説明

車両用シートの温度調節装置

【課題】ポンプ部を必要とすることなく流体を車両用シートに循環させることができる車両用シートの温度調節装置を提供する。
【解決手段】車両用シートSの温度調節装置Tは、座部10に内蔵され、座部10内に液体を循環させる循環流路20と、循環流路20に接続され、液体を加熱又は冷却する蓄熱器14とを備える。さらに、温度調節装置Tは、座部10に乗員が着座することにより発生する荷重を受ける荷重受け板18と、荷重受け板18が荷重を受けることに連動して、蓄熱器14で加熱された液体を循環流路20に循環させる加圧板16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には空調装置が装備されているが、空調装置によって車室内が暖房又は冷房されても、車両用シートにおける座席が加熱又は冷却されていなければ、必ずしも快適であるとは言えない。そこで、特許文献1には座席の表皮を加熱又は冷却可能にした車両用座席の温度調節装置が提案されている。特許文献1の車両用座席の温度調節装置は、座席の座部及び背もたれ部の表皮の内側に、液体が循環する循環流路を形成する流路形成部材を備えるとともに、座部又は背もたれ部内に内蔵されるとともに流路形成部材に接続され、液体を加熱又は冷却する温度調節部を備える。さらに、車両用座席の温度調節装置は、座部又は背もたれ部内に内蔵され、加熱又は冷却された液体を循環流路に循環させるポンプ部を備えている。そして、ポンプ部によって温度調節部から流出され循環流路を循環する液体の温熱又は冷熱により、座部又は背もたれ部の表皮が加熱又は冷却されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−168463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の車両用座席の温度調節装置は、液体を循環流路を循環させるためにポンプ部を必要としており、ポンプ部を駆動させるために電源を必要とするとともにポンプ部の制御機構を必要とし、温度調節装置が大型化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、ポンプ部を必要とすることなく流体を車両用シートに循環させることができる車両用シートの温度調節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両用シートに内蔵され、該車両用シート内に流体を循環させる循環流路と、前記循環流路に接続され、前記流体を加熱又は冷却する温度調節部と、前記車両用シートに内蔵され、前記車両用シートに乗員が着座することにより発生する荷重を受ける荷重受け部と、前記荷重受け部が前記荷重を受けることに連動して、前記温度調節部によって加熱又は冷却された流体を前記循環流路に送り出す送出部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
これによれば、乗員が車両用シートに着座すると、荷重受け部が荷重を受けることに連動して、送出部によって循環流路に流体が送り出される。そして、循環流路に送り出された流体は、温度調節部によって加熱又は冷却されているため、流体が循環流路を循環することにより車両用シートが暖められる又は冷やされる。したがって、本発明は、加熱又は冷却された液体を循環流路に送り出すためのポンプ部を必要としないため、ポンプ部を駆動させるための電源、及びポンプ部を駆動するための制御機構といった電気的構成を必要とすることなく、車両用シートを暖めたり冷やしたりすることができる。
【0008】
また、前記車両用シートに前記乗員が着座していない状態では、前記温度調節部から前記循環流路には前記流体が供給されず気体が存在しているものであってもよい。これによれば、車両用シートに乗員が着座していないときに、循環流路に液体が供給されていると、循環流路と外気との熱交換により、加熱された流体が冷却され、冷却された流体が加熱されてしまい好ましくない。よって、車両用シートに乗員が着座していないときは、循環流路に流体を供給せず、空気だけとすることで、流体が熱交換されてしまうことを抑制することができる。
【0009】
また、前記温度調節部は、熱源によって加熱又は冷却される蓄熱材を封入した蓄熱器であってもよい。これによれば、蓄熱材の温熱又は冷熱により流体を効率良く加熱又は冷却することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポンプ部を必要とすることなく流体を車両用シートに循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の車両用シートの温度調節装置を模式的に示す断面図。
【図2】車両用シートに乗員が着座したときの温度調節装置を模式的に示す断面図。
【図3】第2の実施形態の車両用シートの温度調節装置を模式的に示す断面図。
【図4】車両用シートに乗員が着座したときの温度調節装置を模式的に示す断面図。
【図5】第3の実施形態の車両用シートの温度調節装置を模式的に示す断面図。
【図6】車両用シートに乗員が着座したときの温度調節装置を模式的に示す断面図。
【図7】第4の実施形態の車両用シートの温度調節装置を模式的に示す断面図。
【図8】第1の実施形態の車両用シートの温度調節装置の別例を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図2にしたがって説明する。
図1に示すように、電気自動車に搭載される車両用シートSは、乗員が着座する座部10と、座部10の後端側に傾き調整可能に配置された背もたれ部50とを備えて構成されている。座部10は、座クッション11を備えるとともに、座クッション11は、布帛製又は皮革製のカバー12によって被覆されている。そして、この車両用シートSは、温度調節装置Tを備えている。
【0013】
温度調節装置Tについて詳細に説明する。座部10において、座クッション11の下方にはケース13が内蔵されるとともに、ケース13内には温度調節部としての蓄熱器14が収納されている。この蓄熱器14内には、温熱又は冷熱を蓄熱する一般的な蓄熱材が封入されている。なお、蓄熱材は、熱源、例えばヒータによって加熱又は冷却装置によって冷却されるようになっている。また、ケース13内において、蓄熱器14より上方にはリードバルブよりなる逆支弁15が配置され、ケース13内は逆支弁15より上側の第1室13aと、逆支弁15より下側の第2室13bとに区画されている。逆支弁15は外周縁がケース13の内周面に固着されるとともに、逆支弁15の中央部には連通孔15aが形成され、この連通孔15aによって第1室13aと第2室13bとが連通可能になっている。そして、第2室13b内には流体としての液体が貯留されるとともに、蓄熱器14の温熱又は冷熱によって加熱又は冷却されるようになっている。
【0014】
第1室13a内には送出部としての加圧板16が収納されるとともに、この加圧板16の中央部には、連通孔15aを開閉可能とする弁部16aが突設されている。逆支弁15を介した蓄熱器14の上面と加圧板16の下面との間には付勢バネ19が介装されるとともに、この付勢バネ19のバネ力により加圧板16は逆支弁15から離れる方向(上方向)、すなわち、弁部16aが連通孔15aから離間する方向に向けて付勢されている。
【0015】
加圧板16にはロッド17を介して荷重受け部としての荷重受け板18が一体に連結されるとともに、荷重受け板18上には座クッション11が固定されている。この荷重受け板18は、車両用シートSの座部10に乗員が着座することにより発生する荷重を座クッション11を介して受け、加圧板16は、荷重受け板18が受けた荷重により第2室13b内を加圧する。
【0016】
ケース13の上部には、循環流路20の一端が第1室13aに連通するように接続されている。この循環流路20は、一部が座クッション11を貫通するとともに、他端側が、ケース13の下部を貫通して蓄熱器14内に引き込まれている。循環流路20の他端側の一部は蓄熱器14内を蛇行するとともに、循環流路20の他端は蓄熱器14内から第2室13bに連通している。そして、循環流路20は蓄熱器14に接続されるとともに、車両用シートSに内蔵され、蓄熱器14によって加熱又は冷却された液体は循環流路20によって車両用シートS内を循環する。
【0017】
そして、上記温度調節装置Tは、循環流路20と、この循環流路20に接続された蓄熱器14と、荷重受け板18と、加圧板16とから構成されている。
次に、車両用シートSの温度調節装置Tによって、車両用シートSの座部10を加熱する場合について説明する。なお、ヒータによって蓄熱器14内の蓄熱材が加熱されているとともに、蓄熱材の温熱により第2室13bに貯留された液体が加熱されているものとする。また、座部10に乗員が着座していない状態では、循環流路20内に液体は供給されず、空気(気体)が存在している。
【0018】
さて、上記構成の車両用シートSの座部10に乗員が着座すると、乗員の体重により座クッション11を介して荷重受け板18が荷重を受ける。すると、図2に示すように、付勢バネ19の付勢力に抗してロッド17を介して加圧板16が押し下げられ、逆支弁15を介して加圧板16により第2室13b内が加圧される。このとき、加圧板16の弁部16aが、逆支弁15の連通孔15aの周囲に着座して連通孔15aを閉じて、第2室13bの液体が第1室13aに流入することが阻止される。
【0019】
そして、第2室13b内が乗員の荷重によって加圧されると、荷重を受けることに連動して循環流路20内の空気は第1室13aへ送り出されるとともに、第2室13b内の液体が循環流路20へ送り出され、座クッション11に内蔵された循環流路20にまで、加熱された液体が供給される。このため、座部10に乗員が着座すると、加熱された液体の温熱により座クッション11が暖められて座部10が温められる。第2室13bから押し出され、循環流路20を通過した液体は、ケース13の第1室13aに戻される。
【0020】
その後、乗員が立ち上がり、荷重受け板18が荷重を受けない状態になると、付勢バネ19の付勢力により加圧板16が逆支弁15から離れる方向へ移動し、第2室13b内の加圧状態が解除されるとともに、弁部16aが連通孔15aの周囲から離間する。すると、第1室13aに戻された液体が、連通孔15aを通過して第2室13bに戻されるとともに、第1室13a内の空気が循環流路20を逆流し、循環流路20内に空気が存在する状態に戻る。
【0021】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)車両用シートSに、蓄熱器14を設けるとともに、蓄熱器14の温熱によって加熱された液体を座部10で循環させる循環流路20を設けた。さらに、乗員が座部10に着座することによって発生する荷重を受ける荷重受け板18及びその荷重によって、第2室13b内を加圧する加圧板16を設けた。そして、乗員が座部10に着座することにより、加熱された液体を座部10に送り出すことができる。したがって、加熱された液体を座部10に送り出すためのポンプ部を必要としない。その結果として、温度調節装置Tは、ポンプ部を駆動させるための電源、及びポンプ部を駆動するための制御機構といった電気的構成を必要とせず、温度調節装置Tをコンパクトにすることができる。また、車両用シートSが搭載される車両が、蓄電池の電気エネルギーによって駆動する電気自動車の場合であっても、車両用シートSを加熱するための電源を蓄電池が取ることがなく、電気自動車の走行距離の低下を招くことがない。さらには、車両用シートSを加熱するための電源を必要としないため、車両がキーオンされなくても乗員が座部10に着座しただけで座部10を暖めることができる。
【0022】
(2)座部10に乗員が着座せず、荷重受け板18が荷重を受けていない状態では、循環流路20に液体は供給されておらず、空気(気体)が存在しており、液体はケース13内に貯留されて蓄熱器14によって加熱されている。ここで、座部10に乗員が着座していないときに、循環流路20に液体が供給されていると、循環流路20と外気との熱交換により液体が加熱又は冷却されてしまい好ましくない。よって、座部10に乗員が着座していないときは、循環流路20に液体を供給せず、空気だけとすることで、液体が熱交換されてしまうことを抑制することができる。
【0023】
(3)蓄熱器14内には循環流路20が蛇行する状態で内蔵されている。このため、例えば、循環流路20が蓄熱器14内を直線状に貫通している場合と比べて循環流路20が蓄熱材に接触する表面積を大きくして、循環流路20内の液体を効率よく加熱することができる。
【0024】
(4)第2室13b内を加圧するとき、第2室13b内の液体が第1室13aに逆流するのを阻止するために逆支弁15が設けられている。この逆支弁15はリードバルブよりなるため、例えば、開度を調節可能な開閉弁や電磁弁を用いる場合に比べて温度調節装置Tの製造コストを低く抑えることができる。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図3〜図4にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0026】
図3に示すように、車両用シートSにおいて、座クッション11の下方には箱状をなすフレーム21が配設されるとともに、このフレーム21の上面と座クッション11の下面との間には、荷重受け部としてのエア供給クッション22が介装されている。フレーム21内には、液体が貯留された断熱タンク23と、断熱タンク23から送り出された液体が供給される供給部としてのリザーブタンク24とが収納されるとともに、断熱タンク23とリザーブタンク24とは配管25によって接続されている。配管25上には、断熱タンク23からリザーブタンク24への液体の逆流を阻止する一方で、リザーブタンク24から断熱タンク23への液体の供給を許容する第1逆止弁26が設けられている。
【0027】
断熱タンク23とエア供給クッション22とは供給流路27によって接続され、エア供給クッション22が加圧されるとエア供給クッション22内の空気が断熱タンク23へ送り出されるとともに、断熱タンク23内が加圧され、断熱タンク23内から液体が送り出されるようになっている。よって、第2の実施形態では、エア供給クッション22と供給流路27とから送出部が構成されている。
【0028】
また、断熱タンク23には循環流路20の一端が接続されるとともに、循環流路20の一端側はフレーム21外へ引き出されている。また、循環流路20の一部は座クッション11内を蛇行して貫通し、さらに、循環流路20の他端側はフレーム21を貫通してリザーブタンク24内に引き込まれている。循環流路20上には、断熱タンク23から循環流路20への液体の供給を許容する一方で、循環流路20から断熱タンク23への液体の逆流を阻止する第2逆止弁28が設けられている。断熱タンク23内の液体は、熱源としての図示しないヒータによって加熱される一方で、図示しない冷却装置によって冷却されるとともに、断熱タンク23により加熱又は冷却された液体が断熱されるようになっている。断熱タンク23は、本実施形態において、液体を加熱又は冷却する温度調節部を構成している。そして、上記温度調節装置Tは、循環流路20と、この循環流路20に接続された断熱タンク23と、循環流路20と、エア供給クッション22と、供給流路27と、リザーブタンク24とから構成されている。
【0029】
次に、車両用シートSの温度調節装置Tによって、車両用シートSの座部10を加熱する場合について説明する。なお、ヒータによって断熱タンク23内の液体が加熱されているものとする。また、座部10に乗員が着座していない状態では、循環流路20内に液体は供給されず、空気が存在している。
【0030】
さて、上記構成の車両用シートSの座部10に乗員が着座すると、乗員の体重により座クッション11を介してエア供給クッション22が荷重を受ける。すると、図4に示すように、エア供給クッション22から押し出された空気が供給流路27を介して断熱タンク23に供給され、断熱タンク23内が加圧されるとともに断熱タンク23内に貯留された液体が加圧される。このとき、第1逆止弁26により断熱タンク23からリザーブタンク24への液体の逆流が阻止される。
【0031】
そして、エア供給クッション22が乗員の荷重を受けることに連動して、循環流路20内の空気がリザーブタンク24へ送り出されるとともに、断熱タンク23内の液体が断熱タンク23外へ送り出され、座クッション11に内蔵された循環流路20にまで液体が供給される。このため、座部10に乗員が着座すると、加熱された液体により座部10が温められる。そして、断熱タンク23から押し出された液体は、循環流路20を通過してリザーブタンク24に供給される。その後、乗員が立ち上がり、エア供給クッション22が荷重を受けない状態になると、リザーブタンク24内の液体及び空気が配管25を介して断熱タンク23に戻される。
【0032】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)及び(2)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(5)第2の実施形態では、エア供給クッション22及び供給流路27を用いて断熱タンク23内を加圧して液体を送り出すとともに、送り出された液体をリザーブタンク24に戻すようにした。このため、簡単な構成で座部10を暖めることができる。
【0033】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した第3の実施形態を図5〜図6にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0034】
図5に示すように、車両用シートSにおいて、座クッション11の下方には温度調節部としての蓄熱器30が配設されるとともに、蓄熱器30上には、送出部として、伸縮可能なベローズ31の下端が連結されている。ベローズ31の上端には荷重受け部としての加圧板32の下端が連結されるとともに加圧板32の上端には座クッション11が固定されている。ベローズ31内には液体が封入されている。
【0035】
ベローズ31の下端には、循環流路20の一端がベローズ31内に連通するように接続されるとともに、循環流路20の一部は蓄熱器30内に蛇行するように配設されている。蓄熱器30外へ引き出された循環流路20は、座クッション11内を蛇行するように貫通している。そして、循環流路20の他端には供給部としての補助ベローズ33が接続されている。
【0036】
次に、車両用シートSの温度調節装置Tによって、車両用シートSの座部10を加熱する場合について説明する。なお、蓄熱器30によって循環流路20内の液体が加熱されているものとする。また、座部10に乗員が着座していない状態では、循環流路20内に液体は供給されず、空気が存在している。
【0037】
さて、上記構成の車両用シートSの座部10に乗員が着座すると、乗員の体重により座クッション11を介して加圧板32が荷重を受ける。すると、図6に示すように、加圧板32によりベローズ31が押し縮められるとともに、ベローズ31内が加圧され、ベローズ31内の液体が押し出される。加圧板32が乗員の荷重を受けることに連動したベローズ31の収縮により、循環流路20内の空気は補助ベローズ33に供給されるとともに、押し出された液体が蓄熱器30によって加熱され、さらに、加熱された液体は座クッション11に内蔵された循環流路20にまで供給される。このため、座部10に乗員が着座すると、加熱された液体により座部10が温められる。
【0038】
ベローズ31から押し出された液体は、循環流路20を通過して補助ベローズ33に供給されるとともに、補助ベローズ33は伸張する。その後、乗員が立ち上がり、加圧板32が荷重を受けない状態になると、補助ベローズ33の収縮及びベローズ31の伸張により、補助ベローズ33内の液体及び空気が循環流路20を介してベローズ31に戻される。
【0039】
従って、第3の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)及び(2)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(6)第3の実施形態では、加圧板32、ベローズ31、及び補助ベローズ33を用いて座部10を暖めるようにした。このため、簡単な構成で座部10を暖めることができる。
【0040】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した第4の実施形態を図7にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0041】
図7に示すように、車両用シートSにおいて、座クッション11の下方には温度調節部としての蓄熱器35が配設されるとともに、蓄熱器35内には液体収容部材36が収納されている。この液体収容部材36内には液体が収容されるとともに、コイルバネよりなる付勢バネ37により、液体収容部材36の容積を大きくする方向に付勢されている。液体収容部材36内の液体は、蓄熱器35に封入された蓄熱材の温熱又は冷熱によって加熱又は冷却される。液体収容部材36の上部には送出部としての加圧板38が連結されるとともに、加圧板38には連結ロッド39を介して荷重受け部としての荷重受け板40が連結されている。この荷重受け板40上には座クッション11が固定されている。
【0042】
液体収容部材36には循環流路20の一端が接続されるとともに、循環流路20の一部は座クッション11を貫通している。なお、循環流路20は座クッション11内を蛇行するように配設されている。また、循環流路20の他端は液体収容部材36に接続されている。循環流路20上には、座クッション11内を通過した液体が供給される供給部としての補助液体収容部材41が設けられている。さらに、循環流路20上には、液体収容部材36内から補助液体収容部材41への液体の逆流を阻止する一方で、補助液体収容部材41から液体収容部材36への液体の供給を許容する逆止弁42が設けられている。
【0043】
次に、車両用シートSの温度調節装置Tによって、車両用シートSの座部10を加熱する場合について説明する。なお、蓄熱器35によって液体収容部材36内の液体が加熱されているものとする。また、座部10に乗員が着座していない状態では、蓄熱器35外へ引き出された位置にある循環流路20内に液体は供給されず、空気が存在している。
【0044】
さて、上記構成の車両用シートSの座部10に乗員が着座すると、乗員の体重により座クッション11を介して荷重受け板40が荷重を受ける。すると、荷重受け板40が荷重を受けることに連動して、連結ロッド39を介して加圧板38が押し下げられ、液体収容部材36が押し縮められるとともに、液体収容部材36内が加圧される。そして、液体収容部材36内の液体が押し出され、座クッション11に内蔵された循環流路20にまで液体が供給される。このため、座部10に乗員が着座すると、加熱された液体により座部10が温められる。
【0045】
そして、液体収容部材36から押し出された液体は、循環流路20を通過して補助液体収容部材41に戻される。その後、乗員が立ち上がり、液体収容部材36が荷重を受けない状態になると、付勢バネ37の付勢力により液体収容部材36が容積を大きくするように伸張することにより、補助液体収容部材41内の液体及び空気が循環流路20を介して液体収容部材36に戻される。
【0046】
従って、第4の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)及び(2)の効果を得ることができる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
【0047】
○ 図8に示すように、第1の実施形態において、循環流路20を蓄熱器14内に蛇行させず、循環流路20の一端をケース13に接続してもよい。そして、第2室13b内の液体を蓄熱器14の表面との熱交換により加熱又は冷却するようにしてもよい。
【0048】
○ 第1の実施形態において、付勢バネ19はケース13の上面と荷重受け板18の下面との間に介装されていてもよい。
○ 第1の実施形態において、蓄熱器14は無くてもよく、第2室13b内の液体を外部のヒータ又は冷却装置によって直接加熱又は冷却してもよい。この場合、ケース13が断熱部材によって覆われていることが好ましい。
【0049】
○ 第3の実施形態において、ベローズ31下方の蓄熱器30を削除し、ヒータ又は冷却装置によってベローズ31内の液体を加熱又は冷却するようにしてもよい。
○ 各実施形態及び上記各変更例において、循環流路20を座部10だけでなく背もたれ部50にも延ばし、座部10とともに背もたれ部50も暖める又は冷やすようにしてもよい。
【0050】
○ 各実施形態において、液体を冷やしておき、座部10に乗員が着座すると、冷却された液体により座部10が冷やされるようにしてもよい。
○ 流体として液体の代わりに気体を用いてもよい。
【0051】
○ 温度調節装置Tを備えた車両用シートSは、電気自動車でなくエンジン車、ディーゼル車、産業車両等に搭載されてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0052】
(イ)前記循環流路に送り出された流体が供給される供給部を備える請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の車両用シートの温度調節装置。
(ロ)前記車両用シートの温度調節装置は電気自動車に搭載される請求項1〜請求項3、及び技術的思想(イ)のうちいずれか一項に記載の車両用シートの温度調節装置。
【符号の説明】
【0053】
S…車両用シート、14,30,35…温度調節部としての蓄熱器、16,32,38…送出部としての加圧板、18…荷重受け部としての荷重受け板、20…循環流路、22…荷重受け部としてのエア供給クッション、23…温度調節部としての断熱タンク、27…送出部としての供給流路、40…荷重受け部としての荷重受け板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに内蔵され、該車両用シート内に流体を循環させる循環流路と、
前記循環流路に接続され、前記流体を加熱又は冷却する温度調節部と、
前記車両用シートに内蔵され、前記車両用シートに乗員が着座することにより発生する荷重を受ける荷重受け部と、
前記荷重受け部が前記荷重を受けることに連動して、前記温度調節部によって加熱又は冷却された流体を前記循環流路に送り出す送出部と、を備えることを特徴とする車両用シートの温度調節装置。
【請求項2】
前記車両用シートに前記乗員が着座していない状態では、前記温度調節部から前記循環流路には前記流体が供給されず気体が存在している請求項1に記載の車両用シートの温度調節装置。
【請求項3】
前記温度調節部は、熱源によって加熱又は冷却される蓄熱材を封入した蓄熱器である請求項1又は請求項2に記載の車両用シートの温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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