説明

車両用ウインドガラスの除霜、除氷装置

【目的】 内燃機関の排気の熱を利用して、液体輸送用パイプ中を流れる水を加熱し、この加熱された水をノズルよりウインドガラスの表面に吹き付けることにより、車両のウインドガラスに付着している霜や氷を短時間に溶解除去する。
【構成】 排気管11より分岐したバイパス管13内に螺旋状のパイプよりなる熱交換部5を設ける。この熱交換部5には液体貯蔵容器1よりポンプ2によって開閉弁8、三方弁6が設けられた液体輸送用パイプ4を介して水が供給され、この熱交換部5で加熱された水は三方弁7を介して液体噴出用のノズル3より、車両のウインドガラスの表面に噴射される。車両の走行中はダンパ14、15を切り換えてバイバス管13内に排気が流入しないようにすると共に、三方弁6、7に設けたガス抜き弁、液抜き弁を開放して、液体輸送用パイプ4中の気体、液体を排出させる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、車両用ウインドガラスの除霜、除氷装置、特に、自動車等の内燃機関で駆動されるれる車両用のウインドガラスの除霜、除氷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
冬季、自動車等の車両を屋外に放置しておくと、ウインドガラスに霜や氷が付着し、それを取り除くのに非常に苦労する。
自動車には通常室内暖房用のヒーターが付設されているが、エンジンを掛けてから、室内が暖まり、ガラスの霜や氷が解ける迄には十数分を要し、緊急の場合には用をなさない。また、車両によってはウインドガラス内に電気ヒター用の抵抗線を埋め込み、ウインドガラスに付着した水滴を除去するものがあるが、抵抗線の発熱容量が小さいので、霜や氷を除去するためには実用的とはいえない。また、フロントガラスに抵抗線を埋め込んだ場合は、操縦者の視野を妨げるので好ましくない。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は、上記の欠点を除き、短時間に車両用のウインドガラスに付着している霜や氷を除去する装置を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は、内燃機関の排気の熱を利用して、ウインドガラスに付着している霜や氷を溶かし、短時間にこれを除去しようとするものである。
そのために、液体貯蔵用容器と、液体圧送用ポンプと、車両用ウインドガラス表面に液体を噴出するノズルと、上記液体貯蔵用容器、上記液体圧送用ポンプおよび上記ノズルを連結する液体輸送用パイプとよりなり、上記液体輸送用パイプの一部に内燃機関の排気管を流れる排気と間接熱交換によって該液体輸送用パイプ中を流れる液体を加熱する熱交換部を設けたものである。
【0005】
この熱交換部の構成は、各種の形態を取ることができるが、排気管の中の排気の流れを阻害する形状のものや、排気の温度や腐食性ガスによって変形や腐食を起こすような材質のものは好ましくない。
このような観点から推奨すべき形態として次のものを挙げることができる。
(1)排気管の中を直管状の液体輸送用パイプを通す。この場合、液体輸送用パイプは排気管の内壁に密着して取り付けるか、排気管の内面に縦にパイプを収容する凹溝を設け、この溝内にパイプを収容するのが好ましい。
【0006】
(2)排気管の外周に液体輸送用パイプを螺旋状に巻き付ける。この場合、さらにそのパイプの上に断熱材を巻き付け、保温構造とするのが好ましい。
【0007】
(3)排気管にバイパス路を設け、このバイバス路の中に螺旋状または蛇行状の液体輸送用パイプを連通させる。この場合、バイパス路の入り口にダンパーを設け、この装置の不使用時には、ダンパーによってバイパス路の入り口を閉鎖するように構成するのが好ましい。常時バイパス路を開口しておくと排気の抵抗を大きくしてエンジン出力に悪影響を及ぼすと共に、液体輸送用パイプの劣化を早め、装置の寿命を短くするので好ましくない。
【0008】
この装置の不使用時には、液体輸送用パイプ中の水を抜いておく必要がある。
特に、車両の走行時に液体輸送用パイプ中に水を入れた状態にしておくと水が過熱され、突沸を起こし、ノズルより熱湯が噴出するので危険である。そのために、液体輸送用パイプの途中にガス抜き弁、液抜き弁を設けるのが好ましい。
また、これらの弁は3方弁を用い、液体圧送用ポンプの開閉と連動させて、ポンプがオンの時は、ガス抜き弁、液抜き弁をオフにして、ポンプがオフの時にガス抜き弁、液抜き弁がオンになるように構成する。
【0009】
液体噴出ノズルは、そのノズルの液体噴出方向を任意に選択できるように構成することが好ましい。その目的のために、リンク機構を用いてノズルの先端が常に一定の角度で揺動するように構成することが好ましい。さらに、ステップモータ等を用いてスイッチの開閉に応じて一定の角度ずつ回動するようにしてもよい。
【0010】
【実施例】
(実施例1)
図1は、排気管の中に直管状の液体輸送用パイプを通した場合の実施例を示すものである。図において、1は液体貯蔵容器、2は液体圧送用ポンプ、3は液体噴出ノズル、4は液体輸送パイプ、5は熱交換部であって、エンジンのマニホールド10に連結された排気管11の中に直線状の液体輸送用パイプを通している。しかも、排気の抵抗を少なくするために、排気管11の一部を外側に凸出させて構成した縦溝13中に液体輸送用パイプを埋め込むように構成するのが好ましい。液体輸送用パイプ4の途中には三方弁6、7が設けられ、ポンプ2が停止しているときに開放して、パイプ中の液体や空気を排出するようにしている。三方弁6、7の制御はマニュアルで行なってもよいが、ポンプ2の開閉と連動して電気的に開閉できるように構成するのが好ましい。なお、12はマフラである。
【0011】
(実施例2)
図2は排気管11の外側に液体輸送用パイプを螺旋状に捲回して熱交換部5を構成した場合の実施例を示すもで、それ以外の構造は実施例1とほぼ同様である。
16は熱交換部5の液体輸送用パイプの上から保温材を塗布して熱交換効率を高めるために設けた保温層である。
【0012】
(実施例3)
図3は排気管11を分岐してバイパス管13を設け、このバイパス管13内に螺旋状のの液体輸送用パイプを設けて熱交換部5を構成した場合の実施例を示すもである。
バイパス管13の入口および出口にはそれぞれダンパ14、15が設けられている。ダンパ14、15は、スイッチ18の閉成によって駆動される切換装置24によって同時に切換えられる。液体輸送パイプ4に設けられた三方弁6、7はスイッチ19の閉成によって駆動される電磁機構21、22によって液体輸送用パイプは連通側に、ガス抜き弁および液抜き弁は閉じる側に回動される。開閉弁8はスイッチ19の閉成によって駆動される電磁機構23によって開通される。
なお、9はノズル3を揺動させるための揺動装置、17は揺動装置用のモータ、20は電源である。
【0013】
図4、図5および図6は、実施例3の熱交換部の細部を説明するための図面であって、熱交換部5はユニットとして構成され、バイパス管13から取り外せるように構成されている。すなわち熱交換部5を構成する螺旋状パイプ36は、上下にフランジ40、42を持つ円筒状の直管35の中に納められている。直管35の両端のフランジ40および42はそれと対向するバイパス管13の切断面に設けられたフランジ41および43と接合されて、これらのフランジに設けられたボルト穴44、44にボルトを通してナットで締め付け固定される。なお、39は螺旋状パイプ36のずれ止めである。
【0014】
螺旋状パイプ36の始端と終端にはそれぞれ内部にネジ溝を有する連結用ナット37、37が固定されている。外部の液体輸送パイプ4との接続には両端にネジ溝を有する継手パイプ38、38が用いられる。
ダンパ14、15の回転軸にはそれぞれレバー30、31が固定され、連結杆32で連結されていて、ダンパ14、15は相反する方向に回転させられる。
【0015】
図7および図8はノズル3の揺動運動を行なわせるための揺動装置を示すものである。50は短杆であって、基盤56の裏面に固定されたモータ17の回転軸57に固定されている。52は基盤56に回動自在に軸止された揺動杆であって、その先端にノズル3が固定され、その後端に設けた回転軸59には連結杆51の一端が回動自在に軸止され、連結杆51の他端は短杆50に設けられた回転軸58に回動自在に軸止されている。ノズル3の先端は扁平につぶされ、幅広い範囲に液体が放出されるようにしてある。
【0016】
揺動杆52の回動軸53は中空状のネジ棒として構成され、揺動杆52を座金54を介して基盤56に回動自在に軸止する。ノズル3を先端に付けたフレキシブルのゴムパイプ55は揺動杆52に沿って固定され、回転軸53の中空穴を通って液体輸送用パイプ4に連結されている。
【0017】
この除霜、除氷装置を作動させるには、まず、エンジンを始動した後、スイッチ18を閉成して、排気の流路がバイパス管13を通るようにダンパ14、15を切換える。次に、スイッチ19を閉成して開閉弁8をオンし、それと同時に三方弁6、7を液体輸送パイプ4が連通し、ガス抜き弁および液抜き弁が閉鎖するように回動させる。その後、ポンプ2のスイッチを入れると、液体貯蔵容器1中の水が、液体輸送パイプ4によって開閉弁8、三方弁6を経て、熱交換器5に至り、排気熱で加熱され、熱湯となって三方弁7を経てノズル3よりウインドガラス面に噴射される。ノズル3の噴射方向を変えるためにはモータ17のスイッチを入れノズル3の揺動装置9を駆動させればよい。
【0018】
この除霜、除氷装置を停止させるには、まず、ポンプ2のスイッチを切って液体の供給を停止する。次にスイッチ18を開放して、切換装置24を逆転させてバイパス管13が閉塞されるようにダンパ14、15を回動させる。スイッチ19を開放して開閉弁8を閉鎖すると同時に三方弁6、7を液体輸送パイプ4が閉鎖し、ガス抜き弁および液抜き弁が開放するように回動させる。これによって液体輸送パイプ4の中は空になり、過熱された水や気体がノズル3より噴出する危険を回避することができる。さらに、熱交換部5は排気管11とは隔離されるので、螺旋状パイプ36が過熱されて損傷することを回避できる。
【0019】
なお、これらの実施例では排気管またはそれに付随したバイパス管をいずれも垂直に配設しているが、車種によっては排気管またはそれに付随したバイパス管を横向き配設してもよい。また、バイパス管の中に設けた熱交換部は螺旋状のパイプとして構成したが、蛇行状のパイプとして構成することも可能である。
【0020】
【考案の効果】
本考案の車両用ウインドガラスの除霜、除氷装置は、エンジンの排気によって液体を間接加熱する熱交換部を設けたので、エンジン始動後、約30秒で約80℃の熱湯が得られる。車両を戸外に放置したためにウインドガラスに着霜、着氷しても、この熱湯をノズルよりウインドガラスに噴射すれば、1分以内にガラスに付着した氷を溶解除去することができる。
この装置はフロントガラスだけでなく、リアガラス、サイドガラスに対しても、ノズルの配管を多少変更するだけで容易に対応することができる。
【提出日】平成6年12月14日

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 液体貯蔵用容器と、液体圧送用ポンプと、車両用ウインドガラス表面に液体を噴出するノズルと、上記液体貯蔵用容器、上記液体圧送用ポンプおよび上記ノズルを連結する液体輸送用パイプとよりなり、上記液体輸送用パイプの一部に内燃機関の排気管を流れる排気と間接熱交換によって該液体輸送用パイプ中を流れる液体を加熱する熱交換部を設けたことを特徴とする車両用ウインドガラスの除霜、除氷装置。
【請求項2】 液体貯蔵用容器と、液体圧送用ポンプと、車両用ウインドガラス表面に液体を噴出するノズルと、上記液体貯蔵用容器、上記液体圧送用ポンプおよび上記ノズルを連結する液体輸送用パイプとよりなり、上記液体輸送用パイプの一部を内燃機関の排気管の中に架設して、内燃機関の排気との間接熱交換によって該液体輸送用パイプ中を流れる液体を加熱する熱交換部を設けたことを特徴とする車両用ウインドガラスの除霜、除氷装置。
【請求項3】 液体貯蔵用容器と、液体圧送用ポンプと、車両用ウインドガラス表面に液体を噴出するノズルと、上記液体貯蔵用容器、上記液体圧送用ポンプおよび上記ノズルを連結する液体輸送用パイプとよりなり、上記液体輸送用パイプの一部を内燃機関の排気管の外周に捲回して内燃機関の排気との間接熱交換によって該液体輸送用パイプ中を流れる液体を加熱する熱交換部を設けたことを特徴とする車両用ウインドガラスの除霜、除氷装置。
【請求項4】 液体貯蔵用容器と、液体圧送用ポンプと、車両用ウインドガラス表面に液体を噴出するノズルと、上記液体貯蔵用容器、上記液体圧送用ポンプおよび上記ノズルを連結する液体輸送用パイプとよりなり、内燃機関の排気管より分岐したバイバス管内に内燃機関の排気との間接熱交換によって該液体輸送用パイプ中を流れる液体を加熱する螺旋状または蛇行状のパイプよりなる熱交換部を設けたことを特徴とする車両用ウインドガラスの除霜、除氷装置。
【請求項5】 上記液体輸送用パイプに空気および/または液体を排出する弁手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4記載の車両用ウインドガラスの除霜、除氷装置。
【請求項6】 上記液体噴出ノズルの液体噴出角度を変化させることができるように構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4記載の車両用ウインドガラスの除霜、除氷装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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