説明

車両用シート

【課題】ヘッドレストがシートバック内とシートバック上方との間を移動可能に設けられている車両用シートにおいて、ヘッドレストを簡便に使用位置まで移動させる。
【解決手段】シートバック30に対して上下に移動可能に設けられたヘッドレスト40は、最も下方に移動したとき、シートバック30上端部の外形を一部窪ませて設けられた格納凹部35内(格納位置P0)に格納される。シートクッション20のクッションばね24はシート10内に配索されたワイヤ50によりヘッドレスト40と機械的に連結されて、着座者Sの荷重によりクッションばね24が下方に撓むとその量に応じてヘッドレスト40が上方の使用位置P1,P2まで取り出される。一方でヘッドレスト40は付勢部材により格納位置P0方向へ付勢されており、クッションばね24の撓みが除去されるとヘッドレスト40は格納位置P0に引き戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、ヘッドレストがシートバック内の格納位置とシートバック上方の使用位置との間を移動可能に設けられている車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの上部に設けられるヘッドレストは、着座者が着座していないときは必要ないものであり、運転者が後方視認する際等の視界の邪魔となる。これに鑑みて、ヘッドレストを使用しないときにはシートバック内に格納可能とされた車両用シートが従来知られている。このような車両用シートは、例えば下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−189033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術によると、着座者が手動でノブを操作することによりヘッドレストを移動させる必要があるため使い勝手が良くないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ヘッドレストがシートバック内の格納位置とシートバック上方の使用位置との間を移動可能に設けられている車両用シートにおいて、ヘッドレストを簡便に使用位置まで移動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両用シートは次の手段をとる。
本発明の第1の発明に係る車両用シートは、着座者が着座するシートクッションと、着座者の背凭れとなるシートバックと、着座者の頭部を支持するヘッドレストとを備え、該ヘッドレストが、前記シートバック内の格納位置と該シートバック上方の使用位置との間を移動可能に設けられている車両用シートにおいて、前記シートクッションには着座者の着座荷重によって撓む部位の撓み変形を検出する検出機構が備えられており、該シートクッションに備えられる検出機構により検出される撓み変形動作は前記ヘッドレストを移動させる動作としてワイヤ等の機械的伝達機構を介してヘッドレストに伝達連結されており、前記機械的伝達機構による伝達連結は、着座者がシートクッション上に着座する荷重により前記ヘッドレストがシートバック内の格納位置からシートバック上方の使用位置方向に動作される伝達連結とされていることを特徴とする。
この構成によれば、着座者がシートクッション上に着座すると、検出機構がその荷重によるシートクッションの撓み変形を検出し、機械的伝達機構がこの撓み変形動作をヘッドレストの移動動作として伝達し、ヘッドレストをシートバック内の格納位置からシートバック上方の使用位置に移動させる。したがって、着座者がシートクッション上に着座するだけでヘッドレストを簡便にシートバック上方の使用位置に移動させることができる。
【0007】
本発明の第2の発明に係る車両用シートは、第1の発明に係る車両用シートであって、前記ヘッドレストの可能な移動は、前記使用位置と前記格納位置との間の上下方向の移動であることを特徴とする。
この構成によれば、ヘッドレストの可能な移動は使用位置と格納位置との間での上下方向の移動であるため、本発明を簡単な構造にて実施することができる。
【0008】
本発明の第3の発明に係る車両用シートは、第1又は第2の発明に係る車両用シートであって、前記ヘッドレストは、付勢部材により前記格納位置方向に付勢されていることを特徴とする。
この構成によれば、着座者がシートクッションから離れると、ばね部材が元の位置に復元してワイヤが緩むため、付勢部材により付勢されたヘッドレストが格納位置へ移動される。したがって、着座者がシートクッションから離れるだけで簡便にヘッドレストをシートバック内の格納位置に移動させることができる。
【0009】
本発明の第4の発明に係る車両用シートは、第1から第3までのいずれかの発明に係る車両用シートであって、前記機械的伝達機構による伝達連結は、前記ヘッドレストの使用位置方向への移動量が前記シートクッション上に着座する着座者の荷重に応じて変わる伝達連結構成であることを特徴とする。
この構成によれば、ヘッドレストの使用位置方向への移動量が前記シートクッション上に着座する着座者の荷重に応じて変わるため、着座者がシートクッション上に着座することにより、ヘッドレストの使用位置を最適な位置に調節することができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、着座者がシートクッション上に着座するだけでヘッドレストを簡便にシートバック上方の使用位置まで移動させることができる。
第2の発明によれば、本発明を簡単な構造にて実施することができる。
第3の発明によれば、着座者がシートクッションから離れるだけで簡便にヘッドレストをシートバック内の格納位置に移動させることができる。
第4の発明によれば、着座者がシートクッション上に着座することにより、ヘッドレストの使用位置を最適な位置に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る車両用シートを左側から見た概念図である。
【図2】実施形態に係るヘッドレストが格納位置にある状態を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係るヘッドレストが使用位置にある状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
図1には、車両に設けられて乗員が使用する車両用シート10が示されている。シート10は、着座者Sである乗員が着座するシートクッション20と、着座者Sの背凭れとなるシートバック30と、着座者Sの頭部を支持するヘッドレスト40とを備えている。シートバック30は、シートクッション20の後端部に連結され、この連結部に設けられたリクライニング装置によりシートバック30に対する角度を調節することが可能とされている。ヘッドレスト40は、シートバック30に取り付けられており、後に詳述する構成により、不使用時はシートバック30内の格納位置P0に移動させて格納し、使用時にはシートバック30上方の使用位置P1,P2まで取り出すことが可能となっている。使用しないヘッドレスト40をシートバック30内に格納することにより、運転者が後方視認する際等においてヘッドレスト40が視界の邪魔とならない。
【0013】
シートクッション20は、その骨格を成す金属製のシートクッションフレーム21を備えている。シートクッションフレーム21は、図1に示されるように、その前辺を成す前枠部材22と、後辺をなす後枠部材23とを備えている。同図には、この前枠部材22と後枠部材23以外の構造は省略されている。シートクッション20はまた、着座面を含む外形を形成する部材として、シートクッションフレーム21の外側を覆うクッション性を有するパッド材28と、これに覆い被せられる表皮材29とを有している。前枠部材22と後枠部材23との間には、クッションばね24が前後方向に架け渡されて設けられている。クッションばね24は、上記のように架け渡された状態で少なくとも下方向に関して弾性を有する部材である。これにより着座者Sがシートクッション20の着座面に着座する際、その荷重に応じてクッションばね24が上記のパッド材と共に下方向に撓み変形を生じる。すなわち、下方向に加えられる着座荷重が大きいほど、クッションばね24の下方向への撓み量は大きくなる。
【0014】
シートバック30は、その骨格を成す金属製のシートバックフレーム31を備えている。シートバックフレーム31は、図2及び図3に示されるように、その上辺から側辺の上部までを成すアッパフレーム32を有している。アッパフレーム32の左右の側辺部分には、ヘッドレスト40の取り付けフレーム33が架け渡されて設けられている。なお同図には、シートバックフレーム31の下部構造は省略されている。この取り付けフレーム33には、2個の金属製のブラケット34が固定されている。ブラケット34は筒形状を有しており、この筒形状を上下方向に向けた状態で取り付けフレーム33の左右の前面にそれぞれ溶接されている。
一方、ヘッドレスト40は、左右に配された2本の金属製のステー41を介して上記のブラケット34に支持されている。ステー41は棒形状を有し、ヘッドレスト40の下端部において下方へ延びるように設けられている。棒形状のステー41は、ブラケット34の筒形状内に挿通されて、ブラケット34に対して上下方向に移動可能となっている。これによりヘッドレスト40はシートバック30に対して上下に移動可能となっている。
シートバック30はまた、背凭れ面を含む外形を形成する部材として、シートバックフレーム31の外側を覆うクッション性を有するパッド材38と、これに覆い被せられる表皮材39とを有している。シートバック30の上端部には、この外形を形成する部材を一部窪ませて、ヘッドレスト40を内部に格納可能な格納凹部35が設けられている。ヘッドレスト40は、最も下方に移動させるとこの格納凹部35内(格納位置P0)に格納される。
【0015】
シート10には、以下に説明するように、シートクッション20のうち着座者Sの着座荷重により撓む部位の変形動作を検出し、その変形動作をヘッドレスト40の移動動作として伝達する機構が備えられている。本実施形態においては、シートクッション20のうちクッションばね24の変形動作が検出される。このクッションばね24は、シート10内に配索されたワイヤ50によりヘッドレスト40と機械的に連結されている。すなわちワイヤ50の一端は、前後方向に延びるクッションばね24の撓む部位に取り付けられ、他端はヘッドレスト40の側部に設けられたワイヤ取り付け部43に取り付けられている。
シート10内のワイヤ50の配索は、シートクッションフレーム21やシートバックフレーム31に取り付けられた3個の滑車によって、動作方向を切り替えながらなされている。クッションばね24の下方への撓み変形動作は、まずシートクッション20内において第1の滑車51により前方向に引く動作に切り替えられ、次にシートクッション20とシートバック30との連結部において第2の滑車52によりシートバック30内の下方向に引く動作に切り替えられ、最後にシートバック30内において第3の滑車53により動作方向が上下逆転されてヘッドレスト40を上方に引き上げる動作として伝達される。なお図1から図3までに示されるように、第3の滑車53はアッパフレーム32に取り付けられているが、第1及び第2の滑車は取り付け相手となる骨格部材が省略されている。特に第1の滑車は乗員の着座によるパッド材28の変形の邪魔とならない位置に配設されている。
以上により、クッションばね24が下方に撓むと、この撓み変形量の分だけヘッドレスト40が上方の使用位置P1,P2方向に移動する。
【0016】
一方で前記の取り付けフレーム33には、ヘッドレスト40を格納位置P0方向へ付勢する付勢部材42が取り付けられている。本実施例では、図2及び図3に示されるように、付勢部材42は引っ張りコイルばねが用いられている。したがって上述のようにヘッドレスト40が使用位置P1,P2方向へ移動される際には、この付勢部材42の付勢力に逆らってなされることとなる。逆に、クッションばね24の撓み変形が除去されると、付勢部材42によりヘッドレスト40が格納位置P0に移動されると共に、ワイヤ50が他端側(ヘッドレスト40側)に引き戻される。
【0017】
以上のように構成されるシート10は、以下のような作用効果を奏する。
この構成によれば、着座者Sがシートクッション20上に着座し、その荷重によりクッションばね24に下方への撓み変形が生じるとき、クッションばね24に取り付けられたワイヤ50の一端がこの変形動作により引かれることで、このワイヤ50を介してその動作がヘッドレスト40に伝達され、ワイヤ50の他端が取り付けられたヘッドレスト40が引かれて使用位置P1,P2方向に移動する。これにより、着座者Sがシートクッション20上に着座するだけで、ヘッドレスト40をシートバック30内の格納位置P0からシートバック30上方の使用位置P1,P2まで取り出すことができる。
さらにこの構成によれば、着座者Sがシートクッション20上に着座した際、その荷重に応じてクッションばね24の撓み変形量が変化し、ワイヤ50の引かれる量も変化する。またヘッドレスト40の可能な移動は上下方向であるから、このときヘッドレスト40の格納位置P0から上方向への移動量も変化する。すなわちヘッドレスト40の使用位置は着座者Sの大きさが大きいときは例えば図1に符号P2にて示す高い位置に達し、小さいときは例えば同図に符号P1にて示す低い位置に留まる。したがって、ヘッドレスト40の使用位置P1,P2を着座者Sの大きさに合わせた高さに自動的に調節することができ、従来のように手動で高さ調節を行う必要がなくなる。またこれにより、着座者Sの大きさに関わらずヘッドレスト40により確実に着座者Sの頭部を支持できるため、車両が後突を受けた際の鞭打ち症対策にも有効となる。
さらにこの構成によれば、ヘッドレスト40を格納位置P0方向へ付勢する付勢部材42が取り付けられている。このため、着座者Sがシートクッション20から離れシートクッション20への荷重が除去されると、クッションばね24の撓み変形が除去され、ヘッドレスト40が付勢部材42により格納位置P0に引き戻される。したがって、着座者Sがシートクッション20上から離れるだけでヘッドレスト40をシートバック30内に格納することができる。
【0018】
なお、本発明に係る車両用シートは、上記の実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施できるものである。
本実施形態における動作の伝達はワイヤ50と滑車51,52,53とを利用する機構により行っていたが、機械的な伝達機構である限り、例えばリンクや歯車による伝達や、空気やオイル等の流体を利用した伝達としても良い。
本実施形態においては、着座者Sがシートクッション20上に着座した際のクッションばね24の撓み変形を検出する構成とされていたが、パッド材28等、シートクッション20において撓み変形を生じるその他の部位(部材)の変形を検出する構成としても良い。
本実施形態においては、ワイヤ50を介してクッションばね24の撓み量に応じた分だけヘッドレスト40が使用位置方向に移動される構成とされていたが、ワイヤ50の一端側(クッションばね24側)と他端側(ヘッドレスト40側)のうち少なくとも片側に公知の倍速移動機構を設けることにより、ヘッドレスト40の移動量をクッションばね24の撓み量よりも大きくとる構成としても良い。例えばワイヤ50の一端側と他端側においてそれぞれ2倍の倍速移動機構を設ければ、ヘッドレスト40の移動量をクッションばね24の撓み量の4倍とすることができる。このような倍速移動機構を設ける構成によれば、クッションばね24の弾性が比較的に硬めに設定されてその撓み量が小さい場合であっても、ヘッドレスト40の移動量を必要な分だけ確保することができる。
また本実施形態は動作伝達するワイヤ50がシートクッション20とシートバック30との連結部を通過するものであるが、この連結部にリクライニング機構を設けてシートバック30をシートクッション20に対して角度調節可能とする形態とする場合においては、第2の滑車をこの角度調節を行う回動軸と同軸に設ければ角度調節がワイヤ50による動作伝達に影響を与えない。
本実施形態におけるヘッドレスト40は上下方向に移動するものであったが、シートバック30の上端部に回動可能に取り付けられて、シートバック30内の格納位置から後側を通って上方の使用位置まで跳ね上がるように移動するものとしても良い。このような跳ね上げ式のヘッドレストとする場合、本実施形態のように着座者Sの大きさによって使用位置を変えることはできない。このため、例えばヘッドレストを使用位置方向に付勢する部材とヘッドレストを格納位置に保持するストッパとを設けて、着座によるクッションばねの撓み変形が検知されるとその撓み量に関わらずその動作がストッパを外すような動作として伝達されてヘッドレストが使用位置に跳ね上がるような構成とする必要がある。
【符号の説明】
【0019】
10 シート
20 シートクッション
21 シートクッションフレーム
22 前枠部材
23 後枠部材
24 クッションばね
28 パッド材
29 表皮材
30 シートバック
31 シートバックフレーム
32 アッパフレーム
33 ヘッドレストの取り付けフレーム
34 ブラケット
35 ヘッドレストの格納凹部
38 パッド材
39 表皮材
40 ヘッドレスト
41 ステー
42 付勢部材
43 ワイヤ取り付け部
50 ワイヤ
51 第1の滑車
52 第2の滑車
53 第3の滑車
S 着座者
P0 格納位置
P1 使用位置(着座者が小さい場合)
P2 使用位置(着座者が大きい場合)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が着座するシートクッションと、着座者の背凭れとなるシートバックと、着座者の頭部を支持するヘッドレストとを備え、
該ヘッドレストが、前記シートバック内の格納位置と該シートバック上方の使用位置との間を移動可能に設けられている車両用シートにおいて、
前記シートクッションには着座者の着座荷重によって撓む部位の撓み変形を検出する検出機構が備えられており、
該シートクッションに備えられる検出機構により検出される撓み変形動作は前記ヘッドレストを移動させる動作としてワイヤ等の機械的伝達機構を介してヘッドレストに伝達連結されており、
前記機械的伝達機構による伝達連結は、着座者がシートクッションに着座する荷重により前記ヘッドレストがシートバック内の格納位置からシートバック上方の使用位置方向に動作される伝達連結とされていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記ヘッドレストの可能な移動は、前記使用位置と前記格納位置との間の上下方向の移動であることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記ヘッドレストは、付勢部材により前記格納位置方向に付勢されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用シートであって、
前記機械的伝達機構による伝達連結は、前記ヘッドレストの使用位置方向への移動量が前記シートクッションに着座する着座者の荷重に応じて変わる伝達連結構成であることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−103550(P2013−103550A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247434(P2011−247434)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】