説明

車両用アウトサイドミラー装置

【課題】ミラーアセンブリをシャフトにガタ無く傾倒可能に取り付けることが重要である。
【解決手段】この発明は、クラッチ機構8のノッチ部材15の筒部20の内周面がシャフト3の外周面に、かつ、クラッチ機構8のノッチ部材15の筒部20の外周面がミラーアセンブリ4の収納部9の内周面に、それぞれ接触している。この結果、この発明は、クラッチ機構8のノッチ部材15の筒部20により、ミラーアセンブリ4をシャフト3にガタ無く傾倒可能に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーアセンブリが車体に対して可倒(回転、回動)可能である車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。すなわち、この発明は、たとえば、手動格納型のドアミラーや電動格納型のドアミラーなどの車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用アウトサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用アウトサイドミラー装置について説明する。従来の車両用アウトサイドミラー装置は、ドアに固定されるミラーベースと、そのミラーベースに固定されているシャフトと、そのシャフトに可倒可能に取り付けられているミラー本体部と、シャフトとミラー本体部との間に設けられているクラッチ機構と、を備えるものである。そして、従来の車両用アウトサイドミラー装置は、通常、クラッチ機構の嵌合状態により、ミラー本体部が使用位置に位置し、ミラー本体部に外力がかかると、クラッチ機構の嵌合状態が外れて、ミラー本体部がシャフト回りに回転して、緩衝作用が働く。
【0003】
かかる車両用アウトサイドミラー装置においては、車両の振動などによりミラー本体部のミラー面(鏡面)がぶれないように、ミラー本体部をシャフトにガタ無く傾倒可能に取り付けることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−254969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、ミラー本体部(ミラーアセンブリ)をシャフトにガタ無く傾倒可能に取り付けることが重要であるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、車体に固定されるベースと、ベースに固定されているシャフトと、シャフトに可倒可能に取り付けられているミラーアセンブリと、シャフトとミラーアセンブリとの間に設けられているクラッチ機構と、を備え、ミラーアセンブリにはシャフトの回転中心回りに回転可能にシャフトに外から嵌合する収納部が設けられていて、クラッチ機構がノッチ部材を備え、ノッチ部材がノッチ部と筒部とから構成されていて、ノッチ部が、ミラーアセンブリ側またはシャフト側に設けられているノッチ部と嵌合することによりミラーアセンブリを使用位置に位置させ、かつ、ミラーアセンブリに外力がかかるとミラーアセンブリ側のノッチ部またはシャフト側のノッチ部との嵌合状態が外れてミラーアセンブリをシャフトの回転中心回りに回転可能とし、筒部の内周面がシャフトの外周面に、かつ、筒部の外周面がミラーアセンブリの収納部の内周面に、それぞれ接触している、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、ノッチ部材の筒部が断面非円形をなす、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、ノッチ部材の筒部が断面円形をなす、ことを特徴とする。
【0009】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)は、ノッチ部材の筒部が断面円形をなし、ノッチ部材の筒部の内周面、シャフトの外周面のうち少なくともいずれか一方には相手の面に線接触する凸部が設けられていて、ノッチ部材の筒部の外周面、ミラーアセンブリの収納部の内周面のうち少なくともいずれか一方には相手の面に線接触する凸部が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチ機構のノッチ部材の筒部の内周面がシャフトの外周面に、かつ、クラッチ機構のノッチ部材の筒部の外周面がミラーアセンブリの収納部の内周面に、それぞれ接触している。このために、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラーアセンブリをクラッチ機構のノッチ部材の筒部を介してシャフトにガタ無く傾倒可能に取り付けることができる。これにより、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、車両の振動などによりミラーアセンブリのミラー面(鏡面)がぶれるのを防ぐことができる。
【0011】
しかも、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチ機構のノッチ部材の筒部により、ミラーアセンブリをシャフトにガタ無く傾倒可能に取り付けるものであるから、別個の部品を設ける必要が無い。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、別個の部品でミラーアセンブリをシャフトにガタ無く傾倒可能に取り付けるミラー装置と比較して、部品点数を軽減でき、かつ、製造コストを安価にすることができる。
【0012】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ノッチ部材の断面非円形の筒部が円柱形状もしくは円筒形状のシャフトの外周面とミラーアセンブリの断面円環形状の収納部(円筒部)の内周面との間に介在する。このために、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ノッチ部材の断面非円形の筒部の内周面が円柱形状もしくは円筒形状のシャフトの外周面に倣って確実に接触し、かつ、ノッチ部材の断面非円形の筒部の外周面がミラーアセンブリの断面円環形状の収納部(円筒部)の内周面に倣って確実に接触する。これにより、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラーアセンブリをクラッチ機構のノッチ部材の筒部を介してシャフトに確実にガタ無く傾倒可能に取り付けることができ、車両の振動などによりミラーアセンブリのミラー面(鏡面)がぶれるのを確実に防ぐことができる。
【0013】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ノッチ部材の断面円形の筒部が円柱形状もしくは円筒形状のシャフトの外周面とミラーアセンブリの断面円環形状の収納部(円筒部)の内周面との間に介在する。このために、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ノッチ部材の断面円形の筒部の内周面と円柱形状もしくは円筒形状のシャフトの外周面との間の摺動(シャフトの回転中心回りの回転摺動)、あるいは、ノッチ部材の断面円形の筒部の外周面とミラーアセンブリの断面円環形状の収納部(円筒部)の内周面との間の摺動(シャフトの回転中心回りの回転摺動)が滑らかに(スムーズに)行われる。
【0014】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、凸部がノッチ部材の筒部の内周面、シャフトの外周面のうち少なくともいずれか一方に確実に線接触し、かつ、凸部がノッチ部材の筒部の外周面、ミラーアセンブリの収納部の内周面のうち少なくともいずれか一方に確実に線接触する。この結果、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラーアセンブリをクラッチ機構のノッチ部材の筒部を介してシャフトに確実にガタ無く傾倒可能に取り付けることができ、車両の振動などによりミラーアセンブリのミラー面(鏡面)がぶれるのを確実に防ぐことができる。
【0015】
しかも、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ノッチ部材の断面円形の筒部の内周面と円柱形状もしくは円筒形状のシャフトの外周面との間、および、ノッチ部材の断面円形の筒部の外周面とミラーアセンブリの断面円環形状の収納部(円筒部)の内周面との間には、線接触する凸部が介在する。このために、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ノッチ部材の断面円形の筒部の内周面と円柱形状もしくは円筒形状のシャフトの外周面との間の摺動(シャフトの回転中心回りの回転摺動)、あるいは、ノッチ部材の断面円形の筒部の外周面とミラーアセンブリの断面円環形状の収納部(円筒部)の内周面との間の摺動(シャフトの回転中心回りの回転摺動)が滑らかに(スムーズに)行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例1を示す使用状態の平面図である。
【図2】図2は、同じく、図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図3は、同じく、ノッチ部材を示す斜視図である。
【図4】図4は、同じく、図3におけるIV矢視図(ノッチ部材の正面図)である。
【図5】図5は、同じく、図4におけるV矢視図(ノッチ部材の平面図)である。
【図6】図6は、同じく、図4におけるVI矢視図(ノッチ部材の底面図)である。
【図7】図7は、同じく、図5におけるVII−VII線断面図(ノッチ部材の断面図)である。
【図8】図8は、同じく、図2におけるVIII−VIII線矢視図(ミラーハウジングの一部底面図)である。
【図9】図9は、同じく、シャフトおよびシャフトホルダを示す斜視図である。
【図10】図10は、同じく、シャフトおよびシャフトホルダとミラーハウジングとノッチ部材とを示す分解説明図である。
【図11】図11は、同じく、シャフトおよびシャフトホルダとミラーハウジングとノッチ部材とを示す組付状態説明図である。
【図12】図12は、同じく、図11におけるXII−XII線断面図(シャフトおよびシャフトホルダとミラーハウジングとノッチ部材との組付状態断面図)である。
【図13】図13は、同じく、ノッチ部材とシャフトホルダとの嵌合状態が外れてノッチ部材がミラーアセンブリと共に時計方向に回転する状態を示す説明図である。
【図14】図14は、同じく、ノッチ部材とシャフトホルダとの嵌合状態が外れてノッチ部材がミラーアセンブリと共に反時計方向に回転する状態を示す説明図である。
【図15】図15は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例2を示すノッチ部材の筒部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
「構成の説明」
図1〜図14は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例1を示す。なお、図5におけるVII−VII線断面図(ノッチ部材の断面図)である図7は、図解上、上下(天地)逆に図示されている。以下、この実施例1における車両用アウトサイドミラー装置の構成について説明する。
【0019】
図1において、符号1は、この実施例1における車両用アウトサイドミラー装置であって、この例では、手動格納式ドアミラー装置(手動格納型のドアミラー)である。前記手動格納式ドアミラー装置1は、自動車の左右のドアにそれぞれ装備される。なお、この実施例1の手動格納式ドアミラー装置1は、自動車の右側のドアに装備されるものである。自動車の左側のドアに装備される手動格納式ドアミラー装置は、この実施例1の手動格納式ドアミラー装置1とほぼ左右が逆となる。図1において、符号Eは車両の後方、符号Fは車両の前方である。
【0020】
前記手動格納式ドアミラー装置1は、図1、図2に示すように、車体(自動車のドア)Dに固定されるベース(ミラーベース)2と、前記ベース2に固定されているシャフト3と、前記シャフト3に可倒可能に取り付けられているミラーアセンブリ4と、固定側の前記シャフト3と回転側の前記ミラーアセンブリ4との間に設けられているクラッチ機構8と、を備えるものである。
【0021】
前記ミラーアセンブリ4は、図1、図2に示すように、ミラーハウジング5と、パワーユニット(図示せず)と、図示しないミラー(ミラーユニット)と、から構成されている。前記ミラーハウジング5は、取付ブラケットを兼用する本体部6と、前記本体部6に取り付けられているカバー部7と、から構成されている。前記本体部6には、前記パワーユニットが取り付けられている。前記パワーユニットには、前記ミラーが上下左右に傾動可能に取り付けられている。
【0022】
前記ミラーアセンブリ4の前記本体部6には、前記シャフト3の回転中心O−O回りに回転可能に前記シャフト3に外から嵌合(外嵌)する収納部9が一体に設けられている。前記収納部9は、図2、図8、図10、図11、図12に示すように、断面円環形状の円筒部をなす。図8、図10に示すように、前記収納部9の一端面(下端面)には、1個もしくは複数個、この例では、3個の固定凸部10が等間隔(等開角度)に一体に設けられている。なお、図10に示す前記固定凸部10は、図解上二点鎖線で図示されている。
【0023】
前記シャフト3は、図2、図9、図10に示すように、中空の円筒形状をなしていて、ハーネス(図示せず)が挿通するように構成されている。前記シャフト3の上端部には、溝11が設けられている。前記シャフト3の下端部には、シャフトホルダ12が一体に設けられている。
【0024】
前記シャフトホルダ12の一面(上面)には、1個もしくは複数個、この例では、3個のクラッチ凹部13が等間隔(等開角度)に一体に設けられている。前記クラッチ凹部13は、底部と、傾斜両側部と、から構成されている。前記シャフト3の前記シャフトホルダ12は、前記ベース2にスクリュー(図示せず)などにより固定されている。前記ベース2は、前記ドアDに固定されるものである。前記ベース2の下部には、カバー14が取り付けられている。
【0025】
前記シャフト3には、前記ミラーアセンブリ4の前記収納部9が前記シャフト3の回転中心O−O回りに回転可能に外嵌する。この結果、前記ミラーアセンブリ4は、前記シャフト3に傾倒可能に取り付けられ、かつ、前記ドアDに傾倒可能に取り付けられる。
【0026】
前記クラッチ機構8は、図2に示すように、ノッチ部材15と、ワッシャ16と、スプリング17と、プッシュナット18と、を備えるものである。前記クラッチ機構8は、固定側の前記シャフト3と回転側の前記ミラーアセンブリ4との間に設けられている。前記クラッチ機構8は、前記ミラーアセンブリ4を使用位置Aに位置させ、かつ、前記ミラーアセンブリ4に外力がかかると、緩衝のために、前記ミラーアセンブリ4を前記シャフト3の回転中心O−O回りに回転させるものである。
【0027】
前記ノッチ部材15は、固定側の前記シャフト3と回転側の前記ミラーアセンブリ4の前記収納部9との間に介在されている。前記ノッチ部材15は、前記クラッチ機構8のトルクを安定させるものである。
【0028】
前記ワッシャ16は、前記ミラーアセンブリ4の前記収納部9と前記スプリング17との間に介在されている。前記ワッシャ16は、前記ミラーアセンブリ4が前記シャフト3に対して円滑(スムーズ)に回転するためのものである。
【0029】
前記スプリング17は、前記シャフト3に外嵌し、かつ、固定側の前記シャフト3の前記プッシュナット18と回転側の前記ミラーアセンブリ4の前記収納部9の前記ワッシャ16との間に介在されている。前記スプリング17は、車両の走行中などにおいて、前記ミラーアセンブリ4のミラー面(鏡面)がぶれないように、適度の保持力を得るためのものである。
【0030】
前記プッシュナット18は、前記シャフト3の前記溝11に係合固定されている。前記プッシュナット18は、前記スプリング17の弾性力を保持するものである。
【0031】
前記ノッチ部材15は、可撓性を有し、かつ、低摩擦で耐摩耗性の部材であって安価な樹脂部材、たとえば、POM(ポリアセタール、アセタール樹脂)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)から構成されている。前記ノッチ部材15は、図3〜図7に示すように、ノッチ部19と、筒部20と、から構成されている。
【0032】
前記筒部20は、断面円形の円筒形状をなす。前記筒部20の一端部(下端部)には、前記ノッチ部19が一体に設けられている。
【0033】
前記ノッチ部19の一面(上面)側には、前記ミラーアセンブリ4の前記収納部9の前記固定凸部10が嵌合固定する固定凹部21が、設けられている。前記固定凹部21は、前記固定凸部10と対応して、1個もしくは複数個、この例では、3個等間隔(等開角度)に設けられている。前記ノッチ部材15の前記ノッチ部19の前記固定凹部21には、前記ミラーアセンブリ4の前記収納部9の前記固定凸部10が嵌合固定されている。
【0034】
前記ノッチ部19の他面(下面)側には、前記シャフト3の前記シャフトホルダ12の前記クラッチ凹部13が嵌合するクラッチ凸部22が、一体に設けられている。前記クラッチ凸部22は、前記クラッチ凹部13と対応して、1個もしくは複数個、この例では、3個等間隔(等開角度)に設けられている。前記クラッチ凸部22は、山部と、傾斜両側部と、から構成されている。前記ノッチ部材15の前記ノッチ部19の前記クラッチ凸部22には、前記シャフト3の前記シャフトホルダ12の前記クラッチ凹部13が断続可能に嵌合している。
【0035】
前記ノッチ部材15の前記筒部20の内周面および外周面には、1本もしくは複数本、この例では、6本の凸部(ビード部)23および24が、軸方向(前記シャフト3の回転中心O−O方向)に前記筒部21の他端(上端)から一端の途中まで等間隔(等開角度)にそれぞれ一体に設けられている。前記ノッチ部材15の前記筒部21の前記内周面の前記凸部23は、図12に示すように、前記シャフト3の外周面にラップして接触している。前記ノッチ部材15の前記筒部21の前記外周面の凸部24は、同じく、図12に示すように、前記ミラーアセンブリ4の前記収納部9の内周面にラップして接触している。
【0036】
「作用の説明」
この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0037】
通常、図11に示すように、クラッチ機構8のクラッチ凸部22とシャフト3のクラッチ凹部13とが相互に嵌合していて、ミラーアセンブリ4は、図1に示すように、使用位置Aに位置する。使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を手動により時計方向に回転させようとする。すると、図13に示すように、クラッチ機構8のクラッチ凸部22とシャフト3のクラッチ凹部13との嵌合状態が外れる。この結果、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから後方格納位置(後方傾倒位置)Bに回転して格納される。
【0038】
また、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を手動により反時計方向に回転させようとする。すると、図14に示すように、クラッチ機構8のクラッチ凸部22とシャフト3のクラッチ凹部13との嵌合状態が外れる。この結果、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから前方傾倒位置Cに回転して格納される。
【0039】
さらに、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4に時計方向の外力がかかると、図13に示すように、クラッチ機構8のクラッチ凸部22とシャフト3のクラッチ凹部13との嵌合状態が外れる。この結果、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから後方格納位置(後方傾倒位置)Bに回転傾倒して緩衝される。
【0040】
さらにまた、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4に反時計方向の外力がかかると、図14に示すように、クラッチ機構8のクラッチ凸部22とシャフト3のクラッチ凹部13との嵌合状態が外れる。この結果、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから前方傾倒位置Cに回転傾倒して緩衝される。
【0041】
それから、後方格納位置(後方傾倒位置)Bあるいは前方傾倒位置Cに位置するミラーアセンブリ4を手動により反時計方向あるいは時計方向に回転させることにより、図11に示すように、クラッチ機構8のクラッチ凸部22とシャフト3のクラッチ凹部13とが相互に嵌合していて、ミラーアセンブリ4は、図1に示すように、使用位置Aに復帰位置する。
【0042】
そして、ミラーアセンブリ4がシャフト3の回転中心O−O回りに回転する際には、ミラーアセンブリ4の収納部9とクラッチ機構8のノッチ部材15とは、一体に固定されているので、共にシャフト3の回転中心O−O回りに回転する。このとき、図12に示すように、低摩擦の樹脂部材からなるノッチ部材15の筒部20の内周面の凸部23とシャフト3の外周面とがラップして接触しているので、前記の回転は、円滑(スムーズ)に行われる。
【0043】
「効果の説明」
この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0044】
この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、クラッチ機構8のノッチ部材15の筒部20の内周面(内周面の凸部23)がシャフト3の外周面に、かつ、クラッチ機構8のノッチ部材15の筒部20の外周面(外周面の凸部24)がミラーアセンブリ4の収納部9の内周面に、それぞれラップして接触している。このために、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4をクラッチ機構8のノッチ部材15の筒部20を介してシャフト3にガタ無く傾倒可能に取り付けることができる。これにより、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、車両の振動などによりミラーアセンブリ4のミラー面(鏡面)がぶれるのを防ぐことができる。
【0045】
しかも、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、クラッチ機構8のノッチ部材15の筒部20により、ミラーアセンブリ4をシャフト3にガタ無く傾倒可能に取り付けるものであるから、別個の部品を設ける必要が無い。この結果、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、別個の部品でミラーアセンブリをシャフトにガタ無く傾倒可能に取り付けるミラー装置と比較して、部品点数を軽減でき、かつ、製造コストを安価にすることができる。
【0046】
さらに、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、ノッチ部材15の断面円形の筒部20が円柱形状もしくは円筒形状のシャフト3の外周面とミラーアセンブリ4の断面円環形状の収納部(円筒部)9の内周面との間に介在する。このために、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、ノッチ部材15の断面円形の筒部20の内周面と円柱形状もしくは円筒形状のシャフト3の外周面との間の摺動(シャフト3の回転中心O−O回りの回転摺動)が滑らかに(スムーズに)行われる。
【0047】
さらにまた、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、ノッチ部材15の筒部20の内周面の凸部23がシャフト3の外周面にラップして確実に線接触し、かつ、ノッチ部材15の筒部20の外周面の凸部24がミラーアセンブリ4の収納部9の内周面にラップして確実に線接触する。この結果、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4をクラッチ機構8のノッチ部材15の筒部20を介してシャフト3に確実にガタ無く傾倒可能に取り付けることができ、車両の振動などによりミラーアセンブリ4のミラー面(鏡面)がぶれるのを確実に防ぐことができる。
【0048】
しかも、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、ノッチ部材15の断面円形の筒部20の内周面と円柱形状もしくは円筒形状のシャフト3の外周面との間、および、ノッチ部材15の断面円形の筒部20の外周面とミラーアセンブリ4の断面円環形状の収納部(円筒部)9の内周面との間には、線接触する凸部23、24がそれぞれ介在する。このために、この実施例1における手動格納式ドアミラー装置1は、ノッチ部材15の断面円形の筒部20の内周面と円柱形状もしくは円筒形状のシャフト3の外周面との間の摺動(シャフト3の回転中心O−O回りの回転摺動)、あるいは、ノッチ部材15の断面円形の筒部20の外周面とミラーアセンブリ4の断面円環形状の収納部(円筒部)9の内周面との間の摺動(シャフト3の回転中心O−O回りの回転摺動)が滑らかに(スムーズに)行われる。
【実施例2】
【0049】
図15は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例2を示す。図中、図1〜図14と同符号は、同一のものを示す。前記の実施例1は、ノッチ部材15の筒部20が断面円形の円筒形状からなるものである。ところが、この実施例2は、ノッチ部材15の筒部25は、断面非円形、この例では、波打つ筒形状からなるものである。
【0050】
この実施例2の車両用アウトサイドミラー装置は、前記の実施例1の車両用アウトサイドミラー装置の作用効果とほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施例2における手動格納式ドアミラー装置1は、ノッチ部材15の断面非円形の筒部25が円柱形状もしくは円筒形状のシャフト3の外周面とミラーアセンブリ4の断面円環形状の収納部(円筒部)9の内周面との間に介在する。このために、この実施例2における手動格納式ドアミラー装置1は、ノッチ部材15の断面非円形の筒部25の内周面が円柱形状もしくは円筒形状のシャフト3の外周面に倣って確実に接触し、かつ、ノッチ部材15の断面非円形の筒部25の外周面がミラーアセンブリ4の断面円環形状の収納部(円筒部)9の内周面に倣って確実に接触する。これにより、この実施例2における手動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4をクラッチ機構8のノッチ部材15の筒部25を介してシャフト3に確実にガタ無く傾倒可能に取り付けることができ、車両の振動などによりミラーアセンブリ4のミラー面(鏡面)がぶれるのを確実に防ぐことができる。
【0051】
「実施例1、2以外の例の説明」
なお、前記の実施例1、2においては、手動格納式のドアミラー装置について説明するものである。ところが、この発明においては、手動格納式のドアミラー装置以外の車両用アウトサイドミラー装置にも適用できる。たとえば、手動格納式の車両用フェンダミラー装置、あるいは、手動格納式のトラックミラー装置などの手動格納式の車両用アウトサイドミラー装置に適用することができる。
【0052】
また、前記の実施例1、2においては、手動格納式のドアミラー装置について説明するものである。ところが、この発明においては、手動格納式のドアミラー装置以外の車両用アウトサイドミラー装置にも適用できる。たとえば、電動格納式のドアミラー装置、あるいは、電動格納式の車両用フェンダミラー装置、あるいは、電動格納式のトラックミラー装置などの電動格納式の車両用アウトサイドミラー装置に適用することができる。
【0053】
前記の電動格納式の場合においては、ノッチ部材15が回転側の電動格納ユニットのケーシングと固定側のシャフトとの間に介在されている。また、前記の電動格納式の場合においては、ノッチ部材15を有するクラッチ機構8のほかに、クラッチギアとクラッチホルダからなる第2のクラッチ機構を備える場合がある。
【0054】
さらに、前記の実施例1、2においては、ノッチ部材15がミラーアセンブリ4と共にシャフト3に対して一体に回転するものである。ところが、この発明においては、ノッチ部材がシャフトと一体となって回転せずに、ミラーアセンブリのみが回転するものであっても良い。
【0055】
さらにまた、前記の実施例1においては、ノッチ部材15の筒部20の内周面に、シャフト3の外周面に線接触する凸部23が設けられているものである。ところが、この発明においては、シャフトの外周面に、ノッチ部材の筒部の内周面に線接触する凸部を設けても良いし、ノッチ部材の筒部の内周面およびシャフトの外周面に相手の面(シャフトの外周面およびノッチ部材の筒部の内周面)に線接触する凸部を設けても良い。
【0056】
さらにまた、前記の実施例1においては、ノッチ部材15の筒部20の外周面に、ミラーアセンブリ4の収納部9の内周面に線接触する凸部24が設けられているものである。ところが、この発明においては、ミラーアセンブリの収納部の内周面に、ノッチ部材の筒部の外周面に線接触する凸部を設けても良いし、ノッチ部材の筒部の外周面およびミラーアセンブリの収納部の内周面に相手の面(ミラーアセンブリの収納部の内周面およびノッチ部材の筒部の外周面)に線接触する凸部を設けても良い。
【0057】
さらにまた、前記の実施例2においては、ノッチ部材15の筒部25が波打つ筒形状からなるものである。ところが、この発明においては、ノッチ部材の筒部が断面非円形であれば良い。たとえば、断面三角形や断面多角形や断面長円形や断面楕円形など。
【符号の説明】
【0058】
1 手動格納式ドアミラー装置(車両用アウトサイドミラー装置)
2 ベース(ミラーベース)
3 シャフト
4 ミラーアセンブリ
5 ミラーハウジング
6 本体部
7 カバー部
8 クラッチ機構
9 収納部
10 固定凸部
11 溝
12 シャフトホルダ
13 クラッチ凹部
14 カバー
15 ノッチ部材
16 ワッシャ
17 スプリング
18 プッシュナット
19 ノッチ部
20 筒部
21 固定凹部
22 クラッチ凸部
23 内周面の凸部
24 外周面の凸部
25 筒部
A 使用位置
B 後方格納位置(後方傾倒位置)
C 前方傾倒位置
D ドア(車体)
E 車両の後方
F 車両の前方
O−O シャフトの回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーアセンブリが車体に対して可倒可能である車両用アウトサイドミラー装置において、
前記車体に固定されるベースと、
前記ベースに固定されているシャフトと、
前記シャフトに可倒可能に取り付けられている前記ミラーアセンブリと、
前記シャフトと前記ミラーアセンブリとの間に設けられているクラッチ機構と、
を備え、
前記ミラーアセンブリには、前記シャフトの回転中心回りに回転可能に前記シャフトに外から嵌合する収納部が設けられていて、
前記クラッチ機構は、ノッチ部材を備え、
前記ノッチ部材は、ノッチ部と、筒部と、から構成されていて、
前記ノッチ部は、前記ミラーアセンブリ側または前記シャフト側に設けられているノッチ部と嵌合することにより前記ミラーアセンブリを使用位置に位置させ、かつ、前記ミラーアセンブリに外力がかかると前記ミラーアセンブリ側のノッチ部または前記シャフト側のノッチ部との嵌合状態が外れて前記ミラーアセンブリを前記シャフトの回転中心回りに回転可能とし、
前記筒部の内周面が前記シャフトの外周面に、かつ、前記筒部の外周面が前記ミラーアセンブリの前記収納部の内周面に、それぞれ接触している、
ことを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項2】
前記ノッチ部材の前記筒部は、断面非円形をなす、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項3】
前記ノッチ部材の前記筒部は、断面円形をなす、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項4】
前記ノッチ部材の前記筒部は、断面円形をなし、
前記ノッチ部材の前記筒部の内周面、前記シャフトの外周面のうち少なくともいずれか一方には、相手の面に線接触する凸部が設けられていて、
前記ノッチ部材の前記筒部の外周面、前記ミラーアセンブリの前記収納部の内周面のうち少なくともいずれか一方には、相手の面に線接触する凸部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−126222(P2012−126222A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278575(P2010−278575)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】