説明

車両用ジャッキの分割式ジャッキハンドル

【課題】ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部が操作部材のアーム部に形成された嵌合穴から抜けることのない2分割式ジャッキハンドルを提供する。
【解決手段】ジャッキ駆動ロッド12の一端からそのジャッキ駆動ロッド12の他端に設けられた嵌合軸部16までは嵌合穴18内を通過可能な断面形状に形成され、そのジャッキ駆動ロッド12の他端に設けられた嵌合軸部16の軸端にはその嵌合穴18を通過不能な抜止突起28が形成されているため、ジャッキ作業中に、ジャッキ駆動ロッド12の他端に設けられた嵌合軸部16が操作部材20のアーム部22に形成された嵌合穴18から抜けることがなく、しかも部品点数が増加しないので安価に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を持ち上げるために用いる車両用ジャッキに操作力伝達するためにそのジャッキに連結される分割式ジャッキハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、車輪の交換などに際して車体を持ち上げるための車両用ジャッキが知られている。この車両用ジャッキを用いるに際しては、ジャッキに連結したジャッキハンドルを回転操作することによりジャッキの高さが変化させられるようになっている。
【0003】
たとえば特許文献1に記載されているように、車両に搭載する場合においてコンパクトに収納が可能となるようように2部品に分割された分割式ジャッキハンドルが知られている。このジャッキハンドルは、一端部が車両用ジャッキに連結される直線状のジャッキ駆動ロッドと、そのジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部を着脱可能に嵌め入れるされる嵌合穴を有するL字状の操作部材とから構成される。この操作部材は、嵌合穴が形成されたアーム部とそのアーム部の一端から略直角に曲げられたハンドル部とを備えている。このジャッキハンドルは、上記ジャッキ駆動ロッドと操作部材とからT字状に組み立てられた状態で、作業者が一方の手でジャッキ駆動ロッドを緩く把持しつつ、他方の手でハンドル部を把持してそれに回転操作力を右回り或いは左回りに加えることでジャッキの高さを変化させるように用いられる。
【0004】
ところで、上記従来のジャッキハンドルでは、ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部をL字状の操作部材のアーム部に形成された嵌合穴内に相対回転不能に嵌め入れることで相互に連結されるた状態で、車両用ジャッキの高さを変化させるために上記のように作業者の回転操作力が加えられる途中で、ジャッキ駆動ロッドの嵌合軸部がアーム部の嵌合穴から抜けると、勢い余って車体を傷付けたり、或いは作業者の腕や手にすり傷をつける可能性があった。
【0005】
上記特許文献1に記載の分割式ジャッキハンドルでは、上記ジャッキ駆動ロッドの他端部が予め貫通させられる貫通穴を有し、基端がアーム部に溶接され且つ他端が自由端とされた板バネ片状のブラケットを斜めに突き出すように設けられている。このため、ジャッキ駆動ロッドの他端部の嵌合軸部は、アーム部の嵌合穴へ嵌合されるときには予め貫通穴に容易に貫通させられるが、そのアーム部の嵌合穴から引き抜くときにはそのブラケットの自由端をアーム部側へ押圧操作しない限りその貫通穴に引き抜き不能に係合させられる。これにより、作業者による回転操作中に、ジャッキ駆動ロッドの嵌合軸部がアーム部の嵌合穴から抜けることが防止されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の分割式ジャッキハンドルは、貫通穴が形成された板バネ片状のブラケットを溶接等によって操作部材のアーム部に固定する必要があるため、部品点数が増加するとともに、その部品を取り付けるための製造工程が複雑となって分割式ジャッキハンドルが高価となるという欠点があった。
【0007】
これに対して、特許文献2に記載の分割型ジャッキハンドルでは、ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部は、嵌合穴の内周面に相対回転不能に係合するために断面長手形状に成形されたトルク伝達部と、嵌合穴を貫通する部分がそのトルク伝達部よりも大きな最大断面積を有し且つ嵌合穴内へ容易に嵌め入れ可能となるように矢印形状に成形された抜止部とから構成されている。このような形状の嵌合軸部が用いられることにより、作業者による回転操作中に、ジャッキ駆動ロッドの嵌合軸部が上記操作部材のアーム部に形成された嵌合穴から比較的容易に抜けないようにされている。従って、このような特許文献2に記載の分割型ジャッキハンドルでは、部品点数の増加がなく、その部品を取り付けるための製造工程が不要となり、安価に製造可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−309596号公報
【特許文献2】特開平07−089699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2に記載の分割型ジャッキハンドルでは、上記ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部は、その先端から操作部材のアーム部に形成された嵌合穴を通る大きさであるから、必ずしもその操作部材の回転操作中に抜けない訳ではなく、ジャッキの高さを変えるために操作部材に比較的大きな回転操作力を加えて回転操作を行う途中に嵌合軸部が嵌合穴から抜ける可能性が残されていた。このため、ジャッキ駆動ロッドの嵌合軸部が操作部材のアーム部に形成された嵌合穴から抜けると、勢い余って車体を傷付けたり、或いは作業者の腕や手にすり傷をつける可能性があった。特に、作業者が操作部材の回転操作中に操作部材を手前に引っ張る方向の力を付与する傾向がある場合には、そのような不都合が顕著となる。
【0010】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ジャッキ作業中に、ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部が操作部材のアーム部に形成された嵌合穴から抜けることがなく、安価な2分割式ジャッキハンドルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一般に、上記従来の2分割式ジャッキハンドルにおいて、ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部を、操作部材のアーム部に形成された嵌合穴に嵌め入れることで、相互の部材を連結するのが一般的であり、その抜け止めを確実に行おうとすると、部品点数が増加して構造が複雑となるという傾向となることが避けられない。本発明者は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、操作部材のアーム部に形成された嵌合穴に、ジャッキ駆動ロッドをその一端から嵌め入れ、他端にその嵌合穴を通過させない抜止突起を設けることで、ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部が操作部材のアーム部に形成された嵌合穴から抜けない2分割式ジャッキハンドルを構成できるということを見いだした。本発明は、このような知見に基づいて為されたものである。
【0012】
すなわち、前記目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) ジャッキ連結部が一端に形成された直線状のジャッキ駆動ロッドと、嵌合穴を有するL字状の操作部材とを、該ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部と該操作部材の嵌合穴とを相対回転不能に嵌合させることで両者を組み立て、該ジャッキ駆動ロッドのジャッキ連結部が車両用ジャッキに連結された状態で該操作部材を回転操作する形式の分割式ジャッキハンドルであって、(b) 該ジャッキ駆動ロッドの一端から該ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部までは前記嵌合穴内を通過可能な断面形状に形成され、(c) 該ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部の軸端には前記嵌合穴を通過不能な抜止突起が形成されていることにある。
【0013】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1において、(d) 前記嵌合穴は、複数の内壁面から成る多角形の断面を有し、(e) 該嵌合穴に嵌め入れる前記嵌合軸部は、該嵌合穴と軸心まわりの該多角形の角数に対応する相対回転角度毎で嵌合可能となるように、前記複数の内壁面のうちの少なくとも2つの内壁面と当接する少なく2つの係合面を外周に有することにある。
【0014】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1または2において、(f) 前記嵌合穴は、4つの内壁面から成る正方形の断面を有し、(g) 該嵌合穴に嵌め入れる前記嵌合軸部は、該嵌合穴と軸心まわりに90°の相対回転角度毎で嵌合可能となるように、前記4つの内壁面のうちの少なくとも一対の相対向し且つ互いに平行な内壁面と当接する少なく一対の互いに平行な係合面を外周に有することにある。
【0015】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1において、(h) 前記操作部材は、前記嵌合穴が形成されたアーム部と該アーム部の一端から該アーム部に対して所定角度で曲げられたハンドル部とを備えてL字状を成すことにある。
【0016】
また、請求項5に係る発明の要旨とするところは、請求項4において、(i) 前記ハンドル部の前記アーム部とは反対側の端部には、前記車両の車輪を固定するナットが相対回転不能に嵌め入れられるソケット部が形成が形成されていることにある。
【0017】
また、請求項6に係る発明の要旨とするところは、請求項4において、(j)前記ジャッキ駆動ロッドは、所定長さの断面円形の棒材から塑性加工されたものであり、(k)該ジャッキ駆動ロッドのジャッキ連結部は、該棒材の一端がフック状に曲成されたものであり、(l) 該ジャッキ駆動ロッドの嵌合軸部は、一方向のプレス加工によって、該棒材の径よりも小さな厚みと、該棒材の径よりも大きい幅寸法とを有する断面形状に加工され、(m) 前記一対の互いに平行な係合面は、該幅寸法の相互間隔で形成されていることにある。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明の分割式ジャッキハンドルによれば、(a) ジャッキ連結部が一端に形成された直線状のジャッキ駆動ロッドと、嵌合穴を有するL字状の操作部材とを、該ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部と該操作部材の嵌合穴とを相対回転不能に嵌合させることで両者を組み立て、該ジャッキ駆動ロッドのジャッキ連結部が車両用ジャッキに連結された状態で該操作部材を回転操作する形式の分割式ジャッキハンドルであって、(b) 該ジャッキ駆動ロッドの一端から該ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部までは前記嵌合穴内を通過可能な断面形状に形成され、(c) 該ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部の軸端には前記嵌合穴を通過不能な抜止突起が形成されている。このため、ジャッキ作業中に、ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部が操作部材のアーム部に形成された嵌合穴から抜けることのない、安価な2分割式ジャッキハンドルが得られる。
【0019】
また、請求項2に係る発明の分割式ジャッキハンドルによれば、(d) 前記嵌合穴は、複数の内壁面から成る多角形の断面を有し、(e) 該嵌合穴に嵌め入れる前記嵌合軸部は、該嵌合穴と軸心まわりの該多角形の角数に対応する相対回転角度毎で嵌合可能となるように、前記複数の内壁面のうちの少なくとも2つの内壁面と当接する少なく2つの係合面を外周に有することにあることから、ジャッキ駆動ロッドの軸心まわりの複数の相対角度位置において嵌合軸部と嵌合穴との嵌合が可能であるので、ジャッキ駆動ロッドと操作部材との組み立て時の嵌合作業が容易となり、操作性が高められる。
【0020】
また、請求項3に係る発明の分割式ジャッキハンドルによれば、(f) 前記嵌合穴は、4つの内壁面から成る正方形の断面を有し、(g) 該嵌合穴に嵌め入れる前記嵌合軸部は、該嵌合穴と軸心まわりに90°の相対回転角度毎で嵌合可能となるように、前記4つの内壁面のうちの少なくとも相対抗する一対の内壁面と当接する少なく一対の係合面を外周に有することから、ジャッキ駆動ロッドの軸心まわりの4つの相対角度位置において嵌合軸部と嵌合穴との嵌合が可能であるので、ジャッキ駆動ロッドと操作部材との組み立て時の嵌合作業が容易となり、操作性が高められる。
【0021】
また、請求項4に係る発明の分割式ジャッキハンドルによれば、(h) 前記操作部材は、前記嵌合穴が形成されたアーム部と該アーム部の一端から該アーム部に対して所定角度で曲げられたハンドル部とを備えてL字状を成すことから、ジャッキ駆動ロッドとその嵌合軸部が嵌合穴に嵌め入れられた状態の操作部材とにより構成される分割式ジャッキハンドルを用いてジャッキに回転力を伝える作業時において、そのハンドル部を把持して回転操作力を加えることができるので、ジャッキ作業が容易となる。
【0022】
また、請求項5に係る発明の分割式ジャッキハンドルによれば、(i) 前記ハンドル部の前記アーム部とは反対側の端部には、前記車両の車輪を固定するナットが相対回転不能に嵌め入れられるソケット部が形成が形成されていることから、分割式ジャッキハンドルの操作部材は、ジャッキ作業以外に、車輪の交換工具としても兼用できる利点がある。
【0023】
また、請求項6に係る発明の分割式ジャッキハンドルによれば、(j)前記ジャッキ駆動ロッドは、所定長さの断面円形の棒材から塑性加工されたものであり、(k)該ジャッキ駆動ロッドのジャッキ連結部は、該棒材の一端がフック状に曲成されたものであり、(l) 該ジャッキ駆動ロッドの嵌合軸部は、一方向のプレス加工によって、該棒材の径よりも小さな厚みと、該棒材の径よりも大きい幅寸法とを有する断面形状に加工され、(m) 前記一対の互いに平行な係合面は、該幅寸法の相互間隔で形成されていることにあることから、ジャッキ駆動ロッドの嵌合軸部は一方向のプレス加工で形成されるので、分割式ジャッキハンドルが一層安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例である分割式ジャッキハンドルの構成を説明するための図である。
【図2】図1の分割式ジャッキハンドルを構成する1部品であるジャッキ駆動ロッドの構成を説明する図である。
【図3】図2のジャッキ駆動ロッドにおいて嵌合軸部の断面形状を示す、図2のIII −III 視断面図である。
【図4】図2のジャッキ駆動ロッドにおいて嵌合軸部の先端部の断面形状を示す、図2のIV−IV視断面図である。
【図5】図1の分割式ジャッキハンドルを構成する他の1部品である操作部材の構成を説明する図である。
【図6】図5の操作部材の要部である嵌合穴を説明する図である。
【図7】図1の分割式ジャッキハンドルの組み立て過程を説明する図である。
【図8】本発明の他の実施例におけるジャッキ駆動ロッドにおいて嵌合軸部の断面形状を示す、図3に相当する断面図である。
【図9】図8の実施例の操作部材の要部である嵌合穴を説明する図であって、図6に相当する図である。
【図10】本発明の他の実施例における操作部材の要部である嵌合穴を説明する図であって、図6に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
図1において、分割式ジャッキハンドル10は、一端部が図示しない車両用ジャッキに連結される直線状のジャッキ駆動ロッド12と、そのジャッキ駆動ロッド12の他端に設けられた嵌合軸部16を着脱可能に嵌め入れる嵌合穴18を有するL字状の操作部材20との独立した2部品からT字型に組み立てられる。この操作部材20は、嵌合穴18が形成されているアーム部22とそのアーム部22の一端から略直角に曲げられたハンドル部24とを備えている。このように組み立てられる分割式ジャッキハンドル10は、上記ジャッキ駆動ロッド12と操作部材20とからT字型に組み立てられた状態で、作業者が一方の手でジャッキ駆動ロッド12を緩く把持しつつ、他方の手でハンドル部24を把持してそれに回転操作力を右回り或いは左回りに加えることで図示しない車両用ジャッキの高さを変化させるように用いられる。この車両用ジャッキは、たとえば、パンタグラフ式機構等を用いて構成された良く知られたものである。パンタグラフ式機構を採用した車両用ジャッキであれば、上記ジャッキ駆動ロッド12の一端部が着脱可能に掛け止められる係合穴を一端に有するねじ軸を備えている。
【0026】
図2は、上記ジャッキ駆動ロッド12を詳しく示している。そのジャッキ駆動ロッド12は、所定長さの断面円形の鉄製の棒材又は鋼製の棒材( 丸棒鋼) から塑性加工されたものであり、その棒材の一端部が塑性加工によってフック状に曲成されることで、軸心まわりの相対回転不能且つ軸心と交差する折れ方向の相対回転可能に前記ジャッキに連結されるジャッキ連結部14が設けられている。ジャッキ駆動ロッド12の嵌合軸部16以外の部分は、上記棒材と同様の断面円形とされている。
【0027】
上記ジャッキ駆動ロッド12の他端部に形成された嵌合軸部16は、一方向のプレス加工によって、図3に示すように、ジャッキ駆動ロッド12の嵌合軸部16以外の部分の径すなわち棒材の径Dよりも小さい厚み寸法T( <D) と、該棒材の径Dよりも大きい幅寸法W( >D) とを有する断面形状に加工されている。このプレス加工により、嵌合軸部16がその軸心Cまわりに相対回転不能に嵌合穴18の内壁面と係合する一対の係合面26が嵌合軸部16の外周面に形成されている。この一対の係合面26は上記幅寸法Wを隔てて互いに平行に外向き( 背反方向) に形成されている。
【0028】
また、上記ジャッキ駆動ロッド12の他端部に形成された嵌合軸部16の末端或いは軸端には、局部的なかしめ加工が施されることにより、嵌合軸部16の幅方向に突き出す一対の抜止突起28が形成されている。これら一対の抜止突起28の先端間の間隔Sは、後述の嵌合穴18の相対向する一対の内壁面34の間隔Kよりも大きく設定されている。
【0029】
嵌合穴18が形成されているアーム部22とそのアーム部22の一端から略直角に曲げられたハンドル部24とを備えている操作部材20は、たとえば冷間鍛造により製造される。通常、ハンドル部24の先端部には、車両の車輪を固定するためのホイールナットが嵌め入れられるソケット部32が形成されている。この操作部材20は、車輪の着脱時においてホイールナットを緩めたり締めつけたりする工具としても機能している。
【0030】
図5および図6は、上記操作部材20を詳しく示している。操作部材20のアーム部22およびハンドル部24は、ソケット部32を除いて、断面円形の棒材から構成されている。嵌合穴18は、ハンドル部24と平行な穴心Aを中心とする断面正4角形状を成し、アーム部22を貫通して形成されている。嵌合穴18の内周面は、互いに直角を成す4つの内壁面34から構成されている。それら4つの内壁面34のうちの相対向する一対の内壁面34間の間隔Kは、嵌合軸部16が嵌合穴18にあそび嵌合可能に設定されており、たとえば、抜止突起28の先端間の間隔Sよりも小さく且つ嵌合軸部16の幅寸法Wよりも大きく設定されている。これにより、嵌合軸部16と嵌合穴18とは、不等式T<D<W<K<Sを満足するように形成されている。
【0031】
図6は、破線又は1点鎖線で示す嵌合軸部16が上記嵌合穴18内に相対回転不能に嵌め入れられた状態を示している。嵌合軸部16の一対の係合面26が嵌合穴18内の相対向する一対の内壁面34と接近した状態で嵌め入れられ、両者が当接することで相対回転不能且つ着脱可能にあそび嵌合される。嵌合穴18はその穴心Aを中心とする断面正4角形状を成しているので、嵌合軸部16は破線又は1点鎖線で示す回転位相で嵌合穴18と相対回転不能に嵌合できる。すなわち、嵌合穴18に対する嵌合軸部16の軸心Cまわりの相対回転角度が90°毎に嵌合可能となる。
【0032】
図7は、ジャッキ駆動ロッド12に操作部材20を組み合わせて分割式ジャッキハンドル10をT字型に組み立てる際の手順を示す図である。図7の矢印に示すように、当初は、ジャッキ駆動ロッド12のフック状のジャッキ連結部14をその先端から操作部材20の嵌合穴18に嵌め入れ、次いで、操作部材20の嵌合穴18を嵌合軸部16に向かってジャッキ駆動ロッド12の長手方向へ移動させる。そして、操作部材20の嵌合穴18が嵌合軸部16に到達すると、操作部材20をジャッキ駆動ロッド12とを嵌合軸部16の軸心Cまわりに相対回転させることによって嵌合可能な回転位相を定め、さらに操作部材20を抜止突起28に当接するまで移動させると、図6に示すように嵌合穴18内へ嵌合軸部16が相対回転不能に嵌合させられて、図1に示す組み立て状態の分割式ジャッキハンドル10が得られる。
【0033】
本実施例の分割式ジャッキハンドル10によれば、ジャッキ駆動ロッド12の一端からそのジャッキ駆動ロッド12の他端に設けられた嵌合軸部16までは嵌合穴18内を通過可能な断面形状に形成され、そのジャッキ駆動ロッド12の他端に設けられた嵌合軸部16の軸端にはその嵌合穴18を通過不能な抜止突起28が形成されているため、ジャッキ作業中に、ジャッキ駆動ロッド12の他端に設けられた嵌合軸部16が操作部材20のアーム部22に形成された嵌合穴18から抜けることがなく、しかも部品点数が増加しないので安価に製造できる。
【0034】
また、本実施例の分割式ジャッキハンドル10によれば、嵌合穴18は、複数の内壁面34から成る多角形の断面を有し、その嵌合穴18に嵌め入れる嵌合軸部16は、その嵌合穴18と軸心Cまわりのその多角形の角数に対応する相対回転角度毎で嵌合可能となるように、複数の内壁面34のうちの少なくとも2つの内壁面34と当接する少なくとも2つの係合面26を外周に有することにあることから、ジャッキ駆動ロッド12の軸心まわりの複数の相対角度位置において嵌合軸部16と嵌合穴18との嵌合が可能であるので、ジャッキ駆動ロッド12と操作部材20との組み立て時の嵌合作業が容易となり、操作性が高められる。
【0035】
また、本実施例の分割式ジャッキハンドル10によれば、嵌合穴18は、その内周面が4つの同様寸法の内壁面34から構成されることでその穴断面形状が正方形とされている。また、その嵌合穴18に嵌め入れる嵌合軸部16は、その嵌合穴18と軸心Cまわりに90°の相対回転角度毎で嵌合可能となるように、4つの内壁面34のうちの少なくとも相対向する一対の内壁面34と当接する少なくとも一対の係合面26を外周に有することから、ジャッキ駆動ロッド12の軸心Cまわりの4つの相対角度位置において嵌合軸部16と嵌合穴18との嵌合が可能であるので、ジャッキ駆動ロッド12と操作部材20との組み立て時の嵌合作業が容易となり、操作性が高められる。
【0036】
また、本実施例の分割式ジャッキハンドル10によれば、操作部材20は、嵌合穴18が形成されたアーム部22とそのアーム部22の一端からそのアーム部22に対して所定角度で曲げられたハンドル部24とを備えてL字状を成すことから、ジャッキ駆動ロッド12とその嵌合軸部16が嵌合穴18に嵌め入れられた状態の操作部材20とにより構成される分割式ジャッキハンドル10を用いてジャッキに回転力を伝える作業時において、そのハンドル部24を把持して回転操作力を加えることができるので、ジャッキ作業が容易となる。
【0037】
また、本実施例の分割式ジャッキハンドル10によれば、ハンドル部24のアーム部22とは反対側の端部には、車両の車輪を固定するナットが相対回転不能に嵌め入れられるソケット部32が形成が形成されていることから、分割式ジャッキハンドル10の操作部材20は、ジャッキ作業以外に、車輪の交換工具としても兼用できる利点がある。
【0038】
また、本実施例の分割式ジャッキハンドル10によれば、ジャッキ駆動ロッド12は、所定長さの断面円形の棒材から塑性加工されたものであり、ジャッキ駆動ロッド12のジャッキ連結部14は、その棒材の一端がフック状に曲成されたものであり、ジャッキ駆動ロッド12の嵌合軸部16は、一方向のプレス加工によって、その棒材の径Dよりも小さな厚みTと、その棒材の径Dよりも大きい幅寸法Wとを有する断面形状に加工され、一対の互いに平行な係合面26は、その幅寸法Wの相互間隔で形成されていることにあることから、ジャッキ駆動ロッド12の嵌合軸部16は一方向のプレス加工で形成されるので、分割式ジャッキハンドル10が一層安価となる。
【実施例2】
【0039】
本発明の他の実施例を以下に説明する。なお、実施例相互において共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図8および図9に示す実施例は、前述の実施例1に対して、操作部材20は共通しており、ジャッキ駆動ロッド12は、前述の嵌合軸部16とは異なる断面形状を有する嵌合軸部40を備えている点でのみ相違し、嵌合穴18を通過不能な抜止突起28は同様に備えている。この嵌合軸部40の断面形状は、図8に示すように、嵌合軸部16の厚さ寸法Tと同様の厚さT2と、嵌合軸部16の幅寸法Wよりも大きく嵌合穴18内の対角線と同様の幅寸法W2とを備えている。また、この嵌合軸部40の幅方向の両端部には、互いに直交する1対の係合面42がそれぞれ形成されている。嵌合軸部40の幅方向の一端部に形成された1対の係合面42のうちの一つは、その嵌合軸部40の幅方向の他端部に形成された1対の係合面42のうちの一つと、間隔寸法がWとなるように互いに平行に形成されている。
【0041】
上記のように構成されたジャッキ駆動ロッド12は、その嵌合軸部40が操作部材20のアーム部22に形成された嵌合穴18に対してたとえば図9に示すように相対回転不能且つ着脱可能にあそび嵌合される。このため、本実施例のジャッキ駆動ロッド12を用いても、前述の実施例1と同様に、ジャッキ作業中に、ジャッキ駆動ロッド12の他端に設けられた嵌合軸部16が操作部材20のアーム部22に形成された嵌合穴18から抜けることがなく、しかも部品点数が増加しないので安価に製造できる。また、ジャッキ駆動ロッド12の軸心Cまわりの4つの相対角度位置において嵌合軸部16と嵌合穴18との嵌合が可能であるので、ジャッキ駆動ロッド12と操作部材20との組み立て時の嵌合作業が容易となり、操作性が高められる。
【実施例3】
【0042】
図10に示す実施例は、前述の実施例1に対して、ジャッキ駆動ロッド12は共通しており、操作部材20は、前述の嵌合穴18とは異なる穴断面形状を有する嵌合穴50を備えている点でのみ相違している。この嵌合穴50は、その内周面が相対向する1対の小内壁面52と相対向する1対の大内壁面54とから構成されることにより、その穴断面形状が長方形とされている。上記1対の大内壁面54の間隔K1は実施例1の嵌合穴18の相対向する一対の内壁面34間の間隔Kと同じ寸法であり、上記1対の小内壁面52の間隔K2はK1よりも大きく設定されている。この実施例に用いられるジャッキ駆動ロッド12の抜止突起28は、上記嵌合穴50の1対の小内壁面52の間隔K2よりも大きな先端間間隔Sとなるように形成され、嵌合軸部16が嵌合穴50から抜けないようにされている。
【0043】
このように操作部材20のアーム部22に貫通して設けられた嵌合穴50に対しては、図10の破線に示すように、ジャッキ駆動ロッド12の嵌合軸部16が相対回転不能に嵌め入れられる。すなわち、嵌合軸部16の一対の係合面26が嵌合穴50内の相対向する一対の大内壁面54と接近した状態で嵌め入れられ、両者が当接することで相対回転不能且つ着脱可能にあそび嵌合される。嵌合穴50は断面長方形状を成しているので、嵌合軸部16は180°の相対回転位相で嵌合穴18と相対回転不能に嵌合できる。このため、本実施例の嵌合穴50を揺する操作部材20を用いても、前述の実施例1と同様に、ジャッキ作業中に、ジャッキ駆動ロッド12の他端に設けられた嵌合軸部16が操作部材20のアーム部22に形成された嵌合穴50から抜けることがなく、しかも部品点数が増加しないので安価に製造できる。また、ジャッキ駆動ロッド12の軸心Cまわりの2つの相対角度位置において嵌合軸部16と嵌合穴50との嵌合が可能であるので、ジャッキ駆動ロッド12と操作部材20との組み立て時の嵌合作業が容易となり、操作性が高められる。
【0044】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0045】
たとえば、前述の実施例の分割式ジャッキハンドル10において、ジャッキ駆動ロッド12は、丸棒状の鋼材から加工されていたが、4角形、6角形、8角形などの断面多角形の角棒状の鋼材から加工されても差し支えない。この場合には、ジャッキ駆動ロッド12の内の嵌合軸部16を除く部分は、断面多角形となる。また、この場合に用いられる操作部材の20のアーム部22に形成される嵌合穴は、断面4角形のままでもよいし、断面多角形でもよい。
【0046】
また、前述の実施例のジャッキ駆動ロッド12において、その嵌合軸部16の軸端には局部的なかしめ加工が施されることによりその嵌合軸部16の幅方向に突き出す一対の抜止突起28が設けられていたが、他の方法により形成された別の形状の抜止突起が設けられてもよい。要するに、ジャッキ駆動ロッド12の嵌合軸部16、40が嵌合穴18、50から抜けるのを阻止可能な形状を備えていればよい。
【0047】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0048】
10:分割式ジャッキハンドル
12:ジャッキ駆動ロッド
14:ジャッキ連結部
16、40:嵌合軸部
18、50:嵌合穴
20:操作部材
22:アーム部
24:ハンドル部
26:係合面
28:抜止突起
32:ソケット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャッキ連結部が一端に形成された直線状のジャッキ駆動ロッドと、嵌合穴を有するL字状の操作部材とを、該ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部と該操作部材の嵌合穴とを相対回転不能に嵌合させることで両者を組み立て、該ジャッキ駆動ロッドのジャッキ連結部が車両用ジャッキに連結された状態で該操作部材を回転操作する形式の分割式ジャッキハンドルであって、
該ジャッキ駆動ロッドの一端から該ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部までは前記嵌合穴内を通過可能な断面形状に形成され、
該ジャッキ駆動ロッドの他端に設けられた嵌合軸部の軸端には前記嵌合穴を通過不能な抜止突起が形成されている
ことを特徴とする車両用ジャッキの分割式ジャッキハンドル。
【請求項2】
前記嵌合穴は、複数の内壁面から成る多角形の断面を有し、
該嵌合穴に嵌め入れる前記嵌合軸部は、該嵌合穴と軸心まわりの該多角形の角数に対応する相対回転角度毎で嵌合可能となるように、前記複数の内壁面のうちの少なくとも2つの内壁面と当接する少なくとも2つの係合面を外周に有する
ことを特徴とする請求項1の車両用ジャッキの分割式ジャッキハンドル。
【請求項3】
前記嵌合穴は、4つの内壁面から成る正方形の断面を有し、
該嵌合穴に嵌め入れる前記嵌合軸部は、該嵌合穴と軸心まわりに90°の相対回転角度毎で嵌合可能となるように、前記4つの内壁面のうちの少なくとも一対の相対向し且つ互いに平行な内壁面と当接する少なくとも一対の互いに平行な係合面を外周に有する
ことを特徴とする請求項1または2の車両用ジャッキの分割式ジャッキハンドル。
【請求項4】
前記操作部材は、前記嵌合穴が形成されたアーム部と該アーム部の一端から該アーム部に対して所定角度で曲げられたハンドル部とを備えてL字状を成す
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の車両用ジャッキの分割式ジャッキハンドル。
【請求項5】
前記ハンドル部の前記アーム部とは反対側の端部には、前記車両の車輪を固定するナットが相対回転不能に嵌め入れるソケット部が形成が形成されている
ことを特徴とする請求項4の車両用ジャッキの分割式ジャッキハンドル。
【請求項6】
前記ジャッキ駆動ロッドは、所定長さの断面円形の棒材から塑性加工されたものであり、
該ジャッキ駆動ロッドのジャッキ連結部は、該棒材の一端がフック状に曲成されたものであり、
該ジャッキ駆動ロッドの嵌合軸部は、一方向のプレス加工によって、該棒材の径よりも小さな厚みと、該棒材の径よりも大きい幅寸法とを有する断面形状に加工され、
前記一対の互いに平行な係合面は、該幅寸法の相互間隔で形成されている
ことを特徴とする請求項3の車両用ジャッキの分割式ジャッキハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−162336(P2011−162336A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29574(P2010−29574)
【出願日】平成22年2月13日(2010.2.13)
【出願人】(000142115)株式会社協豊製作所 (26)