説明

車両用内装材

【課題】皺等の発生がなく、優れた耐光性、引張特性及び耐摩耗性等を有する表皮層を備える車両用内装材を提供する。
【解決手段】表皮層111と基材層13aとを備える車両用内装材100であって、表皮層は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(EPDM等)、ポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン樹脂等)、ポリ乳酸樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS等)を含有し、エラストマーと樹脂との合計を100質量%とした場合に、オレフィン系熱可塑性エラストマーが20〜70質量%、ポリオレフィン樹脂が10〜50質量%、ポリ乳酸樹脂が5〜30質量%、スチレン系熱可塑性エラストマーが5〜30質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用内装材に関する。更に詳しくは、熱可塑性エラストマー及び植物由来材料であるポリ乳酸樹脂等を用いてなり、皺等の発生がなく、優れた耐光性、引張特性及び耐摩耗性等を有する表皮層を備える車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内装材の表皮材の製造に用いられている熱可塑性エラストマーは、従来の塩化ビニル樹脂に比べて環境の観点で好ましい材料として知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載された自動車内外装部品では、特定のスチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが用いられているが、原材料の全てが石油由来の材料である。一方、昨今の地球温暖化の問題に鑑み、植物由来材料を使用し、所謂、カーボンニュートラルの概念に基づいて二酸化炭素の発生量を低減させる必要性が高まっており、車両用内装材においても表皮材等の製造に植物由来材料の使用が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−231134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、植物由来材料の使用が必要となっているが、植物由来材料として用いられることが多いポリ乳酸樹脂は硬い樹脂であり、柔軟性が必要とされる表皮材の原材料としてそのまま用いるのは問題である。また、ポリ乳酸樹脂を熱可塑性エラストマーに均一に混合するのは容易ではなく、均一に分散し、混合されていない場合、成形時に表皮材がドローダウンして製品に皺が発生することがあり、耐光性、引張強さ等の引張特性、及び耐摩耗性などの表皮物性の低下が問題になることもある。更に、特許文献1に記載された自動車内外装部品のように、原材料の全てが石油由来の材料であれば、上記のような問題はないが、廃棄処分するときの二酸化炭素の発生は避けられず、環境の観点で好ましくない。
【0005】
本発明は、上記の従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、熱可塑性エラストマー及び植物由来材料であるポリ乳酸樹脂等を用いてなり、成形時にドローダウンし難く、皺等の発生がなく、ポリ乳酸樹脂を含有しているにもかかわらず、優れた耐光性を有し、且つ十分な引張特性及び耐摩耗性等を併せて有する表皮層を備える車両用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.表皮層と基材層とを備える車両用内装材であって、前記表皮層は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含有し、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー、前記ポリオレフィン樹脂、前記ポリ乳酸樹脂及び前記スチレン系熱可塑性エラストマーの合計を100質量%とした場合に、該オレフィン系熱可塑性エラストマーが20〜70質量%、該ポリオレフィン樹脂が10〜50質量%、該ポリ乳酸樹脂が5〜30質量%、該スチレン系熱可塑性エラストマーが5〜30質量%であることを特徴とする車両用内装材。
2.前記基材層は、天然繊維と、ポリ乳酸樹脂及びポリオレフィン樹脂のうちの少なくとも一方とを含有する前記1.に記載の車両用内装材。
3.前記表皮層と前記基材層との間に架橋発泡体層を備える前記2.に記載の車両用内装材。
4.前記基材層は、ポリウレタンフォーム層を備える前記1.に記載の車両用内装材。
5.前記ポリウレタンフォーム層は、植物由来の原料を用いてなる前記4.に記載の車両用内装材。
6.前記ポリウレタンフォーム層の、前記表皮層が積層されている面とは反対側の面に支持層が装着されている前記4.又は5.に記載の車両用内装材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用内装材によれば、ポリ乳酸樹脂とともに、所定量の特定の熱可塑性エラストマー等を併用しているため、熱可塑性エラストマー等との均一な混合が容易ではないポリ乳酸樹脂を、均一に分散させ、混合させることができる。そのため、皺の発生がなく、且つ優れた耐光性、引張特性、耐摩耗性等を有する表皮層を備える車両用内装材とすることができる。また、植物由来材料であるポリ乳酸樹脂を用いているため、環境の観点でも好ましい表皮層を備える車両用内装材とすることができる。
また、基材層が、天然繊維と、ポリ乳酸樹脂及びポリオレフィン樹脂のうちの少なくとも一方とを含有する場合は、十分な剛性等を有する車両用内装材とすることができるとともに、基材層に天然繊維が含有されるため、環境の観点でより好ましい車両用内装材とすることができる。
更に、表皮層と基材層との間に架橋発泡体層を備える場合は、表皮層と基材層とをより強固に接合させることができ、且つ柔軟であり、優れた触感を有する車両用内装材とすることができる。
また、基材層が、ポリウレタンフォーム層を備える場合は、このポリウレタンフォーム層がバッド層となり、優れたクッション性を有し、着座用シート等に好適な車両用内装材とすることができる。
更に、ポリウレタンフォーム層が、植物由来の原料を用いてなる場合は、基材層も環境の観点で好ましい素材により形成され、より好ましい車両用内装材とすることができる。
また、ポリウレタンフォーム層の、表皮層が積層されている面とは反対側の面に支持層が装着されている場合は、柔軟であるとともに、十分な剛性を有する車両用内装材とすることができ、且つ十分な強度等を有し、取り扱い易い支持プレートを用いるため、車両用内装材の製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】架橋発泡体層を備える本発明の車両用内装材の断面の模式図である。
【図2】基材層がポリウレタンフォーム層であり、且つ支持層を備える他の本発明の車両用内装材の断面の模式図である。
【図3】図1の車両用内装材を真空成形法により製造するときの工程の模式的な説明図である。
【図4】表皮層のシボ模様を真空成形時に設ける場合の成形工程の模式的な説明図である。
【図5】図2の車両用内装材を一体発泡成形法により製造するときの成形工程の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図を参照しながら詳しく説明する。
本発明の車両用内装材は、表皮層と基材層とを備え、表皮層は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含有し、エラストマーと樹脂との合計を100質量%とした場合に、オレフィン系熱可塑性エラストマーが20〜70質量%、ポリオレフィン樹脂が10〜50質量%、ポリ乳酸樹脂が5〜30質量%、スチレン系熱可塑性エラストマーが5〜30質量%である。
【0010】
[1]表皮層
前記「表皮層」は、必須の原材料として、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを用いて形成され、通常、この表皮層が車室内側を向くようにして配置され、表皮層の外表面が車両用内装材の意匠面となる。
【0011】
前記「オレフィン系熱可塑性エラストマー」は特に限定されないが、ハードセグメントとなるオレフィン系樹脂成分に、ソフトセグメントとなるゴム成分が分散され、含有されてなるオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。オレフィン系樹脂成分としては、オレフィン単独重合体、及び構成単位の全量を100モル%とした場合に、70モル%以上(100モル%の場合もある。)のオレフィン単位を有するオレフィン共重合体が挙げられる。単独重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。また、共重合体としては、エチレン/プロピレンランダム共重合体、エチレン/プロピレンブロック共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体及びエチレン/アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。これらのオレフィン系樹脂成分は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0012】
一方、ゴム成分も特に限定されず、オレフィン系ゴム、スチレン系ゴム、ウレタン系ゴム、アクリル系ゴム等が挙げられ、オレフィン系ゴム及びスチレン系ゴムが好ましい。これらのゴム成分は1種のみ含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
【0013】
オレフィン系ゴムとしては、エチレン/プロピレン共重合ゴム(EPR)、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン/1−ブテン共重合ゴム、エチレン/1−ブテン/非共役ジエン共重合ゴム、エチレン/プロピレン/1−ブテン共重合ゴム、エチレン/1−ヘキセン共重合ゴム、エチレン/酢酸ビニル共重合ゴム、エチレン/アクリル酸共重合ゴム等が挙げられる。これらの共重合ゴムは、ランダム共重合ゴム、ブロック共重合ゴム及びグラフト共重合ゴムのいずれであってもよい。また、非共役ジエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジシクロオクタジエン、1,2−ブタジエン等が挙げられる。これらのオレフィン系ゴムは1種のみ含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
尚、オレフィン系ゴムは、通常、構成単位の全量を100モル%とした場合に、50モル%以上のオレフィン単位を有する。但し、スチレン単位等の芳香族ビニル化合物単位は有さないか、有する場合は5モル%以下である。
【0014】
スチレン系ゴムとしては、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合ゴム、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合ゴム、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合ゴム、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合ゴム、スチレン/ブタジエンランダム共重合ゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、及びこれらのゴムの水添物等が挙げられる。これらのスチレン系ゴムは1種のみ含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
尚、スチレン系ゴムは、通常、構成単位の全量を100モル%とした場合に、5モル%を超える芳香族ビニル系化合物単位を含有する。
【0015】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系樹脂成分にオレフィン系ゴム成分が分散され、含有されてなるエラストマーが好ましい。この場合、オレフィン系樹脂成分は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン/プロピレン共重合体のうちの少なくとも1種であることが好ましく、特にエチレン/プロピレン共重合体が好ましい。また、オレフィン系ゴム成分としては、EPR及び/又はEPDMが好ましい。
【0016】
また、オレフィン系樹脂成分にオレフィン系ゴム成分が分散され、含有されてなるオレフィン系熱可塑性エラストマーでは、オレフィン系樹脂成分とオレフィン系ゴム成分とが架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよいが、少なくとも一部が架橋されていることが好ましい。更に、このエラストマーでは、全体を100質量%とした場合に、オレフィン系ゴム成分は90質量%以下であることが好ましい。オレフィン系ゴム成分の含有量が90質量%以下であれば、樹脂成分とゴム成分とを、より容易に混合することができる。
【0017】
オレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、三井化学社製、商品名「ミラストマー」、三井化学社製、商品名「タフマー」、三菱化学社製、商品名「サーモラン」、三菱化学社製、商品名「ゼラス」、住友化学社製、商品名「エスポレックスTPE」、住友化学社製、商品名「タフセレン」、JSR社製、商品名「エクセリンク」、AESジャパン社製、商品名「サントプレーン」等が挙げられる。これらのエラストマーは1種のみ含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
【0018】
前記「ポリオレフィン樹脂」は特に限定されないが、オレフィン単位を主たる構成単位とする樹脂である。この樹脂は、構成単位の全量を100モル%とした場合に、通常、80モル%以上のオレフィン単位を有する。この樹脂の製造に用いられるオレフィンとしては、エチレン及びプロピレンの他、1−ブテン、1−ペンテン、1―ヘキセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン等が挙げられる。これらのオレフィンは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0019】
ポリオレフィン樹脂の構成単位は、エチレン単位及び/又はプロピレン単位であることが好ましい。また、構成単位の全量を100モル%とした場合に、エチレン単位及びプロピレン単位の合計が80モル%以上、特に85モル%、更に90モル%以上(100モル%、即ち、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体であってもよい。)であることがより好ましい。更に、2種以上の構成単位を有する場合、即ち、共重合体である場合は、ランダム共重合体(例えば、エチレン/プロピレンランダム共重合体)であってもよく、ブロック共重合体(例えば、エチレン/プロピレンブロック共重合体)であってもよい。
【0020】
前記「ポリ乳酸樹脂」は、乳酸単位及び/又はラクチド単位(以下、これらを単に「乳酸単位」ということもある。)を主たる構成単位とする樹脂である。乳酸にはL−乳酸及びD−乳酸があり、ラクチドにはL−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド及びDL−ラクチドがあるが、これらは各々1種のみ用いてもよく、2種を併用してもよい。また、乳酸単位の割合は特に限定されないが、ポリ乳酸樹脂の構成単位の全量を100モル%とした場合に、乳酸単位は、通常、70モル%以上(100モル%であってもよい。)であることが好ましい。
【0021】
乳酸単位を除く他の構成単位を有する場合、この他の構成単位は、ポリ乳酸樹脂の構成単位の全量を100モル%とした場合に、通常、30モル%以下であり、10モル%以下(他の構成単位を有する場合、通常、1モル%以上)であることが好ましい。この他の構成単位となる単量体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の多価カルボン酸、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、及びグリコリド、ε−カプロラクトン等のラクトン等が挙げられる。これらの他の単量体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
更に、ポリ乳酸樹脂と、他の樹脂とを併用することもでき、この他の樹脂としては、ポリエステル樹脂としては、特には限定されないが、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−β−ブチロラクトン、ポリ−γ−ブチロラクトン、ポリグリコール酸、ポリリンゴ酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ブチレンサクシネート/アジペート共重合樹脂等のポリエステル樹脂が挙げられる。これらのポリエステル樹脂は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記「スチレン系熱可塑性エラストマー」は、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を有する共重合体であり、通常、この構成単位は芳香族ビニル重合体ブロックとして含有され、ハードセグメントとなる。また、スチレン系熱可塑性エラストマーは、水素化されていてもよく、水素化されていなくてもよいが、特にオレフィン系熱可塑性樹脂と併用される場合は、水素化されたスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0024】
芳香族ビニル化合物は特に限定されず、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン等のアルキル置換スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレンが特に好ましい。これらの芳香族ビニル化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常、構成単位の全量を100モル%とした場合に、5モル%以上(通常、80モル%以下)の芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を有する。
【0025】
また、ハードセグメントとなる芳香族ビニル重合体ブロックを除く他の構成部分は、エラストマー性が発現され、ソフトセグメントとして機能する限り、どのような単量体を用いて形成されていてもよいが、通常、共役ジエンを用いて形成される。この共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらの共役ジエンは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、水素化されたエラストマー及び/又は水素化されていないエラストマーを用いることができる。水素化されたスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、水添スチレン/ブタジエンランダム共重合体等の水添スチレン/ブタジエン共重合体、及び水添スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体等の水添スチレン/イソプレン共重合体、水添スチレン/エチレン/ブテン/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。一方、水素化されていないスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体等のスチレン/ブタジエン共重合体、及びスチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体等のスチレン/イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0027】
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、旭化成社製、商品名「タフテック」(タフテックHシリーズ及びタフテックPシリーズ)、旭化成社製、商品名「タフプレン」、旭化成社製、商品名「アサプレン」、旭化成社製、商品名「ソルプレン」、クラレ社製、商品名「セプトン」、クラレ社製、商品名「ハイブラー」、クレイトンポリマー・ジャパン社製、商品名「クレイトンG」、JSR社製、商品名「ダイナロン」、JSR社製、商品名「JSR−TR」、JSR社製、商品名「JSR−SIS」、住友化学社製、商品名「エスポレックスSB」、三菱化学社製、商品名「ラバロン」、電気化学社製、商品名「電化STR」、日本ゼオン社製、商品名「クインタック」、ケンテクノス社製、商品名「レオストマーリ」等が挙げられる。これらのエラストマーは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
表皮層には、前記のエラストマー及び樹脂を除く他の成分を含有させることができる。この他の成分の含有量は特に限定されないが、通常、前記のエラストマー及び樹脂の合計を100質量部とした場合に、10質量部以下であることが好ましい。他の成分としては、フェノール系、リン系等の各種の酸化防止剤、ヒンダードアミン系等の各種の光安定剤、ベンゾトリアゾール系等の各種の紫外線吸収剤、ステアリン酸化合物等の滑剤、帯電防止剤、鉱物油、プロセスオイル等の軟化剤、可塑剤、顔料、タルク等の充填剤、難燃剤、難燃助剤、抗菌剤、及び防臭剤などが挙げられる。これらの他の成分は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
表皮層は、前記のように、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含有し、各々のエラストマー及び樹脂の含有量は、これらのエラストマー及び樹脂の合計を100質量%とした場合に、オレフィン系熱可塑性エラストマーが20〜70質量%、ポリオレフィン樹脂が10〜50質量%、ポリ乳酸樹脂が5〜30質量%、スチレン系熱可塑性エラストマーが5〜30質量%である。また、オレフィン系熱可塑性エラストマーが35〜65質量%、ポリオレフィン樹脂が15〜45質量%、ポリ乳酸樹脂が5〜20質量%、スチレン系熱可塑性エラストマーが5〜20質量%であることが好ましく、オレフィン系熱可塑性エラストマーが40〜60質量%、ポリオレフィン樹脂が20〜40質量%、ポリ乳酸樹脂が5〜15質量%、スチレン系熱可塑性エラストマーが5〜15質量%であることがより好ましい。
【0030】
オレフィン系熱可塑性エラストマーが20〜70質量%、ポリオレフィン樹脂が10〜50質量%、ポリ乳酸樹脂が5〜30質量%、スチレン系熱可塑性エラストマーが5〜30質量%であれば、スチレン系熱可塑性エラストマーが相溶化剤として十分に作用し、通常、均一な分散、混合が容易ではない、他の3種類のエラストマー及び樹脂を均一に分散させ、混合させることができる。また、皺の発生が防止され、耐光性及び引張特性、耐摩耗性等の物性の低下も抑えられる。更に、ポリ乳酸樹脂を用いることにより、石油由来の材料の使用量を低減させることができ、環境の観点でも好ましい。
【0031】
表皮層の厚さは特に限定されないが、0.2〜1.5mmとすることができる。表皮層の厚さが0.2〜1.5mmであれば、真空成形時等に、成形後、表皮層となる表皮材が十分な強度等を有し、且つ優れた賦形性を有するため好ましい。また、特に引っ掻き及び突き刺し等に対する高い耐久性を有し、車両用内装材として好適な特性を有する表皮層とすることができる。この表皮層の厚さは、0.3〜1.4mm、特に0.4〜1.3mmであることが好ましい。
【0032】
表皮層の硬度も特に限定されないが、ショアA硬さが70〜90であることが好ましい。ショアA硬さが70〜90であれば、真空成形時等に、成形後、表皮層となる表皮材が十分な強度等を有し、且つ優れた賦形性を有するため好ましい。また、特に引っ掻き及び突き刺し等に対する高い耐久性を有し、車両用内装材として好適な特性を有する表皮層とすることができる。このショアA硬さは、75〜85、特に77〜83であることがより好ましい。
【0033】
更に、表皮層は、その外表面(車両用内装材の意匠面になる面)に型成形された凹凸模様(図1、2の符号11aのシボ模様参照)を有していてもよい。この凹凸模様としては、シボ模様、梨地模様及びヘアーライン模様等が挙げられる。これらの凹凸模様は1種のみ設けられていてもよく、2種以上設けられていてもよい。凹凸模様は、周面に凹凸模様が設けられたロールに表皮材を圧締させ、この凹凸模様を転写させることにより形成することができる。また、型成形により設けることもでき、加熱された表皮材の一面を、凹凸模様が設けられた金型に押し当て、この凹凸模様を転写させることにより形成することもできる。表皮層が凹凸模様を有する場合、装飾効果により美麗な意匠面とすることができ、且つ表皮層の触感が向上し、更には耐摩擦性も向上する。
【0034】
真空成形等により車両用内装材の表皮層となる表皮材の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、Tダイが取り付けられた押出成形機により成形する方法、及びカレンダー成形法等により製造することができる。また、表皮材は、必要に応じて一軸又は二軸延伸して、引張強さ等を向上させることもできる。
【0035】
[2]基材層
(1)熱可塑性樹脂を用いてなる基材層
前記「基材層」は、表皮層を支持する層であり、車両用内装材の基体として、容易に成形することができ、且つ十分な剛性等を有しておればよく、特に限定されない。この基材層としては、成形性、物性等の観点で、少なくとも熱可塑性樹脂を用いてなる基材層を用いることができる。
【0036】
基材層の形成に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂を使用することができる。この熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂)、及びMBS樹脂(メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合樹脂)等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうちでは、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
ポリオレフィン樹脂としては、前記の表皮層の形成に用いられるポリオレフィン樹脂として例示された各種のポリオレフィン樹脂を特に限定されることなく使用することができる。また、前記と同様に、エチレン単位及び/又はプロピレン単位を有するポリオレフィン樹脂が好ましく、エチレン単位及びプロピレン単位の合計が80モル%以上、特に85モル%、更に90モル%以上(100モル%、即ち、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンランダム共重合体、エチレン/プロピレンブロック共重合体であってもよい。)であることが特に好ましい。このポリオレフィン樹脂は、前記の表皮層の形成に用いられるポリオレフィン樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
ポリエステル樹脂としては、芳香族ポリエステル樹脂及び脂肪族ポリエステル樹脂等が挙げられる。芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。また、脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸樹脂等が挙げられる。このポリ乳酸樹脂は、原料として天然素材を用いることができ、環境の観点で好ましい。また、優れた機械的特性及び耐久性等を有する基材層とすることもできる。このポリ乳酸樹脂としては、前記の表皮層の形成に用いられるポリ乳酸樹脂として例示された各種のポリ乳酸樹脂を特に限定されることなく使用することができる。これらのポリエステル樹脂は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
更に、基材層の形成には、熱可塑性樹脂とともに、天然素材、例えば、天然繊維及び非繊維質植物性材料を用いることができる。これらのうち、天然繊維としては、植物性繊維及び獣毛繊維、絹繊維等の蛋白繊維などが挙げられ、植物性繊維が好ましい。また、非繊維質植物性材料としては、植物の木質部を細分化した材料等が挙げられる。即ち、木質部の破砕物及び粉砕物等を用いることができる。より具体的には、ケナフコア及び木粉等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、スギ及びヒノキ等の針葉樹、広葉樹及び綿花などの各種の植物が有する繊維が挙げられる。これらの植物性繊維は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0041】
また、植物性繊維として用いる植物の部位は、繊維を採取できればよく、特に限定されず、非木質部、茎部、根部、葉部及び木質部等のうちのいずれの部位でもよく、2箇所以上の異なる部位から繊維を採取してもよい。各々の部位から採取される繊維としては、靱皮繊維(ケナフ、ローゼル、アサ、アマ、ラミー、ジュート及びヘンプ等)、種子毛繊維(綿等)、葉脈繊維(マニラ麻及びサイザル麻等)、及び果実繊維(ココヤシ等)などが挙げられる。
【0042】
植物性繊維を採取する植物としては、成長が早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献することができるケナフが好ましい。更に、このケナフの靭皮には、60質量%以上と高い割合でセルロース分が含有されており、植物性繊維としては、ケナフ靭皮から採取されるケナフ繊維が特に好ましい。このケナフは、木質茎を有する早育性の一年草であり、アオイ科に分類される植物である。学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等、及び通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が挙げられる。
【0043】
天然繊維、特に植物性繊維の平均繊維長及び平均繊維径は特に限定されないが、平均繊維長が10mm以上であれば、優れた機械的特性を有する基材層とすることができるため好ましい。この平均繊維長は10〜150mm、特に20〜100mm、更に30〜80mmであることがより好ましい。この平均繊維長は、JIS L1015に準拠し、直接法にて無作為に単繊維を1本づつ取り出し、伸張させずに真っ直ぐに伸ばし、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。一方、平均繊維径が1mm以下であれば、優れた機械的特性を有する基材層とすることができるため好ましい。この平均繊維径は0.01〜1mm、特に0.05〜0.7mm、更に0.07〜0.5mmであることがより好ましい。この平均繊維径は、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央における繊維径を光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
【0044】
天然繊維及び非繊維質植物性材料は、反応性官能基を有するカップリング剤等により、併用される熱可塑性樹脂との親和性を向上させること等を目的として予備処理することができる。このカップリング剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、アクリル系化合物及びエポキシ化合物等が挙げられる。
【0045】
基材層の形成に熱可塑性樹脂と天然繊維、特に植物性繊維とを併用する場合、各々の配合量は特に限定されず、熱可塑性樹脂と天然繊維との合計を100質量%とした場合に、熱可塑性樹脂は5〜90質量%、特に10〜80質量%、更に20〜70質量%とすることができる。また、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を使用し、且つ天然繊維としてケナフ繊維を使用する場合は、ポリプロピレン樹脂とケナフ繊維との合計を100質量%とした場合に、ポリプロピレン樹脂は10〜90質量%、特に20〜80質量%、更に30〜70質量%とすることができる。
【0046】
基材層の厚さも特に限定されないが、10mm以下であることが好ましい。基材層の厚さが10mm以下であれば、例えば、真空成形時等に、基材層となる機材が優れた賦形性を有し、且つ表皮層等の他の層を十分に支持することができる支持層になるとともに、十分な機械的特性を有する車両用内装材とすることができる。この厚さは0.1〜5.0mm、特に1.0〜3.0mmであることがより好ましい。
【0047】
基材層の形成方法は特に限定されない。基材層は、例えば、(a)熱可塑性樹脂繊維と天然繊維とを、エアレイ法により混繊させ、堆積させる等の方法により形成した繊維マットを加熱圧縮する、(b)媒体に熱可塑性樹脂を分散させてなるエマルジョン、サスペンジョン等の分散液を、天然繊維に噴霧し、樹脂を含浸させ、これを加熱し、乾燥した後、エアレイ法等により堆積させてなる樹脂含浸繊維マットを加熱圧縮する、(c)媒体に熱可塑性樹脂を分散させてなるエマルジョン、サスペンジョン等の分散液に、天然繊維を用いてなる不織布を浸漬した後、乾燥してなる樹脂含浸繊維マットを加熱圧縮する、などの方法により形成することができる。これらの(a)〜(c)の形成方法はいずれを採用してもよく、2種以上の方法を併用してもよい。更に、基材層は、他の方法により形成してもよい。
【0048】
前記(a)〜(c)の形成方法のうちでは、繊維マットに含有される天然繊維と熱可塑性樹脂とをより均一に分散されることができる(b)及び(c)の方法が好ましい。また、工程が簡略化され、製造コストを低く抑えることができ、且つ生産性が高く、量産に適している(a)の方法が好ましい。これらの形成方法のうちでは、生産性が高く、量産に適した(a)の方法がより好ましい。
【0049】
更に、(a)の方法の場合、熱可塑性樹脂繊維と天然繊維との混繊方法も特に限定されず、エアレイ法の他、例えば、フリース法、カード法等の各種の混繊方法を用いることができる。これらの混繊方法は1種のみでもよく、2種以上を併用してもよい。また、混繊の後、繊維を交絡させてもよく、交絡方法は特に限定されないが、例えば、ニードルパンチ法、ステッチボンド法等の各種の交絡方法を用いることができる。これらの交絡方法は1種のみでもよく、2種以上を併用してもよい。更に、繊維マットの加熱圧縮の条件も特に限定されず、熱可塑性樹脂繊維の種類等にもよるが、例えば、温度は170〜240℃、圧力は1〜2MPaとすることができる。
【0050】
(2)ポリウレタンフォーム層
基材層は、ポリウレタンフォームにより形成することもできる。この基材層は柔軟であり、優れたクッション性を有するため、車両用内装材のうちでも、シート材として好適であり、ポリウレタンフォーム層は車両用シートのパッド材として機能する。
【0051】
ポリウレタンフォーム層は、ポリオール、ポリイソシアネート、架橋剤、触媒、発泡剤、整泡剤等を含有するフォーム原料を用いて形成することができる。
ポリオールは特に限定されず、ポリウレタンフォームの製造に用いられる各種のポリオールを使用することができる。また、ポリオールとして植物由来のひまし油ポリオールを用いることもでき、ひまし油ポリオールを使用すれば、環境の観点で好ましい。更に、ひまし油ポリオールを除く他のポリオールは、平均官能基数が2.0〜6.0であり、且つ水酸基価が20〜800mgKOH/gであることが好ましい。このようなポリオールを使用すれば、圧縮残留歪みが小さく、優れた伸び等を有するポリウレタンフォーム層とすることができる。
【0052】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオール及びポリマーポリオールが好ましい。これらのポリオールは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子量のアルコール類、アミン類、アミノアルコール類、及びフェノール類を開始剤として、エチレンオキサイド(以下、「EO」と略記する。)、プロピレンオキサイド(以下、「PO」と略記する。)等を付加重合させたポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールが好ましく、POとEOとをブロック付加重合させたポリオール、及び末端にEOを付加させたオキシエチレン単位の含有量が5〜50質量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールが好ましい。オキシエチレン単位の含有量が5〜50質量%であれば、フォーム原料の硬化が容易であり、連泡タイプのフォームとすることができる。
【0054】
ポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオール中で、スチレン、アクリロニトリル等のエチレン性不飽和モノマーを重合させる方法、別途製造した重合体微粒子をポリエーテルポリオールに混合する方法、エチレン性不飽和基を有するマクロモノマーとエチレン性不飽和モノマーをポリエーテルポリオール中で重合させる方法等により製造される。これらのうちでは、ポリエーテルポリオール中でエチレン性不飽和モノマーを重合させたポリオールが好ましく、ポリオキシプロピレントリオール中でエチレン性不飽和モノマーを重合させたポリオールがより好ましい。また、重合体微粒子を混合する方法では、重合体微粒子の含有量は、ポリエーテルポリオールを100質量部とした場合に、50質量部以下、特に30質量部以下であることが好ましい。重合体微粒子の含有量が50質量部を超えると、ポリマーポリオールの粘度が高くなり、フォーム成形時の作業性が低下する。
【0055】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物等と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の低分子量アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子量アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子量アミノアルコール類との脱水縮合反応により生成するポリエステルポリオール、低分子量アルコール類、低分子量アミノアルコール類等を開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類を開環重合させてなるラクトン系ポリエステルポリオール、及びポリエステルアミドポリオールなどが挙げられる。
【0056】
ひまし油ポリオールは、ひまし油に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加させることにより生成するポリオールであり、そのヒドロキシル基の1級化率はフォーム原料の硬化性の観点から10モル%以上であることが好ましく、水酸基価は20〜350mgKOH/gであることが好ましい。アルキレンオキサイドとしては、EO、PO、ラトラヒドロフラン等が挙げられ、これらはひまし油にランダム又はブロック付加させることができる。これらのアルキレンオキサイドは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0057】
ひまし油ポリオールと、他のポリオールとの配合比は特に限定されないが、質量比で、15/85〜50/50、特に20/80〜40/60、更に25/75〜35/65であることが好ましい。ひまし油ポリオールと、他のポリオールとの質量比が15/85〜50/50であれば、フォーム原料の硬化が容易であり、且つ優れた反発弾性を有し、圧縮残留歪みが小さく、十分な硬度を有するポリウレタンフォーム層とすることができる。
【0058】
ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)系と、トリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と略記する。)系とを併用する。MDI系としては、2,2’−MDI、2,4’−MDI、4,4’−MDI等を用いることができる。この他、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、及びこれらのウレタン変性物等が挙げられる。また、TDI系としては、2,4−TDI、2,6−TDI、及びこれらのカルボジイミド変性体等が挙げられる。MDI系とTDI系との質量比は特に限定されないが、MDI系/TDI系が、95/5〜55/45、特に85/15〜65/35、更に75/25〜75/25であることが好ましい。MDI系/TDI系が95/5〜55/45であれば、硬化が容易であり、且つ優れた反発弾性を有し、圧縮残留歪みが小さく、十分な硬度を有するポリウレタンフォーム層とすることができる。ポリイソシアネートとしては、MDI系及びTDI系を除く他のポリイソシアネートを用いることもできるが、その場合、他のポリイソシアネートは、ポリイソシアネートの全量を100質量%とした場合に、10質量%以下、特に5質量%以下であることが好ましい。
【0059】
架橋剤としては、通常、ポリウレタンフォームの製造に用いられている架橋剤を特に限定されることなく使用することができる。この架橋剤としては、低分子量アルコール類、低分子量アミン類、低分子量アミノアルコール類等の、分子量が500未満であり、少なくとも2個の活性水素基を有する化合物を用いることができる。架橋剤としては、イソシアネート基との反応が緩やかである低分子量アミノアルコール類、特にジエタノールアミンが好ましい。これらの架橋剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。架橋剤の配合量は、ポリオールを100質量部とした場合に、10質量部以下、特に5質量部以下(通常、1質量部以上)であることが好ましい。
【0060】
触媒としては、通常、ポリウレタンフォームの製造に用いられている触媒を特に限定されることなく使用することができる。この触媒としては、3級アミン、ジアザビシクロアルケン類及びその塩類、有機金属化合物等を用いることができ、3級アミンが好ましい。3級アミンとしては、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N′,N′−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジメチルイミダゾール等が挙げられる。有機金属化合物としては、錫、鉛、ジルコニウム等の各種の金属と、オクテン酸、ナフテン酸等の有機酸との金属塩、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート等が挙げられる。これらの触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。触媒の配合量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.03〜2.0質量部、特に0.03〜1.5質量部であることが好ましい。触媒の配合量が0.03〜2.0質量部であれば、フォーム原料の硬化が容易であり、成形性も良好である。
【0061】
発泡剤としては、通常、ポリウレタンフォームの製造に用いられている発泡剤を特に限定されることなく使用することができる。発泡剤としては水が多用され、この水の他、例えば、不活性低沸点溶剤と反応性発泡剤の2種が挙げられる。不活性低沸点溶剤としては、ジクロルメタン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、イソペンタン等が挙げられる。反応性発泡剤としては、室温より高い温度で分解して気体を発生する、例えば、アゾ化合物等が挙げられる。これらの発泡剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。発泡剤の配合量は、ポリオールを100質量部とした場合に、1.0〜5.0質量部、特に1.5〜4.0質量部であることが好ましい。発泡剤の配合量が1.0〜5.0質量部であれば、独泡タイプのフォームとなり、フォーム表面に陥没等を生じることもない。
【0062】
整泡剤としては、通常、ポリウレタンフォームの製造に用いられている整泡剤を特に限定されることなく使用することができる。この整泡剤としては、ポリジメチルシロキサン/ポリアルキレンオキシドブロック共重合体、及びビニルシラン/ポリアルキレンポリオール共重合体等が挙げられる。これらの整泡剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。整泡剤の配合量は、ポリオールを100質量部とした場合に、3.0質量部以下、特に2.0質量部以下(通常、0.5質量部以上)であることが好ましい。
【0063】
ポリウレタンフォーム層となるフォームの製造には、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤、内部離型剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、抗黴剤等の各種の添加剤及び助剤を、必要に応じて用いることができる。
【0064】
ポリウレタンフォーム層の形成方法は特に限定されず、例えば、真空成形法等により、上型と下型との間の空間に、イソシアネートインデックスが70〜140、特に80〜120となる条件でフォーム原料を注入し、反応させ、硬化させることにより形成することができる。また、必要に応じて、フォーム原料及び/又は成形型を加熱し、反応、硬化を促進させることもできる。更に、フォーム原料は少なくとも1個の混合ヘッドを使用し、好ましくは離型剤が塗布された型間の空間に注入され、通常、例えば、常温から70℃程度までの温度範囲で反応させ、発泡、硬化させることにより形成することができる。
【0065】
[3]架橋発泡体層
(1)樹脂
架橋発泡体層の形成に用いられる樹脂は特に限定されない。この樹脂としては、ポリオレフィン樹脂を用いることができる。このポリオレフィン樹脂としては、前記の表皮層の形成、及び前記の基材層の形成、に用いられるポリオレフィン樹脂として例示された各種のポリオレフィン樹脂を用いることができる。また、前記と同様に、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン/プロピレンランダム共重合樹脂、エチレン/プロピレンブロック共重合樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂がより好ましい。更に、樹脂としては、ポリ乳酸樹脂を用いることもできる。このポリ乳酸樹脂としては、前記の表皮層の形成、及び前記の基材層の形成に用いられるポリ乳酸樹脂として例示された各種のポリ乳酸樹脂を用いることができる。
【0066】
架橋発泡体層は、樹脂、必要に応じて配合される架橋助剤及び発泡剤等が含有される架橋発泡性樹脂組成物が、架橋され、且つ発泡されてなる架橋発泡シートにより形成される。この架橋発泡体層を備えることにより、十分に柔軟な車両用内装材とすることができる。
【0067】
(2)架橋助剤
架橋助剤は、特に、ポリプロピレン樹脂及びポリ乳酸樹脂を架橋させるために配合され、通常、架橋させることが困難なこれらの樹脂を架橋させることができる。一方、ポリエチレン樹脂は架橋助剤を配合しなくても容易に架橋させることができる。このように、樹脂を架橋させることにより、優れた耐熱性及び成形性等を有する架橋発泡体層とすることができる。架橋助剤としては、通常、分子内に少なくとも2個の官能基を有する多官能性モノマーが用いられる。
【0068】
架橋助剤としては、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、N−フェニルマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド等が挙げられる。これらのうちでは、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、及びトリメチロールプロパントリメタクリレートが好ましい。これらの架橋助剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
架橋助剤は、用いる樹脂、特に、ポリオレフィン樹脂等の合計を100質量部とした場合に、1〜7質量部、特に3〜5質量部配合することが好ましい。架橋助剤の配合量が1〜10質量部であれば、効率よく架橋させることができる。
【0070】
(3)発泡剤
架橋発泡性樹脂組成物には、通常、発泡剤が配合される。この発泡剤の種類は特に限定されず、種々の発泡剤を用いることができるが、熱分解型発泡剤、特に有機熱分解型発泡剤が好ましい。この有機熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。これらの発泡剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
発泡剤の配合量は特に限定されないが、樹脂と架橋助剤との合計を100質量部とした場合に、通常、1〜50質量部とすることができ、1〜25質量部であることが好ましい。発泡剤の配合量が1〜50質量部であれば、組成物を容易に発泡させることができ、優れた機械的特性及び耐熱性等を有する架橋発泡体層とすることができる。
【0072】
(4)その他の成分
架橋発泡性樹脂組成物には、樹脂、架橋助剤、発泡剤及び分解温度調節剤の他にも各種の成分を配合することができる。この他の成分としては、多官能カルボジイミド化合物、多官能エポキシ化合物等の末端封鎖剤、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、生分解促進剤、発泡剤分解促進剤、ブロッキング防止剤、増粘剤、気泡安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、軟化剤、可塑剤、顔料、充填剤、難燃剤、難燃助剤、抗菌剤、及び防臭剤等が挙げられる。これらの他の成分は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
(5)架橋発泡性樹脂組成物の調製、並びにその架橋及び発泡
架橋及び発泡されて架橋発泡シートとなる架橋発泡性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、通常、樹脂及び架橋助剤が含有される樹脂組成物と発泡剤とを混合し、その後、押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、及びミキシングロール等の各種の混練機により、発泡剤の分解温度(発泡温度)未満の温度で溶融混練して調製することができる。また、この架橋発泡性樹脂組成物は、溶融混練後、通常、シート状に成形される。
【0074】
次いで、シート状に成形された架橋発泡性樹脂組成物は、架橋され、発泡される。架橋方法は特に限定されず、種々の方法を採用することができる。例えば、電離放射線照射による架橋、及び有機過酸化物を用いる化学架橋が挙げられ、これらの架橋方法は併用することもできる。これらのうちでは、電離放射線照射による架橋が好ましい。この電離放射線照射における電離放射線としては、電子線、X線、β線及びγ線等が挙げられ、電子線が用いられることが多い。また、電離放射線の照射量は特に限定されないが、1〜200kGy、特に1〜100kGyであることが好ましい。この電離放射線照射により、成形体が架橋され、その後、発泡剤の分解温度以上に加熱し、発泡させることにより、架橋発泡シートを形成することができる。
【0075】
発泡方法も特に限定されず、発泡剤の種類等により種々の方法を採用することができる。発泡剤として、熱分解型発泡剤を用いる場合は、発泡剤の分解温度以上であり、且つ最も高融点の樹脂の融点以上の温度(例えば、190〜290℃)にまで架橋発泡性樹脂組成物、又は既に成形され、架橋された発泡性樹脂成形体を加熱し、発泡させることができる。この際の加熱方法は特に限定されないが、例えば、熱風、赤外線、及びオイルバス等を用いた各種の方法が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
(6)架橋発泡体層の形態
架橋発泡シートの厚さは特に限定されないが、0.5〜3.0mm、特に0.5〜2.0mm、更に0.7〜1.5mmであることが好ましい。この厚さが0.5〜3.0mmであれば、特に真空成形法において優れた賦形性を有し、十分な機械的特性を有する架橋発泡体層とすることができる。また、特に引っ掻き及び突き刺し等に対して高い耐久性を有する架橋発泡体層とすることができるため、車両用内装材の構成部材として好適である。
【0077】
[4]支持層
ポリウレタンフォーム層を基材層とする場合、その基材層を支持すべく、車両用内装材は、通常、金属材料又は合成樹脂材料を用いて製造され、ポリウレタンフォーム層からなる基材層の表皮層とは反対側に支持層が装着される。支持層はポリウレタンフォーム層を受けるため、プレート状に形成されている。支持層に用いる材料として、金属では、鉄、アルミニウム、マグネシウム等が挙げられ、強度及び成形性等の観点で鉄が好ましい。また、合成樹脂材料では、ポリプロピレン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。更に、金属材料と合成樹脂材料との複合材でもよい。この支持層の厚さは特に限定されないが、0.5〜5.0mm、特に0.8〜3.0mmとすることができる。
【0078】
[5]車両用内装材の製造方法
本発明の車両用内装材の製造方法は特に限定されず、例えば、以下のようにして製造することができる。
基材層が熱可塑性樹脂シートからなる場合、車両用内装材100は、表皮層11と基材層13aとを備え、通常、表皮層11と基材層13aとの間に、架橋発泡体層12が介装される。また、表皮層11の車両用内装材100の意匠面となる一面には、通常、凹凸模様(シボ模様)11aが設けられる(図1参照)。この車両用内装材100は、表皮層11となる表皮材111と架橋発泡体層12となる架橋発泡シート121とが貼り合わされた複層シート30と、基材層13となる基材131とが真空成形(図3及び図4参照)等の成形方法により一体に積層され、接合されて製造される。
【0079】
複層シートの形成方法は特に限定されず、例えば、(1)表皮材と架橋発泡シートとをウレタン系接着剤及び酢酸エマルジョン系接着剤等の接着剤により貼り合わせる、(2)表皮材と架橋発泡シートとを接着性樹脂フィルム等により貼り合わせる、(3)表皮材及び/又は架橋発泡シートの一面を加熱し、その後、圧着して貼り合わせる、(4)架橋発泡シートの一面に、表皮層となる組成物を押出成形機等から押し出して貼り合わせる、等の各種の方法が挙げられる。
複層シートは上記(1)〜(4)のいずれの方法により形成してもよく、他の方法により形成してもよい。
【0080】
また、前記のように、表皮層には、車両用内装材となったときに意匠面となる一面に凹凸模様を設けることができるが、この凹凸模様は、どの時点で設けてもよい。凹凸模様は、例えば、(1)表皮材を製造するときに同時に形成する、(2)複層シートを製造するときに形成する、(3)後記の真空成形のときに形成する、等のいずれの時点で設けてもよい。
【0081】
基材層がポリウレタンフォーム層からなる場合、車両用内装材200は、表皮層11と基材層13bとを備え、通常、基材層13bの表皮層11が積層されている面とは反対側の面に支持層14が接合され、積層される(図2参照)。この車両用内装材200は、表皮層11となる表皮材111と支持層14となる支持プレート141との間の空間にフォーム原料が注入され、反応、硬化され、表皮材111と発泡体15と支持プレート141とが、互いに接合され、一体化される一体発泡成形(図5参照)等の成形方法により製造される。
【0082】
車両用内装材は、前記のように、真空成形法により製造することができる。この真空成形法としては、例えば、予め所望の形状に予備成形しておいた基材層に、加熱された複層シートを、真空成形と同時に貼り合わせる方法が挙げられる。更に、このような真空成形法としては、雄引き真空成形法、雌引き真空成形法、これらの両法を用いた真空成形法、雄引き真空成形と同時にプラグアシスト等により成形する方法、及び上下金型でプレスすると同時に真空引きする真空成形方法、等の各種の方法が挙げられる。
【0083】
より具体的には、基材層が熱可塑性樹脂シートからなる場合、例えば、図3及び図4に記載された真空成形法が挙げられる。
図3に記載された真空成形法は、金型22に基材131を載置し、その後、基材131上に、例えば、120〜160℃に加熱し、軟化させた複層シート30を被せ、次いで、金型22により吸引し、その後、車両用内装材100を脱型させる真空成形法である。この場合、複層シート30は、前記(1)〜(3)の方法により形成することができる。
【0084】
図4に記載された真空成形法は、上型21に、複層シート30を表皮材111の側から吸引させて吸着させ、その後、上型21と、基材131が載置された下型22とを型締めし、次いで、下型22より吸引することにより複層シート30と基材131とを一体化させ、その後、車両用内装材100を脱型させる真空成形法である。この場合、複層シート30は、前記(1)〜(3)のうちのいずれかの方法により形成することができる。
【0085】
図4に記載された真空成形法の場合、脱型時、(1)上型21及び下型22の両方の吸引を解除してもよく、(2)上型21の吸引を解除し、且つ下型22は吸引したまま、とすることもできる。特に、基材が通気性を有する場合は、上記(2)の方法により、複層シートの金型形状への追従性を向上させることができ、且つ複層シートと基材とをより強固に貼り合わせることができる。
尚、天然繊維を含有しない基材は、所定の方法により通気用の貫通孔を形成することにより通気性を有する基材とすることができる。一方、天然繊維を含有する基材は、特に、熱可塑性樹脂と天然繊維との合計を100質量%とした場合に、熱可塑性樹脂が70質量%以下であるときは、基材そのものが有する通気性を利用することができる。
【0086】
また、真空成形時、上型21の内表面に凹凸模様を形成しておくことにより、表皮材に凹凸模様を転写させることができる。この凹凸模様の転写は、どの段階で実施してもよく、例えば、上型21を加熱金型としたときは、上型21に複層シート30を吸着させることで転写することができる。更に、下型22との型締めの際に転写することもできる。凹凸模様の転写に際しては、表皮材の、表皮層となったときに意匠面となる面を120℃以上に予備加熱しておくことが好ましい。このようにすれば、特に鮮明な凹凸模様が設けられた表皮層とすることができる。この予備加熱の温度は140〜220℃、特に160〜200℃であることが好ましい。
【0087】
更に、図3及び図4に記載された真空成形法の場合、基材131は、金型22に載置する前に、予め予備成形しておいてもよく、予備成形されていない場合は、基材131を加熱し、軟化させ、その後、金型22上に載置し、吸引して賦形してもよい。また、複層シート30は予備加熱しておくことが好ましい。これにより、複層シート30の局部的な伸びを抑え、且つ複雑な形状にも追従させることができる。複層シート30の加熱温度は特に限定されず、表皮材の材質及び厚さ、並びに架橋発泡シートの材質及び厚さ等によって適宜設定することが好ましいが、表皮材の、表皮層となったときに意匠面になる側の温度が120〜220℃、とくに140〜220℃、更に160〜200℃となるように加熱することが好ましい。この加熱温度が120〜220℃であれば、真空成形時、表皮材と架橋発泡シートとを強固に接合させることができ、且つ優れた外観を有する車両用内装材とすることができる。
【0088】
基材層がポリウレタンフォーム層からなる場合、例えば、図5に記載された一体発泡成形法が挙げられる。
図5に記載された一体発泡成形法は、下型32に表皮材111を吸引させて吸着させ、その後、上型31と下型32との間に支持プレート141を介装させて型締めし、次いで、上型31と支持プレート141とを貫通して設けられたフォーム原料注入口16からフォーム原料を注入し、反応、硬化させ、表皮材111とポリウレタンフォーム15(基材層13bとなる。)と支持プレート141とを一体化させ、その後、車両用内装材200を脱型させる一体発泡成形法である。
【0089】
図5に記載された一体発泡成形法の場合、脱型時、下型32の吸引は解除してもよく、吸引したままでもよい。また、特に基材層13bとなるポリウレタンフォーム15の連泡性が高く、十分な通気性を有する場合は、吸引したままとすることで、表皮材111の下型32の内面形状への追従性を向上させることができ、且つ表皮材111とポリウレタンフォーム15とをより強固に貼り合わせることができる。更に、一体発泡成形時、下型32の内表面に凹凸模様を形成しておくことにより、表皮材111に凹凸模様を転写させることができる。この凹凸模様の転写は、どの段階で実施してもよく、例えば、下型32を加熱し、下型32に表皮材を吸着させるときに転写させることができる。また、上型31との型締め時に下型32を加熱し、転写させることもできる。凹凸模様の転写に際しては、表皮材111の、表皮層となったときに意匠面となる面を60℃以上に予備加熱しておくことが好ましい。このようにすれば、特に鮮明な凹凸模様が設けられた表皮層とすることができる。この予備加熱の温度は60〜140℃、特に80〜120℃であることが好ましい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[1]車両用内装材の製造(表皮層の材料組成等を記載した表1参照)
実施例1
(1)表皮材
50質量%のオレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学社製、商品名「ミラストマー7030NH」)、30質量%のポリオレフィン樹脂(エチレン/プロピレンランダム共重合樹脂、日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックEC9」)、10質量%のポリ乳酸樹脂(ネイチャーワークス社製。商品名「インゲオ4032D」)、及び10質量%のスチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ社製、商品名「タフテックH1052」)を混合し、その後、押出成形機により厚さ0.5mmのシートを成形した。次いで、このシートを周面にシボ模様が付されたロールに圧締してシボ模様を転写させ、一面にシボ模様が設けられた表皮材を形成した。この表皮材は実施例1〜3及び比較例1、3で用いた。
【0091】
(2)架橋発泡シート
30質量%のポリ乳酸樹脂(ネイチャーワークス社製、商品名「4032D」)、及び70質量%のポリブチレンサクシネート樹脂(昭和高分子社製、商品名「ビオノーレ1003」)に、これらの樹脂の合計を100質量部とした場合に、6質量部の架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート)、9質量部の発泡剤(アゾジカルボンアミド)、及び0.9質量部の酸化防止剤を添加し、発泡剤が分解しない温度でミキシングロールにより混練し、20MPaの圧力でプレスしてシートを成形した。その後、このシートに電子線を13kGy照射して架橋させ、次いで、この架橋シートを240℃に調温された熱風発泡炉に投入し、3分間加熱し、発泡させて、厚さ1.0mmの架橋発泡シートを形成した。この架橋発泡シートは実施例1〜4及び比較例1、3で用いた。
【0092】
(3)基材
長さ70mmに裁断したケナフ繊維(天然繊維)と、長さ51mmに裁断したポリプロピレン繊維とを混合し、エアレイ法により混繊し、堆積させて2層のウェブを形成し、これらのウェブをニードルパンチにより交絡させ、質量比で50:50のケナフ繊維とポリプロピレン繊維とが含有される繊維マットを作製した。その後、この繊維マットを235℃の熱板により内部温度が210℃になるまで、圧力10kg/cmで加熱圧縮し、次いで、常温まで冷却して厚さ2.5mmの繊維ボードを製造した。この繊維ボードは、実施例1〜4及び比較例1、3で基材として用いた。
【0093】
(4)真空成形
表皮材の表面のうちシボ模様が設けられておらず、架橋発泡シートと接合される面を180℃に加熱し、架橋発泡シートの表面のうち表皮材と接合される側の面を120℃に加熱し、その後、両者を圧着して複層シートを形成した。次いで、図3に記載の真空成形法により、複層シートの表面のうち表皮材の表面の温度が120℃となるように加熱し、その後、下型上に載置され、表面に接着剤(日立化成ポリマー社製、商品名「YA211−1」)が120g/mの塗布量で塗布された基材上に、複層シートを架橋発泡シートの側を基材側として積層し、次いで、吸引し、基材と複層シートとを圧着させ、基材層と架橋発泡体層と表皮層とを備える車両用内装材を製造した。
【0094】
実施例2
表皮材の形成に用いたポリオレフィン樹脂を20質量%、ポリ乳酸樹脂を20質量%とした他は、実施例1と同様にして車両用内装材を製造した。
【0095】
実施例3
表皮材の形成に用いたポリオレフィン樹脂を10質量%、ポリ乳酸樹脂を30質量%とした他は、実施例1と同様にして車両用内装材を製造した。
【0096】
実施例4
表皮材の形成に用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーを30質量%、ポリ乳酸樹脂を20質量%、スチレン系熱可塑性エラストマーを20質量%とし、且つシボ模様が設けられていない表皮材を用いた他は、実施例1と同様にして複層シートを形成し、その後、図4に記載の真空成形法により、複層シートの表皮材側の表面温度が180℃となるように加熱し、上型により吸引して表皮材の表面にシボ模様を形成し、次いで、この上型と、表面に実施例1と同様にして接着剤が塗布された基材が載置された下型とを、型締めし、基材と複層シートとを圧着させ、基材層と架橋発泡体層と表皮層とを備える車両用内装材を製造した。
【0097】
実施例5
実施例2と同じ組成であり、且つ厚さが1.0mmの表皮材を実施例1と同様にして形成した。その後、図5に記載の一体発泡成形法により、シボ模様が設けられていない面が70℃となるように表皮材を加熱し、この加熱面が下型の内表面に向くようにして載置し、吸引して表皮材を下型に保持させた。次いで、下型の上面に厚さ3.0mmの支持プレートを載置し、その後、上型を閉じ、フォーム原料注入口からフォーム原料を注入し、60℃で6分間保持し、フォーム原料を反応させ、硬化させて、基材層となるポリウレタンフォームを生成させ、ポリウレタンフォーム層と支持層と表皮層とを備える車両用内装材を製造した。
尚、フォーム原料注入口は、上型の中央部に設けられた貫通孔と、支持プレートの中央部に設けられた貫通孔とが連通して形成されている。
また、フォーム原料の組成は下記のとおりである。
(a)ポリオール
ポリエーテルポリオール(旭硝子ウレタン社製、商品名「EL−838」) 22質量%
ポリマーポリオール(旭硝子ウレタン社製、商品名「EL−937」) 45質量%
ポリエーテルポリオール;ペンタエリスリトールにEOとPOとをランダム付加重合させてなるポリオール(平均官能基数 4.0、水酸基価 28mgKOH/g) 3質量%
ひまし油系ポリオール;ひまし油にEOを付加させてなるポリオール(平均官能基数 約3、水酸基価 59mgKOH/g、末端1級OH化率=62モル%) 30質量%
(b)ポリイソシアネート
MDI系;11質量%の2,4’−MDIと89質量%の4,4’−MDIとの混合物に、POとEOとを質量比80/20で反応させてなるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(平均官能基数 4.0、数平均分子量 約8000)を反応させてなるポリイソシアネート 40質量%
MDI系;4.1質量%の2,4’−MDIと、32.9質量%の4,4’−MDIと、63質量%のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとの混合物 30質量%
TDI 30質量%
上記のポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネートインデックスが85となる量比で用いた。
(c)その他の成分
触媒;東ソー社製、商品名「TEDA−L33」 0.4質量部、及び東ソー社製、商品名「TOYOCAT ET」 0.06質量部
発泡剤;水 2.75質量部
整泡剤;日本ユニカー株式会社製SZ−1306 1質量部
これらの他の成分の配合量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合の配合量(単位は「質量部」)である。
【0098】
比較例1
表皮材の形成に用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーを60質量%、ポリオレフィン樹脂を40質量%とし、ポリ乳酸樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを用いなかった他は、実施例1と同様にして車両用内装材を製造した。
【0099】
比較例2
表皮材の形成に用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーを50質量%、ポリオレフィン樹脂を50質量%とし、ポリ乳酸樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを用いなかった他は、実施例4と同様にして車両用内装材を製造した。
【0100】
比較例3
表皮材の形成に用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーを56質量%、ポリオレフィン樹脂を22質量%、ポリ乳酸樹脂を22質量%とし、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いなかった他は、実施例1と同様にして車両用内装材を製造した。
【0101】
[2]車両用内装材の評価
(1)皺の有無
車両用内装材の表皮層の面を目視で観察し、皺の発生の有無及び皺がある場合、その長さ、深さの程度を確認した。表1の「○」は、著しい変色及び劣化が認められなかったことを意味する。
【0102】
(2)シボ深さ
車両用内装材の表面の粗さを、表面粗さ計測器(東京精密社製、型式「サーフコム570」)を用いて、測定長さ12.5mm、測定速度0.3mm/S、カットオフ値2.5mmの条件で測定し、測定区間全体の最大山高さ及び最大谷深さの和でシボ深さを算出した。
【0103】
(3)耐光性
車両用内装材から幅70mm、長さ200mmの試料を切り取り、紫外線フェードメータ(スガ試験機社製、型式「U48AU」、カーボンアーク1灯がけ)により、機内温度60℃、機内湿度50%RH、ブラックパネル温度83℃、試料回転速度3回転/分の条件で紫外線を1000時間照射し、変色及び劣化の程度を確認した。表1の「○」は、著しい変色及び劣化が認められなかったことを意味する。
【0104】
(4)成形性
車両用内装材を表皮層の側から目視で観察し、表皮層と架橋発泡体層又はポリウレタンフォーム層との間の浮き、剥がれ、及び基材層の凹凸形状にともなう表皮層のスケの有無を確認した。表1の「○」は、浮き、剥がれ及びスケが認められなかった、「△」は、浮き、剥がれ又はスケが認められた、「×」は、浮き、剥がれ及びスケのいずれもが認められた、ことを意味する。
結果を表1に併記する。
【0105】
【表1】

尚、上記の表1において、「TPO」はオレフィン系熱可塑性エラストマー、「EPランダム共重合樹脂」はエチレン/プロピレンランダム共重合樹脂、「PLA」はポリ乳酸樹脂、「St系エラストマー」はスチレン系熱可塑性エラストマーを意味する。また、「複合材」は、熱可塑性樹脂とケナフ繊維とを用いてなる基材層、「フォーム」は、ポリウレタンフォーム層からなる基材層、を意味する。
【0106】
表1によれば、実施例1〜5では、基材層の種類によらず、また、真空成形の方法によらず、皺が発生せず、ポリ乳酸樹脂を含有しているにもかかわらず、優れた耐光性を有し、変色も劣化もみられず、成形性も良好であることが分かる。更に、シボ深さが大きく、優れた意匠性を有する車両用内装材であることが分かる。
【0107】
一方、表皮層の形成にポリ乳酸樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーが用いられていない比較例1、2では、皺の発生はみられず、耐光性及び成形性等も問題ないものの、原材料の全てが石油由来の材料である。また、表皮層の形成にポリ乳酸樹脂は用いられているものの、スチレン系熱可塑性エラストマーが用いられていない比較例3では、耐光性は問題ないが、皺の発生がみられ、成形性に問題があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の車両用内装材は車両の各種の内装材として利用することができる。この内装材としては、例えば、ドア、インストルメントパネル、ピラー、サンバイザー、シートバックガーニッシュ、コンソールボックス、天井、フロアー、パッケージトレー、スイッチベース、クオーターパネル、アームレスト、ダッシュボード、及びデッキトリム等が挙げられる。
【符号の説明】
【0109】
100、200;車両用内装材、11;表皮層、11a;凹凸模様(シボ模様)、111;表皮材、12;架橋発泡体層、121;架橋発泡シート、13a、13b;基材層、131;基材、14;支持層、141;支持プレート、15;ポリウレタンフォーム、16;フォーム原料注入口、21、31;上型(真空成形用上型)、22;金型又は下型、32;下型、30;複層シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮層と基材層とを備える車両用内装材であって、
前記表皮層は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含有し、
前記オレフィン系熱可塑性エラストマー、前記ポリオレフィン樹脂、前記ポリ乳酸樹脂及び前記スチレン系熱可塑性エラストマーの合計を100質量%とした場合に、該オレフィン系熱可塑性エラストマーが20〜70質量%、該ポリオレフィン樹脂が10〜50質量%、該ポリ乳酸樹脂が5〜30質量%、該スチレン系熱可塑性エラストマーが5〜30質量%であることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
前記基材層は、天然繊維と、ポリ乳酸樹脂及びポリオレフィン樹脂のうちの少なくとも一方とを含有する請求項1に記載の車両用内装材。
【請求項3】
前記表皮層と前記基材層との間に架橋発泡体層を備える請求項2に記載の車両用内装材。
【請求項4】
前記基材層は、ポリウレタンフォーム層を備える請求項1に記載の車両用内装材。
【請求項5】
前記ポリウレタンフォーム層は、植物由来の原料を用いてなる請求項4に記載の車両用内装材。
【請求項6】
前記ポリウレタンフォーム層の、前記表皮層が積層されている面とは反対側の面に支持層が装着されている請求項4又は5に記載の車両用内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−765(P2011−765A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144522(P2009−144522)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】