説明

車両用フロアカーペット,車両用フロアカーペットの製造方法及び成形装置

【課題】構造が簡単でコストアップを抑制することができ、しかも、車室内の静粛性を向上させることができる車両用フロアカーペットを提供する。
【解決手段】表皮層13に、その裏面に緩衝層14が存在する第1の部分11aと、緩衝層14が存在しない第2の部分11bとを設ける。表皮層13の通気度を、第2の部分11bでは第1の部分11aよりも低くなるように構成する。この場合、表皮層13の裏面に粒体層を設け、その粒体層を構成する粒体の変形度合いを変化させることにより、表皮層13の通気度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のフロアパネル上に敷設して使用される車両用フロアカーペット,その車両用フロアカーペットの製造方法及び車両用フロアカーペットを成形するための成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用フロアカーペットとしては、例えば、特許文献1に開示されるような構成のものが提案されている。この従来構成のフロアカーペットは、表皮層と、その表皮層の裏側全面に積層固定された緩衝層とから構成されるとともに、車両のフロアパネルの面形状に適合するように凹凸状に成形されている。そして、車室外からフロアカーペットを通して車室内に侵入する騒音、車室内からフロアカーペットを介して同車室内へ伝播する騒音を吸収することにより、車室内の静粛性を向上させるようにしている。
【特許文献1】特開2003−345363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来の車両用フロアカーペットにおいては、表皮層全体の通気度を低く設定した場合、車室外から車室内に侵入する車室外騒音の遮蔽効果を向上させることはできるが、車室内からフロアカーペットを通して緩衝層に至る車室内騒音の透過率が低下して緩衝層による吸音効果が低減し、車室内の静粛性の悪化を招くという問題が生じた。
【0004】
これに対して、表皮層全体の通気度を高く設定した場合には、車室外から車室内に侵入する車室外騒音の遮蔽効果が低下して、前記と同様に車室内の静粛性の悪化を招くという問題が生じた。
【0005】
さらに、従来の車両用フロアカーペットは裏面全体に緩衝層が設けられているため、車両のフロアパネルの起立部(トンネルハウス部の側面部等)にも緩衝層が存在して、車室側へ突出することになる。このため、足許の空間が狭くなって、居住性が低下するとともに、緩衝層を構成するフェルト等が多量に使用されて、重量が増えてしまうことになる。
【0006】
さらに、表皮層の裏面に緩衝層を部分的に積層固定した構成、例えば車両のフロアパネルの水平部と対応する部分のみに緩衝層を積層固定して、フロアパネルの起立部と対応する部分には緩衝層を積層固定しない構成のフロアカーペットも提案されている。このような構成のフロアカーペットでは、表皮層全体の通気度を高く設定すると、緩衝層の存在しない表皮層の部分において、車室外から車室内へ車室外騒音が著しく透過しやすくなって、車室内の静粛性がさらに悪化するという問題があった。
【0007】
以上のような問題に対処するため、緩衝層の存在しない表皮層の部分の裏面に別体の通気抑制層を積層固定して、車室外から車室内に侵入する車室外騒音の遮蔽効果を高めるように構成することも考えられる。しかしながら、このように構成した場合には、部品点数の増加により構造が複雑になるとともに製造が煩雑になって、コストアップを招くばかりでなく、前記と同様に居住性低下と重量増という問題が生じた。
【0008】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、構造が簡単でコストアップを抑制することができ、しかも、車室外から車室内に侵入する車室外騒音を有効に遮蔽及び吸収することができるとともに、車室内騒音を有効に分散することができて、車室内の静粛性を向上させることができ、しかも、居住性向上と重量軽減とを達成し得る車両用フロアカーペットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、車両フロアカーペットに係る発明は、裏面に緩衝層を備えた第1の部分と、緩衝層が存在しない第2の部分とが設けられた表皮層を有する車両用フロアカーペットにおいて、前記表皮層の第2の部分の通気度を、第1の部分の通気度よりも低くなるように構成したことを特徴としている。
【0010】
従って、このフロアカーペットにおいては、車室外からの騒音は、緩衝層において有効に吸収されるとともに、表皮層の第1の部分の通気度が低いため、車室内騒音も表皮を介して緩衝層で有効に吸収される。また、緩衝層の存在しない第2の部分の通気度が、緩衝層の存在する第1の部分の通気度よりも低くなっているため、車室外騒音が車室外から第2の部分を透過して車室内に侵入するのを抑制することができる。よって、車室内の静粛性を向上させることができる。
【0011】
しかも、このフロアカーペットでは、緩衝層の存在しない第2の部分における表皮層の裏面に別体の通気抑制層を積層固定する構造ではないため、部品点数が増えることはなく、構造が簡単であるとともに、製造を簡素化することができる。よって、コストアップやフロアカーペット全体の重量増を招くおそれを防止することができる。
【0012】
また、前記の構成において、第2の部分をフロアパネルの起立部に対応して設けるとよい。このように構成した場合は、緩衝層の存在しない第2の部分は、フロアパネルの起立部に対応して起立配置されるため、車室内騒音がこの第2の部分で反射されたとしても、その反射が上方へ向かうことはあまりなく、車室の下側空間内で分散される。このため、この反射音が騒音として感じられることを抑制できる。
【0013】
前記第1の部分の通気度を20〜50cc/cm/sec,第2の部分11bの通気度を1〜15cc/cm/secとすれば、第1,第2の部分の通気度の差が適正となり、前記の静粛性向上に有効である。
【0014】
さらに、第2の部分の通気度を5〜10cc/cm/secとすれば、さらに静粛性を向上することができる。
さらに、前記の構成において、表皮層の裏面に粒体層を設け、その粒体層を構成する粒体の変形により、表皮層の通気度を調整するように構成するとよい。このように構成した場合には、フロアカーペットの成形時に、粒体層を構成する粒体に加熱加圧等を施して、粒体の変形により、表皮層の通気度を容易に調整することができる。
【0015】
加えて、前記の構成において、表皮層を、基布と、その基布の裏面に粒体層を介して接着された裏布とから構成し、粒体層を構成する粒体の変形により、表皮層の通気度を調整するように構成するとよい。このように構成した場合には、前記と同様にフロアカーペットの成形時に、粒体層を構成する粒体に加熱加圧等を施して、その粒体の変形度合いを変化させることにより、表皮層の通気度を容易に調整することができる。また、粒体層の裏面に裏布が被覆接着されているため、粒体層を構成する粒体に加熱加圧等を施したり、表皮層の裏面に緩衝層を積層固定したりする際に、粒体が脱落するおそれを抑制することができる。
【0016】
また、車両用フロアカーペットの製造方法に係る発明は、裏面に緩衝層を備えた第1の部分と、緩衝層が存在しない第2の部分とが設けられた表皮層を有する車両用フロアカーペットを成形装置により成形するようにした車両用フロアカーペットの製造方法において、前記表皮層の裏面に合成樹脂製の粒体よりなる粒体層を設け、少なくとも前記第2の部分に対応する位置の粒体を加熱して、その粒体を前記成形装置内の圧力により変形させ、同第2の部分の通気度を、第1の部分の通気度よりも低くなるようにすることを特徴としたものである。
【0017】
この発明によれば、前述した作用を有する車両カーペットを簡単に製造することができる。
さらに、成形装置に係る発明は、裏面に緩衝層を備えた第1の部分と、緩衝層が存在しない第2の部分とが設けられた表皮層を有する車両用フロアカーペットを成形するための成形装置において、前記車両用フロアカーペットの第2の部分に対応する位置の成形間隙を他の位置の成形間隙より狭くしたことを特徴とするものである。
【0018】
このように構成すれば、成形間隙の幅を適宜に設定するのみで、前述した第1の部分と第2の部分とで通気量の異なる車両用カーペットを簡単に製造することができる。
前記の構成において、前記第2の部分を成形するための成形間隙を構成するように可動型を設け、型閉め時においてその可動型を移動させることにより、成形間隙が狭くなるように構成すれば、成形間隙が狭くても、表皮に対して無理な力が作用するのを抑制でき、表皮破れ等のダメージを回避しつつ前述した車両用カーペットを得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、この発明によれば、構造が簡単でコストアップを抑制することができ、しかも、車室外から車室内に侵入する車室外騒音を有効に遮蔽及び吸収することができるとともに、車室内騒音を有効に吸収することができて、車室内の静粛性を向上させることができ、さらに、軽量化と居住性アップとを得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、この発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図3に示すように、この第1実施形態の車両用フロアカーペット11は、フロアパネル12の表面の凹凸形状に合わせて凹凸状に成形されている。このフロアカーペット11は、タフトカーペットパイルまたはニードルパンチパイル等を主材とする表皮層13と、その表皮層13の裏面に積層固定されたフェルト等の吸音材よりなる緩衝層14とから構成されている。
【0022】
図2に示すように、前記緩衝層14は、フロアパネル12の起立部を除いて、フロアパネル12の水平部と対応する部分の表皮層13の裏面に積層固定されている。ここで、フロアパネル12の起立部とは、車両の幅方向の中央部においてフロアパネル12に形成されたトンネルハウス部12cの両側面12a及びフロアパネル12の前端部に形成されたトウボード部12bである。そして、この緩衝層14の有無により、フロアカーペット11が、緩衝層14の存在する第1の部分11aと、緩衝層14の存在しない第2の部分11bとに区分されている。さらに、このフロアカーペット11の第2の部分11bにおいては第1の部分11aに比較して、以下に詳述するように、表皮層13の通気度が低くなるように構成されている。
【0023】
すなわち、前記表皮層13を形成する基材13Aは、図4(a)に示すように、基布15と、その基布15の裏面に接着形成された粒体層17と、その粒体層17の裏面に接着された裏布18とから構成されている。前記基布15は前記のようにタフトカーペットパイルまたはニードルパンチパイル等から構成され、裏布18は不織布または細かな目の網体等から構成されている。粒体層17は、粒径が0.5〜2.0mm程度のポリエチレン等の合成樹脂製よりなる多数の細かな粒体17aを均一散布して構成されている。前記粒体層17は、加熱溶融されることにより接着機能を発揮して、粒体層17自体が基布15に接着されるとともに、裏布18が、さらにはその裏布18を介して粒体層17により基布15に接着されている。なお、この粒体層17を基布15に接着するために、図4(a)〜(c)に示すように、必要に応じてラテックス16を用いてもよい。
【0024】
そして、粒体層17の各粒体17a間に隙間が存在していて、このため表皮層13の基材13Aは、通気度が20〜50cc/cm/secとなるように構成されている。粒体層17の粒体17aの変形度合いを変化させることにより、フロアカーペット11としての第1の部分11aと第2の部分11bとにおいて表皮層13の通気度が異なるように調整されている。
【0025】
すなわち、図4(b)に示すように、フロアカーペット11の第1の部分11aにおいては、粒体層17の粒体17aの変形度合いが小さく形成されている。これにより、フロアカーペット11の第1の部分11aでは、表皮層13の通気度が20〜50cc/cm/secとなるように設定されている。なお、この第1の部分11aには緩衝層14が積層されているが、この緩衝層14は密度の低いフェルト材よりなるため、フロアカーペット11の通気度にはほとんど影響を与えない。
【0026】
これに対して、図4(c)に示すように、フロアカーペット11の第2の部分11bにおいては、粒体層17の粒体17aが加熱加圧等により圧潰変形されて、各粒体17a間の隙間が減少されている。これにより、フロアカーペット11の第2の部分11bでは、表皮層13の通気度が1〜15cc/cm/sec,好ましくは、5〜10cc/cm/secとなるように設定されている。
【0027】
次に、前記のように構成された車両用フロアカーペット11の製造方法について説明する。
さて、このフロアカーペット11の製造に際しては、まず図5に示す製造システムによって、表皮層13の基材13Aが製造され、続いて図6に示す製造システムによって、表皮層13の基材13Aからフロアカーペット11が製造される。
【0028】
図5に示すように、前記基材13Aの製造システムにおいては、基布15が供給ローラ21上から表裏反転状態で巻き戻し送給されながら、必要に応じて塗布ローラ22により基布15の裏面にラテックス16が塗布されるとともに、粒体供給装置23から基布15の裏面上に粒体17aが供給されて、均一に散布される。これにより、基布15上に粒体層17が積層形成される。その後、赤外線加熱装置24により粒体17aが加熱されて、表面が溶融軟化されるとともに、供給ローラ25から粒体17a上に裏布18が供給されながら、それらが一対のニップローラ26間で低い圧力で挟圧される。このため、粒体層17を介して基布15と裏布18とが接着されて、表皮層13の基材13Aが製造される。このとき、粒体層17を構成する粒体17aはわずかに変形するのみである。そして、この表皮層13の基材13Aが巻き取りローラ27に巻き取られる。
【0029】
図6に示すように、前記フロアカーペット11の製造システムにおいては、表皮層13の基材13Aが巻き取りローラ27から巻き戻し供給されながら、切断装置31により所定の大きさに切り分けられる。続いて、赤外線加熱装置32により基材13A上の粒体層17の粒体17aが加熱溶融された後、その基材13Aがコールドタイプの成形装置33の上型33Aと下型33Bとの間に移送供給される。
【0030】
このとき、下型33Bの型面の所定位置には緩衝層14を構成するフェルト等の緩衝材14aがあらかじめセットされている。そして、上型33Aが下型33Bに対して型閉めされることにより、粒体17aの接着機能により、表皮層13の基材13Aの裏面の必要箇所に緩衝材14aが裏布18を介して積層状態で接着固定されて、緩衝層14を有する所定形状のフロアカーペット11が成形される。
【0031】
この場合、図7及び図8に示すように、フロアカーペット11の緩衝層14が存在しない第2の部分11bを成形する下型33Bの型面には、可動型34A,34Bがそれぞれ配置されている。すなわち、下型33Bにおいてトンネルハウス部12cの両側面12aと対応する位置には、可動型34Aが図示しないシリンダ等の駆動手段により進退可能に取付けられている。また、トウボード部12bと対応する位置には、シリンダ36により動作される可動型34Bがヒンジ35を介して回動可能に配設されている。
【0032】
そして、上型33Aが下型33Bに型閉めされて、緩衝材14aが表皮層13の基材13Aの裏面に積層固定された直後に、可動型34Aがシリンダ36等により図6に示す後退位置から図7に示す加圧位置に移動されるとともに、可動型34Bが図8に実線で示す離間位置から鎖線で示す加圧位置にそれぞれ回動される。これにより、可動型34A,34Bと対応する部分の成形間隙が他の部分の成形間隙より狭くなり、フロアカーペット11の第2の部分11bが第1の部分11aよりも高い圧力で加圧されて、図4(c)に示すように、その第2の部分11bにおける粒体層17の粒体17aが圧潰変形される。
【0033】
その結果、図4(b)に示すように、フロアカーペット11の緩衝層14が存在する第1の部分11aでは、粒体層17の粒体17aがほとんど圧潰変形されないで、各粒体17a間に広い隙間が存在して、表皮層13の通気度が高くなるように設定される。これに対して、図4(c)に示すように、フロアカーペット11の緩衝層14が存在しない第2の部分11bでは、粒体層17の粒体17aが圧潰変形されて、各粒体17a間の隙間が減少し、表皮層13の通気度が低くなるように設定される。
【0034】
従って、図2及び図3に示すように、このフロアカーペット11の使用状態において、フロアカーペット11の第1の部分11aにおいては、車室外騒音が緩衝層14によって吸収されるとともに、第2の部分11bにおいては、車室外騒音が車室外から車室内に透過侵入するのが抑制される。また、フロアカーペット11の第1の部分11aにおいては、車室内騒音が車室内から表皮層13を介して容易に透過されて、その車室内騒音が第1の部分11aの緩衝層14にて効果的に吸収される。また、車室内騒音は、通気度の低いフロアカーペット11の第2の部分11bにおいて反射されやすいが、この第2の部分11bは、フロアパネル12の起立部に対応して起立配置されている。このため、反射した騒音は、上方へ向かうことなく車室内の低い部分に分散されて、搭乗者の耳に達することはあまりない。これらの結果、車室内の静粛性を向上させることができる。
【0035】
ちなみに、フロアカーペット11の緩衝層14が存在しない第2の部分11bの通気度を、10cc/cm/sec、20cc/cm/sec、及び30cc/cm/secに設定した場合において、搭乗者が車室内騒音を感じる場合と同じ条件で音圧レベルを測定したところ、図9の特性図に示すような結果が得られた。この計測結果から明らかなように、通気度を10cc/cm/secに設定した場合には、周波数が400〜2000Hzの主要範囲内にあるときに、音圧レベルを低く抑えることができた。特に、音圧が低下した際に、人間が快適であると感じる400〜2000Hzの領域、なかでも低周波に近い400〜1200Hzの領域の音圧レベルを1以上低下させることができ、車室内の快適性を向上させることができる。
【0036】
また、このフロアカーペット11では、成形時に粒体層17を構成する粒体17aに加熱加圧等を施して、その粒体17aの変形度合いを変化させることにより、第1の部分11aと第2の部分11bとにおける表皮層13の通気度を変更調整している。このため、従来構成とは異なり、緩衝層14の存在しない第2の部分11bにおける表皮層13の裏面に別体の通気抑制層を積層固定する必要がなく、部品点数が少なくなって、フロアカーペット11の構造が簡単であるとともに、製造を簡素化することができる。よって、コストアップを招いたり、フロアカーペット11全体の重量アップを招いたりするおそれを抑制することができる。このため、フロアカーペット11を安価に製作できるとともに、軽量化が可能となる。
【0037】
加えて、このフロアカーペット11は、フロアパネル12の起立部と対応する第2の部分11bに緩衝層14は設けられていないため、第2の部分11bの厚さが薄くなる。このため、車室内の空間、特に足許の空間を広げることができ、車室の居住性を向上させることができる。
【0038】
さらに、このフロアカーペット11では、表皮層13の基材13Aにおける粒体層17の裏面に裏布18が被覆接着されている。このため、表皮層13の基材13Aを切り分けたり、基材13A上の粒体層17の粒体17aを加熱したり、表皮層13の裏面に緩衝層14を積層固定したり、粒体層17の粒体17aを圧潰変形させたりする際に、粒体17aが基材13Aから脱落するおそれを抑制することができる。
【0039】
加えて、成形装置33に可動の可動型34A,34Bを設けた場合には、フロアパネル12の起立部と対応するフロアカーペット11の第2の部分11bを、型閉めに続いて無理な力が作用することなく加圧することができる。よって、フロアカーペット11の成形時に、第2の部分11bにしわや損傷等が発生するおそれを抑制することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、図10に基づいてこの発明の第2実施形態を、第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0041】
この第2実施形態においては、成形装置33の可動型34Bを下型33Bに対しガイド38を介して平行移動可能に配設し、シリンダ36により同図に実線で示す離間位置から鎖線で示す加圧位置に移動させるように構成したものである。
【0042】
従って、この第2実施形態は、前記第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、図11に基づいてこの発明の第3実施形態を、第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0043】
この第3実施形態では、成形装置33の可動型34Aをバルーンにより形成している。そして、この可動型34Aは通常状態おいては、収縮しており、型閉め時、すなわち成形時には、2点鎖線で示すように、バルーン内部にエアが供給されて膨出し、成形間隙が狭くなって、第2の部分11bが第1の部分11aよりも高い圧力で成形される。
【0044】
従って、この第3実施形態においては、第2の部分11bに高い圧力を付与したとしても、その第2の部分11bに対する圧力分布が均一になり、このため、フロアカーペット11に対する部分的な高負荷を回避でき、フロアカーペット11のダメージをきわめて有効に抑制できる。
【0045】
(変形例)
なお、この発明は、前記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することも可能である。
【0046】
・ 成形装置33に可動型34A,34Bを設けることなく、上型33Aと下型33Bとの型閉め状態における成形面間の間隙を、フロアカーペット11の第2の部分11bの成形部では、他の成形部よりも狭くなるように構成する。これにより、フロアカーペット11の第2の部分11bが他の部分よりも強く加圧されて、その第2の部分11bの表皮層13の通気度が低下されるようにすること。
【0047】
このようにすれば、可動型等の可動機構が省略されるため、成形装置33の構成が簡略化される。
・ 表皮層13の裏面の裏布18を省略すること。このように構成しても、粒体層17の粒体17aは自身の接着機能により表皮層13及び緩衝層14に対して接着固定された状態を維持することができる。
【0048】
・ 第1の部分11aと、第2の部分11bとの間に通気量の差を持たせるために、粒体層17を構成する粒体17aの散布密度に粗密を形成させること。このようにすれば、散布密度の低い部分の通気度が高くなり、散布密度の高い部分の通気度が低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一実施形態の車両用フロアカーペットを示す斜視図。
【図2】図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】図1の3−3線における部分拡大断面図。
【図4】(a)は表皮層を形成するための基材の一部を拡大して示す断面図。(b)は車両用フロアカーペットにおいて表皮層に緩衝層が積層された第1の部分の一部を拡大して示す断面図。(c)は車両用フロアカーペットにおいて表皮層に緩衝層が積層されていない第2の部分の一部を拡大して示す断面図。
【図5】表皮層の基材を製造するシステムを示す概略断面図。
【図6】表皮層の基材から車両用フロアカーペットを製造するシステムを示す概略断面図。
【図7】図6のシステムにおける成形装置のトンネルハウス部に対応する可動型を拡大して示す要部断面図。
【図8】図6のシステムにおける成形装置のトウボード部に対応する可動型を拡大して示す要部断面図。
【図9】車両用フロアカーペットの通気度の異なった構成における音圧レベルの計測結果を示す特性図。
【図10】第2の実施形態における成形装置の可動型を示す要部断面図。
【図11】第3の実施形態における成形装置の可動型を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0050】
11…フロアカーペット、11a…第1の部分、11b…第2の部分、12…フロアパネル、12a…起立部としてのトンネルハウス部の両側面、12b…起立部としてのトウボード部、13…表皮層、13A…基材、14…緩衝層、15…基布、17…粒体層、17a…粒体、18…裏布、33…成形装置、33A…上型、33B…下型、34A,34B…可動型、36…シリンダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に緩衝層を備えた第1の部分と、緩衝層が存在しない第2の部分とが設けられた表皮層を有する車両用フロアカーペットにおいて、
前記表皮層の第2の部分の通気度を、第1の部分の通気度よりも低くなるように構成したことを特徴とする車両用フロアカーペット。
【請求項2】
前記第2の部分が車両のフロアパネルの起立部に対応して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フロアカーペット。
【請求項3】
前記第1の部分の通気度が20〜50cc/cm/sec,第2の部分11bの通気度が1〜15cc/cm/secであることを特徴とする請求項1または2に記載のフロアカーペット。
【請求項4】
第2の部分の通気度が5〜10cc/cm/secであることを特徴とする請求項3に記載のフロアカーペット。
【請求項5】
前記表皮層の裏面に粒体層を設け、その粒体層を構成する粒体の変形により表皮層の通気度を調整したことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の車両用フロアカーペット。
【請求項6】
前記表皮層を、基布と、その基布の裏面に粒体層を介して接着された裏布とから構成し、粒体層を構成する粒体の変形により、表皮層の通気度を調整したことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の車両用フロアカーペット。
【請求項7】
裏面に緩衝層を備えた第1の部分と、緩衝層が存在しない第2の部分とが設けられた表皮層を有する車両用フロアカーペットを成形装置により成形するようにした車両用フロアカーペットの製造方法において、
前記表皮層の裏面に合成樹脂製の粒体よりなる粒体層を設け、少なくとも前記第2の部分に対応する位置の粒体を加熱して、その粒体を前記成形装置内の圧力により変形させ、同第2の部分の通気度を、第1の部分の通気度よりも低くなるようにすることを特徴とした車両用フロアカーペットの製造方法。
【請求項8】
裏面に緩衝層を備えた第1の部分と、緩衝層が存在しない第2の部分とが設けられた表皮層を有する車両用フロアカーペットを成形するための成形装置において、
前記車両用フロアカーペットの第2の部分に対応する位置の成形間隙を他の位置の成形間隙より狭くしたことを特徴とする成形装置。
【請求項9】
前記第2の部分を成形するための成形間隙を構成するように可動型を設け、型閉め時においてその可動型を移動させることにより、成形間隙が狭くなるように構成したことを特徴とする請求項8に記載の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−91019(P2007−91019A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282520(P2005−282520)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】