説明

車両用冷却液再生装置

【課題】 従来よりも短時間で効率よく冷却液の交換作業を行う。
【解決手段】本発明の再生装置1は、ろ過容器10と、ろ過処理された再生液を貯留する再生液貯留容器20とを備え、再生液貯留容器20に加圧・減圧手段30を連結した構成である。加圧と減圧の両方を行うために、本発明の車両用冷却液再生装置1を含む系内は、加圧・減圧手段30の動作中はほぼ密閉された経路になっている。旧液は、加圧・減圧手段30によって減圧した場合にろ過容器10に吸い込まれてろ過処理される。従来のように再生液を送り込んで旧液を押し出す構成ではなく、旧液を積極的に吸い込む構成であるため、フィルタの通過時間(ろ過処理時間)を短縮化でき、フィルタに捕捉される残液量が少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両用エンジンの冷却液をラジエータなどの冷却水系から抜き出して再生処理して用いるための車両用冷却液再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載された水冷式エンジンは、エンジンで発生した熱を冷却液に伝え、この熱をラジエータ(放熱器)から大気に放散するようにしている。ところで、従来、冷却液の交換は、ラジエータの冷却液注入口(ラジエータフィラー)のキャップ及びエンジンとラジエータそれぞれのドレンプラグを外し、両ドレンからそれぞれ古い冷却液を排出して、水道水でラジエータ内を洗浄し、次に、前記ドレンプラグをそれぞれ装着して、ラジエータの冷却液注入口から新しい冷却液をエンジン内とラジエータ内とに充填する、という工程で実施されている。しかし、ラジエータから抜き出した旧液を廃棄するには、所定の希釈処理を行わなければならないなど手間がかかる。従って、旧液の廃棄量はできるだけ少ないことが好ましい。この点に鑑み、特許文献1では、ラジエータから抜き出した旧液を一旦クッションタンクに貯留し、所定量ずつろ過して再生し、これを再びラジエータ内に充填して使用する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−22739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された技術は、ポンプによってラジエータ内の旧液を押し出し、押し出した旧液を大気開放されたクッションタンク内で再生用の添加剤と接触させ、さらに、ろ過容器でろ過して、ラジエータ内に再生液を送り込むようにしている。
【0004】
しかし、この技術においては、ポンプによって、ラジエータ内に再生液を送り込み、それによって旧液を押し出すようにしているため、フィルタを通過する際の速度が限られ、ろ過処理に時間がかかる。また、特許文献1では、クッションタンクに再生用の添加剤の充填機構を連結し、ろ過処理する前の旧液に添加剤を添加している。このため、ろ過容器に送り込まれた際には、旧液中のさび等に添加剤が付着し、そのままフィルタに捕捉されてしまう場合もあり、添加剤の有効利用の点でも課題がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、従来よりも短時間で効率よく冷却液の交換作業を行うことができる車両用冷却液再生装置を提供することを課題とする。また、本発明は、従来よりも添加剤の有効利用を図ることができる車両用冷却液再生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、旧液流入口と再生液流出口とを備え、内部にろ過フィルタが設けられたろ過容器と、
再生液流入口と再生液流出口とを備えた再生液貯留容器と、
車両の冷却水系と前記ろ過容器の旧液流入口とを結び、前記冷却水系内の旧液をろ過容器内に取り込むための旧液取り込み管と、
前記ろ過容器の再生液流出口と前記再生液貯留容器の再生液流入口とを結び、再生液を前記再生液貯留容器内に取り込むための再生液取り込み管と、
前記再生液貯留容器の再生液流出口と前記冷却水系とを結び、前記再生液貯留容器内に貯留された再生液を前記冷却水系内に送り込むための再生液供給管と、
前記再生液取り込み管中に配置され、前記再生液貯留容器から前記冷却水系内に再生液を送り込む際に、ろ過容器側への逆流を防止する第1の逆止弁と、
前記再生液供給管中に配置され、前記冷却水系から前記旧液取り込み管を経て前記ろ過容器に旧液を取り込む際に、再生液供給管を通じての逆流を防止する第2の逆止弁と、
前記再生液貯留容器に接続され、再生液貯留容器内を加圧・減圧し、ろ過容器からの再生液の取り込みと、冷却水系内への送り込みとを行う加圧・減圧手段と
を備えることを特徴とする車両用冷却液再生装置を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記再生液貯留容器の再生液流出口と再生液流入口とは、再生液貯留容器に形成された一つの再生液流出入口が兼用した構成であり、
前記再生液取り込み管と前記再生液供給管とは、前記再生液流出入口からろ過容器又は冷却水系に至る途中までは一つの再生液流出入管で兼用されており、途中に設けられた分岐部からろ過容器までの再生液取り込み管中に前記第1の逆止弁が配設され、分岐部から冷却水系までの再生液供給管中に前記第2の逆止弁が配設されていることを特徴とする請求項1記載の車両用冷却液再生装置を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記再生液貯留容器に再生処理用の添加剤を添加可能に、添加剤充填機構が連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用冷却液再生装置を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記加圧・減圧手段は、高圧流体を供給するコンプレッサ、エジェクタ、複数の電磁弁、及び該電磁弁の開閉制御を行う制御装置を備えてなり、前記制御装置により、高圧流体を前記再生液貯留容器内に供給するように電磁弁を切り換えて加圧し、エジェクタから高圧流体を排出するように電磁弁を切り換えて前記再生液貯留容器内を減圧する構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の車両用冷却液再生装置を提供する。
請求項5記載の本発明では、前記再生液貯留容器内の再生液の水位を検出する水位検出センサを備え、前記加圧・減圧手段の制御装置が、検出された水位に基づき、前記電磁弁の切り換えタイミングを調整して制御可能であることを特徴とする請求項4記載の車両用冷却液再生装置を提供する。
請求項6記載の本発明では、前記再生液供給管に、圧力リリーフ弁が設けられていると共に、該圧力リリーフ弁の開弁動作に伴って流出した再生液を再生装置の系内のいずれかに還流させる再生液還流配管が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の車両用冷却液再生装置を提供する。
請求項7記載の本発明では、前記再生液還流配管が、前記圧力リリーフ弁と前記添加剤充填機構との間に配設されていることを特徴とする請求項6記載の車両用冷却液再生装置を提供する。
請求項8記載の本発明では、前記旧液取り込み管と前記再生液供給管とは、前記冷却水系を構成するラジエータのラジエータフィラーに接続される接続管に連結されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の車両用冷却液再生装置を提供する。
請求項9記載の本発明では、前記接続管は、内筒及び外筒からなる二重筒構造で形成され、
前記旧液取り込み管が、前記接続管の内筒又は外筒のうち、ラジエータ内の旧液取り込み用として使用されるいずれか一方に接続され、
前記再生液供給管が、前記接続管の内筒又は外筒のうち、ラジエータ内への再生液送り込み用として使用される他方に接続されて配設されることを特徴とする請求項8記載の車両用冷却液再生装置を提供する。
請求項10記載の本発明では、前記接続管を構成する内筒及び外筒は、内筒先端が外筒先端よりも突出し、ラジエータ内の旧液中に挿入可能であり、内筒が旧液取り込み用に使用され、外筒が再生液送り込み用に使用される構成であることを特徴とする請求項9記載の車両用冷却液再生装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ろ過処理された再生液を貯留する再生液貯留容器を備え、この再生液貯留容器に加圧・減圧手段を連結した構成であり、加圧と減圧の両方を行うために、本発明の車両用冷却液再生装置を含む系内は、加圧・減圧手段の動作中はほぼ密閉された経路になっている。これにより、旧液は、加圧・減圧手段によって減圧した場合にろ過容器に吸い込まれてろ過処理される。すなわち、従来のように再生液を送り込んで旧液を押し出す構成ではなく、旧液を積極的に吸い込む構成であるため、フィルタの通過時間(ろ過処理時間)を短縮化でき、フィルタに捕捉される残液量が少なくなり、冷却液交換効率を高めることができる。また、本発明では、ろ過処理した再生液を保持する再生液貯留容器に添加剤充填機構を連結し、ろ過処理後の再生液に添加剤を添加する構成であるため、添加剤がさび等に付着したままろ過用のフィルタに捕捉されることもなく、添加剤が有効に利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本実施形態の車両用冷却液再生装置1の全体構造を模式的に示す図である。この図に示したように、本実施形態の再生装置1は、ろ過容器10と、再生液貯留容器20と、加圧・減圧手段30とを有して構成される。
【0009】
ろ過容器10は、密閉容器からなり、内部にろ過用のフィルタ11が配設されている。フィルタ11の構造は限定されるものではなく、例えば、円筒形に形成され、その周壁の外部から内部へと旧液を通過させることにより、旧液内に含まれるさびや金属イオン凝集物等の不純物が除去されるものである。ろ過容器10内は、このフィルタ11の周壁を隔てて、周壁の外側に位置する未処理の旧液側と周壁の内側に位置するろ過処理された再生液側に分かれ、旧液側において、旧液流入口12が設けられ、再生液側において再生液流出口13が設けられている。
【0010】
ろ過容器10の旧液流入口12には、旧液取り込み管40の一端が連結される。旧液取り込み管40の他端は、車両の冷却水系を構成するラジエータ100又はリザーバタンク110に連結されるが、本実施形態では、後述の接続管50を介してこれらに接続される。再生液流出口13には、再生液取り込み管41の一端が連結されるが、これについては後述する。
【0011】
再生液貯留容器20は、再生液流出入口21が形成されている。再生液流出入口21には、再生液流出入管42の一端が連結される。再生液流出入管42の他端側に分岐部43が設けられており、この分岐部43に、上記したろ過容器10に一端が連結された再生液取り込み管41の他端が接続されている。分岐部43には、さらに、一端が後述の接続管50を介して車両の冷却水系を構成するラジエータ100又はリザーバタンク110に連結される再生液供給管44の他端が連結される。そして、再生液取り込み管41における、分岐部43とろ過容器10の再生液流出口13との間に第1の逆止弁41aが配設され、再生液供給管44における、分岐部43と接続管50との間に第2の逆止弁44aが配設される。第1の逆止弁41aは、減圧時に、ろ過容器10側から再生液流出入管42側への再生液の流入を許容し、加圧時に、ろ過容器10側への逆流を防止するように設定されており、第2の逆止弁44aは、加圧時に、再生液流出入管42側から再生液供給管44側への再生液の流入を許容し、減圧時に、再生液流出入管42側への逆流を防止するように設定されている。なお、本実施形態では、加圧・減圧手段30を駆動させて冷却液の再生処理を行う際には、再生装置1の系内をほぼ密閉して実施する。このため、系内圧力が高くなりすぎた際の安全のため、適宜箇所、本実施形態では再生液供給管44の中途に圧力リリーフ弁44bを設けている。
【0012】
ここで、本実施形態では、ろ過容器10によりろ過処理された再生液は、減圧時においては、再生液取り込み管41から分岐部43を経て再生液流出入管42を通過して再生液貯留容器20に取り込まれ、加圧時においては、再生液貯留容器20から再生液流出入管42に流出し、分岐部43を経て再生液供給管44に送り込まれる。つまり、分岐部43と再生液貯留容器20の再生液流出入口21とを結ぶ再生液流出入管42は、減圧時及び加圧時共に再生液が通過する構成となっている。これにより、再生液貯留容器20に再生液流出入口21を一つ形成すればよく、構成が簡易となるが、再生液貯留容器20に再生液流入口と再生液流出口をそれぞれ形成し、分岐部43を用いずに、前者に再生液取り込み管41を、後者に再生液供給管44を直接接続する構成とすることも可能である。
【0013】
再生液貯留容器20には、貯留される再生液の水位を検出する水位検出センサが設けられている。本実施形態では再生液貯留容器20に加圧・減圧手段30を連結し、再生液貯留容器20を加圧又は減圧して再生液の供給、旧液の取り込みを行う構成であるため、再生液貯留容器20内の液量が少なすぎると加圧操作が行いにくくなり、液量が多すぎると減圧操作が行いにくくなる。このため、再生液貯留容器20内において液量を検出し、上限、下限の範囲内でできるだけ中立位置を保つように加圧運転、減圧運転のタイミングを調整するために設けられるものである。本実施形態では、磁石を内蔵したフロート25を配置し、液面の上限位置と下限位置に対応させて、それぞれ近接スイッチ26,27を配設した構成であり、フロート25が上昇又は下降して上限位置又は下限位置に至ると近接スイッチ26又は27がそれらを検出し、その検出信号が、加圧・減圧手段30の制御装置34に送られて所定の制御が行われる。水位検出センサは、このようなフロート25と近接スイッチ26,27を用いるものに限られないことはもちろんであり、他の形式の液面計、あるいは、圧力センサなどを用いることもできる。
【0014】
再生液貯留容器20には、加圧・減圧手段30が連結される。加圧・減圧手段30は、再生液貯留容器20内の加圧・減圧を行える限り、その構成は限定されるものではない。本実施形態の加圧・減圧手段30は、高圧流体(例えば、高圧エア)を送るコンプレッサ31、レギュレータ32、エジェクタ33、電磁弁SV1〜SV3、及びこれらの駆動制御を行う制御装置34を備えて構成される。制御装置34により、電磁弁SV3,SV2を閉弁し、電磁弁SV1を開弁すると、再生液貯留容器20内に高圧エアが送られて加圧される。電磁弁SV1を閉弁し、電磁弁SV2,SV3を開弁すると、高圧エアがエジャクタ33から排出されるため、再生液貯留容器20内の空気は電磁弁SV2を経由して吸引され、減圧される。
【0015】
また、再生液貯留容器20には、添加剤充填機構60が連結される。添加剤充填機構60は、再生用の添加剤を投入するケミカル投入容器61と、該ケミカル投入容器61と再生液貯留容器20との間に配管される投入管62と、該投入管62に介在配設される電磁弁SV4とを備えてなる。電磁弁SV4は、上記した加圧・減圧手段30の制御装置34によって開閉制御される。具体的には、添加剤を投入する際には、加圧・減圧手段30を駆動し、電磁弁SV1を閉弁して、電磁弁SV2,SV3及びSV4を開弁する。この状態でコンプレッサ31を駆動すると、再生液貯留容器20内が減圧されるため、添加剤がケミカル投入容器61から吸引され、該再生液貯留容器30内に投入される。添加剤充填機構60は、ろ過容器10に接続し、ろ過処理前の旧液に添加剤を投入する構成とすることも可能であるが、この場合には、添加剤が旧液中に含まれるさび等に付着し、そのままフィルタ11に捕捉されることで、無駄が生じる可能性がある。従って、本実施形態のように、ろ過処理後の再生液に添加剤が投入される構成とすると、添加剤の無駄がなくなって有効に活用できるため好ましい。
【0016】
接続管50は、車両の冷却水系を構成するラジエータ100のラジエータフィラー101に装着可能な形状、構造を備えた連結部53を有して構成されている。本実施形態では、接続管50は、図2に示したように、内筒51と外筒52との二重筒構造で形成されている。このうち、内筒51は、先端部51bが外筒52の先端部52bより突出しており、ラジエータ100内に挿入することで、旧液を直接吸い込むことができるようになっている。すなわち、本実施形態では、内筒51が旧液吸い込み用として使用され、外筒52が再生液供給用として使用される。旧液を確実に吸い込むためにはかかる構成が好ましいが、特開2002−70556号公報に開示されているように、内筒51を再生液供給用として使用し、外筒52を旧液吸い込み用として使用することも可能である。
【0017】
内筒51の他端部には、旧液取り込み管40が接続され、外筒52の他端部には再生液供給管44が接続される。内筒51と旧液取り込み管40、並びに、外筒52と再生液供給管44は、このように別々の部材から構成し、両者を接続するようにしてもよいが、内筒51と旧液取り込み管40が一つの管路からなり、また、外筒52と再生液供給管44が一つの管路からなるもので、中途で分岐させた構造とすることもできる。
【0018】
次に、本実施形態の車両用冷却液再生装置1を用いて、車両の冷却系内の冷却液を再生、交換する手順を説明する。まず、ラジエータ100内の冷却液(旧液)の再生処理を始める前の準備工程として、電磁弁SV1を閉じ、電磁弁SV4,SV2,SV3を開弁し、コンプレッサ31を駆動させて吸引を行う。これにより、ケミカル投入容器61内の添加剤が、投入管62を経て、再生液貯留容器20内に投入される。投入量は、例えば、駆動時間により制御する(例えば、10秒間)。
【0019】
次に、リザーバタンク110内の冷却液(旧液)を抜き取る。この際、旧液取り込み管40及び再生液供給管44を共に、上記接続管50に連結し、その内筒51の先端をリザーバタンク110内に挿入して抜き取ってもよいが、本実施形態では、リザーバタンク110から抜き取る際には、旧液取り込み管40をリザーバタンク110専用の抜き取りチューブ46に連結して行うようにしている(図1参照)。これにより、接続管50は、ラジエータフィラー101に連結したままにしておけばよく、該接続管50をラジエータフィラー101とリザーバタンク110の挿入口との間で行き来させる手間が省ける。
【0020】
旧液取り込み管40を抜き取りチューブ46に連結した状態で、電磁弁SV1,SV4を閉じ、電磁弁SV2,SV3を開弁して、コンプレッサ31を駆動してエジェクタ33から空気を排出して再生液貯留容器20内を減圧する。これにより、リザーバタンク110内の旧液が旧液取り込み管40を経由して、ろ過容器10内に取り込まれ、さらに、内部に配設されたフィルタ11を外側から内側へ通過してろ過され、再生液貯留容器20内に吸引される。リザーバタンク110内の旧液の抜き取りは、再生液貯留容器20内の水位が、上限の近接スイッチ26により検出されるまで行う。再生液貯留容器20内には既に再生用の添加剤が投入されているため、再生液貯留容器20内に流入するろ過処理された再生液は添加剤と接触して処理される。なお、再生用の添加剤としては、アゾール類、リン酸、リン酸塩などを含んだものを用いることができる。
【0021】
上記準備工程が終了したならば、旧液取り込み管40を接続管50の内筒51に接続する。接続管50は、連結部53をラジエータフィラー101に連結し、内筒51の先端をラジエータ100内の旧液内に挿入する。この状態で、加圧・減圧手段30を動作させる。まず、電磁弁SV1を開き、他の全ての電磁弁SV2〜SV4を閉じて、コンプレッサ31の高圧エアを再生液供給容器20に送る。これにより、再生液供給容器20内の再生液は、再生液流出入管42を経た後、第1の逆止弁41aによりろ過容器10方向へは流入できないため、再生液供給管44に流入して、さらに、接続管50の外筒52を経て、ラジエータ100内に充填される。次に、電磁弁SV1を閉じて、電磁弁SV2,SV3を開き、高圧エアをエジェクタ33側に流すと、再生液貯留容器20内が減圧される。これにより、ラジエータ100内の旧液は、再生液供給管44には第2の逆止弁44aが設けられているため、該再生液供給管44に流入せず、接続管50の内筒51及び旧液取り込み管40を経てろ過容器10内に取り込まれ、フィルタ11を外側から内側へと強制的に貫通してろ過処理される。本実施形態では、このように旧液を吸引してろ過処理するため、フィルタ11を迅速に通過でき、同じ量を加圧のみで一方向に循環させて再生処理する場合よりも、処理時間を短くすることができる。
【0022】
ろ過処理された再生液は、さらに、再生液取り込み管41及び再生液流出入管42を経由して再生液貯留容器20内に吸い込まれ、添加剤と接触される。この状態で、上記と同様に、電磁弁SV1を開き、電磁弁SV2,SV3を閉じると、再び、再生液貯留容器20内は加圧され、再生液が再生液流出入管42、再生液供給管44及び接続管50の外筒52を経て、ラジエータ100内に充填される。次いで電磁弁SV1を閉じ、電磁弁SV2,SV3を開くと、再び減圧され、旧液が吸引される。以降、加圧と減圧を繰り返す。
【0023】
加圧と減圧は、制御装置34によるタイマー制御によって電磁弁SV1〜SV4を切換えて実施する。通常は、タイマー制御によって加圧と減圧を繰り返すが、再生液貯留容器20の水位が、近接スイッチ27によって下限に至ったことが検出されたならば、その検出信号が制御装置34に送られ、電磁弁SV1〜SV4を減圧動作用に切り換えて水位を上昇させ、近接スイッチ26によって上限に至ったことが検出されたならば、その検出信号が制御装置34に送られ、電磁弁SV1〜SV4を加圧動作用に切り換えて水位を低下させる。
【0024】
所定時間、加圧動作と減圧動作を繰り返すことにより、ラジエータ100を含む冷却水系内の旧液は再生液と置換される。再生処理が終了したならば、接続管50をラジエータフィラー101から取り外す。そして、接続管50の先端、すなわち、内筒51及び外筒52の先端部51b,52bを、オイルジョッキ200などに挿入し、加圧・減圧手段30を動作させ、加圧動作、減圧動作を再度所定時間実施する。これにより、ろ過容器10のフィルタ11内、旧液取り込み管40、再生液供給管44、接続管50等に残存している液体が排出される。この際、本実施形態によれば、加圧、減圧を行って排液するため、フィルタ11等に保持されたまま残存する液体が少ない。
【0025】
なお、上記実施形態においては、系内圧力が高くなりすぎた場合に備えて再生液供給管44の中途に圧力リリーフ弁44bを設けている。しかし、圧力リリーフ弁44bが開放されて実際に再生液が流出すると、再生液の流出量によっては、再生装置1の運転動作が円滑でなくなるおそれもある。このような事態を防止するため、圧力リリーフ弁44bが開放されて再生液が流出した場合には、流出した再生液を、再生装置1の系内に戻すようにすることが好ましい。戻す位置は任意であるが、上記実施形態においては、再生装置1の系内に添加剤を投入できる添加剤充填機構60が設けているため、この添加剤充填機構60を利用することが好ましい。すなわち、再生液を添加剤充填機構60のケミカル投入容器61に戻せば、添加剤を充填する場合と同様の手順で、具体的には、電磁弁SV1を閉弁すると共に、電磁弁SV2,SV3及びSV4を開弁し、この状態でコンプレッサ31を駆動することで、再生液を再生装置1の系内に戻すことができる。
【0026】
圧力リリーフ弁44bの開放によって流出した再生液をケミカル投入容器61まで戻す手段としては、例えば、図1に示したオイルジョッキ200などでかかる再生液を受け、手作業でケミカル投入容器61に注ぐようにすることもできるが、図3に示したように、圧力リリーフ弁44bとケミカル投入容器61との間に再生液還流配管70を配設し、人手によらず、圧力リリーフ弁44bから流出した再生液が自動的にケミカル投入容器61に還流する構成とすることが好ましい。
【0027】
なお、上記説明では、再生液貯留容器20内の上限近くまで吸引してから、加圧工程をまず行い、その後、減圧、加圧を繰り返すようにしているが、この加圧、減圧運転の順序はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の再生装置の一の実施形態を示す模式図である。
【図2】図2は、上記再生装置における接続管を示す図である。
【図3】図3は、上記実施形態に再生液還流配管を設けた態様を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 再生装置
10 ろ過容器
11 フィルタ
12 旧液流入口
13 再生液流出口
20 再生液貯留容器
21 再生液流出入口
25 フロート
26,27 近接スイッチ
30 加圧・減圧手段
31 コンプレッサ
33 エジェクタ
34 制御装置
40 旧液取り込み管
41 再生液取り込み管
41a 第1の逆止弁
42 再生液流出入管
43 分岐部
44 再生液供給管
44a 第2の逆止弁
46 抜き取りチューブ
50 接続管
51 内筒
52 外筒
60 添加剤充填機構
61 ケミカル投入容器
62 投入管
70 再生液還流配管
100 ラジエータ
110 リザーバタンク
SV1,SV2,SV3,SV4 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旧液流入口と再生液流出口とを備え、内部にろ過フィルタが設けられたろ過容器と、
再生液流入口と再生液流出口とを備えた再生液貯留容器と、
車両の冷却水系と前記ろ過容器の旧液流入口とを結び、前記冷却水系内の旧液をろ過容器内に取り込むための旧液取り込み管と、
前記ろ過容器の再生液流出口と前記再生液貯留容器の再生液流入口とを結び、再生液を前記再生液貯留容器内に取り込むための再生液取り込み管と、
前記再生液貯留容器の再生液流出口と前記冷却水系とを結び、前記再生液貯留容器内に貯留された再生液を前記冷却水系内に送り込むための再生液供給管と、
前記再生液取り込み管中に配置され、前記再生液貯留容器から前記冷却水系内に再生液を送り込む際に、ろ過容器側への逆流を防止する第1の逆止弁と、
前記再生液供給管中に配置され、前記冷却水系から前記旧液取り込み管を経て前記ろ過容器に旧液を取り込む際に、再生液供給管を通じての逆流を防止する第2の逆止弁と、
前記再生液貯留容器に接続され、再生液貯留容器内を加圧・減圧し、ろ過容器からの再生液の取り込みと、冷却水系内への送り込みとを行う加圧・減圧手段と
を備えることを特徴とする車両用冷却液再生装置。
【請求項2】
前記再生液貯留容器の再生液流出口と再生液流入口とは、再生液貯留容器に形成された一つの再生液流出入口が兼用した構成であり、
前記再生液取り込み管と前記再生液供給管とは、前記再生液流出入口からろ過容器又は冷却水系に至る途中までは一つの再生液流出入管で兼用されており、途中に設けられた分岐部からろ過容器までの再生液取り込み管中に前記第1の逆止弁が配設され、分岐部から冷却水系までの再生液供給管中に前記第2の逆止弁が配設されていることを特徴とする請求項1記載の車両用冷却液再生装置。
【請求項3】
前記再生液貯留容器に再生処理用の添加剤を添加可能に、添加剤充填機構が連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用冷却液再生装置。
【請求項4】
前記加圧・減圧手段は、高圧流体を供給するコンプレッサ、エジェクタ、複数の電磁弁、及び該電磁弁の開閉制御を行う制御装置を備えてなり、前記制御装置により、高圧流体を前記再生液貯留容器内に供給するように電磁弁を切り換えて加圧し、エジェクタから高圧流体を排出するように電磁弁を切り換えて前記再生液貯留容器内を減圧する構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の車両用冷却液再生装置。
【請求項5】
前記再生液貯留容器内の再生液の水位を検出する水位検出センサを備え、前記加圧・減圧手段の制御装置が、検出された水位に基づき、前記電磁弁の切り換えタイミングを調整して制御可能であることを特徴とする請求項4記載の車両用冷却液再生装置。
【請求項6】
前記再生液供給管に、圧力リリーフ弁が設けられていると共に、該圧力リリーフ弁の開弁動作に伴って流出した再生液を再生装置の系内のいずれかに還流させる再生液還流配管が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の車両用冷却液再生装置。
【請求項7】
前記再生液還流配管が、前記圧力リリーフ弁と前記添加剤充填機構との間に配設されていることを特徴とする請求項6記載の車両用冷却液再生装置。
【請求項8】
前記旧液取り込み管と前記再生液供給管とは、前記冷却水系を構成するラジエータのラジエータフィラーに接続される接続管に連結されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の車両用冷却液再生装置。
【請求項9】
前記接続管は、内筒及び外筒からなる二重筒構造で形成され、
前記旧液取り込み管が、前記接続管の内筒又は外筒のうち、ラジエータ内の旧液取り込み用として使用されるいずれか一方に接続され、
前記再生液供給管が、前記接続管の内筒又は外筒のうち、ラジエータ内への再生液送り込み用として使用される他方に接続されて配設されることを特徴とする請求項8記載の車両用冷却液再生装置。
【請求項10】
前記接続管を構成する内筒及び外筒は、内筒先端が外筒先端よりも突出し、ラジエータ内の旧液中に挿入可能であり、内筒が旧液取り込み用に使用され、外筒が再生液送り込み用に使用される構成であることを特徴とする請求項9記載の車両用冷却液再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−18867(P2009−18867A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2040(P2008−2040)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(591125289)日本ケミカル工業株式会社 (25)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】