説明

車両用ナビゲーション装置

【目的】 種々の走行状況においても正確に車両方位を決定することができ、これによりナビゲーションの信頼性を著しく向上させることが可能な車両用ナビゲーション装置を提供する。
【構成】 現在位置測定部12の方位決定部12aは地磁気センサ16、左右輪センサ18、ステアリングセンサ17からの方位データ及びGPSレシーバ14からの信号に含まれるドプラ効果によるドプラシフトから算出されるGPS方位データに基づき車両の方位を推定し、さらにこの推定方位と距離センサ19から供給される距離データに基づき車両の現在位置を推定する。そして、この現在位置と地図情報記憶部10から供給される地図データとのマップマッチングを行い、指定された最近道路の方位データと前記推定方位とを比較して最終的な車両の方位を決定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両用ナビゲーション装置、特に複数センサを用いて車両の方位を決定するハイブリッド方式のナビゲーション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、運転者の運転操作低減を図るべく、車両運転席近傍に設けられたディスプレイに地図を表示して運転者に目的地までの経路を指示するナビゲーション装置が開発されている。
【0003】このようなナビゲーション装置では、車両の現在位置をいかに正確に検出して地図上に評定するかが重要課題となっており、このため各種センサを組み合わせて位置検出の精度を上げるとともに、マップマッチング等の位置補正手法を取り入れてナビゲーションシステムの実用化を図っている。
【0004】例えば、車両の方位を決定するために、地磁気を検出する地磁気センサ、磁界の乱れが生じるような場合(例えば鉄骨を積んだトラックが横を通過する場合や高架の道路を走行する場合)に地磁気センサの誤差を修正するための車両前輪の左右輪回転数差を検出する左右輪センサ、さらに時速3.5km/h未満の低速時に左右輪センサが作動不能となった場合に補償するためのステアリングセンサを設け、これらを組み合わせて車両方位を推定している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来においては複数のセンサを用いて車両方位を決定しているが、これら地磁気センサ、左右輪センサ、ステアリングセンサを組み合わせて使用しても、ステアリングセンサには±20の無視できない方位誤差が生じるため、例えば高架道路を走行した場合等には正確な方位が検出できない場合が生じる問題があった。
【0006】本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は種々の走行状況においても正確に車両方位を決定することができ、これによりナビゲーションの信頼性を著しく向上させることが可能な車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の車両用ナビゲーション装置は、地磁気センサと、車両前輪の左右輪の回転速度差を検出する左右輪センサと、ステアリング角を検出するステアリングセンサと、人工衛星からの位置情報を受信するGPSレシーバと、このGPSレシーバからの出力信号に含まれるドプラシフトを用いて車両方位を算出するGPS方位算出手段と、道路の方位を含む地図情報を格納する記憶手段と、前記地磁気センサ、左右輪センサ、ステアリングセンサ及びGPS方位算出手段からの出力に基づき車両の方位を推定し、この推定された車両の方位と車両の現在位置に最も近い地図情報上の道路の方位と比較して車両方位を決定する方位決定手段とを有することを特徴とする。
【0008】
【作用】このように、本発明の車両用ナビゲーション装置では、従来の地磁気センサ、左右輪センサ、ステアリングセンサによる方位検出に加え、人工衛星からの電波を受信して位置検出を行うGPS(グローバル ポジショニング システム:Grobal Positioning System )のドプラ効果(ドプラシフト)を用いて方位を推定する。さらに本発明では、マップマッチングにより車両の現在位置に最も近い道路が選ばれた場合、地図情報として格納されているこの道路の方位と推定された方位とを比較して、道路方位に合致した車両方位を決定する。
【0009】
【実施例】以下、図面を用いながら本発明に係る車両用ナビゲーション装置の好適な実施例を説明する。
【0010】図1には本実施例の車両用ナビゲーション装置の全体構成が示されている。地図情報記憶部10には全国の主要な幹線道路や細街路等の道路データや地名などの地図情報が格納されており、これらのデータは適宜読み出されて現在位置測定部12に供給される。なお。この地図情報記憶部10としては小型かつ大容量のCD−ROM等が用いられる。
【0011】一方、車両を所定位置にはその地点の地磁気を検出する地磁気センサ16、車両のステアリング角を検出するステアリングセンサ17、車両の左右前輪の回転数差を検出する左右輪センサ18、車両の走行距離を検出する距離センサ19が設けられ、それぞれのセンサからの検出信号も現在位置測定部12に供給される。なお、地磁気センサ16、左右輪センサ18、ステアリングセンサ17、距離センサ19は周知の構成のセンサ(例えば、ステアリングセンサ17としてはステアリングシャフトに圧入されたスリット板とホトインターラプタの組み合わせ)を用いることができる。また、本実施例ではこれらセンサに加え、複数の人工衛星からの電波を受信するGPSレシーバ14が設けられており、受信したデータを現在位置測定部12に供給する。
【0012】現在位置測定部12は方位決定部12aを有しており、地磁気センサ16、左右輪センサ18、ステアリングセンサ17からの方位データ及びGPSレシーバ14からの信号に含まれるドプラ効果によるドプラシフトから算出されるGPS方位データに基づき車両の方位を推定し、さらにこの推定方位と距離センサ19から供給される距離データに基づき車両の現在位置を推定する。そして、この現在位置と地図情報記憶部10から供給される地図データとのマップマッチングを行い、指定された最近道路の方位データと前記推定方位とを比較して最終的な車両の方位を決定する。
【0013】このようにして、現在位置測定部12では現在位置を決定し、得られた現在位置データを演算部20の経路算出部22に供給する。また、地図情報記憶部10からの地図データも経路算出部22に供給される。経路算出部22では、これらのデータ及び入力部21から供給される目的地点や経由地点データに基づき、目的値までの最適経路を探索して経路記憶部24に格納する。なお、経路探索方法はダイキストラ法やニコルソン法等の既知の方法が用いられる。そして、格納された経路データは経路案内制御部26に地図データや現在位置データとともに供給され、表示部28に表示されて運転者に指示するとともに、音声制御部30を介してスピーカ34に供給して運転者に音声指示する構成である。なお、音声指示する場合には、予め複数の基本音声指示パターンを音声記憶部32に格納しておき、これらの基本パターンを音声制御部30で適宜組み合わせて「およそ300m先***交差点を左方向です。」等と指示する。
【0014】図2には本実施例における方位決定のより詳細な構成ブロック図が示されている。ステアリングセンサ17からのステアリング角度及び左右輪センサ18からの左右前輪の回転数差はともに現在位置測定部12の方位決定部12a内の方位変化算出手段12bに供給される。ステアリング角度変化から車両の方位変化が検出され、また低速検出手段13(車速センサとコンパレータで構成され、所定の速度3.5km/h以下となった場合に低速検出信号を出力する)からの検出信号に基づき低速時には左右輪の回転数差から車両の方位変化が検出される。そして、この検出された方位変化を前回方位に加算され、現在方位を推定する。一方、GPSレシーバ14からの出力に基づき算出されたGPS方位も前回方位と比較され、方位補正が行われる。但し、このGPS方位は常に採用されるのではなく、一定の場合のみに採用される。
【0015】図3にはGPS方位の採用フローチャートが示されている。まず、S101にてGPSレシーバ14からのGPS方位を受信すると、次にS102にて車両が一定速度以上で走行しているか否かが判定される。一定速度以上で走行している場合には、次にS103に移行して直進走行しているか否かが判定される。車両が一定速度以上で直進走行している場合には、GPS信号による充分なドプラ効果が期待され、このドプラ効果を用いて検出されるGPS方位が安定して得られているかをS104で判定してGPS方位を採用する。これ以外の場合、例えば車両が低速で走行している場合や右左折している場合にはドプラ効果による方位決定に充分な精度が期待できないため、GPS方位は採用されない。
【0016】このようにして、前回方位と方位角変化、さらにはGPS方位を用いることによりステアリングセンサ17の検出誤差を解消して現在の方位が算出され、方位決定部12a内の方位切り替え手段12cに供給される。方位切り替え手段12cではこのようにして算出された方位と地磁気センサ16からの方位データを比較して現在方位を推定するとともに、マップマッチングの結果得られた最近道路の方位データと比較して道路の方位に一致した方位に切り替えて最終的な方位(ハイブリッド方位)として出力する。なお、マップマッチングには既知の手法が用いられ、例えばステアリングセンサからの信号に基づき車両が交差点を右左折したと判断した時に現在位置を地図上の交差点に引き込み補正することにより行われる。また、道路の方位データは、このようなマップマッチングで指定された道路の方位データをCD−ROM等の地図情報記憶部10から読み出し、方位切り替え手段12cに供給すればよい。
【0017】このように、本実施例では従来の方位センサに加え、人工衛星からのGPS信号を用いたGPS方位でより正確な方位算出を可能とし、さらにマップマッチングで得られた道路の方位に合致するように方位を補正して最終的な方位を決定することにより、極めて精度の高い方位検出が可能となり、ナビゲーションシステムの信頼性向上を図ることができる。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る車両用ナビゲーション装置によれば、高精度の車両方位決定が可能となり、ナビゲーションシステムの信頼性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の全体構成図である。
【図2】同実施例の方位決定を行う構成図である。
【図3】同実施例のGPS方位採用フローチャートである。
【符号の説明】
10 地図情報記憶部
12 現在位置測定部
14 GPSレシーバ
16 地磁気センサ
17 ステアリングセンサ
18 左右輪センサ
19 距離センサ
20 演算部
21 入力部
28 表示部
30 音声制御部
32 音声記憶部
34 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 地磁気センサと、車両前輪の左右輪の回転速度差を検出する左右輪センサと、ステアリング角を検出するステアリングセンサと、人工衛星からの位置情報を受信するGPSレシーバと、このGPSレシーバからの出力信号に含まれるドプラシフトを用いて車両方位を算出するGPS方位算出手段と、道路の方位を含む地図情報を格納する記憶手段と、前記地磁気センサ、左右輪センサ、ステアリングセンサ及びGPS方位算出手段からの出力に基づき車両の方位を推定し、この推定された車両の方位と車両の現在位置に最も近い地図情報上の道路の方位と比較して車両方位を決定する方位決定手段と、を有することを特徴とする車両用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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