説明

車両用シート装置

【課題】油圧ショベルの任意方向への傾斜に伴うシートの傾斜を防止できる車両用シート装置を提供する。
【解決手段】シート下部の凸部28を球面軸受32により任意方向に揺動自在に支持した状態で球面軸受32の周囲にてシートの下部をそれぞれ支持する油圧シリンダ33,34,35の少なくともいずれかを、制御手段36の傾斜センサが検出した機体の傾斜角度に対応して伸縮制御してシートを水平に維持することで、機体の任意方向への傾斜に伴うシートの傾斜を確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両としての油圧ショベルなどの作業機械は、下部走行体上に上部旋回体が旋回可能に設けられ、この上部旋回体に、オペレータの運転席すなわちシートを囲むキャブが搭載され、かつ、作業装置が作動可能に突設されている。
【0003】
このような作業機械は、比較的凹凸が多い作業現場などで使用されることが多く、機体が傾斜した状態での作業を強いられることがある。
【0004】
そして、このような傾斜状態での作業において、機体の傾斜に伴いシートが傾斜すると、オペレータは身体が斜めになることを防止するために余分な力を要し、体力を消耗してしまうおそれがあるため、機体の傾斜に対してシートの傾斜を防止し、シートを略水平状態に維持できる構成が望まれている。
【0005】
例えば、シートの下部両側に油圧シリンダをそれぞれ設け、機体の傾斜をセンサにより検出して、この機体の傾斜に対応して両側の油圧シリンダを伸縮させることで、シートの左右の傾斜を補正し、水平状態を維持する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、シートを左右両側方向に揺動自在に軸支し、このシートの下部の一側にシリンダ装置を設け、機体の左右方向の傾斜をポテンショメータにより検出して、この機体の傾斜に対応してシリンダ装置を伸縮させることで、シートを左右に揺動させて水平状態を維持する構成も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】実開平5−80863号公報(第2頁、図4)
【特許文献2】実開平6−33785号公報(第2頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1および2に記載された車両用シート装置では、機体の左右方向への傾斜に対してのみ対応が可能であるに過ぎず、機体が前後方向成分を有する方向へと傾斜した際には、シートを水平に維持できないという問題点を有している。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、車両の任意方向への傾斜に伴うシート部の傾斜を防止できる車両用シート装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、車両に搭載される車両用シート装置であって、シート部と、このシート部の下部をそれぞれ支持する3つ以上のアクチュエータと、車両の傾斜角度を検出するとともに、この検出した傾斜角度に対応してアクチュエータの少なくともいずれかを伸縮制御してシート部を水平に維持する制御手段とを具備したものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用シート装置において、シート部の下部に被支持部が突設され、この被支持部を任意方向に揺動自在に支持する軸受部を具備したものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の車両用シート装置において、被支持部が、球状の凸部であり、軸受部が、凸部を球面支持する球面軸受であるものである。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の車両用シート装置において、アクチュエータのそれぞれが、油圧シリンダであるものである。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の車両用シート装置において、アクチュエータが、シート部の下部を3点支持するものである。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の車両用シート装置において、アクチュエータが、シート部の下部を4点支持するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、シート部の下部をそれぞれ支持する3つ以上のアクチュエータの少なくともいずれかを、制御手段が検出した傾斜角度に対応して伸縮制御してシート部を水平に維持することで、車両の任意方向への傾斜に伴うシート部の傾斜を確実に防止できる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、シート部の下部に被支持部を突設し、この被支持部を軸受部にて任意方向に揺動自在に支持することで、車両の任意方向への傾斜に伴うシート部の傾斜を、被支持部と軸受部とを支点として、アクチュエータの伸縮により容易に吸収できる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、被支持部を球状の凸部とし、この凸部を球面軸受で球面支持することで、簡単な構造でシート部を任意方向に揺動自在となるように容易に支持できる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、アクチュエータのそれぞれを油圧シリンダとすることで、構成を簡略化できる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、シート部の下部をアクチュエータにより3点支持することで、最小限のアクチュエータ数でシート部を任意方向の傾斜に対して水平状態に維持できる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、シート部の下部をアクチュエータにより4点支持することで、シート部をより安定して支持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図5に車両としての作業機械である油圧ショベル1を示し、この油圧ショベル1は、下部走行体2とこの下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3とを有する機体4と、上部旋回体3に作動可能に突設された作業装置5と、上部旋回体3に搭載されオペレータの運転空間を囲むキャブ6とを有している。
【0023】
作業装置5は、ブーム7、アーム8およびバケット9を備え、これらブーム7、アーム8およびバケット9は、ブームシリンダ7a、アームシリンダ8aおよびバケットシリンダ9aなどの油圧アクチュエータによりそれぞれ回動可能となっている。
【0024】
そして、キャブ6内には、車両用シート装置11が設けられている。この車両用シート装置11は、シート部としてのシート12と、このシート12の下部に設けられた機構部13とを備えている。
【0025】
シート12は、座部15、この座部15から上方に突設された背当部16、座部15の両側にそれぞれ設けられた操作装置としてのコンソールボックス17(一方のみ図示)、および、座部15の下部に設けられ機構部13に接続されるベース部18を備えている。
【0026】
座部15は、上部にオペレータが座るものである。
【0027】
背当部16は、オペレータの背面に位置してオペレータの背面を支持するものであり、座部15の後部から上方に突設され、この座部15に対して前後方向に回動可能に軸支されている。また、背当部16の上端部には、オペレータの頭部を支持するヘッドレスト21が突設され、このヘッドレスト21は、背当部16に対する角度、あるいは高さ位置を調整可能に設けられている。
【0028】
各コンソールボックス17には、上部にオペレータの肘掛となるアームレスト24がそれぞれ設けられ、このアームレスト24の前方には、操作レバー25が前後左右方向にそれぞれ揺動可能に設けられている。各操作レバー25は、オペレータの手動操作によりパイロット油圧を発生させ、図示されない油圧ポンプから吐出される作動油を制御する図示されないコントロール弁をパイロット作動して、作動油を作業装置5の各シリンダ7a,8a,9aに給排して作業装置5を動作させるものである。
【0029】
ベース部18は、車両用シート装置11をキャブ6側に接続する部分であり、図1および図2に示される円柱状の被支持体27を内部に備えている。この被支持体27の下部には、図1および図2に示されるように、機構部13により軸支される被支持部としての球状の凸部28が中心部分に突設されている。
【0030】
一方、機構部13は、キャブ6の底部に固定されたケース体31と、このケース体31内に突設された軸受部としての球面軸受32と、ベース部18の下部を支持するアクチュエータとしての油圧シリンダ33,34,35と、ケース体31の後部に設けられた制御手段36とを備えている。
【0031】
ケース体31は、略有底円筒状に形成され、ベース部18の下端部が挿入される開口38を上端部に有している。
【0032】
球面軸受32は、略円柱状に設けられ、ケース体31の底部の中心部分から上方に垂直に突出するとともに、上端部が開口38よりも下側に位置し、この上端部に球状の凸部28を摺動自在に嵌合して球面支持する球面状の凹部41が設けられている。なお、ベース部18を任意方向へと揺動自在に支持する構成としては、ユニバーサルジョイント構造などとすることも可能である。
【0033】
油圧シリンダ33,34,35は、それぞれ略円筒状のシリンダ本体33a,34a,35aと、これらシリンダ本体33a,34a,35a内に摺動自在に収容されたピストン33b,34b,35bと、これらピストン33b,34b,35bに一体的に設けられ先端部がシリンダ本体33a,34a,35aから上方に突出するロッド33c,34c,35cと、これらロッド33c,34c,35cの先端部に設けられベース部18の下端部を支持する支持部33d,34d,35dとを有し、球面軸受32の中心軸を中心とする所定の同一円周C1上に、周方向に略等角度に離間されて位置している。すなわち、油圧シリンダ33,34,35は、平面視で正三角形の頂点上にそれぞれ配設され、その正三角形の重心の上下方向の延長線上にベース部18の被支持体27が位置して、この被支持体27を介してシート12の下部を3点支持している。
【0034】
そして、油圧シリンダ34は、ベース部18の被支持体27の前端部に配設され、油圧シリンダ33,35は、それぞれ油圧シリンダ33,35に対して円周C1の周方向左右に略対称な位置に配設されている。
【0035】
シリンダ本体33a,34a,35aは、ケース体31の底部に略垂直に取付けられている。
【0036】
ピストン33b,34b,35bは、扁平な略円柱状に設けられ、シリンダ本体33a,34a,35aの内部で、ケース体31の底部との間にヘッド室33e,34e,35eを区画している。これらヘッド室33e,34e,35eは、各油圧配管43,44,45によりそれぞれ制御手段36に接続され、内部に付勢手段としてのコイルばね33f,34f,35fがそれぞれ配設されている。
【0037】
ロッド33c,34c,35cは、ヘッド室33e,34e,35eへの圧油の給排により伸縮するものである。
【0038】
支持部33d,34d,35dは、上端側が球状に形成され、ベース部18の被支持体27の下部に、凹部41の支持面よりも上側の位置にて当接する。
【0039】
コイルばね33f,34f,35fは、ロッド33c,34c,35cの伸長を補助するとともに、これらロッド33c,34c,35cの急激な収縮を防止するものである。
【0040】
制御手段36は、図4に示されるように、内部に傾斜検出部としての傾斜センサ51、この傾斜センサ51に電気的に接続された制御部としてのコントローラ52、および、このコントローラ52により制御される電磁比例弁53、および、この電磁比例弁53によりパイロット制御されるコントロール弁CVなどを有したユニットである。
【0041】
傾斜センサ51は、図5に示すキャブ6と一体的に設けられ、この図5に示すキャブ6すなわち油圧ショベル1の傾斜角度を検出してコントローラ52へと出力するものである。
【0042】
コントローラ52は、電磁比例弁53に電気的に接続され、傾斜センサ51からの出力に比例して電磁比例弁53を制御することで、この電磁比例弁53が接続されたコントロール弁CVをパイロット制御し、油圧ポンプPから吐出される作動油を、コントロール弁CVを介して方向制御および流量制御して、各油圧シリンダ33,34,35の伸縮を制御するものである。また、このコントローラ52には、油圧ショベル1の機体4の傾斜限度角が予め設定されており、傾斜センサ51が検出する油圧ショベル1の機体4の傾斜角度に基づいて、機体4の傾斜限度角をオペレータに出力することが可能となっている。
【0043】
電磁比例弁53は、コントローラ52からの出力に比例したパイロット圧をコントロール弁CVに供給するものである。
【0044】
コントロール弁CVは、各油圧配管43,44,45を介して各油圧シリンダ33,34,35に接続され、図示されない複数のスプールをパイロット制御されることで、各油圧配管43,44,45を介して各油圧シリンダ33,34,35を油圧ポンプP、あるいはタンクTに連通させるものである。
【0045】
次に、上記第1の実施の形態の制御を説明する。
【0046】
油圧ショベル1の機体4が水平な通常状態では、各油圧シリンダ33,34,35のロッド33c,34c,35cが略均等に伸び、被支持体27を水平に維持する。
【0047】
油圧ショベル1の機体4が傾斜すると、この傾斜に伴いケース体31および制御手段36の傾斜センサ51が傾斜し、この傾斜角度を傾斜センサ51が検出してコントローラ52に出力する。
【0048】
そして、この傾斜センサ51からの出力に比例した信号をコントローラ52が電磁比例弁53に出力し、この電磁比例弁53から出力されるパイロット圧を制御してコントロール弁CVの動作を制御することで、機体4の傾斜方向および傾斜角度に応じて各油圧シリンダ33,34,35のヘッド室33e,34e,35eを油圧ポンプPあるいはタンクTに選択的に連通させたり、ヘッド室33e,34e,35eに対する作動油の給排を停止させたりし、各油圧シリンダ33,34,35をそれぞれ伸縮させ、ベース部18を介してシート12を水平に維持する。
【0049】
図6に、機体4の傾斜の際の各油圧シリンダ33,34,35の具体的な動作を示す。なお、この図6においては、便宜的に、各油圧シリンダ33,34,35の符号のみを示している。また、この図6においては、8方向の傾斜についてのみ示しているが、各油圧シリンダ33,34,35の伸縮量を適宜制御することにより任意方向への傾斜に対応できることは言うまでもない。
【0050】
機体4が前方向に傾斜した場合には、油圧シリンダ34を、コントロール弁CVを介して油圧ポンプPに連通させてヘッド室34eに作動油を供給してロッド34cを伸長させ、コイルばね34fが伸長して機体4の傾斜角度に比例して上げ動作(アップ)するとともに、油圧シリンダ33,35を、コントロール弁CVを介してタンクTに連通させてヘッド室33e,35eから作動油を抜くことで、球状の凸部28がてこの支点となって油圧シリンダ33,35がコイルばね33f,35fの弾性力に抗して下げ動作(ダウン)し、ベース部18の被支持体27が凸部28を中心として相対的に後方へと揺動して、ベース部18を介してシート12が水平に維持される。
【0051】
同様に、機体4が例えば右方向に傾斜した場合には、油圧シリンダ35を上げ動作し、油圧シリンダ34に対する作動油の給排をロックして油圧シリンダ34を中立状態に維持する(ニュートラル)と、油圧シリンダ33が下げ動作して、図3に示されるように、ベース部18を介してシート12を水平に維持する。
【0052】
このように、上記第1の実施の形態によれば、シート12の下部をそれぞれ支持する油圧シリンダ33,34,35の少なくともいずれかを、制御手段36の傾斜センサ51が検出した機体4の傾斜角度に対応して伸縮制御してシート12を水平に維持することで、機体4の任意方向への傾斜に伴うシート12の傾斜を確実に防止できる。
【0053】
また、シート12下部の凸部28を球面軸受32により任意方向に揺動自在に支持することで、機体4の任意方向への傾斜に伴うシート12の傾斜を、凸部28と球面軸受32とをてこの支点として、油圧シリンダ33,34,35の伸縮により容易に吸収できる。
【0054】
さらに、球状の凸部28を被支持部とし、この凸部28を球面軸受32で球面支持することで、例えばユニバーサルジョイント構造などにより被支持部を軸受部で支持する場合と比較して、簡単な構造でシート12を任意方向に揺動自在となるように容易に支持できる。
【0055】
そして、アクチュエータのそれぞれを油圧シリンダ33,34,35とすることで、車両用シート装置11の構成を簡略化できるとともに、オペレータが座るシート12を支持する充分な力を得ることができる。
【0056】
また、シート12の下部を油圧シリンダ33,34,35により3点支持することで、最小限のアクチュエータ数でシート12を任意方向の傾斜に対して水平状態に維持でき、製造コストを低減できるとともに、制御手段36による制御を簡単にできる。
【0057】
さらに、このようにシート12を水平状態に維持できることで、シート12に座ったオペレータが、常に水平な姿勢を保つことができるので、オペレータの疲労度を軽減でき、作業効率のアップにも繋がる。
【0058】
そして、油圧ショベル1の機体4の傾斜に対してコンソールボックス17もシート12とともに水平に維持されるので、オペレータの操作性が低下することを防止できる。
【0059】
また、傾斜が急な場所などでの作業時でも、傾斜センサ51が検出する機体4の傾斜角度により、オペレータに油圧ショベル1の機体4の傾斜の限界を知らせることが可能となるため、無理な作業を防止できるとともに、油圧ショベル1の横転などを未然に防止できる。
【0060】
さらに、各油圧シリンダ33,34,35などのアクチュエータにてシート12の下部を支持しているため、各油圧シリンダ33,34,35の伸縮量を調整することで、シート12の高さを容易に調整できるとともに、各油圧シリンダ33,34,35により油圧ショベル1の上下動などを吸収することで、シート12の免震機能を持たせることができる。
【0061】
次に、第2の実施の形態を図7および図8を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0062】
本実施の形態は、上記第1の実施の形態の油圧シリンダ33,34,35に代えて、これら油圧シリンダ33,34,35とそれぞれ同様の構成を有するアクチュエータとしての油圧シリンダ61,62,63,64を用い、ベース部18の被支持体27を介してシート12の下部を4点支持するものである。
【0063】
すなわち、これら油圧シリンダ61,62,63,64は、図示しないが、ケース体31の底部に略垂直に取付けられた略円筒状のシリンダ本体と、これらシリンダ本体内に摺動自在に収容されケース体31の底部との間にヘッド室を区画するピストンと、これらピストンに一体的に設けられ先端部がシリンダ本体から上方に突出しヘッド室への圧油の給排により伸縮するロッドと、これらロッドの先端部に設けられベース部18の被支持体27の下部に当接して被支持体27の下端部を支持する支持部とをそれぞれ有し、ヘッド室のそれぞれに付勢手段としてのコイルばねが配設され、球面軸受32の中心軸を中心とする所定の同一円周C2上に、周方向に略等角度に離間されて位置している。
【0064】
さらに、油圧シリンダ61,62,63,64のヘッド室は、各油圧配管66,67,68,69によりそれぞれ制御手段36に接続されている。
【0065】
そして、油圧シリンダ61は、ベース部18の被支持体27の左端部に配設され、油圧シリンダ62は、ベース部18の被支持体27の前端部に配設され、油圧シリンダ63は、ベース部18の被支持体27の右端部に配設され、かつ、油圧シリンダ64は、ベース部18の被支持体27の左端部に配設されている。すなわち、油圧シリンダ61,62,63,64は、平面視で正方形の頂点上にそれぞれ配設され、その正方形の重心の上下方向の延長線上にベース部18の被支持体27が位置している。
【0066】
そして、図8に、機体4の傾斜の際の各油圧シリンダ61,62,63,64の具体的な動作を示す。なお、この図8においては、便宜的に、各油圧シリンダ61,62,63,64の符号のみを示している。また、この図8においては、8方向の傾斜についてのみ示しているが、各油圧シリンダ61,62,63,64の伸縮量を適宜制御することにより任意方向への傾斜に対応できることは言うまでもない。
【0067】
例えば、機体4が前方向に傾斜した場合には、油圧シリンダ64を、コントロール弁CVを介して油圧ポンプPに連通させてそのヘッド室に作動油を供給してロッドを伸長させて機体4の傾斜角度に比例して上げ動作(アップ)し、油圧シリンダ62を、コントロール弁CVを介してタンクTに連通させてそのヘッド室から作動油を抜くことで、油圧シリンダ62を下げ動作(ダウン)するとともに、油圧シリンダ61,63を中立状態(ニュートラル)に維持することで、ベース部18の被支持体27が凸部28をてこの支点として相対的に後方へと揺動し、ベース部18を介してシート12が水平に維持される。
【0068】
このように、上記第2の実施の形態によれば、シート12下部を支持した油圧シリンダ61,62,63,64を傾斜センサ51により検出した機体4の傾斜角度に応じて制御手段36により伸縮制御することで、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0069】
また、ベース部18の被支持体27の下部を油圧シリンダ61,62,63,64で4点支持することにより、シート12をより安定して支持できるとともに、機体4の前後左右方向に対応する位置に油圧シリンダ62,64,61,63をそれぞれ配設することにより、油圧ショベル1の各方向への傾斜に伴うシート12の各方向への傾斜に対して容易に対応できる。
【0070】
なお、上記各実施の形態において、シートを固定したキャブをシート部としても、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
また、上記車両用シート装置11は、油圧ショベル1などの作業機械だけでなく、任意の車両にも適用して用いることが可能である。
【0072】
さらに、アクチュエータは、5つ以上設ける構成も可能である。
【0073】
そして、アクチュエータとしては、円筒状のシリンダにガイド溝を設け、このガイド溝に嵌合するガイド突出部を設けたピストンにロッドを一体に設け、このピストンの位置を、シリンダ内に伸縮自在に収容したコイルばねなどの付勢手段の伸縮を制御することで可変させるものなども、適宜対応して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る車両用シート装置の第1の実施の形態の要部を示す平面図である。
【図2】同上車両用シート装置の要部を示す正面図である。
【図3】同上車両用シート装置の車両傾斜時の水平維持状態を示す正面図である。
【図4】同上車両用シート装置の要部を示すブロック図である。
【図5】同上車両用シート装置を備えた車両を示す説明側面図である。
【図6】同上車両用シート装置の各アクチュエータ動作を示す表である。
【図7】本発明に係る車両用シート装置の第2の実施の形態を示す平面図である。
【図8】同上車両用シート装置の各アクチュエータ動作を示す表である。
【符号の説明】
【0075】
1 車両としての油圧ショベル
11 車両用シート装置
12 シート部としてのシート
28 被支持部としての凸部
32 軸受部としての球面軸受
33,34,35,61,62,63,64 アクチュエータとしての油圧シリンダ
36 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用シート装置であって、
シート部と、
このシート部の下部をそれぞれ支持する3つ以上のアクチュエータと、
車両の傾斜角度を検出するとともに、この検出した傾斜角度に対応してアクチュエータの少なくともいずれかを伸縮制御してシート部を水平に維持する制御手段と
を具備したことを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
シート部は、下部に被支持部が突設され、
この被支持部を任意方向に揺動自在に支持する軸受部を具備した
ことを特徴とする請求項1記載の車両用シート装置。
【請求項3】
被支持部は、球状の凸部であり、
軸受部は、凸部を球面支持する球面軸受である
ことを特徴とする請求項2記載の車両用シート装置。
【請求項4】
アクチュエータのそれぞれは、油圧シリンダである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の車両用シート装置。
【請求項5】
アクチュエータは、シート部の下部を3点支持する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の車両用シート装置。
【請求項6】
アクチュエータは、シート部の下部を4点支持する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−1371(P2007−1371A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181853(P2005−181853)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】