説明

車両用コンプレッサの制御装置

【課題】コンプレッサの起動時における異音の発生を抑制することができるようにした車両用コンプレッサの制御装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載されるコンプレッサ11a,11bと、車両を始動させる際に始動操作されるスイッチ41と、コンプレッサを駆動する電動機20と、電動機からコンプレッサへ駆動力を伝達する接続状態と、電動機からコンプレッサへの駆動力の伝達を遮断する遮断状態との何れかに切換可能なクラッチ35,36と、電動機及びクラッチの作動を制御する制御手段40と、を備え、制御手段は、スイッチが始動操作されるとクラッチを予め接続状態としておいて電動機を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の始動時に空調用コンプレッサを一時的に作動させる瞬時運転に用いて好適の、車両用コンプレッサの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、種々の補機類が装備される。例えば、車両の空調装置に装備されるコンプレッサ(クーラコンプレッサ)等のコンプレッサも補機類に含まれる。これらの補機類はエンジンの駆動力によって作動するものの他、補機用電動機によって作動するものがある。
ところで、空調装置の場合、図3に示すように、冷媒を空調用コンプレッサ(クーラコンプレッサ)11により圧縮し、圧縮した冷媒をコンデンサ12によって凝縮液化させて、この凝縮液化された冷媒をエバポレータ13で気化させてこの際の気化熱として周囲の熱を奪い冷気を作るようにしている。
【0003】
このような空調用コンプレッサ11,コンデンサ12,エバポレータ13は冷媒を封入された冷媒循環回路14として構成され、エバポレータ13で気化された冷媒は空調用コンプレッサ11に戻され圧縮され、再びコンデンサ12,エバポレータ13へと循環する。
空調用コンプレッサは、パワーステアリング装置用のポンプや圧縮エア供給用のコンプレッサ(エアコンプレッサ)などと共に、いわゆる補機類として駆動される。このような補機類は、エンジンの駆動力によって駆動されていたが、近年、ハイブリッド電気自動車等の電気自動車では、エンジン(原動機)に頼らずに補機類を駆動できるように、補機用電動機(補機モータとも言う)を装備したものも開発されている(特許文献1,2)。
【0004】
特許文献1には、電気自動車又はハイブリッド車の補機駆動装置として、空調用コンプレッサ,パワーステアリング装置用ポンプ,エアコンプレッサなどの補機類を1つの補機用電動機によって駆動する構成が記載されている。この場合、補機用電動機と各補機との間には、電磁クラッチを介装し各補機の作動を制御する。
1つの補機用電動機によって上述の各補機類を駆動する場合、例えば空調用コンプレッサの要求に合わせて補機用電動機の回転数を制御することがあり、空調用コンプレッサの要求回転数が高い場合には、補機用電動機をエアコンプレッサに接続する電磁クラッチを断から接に切り換えると、電磁クラッチに大きな衝撃が加わりその耐久性が低下する。そこで、特許文献2には、エアコンプレッサに接続する電磁クラッチを断から接に切り換える際に、補機用電動機を許容できる回転数に規制して電磁クラッチの耐久性を向上させる技術が提案されている。
【0005】
ところで、近年、バス等の大型自動車においても、車両駆動用電動機とエンジン(原動機)とを備えたハイブリッド電気自動車が開発されており、このような自動車の場合にも、補機用電動機を設け、電磁クラッチを介して補機類を補機用電動機(図示略)と接続可能として、補機用電動機によって各補機類を駆動する構成が増加している。
ハイブリッド電気自動車の補機類の一例として、バスの空調装置〔主に冷房装置(クーラ)〕を説明すると、図4に示すように、車両1の後部のエンジンルーム2内に、クーラコンプレッサ11が配設され、車両1のルーフ3上にコンデンサ12が配設され、車両1の車室内4の天井部にエバポレータ13が配設されている。また、クーラコンプレッサ11,コンデンサ12,エバポレータ13等のクーラの各部を制御するためのクーラECU(クーラ用電子制御ユニット)15が車室内4に装備されている。
【0006】
なお、このバスは、車両の駆動のために、電動機とエンジン(原動機)とを備えたハイブリッド電気自動車として構成され、クーラコンプレッサ11は、補機用電動機(図示略)と電磁クラッチ(図示略)を介して接続され、補機用電動機によって駆動される。なお、ここでは、クーラコンプレッサ11及びエバポレータ13は、符号11a,11b,13a,13bで示すように、何れも対を成して2機ずつ備えられる。
【0007】
空調装置の冷媒は、上記のクーラコンプレッサ11,コンデンサ12,エバポレータ13等の冷媒循環回路14内に封入されて循環するが、例えばクーラコンプレッサ11の摺動部分等の冷媒循環回路14内の各摺動部分に潤滑油を供給するために、この冷媒循環回路14内には冷媒と共に潤滑油が封入されている。
この潤滑油は、冷媒と共に循環して各摺動部分を潤滑するが、冷房装置が使用されなければ、冷媒及び潤滑油は循環しないので、潤滑油が摺動部分に供給されない。長期間にわたり潤滑油が摺動部分に供給されないと円滑な摺動を確保できなくなるおそれがある。そこで、車両の始動時に、空調装置自体は作動させないが短時間だけクーラコンプレッサ11を作動させて潤滑油を摺動部分に供給する運転(瞬時運転)を実施している。
【0008】
クーラコンプレッサ11を作動させれば冷媒と共に潤滑油が駆動され、最も供給したいクーラコンプレッサ11の摺動部分には、僅かな時間だけクーラコンプレッサ11を作動させるだけで十分に潤滑油が供給される。
この瞬時運転の制御は、図5に示すように、バッテリスイッチがオン操作されることにより開始して、まず、コントローラにより、車両のハイブリッドシステムが起動され(ステップS120)、そして、クーラ運転抑制指令が発せられる(ステップS130)。クーラ運転抑制指令により、クーラ運転の指令があってもクーラ運転は実施されない。次に、補機モータに回転指令が発せられ(ステップS140)、補機モータが始動する(ステップS150)。
【0009】
補機モータの回転数Nmが予め設定された基準回転数Nm(Nmは例えば800rpm)以上になったか否かを判定する(ステップS160)。補機モータ回転数Nmが基準回転数Nm以上になったら、タイマカウントを開始して(ステップS162)、タイマカウント値t1が予め設定されたタイマ値t01(t01は例えば3秒)以上になったか否かを判定する(ステップS164)。タイマカウント値t1が予め設定されたタイマ値t01以上になったら、補機モータとクーラコンプレッサとの間の電磁クラッチをオン指令する(ステップS166)。
【0010】
そして、再び、タイマカウントを開始して(ステップS170)、タイマカウント値t2が予め設定されたタイマ値t02(t02は例えば0.5秒)以上になったか否かを判定する(ステップS180)。そして、タイマカウント値t2が予め設定されたタイマ値t02以上になったら、補機モータを停止指令し、電磁クラッチをオフ指令する(ステップS190)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−23301号公報
【特許文献2】特開2009−44878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記の瞬時運転を行うと、大きな異音が発生することが判明した。本願発明者らは、この異音について究明していく過程で、この異音が生じる現象は、常に発生するわけではなく、中間期(春季、秋季)の早朝の特に晴天時に発生することが判明した。特に、ハイブリッド電気自動車において、エンジンを作動しないで車両の始動操作をした場合に、エンジン音がなく静かなため、異音が目立つ。
【0013】
そして、この異音の原因は、コンデンサ12とクーラコンプレッサ11との温度差が大きくなると、気体の状態にあるクーラコンプレッサ12内の冷媒が液化して、この状態でクーラコンプレッサ12を起動すると、液化した冷媒が圧縮されて異音が生じることを究明した。
つまり、中間期の早朝の冷え込みによって、コンデンサ12もクーラコンプレッサ11も温度が低下するが、晴天時には、車両1のルーフ3上のコンデンサ12は太陽光を受けて温度上昇するが、車両1のエンジンルーム2内のクーラコンプレッサ11はなかなか温度上昇しない。
【0014】
このため、コンデンサ12は外気温よりも高温となるがクーラコンプレッサ11は外気温程度の低温の状態が発生する。そして、コンデンサ12内で暖められた冷媒が、クーラコンプレッサ11に進入すると、冷やされる(放熱する)ために液化するものと考えられる。
また、異音の大きさは、冷媒の液化した量とクーラコンプレッサの回転数によって異なることも判明した。
【0015】
つまり、冷媒の液化した量が多いと、量の大きな液化冷媒が圧縮されるため、発生する異音も大きくなる。
また、上述のように、補機モータの回転数Nmが予め設定された基準回転数Nm以上になってからさらに所定時間(例えば、3秒)が経過した時点では、補機モータの回転数Nmは基準回転数Nm(例えば、800rpm)よりも大幅に高い回転数Nm(例えば、1600rpm)となっており、この時点で、電磁クラッチをオンにすると、クーラコンプレッサは始動直後から高い回転数Nmで高回転することになる。クーラコンプレッサの始動直後の回転が高いほど液化冷媒が強く圧縮されるため、発生する異音も大きくなる。
【0016】
このような現象は、瞬時運転に限らず発生しうるもので、また、クーラコンプレッサに限らず、気体を圧縮するコンプレッサにおいて発生しうるものである。また、ハイブリッド電気自動車の場合、異音が目立ち易いが、通常のエンジン駆動の自動車においても、エンジン音の静粛性が高ければ無視することはできない。
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたもので、コンプレッサの起動時における異音の発生を抑制することができるようにした、車両用コンプレッサの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の車両用コンプレッサの制御装置によれば、車両に搭載されるコンプレッサと、前記車両を始動させる際に始動操作されるスイッチと、前記コンプレッサを駆動する電動機と、前記電動機から前記コンプレッサへ駆動力を伝達する接続状態と、前記電動機から前記コンプレッサへの駆動力の伝達を遮断する遮断状態との何れかに切換可能なクラッチと、前記電動機及び前記クラッチの作動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記スイッチが前記始動操作されると前記クラッチを予め接続状態としておいて前記電動機を作動させることを特徴としている。
【0018】
前記コンプレッサは、空調用コンプレッサであることが好ましい。
また、前記制御手段は、前記スイッチの始動操作に際して予め接続状態としておいた前記クラッチを、前記電動機の作動開始後に遮断状態に切り換えることが好ましい。
特に、前記制御手段は、車両を始動させる際に、僅かな時間だけ前記クーラコンプレッサを作動させて、空調用冷媒に混入された潤滑油を前記クーラコンプレッサの摺動部分等に供給する瞬時運転を行い、かかる瞬時運転時に、前記のごとく、前記電動機及び前記クラッチの作動を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両を始動させる際にスイッチが始動操作されると、クラッチを予め接続状態としておいて電動機を作動させるので、電動機は、始動時からコンプレッサの負荷を受けて緩やかな回転上昇をすることになる。このため、コンプレッサ内に気体が液化した状態で存在しても、コンプレッサの始動時にこの液化成分に対する圧縮が強くならず、異音の発生を防止できるか、或いは、異音が発生したとしても僅かなものに抑えられる。
【0020】
コンプレッサが、空調用コンプレッサの場合には、空調用コンプレッサの内部の本来気体の状態の冷媒が液化することがあり、コンプレッサの始動時にこの液化冷媒が圧縮され異音の発生を招く場合があるが、このような異音の発生も防止、或いは、抑制される。
特に、空調用コンプレッサの場合、スイッチの始動操作に対して予め接続状態としておいたクラッチを、電動機の作動開始後に遮断状態に切り換え、僅かな時間だけクーラコンプレッサを作動させて、空調用冷媒に混入された潤滑油をクーラコンプレッサの摺動部分等に供給する瞬時運転を行う場合があり、かかる瞬時運転時に、前記異音の発生を招く場合があるが、このような異音の発生も防止、或いは、抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用コンプレッサの制御装置を説明する構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用コンプレッサの制御を説明するフローチャートである。
【図3】一般的な車両用空調装置の原理を説明する構成図である。
【図4】ハイブリッド電気自動車としてのバスの車両用空調装置を説明する車両の斜視図である。
【図5】本発明の課題に係る車両用コンプレッサの制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係る車両用コンプレッサの制御装置について説明する。
なお、本実施形態では、本発明をハイブリッド電気自動車であるバスの空調装置に適用した例を説明する。そこで、図1,図2に加えて、既に用いた図3,図4を流用して説明する。
【0023】
本実施形態に係る車両はバスであり、このバスは、車両駆動用電動機とエンジン(原動機)とを備えたハイブリッド電気自動車として構成されている。
この車両には、空調装置〔主に冷房装置(クーラ)〕が装備される。空調装置は、図4に示すように、車両1の後部のエンジンルーム2内に配設されたクーラコンプレッサ(空調用コンプレッサ)11と、車両1のルーフ3上に配設されたコンデンサ12と、車両1の車室内4の天井部に配設されたエバポレータ13とを備えている。また、クーラコンプレッサ11,コンデンサ12,エバポレータ13等のクーラの各部を制御するためのクーラECU(クーラ用電子制御ユニット)15が車室内4に装備されている。
【0024】
このような空調用コンプレッサ11,コンデンサ12,エバポレータ13は、図3に示すように、冷媒を封入された冷媒循環回路14として構成され、エバポレータ13で気化された冷媒は空調用コンプレッサ11に戻され圧縮され、再びコンデンサ12,エバポレータ13へと循環する。
ここでは、クーラコンプレッサ11及びエバポレータ13は、符号11a,11b,13a,13bで示すように、何れも対を成して2機ずつ備えられ、要求に応じてクーラコンプレッサ11a,11b及びエバポレータ13a,13bの何れか一方又は両方を用いるようになっている。
【0025】
また、車両には、クーラコンプレッサ11を含めて、種々の補機類が装備され、これらの補機類は補機用電動機(補機モータ)にそれぞれ電磁クラッチを介して接続され、補機モータによって適宜駆動されるようになっている。
つまり、図1に示すように、補機モータ20によって、第1クーラコンプレッサ11a,第2クーラコンプレッサ11b,パワーステアリング装置用のポンプ(パワーステアリングポンプ)21,圧縮エア供給用のコンプレッサ(エアコンプレッサ)22が駆動されるようになっている。
【0026】
なお、エアコンプレッサ22の駆動系は、補機モータ20の回転軸にクラッチ34を介して結合された駆動プーリ31aと、エアコンプレッサ22の回転軸に結合された従動プーリ31bと、駆動プーリ31aと従動プーリ31bとに掛け渡されたベルト31cとからなるベルトプーリ機構により構成される。
第1クーラコンプレッサ11aの駆動系も、補機モータ20の回転軸にクラッチ35を介して結合された駆動プーリ32aと、第1クーラコンプレッサ11aの回転軸に結合された従動プーリ32bと、駆動プーリ32aと従動プーリ32bとに掛け渡されたベルト32cとからなるベルトプーリ機構により構成される。
【0027】
第2クーラコンプレッサ11bの駆動系も、補機モータ20の回転軸に結合された駆動プーリ33aと、第2クーラコンプレッサ11bの回転軸にクラッチ36を介して結合された従動プーリ33bと、駆動プーリ33aと従動プーリ33bとに掛け渡されたベルト33cとからなるベルトプーリ機構により構成される。
パワーステアリングポンプ21は、その回転軸を、補機モータ20の回転軸にクラッチ37を介して結合されて構成される。
【0028】
そして、各クラッチ34〜37は何れも電磁クラッチとして構成され、制御手段としての車両用ECU(電子制御ユニット)40によって、各電磁クラッチ34〜37及び補機モータ20の作動が制御される。
なお、ここでは、クーラコンプレッサ11が2機装備されるが、クーラコンプレッサ11の数は1機或いは2機よりも多くてもよく限定されるものではない。
【0029】
また、クーラコンプレッサ11を駆動する電動機(補機モータ)20も、パワーステアリングポンプ21及びエアコンプレッサ22と共用されるが、これに限るものではなく、クーラコンプレッサ11の駆動方式もベルトプーリ機構に限るものではない。
ただし、クーラコンプレッサ11と補機モータ20との間には、両者間の動力伝達を遮断しうるクラッチは必須である。この場合、各クーラコンプレッサ11と補機モータ20との間に、それぞれクラッチを介装し、個々に駆動断接制御を行なえる方が好ましいが、この限りではない。
【0030】
ところで、クーラコンプレッサ11,コンデンサ12,エバポレータ13等を装備する冷媒循環回路14内には、空調用の冷媒と共に潤滑油が封入されている。この潤滑油は、冷媒と共に冷媒循環回路14内を循環しながらクーラコンプレッサ11の摺動部分をはじめとした各摺動部分に供給され、円滑な摺動を確保できるようになっている。
しかし、冷房装置が使用されなければ、冷媒及び潤滑油は循環しないので、潤滑油は摺動部分に供給されない。このため、長期間にわたり潤滑油が摺動部分に供給されないと円滑な摺動を確保できなくなるおそれがある。そこで、本装置では、車両の始動時に、空調装置自体は作動させないが短時間だけクーラコンプレッサ11を作動させて潤滑油を摺動部分に供給する運転(瞬時運転)を実施している。
【0031】
つまり、車両用ECU(制御手段)40では、車両を始動させる際に始動操作されるスイッチ、ここでは、バッテリスイッチ41がオン操作されることにより、車両のハイブリッドシステムの起動と共に、瞬時運転制御を実施する。この瞬時運転制御時には、まず、クーラコンプレッサ11a,11bの各電磁クラッチ35,36を何れも予め接続状態としておき、その後に、補機モータ20を作動させる。また、補機モータ20を所定の短時間(例えば、0.5秒)だけ作動させた後に、各電磁クラッチ35,36を何れも遮断状態とすると共に、補機モータ20を停止させるようになっている。また、この瞬時運転制御中には、車両用ECU40からクーラECU(クーラ用電子制御ユニット)15にクーラ運転抑制指令が発せられる。
【0032】
本発明の一実施形態に係る車両用コンプレッサの制御装置は、上述のごとく構成されるので、例えば、図2に示すように、コンプレッサの制御(瞬時運転の制御)を行なうことができる。
つまり、バッテリスイッチがオン操作されることにより制御が開始され、まず、車両用ECU40により、補機モータ20とクーラコンプレッサ11a,11bとの間の各電磁クラッチ35,36にオン指令する(ステップS10)。また、車両用ECU40により、車両のハイブリッドシステムが起動される(ステップS20)。なお、これらのステップS10,S20は同時又は逆の順序で実施してもよいが、後述の補機モータ20の始動時には各電磁クラッチ35,36が何れも接続状態となっていることが必要である。
【0033】
そしてクーラECU15にクーラ運転抑制指令が発せられる(ステップS30)。クーラ運転抑制指令により、クーラ運転の指令があってもクーラ運転は実施されない。次に、補機モータ20に回転指令が発せられ(ステップS40)、補機モータ20が始動する(ステップS50)。
次に、補機モータ20の回転数Nmが予め設定された基準回転数Nm(Nmは例えば800rpm)以上になったか否かを判定する(ステップS60)。補機モータ回転数Nmが基準回転数Nm以上になったら、タイマカウントを開始して(ステップS70)、タイマカウント値tが予め設定されたタイマ値t(tは例えば0.5秒)以上になったか否かを判定する(ステップS80)。そして、タイマカウント値tが予め設定されたタイマ値t以上になったら、補機モータ20を停止指令し、電磁クラッチ35,36をオフ指令する(ステップS90)。これにより、コンプレッサの瞬時運転が終了する。
【0034】
なお、このコンプレッサの瞬時運転の終了時には、他の補機類の作動性を確保するために、電磁クラッチ35,36をオフ指令するだけで、補機モータ20については停止指令しないようにしてもよい。
このようなコンプレッサの瞬時運転によれば、予め電磁クラッチ35,36が何れも接続状態とされた状態で補機モータ20が作動を開始するので、補機モータ20は、始動時からクーラコンプレッサ11a,11bの負荷を受けて緩やかな回転上昇をすることになる。このため、基準回転数Nm(例えば800rpm)に達してから所定の短時間t(例えば0.5秒)だけ、補機モータ20によりクーラコンプレッサ11a,11bを駆動した場合、補機モータ20の回転数は一定回転数Nm(例えば1000rpm程度)以下に収まる。このため、クーラコンプレッサ11a,11b内に冷媒が液化した状態で存在しても、クーラコンプレッサ11a,11bの始動時にこの液化冷媒に対する圧縮が強くならず、異音の発生を防止できるか、或いは、異音が発生したとしても僅かなものに抑えられる。
【0035】
このような異音発生の防止或いは抑制は、始動操作したドライバに、異音による不安感や不快感等を与えなくすることができる。
なお、本実施形態では、瞬時運転の際に生じる異音の発生抑制に本発明を適用した場合を説明したが、かかる異音発生の現象は、これに限らず発生しうるものであり、また、クーラコンプレッサに限らず、例えば、エアコンプレッサ22など、気体を圧縮するコンプレッサにおいて発生しうるものである。そこで、本発明は、クーラコンプレッサの瞬時運転に限らず、車両用コンプレッサに対して広く適用することが可能である。
【0036】
また、ハイブリッド電気自動車の場合、異音が目立ち易いため、かかる異音はより顕著なものとなり、ドライバに、異音による不安感や不快感等をより与え易いが、通常のエンジン駆動の自動車においても、エンジン音の静粛性が高ければ無視することはできないので、適用することが考えられる。
また、バスのみならず、車両(自動車)に広く適用しうる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
2 エンジンルーム
3 車両1のルーフ
4 車両1の車室内
11,11a,11b クーラコンプレッサ(空調用コンプレッサ)
12 コンデンサ
13,13a,13b エバポレータ
14 冷媒循環回路
15 クーラECU(クーラ用電子制御ユニット)
20 補機モータ(補機用電動機)
21 パワーステアリング装置用ポンプ(パワーステアリングポンプ)
22 圧縮エア供給用コンプレッサ(エアコンプレッサ)
31a,32a,33a 駆動プーリ
31b,32b,33b 従動プーリ
31c,32c,33c ベルト
34,35,36,37 クラッチ
40 制御手段としての車両用ECU(電子制御ユニット)
41 バッテリスイッチ(スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるコンプレッサと、
前記車両を始動させる際に始動操作されるスイッチと、
前記コンプレッサを駆動する電動機と、
前記電動機から前記コンプレッサへ駆動力を伝達する接続状態と、前記電動機から前記コンプレッサへの駆動力の伝達を遮断する遮断状態との何れかに切換可能なクラッチと、
前記電動機及び前記クラッチの作動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記スイッチが前記始動操作されると前記クラッチを予め接続状態としておいて前記電動機を作動させる
ことを特徴とする、車両用コンプレッサの制御装置。
【請求項2】
前記コンプレッサは、空調用コンプレッサである
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用コンプレッサの制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記スイッチの始動操作に際して予め接続状態としておいた前記クラッチを、前記電動機の作動開始後に遮断状態に切り換える
ことを特徴とする、請求項2記載の車両用コンプレッサの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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