説明

車両用ホイール

【課題】車両用ホイールの剛性を向上させる。
【解決手段】車両用ホイール1のディスク20のハブ取り付け部21に複数のリブ40を周方向に間隔を置いて設ける。複数のスポーク部30をハブ取り付け部21とリム10との間に周方向に間隔を置いて設け、ハブ取り付け部21の連続壁24とリム10とを接合する。各スポーク部30の中心線31をホイール1の径方向に向ける。ホイール1の軸方向から見て、各スポーク部30の中心線31上に複数のリブ40のうち1つが配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、リム部とディスク部とを有する車両用ホイールを開示している。ディスク部のホイール半径方向中央部にはハブ穴を有するハブ取り付け部が設けられており、ハブ取り付け部の周囲には環状の連続壁が形成されている。また、ハブ穴と連続壁の間には複数のボルト穴がホイール周方向に間隔を置いて設けられている。さらに、連続壁からはホイール周方向に間隔を置いて複数のリブがホイール半径方向内側(ハブ穴側)に向かって形成されており、連続壁とリム部との間には複数のスポーク部が放射状に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−324799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された車両用ホイールの場合、隣接したスポーク部の中間の位置に各リブがホイール周方向に形成されており、リブとリブの間に設けられたボルト穴は、スポーク部とホイール半径方向に一致して配設されている。このため、車両に横荷重がかかってスポーク部に曲げ応力が発生すると、連続壁を介して各リブに応力がうまく伝達されず、即ち、ハブ取り付け部に対しても応力が効率的に伝達されないので、結果として車両用ホイールの剛性及び耐久性が低下してしまう。
従って、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、剛性及び耐久性を向上させることのできる車両用ホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、リムとディスクとを有する車両用ホイールにおいて、前記ディスクは、該ディスクのホイール半径方向中央部に配置されたハブ取り付け部と、該ハブ取り付け部からホイール半径方向外側に放射状に延びる複数のスポーク部と、を備えており、前記ハブ取り付け部には、該ハブ取り付け部の外周部に形成される環状の連続壁と、前記ディスクのホイール半径方向中央部に配置されたハブ穴と、該ハブ穴と前記連続壁の間にホイール周方向に間隔を置いて配置された複数のボルト穴と、隣接する該ボルト穴の間に成形されたリブと、が設けられており、前記スポーク部の各々のホイール半径方向の中心線上に1つの前記リブが配置されていることを特徴とする。
リムに入力された荷重は、各スポーク部に伝わり、各スポーク部から対応するリブに直接的に効率よく伝達される。したがって、車両に横荷重がかかってスポーク部に曲げ応力が作用しても、連続壁に捻りが作用するのを防止又は抑制でき、車両用ホイールの剛性及び耐久性を大幅に向上させることができる。
【0006】
前記スポーク部が、一対のスポーク片を有するツインスポークであり、ホイール軸方向から見たときに、前記一対のスポーク片における各々のホイール半径方向の中心線が前記リブ上で交差することが好ましい。
これにより、リムに入力された荷重が、各スポーク片を経て、リブに対して直接的に効率よく伝達される。したがって、車両用ホイールの剛性及び耐久性をより一層向上することができる。
【0007】
隣接している前記スポーク部間の前記連続壁は、直線状又はホイール半径方向中央に向かって凹む凹曲線状であることが好ましい。
リムから各スポーク部に伝わった荷重の一部は、該スポーク部と連続壁との接合部から両隣のスポーク部と連続壁との接合部に伝達される。隣接する2つの前記スポーク部どうしの間にある前記連続壁の部分を直線状にすることにより、力の伝達効率を良好にできる。したがって、車両用ホイールの剛性及び耐久性を一層向上できる。また、隣接する2つの前記スポーク部どうしの間にある前記連続壁の部分をホイール半径方向中央に向かって内側へ凹む凹曲線状にすることにより、スポーク部と連続壁との接合部での応力集中を低減でき、車両用ホイールの耐久性を向上できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両用ホイールの剛性及び耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の車両用ホイールを概略的に示す正面図である。
【図2】上記第1実施形態の車両用ホイールの詳細構造の一例を示す正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2の車両用ホイールの背面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の車両用ホイールを概略的に示す正面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の車両用ホイールを概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、第1実施形態の車両用ホイール1を概略的に示したものである。図2〜図4は、上記車両用ホイール1の詳細構造の一例を示したものである。
【0011】
車両用ホイール1は、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの軽合金にて構成されているが、これに限定されるものではなく、スチールにて構成されていてもよい。車両用ホイール1は、鋳造にて形成されているが、これに限定されるものではなく、鍛造、その他の製造方法にて形成されていてもよい。
【0012】
車両用ホイール1は、リム10と、ディスク20を備えている。リム10及びディスク20は、例えば鋳造にて一体成型されているが、これに限定されるものではなく、リム10とディスク20が互いに別体に製作された後、連結されるようになっていてもよい。
【0013】
リム10は、環状になっている。リム10の外周にタイヤ(図示省略)が取り付けられる。
【0014】
リム10の径方向の内側にディスク20が設けられている。ディスク20は、ハブ取り付け部21と、複数のスポーク部30を有している。ハブ取り付け部21は、中央部に配置されるハブ穴25と、ボルト穴26と、外周部に形成された連続壁24とを含む。
【0015】
図3に示すように、ハブ取り付け部21の中央部、ひいては車両用ホイール1のホイール半径方向の中心部にハブ穴25が形成されている。ハブ穴25にはハブ(図示省略)が取り付けられる。
【0016】
ハブ取り付け部21は、環状の平板状をなしている。ハブ取り付け部21の軸方向の外側の面が、ハブ穴25の外周面の裾に滑らかに連なっている。
【0017】
図1及び図2に示すように、ハブ取り付け部分21には複数のボルト穴26が形成されている。各ボルト穴26は、ハブ取り付け部分21を厚さ方向(車両用ホイール1のホイール軸方向)に貫通している。複数のボルト穴26は、ハブ取り付け部分21の周方向に互いに間隔を置いて好ましくは等間隔置きに配置されている。ボルト穴26には車軸との連結用のボルト(図示省略)が収容される。
【0018】
ハブ取り付け部21の外周を連続壁24が囲んでいる。連続壁24は、ハブ取り付け部21の外周縁に連なるとともにそこからホイール軸方向の外側(図1において紙面手前)に突出する筒状になっている。図2に示すように、連続壁24は、ホイール軸方向の外側へ拡径しながら突出する筒状になっている。図3に示すように、連続壁24の外端部は、ハブ取り付け部21の外端面よりもホイール軸方向の外側へ突出している。図1に示すように、車両用ホイール1のホイール軸方向から見て、連続壁24の外周縁は大略多角形になっている。すなわち、連続壁24は、複数の直線状の辺部27を環状に連ねることによって構成されている。図1に示すように、この実施形態では、連続壁24は、5つの直線状の辺部27を有し、連続壁24の外周縁が大略五角形になっている。図2に示すように、第1実施形態の詳細構造によれば、辺部27は、車両用ホイール1の軸線方向から見て、該辺部27の中央部分が車両用ホイール1のホイール半径方向の中央部へ向けて凹む緩やかな凹曲線状になっている。
【0019】
更に、ハブ取り付け部21には複数のリブ40が設けられている。リブ40は、ハブ取り付け部21の隣り合う2つのボルト穴26,26どうしの間に配置され、ホイール軸方向の外周側へ突出されて形成している。車両用ホイール1の周方向にボルト穴26とリブ40が交互に配置されている。複数のリブ40は、上記周方向に互いに間隔を置いて、好ましくは等間隔置きに配置されている。図3及び図4に示すように、第1実施形態の詳細構造によれば、ハブ取り付け部分21のホイール軸方向の内側の面におけるリブ40と対応する箇所には、軽量化のための凹部23eが形成されている。
ボルト穴26及びリブ40の数は、この実施形態ではそれぞれ5つであるが、これに限定されるものではなく、4つ以下でもよく、6つ以上でもよい。ボルト穴26の数とリブ40の数は、同じに限られず、互いに異なっていてもよい。
【0020】
図1に示すように、各リブ40の中心線41は車両用ホイール1のホイール半径方向に向けられている。図2に示すように、詳細構造によれば、リブ40は、連続壁24とハブ取り付け部21とを繋ぐように車両用ホイール1のホイール半径方向に延びている。図3に示すように、リブ40における車両用ホイール1のホイール半径方向の外周側の端部が、連続壁24に一体に連なっている。図2に示すように、リブ40と連続壁24との連接部分は、連続壁24の2つの辺部27の接合部28に位置している。車両用ホイール1のホイール軸方向の外側から見て、リブ40は、上記径方向の内周側へ向かうにしたがって幅(車両用ホイール1の周方向の寸法)が小さくなり、大略三角形状になっている。
【0021】
図1に示すように、リム10と取り付け部21との間に複数のスポーク部30が設けられている。スポーク部30を介してリム10とハブ取り付け部21が連結されている。各スポーク部30の中心線31は、車両用ホイール1のホイール半径方向に向けられている。複数のスポーク部30は、車両用ホイール1のホイール周方向に互いに間隔を置いて、好ましくは等間隔置きに配置されている。スポーク部30の数は、リブ40の数と等しい。この実施形態では、スポーク部30の数は、5つであるが、これに限定されるものではなく、4つ以下でもよく、6つ以上でもよい。
【0022】
図1及び図2に示すように、第1実施形態のスポーク部30は、一対のスポーク片32を有するツインスポークにて構成されている。一対のスポーク片32は、車両用ホイール1のホイール半径方向の外周側へ向かうにしたがって互いに離れるようにV字状になっている。一対のスポーク片32は、スポーク部30の中心線31に関して互いに対称になっている。各スポーク片32は、中心線31に対し斜めになっている。
【0023】
各スポーク片32における車両用ホイール1のホイール半径方向の外周側の端部がリム10に連接されている。各スポーク片32における車両用ホイール1のホイール半径方向の内周側の端部が、ハブ取り付け部21に連接されている。スポーク部30とハブ取り付け部21との連接部は、多角形状をなす連続壁24の隣り合う辺部27の接合部28に位置している。
【0024】
図2に示すように、スポーク部30における一対のスポーク片32の互いに対向する側の縁どうしは、接合部28の付近で円弧状のR部34を形成し、互いに滑らかに連続している。各スポーク片32における対の相手側のスポーク片32とは反対側を向く縁は、円弧状のR部35を形成し、連続壁24の外周縁に滑らかに連続している。
【0025】
各スポーク片32におけるリム10との連接部分は、該連接部分におけるリム10の接線に対しほぼ直角になるように若干曲がっている。各スポーク片32の幅方向の両縁は、リム10の付近で円弧状のR部36を形成し、リム10の内周縁に滑らかに連続している。
【0026】
本発明の最も特徴的な部分について説明する。
図1及び図2に示すように、車両用ホイール1の軸方向から見て、各スポーク部30の中心線31上に1つのリブ40が配置されている。スポーク部30とリブ40が一対一に対応している。互いに対応するスポーク部30とリブ40が、連続壁24の辺部27どうしの接合部28を介して互いに連なっている。さらに、車両用ホイール1の軸方向から見て、一対のスポーク片32の各々の中心線33が、リブ40上において交差している。
【0027】
上記のように構成された車両用ホイール1においては、リム10に入力された荷重は、各スポーク部30に伝わり、各スポーク部30から対応するリブ40に直接的に伝達される。したがって、車両に横荷重がかかってスポーク部30に曲げ応力が作用しても、連続壁24に捻りが作用するのを防止又は抑制でき、車両用ホイール1の剛性及び耐久性を向上できる。しかも、各スポーク片32の中心線33がリブ40で交わることにより、リム10に入力された荷重が、各スポーク片32を経てリブ40に直接的に伝達される。したがって、車両用ホイール1の剛性及び耐久性を一層向上できる。
更に、リム10から各スポーク部30に伝わった荷重の一部は、該スポーク部30との接合部28から2つの直線状の辺部27を経て、周方向の両隣の接合部28に伝達される。辺部27が直線状であるから力の伝達効率が良好である。したがって、車両用ホイール1の剛性及び耐久性を一層向上できる。
V字状をなす一対のスポーク片32が連続壁24の辺部27どうしの接合部28に接合しているため、車両の駆動力をリム10に効果的に伝達でき、車両用ホイール1の捻り剛性を向上できる。
スポーク片32がR状の接続部35を介して辺部27と接合されているため、該接合部の応力集中を低減でき、車両用ホイール1の耐久性を一層向上できる。
更に図2に示すように、辺部27を車両用ホイール1の径方向の中央部へ向けて凹む緩やかな凹曲線状にすることによって、スポーク部30と辺部27とのR状の接続部35での応力集中を低減でき、車両用ホイール1の耐久性を向上できる。
スポーク片32がリム10との接合部におけるリム10の接線に対しほぼ直角になることによって、荷重を確実に伝達することができ、車両用ホイール1の剛性及び耐久性を一層向上できる。
【0028】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図5は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態では、スポーク部30が、第1実施形態のツインスポークに代えて、シングルスポークにて構成されている。シングルスポークからなるスポーク部30は、車両用ホイール1の径方向に沿って真っ直ぐ延びている。複数のスポーク部30の中心線31が、車両用ホイール1の径方向の中央のハブ穴25内において交差している。各スポーク部30に対してリブ40が車両用ホイール1の径方向に一直線に並んでいる。
【0029】
図6は、本発明の第3実施形態を示したものである。第3実施形態では、連続壁24が、第1実施形態の多角形状に代えて、真円形の筒状になっている。したがって、辺部27は、中央部が車両用ホイール1の径方向の外周側へ向けて凸になった凸曲線状になっている。
【0030】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変をなすことができる。
リブ40の数がスポーク部30の数より多くてもよい。各スポーク部30にリブ40が1つずつ対応し、かつ余ったリブ40がスポーク部30に対応しない位置に配置されていてもよい。
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態のシングルスポークを有する車両用ホイール1の連続壁24を、第3実施形態のように真円状にしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 車両用ホイール
10 リム
20 ディスク
21 ハブ取り付け部
23e 凹部
24 連続壁
25 ハブ穴
26 ボルト穴
27 辺部
28 接合部
30 スポーク部
31 中心線
32 スポーク片
33 スポーク片の中心線
34,35,36 R部
40 リブ
41 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムとディスクとを有する車両用ホイールにおいて、
前記ディスクは、該ディスクのホイール半径方向中央部に配置されたハブ取り付け部と、該ハブ取り付け部からホイール半径方向外側に放射状に延びる複数のスポーク部と、を備えており、
前記ハブ取り付け部には、該ハブ取り付け部の外周部に形成される環状の連続壁と、前記ディスクのホイール半径方向中央部に配置されたハブ穴と、該ハブ穴と前記連続壁の間にホイール周方向に間隔を置いて配置された複数のボルト穴と、隣接する該ボルト穴の間に成形されたリブと、が設けられており、
前記スポーク部の各々のホイール半径方向の中心線上に1つの前記リブが配置されていることを特徴とする車両用ホイール。
【請求項2】
前記スポーク部が、一対のスポーク片を有するツインスポークであり、ホイール軸方向から見たときに、前記一対のスポーク片における各々のホイール半径方向の中心線が前記リブ上で交差することを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。
【請求項3】
隣接している前記スポーク部間の前記連続壁は、直線状又はホイール半径方向中央に向かって凹む凹曲線状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−40947(P2012−40947A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183885(P2010−183885)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)