説明

車両用シート

【課題】本発明は、アンダーカット形状をもった発泡体製パッドに、トリムカバーをたるみなく貼着できるようにする。
【解決手段】座布団状クッション体Aと、このクッション体Aを表面に収容する座布団状収容凹部Sとが形成されている発泡体製パッド2をトリムカバー1で被覆してなるシート本体SCとを有し、前記座布団状クッション体Aの周縁には、嵌合突起部aが設けられ、前記座布団収容凹部Sの周縁には、前記嵌合突起部が差し込まれる嵌合凹部S1が形成され、この嵌合凹部S1は、前記嵌合突起部aに対応したアンダーカット形状である車両用シートにおいて、前記パッド2の嵌合凹部S1を形成する部分21に、前記トリムカバー1の一部11、11を木目込み接着されて形成されているので、トリムカバーのたるみ、皺の発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションとシートバックとの少なくとも一方に適用される座布団状クッション体を具備した車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、実開平5−41462号公報がある。この公報に記載された座布団状クッション体は、上面表皮材と下面表皮材とを重ねて、上面表皮材と下面表皮材の周囲を縫着した袋状表皮と、この表皮内に配置された詰物とからなる。そして、このような座布団状クッション体をシート上に配置させて滑り止めを達成するために、下面表皮材には、植毛からなる滑り止め材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−41462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、座布団状クッション体は、シートの上面に対して着脱自在になっているが、別部品からなる滑り止め材を下面表皮材に設ける必要があるといった問題点がある。なお、座布団状クッション体をシートに装着するための物として、面ファスナーやホックなどの結着具があるが、何れも別部品として座布団状クッション体に取り付ける必要があり、構造が複雑化する。
【0005】
そこで、本願出願人は以上の不具合を解消する為に、前記シートクッションの座面と前記シートバックの背当て面との少なくとも一方に形成された座布団収容凹部内に座布団状クッション体が埋設され、前記座布団状クッション体の周縁には、嵌合突起部が設けられ、前記座布団収容凹部の周縁には、前記嵌合突起部が差し込まれる嵌合凹部が形成されている車両用シートを提案した。
【0006】
この車両用シートにおいては、シートクッションの座面とシートバックの背当て面との少なくとも一方に形成された座布団収容凹部内に座布団状クッション体を埋設させている。この埋設にあたって、座布団状クッション体の周縁には、嵌合突起部が設けられ、座布団収容凹部の周縁には、嵌合突起部が差し込まれる嵌合凹部が形成されているので、嵌合突起部と嵌合凹部との協働により、別部品としての結着具を利用することなく、座布団状クッション体がシートに対して着脱自在になり、座布団状クッション体が、シートからズレたり、めくれ上がったりし難くなる。更に、座布団状クッション体は、シートの座布団収容凹部内に埋設されるので、座布団状クッション体がシートから外れ難くなり、しかも、座布団状クッション体の表面とシートの表面とを面一にさせ易く、見栄えもよくなる。
【0007】
ところが、前記嵌合凹部は、前記嵌合突起部に合致するアンダーカット形状をなし、発泡体製パッドに、トリムカバーを被覆して形成せれている。そのため、嵌合凹部は座布団収容凹部の深さ方向に対して直交方向にアンダーカット状に形成されているため、シートクッションの嵌合凹部を形成するトリムカバーがパッドの表面に密着できずに座布団収容部を形成するトリムカバーにたるみ、皺は生じる。
【0008】
本発明は、以上の座布団状クッション体を有するシートにおいて、座布団収容凹部を構成するトリムカバーのたるみ、皺の発生を防止し、座布団収容部内に座布団状クッション体が的確に収容できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は座布団状クッション体と、このクッション体を表面に収容する座布団状収容凹部とが形成されている発泡体製パッドをトリムカバーで被覆してなるシート本体とを有し、前記座布団状クッション体の周縁には、嵌合突起部が設けられ、前記座布団収容凹部の周縁には、前記嵌合突起部が差し込まれる嵌合凹部が形成され、この嵌合凹部は、前記嵌合突起部に対応したアンダーカット形状である車両用シートにおいて、
前記パッドの嵌合凹部を形成する部分に、前記トリムカバーの一部を木目込み接着されて形成されることを特徴とする。
【0010】
この車両用シートによれば、トリムカバーの一部のみを木目込み、木目込んだ部分を接着するのみでシート本体の座布団収容凹部及びその外周部に、トリムカバーのたるみ、皺の発生を防止できる。従って、座布団収容凹部の形状出しが的確に行われ、収容状態の座布団状クッション体にズレ、異物感が無くなる。
【0011】
また、単にトリムカバーの一部分のみを接着すればよいため、シート本体の製造作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、座面等の座布団状クッション体を着脱自在に収容する座布団収容凹部とアンダーカット状の嵌合凹部とを有するシート本体において、そのシート本体の表面を形成するトリムカバーに、たるみ、皺が発生することなく、効率よくシート本体が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用シートの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】シート本体を形成する前の状態の断面図である。
【図4】トリムカバーの一部をパッドに木目込んだ状態の断面図である。
【図5】トリムカバーの一部をパッドに接着した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両用シートの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1及び図2に示されるように、車両用シートは、フロアパネル上で前後に移動自在なシートクッション本体SCと、シートクッション本体SCに対してリクライニング可能なシートバック本体SBとを備えている。シートクッション本体SC及びシートバック本体SBは、発泡体からなるパッド材2を有し、パッド材2の表面はトリムカバー1で覆われている。
【0016】
シートクッション本体SCの座面には、座面の中央略全面に渉って形成された略矩形の座布団収容凹部Sが形成されている。この座布団収容凹部S内には、座布団状クッション体Aが埋設され、汚れや破れによって座布団状クッション体Aは、交換可能である。
【0017】
略矩形をなす座布団状クッション体Aは、発泡体からなるパッド材と、パッド材を覆う表皮とからなる。なお、座布団状クッション体Aのパッド材及び表皮の材質は、シートクッション本体SCのパッド材1及びトリムカバー2の材質と異なっても、同じであってもよい。
【0018】
座布団状クッション体Aの周縁には、図5に示す様に、その全周に渡って嵌合突起部aが設けられている。図示する嵌合突起部aは、水平方向に延在するフランジ形状をなしている。嵌合突起部aは、パッド材及び表皮の一部として形成されている。
【0019】
これに対して、座布団収容凹部Sの内周壁には、その全周に渉って嵌合凹部S1が設けられている。図示する嵌合凹部S1は、アンダーカットとして、嵌合凹部S1の深さ方向に対して直交状に形成されパッド材2及びトリムカバー1の一部として形成されている。
【0020】
この車両用シートにおいては、嵌合突起部aを嵌合凹部S1に差し込むだけで、シートクッション本体SCに座布団状クッション体Aを装着することができる。また、嵌合突起部aと嵌合凹部S1との協働により、別部品としての結着具を利用することなく、座布団状クッション体Aがシートクッション本体SCに対して着脱自在になり、座布団状クッション体Aが、シートクッション本体SCからズレたり、めくれ上がったりし難くなる。
【0021】
以上のシートクッション本体SCは、モールド加工した発泡体製パッド2と、このパッド2を被覆するトリムカバー1とから構成され、トリムカバー1はパッド2に対してたるみ、皺なく貼着されている。
【0022】
このトリムカバー1の貼着方法を図3,4,5に示す。
図3に示す様に、パッド2には前記座布団収容凹部Sを形成する凹窪部20が形成され、この凹窪部20の内周面には凹窪部20の深さ方向に対して直交状に、前記嵌合凹部S1を形成するアンダーカット状などの溝部21が形成されている。
図中、22は凹窪部20の底面、23,23はパッド2の土手部、24,24はパッド2の側面部を夫々示す。
【0023】
一方、トリムカバー1はパッド2の土手部23,23、側面部24,24を被覆する外周部12と、この外周部12に接ぎ合わせてパッド2の溝部21内に木目込まれる木目込み部11,11と、この木目込み部11、11に接ぎ合わされパッド2の凹窪部20内の底面22を被覆する底布部10とから構成されている。
【0024】
そして、前記木目込み部11,11の内側には加熱することにより溶融する接着剤13,13があらかじめ付着されている。
【0025】
以上のトリムカバー1をパッド2に被せて、図4に示す様に、トリムカバー1の木目込み部11,11をパッド2の溝部21に木目込む。
【0026】
然る後、木目込み部11,11を蒸気等で加熱すると、図5に示す様に、接着剤13が溶融して木目込み部11,11がパッド2の溝部21内に接着される。
【0027】
そして、トリムカバー1の外周部12,12は、その端末12Aがパッド2の底面側に設けたワイヤなどに結着されてシートクッション本体SCが形成される。
【0028】
これにより、トリムカバー1は木目込み部21が環状にパッド2側に固着されるため、トリムカバー1の底布部10、外周部12、12にたるみ、皺が発生することがなく、前記座布団収容凹部Sが形成される。
【0029】
そのため、前記シートクッション本体SCの座布団収容部Sの形状出しが的確に行われ、座布団収容部Sに、座布団状クッション体Aを着脱自在に収容した際、シートクッション本体SCに座布団状クッション体Aがズレたりすることがない。
また、トリムカバーの一部のみを接着すればよいので、シートクッション本体SCの製造作業性を向上し得る。
【0030】
なお、本発明のシートクッション本体SC、座布団状クッション体Aに使用するトリムカバーは、合成樹脂を含浸させて凹凸状にプレス成形した成形不織布で形成することにより、シートクッション本体SCなどの表面形状の保形性が向上するため、座布団状クッション体Aの収容状態が良好になる。
【0031】
また、本発明はシートバック本体SBにも適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
SCはシート本体(シートクッション本体)、Aは座布団状クッション体、Sは座布団収容凹部、S1は嵌合凹部、1はトリムカバー、11,11はトリムカバーの一部、13は接着剤、2はパッド、21は溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座布団状クッション体と、このクッション体を表面に収容する座布団状収容凹部とが形成されている発泡体製パッドをトリムカバーで被覆してなるシート本体とを有し、前記座布団状クッション体の周縁には、嵌合突起部が設けられ、前記座布団収容凹部の周縁には、前記嵌合突起部が差し込まれる嵌合凹部が形成され、この嵌合凹部は、前記嵌合突起部に対応したアンダーカット形状である車両用シートにおいて、
前記パッドの嵌合凹部を形成する部分に、前記トリムカバーの一部を木目込み接着されて形成される車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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