説明

車両用シート

【課題】生体センサから安定して出力信号を得ることが課題である。
【解決手段】車両用シート10は、乗員Pを支持するためのクッション材16と、クッション材16を覆うと共に、クッション材16の表面部のうち前面部16Cから外れた角部周辺部16Dに互いの端末部20A,22Aが位置する第一シート表皮20及び第二シート表皮22と、第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22A同士を固定する固定部材30と、固定部材30に取り付けられ、固定部材30の変形に応じた信号を出力する生体センサ38と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートバックに設けられ乗員の胸郭の変位を検出する胸郭変位検出センサを備えた座席が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−165588号公報
【特許文献2】特開2003−42866号公報
【特許文献3】特開2001−61598号公報
【特許文献4】特開2003−291708号公報
【特許文献5】特開2002−211297号公報
【特許文献6】特開2011−126470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体センサが車両用シートにおける乗員支持部(特に、乗員支持部の表層部)に設けられた場合には、乗員の荷重が生体センサに直接的に入力される。このため、例えば乗員の体格や座り方等によって生体センサの出力信号の値が変動する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、生体センサから安定して出力信号を得ることができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用シートは、乗員を支持するためのクッション材と、前記クッション材を覆うと共に、前記クッション材の表面部のうち乗員支持部から外れた部分に互いの端末部が位置する第一シート表皮及び第二シート表皮と、前記第一シート表皮及び前記第二シート表皮の端末部同士を固定する固定部材と、前記固定部材に取り付けられ、前記固定部材の変形に応じた信号を出力する生体センサと、を備えている。
【0007】
この車両用シートにおいて、クッション材を覆う第一シート表皮及び第二シート表皮の端末部同士は、クッション材の表面部のうち乗員支持部から外れた部分に位置されており、互いに固定部材により固定されている。また、この固定部材には、生体センサが取り付けられている。
【0008】
そして、この車両用シートでは、例えば、乗員からクッション材に入力される荷重が増減されると、このクッション材の変形に伴って第一シート表皮及び第二シート表皮の端末部の間に作用する引張力が増減する。また、この引張力の増減に伴い固定部材が変形すると、生体センサから固定部材の変形に応じた信号が出力される。
【0009】
このように、この車両用シートによれば、クッション材の表面部のうち乗員支持部から外れた部分に第一シート表皮及び第二シート表皮の端末部同士が位置されている。そして、この端末部同士を固定する固定部材が乗員のクッション材への入力荷重の増減に伴って変形されると、この固定部材の変形に応じた信号が生体センサから出力される。従って、乗員の荷重が生体センサに直接的に入力されることを回避できるので(生体センサにおいて乗員の荷重を間接的に検出できるので)、例えば乗員の体格や座り方等の影響を抑制することができる。これにより、生体センサの出力信号の値が変動することを抑制することができるので、生体センサから安定して出力信号を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記固定部材が、前記第一シート表皮の端末部と前記第二シート表皮の端末部とに引っ掛けられたホグリングと、前記第一シート表皮の端末部に沿って設けられ、前記ホグリングの内側に挿通された吊ワイヤと、を有し、前記生体センサが、前記吊ワイヤに取り付けられた構成とされている。
【0011】
この車両用シートによれば、生体センサは、第一シート表皮の端末部に沿って設けられた吊ワイヤに取り付けられている。従って、生体センサの取付が容易であるので、生体センサの取付部の構造を簡素化することができる。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記ホグリングが、前記第一シート表皮の端末部及び前記第二シート表皮の端末部が並んで延びる方向に間隔を空けて複数設けられ、前記生体センサが、隣り合う前記ホグリングの間において前記吊ワイヤに取り付けられた構成とされている。
【0013】
この車両用シートによれば、生体センサは、隣り合うホグリングの間において吊ワイヤに取り付けられている。従って、生体センサが吊ワイヤのうち変形の大きい部分に取り付けられているので、生体センサからより一層安定して出力信号を得ることができる。
【0014】
請求項4に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記固定部材が、前記第一シート表皮の端末部と前記第二シート表皮の端末部とに引っ掛けられたホグリングを有し、前記生体センサが、前記ホグリングに取り付けられた構成とされている。
【0015】
この車両用シートによれば、生体センサは、第一シート表皮の端末部と第二シート表皮の端末部とに引っ掛けられたホグリングに取り付けられている。従って、生体センサの取付が容易であるので、生体センサの取付部の構造を簡素化することができる。
【0016】
請求項5に記載の車両用シートは、請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記生体センサが、前記ホグリングにおける前記第一シート表皮の端末部に引っ掛けられた一端側と前記第二シート表皮の端末部に引っ掛けられた他端側との間の中間部に取り付けられた構成とされている。
【0017】
この車両用シートによれば、生体センサは、ホグリングにおける第一シート表皮の端末部に引っ掛けられた一端側と第二シート表皮の端末部に引っ掛けられた他端側との間の中間部に取り付けられている。従って、生体センサがホグリングのうち変形の大きい部分に取り付けられているので、生体センサからより一層安定して出力信号を得ることができる。
【0018】
また、前記課題を解決するために、請求項6に記載の車両用シートは、乗員を支持するためのクッション材と、前記クッション材を覆うシート表皮と、前記クッション材に形成された溝部の内側に前記シート表皮の一部を引き込んだ状態で、前記シート表皮の一部と前記クッション材における前記溝部の周辺部とを固定する固定部材と、前記固定部材に取り付けられ、前記固定部材の変形に応じた信号を出力する生体センサと、を備えている。
【0019】
この車両用シートにおいて、車両用シートに備えられたクッション材を覆うシート表皮の一部は、クッション材に形成された溝部の内側に引き込まれた状態で溝部の周辺部と固定部材により固定されている。また、この固定部材には、生体センサが取り付けられている。
【0020】
そして、車両用シートでは、例えば、乗員からクッション材に入力される荷重が増減されると、このクッション材の変形に伴ってシート表皮の一部に対し溝部から引き出される方向に作用する引張力が増減する。また、この引張力の増減に伴い固定部材が変形し、生体センサから固定部材の変形に応じた信号が出力される。
【0021】
このように、この車両用シートによれば、クッション材に形成された溝部の内側にシート表皮の一部が引き込まれた状態で、このシート表皮の一部と溝部の周辺部とが固定部材により固定されている。そして、この固定部材が乗員のクッション材への入力荷重の増減に伴って変形されると、この固定部材の変形に応じた信号が生体センサから出力される。従って、乗員の荷重が生体センサに直接的に入力されることを回避できるので(生体センサにおいて乗員の荷重を間接的に検出できるので)、例えば乗員の体格や座り方等の影響を抑制することができる。これにより、生体センサの出力信号の値が変動することを抑制することができるので、生体センサから安定して出力信号を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、本発明によれば、生体センサから安定して出力信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態に係る車両用シートの側面図である。
【図2】図1に示される車両用シートの要部拡大背面図である。
【図3】図2に示される第一シート表皮及び第二シート表皮の端末部の間に作用する引張力が増加した状態を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る車両用シートの要部拡大側面断面図である。
【図5】図4に示される第一シート表皮及び第二シート表皮の端末部の間に作用する引張力が増加した状態を示す図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る車両用シートを構成するシートバックの要部拡大平面断面図である。
【図7】参考例に係る車両用シートを構成するシートバックの要部拡大平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態について説明する。
【0025】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、シート上下方向上側、シート前後方向前側、シート幅方向外側をそれぞれ示している。
【0026】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る車両用シート10は、シートクッション12及びシートバック14を備えている。シートバック14には、乗員Pの上体を支持するためのクッション材16が備えられており、このクッション材16の全体は、シート表皮18によって覆われている。
【0027】
シート表皮18は、クッション材16の表面部のうち少なくとも後面部16Aを覆う第一シート表皮20と、クッション材16の表面部のうち下面部16Bを覆う第二シート表皮22とを備えている。クッション材16の表面部のうち前面部16Cは、乗員Pの上体を支持する乗員支持部であり、第一シート表皮20の端末部20Aと第二シート表皮22の端末部22Aとは、クッション材16の表面部のうち乗員支持部から外れた部分の一例として、クッション材16における後下側の角部周辺部16Dに位置されている。
【0028】
図2に示されるように、第一シート表皮20の端末部20Aには、複数の孔部24が形成されており、第二シート表皮22の端末部22Aには、複数の孔部26が形成されている。この複数の孔部24,26は、いずれも第一シート表皮20の端末部20A及び第二シート表皮22の端末部22Aが並んで延びる方向、すなわち、シート幅方向に間隔を空けて形成されている。複数の孔部24は、複数の孔部26とシート幅方向に対応する位置に形成されている。また、第二シート表皮22の端末部22Aは、シート幅方向に延びる長尺状の樹脂プレート28により構成されている。
【0029】
この第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22A同士は、上述の角部周辺部16D(図1も参照)において固定部材30により固定されている。この固定部材30は、複数のホグリング32と、吊ワイヤ34とを有している。
【0030】
複数のホグリング32の各々は、一端側32Aが孔部24に挿入されると共に他端側32Bが孔部26に挿入されることで、第一シート表皮20の端末部20Aと第二シート表皮22の端末部22Aとに引っ掛けられている。この複数のホグリング32は、複数の孔部24,26にそれぞれ挿入されることにより、シート幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0031】
第一シート表皮20の端末部20Aには、シート幅方向に貫通する袋部36が形成されている。この袋部36は、上述の複数の孔部24よりも端末部20Aの先端側に位置されている。吊ワイヤ34は、この袋部36の内側に挿入されることにより、第一シート表皮20の端末部20Aに沿って設けられており、この端末部20Aの形状を保持している。また、この吊ワイヤ34は、袋部36の内側に挿入されることにより、複数のホグリング32の内側に挿通されている。
【0032】
この吊ワイヤ34には、生体センサ38が取り付けられている。この生体センサ38は、より具体的には、隣り合うホグリング32の間において吊ワイヤ34に取り付けられている。この生体センサ38は、例えば、歪センサとされており、吊ワイヤ34の変形に応じた信号を出力する構成とされている。
【0033】
そして、この車両用シート10では、図1に示されるように、例えば、乗員Pが息を吸い込むと、想像線Lで示される如く、この乗員Pの上体が膨れることでクッション材16に入力される荷重が増加する。また、このクッション材16の圧縮変形に伴って第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22Aの間に作用する引張力F1が増加する。一方、乗員Pが息を吐くと、この乗員Pの上体が縮む(元に戻る)ことでクッション材16に入力される荷重が減少し、このクッション材16の復元変形に伴って第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22Aの間に作用する引張力F1が減少する。なお、図1において想像線Lにて示される乗員の上体の変形状態は誇張して示したものである。
【0034】
また、このようにして第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22Aの間に作用する引張力F1が増減すると、この引張力F1の増減に伴い吊ワイヤ34が伸縮変形し、図2,図3に示される生体センサ38から吊ワイヤ34の伸縮変形に応じた信号が出力される。
【0035】
つまり、図3に示されるように、乗員が息を吸い込んだときに第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22Aの間に作用する引張力F1が増加すると、吊ワイヤ34におけるホグリング32間の部分が引っ張られ、この吊ワイヤ34の全体が伸びる。そして、この吊ワイヤ34の全体が伸びたことに伴って生体センサ38からの出力信号の値が増加する。
【0036】
一方、図2に示されるように、乗員が息を吐いたときに第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22Aの間に作用する引張力F1が減少すると、吊ワイヤ34が縮む(元に戻る)。そして、この吊ワイヤ34が縮むことに伴って生体センサ38からの出力信号の値が減少する。
【0037】
このように、この車両用シート10では、乗員の呼吸に応じて生体センサ38からの出力信号の値が変化する。
【0038】
次に、本発明の第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
以上詳述したように、本発明の第一実施形態に係る車両用シート10によれば、クッション材16の表面部のうち乗員支持部から外れた部分である角部周辺部16Dに第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22A同士が位置されている。そして、この端末部20A,22A同士を固定する固定部材30のうち吊ワイヤ34が乗員のクッション材16への入力荷重の増減に伴って伸縮変形されると、この吊ワイヤ34の伸縮変形に応じた信号が生体センサ38から出力される。
【0040】
従って、乗員の荷重が生体センサ38に直接的に入力されることを回避できるので(生体センサ38において乗員の荷重を間接的に検出できるので)、例えば乗員の体格や座り方等の影響を抑制することができる。これにより、生体センサ38の出力信号の値が変動することを抑制することができるので、生体センサ38から安定して出力信号を得ることができる。
【0041】
しかも、生体センサ38は、第一シート表皮20の端末部20Aに沿って設けられた吊ワイヤ34に取り付けられている。従って、生体センサ38の取付が容易であるので、生体センサ38の取付部の構造を簡素化することができる。
【0042】
また、生体センサ38は、隣り合うホグリング32の間において吊ワイヤ34に取り付けられている。従って、生体センサ38が吊ワイヤ34のうち変形の大きい部分に取り付けられているので、生体センサ38からより一層安定して出力信号を得ることができる。
【0043】
次に、本発明の第一実施形態の変形例について説明する。
【0044】
本発明の第一実施形態において、生体センサ38は、乗員の呼吸を検出するために用いられていたが、その他の用途に用いられても良い。
【0045】
また、クッション材16、第一シート表皮20、第二シート表皮22、固定部材30、及び、生体センサ38は、シートバック14に適用されていたが、その他にも、例えば、シートクッション12に適用されても良い。
【0046】
また、固定部材30は、ホグリング32と吊ワイヤ34とを有していたが、その他の構成とされても良い。
【0047】
また、第一シート表皮20の端末部20Aと第二シート表皮22の端末部22Aとは、クッション材16における後下側の角部周辺部16Dに位置されていたが、クッション材16の表面部のうち乗員支持部(前面部16C)から外れた部分であれば、その他の部分に位置されても良い。
【0048】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0049】
図4,図5に示される本発明の第二実施形態に係る車両用シート40は、上述の本発明の第一実施形態に係る車両用シート10に対し、次の如く構成が変更されている。
【0050】
すなわち、生体センサ38は、吊ワイヤ34ではなく、ホグリング32に取り付けられている。この生体センサ38は、より具体的には、ホグリング32における一端側32Aと他端側32Bとの間の中間部32C,32Dのうち一方の中間部32Cに取り付けられている。この一方の中間部32Cは、端末部20A,22Aよりもクッション材16側(シート内方)に位置されており、他方の中間部32Dは、端末部20A,22Aよりもクッション材16と反対側(シート外方)に位置されている。
【0051】
また、ホグリング32は、線材を環状にして形成したものであり、一対の端部32E,32Fを有している。この一対の端部32E,32Fは、他方の中間部32Dに位置されている。
【0052】
そして、この車両用シート40では、上述の本発明の第一実施形態の場合と同様に、乗員の呼吸に伴って第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22Aの間に作用する引張力F1が増減すると、この引張力F1の増減に伴いホグリング32が伸縮変形し、生体センサ38からホグリング32の伸縮変形に応じた信号が出力される。
【0053】
つまり、図5に示されるように、乗員が息を吸い込んだときに第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22Aの間に作用する引張力F1が増加すると、ホグリング32が伸びる。そして、このホグリング32が伸びたことに伴って生体センサ38からの出力信号の値が増加する。
【0054】
一方、図4に示されるように、乗員が息を吐いたときに第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22Aの間に作用する引張力F1が減少すると、ホグリング32が縮む(元に戻る)。そして、このホグリング32が縮むことに伴って生体センサ38からの出力信号の値が減少する。
【0055】
このように、この車両用シート40では、乗員の呼吸に応じて生体センサ38からの出力信号の値が変化する。
【0056】
次に、本発明の第二実施形態の作用及び効果について説明する。
【0057】
以上詳述したように、本発明の第二実施形態に係る車両用シート40によれば、第一シート表皮20及び第二シート表皮22の端末部20A,22A同士を固定する固定部材30のうちホグリング32が乗員のクッション材16への入力荷重の増減に伴って伸縮変形されると、このホグリング32の伸縮変形に応じた信号が生体センサ38から出力される。
【0058】
従って、乗員の荷重が生体センサ38に直接的に入力されることを回避できるので(生体センサ38において乗員の荷重を間接的に検出できるので)、例えば乗員の体格や座り方等の影響を抑制することができる。これにより、生体センサ38の出力信号の値が変動することを抑制することができるので、生体センサ38から安定して出力信号を得ることができる。
【0059】
しかも、生体センサ38は、第一シート表皮20の端末部20Aと第二シート表皮22の端末部22Aとに引っ掛けられたホグリング32に取り付けられている。従って、生体センサ38の取付が容易であるので、生体センサ38の取付部の構造を簡素化することができる。
【0060】
また、生体センサ38は、ホグリング32における第一シート表皮20の端末部20Aに引っ掛けられた一端側32Aと第二シート表皮22の端末部22Aに引っ掛けられた他端側32Bとの間の中間部32Cに取り付けられている。従って、生体センサ38がホグリング32のうち変形の大きい部分に取り付けられているので、生体センサ38からより一層安定して出力信号を得ることができる
【0061】
次に、本発明の第二実施形態の変形例について説明する。
【0062】
本発明の第二実施形態において、生体センサ38は、ホグリング32における一対の中間部32C,32Dのうち他方の中間部32Dに取り付けられていても良い。
【0063】
また、ホグリング32における一対の端部32E,32Fは、一方の中間部32Cに位置されていても良い。
【0064】
また、上述の本発明の第一実施形態の場合と同様に、生体センサ38は、乗員の呼吸を検出する以外の用途に用いられても良く、また、クッション材16、第一シート表皮20、第二シート表皮22、固定部材30、及び、生体センサ38は、その他にも、例えば、シートクッション12に適用されても良い。
【0065】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
【0066】
図6に示されるように、本発明の第三実施形態に係る車両用シート50は、シートバック54を備えている。シートバック54には、乗員の上体を支持するためのクッション材56が備えられており、このクッション材56は、シートバック54のシート幅方向中央部に位置するクッション本体部58と、このクッション本体部58のシート幅方向外側に位置するサイドクッション部60とを有している。
【0067】
このクッション本体部58とサイドクッション部60との境界部には、シート前側に開口しシート上下方向に延びる断面U字状の溝部62が形成されている。また、このクッション材56の全体は、シート表皮68によって覆われている。
【0068】
シート表皮68は、クッション本体部58を覆う第一シート表皮70と、サイドクッション部60を覆う第二シート表皮72とを備えている。この第一シート表皮70及び第二シート表皮72の端末部70A,72Aは、シート上下方向に沿って縫製されており、溝部62の内側に後述する固定部材80により引き込まれている。第一シート表皮70の端末部70Aには、シート上下方向に貫通する袋部76が形成されており、この袋部76は、端末部70A,72A同士を縫製する縫製部78よりも端末部70A,72Aの先端側(溝部62の底側)に位置されている。
【0069】
固定部材80は、一対の吊ワイヤ84,86と、ホグリング92とを有している。吊ワイヤ84は、袋部76の内側に挿入されることにより、第一シート表皮70の端末部70Aに沿って設けられており、この端末部70Aの形状を保持している。吊ワイヤ86は、溝部62の底部に沿ってシート上下方向に延びており、クッション材56における溝部62の周辺部64(一例として、溝部62よりもクッション材56の背面側の部分)に埋設されている。
【0070】
ホグリング92の一端側92Aは、吊ワイヤ84に掛けまわされており、ホグリング92の他端側92Bは、吊ワイヤ86に掛けまわされている。そして、このようにしてホグリング92が一対の吊ワイヤ84,86に掛けまわされることにより、シート表皮68の一部である端末部70A,72Aが溝部62の内側に引き込まれた状態で溝部62の周辺部64と固定されている。
【0071】
また、このホグリング92には、生体センサ98が取り付けられている。この生体センサ98は、より具体的には、ホグリング92における一端側92Aと他端側92Bとの間の中間部92C,92Dのうちクッション本体部58側(シート幅方向内側)の中間部92Cに取り付けられている。この生体センサ98は、例えば、歪センサとされており、ホグリング92の変形に応じた信号を出力する構成とされている。
【0072】
そして、この車両用シート50では、乗員の呼吸に伴ってクッション材56に入力される荷重が増減されると、このクッション材56の変形に伴ってシート表皮68の一部である端末部70A,70Bに対し溝部62から引き出される方向に作用する引張力F2が増減する。また、この引張力F2の増減に伴い固定部材80のうちホグリング92が変形し、生体センサ98からホグリング92の変形に応じた信号が出力される。
【0073】
次に、本発明の第三実施形態の作用及び効果について説明する。
【0074】
以上詳述したように、本発明の第三実施形態に係る車両用シート50によれば、クッション材56に形成された溝部62の内側にシート表皮68の一部である端末部70A,72Aが引き込まれた状態で、この端末部70A,72Aと溝部62の周辺部64とが固定部材80により固定されている。そして、この固定部材80のうちホグリング92が乗員のクッション材56への入力荷重の増減に伴って伸縮変形されると、このホグリング92の伸縮変形に応じた信号が生体センサ98から出力される。
【0075】
従って、乗員の荷重が生体センサ98に直接的に入力されることを回避できるので(生体センサ98において乗員の荷重を間接的に検出できるので)、例えば乗員の体格や座り方等の影響を抑制することができる。これにより、生体センサ98の出力信号の値が変動することを抑制することができるので、生体センサ98から安定して出力信号を得ることができる。
【0076】
しかも、生体センサ98は、一対の吊ワイヤ84,86に引っ掛けられたホグリング92に取り付けられている。従って、生体センサ98の取付が容易であるので、生体センサ98の取付部の構造を簡素化することができる。
【0077】
また、生体センサ98は、ホグリング92における吊ワイヤ84に掛けまわされた一端側92Aと吊ワイヤ86に掛けまわされた他端側92Bとの間の中間部92Cに取り付けられている。従って、生体センサ98がホグリング92のうち変形の大きい部分に取り付けられているので、生体センサ98からより一層安定して出力信号を得ることができる
【0078】
次に、本発明の第三実施形態の変形例について説明する。
【0079】
本発明の第三実施形態において、生体センサ98は、乗員の呼吸を検出するために用いられていたが、その他の用途に用いられても良い。
【0080】
また、生体センサ98は、サイドクッション部60側(シート幅方向外側)の中間部92Dに取り付けられていても良い。
【0081】
また、生体センサ98は、一対の吊ワイヤ84,86のどちらか一方に取り付けられていても良い。
【0082】
また、固定部材80は、一対の吊ワイヤ84,86とホグリング92とを有していたが、その他の構成とされても良い。
【0083】
また、クッション材56、第一シート表皮70、第二シート表皮72、固定部材80、及び、生体センサ98は、シートバック54に適用されていたが、その他にも、例えば、シートクッションに適用されても良い。
【0084】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0085】
[参考例]
次に、参考例について説明する。
【0086】
図7に示される参考例に係る車両用シート100は、上述の本発明の第三実施形態に係る車両用シート50に対し、次の如く構成が変更されている。
【0087】
すなわち、生体センサ98は、溝部62の内壁面に沿って設けられている。この生体センサ98は、より具体的には、溝部62の内壁面を構成する一対の側壁面62A,62B及び底面62Cのうち、クッション本体部58側(シート幅方向内側)の側壁面62Aと底面62Cとに沿って設けられている。なお、この生体センサ98は、溝部62の内壁面のうち側壁面62A及び底面62Cを形成していると捉えることも可能である。
【0088】
そして、この車両用シート100では、乗員が息を吸い込むと、この乗員の上体が膨れることでクッション本体部58及びサイドクッション部60に入力される荷重F3,F4が増加する。そして、クッション本体部58が圧縮変形されると共にサイドクッション部60がシート幅方向外側に変形されることに伴って、溝部62の開口が拡大するように、この溝部62が変形する。一方、乗員が息を吐くと、この乗員の上体が縮む(元に戻る)ことでクッション本体部58及びサイドクッション部60に入力される荷重F3,F4が減少する。そして、このクッション本体部58及びサイドクッション部60の復元変形に伴って、溝部62の開口が縮小するように、この溝部62が変形する。
【0089】
また、このようにして溝部62が変形すると、この溝部62の変形に伴い生体センサ98が変形し、この生体センサ98から溝部62の変形に応じた信号が出力される。
【0090】
次に、本参考例の作用及び効果について説明する。
【0091】
以上詳述したように、本参考例に係る車両用シート100によれば、クッション材56に形成された溝部62の内壁面に沿って生体センサ98が設けられている。そして、この溝部62が乗員のクッション材56への入力荷重の増減に伴って変形されると、この溝部62の変形に応じた信号が生体センサ98から出力される。従って、乗員の荷重が生体センサ98に直接的に入力されることを回避できるので(生体センサ98において乗員の荷重を間接的に検出できるので)、例えば乗員の体格や座り方等の影響を抑制することができる。これにより、生体センサ98の出力信号の値が変動することを抑制することができるので、生体センサ98から安定して出力信号を得ることができる。
【0092】
しかも、クッション材56は、シートバック54のシート幅方向中央部に位置するクッション本体部58と、クッション本体部58のシート幅方向外側に位置するサイドクッション部60とを有している。そして、溝部62は、このクッション本体部58とサイドクッション部60との境界部に形成されている。従って、乗員からクッション本体部58及びサイドクッション部60に入力される荷重F3,F4が増減されることにより溝部62を効果的に変形させることができるので、生体センサ98からより一層安定して出力信号を得ることができる。
【0093】
次に、本参考例の変形例について説明する。
【0094】
本参考例において、生体センサ98は、乗員の呼吸を検出するために用いられていたが、その他の用途に用いられても良い。
【0095】
また、生体センサ98は、側壁面62Bと底面62Cとに沿って設けられていても良い。
【0096】
また、生体センサ98は、溝部62の内壁面に露出されていたが、溝部62の内壁面に沿って設けられていれば、クッション材56に埋設されていても良い(溝部62の内壁面よりもシート内方に設けられていても良い)。
【0097】
また、クッション材56及び生体センサ98は、シートバック54に適用されていたが、その他にも、例えば、シートクッションに適用されても良い。なお、クッション材56及び生体センサ98がシートクッションに適用された場合には、クッション本体部58がシートクッションのシート幅方向中央部に位置される。
【0098】
次に、上記参考例から把握できる技術的思想について記載する。
【0099】
つまり、乗員を支持するためのクッション材と、前記クッション材に形成された溝部の内壁面に沿って設けられ、前記溝部の変形に応じた信号を出力する生体センサと、を備えた車両用シートである。
【0100】
また、上記車両用シートにおいて、前記クッション材は、シートバック又はシートクッションのシート幅方向中央部に位置するクッション本体部と、前記クッション本体部のシート幅方向外側に位置するサイドクッション部とを有し、前記溝部は、前記クッション本体部と前記サイドクッション部との境界部に形成されていると好適である。
【符号の説明】
【0101】
10,40,50 車両用シート
16,56 クッション材
16C 前面部(乗員支持部)
16D 角部周辺部(乗員支持部から外れた部分)
20 第一シート表皮
22 第二シート表皮
20A,22A 端末部
30,80 固定部材
32,92 ホグリング
32A 一端側
32B 他端側
32C,32D 中間部
34,84,86 吊ワイヤ
38,98 生体センサ
58 クッション本体部
60 サイドクッション部
62 溝部
64 溝部の周辺部
68 シート表皮
70A,72A 端末部(シート表皮の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を支持するためのクッション材と、
前記クッション材を覆うと共に、前記クッション材の表面部のうち乗員支持部から外れた部分に互いの端末部が位置する第一シート表皮及び第二シート表皮と、
前記第一シート表皮及び前記第二シート表皮の端末部同士を固定する固定部材と、
前記固定部材に取り付けられ、前記固定部材の変形に応じた信号を出力する生体センサと、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記固定部材は、前記第一シート表皮の端末部と前記第二シート表皮の端末部とに引っ掛けられたホグリングと、
前記第一シート表皮の端末部に沿って設けられ、前記ホグリングの内側に挿通された吊ワイヤと、を有し、
前記生体センサは、前記吊ワイヤに取り付けられている、
請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ホグリングは、前記第一シート表皮の端末部及び前記第二シート表皮の端末部が並んで延びる方向に間隔を空けて複数設けられ、
前記生体センサは、隣り合う前記ホグリングの間において前記吊ワイヤに取り付けられている、
請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記固定部材は、前記第一シート表皮の端末部と前記第二シート表皮の端末部とに引っ掛けられたホグリングを有し、
前記生体センサは、前記ホグリングに取り付けられている、
請求項1に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記生体センサは、前記ホグリングにおける前記第一シート表皮の端末部に引っ掛けられた一端側と前記第二シート表皮の端末部に引っ掛けられた他端側との間の中間部に取り付けられている、
請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
乗員を支持するためのクッション材と、
前記クッション材を覆うシート表皮と、
前記クッション材に形成された溝部の内側に前記シート表皮の一部を引き込んだ状態で、前記シート表皮の一部と前記クッション材における前記溝部の周辺部とを固定する固定部材と、
前記固定部材に取り付けられ、前記固定部材の変形に応じた信号を出力する生体センサと、
を備えた車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107552(P2013−107552A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255450(P2011−255450)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】