説明

車両用ドアミラー構造

【課題】反射鏡の拡大と外観品質の向上を図ることのできる車両用ドアミラー構造を提供する。
【解決手段】ミラーハウジング6は、反射鏡5と、反射鏡5を保持するミラーブラケット9を内部に収容する。ミラーブラケット9は、ミラーハウジング6の下壁10の結合用貫通孔14を通してミラーベース2と結合する。ミラーハウジング6は、下壁10と、下壁10に連設されて反射鏡5の側方と上方を囲む囲繞壁11と、囲繞壁11の開口7側の端部から内側に屈曲して反射鏡5の外周端面に臨む内壁フランジ12を備え、内壁フランジ12の下縁のうちの、結合用貫通孔14の直上位置には、下壁10に対して不連続な欠損部20が形成されている。ミラーブラケット9には、内壁フランジ12の欠損部20を覆う延出部18を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のサイドドアや車体側のドア開口部の前縁部等に取り付けられる車両用ドアミラーの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアミラーは、後方視認用の反射鏡とその反射鏡を保持する保持部材がミラーハウジング内に収容され、ミラーハウジングの車体後方側に向く開口を通して反射鏡が外部に臨まされるとともに、ミラーハウジングの下壁に形成された結合用貫通孔を通して前記ブラケットが車体側のミラーベースに結合されている(特許文献1参照)。
【0003】
このドアミラーのミラーハウジングは、結合用貫通孔が形成される下壁に、反射鏡の側方と上方を囲む囲繞壁が連続して形成されるとともに、囲繞壁の開口側の端縁に、内向きに屈曲されて反射鏡の外周端面に臨む内壁フランジが一体に延設されている。この内壁フランジは、反射鏡が角度調整された場合にも反射鏡との隙間をほぼ一定に保ち得るように、ミラーハウジングの底部側に向かって緩やかに湾曲している。また、ミラーハウジングのうちの囲繞壁の車体に近接する側の面と内壁フランジの間には大きなスペースが確保され、そのスペースの下方に、下壁の結合用貫通孔が位置されるようになっている。これにより、ミラーハウジング内のミラーベースとの結合部はミラーハウジングの開口に対して車体側にオフセットした位置に配置されている。
【特許文献1】特開2002−274260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のドアミラー構造においては、ミラーハウジングの囲繞壁のうちの車体に近接する側の面と内壁フランジの間に大きなスペースが確保されているため、反射鏡を大型化しようとすると、ミラーハウジングが大型化してしまう。
【0005】
この大型化を回避する対策して、囲繞壁の車体に近接する側の面と内壁フランジの間のスペースを小さくことが考えられるが、このスペースを小さくすると、ミラーハウジングの内壁フランジが下壁の結合用貫通孔の直上部に位置されることになり、ミラーハウジングを一体に型成形する場合には、内壁フランジの下縁うちの結合用貫通孔の直上位置に下壁に対して非連続な欠損部ができてしまう。
すなわち、上記のドアミラーの場合、ミラーハウジングの内壁フランジが囲繞壁の開口側の端部から内向きに折り返された形状となっているため、型成形時のベース型の型抜き方向がミラーハウジングの奥行き方向(開口から底部に向かう方向)になり、下壁に結合用貫通孔を形成するための中子型の型抜き方向がベース型の型抜き方向と直交することになる。そして、中子型の型抜き方向がベース型の型抜き方向と直交する方向となると、中子型が結合用貫通孔の直上位置にある内壁フランジの造形部の一部に入り込み、内壁フランジに欠損部が形成されることになる。
【0006】
しかし、こうして内壁フランジの下縁に下壁に対して非連続な欠損部が形成されると、反射鏡の回動状態により、欠損部を通してミラーハウジングの内部が見えてしまうことが懸念される。
【0007】
そこで、この発明は、反射鏡の拡大と外観品質の向上を図ることのできる車両用ドアミラー構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、反射鏡(例えば、後述の実施形態における反射鏡5)とその反射鏡を保持する保持部材(例えば、後述の実施形態におけるミラーブラケット9)がミラーハウジング(例えば、後述の実施形態におけるミラーハウジング6)内に収容され、前記保持部材が前記ミラーハウジングの下壁(例えば、後述の実施形態における下壁10)を貫通する結合用貫通孔(例えば、後述の実施形態における結合用貫通孔14)を介して車体側のミラーベース(例えば、後述の実施形態におけるミラーベース2)に結合されるとともに、前記反射鏡が前記ミラーハウジングの開口(例えば、後述の実施形態における開口7)を通して外部に臨み、前記ミラーハウジングが、前記下壁と、前記下壁に連設されて前記反射鏡の側方と上方を囲む囲繞壁(例えば、後述の実施形態における囲繞壁11)と、この囲繞壁の前記開口側の端部から内側に屈曲して前記反射鏡の外周端面に臨む内壁フランジ(例えば、後述の実施形態における内壁フランジ12)と、を備え、前記内壁フランジの下縁のうちの、前記結合用貫通孔の直上位置に、前記下壁に対して不連続な欠損部(例えば、後述の実施形態における欠損部20)が形成されている車両用ドアミラー構造であって、前記内壁フランジの欠損部に、この欠損部を覆う被覆部材(例えば、後述の実施形態における延出部18)を設けたことを特徴とする。
これにより、内壁フランジの欠損部が被覆部材によって覆われ、欠損部を通してミラーハウジングの内部が露出しないようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ドアミラー構造において、前記被覆部材は、前記内壁フランジに連続するように設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用ドアミラー構造において、前記被覆部材は、前記保持部材に一体に形成した延出部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、内壁フランジの下縁の欠損部が被覆部材によって覆われるため、反射鏡の拡大に伴って内壁フランジの下縁の欠損部が不可避であっても、その欠損部を通してミラーハウジングの内部が見えることがなくなり、その結果、反射鏡の拡大と外観品質の向上の両立が可能になる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、欠損部を覆う被覆部材が、内壁フランジに連続するように設けられているため、内壁フランジが欠損部付近で外観上不連続にならず、外観品質のさらなる向上を図ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、欠損部を覆う被覆部材を、反射鏡を保持する保持部材に一体に形成した延出部によって構成したため、部品点数の増加を無くし、製品コストの高騰を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、ドアミラー1が車体に正規姿勢で設置された状態で、車体の後方側に向く側を前面と呼び、上,下については、車体取付状態における上と下をそれぞれ指すものとする。
【0015】
図1は、この発明を採用した車両のドアミラー1の外観を示すものである。同図において、2は、図示しないサイドドアの前端部に取り付けられるミラーベースであり、3は、ミラーベース2の支持軸4に回動自在に取り付けられるドアミラー本体である。
【0016】
ドアミラー本体3は、運転席から車体後方側を写す反射鏡5が樹脂製のミラーハウジング6に収容され、反射鏡5の反射面がミラーハウジング6の前面の開口7を通して外部に臨むようになっている。
図2は、反射鏡5を取り去ったドアミラー本体3を示すものであり、同図に示すように、ミラーハウジング6の内部には、反射鏡5の角度を調整するためのアクチュエータユニット8と、アクチュエータユニット8を介して反射鏡5を保持するミラーブラケット9(保持部材)が収容されている。なお、図3は、反射鏡5に加えてさらにアクチュエータユニット8を取り去ったドアミラー本体3を示すものである。
【0017】
ミラーハウジング6は、反射鏡5とミラーブラケット9の下方を覆う下壁10と、下壁10に連設されて反射鏡5の側方と上方を囲う枠状の囲繞壁11と、を備え、囲繞壁11の開口7側の端縁には、ミラーハウジング6の内側に屈曲して反射鏡5の外周端面に微小隙間をもって臨む内壁フランジ12が一体に延設されている。この内壁フランジ12はドアミラー本体3の底部中心側に向かって若干湾曲し、微小隙間を維持したまま反射鏡5の回動変位を許容し得るようになっている。また、内壁フランジ12は、反射鏡5の外周端面の形状に沿うように上辺領域12aから両側の側辺領域12b,12cの下端に向かって湾曲し、車外側の側辺領域12bの下端は下壁10の上面に対して滑らかに連続している。ただし、車内側(車体に近接する側)の側辺領域12cの下端と下壁10の上面とは完全に連続しておらず、その側辺領域12cの下縁には略方形状の欠損部20が形成されている。また、内壁フランジ12には、図2と図4の断面図に示すように、奥行き方向に湾曲して延出する複数のリブ13が延設され、これらのリブ13がミラーハウジング6の奥行き方向の底部を成すようになっている。
【0018】
また、ミラーハウジング6の底部側の外面には、車体と同色の樹脂材料から成るハウジングカバー30が被着されている。このハウジングカバー30は、前端部がミラーハウジング6の囲繞壁11から下壁10にかけての後端部に密接し、ミラーハウジング6とともにドアミラー本体3の外表面を連続的に形成するようになっている。なお、ハウジングカバー30の車外側の端部には切欠き部31が形成され、この切欠き部31にドアミラー用のウィンカーランプ32が装着されるようになっている。
【0019】
ところで、ミラーハウジング6の下壁10のうちの車体側に偏寄した位置には、図1,図3と図6の断面図に示すように、ミラーベース2の支持軸4と図示しない電気配線が挿通される結合用貫通孔14が形成されている。結合用貫通孔14はミラーハウジング6の下壁10のうちの開口7の近傍部から底部に近接した部位に亙って形成され、この結合用貫通孔14に挿通されたミラーベース2の支持軸4はミラーハウジング6内のミラーブラケット9に結合されている。なお、内壁フランジ12の車内側の側辺領域12cの下縁の欠損部20は結合用貫通孔14の直上位置に形成されている。この内壁フランジ12の欠損部14は、ミラーハウジング6を型成形する際に、結合用貫通孔14を形成する中子型によって不可避的に形成されるものである。
つまり、ミラーハウジング6には囲繞壁11の開口7側の端縁が折曲された内壁フランジ12が形成されているため、全体を造形するベース型の抜き方向はミラーハウジング6の奥行き方向と合致し、結合用貫通孔14を形成する中子型の抜き方向はベース型の抜き方向と直交する方向となる。そして、この中子型の型抜き方向が内壁フランジ12の造形部と干渉することから、内壁フランジ12の対応部位には欠損部20が不可避的に形成される。
【0020】
図7は、結合用貫通孔14を介してミラーベース2に結合されるミラーブラケット9の外観を示すものである。この図7にも示すように、ミラーブラケット9は、支持軸4との結合基部16(図6参照)の車外側にアクチュエータユニット8を支持するためのユニット保持部17が延設されるとともに、結合基部16の前方側に板状の延出部18(被覆部材)が設けられ、ミラーブラケット9がミラーハウジング6内に設置された状態において、この延出部18が内壁フランジ12の欠損部20を覆うようになっている。延出部18は、断面略円弧状に形成され、欠損部20を覆った状態において、内壁フランジ12の側辺領域12cの下縁とミラーハウジング6の下壁10が視覚的に連続した曲面で繋がるようになっている。
【0021】
以上のように、このドアミラー1においては、ミラーハウジング6の内壁フランジ12の下縁の欠損部20が、ミラーブラケット9の延出部18によって視覚的に連続するように覆われているため、反射鏡5の角度調整によってミラーハウジング6の開口7から内壁フランジ12の下縁が露出しても、欠損部20を通してミラーハウジング6の内部が見えることがない。したがって、このドアミラー1においては外観品質を確実に向上させることができる。
【0022】
そして、このドアミラー1の場合、ミラーベース2とミラーブラケット9の結合部がミラーハウジング6内の反射鏡5の背部に一部オーバーラップするように配置されるため、ミラーハウジング6の内壁フランジ12の下縁に欠損部20が不可避的に形成されるものの、その分、ミラーハウジング6を大型化することなく反射鏡5を幅方向に充分に拡大することができる。
【0023】
また、この実施形態のドアミラー1においては、ミラーブラケット6に延出部18を一体に形成し、その延出部18を、欠損部20を覆う被覆部材としたため、別体の被覆部材を追加する場合に比較して部品点数の削減し、製品コストのさらなる低減を図ることができる。特に、ミラーブラケット9は、ミラーベース2やミラーハウジング6に結合される大型部品であることから、欠損部20を常に安定姿勢で覆うことができるという利点がある。
【0024】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態のドアミラーを示す斜視図。
【図2】同実施形態のドアミラー本体を、反射鏡を取り去って示す斜視図。
【図3】同実施形態のドアミラー本体を、反射鏡とアクチュエータユニットを取り去って示す斜視図。
【図4】同実施形態を示す図2のA−A断面に対応する断面図。
【図5】同実施形態を示す図2のB−B断面に対応する断面図。
【図6】同実施形態を示す図2のC−C断面に対応する断面図。
【図7】同実施形態のドアミラーのミラーブラケットを示す斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1…ドアミラー
2…ミラーベース
5…反射鏡
6…ミラーハウジング
7…開口
9…ミラーブラケット(保持部材)
10…下壁
11…囲繞壁
12…内壁フランジ
14…結合用貫通孔
18…延出部(被覆部材)
20…欠損部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射鏡とその反射鏡を保持する保持部材がミラーハウジング内に収容され、
前記保持部材が前記ミラーハウジングの下壁を貫通する結合用貫通孔を介して車体側のミラーベースに結合されるとともに、前記反射鏡が前記ミラーハウジングの開口を通して外部に臨み、
前記ミラーハウジングが、前記下壁と、前記下壁に連設されて前記反射鏡の側方と上方を囲む囲繞壁と、この囲繞壁の前記開口側の端部から内側に屈曲して前記反射鏡の外周端面に臨む内壁フランジと、を備え、
前記内壁フランジの下縁のうちの、前記結合用貫通孔の直上位置に、前記下壁に対して不連続な欠損部が形成されている車両用ドアミラー構造であって、
前記内壁フランジの欠損部に、この欠損部を覆う被覆部材を設けたことを特徴とする車両用ドアミラー構造。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記内壁フランジに連続するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアミラー構造。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記保持部材に一体に形成した延出部であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアミラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−96286(P2009−96286A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268858(P2007−268858)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】