説明

車両用アンテナの取り付け構造

【課題】ルーフパネルとルールレールインナとが取着される箇所の剛性を確保しつつ車両の高さ方向における省スペース化を図り、接着剤の使用量を抑制する。
【解決手段】ルーフパネル12の下方にルーフレールインナ20が配置され、ルーフレールインナ20の前部に車幅方向に延在する前フランジ22が設けられている。ルーフパネル14にルーフパネル側取り付け凹部32が設けられている。前フランジ22に、ルーフパネル側取り付け凹部32に下方から重ねられるフランジ側取り付け凹部34が設けられている。フランジ側取り付け凹部34の車幅方向両側の前フランジ22の部分は、接着剤2でルーフパネル14に取着されている。フランジ側取り付け凹部34は、ルーフパネル側取り付け凹部32に重ねられ、アンテナベース24に設けられた雄ねじ部材30とナット36によりルーフパネル12を挟んでフランジ側取り付け凹部34に締結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用アンテナの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
FM放送、テレビ放送、携帯電話、GPSなどの電波を受信する車両用アンテナは、ルーフ基本面から突出しており車両の高さを決める部分であり、主にルーフパネルの前部または後部に取り付けられる場合が多い(特許文献1参照)。この車両用アンテナは、ルーフパネルに取り付けられるアンテナベースと、アンテナベースから上方に突設されたアンテナ本体とを備えている。
一方、車室の後部寄りでルーフパネルの下方にルーフレールインナが配置され、ルーフレールインナはルーフパネルに取着されているものも存在する(特許文献2参照)。
この場合、ルーフレールインナとルーフパネルとをスポット溶接すると、意匠面であるルーフパネルの見栄えを損ねることから、ルーフパネルとルーフレールインナとを接着剤(マスチックシーラ)で接着して取着する構造が採用されている。なお、この接着剤(マスチックシーラ)は比較的高価である。
ところで、車両用アンテナをルーフパネルの後部に配置する場合、取り付け構造の簡略化を図るため、アンテナベースをルーフパネルのうちルーフレールインナに取着されていない箇所に取着することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−57653号公報
【特許文献2】特開2003−118635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の車両用アンテナの取り付け構造では、ルーフレールインナと接合されていない剛性が低いルーフパネルの箇所にアンテナベースが取着されることからアンテナに外力が作用した場合に、ルーフパネルが変形しやすいことが懸念される。
また、アンテナ本体をアンテナベースから取り外したとしても、アンテナベースがルーフパネルの上面から突出することから、アンテナベースがルーフパネルの上方に余分なスペースを占有することになる。したがって、空力の悪化や車両を船で運搬する場合の容量増加、あるいは、立体駐車場で駐車する場合の制限などを鑑み、アンテナベースを含む車両の高さ方向のスペースをなるべく縮小することが望まれている。
また、ルーフパネルとルールレールインナとが取着される箇所の剛性を確保しつつ比較的高価な接着剤の使用量を抑制できればコストを低減する上で有利となる。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、ルーフパネルとルールレールインナとが取着される箇所の剛性を確保しつつ車両の高さ方向における省スペース化を図れ、しかも接着剤の使用量を抑制することができる車両用のアンテナ取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、車室の上方に配置されたルーフパネルと、車室の上方で前記ルーフパネルの下方に配置されたルーフレールインナと、前記ルーフパネルに取り付けられたアンテナベースを有する車両において、前記車室の後部の上方の前記ルーフパネルにルーフパネル側取り付け凹部が設けられ、前記ルーフパネル側取り付け凹部にて、前記ルーフパネル側取り付け凹部を挟み、前記アンテナベースと前記ルーフレールインナとが固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、車両用アンテナは、ルーフレールインナに結合されたルーフパネルの箇所に取着されるため、車両用アンテナが取着されたルーフパネルの箇所は剛性が確保される。また、車両用アンテナをルーフパネル側取り付け凹部に収容し取着することから、アンテナベースがルーフパネルの上方に余分なスペースを占有することもなく、車両の高さ方向における省スペース化を図る上で有利となる。さらに、ルーフパネル側取り付け凹部を挟み、アンテナベースとルーフレールインナとが固定される構成であるため、この箇所での接着剤を省くことができ、ルーフパネルとルーフレールインナとを取着するための接着剤の使用量を抑制する上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、ルーフパネル側取り付け凹部を挟み、アンテナベースとルーフレールインナとが固定される箇所の剛性を、ルーフパネル側取り付け凹部とフランジ側取り付け凹部とにより補強することが可能となる。
請求項3記載の発明によれば、ルーフパネル側取り付け凹部とフランジ側取り付け凹部との双方の底壁、双方の側壁を重ねるようにしたので、ルーフパネルに対してルーフレールインナの車幅方向における取り付け強度を向上する上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、ルーフパネル側取り付け凹部に雨水が溜まりにくくなり、したがって、排水の対策が容易となり、構造の簡素化、コストダウンを図る上で有利となる。
請求項5記載の発明によれば、接着剤の使用箇所を減らし、ルーフパネルとルーフレールインナとを取着するための接着剤の使用量を抑制する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態における車両用アンテナの取り付け構造を示す側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2のBB線断面図である。
【図4】図2のCC線断面図である。
【図5】図2のDD線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る車両10は、車室12の上方に配置されたルーフパネル14と、ルーフパネル14の後部に上下に開閉可能に配置され車室12の後部を仕切るテールゲート16と、車両用アンテナ18とを備えている。
図1、図2に示すように、車室12の後部の上方でルーフパネル12の下方にルーフレールインナ20が配置され、ルーフレールインナ20の車体前後方向における前部に車幅方向に延在する前フランジ22が設けられている。なお、ルーフパネル14とルーフレールインナ20は共に板金製である。
ルーフレールインナ20の車体の前後方向の後部と、ルーフレールインナ20の車幅方向の両側部は接着剤(マスチックシーラ)2によりルーフパネル14に取着されている。
【0009】
車両用アンテナ18は、アンテナベース24と、アンテナ本体26とを含んで構成されている。
アンテナベース24は、扁平な板状を呈し、その下面から雄ねじ部材30が突設されている。
アンテナ本体26は、アンテナベース24の上部から上方に突設されている。本実施の形態では、アンテナ本体26は、軸状を呈しその基端がアンテナベース24に着脱可能にかつ揺動可能に取り付けられている。
なお、アンテナ本体26の形状は軸状に限定されるものではなく、従来公知の様々な形状のアンテナ本体26が使用可能である。
【0010】
車室12の後部の上方のルーフパネル14の箇所にルーフパネル側取り付け凹部32が設けられている。
ルーフパネル側取り付け凹部32は、車両用アンテナ18のアンテナベース24を収容し取り付ける箇所である。
ルーフパネル側取り付け凹部32は、図3、図4に示すように、車体前後方向に延在する底壁3202と、底壁3202の車幅方向側の両側から起立する側壁3204と、側壁3204の車体前後方向の前部から起立する前壁3206とを有し、車体前後方向における後方に開放状に形成されている。
底壁3202にはアンテナベース24が載置され、このようにアンテナベース24が載置された状態で、アンテナベース24の上面は、ルーフパネル14の最も高い箇所よりも低い位置に位置するように、ルーフパネル側取り付け凹部32の深さが決定されている。
【0011】
また、ルーフレールインナ20の前フランジ22に、ルーフパネル側取り付け凹部32に下方から重ねられるフランジ側取り付け凹部34が設けられている。
フランジ側取り付け凹部34は、ルーフパネル側取り付け凹部32の底壁3202と側壁3204に重ねられる底壁3402と側壁3404とを有している。
【0012】
車両アンテナ18のルーフパネル14への取り付けおよびルーフパネル14とルーフレールインナ20の前フランジ22との取り付けは次のようになされている。
すなわち、図2、図3、図5に示すように、フランジ側取り付け凹部34の車幅方向両側に位置する前フランジ22の部分は、接着剤2によりルーフパネル14に取着されている。
また、図3、図4に示すように、ルーフパネル側取り付け凹部32にて、ルーフパネル側取り付け凹部32を挟み、アンテナベース24とルーフレールインナ20とが固定されている。
詳細には、車両アンテナ18はフランジ側取り付け凹部34とルーフパネル側取り付け凹部32に重ねられアンテナベース24に設けられた取付部材である雄ねじ部材30と締結部材であるナット36によりルーフパネル側取り付け凹部32及びフランジ側取り付け凹部34に締結されることでルーフパネル14に取着されている。
より詳細には、フランジ側取り付け凹部34の底壁3402と側壁3404がルーフパネル側取り付け凹部32の底壁3202と側壁3204に重ねられ、アンテナベース24がルーフパネル側取り付け凹部32の底壁3202に載置される。そして、雄ねじ部材30が、フランジ側取り付け凹部34とルーフパネル側取り付け凹部32との双方の底壁3402、3202のねじ挿通孔3410、3210(図2)を貫通し、フランジ側取り付け凹部34の底壁3402の下面において雄ねじ部材30に螺合するナット36によりそれら双方の底壁3402、3202を締結することでルーフパネル側取り付け凹部32を挟んでアンテナベース24とフランジ側取り付け凹部34が取り付けられる。つまり、ルーフパネル14を挟んで、雄ねじ部材30とナット36によりアンテナベース24とルーフレールインナ20の前フランジ22が取り付けられる。
【0013】
本実施の形態によれば、車両用アンテナ18は、ルーフパネル14を挟んで、ルーフレールインナ20に取着されるため、車両用アンテナ18が取着されたルーフパネル14の箇所は剛性が確保されており、外力が作用した場合であっても、ルーフパネル14の変形は大幅に改善される。
また、車両用アンテナ18をルーフパネル側取り付け凹部32に収容し取着することから、アンテナベース24がルーフパネルの上方に余分なスペースを占有することもなく、車両を船で運搬する場合、あるいは、立体駐車場で駐車する場合などに便利となる。
また、ルーフパネル側取り付け凹部32を挟み、アンテナベース24とルーフレールインナ20とが固定される構成であるため、この固定箇所での接着剤を省くことができ、ルーフパネル14とルーフレールインナ20とを取着するための接着剤の使用量を抑制する上で有利となる。
【0014】
また、実施の形態では、ルーフパネル側取り付け凹部32とフランジ側取り付け凹部34とが取着される箇所では、雄ねじ部材30及びナット36の締結によって取り付けられ、締結部の周囲はルーフレールインナ20で十分補強できる。そのため、接着剤(マスチックシーラ)を省くことができ、ルーフパネル14とルーフレールインナ20とを取着するための接着剤2(マスチックシーラ)の使用量を抑制でき、コストを低減する上で有利となる。
また、実施の形態では、前記ルーフパネル側取り付け凹部32とフランジ側取り付け凹部34とを重ねるに際し、双方の底壁3202、3402、双方の側壁3204、3404を重ねるようにしたので、ルーフパネル14に対してルーフレールインナ20の車幅方向における取り付け強度を向上する上で有利となる。
また、実施の形態では、ルーフパネル側取り付け凹部32を、車体前後方向における後方に開放状に形成したので、ルーフパネル側取り付け凹部32に雨水が溜まりにくくなり、したがって、排水の対策が容易となり、構造の簡素化、コストダウンを図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0015】
2……接着剤(マスチックシーラ)、10……車両、12……車室、14……ルーフパネル、18……車両用アンテナ、20……ルーフレールインナ、22……前フランジ、24……アンテナベース、26……アンテナ本体、30……雄ねじ部材、32……ルーフパネル側取り付け凹部、3202……底壁、3204……側壁、34……フランジ側取り付け凹部、3402……底壁、3404……側壁、36……ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の上方に配置されたルーフパネルと、車室の上方で前記ルーフパネルの下方に配置されたルーフレールインナと、前記ルーフパネルに取り付けられたアンテナベースを有する車両において、
前記車室の後部の上方の前記ルーフパネルにルーフパネル側取り付け凹部が設けられ、
前記ルーフパネル側取り付け凹部にて、前記ルーフパネル側取り付け凹部を挟み、前記アンテナベースと前記ルーフレールインナとが固定されている、
ことを特徴とする車両用アンテナの取り付け構造。
【請求項2】
前記ルーフレールインナの車体前後方向における前部に車幅方向に延在する前フランジが設けられ、
前記前フランジに、前記ルーフパネル側取り付け凹部に下方から重ねられるフランジ側取り付け凹部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用アンテナの取り付け構造。
【請求項3】
前記ルーフパネル側取り付け凹部は、車体前後方向に延在する底壁と、底壁の車幅方向側の両側から起立する側壁とを有し、
前記フランジ側取り付け凹部は、前記ルーフパネル側取り付け凹部の前記底壁と前記側壁に重ねられる底壁と側壁とを有し、
前記フランジ側取り付け凹部の底壁と側壁が前記ルーフパネル側取り付け凹部の底壁と側壁に重ねられ、前記アンテナベースが前記ルーフパネル側取り付け凹部の前記底壁に載置され、取付部材により前記フランジ側取り付け凹部と前記ルーフパネル側取り付け凹部との双方の底壁を貫通し、締結部材によりそれら双方の底壁を締結することでなされている、
ことを特徴とする請求項2記載の車両用アンテナの取り付け構造。
【請求項4】
前記ルーフパネル側取り付け凹部は、車体前後方向における後方に開放状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の車両用アンテナの取り付け構造。
【請求項5】
前記フランジ側取り付け凹部の車幅方向両側に位置する前記前フランジの部分は、接着剤により前記ルーフパネルに取着されている、
ことを特徴とする請求項2乃至4に何れか1項記載の車両用アンテナの取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−9143(P2013−9143A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140243(P2011−140243)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】