説明

車両用回転電機

【課題】 インシュレータの製造コストの増大を抑え、樹脂モールドによるステータコアとコイル巻線との絶縁不良を防ぐ車両用回転電機を提供すること。
【解決手段】
複数の電磁鋼板を積層したステータコア10と、軸方向Lからステータコア10に対向して嵌め込まれる第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22と、第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22に巻回され、樹脂モールド31されるコイル巻線30とを備え、第1インシュレータ21は、第1端部23aと第1側壁部24aとで構成され、第2インシュレータ22は、第2端部23bと第2側壁部24bとで構成され、第1側壁部24aと第2側壁部24bとの間に隙間S1が形成され、隙間S1は、隙間S1の位置がステータコア10の積層長さHの中間位置Mより第1端部23aもしくは第2端部23b側で、中間位置Mのコイル巻線30より曲率が大きいコイル巻線30の部分に位置することから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の回転電機に用いられるインシュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による車両用回転電機では、複数枚の電磁鋼板が積層されて構成されるステータコアに対して、コイル巻線とステータコアとの間の絶縁を確保するために、一対のインシュレータを回転電機の軸方向から向かい合わせに装着しているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−50555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用回転電機では、ステータコアが露出しないようにインシュレータの先端同士を当接させる為、インシュレータに精度の高い加工が必要になり製造コストが高くなる問題がある。また、電磁鋼板の板厚のばらつきによって、ステータコアは軸方向において寸法にばらつきが生じ、当接するインシュレータの両先端の間には隙間が形成される場合がある。隙間は、ステータコアの軸方向の中間位置が露出する位置に形成される。ステータコアを樹脂モールドする場合には樹脂モールドによる成形圧によって、中間位置に巻回されるコイル巻線が押圧され、隙間に入り込みステータコアとコイル巻線とが絶縁不良を起こす問題がある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、インシュレータの製造コストの増大を抑え、樹脂モールドによるステータコアとコイル巻線との絶縁不良を防ぐ車両用回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段は、複数の電磁鋼板が積層されてなるステータコアと、前記ステータコアの軸方向から前記ステータコアに対向して嵌め込まれる第1インシュレータ及び第2インシュレータと、前記第1インシュレータ及び前記第2インシュレータに巻回され、樹脂モールドされるコイル巻線と、を備える車両用回転電機であって、前記第1インシュレータは、前記軸方向における前記ステータコアの一方端部を覆う第1基部と、前記第1基部から前記第2インシュレータ側に延在する第1延在部とを有し、前記第2インシュレータは、前記軸方向における前記ステータコアの他方端部を覆う第2基部と、前記第2基部から前記第1インシュレータ側に延在する第2延在部とを有し、前記軸方向において、前記第1延在部と前記第2延在部との間に隙間が形成され、前記隙間は、前記隙間の位置が前記軸方向における前記ステータコアの長さの中間位置より前記第1基部側もしくは前記第2基部側であり、前記中間位置の前記コイル巻線より曲率が大きい前記コイル巻線の部分に位置する構成である。
【0007】
本発明の第2の課題解決手段は、前記隙間は、前記中間位置より前記第1基部もしくは前記第2基部に近い位置に設けられる構成である。
【0008】
本発明の第3の課題解決手段は、曲率が大きい前記コイル巻線とは、前記第1基部と前記第1延在部との第1接合部もしくは前記第2基部と前記第2延在部との第2接合部に接触する前記コイル巻線の弧形状部である構成である。
【0009】
本発明の第4の課題解決手段は、前記ステータコアと重畳する前記軸方向における前記第1延在部の長さと、前記ステータコアと重畳する前記軸方向における前記第2延在部の長さとの和は、前記軸方向における前記ステータコアの長さより短い構成である。
【0010】
本発明の第5の課題解決手段は、前記第1インシュレータ及び前記第2インシュレータは同形状である構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用回転電機では、第1インシュレータと第2インシュレータとをステータコアに装着した状態で、第1延在部と第2延在部との間に隙間を形成する。これにより第1延在部及び第2延在部に高精度の加工を求めることなく第1インシュレータ及び第2インシュレータを製造することができる為、製造コストの増大を抑えることができる。また、第1延在部と第2延在部との間に形成される隙間は、ステータコアの軸方向におけるステータコアの長さの中間位置より第1基部もしくは第2基部側で、ステータコアの中間位置に巻回されるコイル巻線より曲率が大きいコイル巻線の部分に位置する。中間位置より第1基部側もしくは第2基部側に巻回されるコイル巻線は中間位置に巻回されるコイル巻線より曲率が大きく、樹脂モールドによるモールド成形圧に対して撓み難い形状である。これにより樹脂モールドによって隙間の位置に巻回されるコイル巻線が変形し、コイル巻線が隙間に入り込むことによるコイル巻線とステータコアとの絶縁不良を防止できる。
【0012】
また、隙間は、ステータコアの中間位置より第1基部もしくは第2基部に近い位置に設けられる為、より曲率が大きいコイル巻線が巻回される位置に隙間を形成することができる。これによりコイル巻線がより撓み難い位置に隙間を形成できる。
【0013】
また、第1接合部及び第2接合部に接触するコイル巻線の弧形状部にモールド成形圧が加わると、弧形状部にモールド成形圧による第1接合部及び第2接合部を支点としたモーメントが働く。弧形状部に働くモールド成形圧は中間位置のコイル巻線に働くモールド成形圧よりも支点に近い為、弧形状部に働くモーメントは、中間位置のコイル巻線に働くモーメントよりも小さくなる。これにより弧形状部は、中間位置のコイル巻線よりもモールド成形圧に対してより変形し難くなる。
【0014】
また、ステータコアと重畳する第1延在部の軸方向の長さと、ステータコアと重畳する第2延在部の軸方向の長さとの和は、軸方向におけるステータコアの長さより短い為、第1延在部及び第2延在部との間には必ず隙間が形成される。これによりステータコアの軸方向において、第1延在部と第2延在部との間に確実に隙間が形成される。
【0015】
また、一方の第一延在部は他方の第一延在部よりも長く、一方の第一延在部と対向する一方の第二延在部は、他方の第一延在部と対向する他方の第二延在部よりも短くしても、モールドによって隙間の位置に巻回されるコイル巻線が変形し、コイル巻線が隙間に入り込むことによるコイル巻線とステータコアとの絶縁不良を防止できる。
【0016】
また、第1インシュレータと第2インシュレータは同形状である為、第1インシュレータ及び第2インシュレータが異なる形状である場合と比較して、製造するインシュレータの種類を1つにすることができ、製造コストを低下できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のモータ部を用いた電動ポンプの断面図である。
【図2】本発明のモータ部の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示すX−X断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示すX−X断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下に本発明の第1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明のモータ部41(車両用回転電機)を用いた電動ポンプ1の断面図である。電動ポンプ1はモータ部41とポンプ部51を備えており、ポンプ部51の外郭を成すポンプケーシング50とモータ部41の外郭を成すモータケーシング40とが、一体に組み付けられている。モータ部41は、ロータ2、ステータコア10、第1インシュレータ21、第2インシュレータ22、モータケーシング40から構成される。ロータ2はロータ本体3と、このロータ本体3の外周部に永久磁石5とを備えている。ロータ2はロータ本体3の回転軸と回転軸4の回転軸とが合致するように回転軸4に一体成形される。またロータ2とインペラ6とは、ロータ2とインペラ6とが一体回転自在に連結するように、回転軸4に一体成形される。第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22は、ステータコア10に嵌め込まれる。第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22の外部から樹脂モールド31が成形される。ポンプ部51には、インペラ6が回転自在に収納されており、モータ部41によってインペラ6が回転することによりポンプケーシング50に形成された吸入口52から流体が吸い込まれ、吐出口53から流体が吐出される。
【0020】
図2は、ステータコア10と第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22の分解斜視図である。ステータコア10は複数の電磁鋼板11をステータコアの高さが増加する方向であるステータコアの軸方向Lから重ね合わせて形成される。ステータコア10は、第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22が軸方向Lから対向して嵌め込まれる。第1インシュレータ21は、ステータコア10の軸方向Lの端部を覆う第1端部23a(第1基部)と第1端部23aの周方向C両側に連接され第2インシュレータ22側に延出する第1側壁部24a(第1延在部)とを備える。第2インシュレータ22はステータコア10の軸方向Lの端部を覆う第2端部23b(第2基部)と第2端部23bの周方向C両側に連接され第1インシュレータ21側へ延出する第2側壁部24b(第2延在部)とを備える。第1側壁部24a及び第2側壁部24bの周方向Cの幅の寸法は等しい。また、第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22を構成する素材にはポリフェニレンサルファイド樹脂を用いる。この第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22の素材としては、例えば、上述したポリフェニレンサルファイド樹脂の他に、PA66ナイロンが利用できる。
【0021】
図3は、モールド成形時のコイル巻線30の状態を図2のX−X断面図を用いて説明したものである。第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22が、軸方向Lに沿って向かい合わせにステータコア10に嵌め込まれる。第1インシュレータ21の第1側壁部24aの軸方向Lの長さをL1(軸方向における第1延在部の長さ)と定義する。また第2インシュレータ22の第2側壁部24bの軸方向Lの長さをL2(軸方向における第2延在部の長さ)と定義する。L1及びL2の和と、ステータコア10の積層長さH(軸方向におけるステータコアの長さ)とは、H>L1+L2の関係にある。これにより第1側壁部24aと第2側壁部24bとの間には隙間S1が形成される。隙間S1の軸方向Lの長さは0.7±0.7mmである。また、L2は、第2側壁部24bがステータコア10の積層長さHの中間位置Mを覆う長さに設定されている。これにより隙間S1の位置は、ステータコア10の積層長さHの中間位置Mより第1端部23a側に位置し、その位置は中間位置Mより第1端部23aに近い位置である。また、隙間S1は、第1端部23aと第1側壁部24aとの第1接合部25a及び第2端部23bと第2側壁部24bとの第2接合部25bに接触して形成されるコイル巻線30の弧形状部32の周方向C上に形成される。ここで、弧形状部32は、弧形状部32の曲率が、中間位置Mに巻回されるコイル巻線30の曲率より大きい態様で形成される。ステータコア10は、第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22を介してコイル巻線30が巻回された状態で樹脂モールド31され、コイル巻線30にコイル巻線30の外周側からステータコア10側へモールド成形圧Pが加わる。成形圧Pに対してコイル巻線30の内部には圧縮応力Rが働く。
【0022】
モータ部41をモールド成形した場合のコイル巻線30の動作について図3を用いて説明する。
【0023】
図3に示す第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22による絶縁構造は、第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22が軸方向Lから向かい合わせに嵌め込まれて形成される。ステータコア10に第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22を装着すると、第1側壁部24aと第2側壁部24bとの間に隙間S1が形成される。この隙間S1は、ステータコア10の積層長さHの中間位置Mより第1端部23a側であり、中間位置Mより第1端部23aに近い位置に形成され、コイル巻線30の弧形状部32の周方向C上に位置する。コイル巻線30は、ステータコア10に第1端部23a及び第2端部23b、第1側壁部24a及び第2側壁部24bを介し、第1接合部25a及び第2接合部25bに接触して巻回される。樹脂モールド31によりコイル巻線30にはコイル巻線30の外周側からステータコア10側へモールド成形圧Pが加わる。隙間S1の周方向C上の弧形状部32には、成形圧Pに抗して圧縮応力Rが働く。弧形状部32は中間位置Mのコイル巻線30より曲率が大きい為、弧形状部32に働く圧縮応力Rが中間位置Mのコイル巻線30に働く圧縮応力Rよりも大きくなる。つまり弧形状部32は、中間位置Mのコイル巻線30よりも成形圧Pに対して撓み難くなる。また、弧形状部32に加わる成形圧Pは、中間位置Mのコイル巻線30に加わる成形圧Pよりも支点である第1接合部25aもしくは第2接合部25bに近い位置である。これにより弧形状部32に加わる成形圧Pのモーメントは、中間位置Mのコイル巻線30に働くモーメントより小さくなる。つまり孤形状部32は中間位置Mのコイル巻線30より成形圧Pに対してより撓み難くなる。
【0024】
以上詳述したように、実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
【0025】
(1)本実施形態では、第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22をステータコア10に嵌め込んだ状態で、第1側壁部24aと第2側壁部24bとの間に隙間S1を形成する。これにより第1側壁部24aと第2側壁部24bに高精度の加工を求めることなく第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22を製造することができる為、製造コストの増大を抑えることができる。また、第1側壁部24aと第2側壁部24bとの間に形成される隙間S1は、ステータコア10の中間位置Mより第1端部23aもしくは第2端部23b側で、中間位置Mに巻回されるコイル巻線30より曲率が大きいコイル巻線30の位置に位置する。中間位置Mより第1端部23aもしくは第2端部23b側に巻回されるコイル巻線30は中間位置Mに巻回されるコイル巻線30より曲率が大きく、樹脂モールド31によるモールド成形圧Pに対して撓み難い形状である。これにより樹脂モールド31によって隙間S1に巻回されるコイル巻線30が変形しコイル巻線30が隙間S1に入り込むことによるコイル巻線30とステータコア10との絶縁不良を防止できる。
【0026】
(2)本実施形態では、隙間S1はステータコア10の中間位置Mより第1端部23aもしくは第2端部23bに近い位置に設けられる為、より曲率が大きいコイル巻線30が巻回される位置に隙間S1を形成することができる。これによりコイル巻線30がより撓み難い位置に隙間S1を形成することができる。
【0027】
(3)本実施形態では、第1接合部25a及び第2接合部25bに接触するコイル巻線30の弧形状部32にモールド成形圧Pが加わると、弧形状部32にモールド成形圧Pによる第1接合部25a及び第2接合部25bを支点としたモーメントが働く。弧形状部にかかるモールド成形圧Pは、中間位置Mのコイル巻線30に働くモールド成形圧Pよりも支点に近い為、弧形状部にかかるモーメント力は中間位置Mのコイル巻線30に働くモーメントよりも小さくなる。これにより弧形状部32は、中間位置Mのコイル巻線30よりもモールド成形圧Pに対してより変形し難くなる。
【0028】
(4)本実施形態では、第1側壁部24aの長さL1と第2側壁部24bの長さL2との和は、ステータコア10の積層長さHより短い為、第1側壁部24aと第2側壁部24bとの間には必ず隙間S1が形成される。これにより軸方向Lにおいて、第1側壁部24aと第2側壁部24bとの間に確実に隙間S1が形成される。
【0029】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態を図面に従って説明する。なお第2の実施形態は、第1インシュレータ21及び第2インシュレータ22の形状を変更したことが第1の実施形態と異なる点であるため、共通する構成についてはその詳細な説明は省略する。
【0030】
図4は、図3に相当する本実施形態のX−X断面図である。第1インシュレータ121及び第2インシュレータ222が、軸方向Lに沿って向かい合わせにステータコア10に嵌め込まれる。第1インシュレータ121は、軸方向Lの長さがL3である第1短側壁部124aと軸方向Lの長さがL4である第1長側壁部124bとで構成される。第2インシュレータ222は、軸方向Lの長さがL5である第2短側壁部224aと軸方向Lの長さがL6である第2長側壁部224bとで構成される。この第1インシュレータ121及び第2インシュレータ222は、同一の形状で製造される。詳説すると、第1インシュレータ122及び第2インシュレータ222の軸方向Lの長さは、L3=L5、L4=L6の関係にある。
【0031】
また換言すると、第1インシュレータ121には2つの第1延在部(第1短側壁部124a及び第1長側壁部124b)を備えると共に、第2インシュレータ222には2つの第2延在部(第2短側壁部224a及び第2長側壁部224b)を備え、一方の第1延在部(第1長側壁部124b)は他方の第1延在部(第1短側壁部124a)よりも長く(L3<L4)、一方の第1延在部(第1長側壁部124b)と対向する一方の第2延在部(第2短側壁部224a)は、他方の第1延在部(第1短側壁部124a)と対向する他方の第2延在部(第2長側壁部224b)よりも短い(L5<L6)。
【0032】
ステータコア10に第1インシュレータ121及び第2インシュレータ222を嵌め込んだ状態において隙間S2及びS3が形成される。隙間S2は、軸方向Lにおいて第1短側壁部124aと第2長側壁部224bとの間に形成され、隙間S3は、第1長側壁部124bと第2短側壁部224aとの間に形成される。またステータコア10と第1インシュレータ121及び第2インシュレータ222は、H>L3+L6、H>L4+L5の関係にあり、隙間S2及びS3は確実に形成される。隙間S2及びS3の軸方向Lの長さは0.7±0.7mmである。また、L4は、第1長側壁部124bが積層長さHの中間位置Mを覆う長さに設定されている。これにより隙間S2は、中間位置Mより第1端部123側であり、中間位置Mより第1端部123に近い位置に形成される。また、L6は、第2長側壁部224bが積層長さHの中間位置Mを覆う長さに設定されている。これにより隙間S3は、中間位置Mより第2端部223側であり、中間位置Mより第2端部223側に近い位置に形成される。また、隙間S2及びS3は、弧形状部32の周方向C上に形成される。
【0033】
モータ部41をモールド成形した場合のコイル巻線30の動作について図4を用いて説明する。
【0034】
図4に示す第1インシュレータ121及び第2インシュレータ222による絶縁構造は、第1インシュレータ121及び第2インシュレータ222が軸方向Lから向かい合わせに嵌め込まれて形成される。ステータコア10に第1インシュレータ121及び第2インシュレータ222を装着すると、第1短側壁部124aと第2長側壁部224bとの間に隙間S2が形成され、第1長側壁部124bと第2短側壁部224aとの間に隙間S3が形成される。この隙間S2及びS3は、コイル巻線30の弧形状部32の周方向C上に位置する。コイル巻線30は、ステータコア10に第1端部123及び第2端部223、第1短側壁部124a及び第1長側壁部124b、第2短側壁部224a及び第2長側壁部224bを介し、第1接合部125及び第2接合部225に接触して巻回される。樹脂モールド31によりコイル巻線30にはコイル巻線30の外周側からステータコア10側へモールド成形圧Pが加わる。隙間S2及びS3の周方向C上の弧形状部32には、成形圧Pに抗して圧縮応力Rが働く。弧形状部32は中間位置Mのコイル巻線30より曲率が大きい為、弧形状部32に働く圧縮応力Rが中間位置Mのコイル巻線30に働く圧縮応力Rよりも大きくなる。つまり弧形状部32は、中間位置Mのコイル巻線30よりも成形圧Pに対して撓み難くなる。また、弧形状部32に加わる成形圧Pは、中間位置Mのコイル巻線30に加わる成形圧Pよりも支点である第1接合部125もしくは第2接合部225に近い位置である。これにより弧形状部32に加わる成形圧Pのモーメントは、中間位置Mのコイル巻線30に働くモーメントより小さくなる。つまり孤形状部32は中間位置Mのコイル巻線30より成形圧Pに対してより撓み難くなる。
【0035】
以上詳述したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態における(1)〜(4)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
【0036】
(5)本実施形態では、第1インシュレータ121と第2インシュレータ222とは同形状である為、第1インシュレータ121及び第2インシュレータ222が異なる形状である場合と比較して、製造するインシュレータの種類を1つにすることができ、製造コストを低下させることができる。
【0037】
なお、第2の実施形態では第1インシュレータ121と第2インシュレータ222とが同形状である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1インシュレータ121には2つの第1延在部(第1短側壁部124a及び第1長側壁部124b)を備えると共に、第2インシュレータ222には2つの第2延在部(第2短側壁部224a及び第2長側壁部224b)を備え、一方の第1延在部(第1長側壁部124b)は他方の第1延在部(第1短側壁部124a)よりも長く(L3<L4)、一方の第1延在部(第1長側壁部124b)と対向する一方の第2延在部(第2短側壁部224a)は、他方の第1延在部(第1短側壁部124a)と対向する他方の第2延在部(第2長側壁部224b)よりも短い(L5<L6)のであれば、同形状である必要はない。この場合は、前述した(5)の効果は得られないが、(1)乃至(4)の効果は得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 電動ポンプ
10 ステータコア
11 電磁鋼板
21 第1インシュレータ
22 第2インシュレータ
23a、123 第1端部(第1基部)
23b、223 第2端部(第2基部)
24a 第1側壁部(第1延在部)
24b 第2側壁部(第2延在部)
25a、125 第1接合部
25b、225 第2接合部
30 コイル巻線
31 樹脂モールド
32 弧形状部
41 モータ部(車両用回転電機)
124a 第1短側壁部
124b 第1長側壁部
224a 第2短側壁部
224b 第長2側壁部
L 軸方向
C 周方向
S1、S2、S3 隙間
L1 第1側壁部の長さ(軸方向における第1延在部の長さ)
L2 第2側壁部の長さ(軸方向における第2延在部の長さ)
L3 第1短側壁部の長さ
L4 第1長側壁部の長さ
L5 第2短側壁部の長さ
L6 第2長側壁部の長さ
H 積層長さ(軸方向におけるステータコアの長さ)
P モールド成形圧
R 圧縮応力
M 中間位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板が積層されてなるステータコアと、
前記ステータコアの軸方向から前記ステータコアに対向して嵌め込まれる第1インシュレータ及び第2インシュレータと、
前記第1インシュレータ及び前記第2インシュレータに巻回され、樹脂モールドされるコイル巻線と、
を備える車両用回転電機であって、
前記第1インシュレータは、
前記軸方向における前記ステータコアの一方端部を覆う第1基部と、
前記第1基部から前記第2インシュレータ側に延在する第1延在部とを有し、
前記第2インシュレータは、
前記軸方向における前記ステータコアの他方端部を覆う第2基部と、
前記第2基部から前記第1インシュレータ側に延在する第2延在部とを有し、
前記軸方向において、前記第1延在部と前記第2延在部との間に隙間が形成され、
前記隙間は、前記隙間の位置が前記軸方向における前記ステータコアの長さの中間位置より前記第1基部側もしくは前記第2基部側であり、前記中間位置の前記コイル巻線より曲率が大きい前記コイル巻線の部分に位置する車両用回転電機。
【請求項2】
前記隙間は、前記中間位置より前記第1基部もしくは前記第2基部に近い位置に設けられる請求項1に記載の車両用回転電機。
【請求項3】
曲率が大きい前記コイル巻線とは、前記第1基部と前記第1延在部との第1接合部もしくは前記第2基部と前記第2延在部との第2接合部に接触する前記コイル巻線の弧形状部である請求項1又は請求項2に記載の車両用回転電機。
【請求項4】
前記ステータコアと重畳する前記軸方向における前記第1延在部の長さと、前記ステータコアと重畳する前記軸方向における前記第2延在部の長さとの和は、前記軸方向における前記ステータコアの長さより短い請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用回転電機。
【請求項5】
前記第1インシュレータには2つの前記第1延在部を備えると共に、
前記第2インシュレータには2つの前記第2延在部を備え、
一方の前記第1延在部は他方の前記第1延在部よりも長く、
一方の前記第1延在部と対向する一方の前記第2延在部は、他方の前記第1延在部と対向する他方の前記第2延在部よりも短い請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記第1インシュレータ及び前記第2インシュレータは同形状である請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の車両用回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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