説明

車両用バンパ装置

【課題】ねじれ剛性を増大することができ、且つ、車体の車両前後方向端部が車両幅方向で曲成された相手車両と衝突した場合において、該衝突の衝撃吸収に係る発生荷重をより増大することができるバンパリインホースを備えた車両用バンパ装置を提供する。
【解決手段】バンパリインホース14は、車両幅方向全長に亘って外側壁部23の車両高さ方向中央部に溝状のビード24の形成された板材からなる。また、バンパリインホース14は、車両幅方向において、各結合部材11の結合位置及びバンパリインホース14の中心Oの間に配置され、車両前側に突出する一対の凸部14cと、両凸部14cに挟まれる車両幅方向の全範囲が該凸部14cよりも車両後側に引っ込むように一定の曲率半径を有する曲成部14bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バンパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用バンパ装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図6は、この車両用バンパ装置を示す斜視図である。同図に示されるように、この車両用バンパ装置に適用される金属板からなるバンパリインホース91は、車両幅方向に延在しており、その両端部が車両前後方向に延びる一対のクラッシュボックス92に結合されている。そして、バンパリインホース91の車両前側に臨む前壁部の車両幅方向中央部には、当該方向に延在して車両高さ方向に並設された一対の溝状のビード91aが形成されている。また、バンパリインホース91は、平面視で車両幅方向両端部よりも中央部が前方に突出する緩やかな湾曲形状に形成されている。
【特許文献1】特開2008−56081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このバンパリインホース91は、剛性増大のためのビード91aを有するものの、該ビード91aが車両幅方向中央部のみの配置であることで、ビード91aの端部又はクラッシュボックス92の締結位置の内側でねじれが発生し易く、十分な剛性増大が図れない可能性がある。また、バンパリインホース91は、全長に亘って略一定の曲率半径を有して緩やかな湾曲形状に形成されているため、例えば車体前部が車両幅方向で緩やかに曲成された相手車両と正面衝突した場合、該衝突の衝撃によるバンパリインホース91への入力荷重が車両幅方向中央部の1点に集中することで、該バンパリインホース91が折れやすくなり、衝撃吸収に係る発生荷重が低くなってしまう。
【0004】
本発明の目的は、ねじれ剛性を増大することができ、且つ、車体の車両前後方向端部が車両幅方向で曲成された相手車両と衝突した場合において、該衝突の衝撃吸収に係る発生荷重をより増大することができるバンパリインホースを備えた車両用バンパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両幅方向に延在するとともに両端部が車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合されるバンパリインホースを備える車両用バンパ装置において、前記バンパリインホースは、車両高さ方向に離隔配置された上壁部及び下壁部と、前記上壁部及び前記下壁部の車両前後方向外側端間を連結する外側壁部とを一体的に有するとともに、車両幅方向全長に亘って前記外側壁部の車両高さ方向中央部に溝状のビードの形成された板材からなり、車両幅方向において、前記各結合部材の結合位置及び前記バンパリインホースの中心の間に配置され、車両前後方向外側に突出する一対の凸部と、前記両凸部に挟まれる車両幅方向の全範囲が該凸部よりも車両前後方向内側に引っ込むように一定の曲率半径を有する曲成部とを有することを要旨とする。
【0006】
同構成によれば、前記上壁部、前記下壁部及び前記外側壁部を一体的に有する、いわゆる開き断面形状の板材からなる前記バンパリインホースは、車両幅方向全長に亘って前記外側壁部の車両高さ方向中央部に溝状のビードが形成されていることで、ねじれ剛性を著しく増大することができる。これは、前記バンパリインホースに加わるねじれ荷重が、前記ビード底部で抑えられることによる。また、前記一対の結合部材により2箇所で支持されたバンパリインホースにおいて、例えば車体の車両前後方向端部が車両幅方向で曲成された相手車両と衝突した場合、該衝突の衝撃によるバンパリインホースへの入力荷重が前記一対の凸部の2点に集中することで、衝撃吸収に係る発生荷重を増大することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用バンパ装置において、前記結合部材は、車両前後方向に連通する中空部材と、前記中空部材の前記バンパリインホースに対向する開口端に接合されて前記中空部材と前記バンパリインホースとを結合する取付部材とを備え、前記バンパリインホースは、前記ビードの底部が前記取付部材に接触するように前記ビードを凹ませており、前記ビードの底部及び前記取付部材の接触部で前記結合部材と結合されていることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、前記バンパリインホースは、前記ビードの底部及び前記取付部材の接触部で前記結合部材と結合されているため、例えば衝突の衝撃によるバンパリインホースへの入力荷重を前記ビードの底部及び前記取付部材を通じて前記結合部材に効率的に伝えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ねじれ剛性を増大することができ、且つ、車体の車両前後方向端部が車両幅方向で曲成された相手車両と衝突した場合において、該衝突の衝撃吸収に係る発生荷重をより増大することができるバンパリインホースを備えた車両用バンパ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、自動車などの車両のフロント部分に適用される本実施形態に係る車両用バンパ装置を示す平面図であり、図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。同図に示されるように、車両幅方向両側には、車両前後方向に延びる一対の結合部材11が配設されている。この結合部材11は、中空部材としてのクラッシュボックス12と、取付部材としての取付ブラケット13とを備えて構成される。
【0011】
クラッシュボックス12は、例えば金属板からなり、図2に示すように、車両前後方向に連通する略四角筒状の中空構造を有して車両前後方向に延びている。なお、クラッシュボックス12の車両後側に配置される基端部は、その中心線に一致する中心線を有して車両前後方向に延在する中空構造のサイドメンバ(図示略)に結合されている。各サイドメンバは、ボデーの一部を構成する。
【0012】
取付ブラケット13は、例えば金属板にて四角形に成形されており、クラッシュボックス12の車両前側に臨む開口端12aに接合されている。そして、クラッシュボックス12の当該開口端12aは、取付ブラケット13にて閉塞されている。なお、取付ブラケット13のクラッシュボックス12よりも上下に突出する両端部は、先端に向かうに従い車両後側に変位するように傾斜する上部フランジ13a及び下部フランジ13bをそれぞれ形成する。そして、各結合部材11(取付ブラケット13)の前端には、図1に示すように、車両幅方向に延在するバンパリインホース14の各端部14aが取着されている。
【0013】
バンパリインホース14は、例えば鉄板にて成形されており、図2に示すように、車両高さ方向に離隔配置された上壁部21及び下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の車両前側端間を連結する外側壁部23とを一体的に有する。上壁部21は、車両後側に向かうに従い車両上側に変位するように傾斜しており、その先端部21aの下面で前記上部フランジ13aに当接している。同様に、下壁部22は、車両後側に向かうに従い車両下側に変位するように傾斜しており、その先端部22aの上面で前記下部フランジ13bに当接している。
【0014】
外側壁部23の車両高さ方向中央部には、車両幅方向全長に亘って溝状のビード24が形成されている(図3参照)。ビード24は、車両前側に開口するコの字状の断面形状を有しており、車両後側に凹んだその底部24aは、前記取付ブラケット13の対向面に当接している。つまり、バンパリインホース14は、外側壁部23に形成されたビード24が車両後方に凹むことで、車両幅方向全長に亘って車両後方に開口するM字状の断面形状を有している。なお、外側壁部23の車両高さ方向中央部に配置される底部24aは、バンパリインホース14の車両幅方向全長に亘って長尺状に延在している。
【0015】
そして、バンパリインホース14及び取付ブラケット13(結合部材11)は、先端部21a及び上部フランジ13aの接触部、先端部22a及び下部フランジ13bの接触部、並びに底部24a及び取付ブラケット13の対向面の接触部において、例えば溶接にて接合されることで結合されている。
【0016】
図1に曲げ形状を誇張して示したように、バンパリインホース14は、各結合部材11よりも車両幅方向中心O寄りの位置Pにおいて屈曲されており、各端部14aは、車両幅方向外側に向かうに従い車両前後方向内側(車体側)に向かって傾斜する。そして、バンパリインホース14は、両位置P間に、平面視において車両幅方向中心Oが車両後側(車両前後方向内側)に最も引っ込むように一定の曲率半径を有する曲成部14bを形成する。従って、端部14a及び曲成部14bの境界位置(位置P)は、バンパリインホース14の車両幅方向の全範囲中、車両前側(車両前後方向外側)に最も突出して一対の凸部14cを形成する。なお、外側壁部23は、車両高さ方向中央部を全長に亘って前記ビード24が通ることで、両凸部14c等も含めて上下に2分されている。
【0017】
そして、このように曲げ成形(いわゆる2節曲げ)されたバンパリインホース14は、その前側に配置された樹脂製のバンパカバー15にて覆われている。バンパカバー15は、車両のフロント部分の意匠を決定するもので、バンパリインホース14は、バンパカバー15の外形に沿って曲げ成形されている。
【0018】
次に、車体の車両前後方向端部が車両幅方向で中心が外側に凸になるように緩やかに曲成された相手車両Vと衝突した場合の動作について図4に基づき説明する。この相手車両Vとの衝突は、正面衝突時にあっては当該相手車両Vの前部との衝突であり、追突時にあっては当該相手車両Vの後部との衝突である。同図から明らかなように、本実施形態のバンパリインホース14では、一対の凸部14cが車両前側(車両前後方向外側)に最も突出していることで、入力荷重が車両幅方向で両結合部材11に隣接する2点(両凸部14c)に集中する。従って、例えば一定の曲率半径を有するように車両幅方向で円弧状に曲げ成形されたバンパリインホースや、両端部が車体側に傾斜するように2節曲げされたのみのバンパリインホースのように、入力荷重が車両幅方向中心の1点に集中することがないため、発生荷重が増大される。
【0019】
図5は、本実施形態のバンパリインホース14において、変形量(ストローク)に対する荷重の推移を示すグラフである。同図では、便宜的に入力荷重が1点集中となるバンパリインホースの荷重の推移を2点鎖線にて併せて描画している。図5から明らかなように、本実施形態では、入力荷重が1点集中となるバンパリインホースに比べて発生荷重が大きくなることが確認される。
【0020】
次に、本実施形態の動作について説明する。車両の衝突等により前方から衝撃が加えられると、この衝撃は、バンパカバー15からバンパリインホース14を介して両結合部材11(ボデー)に伝達される。このとき、衝突の衝撃による入力荷重が小さければ、バンパカバー15の変形に合わせてバンパリインホース14が弾性変形することで、ボデー及び乗員へと伝達される衝撃を緩衝する。また、衝突の衝撃による入力荷重が大きければ、バンパリインホース14の弾性変形後に該バンパリインホース14とともに両結合部材11(クラッシュボックス12)が塑性変形(蛇腹変形、ターニング変形等)することで、ボデー及び乗員へと伝達される衝撃を緩衝する。
【0021】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、上壁部21、下壁部22及び外側壁部23を一体的に有する、いわゆる開き断面形状の板材からなるバンパリインホース14は、車両幅方向全長に亘って外側壁部23の車両高さ方向中央部に溝状の1本のビード24が形成されていることで、ねじれ剛性を著しく増大することができる。これは、バンパリインホース14に加わるねじれ荷重が、ビード24の底部24aで抑えられることによる。また、一対の結合部材11により2箇所で支持されたバンパリインホース14において、例えば車体の車両前後方向端部が車両幅方向で曲成された相手車両Vと衝突した場合、該衝突の衝撃によるバンパリインホース14への入力荷重が一対の凸部14cの2点に集中することで、衝撃吸収に係る発生荷重を増大することができる。
【0022】
特に、バンパリインホース14への入力荷重が一対の凸部14cの2点に集中するものの、両凸部14cに挟まれる車両幅方向の全範囲(曲成部14b)が一定の曲率半径を有して曲成されていることで、バンパリインホース14への入力荷重を面状に広げて受けることができ、衝撃吸収に係る発生荷重を更に一層増大することができる。そして、バンパリインホース14に十分な強度を持たせることができ、車両変形量を低減することができる。あるいは、所要の強度を有するバンパリインホース14をより軽量化することができる。さらに、バンパリインホース14の曲げ剛性も、ビード24の分だけ増大することができる。
【0023】
(2)本実施形態では、バンパリインホース14は、ビード24の底部24a及び取付ブラケット13の接触部で結合部材11と結合されているため、例えば衝突の衝撃によるバンパリインホース14への入力荷重をビード24の底部24a及び取付ブラケット13を通じて結合部材11に効率的に伝えることができる。
【0024】
(3)本実施形態では、バンパリインホース14を開き断面形状としたことで、プレス加工にて容易に成形することができ、例えば押出成形などに比べて製造工数を削減することができる。
【0025】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、外側壁部23の車両高さ方向中央部に形成されるビード24は、当該方向に2本以上並設されていてもよい。
【0026】
・前記実施形態において、クラッシュボックス12の断面形状は一例であって、適宜変更してもよい。
・前記実施形態において、結合部材11(クラッシュボックス12)を割愛して、バンパリインホース14をサイドメンバに直結してもよい。
【0027】
・本発明は、車両のリヤ部分に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】バンパリインホースを示す斜視図。
【図4】バンパリインホースと相手車両との衝突時の動作を示す平面図。
【図5】バンパリインホースの変形量と荷重との関係を示すグラフ。
【図6】従来形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0029】
11…結合部材、12…クラッシュボックス(中空部材)、12a…開口端、13…取付ブラケット(取付部材)、14…バンパリインホース、14a…端部、14b…曲成部、14c…凸部、21…上壁部、22…下壁部、23…外側壁部、24…ビード、24a…底部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に延在するとともに両端部が車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合されるバンパリインホースを備える車両用バンパ装置において、
前記バンパリインホースは、
車両高さ方向に離隔配置された上壁部及び下壁部と、前記上壁部及び前記下壁部の車両前後方向外側端間を連結する外側壁部とを一体的に有するとともに、車両幅方向全長に亘って前記外側壁部の車両高さ方向中央部に溝状のビードの形成された板材からなり、
車両幅方向において、前記各結合部材の結合位置及び前記バンパリインホースの中心の間に配置され、車両前後方向外側に突出する一対の凸部と、
前記両凸部に挟まれる車両幅方向の全範囲が該凸部よりも車両前後方向内側に引っ込むように一定の曲率半径を有する曲成部とを有することを特徴とする車両用バンパ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用バンパ装置において、
前記結合部材は、
車両前後方向に連通する中空部材と、
前記中空部材の前記バンパリインホースに対向する開口端に接合されて前記中空部材と前記バンパリインホースとを結合する取付部材とを備え、
前記バンパリインホースは、前記ビードの底部が前記取付部材に接触するように前記ビードを凹ませており、前記ビードの底部及び前記取付部材の接触部で前記結合部材と結合されていることを特徴とする車両用バンパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−100265(P2010−100265A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276038(P2008−276038)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)