説明

車両用ホイール向け表面層加工用治具

【課題】修正加工を行わずに、又はこれらの作業に大きな負担をかけずに、効率よく、車両用ホイールのリムに生じた微小鋳造欠陥を修復し、圧漏れを防止することが可能な手段を提供すること。
【解決手段】底板部材62、その底板部材62に円周状に配設された有穴壁部材61、その有穴壁部材61に対して車両用ホイール22を位置決めして固定するための取付部材71、有穴壁部材61に備わる溝穴65に収容された加工材25、を備える表面層加工用治具1の提供による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造品である車両用ホイールのリムの表面層を加工し、微小な鋳造欠陥を修復するために用いられる、表面層加工用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、近年のオートバイやスクーター等の自動二輪車では、リムと太いスポークとを一体的に成形した軽合金製のホイールが多用されている。これは、このようなホイールが、強度及びデザイン性に優れるからである。一体成形された自動二輪車用の車両用ホイールとしては、高い強度を有する鍛造品も存在するが、材料歩留まりが高いことから、その多くは鋳造工程を経て作製される鋳造品(キャストホイール)である。
【0003】
ところが、鋳造品である軽合金製の自動二輪車用車両用ホイールでは、その表面に微小な鋳造欠陥が発生し、意匠面での品質低下を招来する場合がある。表面に現れる鋳造欠陥としては、孔部(あな)として現れる気孔(ピンホール)が知られ、それは、通常、極微細なものである。しかし、車両用ホイールは、特に自動二輪車用のものは、タイヤが装着される部分を除いて全体が視認されるものであるため、極僅かな孔部であっても気になるものである。特に趣向性の高い、大型で高価な自動二輪車を購入する殆どの人は、外形、美観、意匠性を大変に重要視するから、極微小な鋳造欠陥であっても許されるものではない。
【0004】
一般に、上記鋳造欠陥は、塗装による皮膜形成だけで、修復又は目立たなくすることが可能なものではない。そのため、従来は、鋳造欠陥である孔部についてパテ埋めを特に慎重に行う、という大変に厳格な欠陥の修復作業を行っていた。その結果、生産効率の低下という問題に直面することとなった。尚、このような問題の改善を提案する先行文献は見当たらないようである。
【0005】
又、特に、四輪自動車用の車両用ホイールでは、鋳造欠陥の発生により、鍛造品に比すると、装着したタイヤの圧漏れの問題が生じ易いという改善すべき点がある。車両用ホイールの圧漏れ防止という観点より改善を提案している先行文献としては、特許文献3が挙げられる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−322112号公報
【特許文献2】特開2004−174604号公報
【特許文献3】特開昭62−15025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その課題とするところは、パテ埋めによる修正加工を行わずに、又はこれらの作業に大きな負担をかけずに、効率よく、車両用ホイールのリムに生じた微小鋳造欠陥を修復することが可能な手段を提供することにある。
【0008】
又、本発明は、装着したタイヤの圧漏れが起こらない車両用ホイールを得るための手段を提供することも、課題としている。
【0009】
検討がなされた結果、本出願人が開発した鋳物の硬化方法(特許文献1を参照)を応用することによって、車両用ホイールに現れた微小鋳造欠陥を修復し、ひいては圧漏れを防止することが可能なのではないかとの考えに至った。この鋳物の硬化方法は、鋳物の表面に硬化材を衝突をさせることによって、鋳物(鋳造品)の表面側に、ショットピーニング処理による塑性変形層より厚い緻密層を形成し得る手段であり、この手段によれば、鋳造品に所望の機械的性質を付与することが可能である。
【0010】
ところが、車両用ホイールの表面に対して、鋳物の硬化方法によって気孔を潰す封孔処理を試みようと計画したところ、車両用ホイールのような大量生産品の製造工程において全製品に適用するには、その鋳物の硬化方法自体を効率よく実施することが出来る手段が新たに必要である、という現実に直面した。
【0011】
即ち、本出願人の開発した鋳物の硬化方法は、鋳造品の表面に硬化材を衝突させるために鋳造品を硬化材とともに揺動させるものであるが、これを1バッチ行う毎に、鋳造品である車両用ホイールと、それに衝突をさせる硬化材と、を揺動装置に載せ換える作業が必要になり、車両用ホイールの生産効率を低下させ、鍛造品に比して低廉であるという鋳造品の長所を減衰させる、という改善すべき課題に直面したのである(揺動装置につき特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0012】
又、実際に、車両用ホイールの表面に対して、鋳物の硬化方法を試みたところ、特にリムについては、円形を呈しその表面は曲面になっているから、そのような曲面に対して硬化材を効率よく衝突をさせることが困難である、ということがわかった。
【0013】
即ち、本出願人の開発した鋳物の硬化方法では、鋳造品の表面に硬化材を衝突させるために鋳造品を硬化材とともに水平方向に揺動させるが(特許文献1及び特許文献2を参照)、円筒形のリムに対して鋳物の硬化方法を実施する場合には、車両用ホイールを横にしてリムで囲われた空間を閉空間とし、そこに硬化材を投入し、揺動をさせることになる。ところが、揺動によって硬化材は水平方向の直線運動(往復運動)をするのに対し、車両用ホイールのリムの表面は曲面であるので、リムに対する硬化材の衝突角度が、そのリムの場所毎に異なり、特に、揺動の方向(硬化材の運動(移動)方向)と平行又はそれに近い角度をなす表面では、硬化材が殆ど衝突しない。そのため、車両用ホイールのリムの表面全てに対して、一度に硬化材を衝突をさせることが出来ない、という解決すべき課題に直面したのである。これに対し、車両用ホイールの置き方を変えて、繰り返し揺動をさせることが一案として挙げられるが、そのような対応では煩雑で長時間を要することから、やはり鍛造品に比して低廉であるという鋳造品の長所を減衰させる。
【0014】
尚、従来知られたショットピーニング処理を行うと、車両用ホイールのリムの表面は、その性状が、むしろ劣化してしまうことが判明した。この現象について研究がなされた結果、ショットピーニング処理は、車両用ホイール(鋳造品)の表面だけを処理するに止まり、車両用ホイールの表層(内部のうち表面の近傍)に存在する微小鋳造欠陥を潰すまでの効果は有していないため、ショットピーニング処理を行っても、表層に存在していた気孔(ピンホール)が表面に現れて新たな孔部を形成し、表面がかえって荒れてしまったのではないかと推考された。これでは、不良率を改善することは出来ない。
【0015】
又、圧漏れ箇所がわかっていれば、そこにショットピーニング処理を施すことによって、圧漏れを防止することが可能である。しかしながら、予め圧漏れ場所を特定するための検査を全製品(車両用ホイール)に行うことは大変に煩雑である。
【0016】
そこで、更に、車両用ホイールのリムの表面に生じた鋳造欠陥を効率よく修復し、圧漏れを防止することが可能な、量産工程に適する手段を求めて研究が重ねられ、以下に示す本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0017】
先ず、本発明によれば、車両用ホイールにおけるリムの表面層を加工するために用いられる治具であって、円柱形又は円筒形を呈する本体部材と、加工材と、を具備し、円柱形又は円筒形を呈する本体部材が、その周面に、当該周面から中心軸に向けて窪んだ主凹部を有し、加工材は、比重が2〜10で径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体を含んで構成される車両用ホイール向け表面層加工用治具が提供される(単に表面層加工用治具ともいう)。
【0018】
本明細書において、表面層とは表面及び表層を意味し、単に表層という場合には表面を除き、表面の近傍を示すものとする。又、多面体の径は、多面体の中心を通り多面体の外面と外面とを結ぶ距離の最大値と最小値の平均とする。
【0019】
円柱形又は円筒形は、車両用ホイールに合わせた本体部材の概略の形状であり、幾何学的に厳密な意味での円柱形又は円筒形でなくてよい。車両用ホイール向け表面層加工用治具は、後述するように、上下方向に揺動をさせて、車両用ホイールのリムに表面層加工処理(後述する)を施すものであるから、より軽量な円筒形の方が好ましい。その周面とは、円柱形又は円筒形を呈する本体部材の周面を指し、本体部材を構成する円柱形の2つの端面を結ぶ外面であり、円筒形の場合はそれに相当する面(外面)である。
【0020】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具においては、円柱形又は円筒形を呈する本体部材の周面側に、本体部材の中心軸方向に深くなるように形成された副凹部を有し、上記加工材が、主凹部及び副凹部の少なくとも何れかに収容されることが好ましい。
【0021】
副凹部は、円柱形又は円筒形を呈する本体部材の周面の外側に、副凹部となる一定の空間を空けて、壁を設けることによって、形成することが出来る。この壁を縁壁とよび、この縁壁は、本体部材と一体化した縁壁部として構成してもよく、本体部材と物理的に離れた縁壁部材として構成してもよい。
【0022】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具において、主凹部をワークエリアともよび、副凹部をポケットともよぶ。主凹部(ワークエリア)は、周面から中心軸に向けて窪んだ(凹んだ)曲面で形成されることが好ましい。主凹部(ワークエリア)は、周面の凹みによって形成される空間であり、車両用ホイールを、車両用ホイール向け表面層加工用治具に取り付けていなければ、開かれた空間である。後述するように、車両用ホイールにおけるリムの表面層を加工する実施態様において、この空間は閉空間となり、ここで加工材がリムの表面に衝突をするはたらきをするので、加工材が収容される空間であるポケットに対比させて、ワークエリアとも称する。
【0023】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具においては、本体部材の主凹部を形成する面が、円弧面を有することが好ましい。
【0024】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具においては、主凹部が、周面に連続して形成されていることが好ましい。
【0025】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具においては、加工材が、主凹部及び副凹部に収容されていてもよく、副凹部のみに収容されていてもよい。
【0026】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具においては、加工材の量が、主凹部の容積に対し、体積比で概ね5%以上30%以下であることが好ましい。
【0027】
主凹部(ワークエリア)は、本体部材の周面に形成された、窪んだ(凹んだ)部分であり、開いた空間であるから、本明細書において、主凹部(ワークエリア)の容積とは、主凹部(ワークエリア)を平板で閉じた場合の容積をいうものとする。車両用ホイールのリムは、通常、平板状であるから、後述する閉空間の容積は主凹部(ワークエリア)の容積に概ね等しい。
【0028】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具においては、加工材は、径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体が、加工材全体の70体積%以上を占めることが好ましい。
【0029】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具において、加工材の比重は、好ましくは5〜10である。
【0030】
上記の本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、車両用ホイールが、リムとディスクとを有する四輪自動車用の、軽合金製鋳造品である場合に、好適に使用される。
【0031】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具においては、本体部材が有する主凹部が溝穴状であり、その主凹部が、円柱形又は円筒形を呈する本体部材の中心軸に対して傾斜して形成されていることが好ましい。このような本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、特に、車両用ホイールが、リムとスポークとを有する自動二輪車用の、軽合金製鋳造品である場合に、好適に使用される。
【0032】
本明細書において、軽合金とは、鋳造用のアルミニウム合金、マグネシウム合金等を指し、アルミニウム合金としては、日本工業規格(JIS)に基づくAC4C、AC4CH、AC4B、AC4D、AC2A、AC2B、AC3A等を例示することが出来る。マグネシウム合金としては、AZ91、AM60等を例示することが出来る。
【0033】
次に、本発明によれば、上記した何れかの車両用ホイール向け表面層加工用治具と、その車両用ホイール向け表面層加工用治具を上下方向に揺動をさせる揺動手段と、を具備する車両用ホイールの表面層加工装置が提供される(単に表面層加工装置ともいう)。
【0034】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、上記揺動手段が、原動機と、その原動機に接続された回転軸と、その回転軸に設けられたクランクと、そのクランクとコンロッドを介して接続される揺動板と、その揺動板に取り付けられその揺動板を上下に往復運動させる2以上の直線運動案内器と、を有する揺動機構を具備し、原動機の与えた回転運動が、回転軸に備わるクランクによって上下運動に変換され、クランクと接続された揺動板が、直線運動案内器に沿って上下に往復運動をすることにより、揺動板に固定される車両用ホイール向け表面層加工用治具を上下方向に揺動をさせるものであることが好ましい。
【0035】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、回転軸に更に他のクランクが設けられ、そのクランクにカウンターウエイトが取り付けられているものであることが好ましい。
【0036】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、揺動機構が床の上に載置され、その床との間に空気ばねが備わっているものであることが好ましい。
【0037】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、揺動機構の両側であって空気ばねの真上に、振動抑制用錘が備わっているものであることが好ましい。
【0038】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、揺動にかかる振動数が、3Hz以上30Hz以下であることが好ましい。揺動にかかる振動数は、より好ましくは、5Hz以上20Hz以下、特に好ましくは8Hz以上15Hz以下である。
【0039】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、揺動にかかる揺動時間が、10秒以上3分以下であることが好ましい。
【0040】
本明細書において、上下方向の揺動とは、鉛直方向の揺動を意味する。
【0041】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、車両用ホイールにおけるリムの表面層を加工するために、好ましくは、後述する車両用ホイールの表面層加工装置に組み込まれて、使用される治具である。即ち、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、それに車両用ホイールを組み込んだ状態で、上下方向に(鉛直方向に)揺動をすることによって、加工材が車両用ホイールのリムの表面(タイヤが装着される側とは反対側のリムの表面)に衝突するように、構成されたものである。加工材が車両用ホイールのリムの表面に衝突することにより、車両用ホイールのリムの表面に存在し得る微小鋳造欠陥を修復し、且つ、表層に内在する微小鋳造欠陥を潰し封孔処理を行う。本明細書において、このことを表面層加工処理とよぶ。
【0042】
そして、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、上記の通り、本体部材と加工材とを備えるものとして特定されるものであり、発明特定事項に加工対象である車両用ホイールを含むものではない。しかし、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、車両用ホイールのリムの表面層を加工するのに用いられるものであり、使用時には必ず加工対象である車両用ホイールが組み込まれる。従って、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の各構成要素は、加工対象である車両用ホイールによって形状や大きさ等が特定されるものであり、機能も車両用ホイールとの関係によって明らかになるものである。そこで、以下に、車両用ホイールとの関係を含めて、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の各構成要素について説明する。
【0043】
本体部材は、車両用ホイールを車両用ホイール向け表面層加工用治具に取り付けたときに、車両用ホイールのリムが本体部材のワークエリアを塞いで、閉空間を形成するように構成される。即ち、ワークエリアは、車両用ホイールのリムの形状に合わせて、本体部材の周面に(円周状に)、好ましくは連続して、形成される。換言すれば、ワークエリアは、丁度、車両用ホイール向け表面層加工用治具に取り付けた車両用ホイールのリムで塞がれる位置に、設けられる。
【0044】
加工材は、車両用ホイール向け表面層加工用治具が(揺動せず)静止しているときには、常に、本体部材に形成された主凹部(ワークエリア)及び副凹部(ポケット)の少なくとも何れかの中に収容されている。車両用ホイール向け表面層加工用治具に車両用ホイールを組み込んで上下方向に揺動させると、加工材は、ポケットに収容されていたものはそこから上記閉空間へ飛び出す。閉空間を構成するワークエリアは、周面から中心軸に向けて窪んだ(凹んだ)曲面で形成されるので、閉空間においては、加工材は上下方向に運動せず、回転運動を始める。そして、閉空間に一定量(好ましくはワークエリア(閉空間)の容積に対し、体積比で概ね5%以上30%以下)の加工材が存在することから、加工材は、閉空間において、塊となって円を描くように回転しながら、ワークエリアを形成した本体部材の実体部分と、ワークエリアを塞いだ車両用ホイールのリム(の表面)と、に衝突する。ポケットは中心軸方向に沿って深くなるように形成されているから、中心軸方向を下方向とすれば、揺動を終えたとき、ポケットに収容されていた加工材は、重力で自然と戻る。
【0045】
本体部材に形成されたワークエリアは、好ましくは、周面から中心軸に向けて窪んだ(凹んだ)曲面で形成される。これは、上記の通り、上下方向の揺動によって、加工材を、閉空間の中で、回転運動をさせ、ワークエリアを塞いだ車両用ホイールのリム(の表面)に衝突をさせるためである。ワークエリアは、好ましくは周面に連続して形成される。ワークエリアの窪んだ(凹んだ)曲面の態様は、周面と中心軸とを結び中心軸に平行な断面に現れる形状が、円弧状であり、ワークエリア全体について一定の形状であることが好ましい。
【0046】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具において、主凹部(ワークエリア)が溝穴状である場合には、この主凹部を単に溝穴ともよび、溝穴が形成されているものであって本体部材を構成するものを有穴壁部材ともよぶ。本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の好ましい態様として、治具の基板である底板部材と、その底板部材の上に配設される有穴壁部材と、その円柱形又は円筒形を呈する有穴壁部材(本体部材)の中心に位置して底板部材に配設された、車両用ホイールを有穴壁部材に対して位置決めして固定するための取付部材、を備える構成を挙げることが出来る。この場合において、有穴壁部材に備わる溝穴が、底板部材に対して傾斜して形成されていることが好ましい。底板部材は、円柱形又は円筒形を呈する有穴壁部材(本体部材)の中心軸の方向に垂直な面を構成するので、換言すれば、溝穴状の主凹部(溝穴)が、円柱形又は円筒形を呈する有穴壁部材(本体部材)の中心軸に対して傾斜して形成されていることが好ましい。即ち、溝穴が、底板部材に対して傾斜して形成されているとは、有穴壁部材の溝穴を形成する面が、平らな基板である底板部材に対して傾斜していることを意味する。
【0047】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具において、本体部材の主凹部を形成する面が円弧面を有することが好ましいので、これは、有穴壁部材の溝穴を形成する面が円弧面を有すると言い換えることが出来、このことは、有穴壁部材の溝穴を形成する面に、円弧面が存在することを意味する。又、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具において、主凹部が周面に連続して形成されていることが好ましいから、溝穴は好ましくは円周状に形成される。そして、好ましくは、溝穴が有する円弧面は、溝穴の(有穴壁部材の)開口部分に対向して設けられる。換言すれば、溝穴が有する円弧面は、円柱形又は円筒形を呈する有穴壁部材(本体部材)の中心軸を通る断面において現れる。
【0048】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、上記の通り、その好ましい態様において、本体部材(有穴壁部材)、加工材の他に、底板部材、取付部材、を備えるものとして特定されるものであるが、この態様においても、発明特定事項に加工対象である車両用ホイールを含むものではない。しかし、使用時には必ず加工対象である車両用ホイールが組み込まれるので、以下に、車両用ホイールとの関係を含めて、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の好ましい態様における各構成要素について説明する。
【0049】
底板部材は、治具の基板、基礎となるものである。その底板部材の上に、円柱形又は円筒形を呈する有穴壁部材が配設され、その有穴壁部材の中心に取付部材が配設される。底板部材の大きさは、少なくとも車両用ホイールのリムのフランジ径のサイズより大きいことが好ましい。
【0050】
有穴壁部材の形状は、換言すれば、一定の幅を持ったドーナツ形状である。有穴壁部材は、自らの内部に円周状に形成された溝穴を有する部材であることが好ましい。溝穴は、同じく一定の幅を持ったドーナツ形状の空間(穴)である。そして、その溝穴の中にも加工材が収容されている。
【0051】
有穴壁部材は、車両用ホイールを表面層加工用治具に取り付けたときに、車両用ホイールのリムが有穴壁部材の溝穴を塞いで、閉空間を形成するように構成される。即ち、溝穴は、車両用ホイールのリムの形状に合わせて、円周状に、好ましくは連続して、形成され、その溝穴の開口は、丁度、表面層加工用治具に取り付けた車両用ホイールのリムで塞がれる位置に、設けられている。
【0052】
この好ましい態様においては、加工材は、表面層加工用治具が(揺動せず)静止しているときには、常に、有穴壁部材に形成された溝穴の中に収容されている。表面層加工用治具に車両用ホイールを組み込んで上下方向に揺動させると、加工材は、上記閉空間の中で回転運動し、溝穴を形成した有穴壁部材の実体部分(溝穴の壁面)と、溝穴を塞いだ車両用ホイールのリム(の表面)と、に衝突する。揺動を終えると、加工材は、重力で自然と元の位置、即ち溝穴に収容された状態に戻る。
【0053】
有穴壁部材に形成された溝穴は、既述の通り、好ましくは底板部材に対して傾斜している。これは、上記上下方向の揺動によって、加工材を、上記閉空間の中で移動させ、溝穴を塞いだ車両用ホイールのリム(の表面)に衝突をさせるためである。傾斜は、リムの形状によって異なるが、円周状に、好ましくは連続して、形成された溝穴全体について一定であって、円周の中心に向けて下がる(低くなる)ものであることが好ましい。傾斜の角度は、底板部材を水平にしたときに、上下方向(鉛直方向)の揺動によって加工材の移動し易くするため、水平に対し90°に近い(鉛直に近い)方が好ましい。通常のリムの形状に基づく好ましい傾斜の角度は、水平面から20〜80°であり、より好ましくは30〜80°である。このような好ましい態様では、溝穴は、有穴壁部材において外側上方に向けて円周状に開口を現すことになる。
【0054】
取付部材は、車両用ホイールを表面層加工用治具に組み込む際に、車両用ホイールを有穴壁部材に対して位置決めして固定するための部材である。取付部材は、車両用ホイールのハブ穴を通す突起軸部と、車両用ホイールをハブ部分で押さえる押さえ板部と、車両用ホイールを表面層加工用治具に固定するために締め付けをする締付部と、で構成することが出来る。
【0055】
取付部材を構成する突起軸部は、車両用ホイールのハブ穴に通じる部分であるから、円周状の有穴壁部材の中心に位置して、底板部材の上に1つ配設される。突起軸部の径は、車両用ホイールのハブ穴に合わせて決定されるので、通常、φ16mm〜φ30mm程度である。車両用ホイールを表面層加工用治具に組み込む際、車両用ホイールは、そのハブ穴を突起軸部に通すことによって、リムが、有穴壁部材の溝穴を塞ぐように、位置決めされる。
【0056】
位置決めされた車両用ホイールは、ハブの形状に合わせた、例えば円形板で構成された押さえ板部によって押さえつけられ、更に、例えばボルトからなる締付部によって、(表面層加工用治具に)固定される。締付部がボルトの場合には、突起軸部をナットとして機能させるため、突起軸部にねじ穴を形成しておく。
【0057】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の好ましい態様においては、底板部材、有穴壁部材、取付部材、加工材の他に、更に、台座部材及び縁壁部材を設けることが好ましい。台座部材及び縁壁部材は、ともに、車両用ホイールの荷重を受ける部材である。
【0058】
台座部材は、車両用ホイールのハブで荷重を受ける、例えば円形の台であり、取付部材の(突起軸部の)外側であって有穴壁部材の内側に設けられる。縁壁部材は、車両用ホイールのリムのフランジ部分で荷重を受ける台であり、それに加えて、加工材が収容される側溝(副凹部)を形成するための部材である。従って、リムのフランジの形状に合わせるため、その形状は円周状とし、有穴壁部材の更に外側に設けられる。円周状の縁壁部材は、一定の幅を有するものであることが好ましい。車両用ホイールのリム径にかかる機械加工のばらつきに対応することが可能になるからである。又、縁壁部材は、車両用ホイールのリム(フランジ)と当接する部分が、車両用ホイールを構成する軽合金材料より柔らかいエンジニアリングプラスチック材料で構成されていることが好ましい。車両用ホイールを傷つけ難く、加えて、車両用ホイールを載置したときに車両用ホイールが縁壁部材の上で安定するからである。
【発明の効果】
【0059】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、それに車両用ホイールを組み込んだ状態で、上下方向に(鉛直方向に)揺動をすることによって、加工材が車両用ホイールのリムの表面(タイヤが装着される側とは反対側のリムの表面)に衝突するように、構成されたものである。加工材が車両用ホイールのリムの表面に衝突することにより、車両用ホイールのリムの表面に存在し得る微小鋳造欠陥を修復し、且つ、表層に内在する気孔を潰す(封孔処理を行う)。表面層加工処理が施されることによって、リムを貫通するような連通した気孔はなくなり、タイヤ装着時のリムからの圧漏れが防止される。
【0060】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、車両用ホイールのリムに合わせて形成されたワークエリアを有する本体部材、及び本体部材のワークエリアとポケットの少なくとも何れかに収容された加工材、を備えているので、車両用ホイールのリムの表面に加工材を衝突させて表面層加工処理を行うにあたり、車両用ホイールの載せ換えが容易であり、且つ、加工材の載せ換えが不要である。そのため、表面層加工処理を、効率よく実施することが出来、車両用ホイールのような大量生産品の量産工程において表面層加工処理を行うことを可能にする、という優れた効果を奏する。
【0061】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具が存在しない場合には、表面層加工処理を行う際に、その都度、揺動をする装置に車両用ホイールを加工材とともに取り付け、処理を終えたら取り外す、という作業が必要になり、これに多くの時間を要することとなり、生産効率の観点から、車両用ホイールのような大量生産品の量産工程において表面層加工処理を行うことは困難であった。本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具を使用すれば、車両用ホイール及び加工材の載せ換えにかかる作業の負担、時間を大幅に低減することが出来、量産工程に表面層加工処理を適用することが可能になる。
【0062】
例えば、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具を、上下に揺動をする装置内に予め設置しておけば、車両用ホイールを車両用ホイール向け表面層加工用治具に固定するという作業をするだけで、直ぐに表面層加工処理が行える。即ち、簡単に迅速に、上下に揺動をする装置に車両用ホイールを取り付け、上下に揺動をする装置から車両用ホイールを取り外すことが可能になる。加工材は、本体部材に、常に収容されているから、新たな車両用ホイールに表面層加工処理を行うに際し、加工材を載せ換える必要がない。
【0063】
車両用ホイールを本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に取り付けると、即、車両用ホイールのリムの表面に加工材を衝突させるべく加工材が回転運動する閉空間が誕生し、又、加工材は、常に車両用ホイール向け表面層加工用治具の本体部材に(主凹部(ワークエリア)及び副凹部(ポケット)の少なくとも何れかに)、収容されている。そのため、車両用ホイールを本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に取り付けた後、直ぐに、表面層加工処理を実施することが出来る。従って、車両用ホイールに表面層加工処理を施す上でのスループットが大変高い。
【0064】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具と、それを上下方向に揺動をさせる揺動手段と、を具備するものであり、車両用ホイール向け表面層加工用治具(加工材を含む)に組み込まれた車両用ホイールを上下方向に揺動をさせる具体的手段である。本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、車両用ホイール向け表面層加工用治具に組み込まれた車両用ホイールを上下方向に揺動をさせることを通じて、上記した本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の効果を導くところに、自らの優れた効果が認められる。
【0065】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置を使用して、それに含まれる本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に車両用ホイールを組み込むと、円周状の車両用ホイールのリムが、円柱形又は円筒形を呈する本体部材の周面に形成されたワークエリアを塞ぎ、円周状の車両用ホイールのリムの表面全てに、円周状の閉空間が形成される。そして、揺動手段によって、車両用ホイール向け表面層加工用治具に組み込まれた車両用ホイールを、上下方向に揺動をさせると、上記閉空間において、比重が2〜10で径がφ5mm以上の球状体又は多面体を少なくとも含む加工材が、車両用ホイールのリムの表面に、一度に衝突をする。そのため、車両用ホイールのリムの表面に存在し得る気孔を含む微小鋳造欠陥を、効率よく修復することが可能であり、気孔を潰す封孔処理によって、圧漏れを防止することが出来る。その後、必要に応じ、リムの表面に仕上げ加工(例えば旋盤加工)を施すことによって、従来、行われていた大変な神経を使う修正加工は不要となり、又は少なくともこれらの作業に大きな負担をかける必要はなく、それらに要する人的労力及び時間を削減することが出来、車両用ホイールの生産性が大きく向上する。
【0066】
上記の通り、本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置を使用して、それに含まれる本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に車両用ホイールを組み込むと、加工材を車両用ホイールのリムの表面に一度に衝突をさせることが出来、車両用ホイールの表面に対する加工材の衝突位置が限定されることはないから、効率よく、リムからの圧漏れがない車両用ホイールを得ることが出来る。又、車両用ホイールの表面に存在する微小鋳造欠陥を修復するために、車両用ホイールの置き方を変えて、繰り返し揺動をさせるといった手間は不要である。
【0067】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置を構成する本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、周面にワークエリアを有していて、そのワークエリアがリムで閉じられて、加工材が運動する空間になる。ワークエリアは、好ましくは周面から中心軸に向けて窪んだ(凹んだ)曲面で形成されているから、加工材は、上下方向に揺動をさせると、ポケットに収容されていたものはそこから飛び出て、ワークエリアの中で、回転運動をしながら、連続して、車両用ホイールのリムの表面に衝突し、ワークエリアを塞いだ車両用ホイールのリム(の表面)に均一に衝突する。
【0068】
ワークエリアが周面から中心軸に向けて窪んだ(凹んだ)曲面で形成されていない場合には、上下方向の揺動によって、ワークエリアの中で、効率よく、加工材に回転運動をさせ難い。従って、効率よく加工材を車両用ホイールのリムの表面に衝突させ難い。
【0069】
左右方向(水平方向)に揺動をすると、加工材は左右方向に往復運動をするが、この場合には、重力によって、一定の比重(質量)を有する加工材は、車両用ホイールのリムの下側の表面に集中して衝突をしてしまい、加工材を車両用ホイールのリムの表面全体に均一に衝突をさせることが出来ない。又、重力によって、加工材が、車両用ホイールのリムの下側の表面に集中して衝突をする結果、加工材どうしが無駄に衝突してエネルギーを損失するので、効率よく加工材を車両用ホイールのリムの表面に衝突をさせることが出来ない。更には、加工材を左右方向に往復運動をさせて、車両用ホイールのリムの表面に衝突をさせる場合には、リムは円筒形状を呈することから、加工材は一度にリムの周面全体に衝突をしないので、一度に表面層加工処理を行うことは出来ない。そのため、車両用ホイールの方向を変えながら、あるいは車両用ホイールを回転させながら、加工材をリムの表面に衝突をさせる必要が生じ、処理時間が長くなる。
【0070】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具を備えており、好ましくは窪んだ(凹んだ)曲面で形成されるワークエリアによって、エネルギー損失の小さい、効率のよい加工材の回転運動が得られる。そして、それによって、短時間で労力を要さずに、車両用ホイールのリムの表面全体に存在し得る気孔等の微小鋳造欠陥を修復し、圧漏れを防止することが可能である。
【0071】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、その好ましい態様において、車両用ホイールのリムのフランジ形状に合わせて形成された溝穴を有する有穴壁部材、車両用ホイールのハブ穴に合わせて配設された取付部材、及び有穴壁部材の溝穴に収容された加工材、を備えているので、この態様においても、車両用ホイールのリムの表面に加工材を衝突させて表面層加工処理を行うにあたり、車両用ホイールの載せ換えが容易であり、且つ、加工材の載せ換えが不要である。そのため、表面層加工処理を、効率よく実施することが出来、車両用ホイールのような大量生産品の量産工程において表面層加工処理を行うことを可能にする、という優れた効果を奏する。この本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の好ましい態様を使用すれば、車両用ホイール及び加工材の載せ換えにかかる作業の負担、時間を大幅に低減することが出来、量産工程に表面層加工処理を適用することが可能になる。
【0072】
例えば、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具のこの好ましい態様を、上下に揺動をする装置内に予め設置しておけば、取付部材を用いて、車両用ホイールを表面層加工用治具に位置決めしながら固定するという作業をするだけで、直ぐに表面層加工処理が行える。取付部材の操作だけで、簡単に迅速に、上下に揺動をする装置に車両用ホイールを取り付け、上下に揺動をする装置から車両用ホイールを取り外すことが可能になる。取付部材(の突起軸部)によって車両用ホイールの位置決めがなされるから、車両用ホイールを表面層加工用治具に組み込む際に、位置の微調整は不要である。加工材は、有穴壁部材の溝穴であって、車両用ホイールが取り付けられることによって閉空間となる場所に、常に収容されているから、新たな車両用ホイールに表面層加工処理を行うに際し、加工材を載せ換える必要がない。
【0073】
車両用ホイールを本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具のこの好ましい態様に取り付けると、即、車両用ホイールのリムの表面に加工材を衝突させるべく加工材が回転運動する閉空間が誕生し、そこには常に加工材が収容されている。そのため、車両用ホイールを本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具のこの好ましい態様に取り付けた後、直ぐに、表面層加工処理を実施することが出来る。従って、車両用ホイールに表面層加工処理を施す上でのスループットが大変高い。
【0074】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置を構成し得る本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の好ましい態様は、円周状に形成された溝穴を有していて、その溝穴に加工材を収容しており、好ましくは溝穴が傾斜して形成されており、更に好ましくは溝穴が円弧面を有する。そのため、加工材が、傾斜し円弧面を有する溝穴の中で、回転運動をしながら、連続して、車両用ホイールのリムの表面に衝突をする。溝穴が傾斜して形成されず又は円弧面を有していないと、溝穴の中における加工材の回転運動が滑らかに行えず、効率よく加工材を車両用ホイールのリムの表面に衝突をさせることが出来なくなるおそれがあるが、本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置の好ましい態様によれば、傾斜し円弧面を有する溝穴によって、エネルギー損失の小さい、効率のよい加工材の回転運動が得られる。従って、短時間で労力を要さずに、車両用ホイールのリムの表面全体に存在し得る微小鋳造欠陥を修復し、圧漏れを防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明の要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0076】
先ず、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具と、それを用いて行う表面層加工処理について説明する。図1A、図1B、及び図6Aは、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の一の実施形態を示す図であり、図1Aは平面図であり、図1Bは図1AにおけるDD断面を表した断面図であり、図6Aは斜視図である。図2及び図6Bは、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に、(図5A及び図5Bに示される自動二輪車用の)車両用ホイールを組み込んだ状態を表す図であり、図2は断面図であり、図6Bは斜視図である。図4A〜図4Dは、車両用ホイールのリムの表面及び表層の一部を表した断面図であり、図4A〜図4Dによって表面層加工処理の作用が説明される。図4Aは、鋳造後の車両用ホイールのリムの表面及び表層の一部を表した断面図であり、そこには微小鋳造欠陥が存在する様子が示されている。図4Bは車両用ホイールのリムに粗加工を施している様子を表した断面図である。図4Cは、車両用ホイールのリムに表面層加工処理を行っている様子を表した部分断面図である。図4Dは、車両用ホイールのリムに仕上加工を施している様子を表した断面図である。図5A及び図5Bは、表面層加工処理を行う対象であり、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に組み込まれる車両用ホイールの一例を示す図である。図5Aは車両用ホイールの平面図であり、図5Bは図5AにおけるCC断面を示す断面図である。
【0077】
図5A及び図5Bに示される車両用ホイール22は、(例えば)AC4CHアルミニウム合金製の鋳造品である。車両用ホイール22は、リム91、ハブ97、及びそれらをつなぐスポーク94を有し、ハブ97には、ハブ穴95が形成されている。
【0078】
図1A、図1B、及び図6Aに示される表面層加工用治具1は、底板部材62、有穴壁部材61(本体部材)、取付部材71、加工材25、台座部材81、縁壁部材82を備えている。
【0079】
底板部材62は、表面層加工用治具1を後述する表面層加工装置に設置するための接続部67a,67b,67c,67dを備え、車両用ホイール22の全体形状(リム91のフランジ91bの形状)より少し大きい円形から、接続部67a,67b,67c,67dを飛び出させてなる形状を有する平板である。
【0080】
有穴壁部材61(本体部材)は、底板部材62の上に円周状に配設されており(図1A及び図6Aを参照)、その有穴壁部材61において、溝穴65(主凹部)が、円周状に連続して、形成されている。そして、溝穴65は、自らが呈する円周の中心に向かって、平らな底板部材62(水平面とする)に対して、概ね30°の角度で低くなるように傾斜している(底板部材62(水平面)に対する傾斜の角度θ=30°、図1Bを参照)。換言すれば、溝穴65は、自らが呈する円周の外側に向けて上方に開口を現している。図2に示されるように、車両用ホイール22を表面層加工用治具1に取り付けると、車両用ホイール22のリム91によって、有穴壁部材61の溝穴65は塞がれ、溝穴65は閉じられて、閉空間26となる。加工材25は、この閉空間26となる有穴壁部材61の溝穴65の中に収容されている。ここに収容された加工材25は、リム91のうちフランジ91bを除く部分に衝突をして、表面層加工処理を行うものである。
【0081】
有穴壁部材が有する溝穴は、有穴壁部材61の溝穴65を代表的な形状として、図1Bに示されるように、溝穴65が、底板部材62(水平面)に対して傾斜し、更には、溝穴65を形成する面が円弧面を有することが好ましい。溝穴65では、図1Bに示される断面において、加工材25が溜まる底部分が円弧面になっている。図7A〜図7Eに、有穴壁部材が有する溝穴の、他の好ましい態様を示す。図7A〜図7Eは、図1Bにおける有穴壁部材61及び溝穴65に対応した断面を表した図である。
【0082】
取付部材71は、突起軸部72、押さえ板部73、及び締付部74で構成される。突起軸部72は、円周状の有穴壁部材61の中心に位置して、底板部材62に配設される。車両用ホイール22は、自らのハブ穴95を突起軸部72に通すことで、有穴壁部材61に対して位置決めされる。押さえ板部73は、円形板で構成され、その円形の中心をボルトからなる締付部74が貫通している。突起軸部72の先端にはねじ穴が形成され、突起軸部72は、締付部74を受けるナットとして機能する。突起軸部72に車両用ホイール22のハブ穴95を通し、押さえ板部73で車両用ホイール22のハブ97を押さえ、更に、締付部74によって締め付けることによって、車両用ホイール22は、表面層加工用治具1に固定される。
【0083】
台座部材81は、底板部材62の上に配設された円形の台であり、円周状に配設された有穴壁部材61の(円周の)中心に位置して、取付部材71の突起軸部72の外側に設けられる。この台座部材81は、車両用ホイール22の荷重を、そのハブ97部分で受ける役割を担う。
【0084】
縁壁部材82は、底板部材62の上に配設されたドーナツ形状の台であり、円周状に配設された有穴壁部材61の(円周の)更に外側に位置して設けられる。縁壁部材82は、車両用ホイール22のリム91のフランジ91bで荷重を受ける役割を担う。又、縁壁部材82は、一定の幅を持ち、その内周側が傾斜していて(図1Bを参照)、車両用ホイール22のリム91のフランジ91bが嵌り易くなっている(図2を参照)。従って、縁壁部材82は、取付部材71の突起軸部72とともに、有穴壁部材61に対して車両用ホイール22を位置決めする役割も担う。
【0085】
又、縁壁部材82は、有穴壁部材61との間に、(副凹部に相当する)側溝66を形成する。図2に示されるように、車両用ホイール22を表面層加工用治具1に取り付けると、車両用ホイール22のリム91によって、側溝66は塞がれ、閉じられて、閉空間28となる。加工材25は、この閉空間28となる側溝66の中にも、収容されている。ここに収容された加工材25は、リム91のうちフランジ91bに衝突をして、表面層加工処理を行うものである。
【0086】
上記態様で、車両用ホイール22を組み込んだ表面層加工用治具1を上下方向に揺動させると、加工材25は、車両用ホイール22のリム91によって塞がれた有穴壁部材61の溝穴65(閉空間26)の中で回転運動し、車両用ホイール22のリム91の表面91aに衝突する。そして、加工材25が車両用ホイール22のリム91の表面91aに衝突することによって、車両用ホイール22の表面91aに存在し得る微小鋳造欠陥が修復され、且つ、車両用ホイール22の表層14に存在する微小鋳造欠陥が潰され、封孔処理が行われる(即ち、表面層加工処理がなされる)。
【0087】
一般に、鋳造法によって成形された鋳造品である車両用ホイール22のリム91の(例えば)表面91aは、鋳造後は鋳肌面であり、そこにおいては、図4Aに示されるように、微小鋳造欠陥である孔部12や突起13が生じてしまうことが多く、更に、表層14を含む表面91aの近傍には、表面91aに現れることにより孔部12となり得る気孔11が存在していることが多い。このように微小鋳造欠陥が存在している車両用ホイール22のリム91の表面91aに対して、図4Bに示されるように、切削工具を使用して粗加工を施すと、表面91aは切削面となる。しかし、そこには、もとは気孔11であった孔部12が現われる。そこで、このような微小鋳造欠陥が新たに現われた車両用ホイール22のリム91の表面91aに対して、加工材25を車両用ホイール22の表面91aに衝突をさせる。そうすると、図4Cに示されるように、表面91aに存在していた孔部12は修復され、併せて、表面91aから3mm程度の深さまでの表層14(表面91aを除く)に存在していた気孔11は潰される。この表層14に存在していた気孔11が潰されることによって、新たな孔部12の発生原因が取り除かれる。そして、図4Dに示されるように、切削工具を使用して仕上加工を施すと、表面91aは、微小鋳造欠陥が存在しない切削面となる。
【0088】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具において、使用する加工材25は、比重が2〜10で径がφ5mm以上の球状体又は多面体が少なくとも含まれるものである。径がφ5mm未満の場合には、表面91aに存在する微小鋳造欠陥を修復する作用が小さくなる。又、表面91aの近傍に存在する微小鋳造欠陥を封孔する作用が小さくなり、気孔11が潰れる表層14の範囲が狭くなる。加工材25に含まれる球状体又は多面体の径の範囲は、好ましくはφ5mm以上φ20mm以下であり、更には、加工材25は、径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体が、加工材全体の70体積%以上を占めるものであることが好ましい。
【0089】
そして、加工材25には、カットワイヤ、金属粒、研削剤ないし研磨剤、乾燥砂、等を混合し、加工材25を2以上の混合物として用いることも出来る。又、加工材25に含まれる球状体又は多面体を、径(大きさ)の異なるものとすることも好ましい。大きさの異なるものを加工材25に混在させることにより、加工材25が、より均一に漏れなく車両用ホイール22の表面91aに対し衝突及び擦り動きを繰り返すとともに、加圧されて車両用ホイール22の表面91aの気孔を修復させ得るものと考えられるからである。
【0090】
加工材25としては、例えば金属球又はセラミック球を含むものが好ましく採用される。金属球又はセラミック球を単独で用いてもよく混合して用いてもよい。金属球として鋼球、ステンレス球が例示され、セラミック球としてジルコニア球、アルミナ球が例示される。比重、硬度、コストの観点より、より好ましい金属球は鋼球であり、より好ましいセラミック球はジルコニア球である。
【0091】
加工材として混合可能なカットワイヤを例示すると、φ0.6〜1.2mm×長さ0.6〜1.2mmのステンレス製カットワイヤを挙げることが出来る。又、加工材25の全体に対し、径がφ5mm以上φ20mm以下の例えば鋼球が70体積%以上を占める場合に、それに混合可能な金属球又はセラミック球として、φ1mm以上φ5mm未満、及びφ20mm超φ30mm以下の、鋼球、ステンレス球、及びジルコニア球を挙げることが出来る。
【0092】
加工材25の投入量は、閉空間26の容積に対し、体積比で概ね5%以上30%以下であることが好ましい。加工材25が閉空間26の中で自由に動き、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数が確保されることを担保するためである。5体積%未満では、加工材25は閉空間26の中で自由に動くもの、車両用ホイール22の表面91aの面積に対し加工材25が少なすぎる結果、加工材25の回転運動による、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数及び加圧力が確保されずに、車両用ホイール22の封孔処理が良好になされないおそれがあり、好ましくない。30体積%より多いと、加工材25が閉空間26の中で自由に動く範囲が限定され、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数及び加圧力が確保されずに、同じく車両用ホイール22の封孔処理が良好になされないおそれがあり、好ましくない。
【0093】
加工材25の投入量は、閉空間26の容積に対し、体積比で概ね5%以上30%以下であることが好ましい。加工材25が閉空間26の中で自由に動き、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数が確保されることを担保するためである。5体積%未満では、加工材25は閉空間26の中で自由に動くもの、車両用ホイール22の表面91aの面積に対し加工材25が少なすぎる結果、回転運動によって、加工材25が車両用ホイール22の表面91aに均一に衝突せず、又、表面91aへの衝突回数及び加圧力が確保されずに、車両用ホイール22の封孔処理が良好になされないおそれがあり、好ましくない。30体積%より多いと、加工材25が閉空間26の中で自由に動く範囲が限定され、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数及び加圧力が確保されずに、同じく車両用ホイール22の封孔処理が良好になされないおそれがあり、好ましくない。
【0094】
加工材25は、元々、閉空間26を構成する溝穴65に収容されており、上下方向に揺動をする際には、閉空間26の中を移動して車両用ホイール22のリム91の表面91aに衝突するが、揺動を終えると、重力で自然と元の位置、即ち溝穴65に収容された状態に戻る。
【0095】
次に、図8A、図8B、及び図12Aは、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、図8Aは平面図であり、図8Bは図8AにおけるEE断面を表した断面図であり、図12Aは斜視図である。図9及び図12Bは、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に、四輪自動車用の車両用ホイールを組み込んだ状態を表す図であり、図9は、右半分が断面図であり左半分が一部を透視した側面図であり、図12Bは、斜視図である。図10は、ワークエリアをリムで閉じて閉空間を形成した部分を拡大した断面図であり、加工材がワークエリアで運動する様子を矢印で表した図である。図13Aは、鋳造後の車両用ホイールのリムの表面及び表層の一部を表した断面図であり、そこには微小鋳造欠陥が存在し、欠陥である気孔が連通して、圧漏れの原因となる空気の流路が形成された様子が示されている。図13Bは、鋳造後の車両用ホイールに対し機械加工を施した後の、リムの表面及び表層の一部を表した断面図であり、表面は真に平らな面になっているが空気の流路も明確に現れてしまい、図13Aの状態より圧漏れし易くなっている様子が示されている。図13Cは、車両用ホイールのリムに、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具を用いて表面層加工処理を行っている様子を表した部分断面図であり、表面層加工処理の作用を説明するための図である。
【0096】
図9及び図12Bにおいて車両用ホイール向け表面層加工用治具101に組み込まれている車両用ホイール122は、リム191(インナーリム192及びアウターリム193)とディスク194とを有する、(例えば)AC4CHアルミニウム合金製の鋳造品である。
【0097】
図8A、図8B、及び図12Aに示される車両用ホイール向け表面層加工用治具101は、本体部材161と加工材25の他に、底板部材162、取付部材171を備えている。底板部材162は、車両用ホイール向け表面層加工用治具101を後述する車両用ホイールの表面層加工装置に設置するための接続部を備え、車両用ホイール122の全体形状(リム191のフランジの形状)より少し大きい円形から接続部を飛び出させてなる形状を有する平板である。底板部材162は、治具の基板、基礎となるものであり、その底板部材162の上には、概ね円筒形状の本体部材161が配設され、その本体部材161の中心に取付部材171が配設される。
【0098】
取付部材171は、車両用ホイール122を車両用ホイール向け表面層加工用治具101に組み込む際に、車両用ホイール122を本体部材161に対して位置決めして固定するための部材である。取付部材171は、車両用ホイール122のハブ穴を通す突起軸部172と、車両用ホイール122をハブ部分で押さえる押さえ板部173と、車両用ホイール122を車両用ホイール向け表面層加工用治具101に固定するために締め付けをする締付部174と、で構成される。
【0099】
取付部材171を構成する突起軸部172は、車両用ホイール122のハブ穴に通じる部分であるから、概ね円筒形状の本体部材161の中心軸の位置であって底板部材162の上に1つ配設される。突起軸部172の径は、車両用ホイール122のハブ穴に合わせて決定される。車両用ホイール122を車両用ホイール向け表面層加工用治具101に組み込む際、車両用ホイール122は、そのハブ穴を突起軸部172に通すことによって、リム191が、本体部材161のワークエリア165(主凹部)を塞ぐように、位置決めされる。
【0100】
位置決めされた車両用ホイール122は、ハブの形状に合わせた、例えば円形板で構成された押さえ板部173によって押さえつけられ、更に、例えばボルトからなる締付部174によって、(車両用ホイール向け表面層加工用治具101に)固定される。締付部174がボルトの場合には、突起軸部172をナットとして機能させるため、突起軸部172にねじ穴が形成される。
【0101】
ワークエリア165は、図8B、図9、図10に示されるように、本体部材161の周面から中心軸に向けて窪んだ(凹んだ)円弧面(曲面)で、連続して形成されている。そして、図9に示されるように、車両用ホイール122を車両用ホイール向け表面層加工用治具101に取り付けると、車両用ホイール122のリム191によって、本体部材161のワークエリア165は塞がれ、ワークエリア165は閉じられて、閉空間126となる。一方、加工材125は、この閉空間126となる本体部材161のワークエリア165(主凹部)とは別に、本体部材161の中心軸方向に沿って深くなるように、本体部材161と一体化した縁壁である縁壁部182によって形成された、ポケット166(副凹部)の中に収容されている。
【0102】
ポケット166に収容された加工材25は、上下方向の揺動(図10の矢印S1を参照)によって、ポケット166からワークエリア165へ飛び出し、ワークエリア165においてリム191に衝突をして、リム191に表面層加工処理を施す。具体的には、車両用ホイール122を組み込んだ車両用ホイール向け表面層加工用治具101を上下方向に揺動させると、加工材25は、車両用ホイール122のリム191によって塞がれた本体部材161のワークエリア165(閉空間126)の中で、塊として回転運動をするようになり、車両用ホイール122のリム191の表面191aに、均一に衝突する(図10を参照)。
【0103】
加工材25が車両用ホイール122のリム191の全ての表面191aに衝突することによって、車両用ホイール122の表面191aに存在し得る微小鋳造欠陥が修復され、表層114に存在し得る気孔11が潰される(即ち、表面層加工処理がなされる)。一般に、鋳造法によって成形された鋳造品である車両用ホイール122のリム191の(例えば)表面191aには、図13Aに示されるように、微小鋳造欠陥である孔部12、突起部13が生じてしまうことが多く、又、表層114を含む表面191aの近傍には、表面191aに現れることにより孔部12となり得る気孔11が存在していることがある。更には、気孔が連通してリム191を貫通する連通孔15が生じてしまう場合がある。これに対し、車両用ホイール122に機械加工(例えば切削加工)を施すことで、表面191aを平らな面にすると、図13Bに示されるように、表面191aに存在していた孔部12及び突起部13は取り除かれるが、表層部114に存在していた気孔11は、そのまま存在し、連通孔15は、機械加工を施す前よりも明確に現れ、より圧漏れが起き易くなる。このような車両用ホイール122のリム191の表面191aに対して加工材25を衝突させると、図13Cに示されるように、ショットピーニング処理とは異なり、表面191aに存在していた孔部12及び突起部13は滑らかに修復され、表面191aから3mm程度の深さまでの表層114(表面191aを除く)に存在していた気孔11は潰される。この表層114に存在していた気孔11が潰されることによって、新たな孔部12及び突起部13の発生原因が取り除かれる。又、連通孔15は表層114において閉じられ、リム191を貫通しなくなり、タイヤからの圧漏れが生じなくなる。
【0104】
加工材25は、元々、閉空間126を構成するワークエリア165の下側に位置するポケット166に収容されており、上下方向に揺動をする際には、閉空間126の中へ飛び出し、閉空間126で回転運動をして車両用ホイール122のリム191の表面191aに衝突するが、揺動を終えると、重力で自然と元の位置、即ちポケット166に収容された状態に戻る。尚、加工材25として使用可能なものは、既述の一の実施形態の場合と同様である。
【0105】
次に、本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置について説明する。本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、上記した表面層加工用治具と、それを上下方向に揺動をさせる揺動手段と、を具備するものである。図3Aは、本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置の一の実施形態を示す上面図である。図3Bは、図3AにおけるA矢視図(正面図)であり、この図3Bにのみ、被揺動体23が描かれている。被揺動体23は、底板部材62、有穴壁部材61、取付部材71、加工材25、台座部材81、縁壁部材82を備えた表面層加工用治具1(図1Bを参照)に、表面層加工処理の対象である車両用ホイール22を組み込んだものである(図2を参照)。図3Bでは、揺動板42の上に表面層加工用治具1が固定されており、その表面層加工用治具1に車両用ホイール22が組み込まれた様子が表されている。図3Cは、図3AのB矢視図(右側面図)であり、振動抑制用錘24を除いて、揺動機構(後述する)を視た図である。このような表面層加工装置2によって、表面層加工用治具1に組み込まれた車両用ホイール22(被揺動体23)を、上下方向に揺動させることが可能である。
【0106】
図3A〜図3Cに示される表面層加工装置2では、揺動にかかる動力は、原動機36により与えられる。原動機36で生じた回転運動が、伝導部材であるベルト35により回転軸40に伝わり、これを回転させ、その回転軸40の回転運動は、それに備わるクランク38によって往復運動に変換される。そして、クランク38とコンロッド41を介し接続される揺動板42が、直線運動案内器として設けられた4つのリニア軸受43a,43b,43c,43dに沿って、上下方向に、直線状の往復運動を行い、この揺動板42の往復運動によって、揺動板42の上に固定された被揺動体23は、上下方向に揺動をする。回転軸40に備わるもう1つのクランク39には、カウンターウエイト32が取り付けられており、揺動板42の往復運動及び被揺動体23の揺動にともなって発生する悪振動を打ち消し抑制する。
【0107】
表面層加工装置2では、揺動手段は、原動機36、回転軸40(クランク38,39)、コンロッド41、揺動板42、リニア軸受43a,43b,43c,43d(直線運動案内器)、及びカウンターウエイト32を有する揺動機構を具備し、その揺動機構は、台板33を介して基台53の上に載置されている。即ち、揺動機構は、台板33の上にまとめて載置され、更に、その台板33が、基台53の上に載置されている。そして、基台53の下には、防振のために4つの空気ばね31が備わり、基台53の上には、空気ばね31の真上に2つの振動抑制用錘24が備わっている。表面層加工装置2では、1つの振動抑制用錘24は、2つの空気ばね31と対応して設けられている。
【0108】
表面層加工装置2では、空気ばね31とその真上に備わる振動抑制用錘24により、揺動に伴う固有振動数を低く出来るとともに、揺動機構の偏荷重を修正して荷重を平均化することが可能である。従って、車両用ホイール22を含む被揺動体23や、装置自体への、悪振動の影響を抑制することが出来る。
【0109】
台板33には2つの軸受45が取り付けられ、回転軸40は、この2つの軸受45により、台板33と平行に、回転自在に取り付けられる。そして、回転軸40は、ベルト35を介して原動機36(の回転軸)と接続される。具体的には、原動機36(の回転軸)に設けられたプーリー37と、回転軸40に設けられたプーリー34と、をベルト35で接続して、原動機36で生じた回転運動を、回転軸40へ伝達する。インバータによる原動機36の回転制御と併せて、これらプーリー34,37の径等を変更することによって、回転軸40の回転数を制御することが出来る。そして、この回転数の制御によって、揺動板42の往復運動(即ち被揺動体23の揺動)にかかる揺動数(振動数)を制御することが可能である。
【0110】
表面層加工用治具1が固定される揺動板42は、使い勝手がよく応用性に優れた平板として構成されており、4つのリニア軸受43a,43b,43c,43dに、移動自在に取り付けられている。リニア軸受は直線運動案内器の1つであり、往復運動を行う揺動板の案内に、例えば玉やころを用いた軸受である。
【0111】
回転軸40には、2つのクランク38,39が180°反対方向を向いて備わっている。そして、クランク38はコンロッド41を介して揺動板42と接続され、一方、クランク39にはカウンターウエイト32が取り付けられている。このようなクランク38,39の態様により、原動機36の与えた回転運動は、クランク38に接続された揺動板42の、上下方向の往復運動に変換され、揺動板42に固定された、車両用ホイール22を組み込んだ表面層加工用治具1(被揺動体23)が、悪振動を抑えつつ、上下方向に揺動をする。そうすると、その揺動によって、加工材25が、車両用ホイール22のリム91の表面91aに、一度に衝突をし、その表面91aの欠陥を修復する(封孔処理を施す)。
【0112】
車両用ホイールの表面層加工装置2では、クランク38,39のうちコンロッド41を介して揺動板42と接続されない方のクランク39にカウンターウエイト32が取り付けられており、それがバランサの役目を果たし、悪振動が打ち消されるので、作業環境が改善され、工場周囲の環境への影響は低減される。又、被揺動体23である表面層加工用治具1に組み込まれた車両用ホイール22への負担が軽減されるので、車両用ホイール22への表面層加工処理の効果が確実に期待出来る。更に、装置自体への負担が軽減されるから、装置のメンテナンス頻度が少なくなる。
【0113】
図11は、図3Bに相当する車両用ホイールの表面層加工装置の矢視図(正面図)であり、図3Bにおける被揺動体23の代わりに、被揺動体123が描かれた図である。被揺動体123は、底板部材162、本体部材161、取付部材171、加工材25を備えた車両用ホイール向け表面層加工用治具101に、表面層加工処理の対象である車両用ホイール122を組み込んだものである(図9を参照)。図11では、揺動板42の上に車両用ホイール向け表面層加工用治具101が固定されており、その車両用ホイール向け表面層加工用治具101に車両用ホイール122が組み込まれた様子が表されている。既述の車両用ホイールの表面層加工装置2の場合と同様に、このような車両用ホイールの表面層加工装置102によって、車両用ホイール向け表面層加工用治具101に組み込まれた車両用ホイール122(被揺動体123)を、上下方向に揺動させ、車両用ホイール122のリム191の表面191aに、表面層加工処理を行うことが可能である(図13A〜図13Cを参照)。
【0114】
次に、揺動条件について、車両用ホイールの表面層加工装置2の場合を例にとって、説明する。本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具を具備する本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置を使用して、車両用ホイールに、表面層加工処理を施す際の、好ましい揺動条件は、以下の通りである。
【0115】
上下方向の揺動における振動数は、概ね3Hz以上30Hz以下であることが好ましい。より好ましい振動数は5Hz以上20Hz以下であり、特に好ましい振動数は8Hz以上15Hzである。加工材25と車両用ホイール22のリム91の表面91aとの単位時間あたりの衝突回数を確保するためである。振動数が3Hz未満では、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数が確保されず、車両用ホイール22の表面91aの微小鋳造欠陥を修復出来ず、又、表面91aの近傍(表層14)の微小鋳造欠陥を潰せず、好ましくない。又、加工材25の数にもよるが、振動数が30Hzより多くても、微小鋳造欠陥を修復し又は潰す効果は小さく、振動数を上げるために費やすエネルギー対効果は低下するため、好ましくない。尚、本明細書において、振動数とは時間あたり繰り返される揺動の回数を指し、単位はヘルツ(Hz)である。
【0116】
又、上下方向に揺動をさせる場合の揺れ幅は、概ね10mm以上120mm以下であることが好ましい。より好ましい揺れ幅は20mm以上100mm以下であり、特に好ましい揺れ幅は30mm以上80mm以下である。閉空間26の中での加工材25の移動範囲を適切に設定することを通して、加工材25と車両用ホイール22のリム91の表面91aとの単位時間あたりの衝突回数を確保するためである。揺れ幅が10mm未満では、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数が確保されず、車両用ホイール22の微小鋳造欠陥を修復出来ず又は潰せず、好ましくない。又、揺れ幅が120mmより大きくても、加工材25が、溝穴65を形成した有穴壁部材61(主凹部を形成した本体部材)の実体部分(溝穴65(主凹部)を形成する壁面)に接している時間が長くなるだけで、加工材25と車両用ホイール22のリム91の表面91aとの衝突回数は増加せず、微小鋳造欠陥を修復し又は潰す効果は大きくはない。尚、閉空間26は、その鉛直方向の長さ(閉空間高さ)が30〜200mmとなるように形成することが望ましい。
【0117】
更には、上下方向に揺動をさせる場合の延べ揺動時間は、概ね10秒以上3分以下であることが好ましい。より好ましい揺動時間は20秒以上2分以下である。加工材25と車両用ホイール22のリム91の表面91aとの延べ衝突回数を確保するためである。延べ揺動時間が10秒未満では、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの延べ衝突回数が確保されず、車両用ホイール22の微小鋳造欠陥を修復出来ず又は潰せず、好ましくない。又、延べ揺動時間が3分より多くても、微小鋳造欠陥を修復し又は潰す効果は小さく、時間対効果は向上しないため、好ましくない。
【0118】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置における揺動条件の好ましい範囲は、既述のように、(上下方向の)揺動にかかる振動数が3Hz以上30Hz以下であり、揺動にかかる揺動時間が10秒以上3分以下である。これらの範囲は、本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置が、車両用ホイールのリムの表面に対して、一度で(配置を変えることなく)処理可能なように、揺動を上下方向に行っていることに基づくものである。即ち、水平方向の揺動と、上下方向の揺動と、では最適な揺動条件が異なるのであり、本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、上下方向の揺動による最適な揺動条件を見出し、これを提案している。
【0119】
尚、上記した表面層加工用治具1,101及び表面層加工装置2,102を実施形態とする、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具及びそれを具備する車両用ホイールの表面層加工装置は、鋼板を加工し市販の各部材と組み合わせて作製することが出来る。作製にあたっては、揺動条件及び処理対象である車両用ホイールの仕様に合わせて、各構成要素のサイズや材料や機械的強度(例えば回転軸の径や材料等)が適正になるように決定することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具は、軽合金製鋳造品である車両用ホイールのリムの表面層に生じた微小鋳造欠陥を効率よく修復し、タイヤ装着時の圧漏れを防止するための一手段として利用することが出来る。本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具によって、微小鋳造欠陥の修復(表面層加工処理)を、量産工程の中の一工程として行うことが、初めて可能になる。
【0121】
本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置は、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具を有しており、それに組み込んだ車両用ホイールを上下方向に揺動をさせ、表面層加工処理を施す手段として、好適に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1A】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の一の実施形態を示す平面図である。
【図1B】図1AにおけるDD断面を表した断面図である。
【図2】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の一の実施形態を示す図であり、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に自動二輪車用の車両用ホイールを組み込んだ状態を表した断面図である。
【図3A】本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置の一の実施形態を示す上面図である。
【図3B】図3Aに示される表面層加工装置のA矢視図(正面図)である(被揺動体が描かれている)。
【図3C】図3Aに示される表面層加工装置のB矢視図(右側面図)である(振動抑制用錘は除かれている)。
【図4A】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の一の実施形態を示す図であり、鋳造後の、車両用ホイールの表面及び表層の一部を表した断面図である。
【図4B】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の一の実施形態を示す図であり、車両用ホイールのリムに粗加工を施しているときの、車両用ホイールの表面及び表層の一部を表した断面図である。
【図4C】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の一の実施形態を示す図であり、車両用ホイールのリムに表面層加工処理を行っているときの、車両用ホイールの表面及び表層の一部を表した断面図である。
【図4D】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の一の実施形態を示す図であり、車両用ホイールのリムに仕上加工を施しているときの、車両用ホイールの表面及び表層の一部を表した断面図である。
【図5A】車両用ホイールの一例を示す平面図である。
【図5B】図5AにおけるCC断面を示す断面図である。
【図6A】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の一の実施形態を示す斜視図である。
【図6B】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の一の実施形態を示す図であり、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に車両用ホイールを組み込んだ状態を表した(車両用ホイールは半透明で示した)斜視図である。
【図7A】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、有穴壁部材(本体部材)が有する溝穴(主凹部)の好ましい態様を示す断面図である。
【図7B】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、有穴壁部材(本体部材)が有する溝穴(主凹部)の好ましい態様を示す断面図である。
【図7C】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、有穴壁部材(本体部材)が有する溝穴(主凹部)の好ましい態様を示す断面図である。
【図7D】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、有穴壁部材(本体部材)が有する溝穴(主凹部)の好ましい態様を示す断面図である。
【図7E】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、有穴壁部材(本体部材)が有する溝穴(主凹部)の好ましい態様を示す断面図である。
【図8A】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す平面図である。
【図8B】図8AにおけるEE断面を表した断面図である。
【図9】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、車両用ホイール向け表面層加工用治具に四輪自動車用の車両用ホイールを組み込んだ状態を表す図であり、右半分が断面図であり、左半分が一部を透視した側面図である。
【図10】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図11】本発明に係る車両用ホイールの表面層加工装置の他の実施形態を示す(正面図)である(被揺動体が描かれている)。
【図12A】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す斜視図である。
【図12B】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具に車両用ホイールを組み込んだ状態を表した(車両用ホイールは半透明で示した)斜視図である。
【図13A】鋳造後の車両用ホイールのリムの表面及び表層の一部を表した断面図である。
【図13B】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、車両用ホイールのリムに機械加工(切削加工)を施した後の、車両用ホイールの表面及び表層の一部を表した断面図である。
【図13C】本発明に係る車両用ホイール向け表面層加工用治具の他の実施形態を示す図であり、車両用ホイールのリムに表面層加工処理を行っているときの、車両用ホイールの表面及び表層の一部を表した断面図である。
【符号の説明】
【0123】
1 表面層加工用治具、2 表面層加工装置、11 気孔、12 孔部、13 突起、14 表層、22 車両用ホイール、23 被揺動体、24 振動抑制用錘、25 加工材、26,28 閉空間、31 空気ばね、32 カウンターウエイト、33 台板、34,37 プーリー、35 ベルト、36 原動機、38,39 クランク、40 回転軸、41 コンロッド、42 揺動板、43a,43b,43c,43d リニア軸受、45 軸受、53 基台、61 有穴壁部材(本体部材)、62 底板部材、65 溝穴(主凹部)、66 側溝(副凹部)、67a,67b,67c,67d 接続部、71 取付部材、72 突起軸部、73 押さえ板部、74 締付部、81 台座部材、82 縁壁部材、91 リム、91a (車両用ホイールのリムの)表面、91b (車両用ホイールのリムの)フランジ、94 スポーク、95 ハブ穴、97 ハブ、101 車両用ホイール向け表面層加工用治具、102 車両用ホイールの表面層加工装置、114 表層、122 車両用ホイール、123 被揺動体、126 閉空間、161 本体部材、162 底板部材、165 ワークエリア(主凹部)、166 ポケット(副凹部)、171 取付部材、172 突起軸部、173 押さえ板部、174 締付部、182 縁壁部、191 リム、191a (車両用ホイールのリムの)表面、192 インナーリム、193 アウターリム、194 ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ホイールにおけるリムの表面層を加工するために用いられる治具であって、
円柱形又は円筒形を呈する本体部材と、加工材と、を具備し、
円柱形又は円筒形を呈する前記本体部材が、その周面に、当該周面から中心軸に向けて窪んだ主凹部を有し、
前記加工材は、比重が2〜10で径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体を含んで構成される車両用ホイール向け表面層加工用治具。
【請求項2】
前記円柱形又は円筒形を呈する本体部材の周面側に、前記本体部材の中心軸方向に深くなるように形成された副凹部を有し、
前記加工材が、前記主凹部及び前記副凹部の少なくとも何れかに収容される請求項1に記載の車両用ホイール向け表面層加工用治具。
【請求項3】
前記本体部材の前記主凹部を形成する面が、円弧面を有する請求項1又は2に記載の車両用ホイール向け表面層加工用治具。
【請求項4】
前記主凹部が、前記周面に連続して形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用ホイール向け表面層加工用治具。
【請求項5】
前記加工材の量が、前記主凹部の容積に対し、体積比で概ね5%以上30%以下である請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用ホイール向け表面層加工用治具。
【請求項6】
前記加工材は、径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体が、加工材全体の70体積%以上を占める請求項1〜5の何れか一項に記載の車両用ホイール向け表面層加工用治具。
【請求項7】
前記車両用ホイールが、リムとディスクとを有する四輪自動車用の、軽合金製鋳造品である請求項1〜6の何れか一項に記載の車両用ホイール向け表面層加工用治具。
【請求項8】
前記本体部材が有する前記主凹部が溝穴状であり、その主凹部が、円柱形又は円筒形を呈する本体部材の中心軸に対して傾斜して形成されている請求項1〜6の何れか一項に記載の車両用ホイール向け表面層加工用治具。
【請求項9】
前記車両用ホイールが、リムとスポークとを有する自動二輪車用の、軽合金製鋳造品である請求項8に記載の車両用ホイール向け表面層加工用治具。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の車両用ホイール向け表面層加工用治具と、その車両用ホイール向け表面層加工用治具を上下方向に揺動をさせる揺動手段と、を具備する車両用ホイールの表面層加工装置。
【請求項11】
前記揺動手段が、原動機と、その原動機に接続された回転軸と、その回転軸に設けられたクランクと、そのクランクとコンロッドを介して接続される揺動板と、その揺動板に取り付けられその揺動板を上下に往復運動させる2以上の直線運動案内器と、を有する揺動機構を具備し、
前記原動機の与えた回転運動が、前記回転軸に備わる前記クランクによって上下運動に変換され、前記クランクと接続された揺動板が、前記直線運動案内器に沿って上下に往復運動をすることにより、前記揺動板に固定される前記車両用ホイール向け表面層加工用治具を上下方向に揺動をさせる請求項10に記載の車両用ホイールの表面層加工装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【公開番号】特開2008−213031(P2008−213031A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93795(P2007−93795)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000116873)旭テック株式会社 (144)