイングアーム側)に開口部23が形成され、内側(車載台の反スイングアーム側)とその両側部の3面が前記内板22で壁が形成され、上部は開放して、下部は底板24で塞がれた形態となっている(図1,2)。しかも、このような構造とすることにより、リフト収納ボックス12の深さを確保しつつ、車載台2の下面の限られた空間を有効利用することができる。
【0029】
図4は図1に示す車両点検用リフトのリフトダウン時における床収納ボックスの蓋を開放した状態の平面図である。図示するように、前記リフト収納ボックス12に加え、昇降する車載台2の外側側部の床面下には、この車載台2の幅寸法とほ同じ寸法で床収納ボックス6が設けられている。この床収納ボックス6は、床面GLから下方に窪むように設けられており、上面には床面GLとほぼ面一になる蓋25が設けられている。26は蓋25を支持するための支持材である。この床収納ボックス6の内部には、エアー工具27やリモコンスイッチ28、作業灯29、リフトアタッチメント30等が収納されており、リフトアップ時に車両の側部で迅速な作業を行うことができる。
【0030】
しかも、このように車載台2の側部に設けられた床収納ボックス6内にエアツール27やリモコンスイッチ28を設けておくことにより、使用時には蓋25を開放して迅速に取り出して作業を行うことができるとともに、作業終了後は床収納ボックス6内に収納して蓋25を閉じれば平滑な床面GLを形成できる。しかも、配管等も床下に設けられるので、作業場所を綺麗に保つことができる。
【0031】
さらに、この床収納ボックス6内には、部品収納ボックス31を収納しておくこともできる。この床収納ボックス6内に部品収納ボックス31を収納しておくことにより、作業時に取外した部品を収納したり、収納しておいた新品部品を取り出して迅速な作業を行うことができる。
【0032】
その上、前記リフト収納ボックス12を車載台2の下面に設けることによって工具類を車載台2に備え付けるとともに、この床収納ボックス6を設けることにより大きな工具やリモコン等を車載台2の側部に備え付けることができるので、車両Mをリフトアップして点検する場合には、その車両Mの側部でリフト操作や工具類の使用/格納を迅速に行って点検することができるので、大幅な作業効率向上を図ることが可能となる。
【0033】
また、使用後の工具類をリフト収納ボックス12に納めて車載台2を下降させれば、このリフト収納ボックス12の下面がカバープレート5の上面に接した時点からクロス型リンク13が畳まれ、リフト収納ボックス12は車載台2の天板9の下部に格納される。この時、リフト収納ボックス12の外板21と内板22との間にクロス型リンク13が入り込むとともに、外板21と内板22との間に上部支持軸14が入り込み、車載台2の下部にリフト収納ボックス12が収った状態にできる。この状態の車載台2の上面は床面GLとほぼ面一になり、床面GLから突出するものはない。
【0034】
図5は図1に示す車両点検用リフトを備えた車検設備を示す平面視の全体図であり、図6は同車検設備の点検検査ブースを示す平面視の全体図である。この車検設備は、車検を受ける使用者が自分の車両の点検及び検査に立ち会って行う、いわゆる立ち会い車検の車検設備である。
【0035】
図5に示すように、この車検設備50には、車両Mを移動させる検査ライン51が示されている。この検査ライン51の上流側には、入庫した車両Mに対し、前記車両点検用リフトで車両Mをリフトアップし、この車両点検用リフト1の両側部から作業者が車両Mに対して法定点検を行う第1ブース52が設けられている。また、この第1ブース52には、車検時に点検する消耗部品の新品部品と摩耗部品とを比較して展示する消耗部品展示部53と、この第1ブース52での法定点検の状況を作業者が使用者に説明する立ち会い場所である座席54とが設けられている。
【0036】
そして、検査ライン51の下流側には、第1ブース52で検査された車両Mに対して、ブレーキ検査とスピード検査と排気ガス検査とヘッドライト検査とをテスター機器で検査する第2ブース55が設けられている。この第2ブース55には、検査状況を作業者が使用者に説明する立ち会い場所となる座席56が設けられている。このように、車検を行う車両Mの進行方向に、第1ブース52と第2ブース55とが縦列配置されている。
【0037】
さらに、前記第1ブース52と第2ブース55とには、これらのブース52,55で行う点検及び検査の状況を作業の流れに沿って外部記録媒体に記録する記録装置が設けられている。この例では、外部記録媒体となるビデオテープに記録するビデオデッキ57が設けられている。なお、58,59は、これらのブース52,55で行われる点検及び検査の状況を映すモニタである。
【0038】
また、この車検設備50には、一連の検査で不良箇所等が発見させれた場合に整備する整備作業場60と、この整備作業場60で整備した車両Mに対して最終検査を行う整備検査場61とが設けられている。
【0039】
図6にも示すように、前記第1ブース52では、前記車両点検用リフト1の車載台2によって車両Mをリフトアップして、いわゆる法定点検箇所の点検及び検査が行われる。また、この第1ブース52には、車両Mをリフトアップした時に車両底面を照らす床ライト62と、この車両底面の前部と後部とを映す床カメラ63とが設けられている。
【0040】
さらに、前記消耗部品展示部53では、例えば、ブレーキディスクの新品部品と摩耗部品とを示し、実際に車検を行っているブレーキディスクの映像をマイクロカメラ64等でモニタ58に映し、検査によって得られた数値等を参照しながら、その状況と展示部品とを比較して交換の要否等が説明される。また、この消耗部品展示部53では、例えば、エンジンオイルやブレーキオイル等も、使用中のオイルと新品のオイルとを呈示し、現在のオイルの状況について説明される。
【0041】
一方、第2ブース55には、入口部にサイドスリップ検査機65が設けられ、その進行方向前方に総合検査機66が設けられている。この総合検査機66は、ブレーキ検査とスピード検査とを行うことができる装置であり、タイヤ載置部67に4輪を載せた状態で検査が可能なように構成されている。この総合検査機66としては、市販品が使用されている。
【0042】
また、第2ブース55には、この総合検査機66に載せた車両Mに対し、排気ガスの検査を行う排気ガス検査機68と、ヘッドライトの検査を行うヘッドライト検査機70とが設けられている。排気ガス検査機68による検査は、作業者が検査部材69をマフラーに挿入することによって行われる。ヘッドライト検査機70による検査は、検査ライン51の側部から車両Mの前部にヘッドライト検査機70が横行し、左右それぞれのヘッドライトに対して検査が行われる。これらの検査機68,70も市販品が使用されている。
【0043】
このように、第1ブース52で行われる作業者による点検及び検査に続いて、第2ブース55でテスター機器による検査を行うようにしているので、これらの点検及び検査を車両の進行方向に順に行って迅速な車検が行える。
【0044】
また、使用者が立ち会う座席54,56の上部には、第1ブース52から第2ブース55にかけて検査ライン51を上部から撮影する2台のカメラ71,72が設けられており、車検状況を上部から撮影できるように構成されている。この実施形態の車検設備50では、前記カメラ71,72を含めこれら5台のカメラを使用し、各点検部を撮影するように構成されている。これらのカメラ71,72で撮影された画像も、前記ビデオデッキ57でビデオテープに記録される。
【0045】
以上のように構成された車検設備50による車検の流れを以下に説明する。なお、このような車検設備50によって車検を行う場合、複数の作業者が役割分担して行うことによって迅速な作業ができるので、以下の説明では3人の作業者によって点検及び検査を行う例を説明する。
【0046】
まず、車両Mを検査ライン51に沿って移動させ、第1ブース52の手前で車両Mを止め、作業者に渡す。作業者は、車両Mを第1ブース52の所定位置まで移動させる。この所定位置は、第1ブース52に設けられた車両点検用リフト1によって車両Mをリフトアップして点検する位置である。
【0047】
この所定位置に移動させられた車両は、この第1ブース52で、いわゆる法定点検箇所の点検及び検査が行われる。この法定点検箇所の点検及び検査時には、検査員が説明しながら、使用者の目の前で作業が行われる。
【0048】
この作業としては、前記車載台2に載せた車両Mをリフトアップすると、この車載台2の前後下部からリフト収納ボックス12が垂れ下がった状態となるため、これらのリフト収納ボックス12内の工具類を使用して、車両Mの両側部で迅速な作業を行うことができる。また、リフトアップ時には、床収納ボックス6内に設けられたリモコンスイッチ28(図4)で所定高さまで車載台2をリフトアップしたり、エアー工具27(図4)を使用したタイヤホイールの取外し等、作業を迅速に行うことができる。しかも、車両Mの両側部に設けられたリフト収納ボックス12(図1)内の工具類やエアー工具等の工具類や作業灯(図4)により、複数の作業者が車両Mの左右両側部でほぼ同時に作業を行えるので、迅速な点検及び検査を行うことができる。
【0049】
車検において、このように作業者が各点検箇所を工具等を用いて点検する作業が最も時間を要する作業であるが、このように車両の両側部でリフト収納ボックス12内の工具類を使用して複数の作業者が左右同時に作業できるようにしているので、作業者の移動量が少なく迅速に行えるので、従来の作業に比べて大幅な時間短縮が可能となる。
【0050】
しかも、この法定点検箇所の点検及び検査時には、作業員が点検及び検査を行いながら無線インカム等を使用して説明しながら使用者の立ち会いの下で作業が行われる。例えば、1人の説明担当作業者が使用するワイヤレスマイクを使用して、他の2人の作業者が、適宜、車両の両側部から点検及び検査箇所を指し示したり、展示された部品を指し示しながら行われる。また、点検箇所に応じて使用されるマイクロカメラ64からの映像がモニタ58,59に映される。このモニタ58,59に映された点検及び検査箇所の映像に基いて、作業者から使用者への説明も行われる。
【0051】
さらに、消耗部品等に関する説明も行われる。例えば、消耗部品展示部53に新品部品と消耗部品とを比較するように展示し、検査によって得られた数値等を使用しながら使用状態が説明される。例えば、ブレーキディスクの新品部品と摩耗部品とを展示し、実際のブレーキディスクの映像をマイクロカメラ64等でモニタ58に映しながら、現在の状況と交換の要否等が説明される。エンジンオイルやブレーキオイル等は、使用中のオイルと新品のオイルとを呈示し、現在のオイルの状況が説明される。これらが第1ブース52で行われる点検及び検査である。
【0052】
そして、この第1ブース52で点検及び検査が終了した車両Mは、作業者によって第2ブース55へと移動させられる。第2ブース55では、この例では、まず入口部に設けられたサイドスリップ検査機65によってサイドスリップ検査が行われる。このサイドスリップ検査が終了すると、車両Mは、総合検査機66へと移動させられる。この総合検査機66では、タイヤ載置部67に4輪を載せた状態で、作業者がブレーキ操作やアクセル操作を行いながら総合検査機66をリモコン操作することにより、ブレーキ検査とスピード検査とが行われる。また、前記サイドスリップ検査機65での検査結果やこの総合検査機66での検査結果等もモニタ58に映し出され、作業者から使用者に説明される。
【0053】
さらに、前記第1ブース52においてモニタ58に映し出された映像や作業者から説明された音声と、この第2ブース55においてモニタ58に映し出された映像と作業員から説明された音声は、その作業の流れに沿ってビデオデッキ57で外部記録媒体となるビデオテープに記録される。
【0054】
このように外部記録媒体となるビデオテープに車検の状況を全て記録することにより、この記録されたビデオテープを車検終了後に使用者に渡すことにより、使用者は自分の車両が車検で点検及び検査された項目を後日確認することができ、消耗部品の適切な時期の交換等を後日確認することができる。また、このようにビデオテープに残すことにより、使用者が車検の一部始終を確認することができるので、車検の透明度を上げることができる。
【0055】
なお、前記実施形態では、第1ブース52と第2ブース55とで点検及び検査した車両Mに部品交換等の整備が不要の場合を例に説明したが、例えば、前記ブレーキパッドが摩耗していた場合等、その部品交換等の作業が必要となる。この場合、前記した第1ブース52と第2ブース55での点検及び検査では部品交換等の作業は行われないので、検査ライン51を通過した車両Mを整備作業場60に移動させて、この整備作業場60で部品交換等の作業が行われる。このようにして、車検時に交換等が必要と判断された部品を交換した後は、整備後の点検及び検査を行う整備検査場61において再度点検及び検査が行われる。このように再検査を行う構成は、図示する例に限定されるものではない。
【0056】
さらに、前記したように、第1ブース52での点検及び検査が終了した車両Mを第2ブース55へと移動させ後は、第2ブース55ではその車両Mに対して検査機器等を使用した検査を行い、第1ブース52へは次の車両Mを搬入して点検及び検査を行うこともできる。この場合、第2ブース55によって行われる機器を使用した点検及び検査は、第1ブース52で行われる作業員による点検及び検査に比べて短時間で終了するため、第2ブース55で同時作業を行っても第1ブース52での作業に影響することはない。
【0057】
しかも、このように作業するブース52,55を移動した車両Mに対する点検及び検査は、それぞれ異なったビデオデッキ57によって記録することにより、それぞれの車両の使用者が、それぞれのブースで立ち会いながら車検を進める状況を記録することができる。このように第1ブース52と第2ブース55とを利用して同時作業を行えば、1つの車検設備50でより多くの車両Mを短時間で車検することができる。
【0058】
なお、前述した実施形態は一例を示しており、本願発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本願発明は前述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本願発明に係る車両点検用リフトは、リフトアップした車両から大きく離れることなく迅速な点検整備を行う必要がある設備等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本願発明に係る車両点検用リフトの一実施形態を示すリフトアップ時の斜視図である。
【図2】図1に示す車両点検用リフトのリフトアップ時を示す図面であり、(a) は正面図、(b) は側面図である。
【図3】(a) は図2(a) に示すA−A拡大断面図であり、(b) は図2(b) に示すB−B拡大断面図、(c) は同B−B断面におけるリフト収納ボックス格納状態を示す断面図である。
【図4】図1に示す車両点検用リフトのリフトダウン時における床収納ボックスの蓋を開放した状態の平面図である。
【図5】図1に示す車両点検用リフトを備えた車検設備を示す平面視の全体図である。
【図6】図5に示す車検設備の点検検査ブースを示す平面視の全体図である。
【符号の説明】
【0061】
1…車両点検用リフト
2…車載台
3…支柱
4…ピット
5…カバープレート
6…床収納ボックス
7…液圧シリンダ
8…スイングアーム
9…天板
10…エアカプラ
11…エアホース
12…リフト収納ボックス
13…クロス型リンク
14…支持軸
15…支持軸
16…上部スライドレール
17…ローラ
18…下部スライドレール
19…ローラ
20…ストッパ
21…外板
22…内板
23…開口部
24…底板
25…蓋
27…エアー工具
28…リモコンスイッチ
50…車検設備
51…検査ライン
52…第1ブース
53…消耗部品展示部
54,56…座席
55…第2ブース
57…ビデオデッキ
58,59…モニタ
60…整備作業場
61…整備検査場
62…床ライト
63…床カメラ
64…マイクロカメラ
65…サイドスリップ検査機
66…総合検査機
67…タイヤ載置部
68…排気ガス検査機
70…ヘッドライト検査機
71,72…カメラ
GL…床面
M…車両


【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面から垂直方向に上昇して車両をリフトアップする車載台と、該車載台を垂直方向に上昇させた時に床面下から上昇して該車載台の床面部分を床面とほぼ面一にカバーするカバープレートと、前記車載台を垂直方向に上昇させた時に該車載台の下面から垂れ下がる工具収納可能なリフト収納ボックスとを設け、該リフト収納ボックスを、車載台が下降してリフト収納ボックスの下面が前記カバープレートに当接したら車載台の下面に向ってリフト収納ボックスを格納するリンク部材で支持した車両点検用リフト。
【請求項2】
前記車載台の下面に上部スライドレールを設け、前記リフト収納ボックスに下部スライドレールを設け、該下部スライドレールと上部スライドレールとに前記リンク部材を設け、前記リフト収納ボックスの上部に、該リフト収納ボックスを車載台の下面に格納した時に前記上部スライドレールとリンク部材とを格納する格納部を形成した請求項1記載の車両点検用リフト。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両点検用リフトを備えた車検設備であって、
入庫した車両に対し、
前記車両点検用リフトでリフトアップし、該車両点検用リフトに備えたリフト収納ボックス内の工具で車両の両側部から異なる作業者が同時に法定点検を行う点検と、車検時に点検する消耗部品の新品部品と摩耗部品とを比較して展示する消耗部品展示部と、該法定点検の状況を作業者が使用者に説明する立ち会い場所とを設けた第1ブースと、
該第1ブースで点検した車両に対し、ブレーキ検査と、スピード検査と、排気ガス検査と、ヘッドライト検査とをテスター機器で行う検査と、該検査状況を作業者が使用者に説明する立ち会い場所とを設けた第2ブースとを、
車両の進行方向に縦列配置し、
前記第1ブースと第2ブースとで行う点検及び検査の状況を作業の流れに沿って外部記録媒体に記録する記録装置を設けた車検設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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