説明

車両用シート

【課題】本発明は、別部品としての結着具を必要としない座布団状クッション体を備えた車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シート1のシートクッションSC及びシートバックSBに取り付けられる座布団状クッション体10の周縁には、その全周に渡って嵌合突起部13が設けられている。この嵌合突起部13は、下広がりの断面三角形状をなし、嵌合突起部13は、パッド材11及び表皮12の一部として形成されている。これに対して、座布団収容凹部Sの周縁には、その全周に渡って嵌合凹部4が設けられている。この嵌合凹部4は、アンダーカットとして、下広がりの断面三角形状をなし、嵌合凹部4は、パッド材2及びトリムカバー3の一部として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションとシートバックとの少なくとも一方に適用される座布団状クッション体を具備した車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、実開平5−41462号公報がある。この公報に記載された座布団状クッション体は、上面表皮材と下面表皮材とを重ねて、上面表皮材と下面表皮材の周囲を縫着した袋状表皮と、この表皮内に配置された詰物とからなる。そして、このような座布団状クッション体をシート上に配置させて滑り止めを達成するために、下面表皮材には、植毛からなる滑り止め材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−41462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、座布団状クッション体は、シートの上面に対して着脱自在になっているが、別部品からなる滑り止め材を下面表皮材に設ける必要があるといった問題点がある。なお、座布団状クッション体をシートに装着するための物として、面ファスナーやホックなどの結着具があるが、何れも別部品として座布団状クッション体に取り付ける必要があり、構造が複雑化する。
【0005】
本発明は、別部品としての結着具を必要としない座布団状クッション体を備えた車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シートクッションとシートバックを備えた車両用シートにおいて、
前記シートクッションの座面と前記シートバックの背当て面との少なくとも一方に形成された座布団収容凹部内に座布団状クッション体が埋設され、前記座布団状クッション体の周縁には、嵌合突起部が設けられ、前記座布団収容凹部の周縁には、前記嵌合突起部が差し込まれる嵌合凹部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この車両用シートにおいては、シートクッションの座面とシートバックの背当て面との少なくとも一方に形成された座布団収容凹部内に座布団状クッション体を埋設させている。この埋設にあたって、座布団状クッション体の周縁には、嵌合突起部が設けられ、座布団収容凹部の周縁には、嵌合突起部が差し込まれる嵌合凹部が形成されているので、嵌合突起部と嵌合凹部との協働により、別部品としての結着具を利用することなく、座布団状クッション体がシートに対して着脱自在になり、座布団状クッション体が、シートからズレたり、めくれ上がったりし難くなる。更に、座布団状クッション体は、シートの座布団収容凹部内に埋設されるので、座布団状クッション体がシートから外れ難くなり、しかも、座布団状クッション体の表面とシートの表面とを面一にさせ易く、見栄えもよくなる。
【0008】
また、前記嵌合突起部は、下広がりの断面三角形状をなし、前記嵌合凹部は、前記嵌合突起部に合致する下広がりの断面三角形状をなしていると好適である。
このような構成を採用すると、嵌合突起部や嵌合凹部の大型化が可能であり、しかも、これらは、下広がりの断面三角形状をなしているので、単純な形状で安定した嵌合が可能であり、嵌合凹部内に嵌合突起部を差し込み易いといった優れた効果を有する。
【0009】
また、前記突起部は、水平方向に延在するフランジ形状をなし、前記嵌合凹部は、前記嵌合突起部に合致する溝形状をなしていると好適である。
このような構成は、嵌合突起部の単純化を図っている。
【0010】
また、前記嵌合凹部には、奥側にトリムカバーの縫製部が設けられていると好適である。
このような構成は、嵌合凹部をトリムカバーの縫製で作り出す場合に効果的である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートに座布団状クッション体を固定するにあたって、別部品としての結着具を必要とすることがなく、結着構造をシンプルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両用シートの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】(A)は図1のII−II線に沿う断面図であり、(B)は図2(A)の分解図である。
【図3】本発明に係る車両用シートに適用されるシートクッションの第2実施形態を示す断面図である。
【図4】発明に係る車両用シートに適用されるシートクッションの第3実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両用シートの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1及び図2(A)、(B)に示されるように、車両用シート1は、フロアパネル上で前後に移動自在なシートクッションSCと、シートクッションSCに対してリクライニング可能なシートバックSBとを備えている。シートクッションSC及びシートバックSBは、発泡体からなるパッド材2を有し、パッド材2の表面はトリムカバー3で覆われている。
なお、トリムカバー3は合成樹脂を含浸させて凹凸状にプレス成形した成形不織布を使用するのが好ましい。
【0015】
シートクッションSCの座面には、座面の中央略全面に渉って形成された略矩形の座布団収容凹部Sが形成されている。この座布団収容凹部S内には、座布団状クッション体10が埋設され、汚れや破れによって座布団状クッション体10は、交換可能である。
【0016】
略矩形をなす座布団状クッション体10は、発泡体からなるパッド材11と、パッド材11を覆う表皮12とからなる。なお、座布団状クッション体10のパッド材11及び表皮12の材質は、シートクッションSCのパッド材2及びトリムカバー3の材質と異なっても、同じであってもよい。
【0017】
座布団状クッション体10の周縁には、その全周に渡って嵌合突起部13が設けられている。この嵌合突起部13は、下広がりの断面三角形状をなし、嵌合突起部13は、パッド材11及び表皮12の一部として形成されている。
【0018】
これに対して、座布団収容凹部Sの周縁には、その全周に渡って嵌合凹部4が設けられている。この嵌合凹部4は、アンダーカットとして、下広がりの断面三角形状をなし、嵌合凹部4は、パッド材2及びトリムカバー3の一部として形成されている。
【0019】
このように、嵌合箇所を下広がりの断面三角形状にすることで、嵌合突起部13や嵌合凹部4の大型化が可能であり、しかも、これらは、単純な形状で安定した嵌合が可能であり、嵌合凹部4内に嵌合突起部13を差し込み易いといった優れた効果を有する。
【0020】
この車両用シートにおいては、嵌合突起部13を嵌合凹部4に差し込むだけで、シートクッションSCに座布団状クッション体10を装着することができる。また、嵌合突起部13と嵌合凹部4との協働により、別部品としての結着具を利用することなく、座布団状クッション体10がシートクッションSCに対して着脱自在になり、座布団状クッション体10が、シートクッションSCからズレたり、めくれ上がったりし難くなる。
【0021】
更に、座布団状クッション体10は、シートクッションSCの座布団収容凹部S内に埋設されているので、座布団状クッション体10がシートクッションSCから外れ難くなり、しかも、座布団状クッション体10の表面とシートクッションSCの座表面とを面一にさせ易く、見栄えもよくなる。
また、成形不織布のトリムカバー3を使用することにより、嵌合凹部4の変形が防止され、座布団状クッション体10が、シートクッションSCの座布団収容凹部Sから外れる虞がなくなる。
【0022】
[第2の実施形態]
【0023】
図3に示されるように、シートクッションSC1上に配置される略矩形をなす座布団状クッション体20は、発泡体からなるパッド材21と、パッド材21を覆う表皮22とからなる。なお、座布団状クッション体20のパッド材21及び表皮22の材質は、シートクッションSCのパッド材2及びトリムカバー3の材質と異なっても、同じであってもよい。
【0024】
座布団状クッション体20の周縁には、その全周に渡って嵌合突起部23が設けられている。形状の単純化が図られた嵌合突起部23は、水平方向に延在するフランジ形状又は玉形状をなし、嵌合突起部23は、表皮22の一部として形成されている。この嵌合突起部23は、硬化させられていると好適である。
【0025】
これに対して、座布団収容凹部S1の周縁には、その全周に渉って嵌合凹部6が設けられている。この嵌合凹部6は、アンダーカットとして、溝形状をなし、嵌合凹部6は、パッド材2及びトリムカバー3の一部として形成されている。
【0026】
[第3の実施形態]
【0027】
図4に示されるように、シートクッションSC2において、パッド材2の側面や正面は、トリムカバー3aにより覆われ、座布団収容凹部S2内では、トリムカバー3bがパッド材2に貼られている。そして、トリムカバー3aの端部とトリムカバー3bの端部とは、座布団収容凹部S2の全周において、嵌合凹部8の奥側で縫製部Rにより縫合されている。この嵌合凹部8は、アンダーカットとして、水平面8aと湾曲面8bとで形成されている。
【0028】
トリムカバー3aとトリムカバー3bとの縫製で嵌合凹部8を作り出す場合に、縫製部Rが邪魔になることなく、確実に嵌合凹部8を作り出すことができる。
【0029】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、前述した嵌合突起部13又は嵌合突起部23を有する座布団状クッション体30をシートバックSBの背当て面Bの座布団収容凹部S,S1,S2内に装着することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…車両用シート、3a,3b…トリムカバー、4,6,8…嵌合凹部、10,20,30… 座布団状クッション体、13,23…嵌合突起部、R…縫製部、S,S1,S2…座布団収容凹部、SB…シートバック、SC,SC1,SC2…シートクッション、A…座面、B…背当て面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックを備えた車両用シートにおいて、
前記シートクッションの座面と前記シートバックの背当て面との少なくとも一方に形成された座布団収容凹部内に座布団状クッション体が埋設され、前記座布団状クッション体の周縁には、嵌合突起部が設けられ、前記座布団収容凹部の周縁には、前記嵌合突起部が差し込まれる嵌合凹部が形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記嵌合突起部は、下広がりの断面三角形状をなし、前記嵌合凹部は、前記嵌合突起部に合致する下広がりの断面三角形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記突起部は、水平方向に延在するフランジ形状をなし、前記嵌合凹部は、前記嵌合突起部に合致する溝形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項4】
前記嵌合凹部には、奥側にトリムカバーの縫製部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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