説明

車両用バンパー構造体

【課題】本発明は、安価に製造することができる車両用バンパーの提供を課題とする。
【解決手段】車体28の前部に設けられるバンパービーム13の前方にエネルギー吸収機構15を設け、このエネルギー吸収機構15は、外力を受けたときに後退移動する荷重伝達部材18と、この荷重伝達部材18に設けられた衝突検出センサ22とで構成することを特徴とする。
【効果】衝突の際に衝突検出センサ22に加速度が加わりやすい。衝突時に衝突検出センサ22に加速度が加わりやすい構造とすることで、衝突を検知しやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バンパーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の前部に設けられた車両用バンパーに物が当たると、物が塑性変形し、衝突時のエネルギーを吸収する。このような車両用バンパーが種々提案されている(例えば、特許文献1(図3)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、前方にバンパーフェース101が取付けられた車体102に、被衝突物103が衝突すると、(b)に示すようにバンパーフェース101及びエネルギー吸収体104が変形してエネルギーを吸収する。
これにより、歩行者等の被衝突物103が受ける衝撃を軽減することができる。
【0004】
加えて、エネルギー吸収体104の下方にセンサ105を設けておけば、エネルギー吸収体104の変形によりセンサ105に加速度が加わるため、センサ105で衝突を検出することができる。
センサ105で衝突を検知し、この情報を基に例えば、フードを持ち上げて歩行者が受ける衝撃を軽減することができる。
このような車両用バンパー107の問題点を、次図で説明する。
【0005】
図7に示すように、車両用バンパー107は、エネルギーを効率よく吸収するために、容易に局部的に変形するように形成されている。センサ105a(aは被衝突物103の左側のセンサを示す添え字。)とセンサ105b(bは被衝突物103の右側のセンサを示す添え字。)の間に被衝突物103が衝突した場合は、これらのセンサ105a、bの間が局部的に塑性変形し、センサ105a、b付近はあまり変形しない。変形が小さいと、センサ105a、bに変形時の加速度が加わりにくい。即ち、センサ105が衝突を検出しにくい。
【0006】
衝突を検出しやすい車両用バンパーの提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−342812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、衝突を検出しやすい車両用バンパーの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体の前部に設けられるバンパービームの前方にエネルギー吸収機構を設け、このエネルギー吸収機構の前方にバンパーフェースを設けてなる車両用バンパー構造体において、
前記エネルギー吸収機構は、車体の幅方向に延ばされ、車両前方から前記車体に向かう外力を受けたときに後退移動する荷重伝達部材と、この荷重伝達部材と前記バンパービームとの間に渡され塑性変形することでエネルギーを吸収するエネルギー吸収部材と、前記荷重伝達部材に設けられた衝突検出センサとで構成することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、荷重伝達部材は、長尺の中空材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、外力により荷重伝達部材が後退したことを衝突検出センサで検出する。荷重伝達部材は局部変形することなく全体的に後退するため、衝突の際に衝突検出センサに加速度が加わりやすい。衝突時に衝突検出センサに加速度が加わりやすい構造とすることで、衝突を検知しやすくなる。
【0012】
請求項2に係る発明では、荷重伝達部材は中空材である。中空材であるから剛性を確保しつつ、軽量化を図ることができ、車両用バンパー構造の軽量化を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用バンパー構造体の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】本発明に係る車両用バンパー構造体の平面図である。
【図5】本発明に係る車両用バンパー構造体の作用を説明する図である。
【図6】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【図7】従来の技術の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、車両用バンパー10は、上部支持体11、11及び下部支持体12を介して車体に支持され車幅方向に延ばされるバンパービーム13と、このバンパービーム13の前方に支持され外力を吸収するエネルギー吸収機構15と、このエネルギー吸収機構15の前方を覆うバンパーフェース(図2符号24)とからなる。
【0016】
エネルギー吸収機構15は、バンパービーム13に支持され塑性変形することで外力を吸収する複数のエネルギー吸収部材16と、これらのエネルギー吸収部材16の上面に配置される伝達部材支持ブラケット17と、これらの伝達部材支持ブラケット17に支持され外力を受けたときにバンパービーム13に向かって移動する荷重伝達部材18と、この荷重伝達部材18にセンサ支持ブラケット21を介して支持され荷重伝達部材18が後退移動したことを検出する衝突検出センサ22とからなる。
衝突検出センサ22には、加速度センサが用いられる。
衝突検出センサの支持構造について詳細を次図で説明する。
【0017】
図2に示すように、衝突検出センサ22は、荷重伝達部材18からバンパービーム13に向かって配置されるセンサ支持ブラケット21によって、ボルト23止めすることで支持されている。即ち、衝突検出センサ22は、荷重伝達部材18とバンパービーム13との間に設けられる。
荷重伝達部材18の前方に配置されるのは、バンパーフェース24である。即ち、バンパーフェース24は、エネルギー吸収機構15の前方を覆っている。
【0018】
車両の前方からバンパービーム13に向かって外力を受けた場合、荷重伝達部材18はバンパービーム13に向かって移動する。このとき荷重伝達部材18に支持される衝突検出センサ22もバンパービーム13に向かって一体的に移動される。この移動の際に衝突検出センサ22に加速度が加わり、衝突検出センサ22が衝突を検出する。
【0019】
荷重伝達部材18は、中空の角形の他、中空の円筒型等の中空材を用いることができ、中空材の他にも、中実やL型等形状は問わない。即ち、車幅方向(図面表裏方向)に渡って荷重を伝達することができるものであれば、形状は問わない。
【0020】
ただし、長尺の中空材を荷重伝達部材18に用いた場合は、剛性を確保しつつ、軽量化を図ることができ、車両用バンパー10構造の軽量化を促すことができる。
荷重伝達部材の支持構造について詳細を次図で説明する。
【0021】
図3に示すように、エネルギー吸収部材16は、脚部26がバンパービーム13に接合され、このようなエネルギー吸収部材16の上面に、伝達部材支持ブラケット17を介して荷重伝達部材18は支持される。
即ち、エネルギー吸収部材16は、荷重伝達部材18とバンパービーム13との間に渡されている。
以上に説明した車両用バンパーをまとめると、次図のようにいうことができる。
【0022】
図4に示すように、車体28の前部に設けられるバンパービーム13の前方にエネルギー吸収機構15を設け、このエネルギー吸収機構15の前方にバンパーフェース24を設けてなる車両用バンパー10構造体において、エネルギー吸収機構15は、車体28の幅方向に延ばされ、車両前方(図面右側)から車体28に向かう外力を受けたときに後退移動する荷重伝達部材18と、この荷重伝達部材18とバンパービーム13との間に渡され塑性変形することでエネルギーを吸収するエネルギー吸収部材16と、荷重伝達部材18とバンパービーム13との間に設けられ荷重伝達部材18が後退移動したことを検出する衝突検出センサ22とで構成することを特徴とする。
【0023】
なお、図に示されるようにエネルギー吸収部材16は、形状がそれぞれ異なる複数の種類のエネルギー吸収部材16を用いることもできる。このような場合は、配置される場所によりエネルギー吸収部材16の形状を変化させることで、より効率よく荷重伝達部材18を後退移動させることができ有益である。
【0024】
衝突検出センサ22と、エネルギー吸収部材16とは、平面視で交互に並べられる構成の他、エネルギー吸収部材16とエネルギー吸収部材16の間に連続して衝突検出センサ22を配置する等これらの配置は任意に選択することができる。
このような車両用バンパーの作用を次図で説明する。
【0025】
図5(a)に示すように、被衝突物30が矢印(1)で示すように車両前方から車体に向かって衝突することがある。
このとき、(b)に示すように、車両前方から車体に向かう外力を受けることで、エネルギー吸収部材16がエネルギーを吸収しながら塑性変形をする。
【0026】
このとき、荷重伝達部材18全体がバンパービーム13に向かって後退移動し、この移動により衝突検出センサ22に加速度が加わり、衝突検出センサ22は衝突を検出する。
【0027】
外力により荷重伝達部材18が後退したことを、衝突検出センサ22で検出する。荷重伝達部材18は局部変形することなく全体的に後退するため、衝突の際に衝突検出センサ22に加速度が加わりやすい。衝突時に衝突検出センサ22に加速度が加わりやすい構造とすることで、衝突を検知しやすくなる。
【0028】
尚、本発明に係る車両用バンパーは、四輪車の他、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の車両用バンパーは、四輪車に好適である。
【符号の説明】
【0030】
10…車両用バンパー、13…バンパービーム、15…エネルギー吸収機構、16…エネルギー吸収部材、18…荷重伝達部材、22…衝突検出センサ、24…バンパーフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に設けられるバンパービームの前方にエネルギー吸収機構を設け、このエネルギー吸収機構の前方にバンパーフェースを設けてなる車両用バンパー構造体において、
前記エネルギー吸収機構は、車体の幅方向に延ばされ、車両前方から前記車体に向かう外力を受けたときに後退移動する荷重伝達部材と、この荷重伝達部材と前記バンパービームとの間に渡され塑性変形することでエネルギーを吸収するエネルギー吸収部材と、前記荷重伝達部材に設けられた衝突検出センサとで構成することを特徴とする車両用バンパー構造体。
【請求項2】
前記荷重伝達部材は、長尺の中空材であることを特徴とする請求項1記載の車両用バンパー構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−260516(P2010−260516A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114866(P2009−114866)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)