説明

車両用シート

【課題】車両用シートの乗り心地をより向上させることを目的とする。
【解決手段】シートクッションフレーム14に張設されると共に、乗員荷重Fが作用した際に少なくとも一方の端部、例えば前端部16Aが固定端として機能するように配設されたシートクッションスプリング16(弾性部材)を有している。このため、乗員30が着座した際に、シートクッションスプリング16が、固定端となる前端部16Aにおいてシートクッションフレーム14から連続した形状に弾性変形する。換言すれば、シートクッションスプリング16のたわみ曲線の傾きが、前端部16Aで連続した状態となる。このため、乗員に対して違和感を与えないより良好な乗り心地を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションフレームの前部と、該シートクッションフレームの後部に配設された部材とに、シートクッションフレーム用のスプリングを架け渡して配設する構造が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−9997号公報
【特許文献2】特開2002−253380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、シートクッションフレーム用のスプリングを架け渡すための構成の詳細については特に考慮されておらず、乗り心地の点で改善の余地がある。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車両用シートの乗り心地をより向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、シートクッションフレームに張設されると共に、乗員荷重が作用した際に少なくとも一方の端部が固定端として機能するように配設された弾性部材を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車両用シートでは、シートクッションフレームに張設された弾性部材のうち、少なくとも一方の端部が、乗員荷重が作用した際に固定端として機能するので、弾性部材が、乗員が着座した際に、固定端となる端部においてシートクッションフレームから連続した形状に弾性変形する。このため乗員に対して違和感を与えないより良好な乗り心地を提供することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記弾性部材には、前記シートクッションフレームの平面視における該弾性部材の張設方向と直交する方向に振幅を有する波形部が、該張設方向に周期的に形成され、固定端として機能する前記端部として、前記波形部の周期の1/2以上の部分が、前記シートクッションフレームの平面部に重なるように配設されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車両用シートでは、弾性部材には、シートクッションフレームの平面視における該弾性部材の張設方向と直交する方向に振幅を有する波形部が、該張設方向に周期的に形成されており、固定端として機能する端部として、波形部の周期の1/2以上の部分が、シートクッションフレームの平面部に重なるように配設されているので、弾性部材が、乗員が着座した際に、固定端となる端部においてシートクッションフレームの平面部から連続した形状に弾性変形する。このため、乗員に対して違和感を与えないより一層良好な乗り心地を提供することができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記波形部のうち前記平面部に重なる部分に、該部分を覆うカバー部材が一体的に設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車両用シートでは、弾性部材の波形部のうちシートクッションフレームの平面部に重なる部分に、該部分を覆うカバー部材が一体的に設けられているので、弾性部材の位置を規制することができると共に、該弾性部材とシートクッションフレームとの接触による異音の発生を防止することができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記カバー部材は、曲面状に形成された端縁を上面側に有していることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の車両用シートでは、カバー部材が、曲面状に形成された端縁を上面側に有しているので、該曲面状の端縁からシートクッションフレームの平面部への面のつながりをなだらかにすることができる。これにより、カバー部材が乗員に対して異物感を与えることを抑制することが可能である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記カバー部材は、前記シートクッションフレームに張設された複数の前記弾性部材に対して一体的に成形されていることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の車両用シートでは、カバー部材が、シートクッションフレームに張設された複数の弾性部材に対して一体的に成形されているので、該カバー部材をシートクッションフレームに取り付けることにより、複数の弾性部材を一度に張設することができる。このため、シートクッションフレームへの弾性部材の取付け作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用シートによれば、車両用シートの乗り心地をより向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0016】
請求項2に記載の車両用シートによれば、乗員に対して違和感を与えないより一層良好な乗り心地を提供することができる、という優れた効果が得られる。
【0017】
請求項3に記載の車両用シートによれば、カバー部材により弾性部材の位置を規制することができる、という優れた効果が得られる。
【0018】
請求項4に記載の車両用シートによれば、カバー部材が乗員に対して異物感を与えることを抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0019】
請求項5に記載の車両用シートによれば、シートクッションフレームへの弾性部材の取付け作業性を向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係る車両用シート10は、乗員(図示せず)が着座可能なシートクッション12と、該乗員の背もたれとなるシートバック13(図5)とを有して構成され、シートクッションフレーム14に張設された弾性部材の一例たるシートクッションスプリング16を有している。
【0021】
シートクッションフレーム14は、シートクッション12の骨格部材であり、例えば一対のサイドフレーム18と、前部フレーム20と、後部フレーム22と、を有して構成されている。一対のサイドフレーム18は、シートクッション12のシート幅方向両側において夫々シート前後方向に延びる、例えば断面コ字状の部材である。前部フレーム20は、一対のサイドフレーム18の前端側を連結する部材であり、図3に示されるように、シートクッションスプリング16の前端部16Aが取り付けられる平面部20Aと、該平面部20Aに連なりサイドフレーム18の外側面18Aに例えば接合される縦壁部20Bと、平面部20Aのシート前方側に設けられ該例えば平面部20Aよりも傾斜が少ない平面部20Cとを有して構成されている。平面部20A,20Cは、夫々シート幅方向に延びて左右の縦壁部20Bに連結されている。
【0022】
図3に示されるように、前部フレーム20の平面部20Aには、シートクッションスプリング16の前端部16Aを引っ掛けて係止するための係止部24が、該シートクッションスプリング16の本数に対応して設けられている。図1に示されるように、本実施形態では、見かけ上4本のシートクッションスプリング16を用いているため、係止部24も4箇所設けられている。この係止部24は、例えば平面部20Aの一部をフック状に切り起こして形成されている。具体的には、図3において、係止部24は、平面部20Aから立設された後壁部24Bと、該後壁部24Bの上縁からシート前方へ、例えば平面部20Aと略平行に延びた片持ち状の張出し部24Aとを一体的に有している。
【0023】
図1に示されるように、後部フレーム22は、一対のサイドフレーム18の後端側を連結する、例えば丸パイプ材である。シートクッションスプリング16の後端には、該後部フレーム22の外径に対応したフック部16Bが設けられており、該フック部16Bが後部フレーム22に上側から引っ掛けられている。
【0024】
図1において、シートクッションスプリング16は、シートクッションフレーム14に例えば見かけ上4本張設されており、前端部16Aが前部フレーム20に引っ掛けられると共に、フック部16Bが後部フレーム22に引っ掛けられて、シート前後方向に架け渡された状態となっている。このシートクッションスプリング16は、例えば鋼線を折り曲げて構成され、車幅方向に並列に配置される見かけ上2本のシートクッションスプリング16が、前端部16Aにおいて1本に連結された状態となっている。言い換えれば、1本の鋼線から見かけ上2本のシートクッションスプリング16が形成されている。このように構成したのは、部品点数を削減するためである。なお、1本の鋼線から見かけ上2本のシートクッションスプリング16を形成するのではなく、1本の鋼線から1本のシートクッションスプリング16を形成するようにして、実際に4本のシートクッションスプリング16をシートクッションフレーム14に張設するようにしてもよい。
【0025】
またシートクッションスプリング16には、シートクッションフレーム14の平面視における該シートクッションスプリング16の張設方向と直交する方向に振幅を有する波形部16Cが、該張設方向に周期的に形成されている。ここで、シートクッションスプリング16の張設方向とは、シート前後方向であり、該張設方向と直交する方向とは、シート幅方向である。
【0026】
図3において、波形部16Cは、シート幅方向に延びる横線部16Wとシート前後方向に延びる縦線部16Lとにより、例えばジグザグ状に形成されている。図1において、シートクッションスプリング16には、周期Tを1単位として、複数単位の波形部16Cが、シート前後方向に連続して形成されている。シートクッションスプリング16のフック部16Bは、例えば最もシート後方側に位置する縦線部16Lを、後部フレーム22の外形に合せて折り曲げて構成されている。
【0027】
シートクッションスプリング16は、乗員荷重Fが作用した際に(図5)、少なくとも一方の端部、例えば前端部16Aが固定端として機能するように配設されている。具体的には、図2に示されるように、固定端として機能する前端部16Aとして、波形部16Cの周期Tの1/2、即ちT/2以上の部分が、シートクッションフレームの平面部20Aに重なるように配設されている。波形部16Cの周期Tの1/2は、シート前後方向に隣り合う2箇所の横線部16W間のピッチ、及び該2箇所の横線部16Wを連結する縦線部16Lの長さに相当する。
【0028】
本実施形態では、図2,図3に示されるように、シートクッションスプリング16のうち、最もシート前方側の横線部16Wが、前部フレーム20の平面部20A上の係止部24に引っ掛けられており、該横線部16Wと、該横線部16Wの車両後方に隣り合う横線部16Wと、これら2箇所の横線部16Wを連結する縦線部16Lとを含む部分が、少なくとも前部フレーム20の平面部20A上に重なっている。即ち、本実施形態におけるシートクッションスプリング16の前端部16Aとは、波形部16Cのうち前部フレーム20の平面部20Aに重なるように配設される部分をいう。
【0029】
なお、波形部16Cの形状は、ジグザグ状には限られず、例えば略S字状であってもよい。この場合、波形部16Cの周期Tを定めるに当たっては、例えばシートクッションスプリング16のシート幅方向中央を通る中心線(図示せず)が基準とされる。また各波形部16Cの周期Tは一定には限られず、シートクッションスプリング16の部位により変化させてもよい。波形部16Cの周期Tが部位により異なる場合には、最もシート前方に位置する波形部16Cの周期Tを基準として、前部フレーム20の平面部20Aへの重ね量を設定すればよい。
【0030】
図2,図3,図4に示されるように、シートクッションスプリング16の波形部16Cのうち、前部フレーム20の平面部20Aに重なる部分、即ちシートクッションスプリング16の前端部16Aには、該前端部16Aを覆うカバー部材26が一体的に設けられている。図1に示されるように、このカバー部材26は、シートクッションフレーム14に張設された4本のシートクッションスプリング16に対して一体的に成形されており、かつ曲面状に形成された端縁26Aを上面側に有している。
【0031】
具体的には、図3,図4に示されるように、カバー部材26は、例えばシートクッションスプリング16の前端部16Aにモールド成形された合成樹脂部材である。前端部16Aにおいて車両前後方向に隣り合う横線部16Wは、カバー部材26の軸部26S及び本体部26Bにより夫々覆われている。横線部16Wのうち、軸部26Sにより覆われていない部分は、カバー部材26の本体部26B内に位置している。また前端部16Aにおける1箇所の縦線部16Lは、本体部26Bにより覆われている。これにより、前端部16Aは、カバー部材26の表面に露出しないように構成されている。これは、シートクッションスプリング16と前部フレーム20及び係止部24との接触を夫々防止するためである。
【0032】
カバー部材26の2箇所の軸部26Sの間には、開口部26Cが設けられている。この開口部26Cには、カバー部材26を前部フレーム20に取り付ける際に、係止部24が一旦入り込むようになっている。このため、係止部24のシート幅方向寸法は、開口部26Cのシート幅方向寸法よりも若干狭く設定されている。ここで、開口部26Cのシート幅方向寸法は、例えば軸部26Sの長さと同一である。また開口部26Cのシート前後方向寸法は、係止部24のシート前後方向寸法よりも大きく設定されている。
【0033】
カバー部材26を前部フレーム20に取り付ける際には、カバー部材26の開口部26C内に係止部24が入り込むように該カバー部材26を前部フレーム20の平面部20Aに重ねてから、カバー部材26を平面部20Aに沿ってシート後方へスライドさせることで、シート前方側の軸部26Sを係止部24に引っ掛けるようになっている。このため、シート前方側の軸部26Sの更にシート前方側には、このスライド量に対応した例えば開口部26Dが設けられている。図4に示されるように、カバー部材26の取付け状態において、開口部26Dの後壁部26Eは、例えば係止部24における張出し部24Aの先端と近接する位置に設定されている。なお、カバー部材26の強度を高めるために、シート前方側の軸部26Sに対応する部分、即ちシート前方側の横線部16Wを覆う部分を本体部26Bの一部として構成し、開口部26Dの代わりに、係止部24の張出し部24Aの寸法に対応した凹部を設けるようにしてもよい。シート後方側の軸部26Sについても、同様に本体部26Bの一部として構成してもよい。
【0034】
シート前方側の軸部26Sを係止部24に引っ掛け可能とするために、係止部24の張出し部24Aと前部フレーム20の平面部20Aとの離間距離、即ち後壁部24Bの高さは、該軸部26Sの外径に対応して設定されている。なお、後壁部24Bの高さをシート前方側の軸部26Sの直径よりもわずかに小さくして、該軸部26Sを係止部24に引っ掛けた際に、係止部24の弾性力により該軸部26Sが挟持されるように構成してもよい。また軸部26Sを係止部24に引っ掛ける際に節度感が得られるようにすると共に、一度引っ掛けた軸部26Sが係止部24から離脱し難くするために、係止部24における張出し部24Aの一部をシート下方に凸となる形状に構成してもよい。
【0035】
また前部フレーム20の平面部20Aにおける係止部24の後壁部24Bの位置は、カバー部材26を前部フレーム20に取り付けて、シート前方側の軸部26Sが係止部24の後壁部24Bに当接したときに、シート後方側の軸部26Sが前部フレーム20の平面部20A上に位置するように設定されている。図3において、各々の軸部26S内には、シートクッションスプリング16の波形部16Cにおける横線部16Wが配置されているので、言い換えれば、係止部24の後壁部24Bの位置は、平面部20Aの後縁20Dから波形部16Cの周期Tの1/2、即ちT/2以上シート前方側に設定されている。
【0036】
図4に示されるように、カバー部材26の本体部26Bの厚さは、例えば係止部24における後壁部24Bの高さに対応して、該係止部24が本体部26Bの上面から突出しないように設定されている。また、図1に示されるように、カバー部材26における曲面状の端縁26Aは、例えばカバー部材26のシート前後方向の両端縁に設けられ、シート幅方向に延びている。この曲面状の端縁26Aにより、カバー部材26が乗員30(図5)に対して異物感を与えることを抑制できるようになっている。
【0037】
なお、図5に示されるように、シートクッション12は、シートクッションフレーム14を骨格としつつ、図示しないクッション材と、該クッション材を覆うシート表皮28を有して構成されている。
【0038】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1に示されるように、車両用シート10では、シートクッションフレーム14に張設された例えば見かけ上4本のシートクッションスプリング16の前端部16Aに、カバー部材26が一体的に成形されているので、該カバー部材26をシートクッションフレーム14に取り付けることにより、複数のシートクッションスプリング16を一度に張設することができる。具体的には、各々のシートクッションスプリング16の後端に夫々設けられているフック部16Bを、すべて後部フレーム22に引っ掛けてから、カバー部材26におけるシート前方側の軸部26Sを、前部フレーム20の係止部24に夫々引っ掛けることで、すべてのシートクッションスプリング16を、シートクッションフレーム14に対して一度に架け渡すことができる。このため、シートクッションスプリング16の位置決めを容易化することができ、シートクッションフレーム14へのシートクッションスプリング16の取付け作業性を向上させることが可能である。
【0039】
次に、図5において、乗員30が車両用シート10に着座してシートクッション12におけるシートクッションスプリング16に乗員荷重Fが作用した際の作用について説明する。ここで、図5は、乗員荷重Fが作用したときのシートクッションスプリング16の変形を模式的に示す図であり、簡単のためカバー部材26(図4)については外形の図示を省略し、シートクッションスプリング16の前端部16Aにおける横線部16W(図4)の位置を示す軸部26Sのみを図示している。
【0040】
車両用シート10に乗員30が着座すると、シート表皮28及び図示しないクッション材を介して、シートクッションスプリング16のスパン部分、即ち前後の支持点である前部フレーム20と後部フレーム22との間の部分に対し、乗員荷重Fがシート下方に作用する。シートクッションスプリング16は、弾性部材であるので、車両下方にたわみ変形しながら乗員30の体重を支えることができる。このとき、車両用シート10では、シートクッションスプリング16のフック部16Bが回転支点として機能し、前端部16Aが固定端として機能する。
【0041】
具体的には、図2に示されるように、前端部16Aとして、波形部16Cの周期Tの1/2以上の部分が、前部フレーム20の平面部20Aに重なるように配設されており、かつ該前端部16Aにおいては、シート前方側の軸部26Sが係止部24に係止されているため、図5において、乗員荷重Fの入力点により近いシート後方側の軸部26Sが固定端として機能する。これにより、シートクッションスプリング16は、前端部16Aにおいて前部フレーム20の平面部20Aから連続した形状に弾性変形する。言い換えれば、シートクッションスプリング16のたわみ曲線の傾きが、シート後方側の軸部26Sの前後で連続した状態となる。これにより、乗員30に対して違和感を与えないより良好な乗り心地を提供することが可能である。
【0042】
また図1から図4に示されるように、シートクッションスプリング16の前端部16Aには、該前端部16Aを覆うカバー部材26が一体的に設けられているので、シートクッションスプリング16の位置を規制することができる。
【0043】
具体的には、図2において、シートクッションスプリング16は、最もシート前方側の横線部16Wを覆うカバー部材26の軸部26Sにおいて係止部24に引っ掛けられ、かつシートクッションフレーム14に張設されているので、カバー部材26のシート前後方向移動は規制される。このため、シートクッションスプリング16の前端部16Aのシート前後方向位置を規制することができる。またカバー部材26の開口部26C,26Dに、該開口部26C,26Dよりわずかに狭いシート幅方向寸法を有する係止部24が入り込んでいるため、カバー部材26のシート幅方向移動も規制される。このため、シートクッションスプリング16の前端部16Aのシート幅方向位置も規制することができる。そして、カバー部材26が前部フレーム20の平面部20A上に重なった状態となっているので、カバー部材26のシート上下方向移動、特にシート下方への移動が規制される。このため、シートクッションスプリング16の前端部16Aのシート上下方向位置をも規制することが可能である。
【0044】
このようにして、車両用シート10では、シートクッションスプリング16の前端部16Aのシート前後方向、シート幅方向及びシート上下方向の位置を規制することができ、これによって前部フレーム20に対する前端部16Aのがたつきを抑制することができる。
【0045】
またシートクッションスプリング16の前端部16Aをカバー部材26で覆うことにより、シートクッションスプリング16とシートクッションフレーム14との接触による異音を防止することができる。具体的には、シートクッションスプリング16の前端部16Aと前部フレーム20の平面部20A及び係止部24との接触による異音の発生を防止することができる。
【0046】
更に、図1,図2,図4に示されるように、カバー部材26は、曲面状に形成された端縁26Aを上面側に有しているので、該曲面状の端縁26Aからシートクッションフレーム14の平面部20Aへの面のつながりをなだらかにすることができる。これにより、カバー部材26が乗員30に対して異物感を与えることを抑制することが可能である。
【0047】
なお、図5においては、シートクッションスプリング16のフック部16Bが後部フレーム22に対して上側から引っ掛けられているが、図6に示されるように、フック部16Bの湾曲方向を上下逆に構成して、後部フレーム22の下側から引っ掛けるように構成してもよい。乗員荷重Fが作用した際におけるフック部16Bのたわみ開始点がより車両後方となり、有効ばね長をより長くすることができるからである。
【0048】
また上記実施形態では、シートクッションスプリング16の前端部16Aを固定端として機能させる構成としたが、これに限られず、シートクッションスプリング16の後端部を固定端として機能させる構成でもよく、また前端部16A及び後端部の双方を固定端として機能させる構成でもよい。
【0049】
また弾性部材として、図示されるようなシートクッションスプリング16を挙げて説明したが、これに限られるものではなく、シートクッションフレーム14に張設され、乗員30が着座した際に弾性変形して該乗員30の体重を支持可能な部材であれば、どのような部材であってもよい。
【0050】
更に複数のシートクッションスプリング16の前端部16Aに対してカバー部材26を一体的に成形する構成としたが、請求項3又は請求項4に記載の車両用シートにおいては、シートクッションスプリング16毎にカバー部材(図示せず)を設ける構成としてもよい。また請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいては、シートクッションスプリング16の前端部16Aを、係止部24に直接引っ掛ける構成としてもよい。更にシートクッションスプリング16の端部を固定端とする手段については、上記構成には限られず、例えばシート前後方向に延びる所定長さの非波形部を、前部フレーム20の平面部20Aに沿って固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】車両用シートにおけるシートクッションフレーム14及び該シートクッションフレーム14に張設されたクッションスプリングを示す斜視図である。
【図2】シートクッションスプリングの前端部に一体的に設けられたカバー部材を、前部フレームに取り付けた状態を示す拡大斜視図である。
【図3】シートクッションスプリングの前端部に一体的に設けられたカバー部材と、前部フレーム20とを示す分解斜視図である。
【図4】シートクッションスプリングの前端部に一体的に設けられたカバー部材を、前部フレームに取り付けた状態を示す拡大断面図である。
【図5】乗員が着座した際のシートクッションスプリングのたわみ状態を模式的に示す断面図である。
【図6】図5の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 車両用シート
14 シートクッションフレーム
16 シートクッションスプリング(弾性部材)
16A 前端部(端部)
16C 波形部
20 前部フレーム(シートクッションフレーム)
20A 平面部
26 カバー部材
26A 端縁
T 周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションフレームに張設されると共に、乗員荷重が作用した際に少なくとも一方の端部が固定端として機能するように配設された弾性部材を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記弾性部材には、前記シートクッションフレームの平面視における該弾性部材の張設方向と直交する方向に振幅を有する波形部が、該張設方向に周期的に形成され、
固定端として機能する前記端部として、前記波形部の周期の1/2以上の部分が、前記シートクッションフレームの平面部に重なるように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記波形部のうち前記平面部に重なる部分に、該部分を覆うカバー部材が一体的に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記カバー部材は、曲面状に形成された端縁を上面側に有していることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記シートクッションフレームに張設された複数の前記弾性部材に対して一体的に成形されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−220496(P2008−220496A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60405(P2007−60405)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】