説明

車両用ロック装置

【課題】鋸を用いても切断し難い構造を備え、且つ軽量化が可能な車両用ロック装置を提供する。
【解決手段】自動二輪車の移動を規制するロッド部2を備えた車両用ロック装置において、ロッド部2が外部材11とこの外部材11内に挿入した内部材12とを備え、外部材11に対して内部材12を回動可能に設けている。鋸101により切断しようとした場合、外部材11を切断しても、内部材12に鋸刃102が達すると、鋸刃102により内部材12が回転して切断し難くなり、防犯性に優れたものとなる。また、外部材11の材質を選定することにより、全体として軽量化を図ることができる。さらに、内部材12の端部に抜止め部13を設けることにより、外部材11に対して内部材12の軸方向の移動を規制している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車等の車両の盗難を防止するために用いるロック装置として、U字ロック部材のアーム端を嵌入し得るアーム挿入部を有するロックハウジングを設け、このロックハウジング内には、イグニッションキーにより回動して前記U字ロック部材のアーム端に係合しU字ロック部材を抜出し不能にロックするロックプレートを有する(例えば特許文献1)盗難防止装置がある。また、互いに別体の第1棒状体と第2棒状体とを備え、これらのうち、第1棒状体がその一端と他端との間に位置して断面円形でほぼ直線的な形状とされる棒状体本体を有し、上記第2棒状体がその一端と他端との間に位置して断面円形でほぼU字状の形状とされ車輪のタイヤの周方向に一部に外嵌可能とされる棒状体本体とを有し(例えば特許文献2)、これら両端部をロック可能としたロック装置がある。
【0003】
このようなロック装置では、U字形の車輪ロックを車輪のリムの内側又はスポークの間に通し、ロックプレートを錠締めすることにより、車輪を回転できなくし、盗難を防止することができる。
【0004】
また、複数本のロッドの各端部を、揺動を許容する連結部でチェーン状に連結し、ロッド部で閉成可能なループに形成してなるロック装置において、大型のパイプレンチなどによる破壊を考慮して、前記ロッドを軸芯を中心にして回動自在に設けたロック装置(例えば特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−301160号公報
【特許文献2】特開平2000−118461号公報
【特許文献2】特表平8−502105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術のものは、ロッドを把持するなどして固定し、鋸を用いて切断することができる。このためロッドの素材を鋼鉄製にすることにより、破壊による盗難予防効果を高めているが、重量が重く、使い勝手が悪いものになっており、特に、二輪車に搭載する場合、その重量により燃費などに悪影響を与える問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、鋸を用いても切断し難い構造を備え、且つ軽量化が可能な車両用ロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両の移動を規制するロッド部を備えた車両用ロック装置において、前記ロッド部が外部材とこの外部材内に挿入した内部材とを備え、前記外部材に対して前記内部材を回動可能に設けたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記内部材は、前記外部材に対して軸方向の移動が規制されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記外部材が軽合金材又はカーボン樹脂材からなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、前記内部材はロープ材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の車両用ロック装置によれば、外部材に対して内部材が回動可能になっているから、鋸により切断しようとした場合、外部材を切断しても、内部材に鋸刃が達すると、鋸刃により内部材が回転して切断し難くなり、防犯性に優れたものとなる。また、外部材の材質を選定することにより、全体として軽量化を図ることができる。
【0013】
また、請求項2記載の車両用ロック装置によれば、内部材の軸方向の移動を規制することにより、外部材が切断されても、外部材の切断部分を内部材から抜くことはできず、内部材を押さえて鋸で切断することを防止できる。
【0014】
また、請求項3記載の車両用ロック装置によれば、軽量化を図ることができる。
【0015】
また、請求項4記載の車両用ロック装置によれば、ロープ材及びワイヤー材を選定することにより、対切断強度を高め、防犯性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例の実施例1を示す正面図である。
【図2】同上、ロッド部の長さ方向の断面図である。
【図3】同上、ロック機構廻りの断面図である。
【図4】同上、ロッド部の断面図である。
【図5】本実施例の実施例2を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1〜図4に示すように、まず、車両用ロック装置1の一例を説明すると、車両ロック装置1は、間隔を置いて略平行に配置された一対のロッド部2,2と、これら一対のロッド部2,2の一端に固定した交差方向の固定杆3とを有し、これらロッド部2,2と固定杆3により略コ字形のロック部材4を構成し、前記一対のロッド部2,2の他端に開口部5が形成されている。それら一対のロッド部2,2の他端には、ロック杆6が着脱可能に設けられ、このロック杆6により前記開口部5を閉成することができる。
【0019】
図2などに示すように、前記ロッド部2は、略円筒状の外部材11と、この外部材11内に回転可能に遊挿する内部材12とを備え、外部材11と内部材12とが互いに回動可能に設けられている。また、前記内部材12の両端部には、前記外部材11の端部に係止する抜止め部13を設け、この抜止め部13は前記外部材11の内径より大きく形成されている。このように内部材12の端部に抜止め部13を設けることにより、外部材11に対して内部材12の軸方向の移動を規制している。さらに、前記外部材11の端部には、後述するロック片に係止する溝状の係止部14を周設している。
【0020】
前記ロッド部2は、軽合金材やカーボン樹脂材からなり、その軽合金材としては、鉄より比重が小さい合金材で、アルミニウム合金材,チタン合金材やマグネシウム合金材などが例示される。
【0021】
また、前記内部材12は、略円柱状をなし、線材を編んだロープ材などが用いられ、このロープ材としては、ピアノ線や鋼線を撚ったワイヤーロープ材やアラミド繊維からなるアラミドロープ材などが例示され、アラミドロープ材としては、ケブラー(登録商標:デュポン社製)を用いることができる。また、内部材12には、カーボン樹脂線を撚ったカーボンロープ材や、チタン線を撚ったチタンロープ材などを用いることができ、ロープ材は可撓性を有する。
【0022】
また、前記抜止め部13としては、リング状をなす硬質部材が用いられる。前記抜止め部13は、内部材12の端部に加締めて固定され、あるいは内部材12及び抜止め部13がロウ付けや溶接可能なものであれば、ロウ付けや溶接により固定される。
【0023】
前記車両ロック装置1には、ロック機構21を設けている。このロック機構21は、前記ロック杆6の端部に中空部22を形成し、この中空部22内にシリンダ錠23を設け、このシリンダ錠23の内端にロック片24を設けてなる。また、前記ロック杆6には前記中空部22と該ロック杆6の外周面と連通する透孔25が穿設され、この透孔25に前記ロッド部2の外部材11の端部を回転可能又は回動不可に挿入し、前記中空部22に挿通した外部材11の係止部14に、前記ロック片24が係合することにより、ロック杆6にロッド部2が抜止め状態でロックされる。そして、そのロック状態から鍵23Aによりシリンダ錠23を回し、ロック片24を非係合位置とすることにより、ロック杆6からロッド部4を抜き取ることができる。また、ロック片24を係合位置に回す際も前記鍵23Aを用いる。尚、ロック杆6には、一対のロッド部2,2の一方のみに対応してロック機構21を設けてもよいし、一対のロッド部2,2にそれぞれ対応してロック機構21,21を設けるようにしてもよい。
【0024】
前記ロッド部2の一端は、その外部材11が前記固定杆3に固定され、前記内部材12の端部は、前記固定杆3内に回転可能に収納されている。尚、前記ロッド部2の外部材11の一端を前記固定杆3に回動可能に挿入し、又は回動可能に設け、前記内部材12の一端の抜止め部13を前記固定杆3に回動可能に係止して抜止め状態で連結すると共に、その外部材11に対して内部材12を回動可能に配置して、外部材11と内部材12とを互いに回動可能に設けるようにしてもよい。この場合、前記固定杆3内に、固定された前記ロック片を設け、このロック片を内部材12の一端の抜止め部13に係止すればよい。
【0025】
次に、前記構成につき、その作用を説明する。車両用ロック装置1は、ロック部材4を図示しない自動二輪車の車輪のリムの内側又はスポークの間に挿通し、ロッド部2,2の端部にロック杆6を固定し、この状態で二輪車の移動が規制される。
【0026】
ここで鋸101を用いてロッド部2を切断しようとすると、外部材11が回動可なら回転するため、外部材11を押さえる必要がある。外部材11の一部を切断し、鋸は101が内部材12に達すると、外部材11を押さえていても、内部材12が回転するため、内部材12を切断することができない。この場合、内部材12の両端の抜止め部13は、一端側が固定杆3内に収納され、他端側がロック杆6に収納されているから、抜止め部13を把持して内部材12の回止めを図ることができない。さらに、仮に外部材11の全周を切断して外部材11を分割しても、抜止め部13により、その分割部分を内部材12から抜き取ることができず、内部材12が露出することがない。
【0027】
一方、従来のロッド部が鋼製からなるものに比べて、軽量化が図られているから、携帯時に走行性能を損なったり、燃費に悪影響を与えたりすることもない。
【0028】
このように本実施例では、請求項1に対応して、車両たる自動二輪車の移動を規制するロッド部2を備えた車両用ロック装置において、ロッド部2が外部材11とこの外部材11内に挿入した内部材12とを備え、外部材11に対して内部材12を回動可能に設けたから、鋸101により切断しようとした場合、外部材11を切断しても、内部材12に鋸刃102が達すると、鋸刃102により内部材12が回転して切断し難くなり、防犯性に優れたものとなる。また、外部材11の材質を選定することにより、全体として軽量化を図ることができる。尚、外部材11と内部材12をそれぞれ独立して回動可能に設けてもよい。
【0029】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、内部材12は、外部材11に対して軸方向の移動が規制されているから、内部材12の軸方向の移動を規制することにより、外部材11が切断されても、外部材11の切断部分を内部材12から抜くことはできず、内部材12を押さえて鋸101で切断することを防止できる。
【0030】
このように本実施例では、請求項3に対応して、外部材11が軽合金材又はカーボン樹脂材からなるから、軽量化を図ることができる。
【0031】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、内部材12はロープ材からなるから、対切断強度を高め、防犯性を確保することができる。
【0032】
さらに、実施例上の効果として、外部材11と内部材12とを互いに回動可能に設けることにより、鋸101で外部材11を切断する場合、外部材11が回転しないように把持しなければならないから、防犯性を向上することができる。
【実施例2】
【0033】
図5は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0034】
この例の車両用ロック装置1は、1本のU字形のロッド部2により前記ロック部材4を構成し、その湾曲部を有するU字形のロッド部2は、前記外部材11に対して前記内部材12を回転可能に設け、前記ロッド部2の端部間に設けた前記開口部5を、前記ロック杆6により閉成する。
【0035】
このように本実施例でも、U字形のロッド部2が外部材11とこの外部材11内に挿入した内部材12とを備え、外部材11に対して内部材12を回動可能に設けたから、鋸101により切断しようとした場合、外部材11を切断しても、内部材12に鋸刃102が達すると、鋸刃102により内部材12が回転して切断し難くなり、防犯性に優れたものとなり、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0036】
また、この例では、U字形のロッド部2を用いることにより、ロッド部2が1本で済むと共に、前記固定杆3が不要となる。
【0037】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、内部材は切断強度の高いものであれば、ロープ材に限らず、各種のものを用いることができる。また、本発明の特質上、外部材は、切断強度が低くても軽量な材料を使用可能である。さらに、内部材の内部に更に他の部材を配置してもよい。また、実施例1では、真直ぐなロッド部を示したが、実施例2に示したように、外部材に対して内部材が回動可能であれば、ロッド部が曲がっていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 車両用ロック装置
2 ロッド部
11 外部材
12 内部材
13 抜止め部
21 ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の移動を規制するロッド部を備えた車両用ロック装置において、前記ロッド部が外部材とこの外部材内に挿入した内部材とを備え、前記外部材に対して前記内部材を回動可能に設けたことを特徴とする車両用ロック装置。
【請求項2】
前記内部材は、前記外部材に対して軸方向の移動が規制されていることを特徴とする請求項1記載の車両用ロック装置。
【請求項3】
前記外部材が軽合金材又はカーボン樹脂材からなることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ロック装置。
【請求項4】
前記内部材はロープ材からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−7007(P2011−7007A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154227(P2009−154227)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(390005430)株式会社ホンダアクセス (205)