説明

車両用ミラー装置

【課題】強固な固定を行えるねじ締結構造を用いた場合であっても外観を損ねることを防止することを可能にするとともに、メンテナンス性を向上させることを可能にする。
【解決手段】車体の外表面(前ドア)13に取付けられるミラーベース21と、ミラーベース21に回動可能に設けられるミラー本体23とを有し、ミラー本体23に、ハウジング37と、視認用の鏡体33が設けられる側にハウジング37に取付けられるバイザー34とを備え、ハウジング37及びバイザー34には、互いにねじ締結される締結部54,65が設けられ、締結部(バイザー側締結部)54が、ミラー本体23が使用位置にある場合にはミラーベース21と重なり、ミラー本体23が使用位置から所定量回動された場合には露出する位置に設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアに設けられ、車体の側方及び後方を視認可能とする車両用ミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ミラー装置として、車両用ドアに設けられ、方向指示機能やカメラなどを収納したものが知られている。
この種の車両用ミラー装置は、方向指示機能やカメラなどのメンテナンスを考慮した設計がなされるものであった。
【0003】
このような車両用ミラー装置として、ミラーを覆うミラーハウジングを分割構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−182286公報
【0004】
特許文献1の車両用ミラー装置は、車体側に取付けられるミラーベースと、このミラーベースに回転可能に取付けられるミラー基部と、この基部に左右上下に首振り可能に取付けられるバイザーと、このバイザーに取付けられ、車体の側方及び後方を視認可能とする鏡体(ミラー)と、バイザーに取付けられ、鏡体及びバイザーを覆うハウジングと、このハウジング内に収納され、ハウジングの下方を撮影するカメラとからなり、ミラーハウジングが上ハウジング部材と下ハウジング部材とに分割構成され、カメラのメンテナンスをできるようにしたものである。
【0005】
しかし、車両用ミラー装置では、上ハウジング部材に係合爪が形成され、バイザーに係合孔が形成され、上ハウジング部材の係合爪をバイザー係合孔に嵌合させるとともに、下ハウジング部材に係合爪が形成され、バイザーに係合孔が形成され、下ハウジング部材の係合爪がバイザー係合孔に嵌合するものであるため、上ハウジング部材や下ハウジング部材をバイザーにねじ止めする場合に比べ、強固に固定し難いという課題があった。
【0006】
また、車両用ミラー装置において、上ハウジング部材や下ハウジング部材をバイザーにねじ止めするねじ締結構造を用いる場合にはねじが外観に露出し、意匠性を損なうことがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、強固な固定を行えるねじ締結構造を用いた場合であっても外観を損ねることを防止することができるとともに、メンテナンス性を向上させることができる車両用ミラー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体の外表面に取付けられるミラーベースと、ミラーベースに回動可能に設けられるミラー本体とを有し、ミラー本体に、ハウジングと、視認用の鏡体が設けられる側に、且つハウジングに取付けられるバイザーとを備え、ハウジング及びバイザーには、互いにねじ締結される締結部が設けられ、締結部が、ミラー本体が使用位置にある場合にはミラーベースと重なり、ミラー本体が使用位置から所定量回動された場合には露出する位置に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、ハウジングとバイザーとの分割線が、ミラー本体の回動軸部を通ることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、締結部が、ハウジングからバイザー側に延出した延出部を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、ハウジングが、上ハウジング部材と、下ハウジング部材とを備え、互いに分割可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、車体の外表面に取付けられるミラーベースと、ミラーベースに回動可能に設けられるミラー本体とから車両用ミラー装置が構成され、ミラー本体に、ハウジングと、視認用の鏡体が設けられる側に、且つハウジングに取付けられるバイザーとを備える。ハウジング及びバイザーには、互いにねじ締結される締結部が設けられる。
締結部が、ミラー本体が使用位置にある場合にはミラーベースと重なり、ミラー本体が使用位置から所定量回動された場合には露出する位置に設けられているので、強固な固定を行えるねじ締結構造を用いた場合であっても外観を損ねることを防止することができるとともに、メンテナンス性を向上させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ハウジングとバイザーとの分割線が、ミラー本体の回動軸部を通るようにしたので、回動軸部を中心にハウジングとバイザーとを分割させることができる。この結果、ミラーベースを車体に取付けた状態でメンテナンスを行うことができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、締結部が、ハウジングからバイザー側に延出した延出部を備えている。ミラー本体は、使用状態では、先端が車体後方側に傾いて取付けられているため、車体前方への回動角度を比較的多く確保することできる。従って、車体後方側に設けられているバイザー側に寄った位置に延出部を設けることによって、ミラー本体を前方へ回動させる動作をさせたときに、締結部を極力車体外方に移動させることができる。この結果、車体取付け状態でのメンテナンス性を向上することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、ハウジングが、上ハウジング部材と、下ハウジング部材とを備え、互いに分割可能に構成されているので、必要に応じて、上ハウジング部材、下ハウジング部材を選択的に取外すことができる。これにより、ハウジング内に設けられるサイドターンライトやカメラなどのメンテナンス性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車両用ミラー装置を採用した車両の斜視図である。
図1に示されたように、車両10は、車体11に開閉自在に設けられ乗員が乗降する前ドア13と、この前ドア13に設けられた車両用ミラー装置20とを備える。
【0017】
車両用ミラー装置20は、前ドア13に取付けられるミラーベース21と、このミラーベース21に回動軸部(支軸)22を介して回転自在に取付けられるミラー本体23とからなり、二点鎖線で示されるように、前ドア13に沿ってミラー本体23が収納可能であるとともに、ミラー本体23に車体11前後方向から矢印A1,A2に示される外力が加わる場合には、矢印A3に示されるように、回動軸部22を中心にミラーベース21に対して回転可能に取付けられ、ミラー本体23の損傷を防止した装置である。
なお、前ドア13は車体の外表面に相当する。
【0018】
図2は本発明に係る車両用ミラー装置の分解斜視図であり、図3は図2に示される車両用ミラー装置のバイザーを取り去った状態での下方から見たミラー本体の斜視図であり、図4は図2に示される車両用ミラー装置のミラー本体の要部を示す下側部分の分解斜視図である。
ミラーベース21は、前ドア13に取付けるための複数のスタッドボルト31(図5参照)が形成されている。
【0019】
図2に示されたように、ミラー本体23は、ミラーベース21に回動軸部22を介して回転自在に取付けられるミラー基部32と、ミラー基部32に上下左右に首振り可能に取付けられ、後方及び側方の視認用の鏡体(ミラー)33と、このミラー基部32に取付けられ、鏡体33を覆うバイザー34と、ミラー基部32に取付けられ、車両10の移動方向を指し示すサイドターンランプ35と、バイザー34に取付けられ、ミラー基部32を覆う下ハウジング部材38と、バイザー34及び下ハウジング部材38に取付けられ、ミラー基部32を覆うとともにサイドターンランプ35を臨ます上ハウジング部材39とからなる。
【0020】
上ハウジング部材39及び下ハウジング部材38でハウジング37が構成され、上ハウジング部材39及び下ハウジング部材38は、互いに分割可能に形成されている。
【0021】
ミラー基部32は、ミラー本体23を前ドア13に沿わせて格納する駆動部(不図示)と、バイザー34を取付ける取付部41,42と、図4に示されるように、バイザー34及び下ハウジング部材38をねじ締結する締結用ボス43とが設けられる。締結用ボス43には締結ねじ44をねじ込むねじ孔45が形成される。
【0022】
バイザー34は、下ハウジング部材38がねじ止めされるねじ止め部46,47と、上ハウジング部材39が係合される係合部51〜53と、図4に示されるように、下ハウジング部材38とともにミラー基部32の締結用ボス43にねじ締結されるバイザー側締結部54が形成される。
バイザー側締結部54は、バイザー34の外表面34aから締結ねじ44のねじ頭44aを隠す凹部55と、締結ねじ44を貫通する貫通孔56が形成される。
【0023】
上ハウジング部材39は、バイザー34に係合するバイザー用係合爪57〜59と、下ハウジング部材38に係合する下ハウジング用係合爪61,62と、サイドターンランプ35を臨ます開口部63とが形成される。
【0024】
下ハウジング部材38は、ミラー本体23の下方を映すカメラ67と、このカメラ67の撮影部位を照明する照明部68が設けられる部材であり、図3及び図4に示されたように、ミラー基部32の締結用ボス43にバイザー34とともにねじ締結される下ハウジング側締結部64と、上ハウジング部材39の下ハウジング用係合爪61,62が係合する係合孔71,72と、が形成される。
【0025】
図3及び図4に示されるように、下ハウジング側締結部64は、下ハウジング部材38からバイザー34側に延出した延出部65と、この延出部65に形成され、締結ねじ44を貫通する貫通孔66が設けられる。
【0026】
なお、バイザー側締結部54及び下ハウジング側締結部64は、ミラー基部32に締結ねじ44で締結される締結部である。
【0027】
図5は図1に示される車両用ミラー装置の使用状態を下方から見た斜視図であり、図6は図1に示される車両用ミラー装置の前可倒状態を下方から見た斜視図であり、図7は図1に示される車両用ミラー装置のミラー本体の斜視図である。
【0028】
図5に示されたように、車両用ミラー装置20の使用状態では、締結部(バイザー側締結部)54が、ミラーベース21内に隠れるとともに、締結ねじ44は、バイザー側締結部54の凹部55によりバイザー34の外表面34aから隠れて視認されることはない。
また、図6に示されたように、車両用ミラー装置20の前可倒状態では、締結部(バイザー側締結部)54及び締結ねじ44が露出する。
【0029】
図7に示されたように、下ハウジング部材38(ハウジング37)とバイザー34との分割線74が、ミラー本体23の回動軸部22を通るように設定され、回動軸部22を中心に下ハウジング部材38とバイザー34とを分割できる。
【0030】
すなわち、図2に示されたように、車両用ミラー装置20は、車体11の外表面(前ドア)13に取付けられるミラーベース21と、ミラーベース21に回動可能に設けられるミラー本体23とから構成され、ミラー本体23に、ハウジング37と、視認用の鏡体33が設けられる側に、且つハウジング37に取付けられるバイザー34とを備える。ハウジング37及びバイザー34には、互いにねじ締結される締結部(バイザー側締結部)54が設けられる。
【0031】
図5及び図6に示されたように、締結部54が、ミラー本体23が使用位置にある場合にはミラーベース21と重なり、ミラー本体23が使用位置から所定量回動された場合には露出する位置に設けられているので、強固な固定を行えるねじ締結構造を用いた場合であっても外観を損ねることを防止することができるとともに、メンテナンス性を向上させることができる。
【0032】
また、図7に示されたように、ハウジング37とバイザー34との分割線74は、ミラー本体23の回動軸部22を通るようにしたので、回動軸部22を中心にハウジング37(下ハウジング部材38)とバイザー34とを分割させることができる。この結果、ミラーベース21を車体11に取付けた状態でメンテナンスを行うことができる。
【0033】
さらに、図3及び図4に示されたように、締結部(ハウジング側締結部)64は、ハウジング37からバイザー34側に延出した延出部65を備えている。ミラー本体23は、使用状態では、先端が車体11後方側に傾いて取付けられているため、車体11前方への回動角度を比較的多く確保することできる。従って、車体11後方側に設けられているバイザー34側に寄った位置に延出部65を設けることによって、ミラー本体23を前方へ回動させる動作をさせたときに、締結部54,64を極力車体11外方に移動させることができる。この結果、車体11に取付けた状態でのメンテナンス性を向上することができる。
【0034】
車両用ミラー装置20では、図2に示されたように、ハウジング37が、上ハウジング部材39と、下ハウジング部材38とを備え、互いに分割可能に構成されているので、必要に応じて、上ハウジング部材39、下ハウジング部材38を選択的に取外すことができる。これにより、ハウジング37内に設けられるサイドターンランプ35やカメラ67などのメンテナンス性を高めることができる。
【0035】
以上に述べた車両用ミラー装置20のメンテナンスの手順の一例を説明する。
図8(a)〜(c)は図1に示される車両用ミラー装置のメンテナンスの手順の一例を示す説明図である。
(a)において、下方から見た使用状態の車両用ミラー装置20が示される。
【0036】
(b)において、ミラー本体23を矢印b1の如く前可倒状態にし、締結部(バイザー側締結部)54及び締結ねじ44をミラーベース21から露出させる。これにより、締結ねじ44にドライバ(工具)79を矢印b2の如く臨ますことができる。
【0037】
(c)において、(b)に示される締結ねじ44を取外すことで、バイザー34と下ハウジング部材39を分割可能とし、バイザー34や上・下ハウジング部材38,39をミラー基部32から取外すことが可能になり、車両用ミラー装置20のメンテナンスを容易に行うことができる。すなわち、強固な固定を行えるねじ締結構造を用いた場合であっても外観を損ねることを防止することができるとともに、メンテナンス性を向上させることができる。
【0038】
尚、本発明に係る車両用ミラー装置は、図1に示すように、車体11の左側に設けられたものであったが、これに限るものではなく、車体11の右側に設けられるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る車両用ミラー装置は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る車両用ミラー装置を採用した車両の斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用ミラー装置の分解斜視図である。
【図3】図2に示される車両用ミラー装置のバイザーを取り去った状態での下方から見たミラー本体の斜視図である。
【図4】図2に示される車両用ミラー装置のミラー本体の要部を示す下側部分の分解斜視図である。
【図5】図1に示される車両用ミラー装置の使用状態を下方から見た斜視図である。
【図6】図1に示される車両用ミラー装置の前可倒状態を下方から見た斜視図である。
【図7】図1に示される車両用ミラー装置のミラー本体の斜視図である。
【図8】図1に示される車両用ミラー装置のメンテナンスの手順の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
10…車両、11…車体、13…車体の外表面(前ドア)、20…車両用ミラー装置、21…ミラーベース、22…回動軸部、23…ミラー本体、33…鏡体、34…バイザー、37…ハウジング、38…下ハウジング部材、39…上ハウジング部材、54…バイザー側締結部(締結部)、64…下ハウジング側締結部(締結部)、65…延出部、74…分割線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の外表面に取付けられるミラーベースと、ミラーベースに回動可能に設けられるミラー本体とを有し、
前記ミラー本体は、ハウジングと、視認用の鏡体が設けられる側に、且つ前記ハウジングに取付けられるバイザーとを備え、
前記ハウジング及び前記バイザーには、互いにねじ締結される締結部が設けられ、
前記締結部は、前記ミラー本体が使用位置にある場合には前記ミラーベースと重なり、
前記ミラー本体が前記使用位置から所定量回動された場合には露出する位置に設けられていることを特徴とする車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記ハウジングとバイザーとの分割線は、前記ミラー本体の回動軸部を通ることを特徴とする請求項1記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記締結部は、前記ハウジングから前記バイザー側に延出した延出部を備えていることを特徴とする請求項2記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、上ハウジング部材と、下ハウジング部材とを備え、互いに分割可能に構成されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の車両用ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−89579(P2010−89579A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259768(P2008−259768)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】