説明

車両用前照灯の配光制御システム

【課題】前方車にグレアを与え難くする。
【解決手段】配光制御システム100は、車両前方への光の照射範囲を制御可能な車両用前照灯210と、車両前方を撮像するカメラ306と、カメラ306によって撮像された画像に基づいて前方車を検出し、検出された前方車への光の照射を抑制しつつ、該前方車の周囲に光が照射されるよう車両用前照灯210の照射範囲を制御する車両制御部302を備える。車両制御部302は、前方車の水平方向の位置に応じて、前方車と照射範囲との間の隙間の大きさが変化するように車両用前照灯210を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯の配光を制御する配光制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カメラによって撮像された車両前方の画像に基づいて先行車や対向車(以下、これらを適宜「前方車」と称する)の存否を検出し、その検出結果に基づいて配光パターンを変化させる構成とした車両用前照灯が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−94127号公報
【特許文献2】特開2008−37240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行中において前方車の位置は刻一刻と変化するため、前方車の位置を検出してから配光パターンを変化させるまでの間に前方車の位置が変わっていた場合、前方車にグレアを与えてしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、前方車にグレアを与え難くすることのできる車両用前照灯の配光制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用前照灯の配光制御システムは、車両前方への光の照射範囲を制御可能な車両用前照灯と、車両前方を撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像に基づいて前方車を検出する検出手段と、検出手段により検出された前方車への光の照射を抑制しつつ、該前方車の周囲に光が照射されるよう車両用前照灯の照射範囲を制御する制御手段とを備える。制御手段は、前方車の水平方向の位置に応じて、前方車と照射範囲との間の隙間の大きさが変化するように車両用前照灯を制御する。
【0007】
この態様によると、前方車の水平方向の位置に応じて、前方車と照射範囲との間に適切な隙間を確保することが可能となり、前方車にグレアを与え難くすることができる。
【0008】
制御手段は、前方車の水平方向の位置が車幅方向中央から車幅方向外側になるにつれて、隙間が大きくなるように車両用前照灯を制御してもよい。この場合、好適に前方車にグレアを与えるのを抑制できる。
【0009】
検出手段は、撮像手段により撮像された画像のうち、所定の鉛直方向の高さ以下の領域に基づいて前方車の検出を行う。この場合、前方車の検出精度を高めることができる。
【0010】
検出手段は、撮像手段により撮像された画像中に、所定値以上の輝度を有する一対の光点が存在し、該一対の光点の周囲にさらに光点が存在する場合に先行車が存在すると判定してもよい。この場合、先行車と対向車を好適に識別することができる。
【0011】
検出手段により一対の光点の輝度が所定時間内に所定量以上変化をしたことが検出された場合、制御手段は、ロービーム用配光パターンを照射するよう車両用前照灯を制御してもよい。この場合、前方車にグレアを与えるのをさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前方車にグレアを与え難くすることのできる車両用前照灯の配光制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る配光制御システムにおいて用いられる車両用前照灯の内部構造を示す概略断面図である。
【図2】回転シェードの概略斜視図である。
【図3】図3(a)〜(f)は、本実施の形態に係る車両用前照灯により照射可能な配光パターンを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る配光制御システムを説明するための機能ブロック図である。
【図5】スプリット配光パターン照射時の制御をより詳細に説明するための図である。
【図6】スプリット配光パターン照射時の制御をより詳細に説明するための図である。
【図7】配光制御システムにおいて前方車の検出精度を高める手法を説明するための図である。
【図8】配光制御システムにおいて、先行車と対向車を識別する手法を説明するための図である。
【図9】本実施の形態に係る前方車の検出手法を説明するためのフローチャートである。
【図10】本実施の形態に係る配光制御システムにおける配光パターンの選択手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る車両用前照灯の配光制御システムは、自車の前方に存在する前方車を検出し、検出された前方車への光の照射を抑制しつつ、該前方車の周囲に光が照射されるよう、車両用前照灯の照射範囲を制御するものである。この配光制御システムは、検出された前方車の水平方向の位置に応じて、前方車と照射範囲との間の隙間の大きさが変化するように車両用前照灯を制御する。例えば、車幅方向中央から車幅方向外側になるにつれて、隙間の大きさが大きくなるように制御する。これにより、前方車と照射範囲との間に適切な隙間を確保することが可能となり、前方車にグレアを与え難くすることができる。
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る配光制御システムにおいて用いられる車両用前照灯210の内部構造を示す概略断面図である。図1に示す車両用前照灯210は、車両の車幅方向の左右に1灯ずつ配置される配光可変式前照灯であり、その構造は実質的に左右同等なので代表して車両右側に配置される車両用前照灯210Rの構造を説明する。
【0017】
車両用前照灯210Rは、車両前方方向に開口部を有するランプボディ212と、ランプボディ212の開口部を覆う透明カバー214とで形成される灯室216を有する。灯室216には、光を車両前方方向に照射する灯具ユニット10が収納されている。灯具ユニット10の一部には、当該灯具ユニット10の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218はランプボディ212の内壁面に立設されたボディブラケット220とネジ等の締結部材によって接続されている。したがって、灯具ユニット10は、灯室216内の所定位置に固定されると共に、ピボット機構218aを中心として、例えば前傾姿勢または後傾姿勢等に姿勢変化可能となる。
【0018】
また、灯具ユニット10の下面には、曲線道路走行時等に進行方向を照らす曲線道路用配光可変前照灯(Adaptive Front-lighing System:AFS)を構成するためのスイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は、車両側から提供される操舵量のデータや、ナビゲーションシステムから提供される走行道路の形状データ、前方車と自車の相対位置の関係等に基づいて灯具ユニット10をピボット機構218aを中心に進行方向に旋回(スイブル:swivel)させる。その結果、灯具ユニット10の照射範囲が車両の正面ではなく曲線道路のカーブの先に向き、運転者の前方視界を向上させる。スイブルアクチュエータ222は、例えばステッピングモータで構成することができる。なお、スイブル角度が固定値の場合には、ソレノイドなども利用可能である。
【0019】
スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット10が後傾姿勢になると、光軸を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット10が前傾姿勢になると、光軸を下方に向けるレベリング調整ができる。このようにレベリング調整をすることで、車両姿勢に応じた光軸調整ができる。その結果、車両用前照灯210による前方照射の到達距離を最適な距離に調整することができる。
【0020】
なお、このレベリング調整は、車両走行中の車両姿勢に応じて実行することもできる。例えば、車両が走行中に加速する場合は後傾姿勢となり、逆に減速する場合は前傾姿勢となる。したがって、車両用前照灯210の照射方向も車両の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで実行することで、走行中でも前方照射の到達距離を最適に調整できる。これを「オートレベリング」と称することもある。
【0021】
灯室216の内壁面、例えば、灯具ユニット10の下方位置には、灯具ユニット10の点消灯制御や配光パターンの形成制御を実行する照射制御部228が配置されている。図1の場合、車両用前照灯210Rを制御するための照射制御部228Rが配置されている。この照射制御部228Rは、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226等の制御も実行する。
【0022】
灯具ユニット10は、エーミング調整機構を備えることができる。例えば、レベリングアクチュエータ226のロッド226aとユニットブラケット224の接続部分に、エーミング調整時の揺動中心となるエーミングピボット機構を配置する。また、ボディブラケット220とランプブラケット218の接続部分に、車両前後方向に進退する一対のエーミング調整ネジを車幅方向に間隔をあけて配置する。例えば2本のエーミング調整ネジを前方に進出させれば、灯具ユニット10はエーミングピボット機構を中心に前傾姿勢となり光軸が下方に調整される。同様に2本のエーミング調整ネジを後方に引き戻せば、灯具ユニット10はエーミングピボット機構を中心に後傾姿勢となり光軸が上方に調整される。また、車幅方向左側のエーミング調整ネジを前方に進出させれば、灯具ユニット10はエーミングピボット機構を中心に右旋回姿勢となり右方向に光軸が調整される。また、車幅方向右側のエーミング調整ネジを前方に進出させれば、灯具ユニット10はエーミングピボット機構を中心に左旋回姿勢となり左方向に光軸が調整される。このエーミング調整は、車両出荷時や車検時、車両用前照灯210の交換時に行われる。そして、車両用前照灯210が設計上定められた規定の姿勢に調整され、この姿勢を基準に本実施形態の配光パターンの形成制御が行われる。
【0023】
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18と、光源としてのバルブ14と、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17と、投影レンズ20とを備える。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施の形態では、バルブ14をハロゲンランプで構成する例を示す。リフレクタ16は、バルブ14から放射される光を反射する。そして、バルブ14からの光およびリフレクタ16で反射した光は、その一部がシェード機構18を構成する回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。
【0024】
図2は、回転シェード12の概略斜視図である。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒形状の部材である。また、回転シェード12は軸方向に一部が切り欠かれた切欠部22を有し、当該切欠部22以外の外周面12b上に板状のシェードプレート24を複数保持している。回転シェード12は、その回転角度に応じて投影レンズ20の後方焦点を含む後方焦点面の位置に切欠部22または、複数のシェードプレート24のいずれか1つを移動させることができる。そして、回転シェード12の回転角度に対応して光軸O上に位置するシェードプレート24の稜線部の形状に従う配光パターンが形成される。例えば、複数のシェードプレート24のいずれか1つを光軸O上に移動させてバルブ14から照射された光の一部を遮光することで、ロービーム用配光パターンまたは一部にロービーム用配光パターンの特徴を含む配光パターンを形成する。また、光軸O上に切欠部22を移動させてバルブ14から照射された光を非遮光とすることでハイビーム用配光パターンを形成する。
【0025】
回転シェード12は、シェードモータ(図示せず)により回転可能であり、該シェードモータの回転量を制御することで、回転所望の配光パターンを形成するためのシェードプレート24または切欠部22を光軸O上に移動させることができる。なお、回転シェード12の外周面12bの切欠部22を省略して、回転シェード12に、遮光機能だけを持たせてもよい。そして、ハイビーム用配光パターンを形成する場合は、例えばソレノイド等を駆動して回転シェード12を光軸Oの位置から退避させるようにする。このような構成にすることで、例えば、回転シェード12を回転させるシェードモータがフェールしてもロービーム用配光パターンまたはそれに類似する配光パターンで固定される。つまり、回転シェード12がハイビーム用配光パターンの形成姿勢で固定されてしまうことを確実に回避してフェールセーフ機能を実現できる。
【0026】
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸O上に配置され、バルブ14は投影レンズ20の後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として車両用前照灯210前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
【0027】
図3(a)〜(f)は、本実施の形態に係る車両用前照灯210により照射可能な配光パターンを示す図である。図3(a)〜(f)は、車両用前照灯210の前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示している。本実施の形態においては、図3(a)〜(f)に示す6つの配光パターンが形成可能である。なお、図3(a)〜(f)に示す配光パターンは、車幅方向の左右に配置された車両用前照灯210でそれぞれ形成した配光パターンを重畳させることで形成された合成配光パターンである。
【0028】
図3(a)は、ロービーム用配光パターンLoを示している。このロービーム用配光パターンLoは、交通法規が左側通行の地域において、市街地走行などの走行で対向車や歩行者にグレアを与えないように配慮された配光パターンである。
【0029】
図3(b)は、ハイビーム用配光パターンHiを示している。このハイビーム用配光パターンHiは、運転者の前方視界を最大まで確保できる配光パターンである。
【0030】
図3(c)は、交通法規が左側通行の地域で使用される左片ハイ用配光パターンLHiを示している。この左片ハイ用配光パターンLHiは、左側の車両用前照灯210で形成する左片ハイ用配光パターンと右側の車両用前照灯210で形成するロービーム用配光パターンとの合成によって形成される。このような左片ハイ用配光パターンLHiは、自車線側に前方車や歩行者が存在せず、対向車線側に対向車や歩行者が存在する場合に適した配光であり、運転者の前方視認性を向上させつつ、対向車や対向車線の歩行者にグレアを与えないように配慮した配光パターンである。
【0031】
図3(d)は、交通法規が左側通行の地域で使用される右片ハイ用配光パターンRHiを示している。この右片ハイ用配光パターンRHiは、右側の車両用前照灯210で形成する右片ハイ用配光パターンと左側の車両用前照灯210で形成するロービーム用配光パターンとの合成によって形成される。右片ハイ用配光パターンRHiは、自車線側に前方車や歩行者が存在し、対向車線側に対向車や歩行者が存在しない場合に適した配光であり、運転者の前方視認性を向上させつつ、前方車や自車線の歩行者にグレアを与えないように配慮した配光パターンである。
【0032】
図3(e)は、仮想鉛直スクリーン上の鉛直線Vと水平線Hの交点近傍に対する光の照射を抑制したV配光パターンVを示している。このV配光パターンVは、例えば、左側の車両用前照灯210により図3(a)に示すロービーム用配光パターンを形成する。一方、右側の車両用前照灯210により、交通法規が右側通行の地域で使用するロービーム用配光パターン、すなわち、図3(a)に示す配光パターンを鉛直線Vに関して線対称にした配光パターンを形成する。この2つ異なる配光パターンを重畳することにより、遠方の先行車や対向車が存在する可能性のある鉛直線Vと水平線Hの交点近傍に対する光の照射を抑制したV配光パターンVを形成することができる。このV配光パターンVは、遠方の前方車に対するグレアを抑制しつつ、自車線側や対向車線側の路肩の障害物などを運転者に認識させ易くできる配光パターンであるといえる。
【0033】
図3(f)は、スプリット配光パターンSを示している。このスプリット配光パターンSは、自車線および対向車線への光の照射を抑制しつつ、自車線および対向車線より外側の視界を良好に確保できる配光パターンであり、ハイビーム用配光パターンに光の照射範囲を分離するスプリット領域Spを設けたものである。スプリット領域Spは、照射範囲と比較して光の照射が抑制されている。例えば、図3(f)に示すように自車前方に先行車および対向車が存在する場合、左側の車両用前照灯210を左方向に所定の角度スイブルさせた状態で、図3(c)に示す左片ハイ用配光パターンを形成する。一方、右側の車両用前照灯210を右方向に所定の角度スイブルさせた状態で、図3(d)に示す右片ハイ用配光パターンを形成する。この左片ハイ用配光パターンと右片ハイ用配光パターンを重畳させることにより、図3(f)に示すようなスプリット配光パターンSを形成できる。
【0034】
本実施の形態に係る配光制御システムにおいては、左右の車両用前照灯210のスイブル角度を調整することにより、後述するカメラを用いて検出された前方車の位置に応じて、スプリット領域Spの位置およびスプリット領域Spの水平方向の幅であるスプリット幅Wsを変化させることができる。例えば、対向車が自車に近づいてくる場合には、左右の車両用前照灯210を共に徐々に右方向にスイブルさせることにより、対向車への光の照射を抑制しつつ対向車の周囲を照らすスプリット配光パターンSを形成できる。
【0035】
図4は、本発明の実施の形態に係る配光制御システム100を説明するための機能ブロック図である。配光制御システム100は、上述した車両用前照灯210と、車両用前照灯210を制御する車両制御部302と、ライトスイッチ304と、カメラ306と、ステアリングセンサ308と、車速センサ310と、ナビゲーションシステム312とを備える。
【0036】
車両用前照灯210の照射制御部228は、車両に搭載された車両制御部302の指示に従って電源回路230の制御を行い、バルブ14の点灯制御を実行する。また、照射制御部228は、車両制御部302からの指示に従い、レベリングアクチュエータ226、スイブルアクチュエータ222、シェードモータ221を制御する。
【0037】
例えば、照射制御部228は、カーブ走行や右左折走行などの旋回時にスイブルアクチュエータ222を制御して、灯具ユニット10の光軸をこれから進行する方向に向ける。また、照射制御部228は、加減速時の車両姿勢の前傾、後傾に応じてレベリングアクチュエータ226を制御して、灯具ユニット10の光軸を車両上下方向について調整し、前方照射の到達距離を最適な距離に調整する。また、照射制御部228は、車両制御部302からの配光パターンの指示に応じて、レベリングアクチュエータ226、スイブルアクチュエータ222、シェードモータ221を制御する。
【0038】
配光制御システム100は、運転者によるライトスイッチ304の操作に応じて手動で配光パターンを切り替え可能である。以下、このような手動で配光パターンを制御するモードを、適宜「手動モード」と称する。例えば運転者がロービーム用配光パターンを選択した場合、車両制御部302は照射制御部228にロービーム用配光パターンを形成するよう指示を出す。指示を受けた照射制御部228は、ロービーム用配光パターンが形成されるようレベリングアクチュエータ226、スイブルアクチュエータ222、シェードモータ221を制御する。
【0039】
また、配光制御システム100は、ライトスイッチ304の操作によらず、車両周囲の状況を各種センサで検出して、車両周囲状況に最適な配光パターンを形成可能である。以下、このように配光パターンを制御するモードを、適宜「ADB(Adaptive Driving Beam)モード」と称する。
【0040】
例えば、前方車が検出された場合、車両制御部302は、前方車へのグレアを防止するべきであると判断して、例えばロービーム用配光パターンが形成されるよう照射制御部228に指示を出す。また、前方車が存在しないことが検出できた場合、車両制御部302は、運転者の視界を向上させるべきであると判断して、例えばハイビーム用配光パターンが形成されるよう照射制御部228に指示を出す。また、前方車が検出されたが、前方車の周囲の視界を確保したい場合、車両制御部302は、スプリット配光パターンが形成されるよう照射制御部228に指示を出す。
【0041】
このように前方車を検出するために、車両制御部302には対象物の認識手段として例えばステレオカメラなどのカメラ306が接続されている。カメラ306で撮像された画像データは、車両制御部302に送信され、車両制御部302が信号処理をして画像解析を行い、撮像範囲内における前方車を検出する。検出する前方車の情報は、前方車の位置、前方車が先行車または対向車のどちらであるか等である。これらの前方車情報の検出手法については後述する。そして、車両制御部302は、取得した前方車の情報に基づいて最適な配光パターンを選択し、その選択した配光パターンを形成するように照射制御部228に指示を出す。なお、前方車を検出する手段は適宜変更可能であり、カメラ306に代えて、例えばミリ波レーダや赤外線レーダなど他の検出手段を用いてもよい。また、それらを組み合わせてもよい。
【0042】
また、車両制御部302は、車両に通常搭載されているステアリングセンサ308、車速センサ310などからの情報も取得可能であり、車両の走行状態や走行姿勢に応じて形成する配光パターンを選択したり、光軸の方向を変化させて簡易的に配光パターンを変化させることができる。例えば車両制御部302は、ステアリングセンサ308からの情報に基づき車両が旋回していると判定した場合、旋回方向の視界を向上させるような配光パターンが形成されるよう回転シェード12を回転制御する。また、シェード12の回転状態は変化させずに、スイブルアクチュエータ222を制御して灯具ユニット10の光軸を旋回方向に向けて視界を向上させるようにしてもよい。
【0043】
この他、車両制御部302は、ナビゲーションシステム312から道路の形状情報や形態情報、道路標識の設置情報などを取得することもできる。これらの情報を事前に取得することにより、レベリングアクチュエータ226、スイブルアクチュエータ222、シェードモータ221等を制御して、走行道路に適した配光パターンをスムーズに形成することもできる。例えば、ナビゲーションシステム312から街路灯が少なく視界が悪いという情報を取得した場合、車両制御部302は、前方車が検出されないときにはハイビーム用配光パターンを選択し、前方車が検出されたときにはスプリット配光パターンを選択する。
【0044】
図5および図6は、スプリット配光パターン照射時の制御をより詳細に説明するための図である。図5および図6は、車両が片側1車線(両側2車線)の直線舗装道路を走行している場合において、カメラ306の取り付け高さから車両前方路面を透視的に見て示す図に、車両用前照灯210から照射される光により車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるスプリット配光パターンSを重ねて示す図である。
【0045】
図5および図6に示すように、車両前方路面には、その中央に位置するセンタラインLMcと、その両側に位置する左サイドラインLMs1、右サイドラインLMs2とが、車両走行レーンを仕切るレーンマークとして形成されている。センタラインLMcは、間欠的なレーンマークとして形成されており、左サイドラインLMs1、右サイドラインLMs2は、連続的なレーンマークとして形成されている。左サイドラインLMs1は、透視図の消失点であるH−V点(水平線H−H線と鉛直線V−V線との交点)から左下方向に延びており、センタラインLMcおよび右サイドラインLMs2は、H−V点から右下方向に延びている。
【0046】
ここでは、対向車線に1台の対向車500が存在する場合を例として説明する。図5は、対向車500が遠方に存在する状態を示しており、図6は、図5の状態から時間が経過して対向車500が自車に接近した状態を示している。
【0047】
手動モードまたはADBモードにおいてスプリット配光パターンが選択されている場合、車両制御部302は、カメラ306により撮像された画像に基づいて対向車500を検出する。そして、車両制御部302は、対向車500への光の照射を抑制しつつ、対向車500の周囲に光が照射されるような配光パターンを形成するように、照射制御部228に指示を出す。言い換えると、車両制御部302は、少なくとも対向車500の前照灯より上の部位がスプリット領域Spに入るようなスプリット配光パターンを形成するように、照射制御部228に指示を出す。ここで「対向車500の前照灯より上の部位」としたのは、通常の車両において運転者の視点は前照灯より上方に位置しているからである。対向車500の前照灯の位置は、カメラ306により撮像された画像において高輝度の光点を検出することにより認識することができる。
【0048】
対向車500の検出および配光パターンの制御は所定の時間間隔ごとに行われる。車両制御部302は、対向車500に追従してスプリット領域Spの位置およびスプリット幅Wsが変化するようにスプリット配光パターンSを形成する。図5および図6においては、対向車500が遠方から自車に近づくにつれて、スプリット領域WsはWs1からWs2へと大きくなり、スプリット領域Spは車両前方の透視図における車幅方向中央付近から車幅方向外側へと変位している。このようにして、対向車500にグレアを与えるのを回避しつつ、対向車500の周囲の視界を確保することができる。
【0049】
さらに本実施の形態においては、車両制御部302は、スプリット配光パターンSを形成する際に、対向車500の水平方向の位置に応じて、対向車500と光の照射範囲との間の隙間Dの大きさを変化させる。より具体的には、対向車500の水平方向の位置が車幅方向中央から車幅方向外側になるにつれて、隙間Dが大きくなるようにする。隙間Dは、自車から対向車500の側面に延ばした線と、自車からスプリット領域Spと照射範囲との境界線BLに延ばした線とのなす角度で表される。図5に示すように対向車500が車幅方向中央付近に位置している場合には隙間D=D1であるが、図6に示すように対向車500が車幅方向外側に変位した場合には隙間D=D2(D2>D1)となっている。本実施の形態においては、対向車500の左右において隙間Dは等しいが、異なっていてもよい。
【0050】
対向車500にグレアを与えないためには、隙間Dは出来るだけ大きくすることが望ましい。隙間Dが小さいと配光パターンを変化させる際の制御遅れにより対向車500にグレアを与えてしまうおそれがある。ここでいう「制御遅れ」とは、カメラ306により車両前方の画像を撮像してから、最適な配光パターンを決定して実際に該配光パターンを照射するまでの時間である。しかしながら、対向車500の周囲の視界を確保するという観点からは、隙間Dは出来るだけ小さくすることが望ましい。本発明者は、このような相反する要求を満たす最適な隙間Dの値について検討を行った。その結果、本発明者は、対向車500の水平方向の位置が車幅方向中央から車幅方向外側になるにつれて車幅方向への移動速度が増加するという点に着目した。そして、対向車500の水平方向の位置が車幅方向中央から車幅方向外側になるほど隙間Dを大きくするという技術を想到するに至った。
【0051】
この技術によれば、車幅方向への移動速度が比較的小さい車幅方向中央付近に対向車500が位置している場合には、隙間Dを小さくして対向車500の視界を確保することができる。また、車幅方向への移動速度が比較的小さいことから、隙間Dを小さくしても制御遅れにより対向車500にグレアを与えてしまうことはない。一方、車幅方向への移動速度が大きい車幅方向外側に対向車500が位置している場合には隙間Dを大きくすることにより、制御遅れにより対向車500にグレアを与えてしまう事態を回避できる。このように、本実施の形態に係る配光制御システム100によれば、スプリット配光パターンSを照射する際に、対向車500にグレアを与える事態を回避しつつ、好適に対向車500の周囲の視界を確保することができる。なお、図5および図6においては、対向車500を例として説明したが、先行車の場合も同様に考えることができる。
【0052】
図5および図6においては、対向車500の上方に光を照射しないスプリット配光パターンSについて説明したが、対向車500上方の視界を確保するために、図5および図6に示すスプリット配光パターンSに加えて対向車500の上方も照射する配光パターンを照射可能に配光制御システム100を構成してもよい。この場合、車両高さ方向における対向車500と照射範囲との間の隙間についても、対向車500の水平方向の位置が車幅方向中央から車幅方向外側になるにつれて、該隙間が大きくなるようにしてもよい。これにより、対向車500にグレアを与えるのを回避しつつ、対向車500の周囲の視界を好適に確保することができる。
【0053】
車両制御部302は、カメラ306により撮像された画像データ、ナビゲーションシステム312から提供された道路情報等に基づいて前方車の位置の変化を予測し、この予測に基づいてスプリット領域Spの位置、スプリット幅Ws、隙間D等を予め演算しておいてもよい。この場合、配光パターンを変化させる際の制御遅れを小さくできるので、隙間Dを小さくでき、その結果、前方車周囲の視認性をより向上することができる。
【0054】
図7は、配光制御システム100において前方車の検出精度を高める手法を説明するための図である。前方車の検出精度を向上することにより、前方車にグレアを与える事態を防ぐことができる。
【0055】
図7は、カメラ306により撮像された画像700を示している。この画像700には、前方車701、街路灯702、デリニエータ704、信号機706等が含まれている。
【0056】
配光制御システム100において、車両制御部302は、カメラ306によって撮像された画像700中において、高輝度の光点を観測することにより前方車701の検出を行っている。しかしながら、路上には前方車701からの照射光以外にも、街路灯702、デリニエータ704、信号機706等から照射された光も存在する。そのため、これらの前方車701以外の物体を前方車701と誤って検出してしまうおそれがある。
【0057】
そこで、本実施の形態に係る配光制御システム100においては、車両制御部302は、カメラ306により撮像された画像に基づいて左サイドラインLMs1、右サイドラインLMs2、センタラインLMc等のレーンマークを検出し、これらのレーンマークに基づいて消失点(カメラ306の取り付け高さの無限遠方点)であるH−V点を求める。そして、車両制御部302は、このH−V点を通る水平線(H−H線)よりも高い位置に観測された高輝度の光点は、前方車701ではないと判断する。言い換えると、車両制御部302は、カメラ306により撮像された画像700のうち、H−V点を通る水平線以下の領域に基づいて前方車701の検出を行うのである。
【0058】
このような画像認識の手法は、街路灯702、信号機706等は一般の乗用車に設置されるカメラ306の取り付け高さよりも高い位置に設置されており、一方、車両用灯具は通常、カメラ306よりも低い位置に取り付けられているという知見に基づいている。この手法により、街路灯702、信号機706等を前方車701と誤検出する事態を回避することができる。
【0059】
なお、本実施の形態においては、高輝度の光点を観測する領域として、H−V点を通る水平線以下の領域を設定したが、これに限られず、所定の鉛直方向の高さ以下の領域に基づいて前方車701の検出を行うことが可能である。
【0060】
さらに、本実施の形態に係る配光制御システム100においては、カメラ306により撮像された画像700において、観測された高輝度の光点が所定の規則性を持つ点列である場合は、その光点は前方車701ではないと判断する。
【0061】
道路路肩に設置されるデリニエータ704は、前照灯などの車両用灯具から照射された光を再帰反射することで道路形状および路肩位置を示すものである。このデリニエータ704は、道路路肩に略同じ間隔および高さで設置されるため、その反射光は所定の規則性を持った点列となって見える。従って、上述のように観測された高輝度の光点が所定の規則性を持つ点列である場合は、その光点は前方車701ではないと判断することにより、前方車701の検出精度を向上できる。
【0062】
また、デリニエータ704は通常、白色または橙色のものが用いられているが、同じ場所では同じ色調のものが使用されるのが一般的である。従って、複数のデリニエータ704からの反射光は全て同じ色になるという特徴がある。この特徴を利用して、観測された高輝度の光点の列が同じ色である場合は、その光点は前方車701ではないと判断することにより、前方車701の検出精度をさらに向上できる。
【0063】
図8は、配光制御システム100において、先行車と対向車を識別する手法を説明するための図である。先行車と対向車を識別することにより、好適に配光パターンの制御が行えるようになり、前方車にグレアを与える事態を回避できる。
【0064】
図8は、カメラ306により撮像された画像800を示している。この画像800には、対向車801、先行車803、街路灯802、デリニエータ804、信号機806等が含まれている。
【0065】
上述したように、車両制御部302は、カメラ306によって撮像された画像中において、高輝度の光点を観測することにより前方車の検出を行っている。検出された前方車が先行車なのか対向車なのか識別する場合、先行車のテールランプからの光が赤色光で、対向車の前照灯からの光が白色光であることを利用して識別する方法が考えられる。すなわち、観測された光点が赤色であれば先行車が存在し、観測された光点が白色であれば対向車が存在すると判断するのである。しかしながら、このように光点の色に基づいて先行車と対向車を識別する場合、車両制御部302としてカラーカメラを用いる必要があるため、コストが高くなってしまう。そこで、本実施の形態においては、安価な白黒カメラを用いて先行車と対向車を識別する手法を提供する。
【0066】
図9は、本実施の形態に係る前方車の検出手法を説明するためのフローチャートである。まず、カメラ306により車両前方の画像800が撮像される(S10)。撮像された画像800のデータは、車両制御部302に送られる。車両制御部302は、カメラ306から提供される画像データに対して画像解析を行い、画像800中に所定の輝度以上の光点である高輝度光点が存在するか否か判定する(S12)。高輝度光点が存在しない場合(S12のN)、車両制御部302は前方車が存在しないと判断する(S24)。
【0067】
一方、高輝度光点が存在する場合(S12のY)、車両制御部302は、図7において説明したようにH−V点を通る水平線以下の領域に一対の高輝度光点が存在するか否か判定する(S14)。ここで、「一対の高輝度光点」をの存否を判定することとしたのは、通常、対向車801、先行車803は双方とも車両の左右に灯具(それぞれ前照灯801a、テールランプ803a)を有しているため、対向車801、先行車803が存在する場合は一対の高輝度光点が観測されるためである。ここで、2つの高輝度光点が観測された場合にその2つの高輝度光点が「一対」であるか否かは、2つの高輝度光点間の距離や2つの高輝度光点の鉛直方向の高さに基づいて判定することができる。例えば、2つの高輝度光点が所定の距離以内に存在しており、且つ2つの高輝度光点の鉛直方向の高さが同じである場合は、一対の高輝度光点であると判断する。
【0068】
H−V点を通る水平線以下の領域に一対の高輝度光点が存在しない場合(S14のN)、車両制御部302は、S12において観測された高輝度光点を街路灯802、デリニエータ804、信号機806等の車両以外の物体と判断する(S22)。これにより、図7において説明した手法よりもさらに前方車の検出精度を高めることができる。
【0069】
H−V点を通る水平線以下の領域に一対の高輝度光点が存在する場合(S14のY)、車両制御部302は、該一対の高輝度光点の周囲にさらにもう1つの高輝度光点が存在するか否か判定する(S16)。車両のテールランプ803aの周辺(通常は左右のテールランプ803aの間)には、法規によりライセンスプレートを照らすためのライセンスプレートランプ803bが設けられている。本実施の形態においては、一対の高輝度光点の周囲にライセンスプレートランプ803bによる高輝度光点が存在するか否か判定することにより、先行車と対向車の識別を行う。
【0070】
一対の高輝度光点の周囲にさらにもう1つの高輝度光点が存在する場合(S16のY)、車両制御部302は、該一対の高輝度光点は先行車803であると判断する(S18)。一方、一対の高輝度光点の周囲にさらにもう1つの高輝度光点が存在しない場合(S16のN)、車両制御部302は、該一対の高輝度光点は対向車801であると判断する(S20)。このような手法により、本実施の形態に係る配光制御システム100においては、白黒カメラを用いた場合であっても、先行車と対向車の識別を行うことができる。
【0071】
また、光点の色に基づいて先行車と対向車を識別する場合、赤い標識や自動販売機を先行車と誤検出してしまうおそれがある。本実施の形態に係る手法によれば、このような事態を回避することができる。
【0072】
ところで、本実施の形態に係る配光制御システム100は、カメラ306で撮像した画像に基づいて前方車を検出し、該前方車にグレアを与えないように配光パターンを制御している。しかしながら、例えば雨天時などにおいては、上述の手法を用いた場合でも前方車を完璧に検出することは困難である。前方車の誤検出が生じた場合、前方車にグレアを与えてしまうおそれがある。
【0073】
そこで、本実施の形態に係る配光制御システム100においては、前方車からパッシングを受けた場合、それまでの配光パターンからロービーム用配光パターンに強制的に切り替える制御を行う。パッシングの検出は、一対の高輝度光点の輝度が所定時間内に所定量以上変化をしたか否かを判定することにより行うことができる。このような制御を行うことにより、仮に前方車の誤検出が生じた場合でも、前方車にそれ以上グレアを与えてしまう事態を回避できる。
【0074】
図10は、本実施の形態に係る配光制御システム100における配光パターンの選択手法を説明するための図である。図10は、カメラ306により撮像された画像1000に、左遮光領域LS、センター遮光領域CSおよび右遮光領域RSを重ねて示す図である。画像1000において、センター遮光領域CSは車両幅方向中央付近の領域であり、左遮光領域LSはセンター遮光領域CSの左側の領域であり、右遮光領域RSはセンター遮光領域CSの右側の領域である。
【0075】
図10において、画像1000は、左方向に曲がる曲路を示している。ここでは、この曲路の対向車線に対向車1001が存在する場合を例として説明する。なお、図10には3台の対向車1001が示されているが、これは1台の対向車1001が遠方から徐々に近づいてくることを示すために便宜的に1つの画像1000に3台の対向車1001を図示したものである。
【0076】
本実施の形態において、車両制御部302は、画像1000を解析することによって取得した対向車1001の位置と各遮光領域とを比較して最適な配光パターンを決定する。
【0077】
図10に示すように、対向車1001が遠方の位置1010に存在する場合、対向車1001は左遮光領域LS内に位置している。また、センター遮光領域CSおよび右遮光領域RSには前方車が存在しない。従ってこの場合、車両制御部302は、対向車1001にグレアを与えずに最大限の視界を確保すべく、右片ハイ用配光パターンRHiを選択する。
【0078】
時間が経過して対向車1001が車幅方向中央付近の位置1012まで近づいてきた場合、対向車1001は、センター遮光領域CS内に位置している。従ってこの場合、車両制御部302は、対向車1001にグレアを与えないようロービーム用配光パターンLoを選択する。
【0079】
さらに時間が経過して対向車1001が自車近傍の位置1014まで近づいてきた場合、対向車1001は右遮光領域RS内に位置している。また、センター遮光領域CSおよび左遮光領域LSには前方車が存在しない。従ってこの場合、車両制御部302は、対向車1001にグレアを与えずに最大限の視界を確保すべく、左片ハイ用配光パターンLHiを選択する。
【0080】
このように、本実施の形態においては、左遮光領域LSと右遮光領域RSとの間にセンター遮光領域CSを設けている。これにより、対向車1001が左遮光領域LSと右遮光領域RSとの間で移動した場合には、必ずセンター遮光領域CSを通過するので、左片ハイ用配光パターンLHiと右片ハイ用配光パターンRHiとの間で配光パターンが切り替わる場合には、必ずロービーム用配光パターンを経由させることができる。
【0081】
センター遮光領域CSを設けずに、左遮光領域LSと右遮光領域RSを隣接させて配置した場合、左片ハイ用配光パターンLHiと右片ハイ用配光パターンRHiとの間で配光パターンの切替が行われる。このとき、運転者の視界が急激に変化するため、運転者は煩わしく感じる。また、歩行者や他の車両に対してグレアを与える要因となる。そこで、本実施の形態のように、左片ハイ用配光パターンLHiと右片ハイ用配光パターンRHiとの間で配光パターンが切り替わる場合には、必ずロービーム用配光パターンを経由させることにより、運転者の視界の急激な変化を軽減することができ、また歩行者や他の車両にグレアを与え難くすることができる。
【0082】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0083】
上述の実施の形態においては、左側の車両用前照灯で左片ハイ用配光パターンを形成し、右側の車両用前照灯で右片ハイ用配光パターンを形成した状態で、左右の車両前照灯をスイブルさせることによりスプリット配光パターンを形成した。しかしながら、スプリット配光パターンを形成するための車両用前照灯の構成はこれに限られない。例えば、車両前方に複数の照射範囲を規定し、それぞれの照射範囲に光を照射する複数のハイビームユニットを車両前照灯に設ける。そして、前方車がある照射範囲に存在していると判定された場合は、その照射領域に対応するハイビームユニットを消灯する。このようにしてスプリット配光パターンを形成した場合も、前方車の水平方向の位置に応じて、前方車と照射範囲との間の隙間の大きさが変化するように車両用前照灯を制御することにより、前方車と照射範囲との間に適切な隙間を確保することが可能となり、前方車にグレアを与え難くすることができる。
【符号の説明】
【0084】
12 回転シェード、 24 シェードプレート、 100 配光制御システム、 210 車両用前照灯、 222 スイブルアクチュエータ、 226 レベリングアクチュエータ、 228 照射制御部、 302 車両制御部、 306 カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方への光の照射範囲を制御可能な車両用前照灯と、
車両前方を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像に基づいて前方車を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前方車への光の照射を抑制しつつ、該前方車の周囲に光が照射されるよう前記車両用前照灯の照射範囲を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前方車の水平方向の位置に応じて、前方車と照射範囲との間の隙間の大きさが変化するように前記車両用前照灯を制御することを特徴とする車両用前照灯の配光制御システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前方車の水平方向の位置が車幅方向中央から車幅方向外側になるにつれて、前記隙間が大きくなるように前記車両用前照灯を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯の配光制御システム。
【請求項3】
前記検出手段は、前記撮像手段により撮像された画像のうち、所定の鉛直方向の高さ以下の領域に基づいて前方車の検出を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯の配光制御システム。
【請求項4】
前記検出手段は、前記撮像手段により撮像された画像中に、所定値以上の輝度を有する一対の光点が存在し、該一対の光点の周囲にさらに光点が存在する場合に先行車が存在すると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用前照灯の配光制御システム。
【請求項5】
前記検出手段により前記一対の光点の輝度が所定時間内に所定量以上変化をしたことが検出された場合、前記制御手段は、ロービーム用配光パターンを照射するよう前記車両用前照灯を制御することを特徴とする請求項4に記載の車両用前照灯の配光制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−31807(P2011−31807A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181707(P2009−181707)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】