説明

車両用廃熱回収システム

【課題】潤滑油がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用でき、装置の小型化を図ることが可能な車両用廃熱回収システムを提供する。
【解決手段】一つの伝熱隔壁6によって胴部9の内部を、冷却液2が作動媒体3と熱交換を行う主室7と潤滑油4が作動媒体3と熱交換を行う後室8に区分した蒸発器5を用いる。これにより、潤滑油4がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用し、構成機器数の増加を抑えて装置の小型化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用廃熱回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を搭載した車両の廃熱回収手段には、ランキンサイクルを利用して内燃機関の廃熱を運動エネルギーに変換し、更に、電気エネルギーに変換するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の内燃機関の廃熱利用装置では、エンジンの冷却液回路を循環する冷却液がエンジンの廃熱から回収した熱エネルギーを、冷却液回路とランキンサイクル回路との結合要素となる蒸発器によって、ランキンサイクル回路を循環する作動流体に授けるとともに、作動流体が授かった熱エネルギーを膨張機によって運動エネルギーに変換し、更に、膨張機の運動エネルギーを発電機によって電気エネルギーに変換している。
【0004】
膨張機から送出される作動流体は、凝縮器において外気との熱交換により凝縮液化され、気液二層状態で受液器に貯留され、液化した作動流体がポンプにより前記蒸発器へ送給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−196342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の内燃機関の廃熱利用装置をはじめとしたランキンサイクルによる廃熱回収手段では冷却液を熱源としているが、エンジンの潤滑油循環経路を循環する潤滑油がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用することは行われていない。
【0007】
そこで、今までの冷却液から熱エネルギーを回収する蒸発器に加えて、潤滑油から熱エネルギーを回収する蒸発器を設けることが考えられるものの、構成機器数が増加して装置が大型化するため、車両に適用しにくくなる、という問題が生じる。
【0008】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、潤滑油がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用でき、装置の小型化を図ることが可能な車両用廃熱回収システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の車両用廃熱回収システムは、
内部が伝熱隔壁によって複数の室に区分された胴部に、該胴部の一端、各室内部、伝熱隔壁、及び胴部の他端を貫通し且つ内部に作動媒体が流通し得る伝熱通路部材を設けた蒸発器と、
リザーブタンクに貯留されている作動媒体を前記蒸発器の伝熱通路部材の主室側端部に送給する作動媒体循環ポンプと、
前記蒸発器の伝熱通路部材の後室側端部から送出される過熱蒸気化した作動媒体の膨張によって回転し且つ発電機を駆動する蒸気タービンと、
該蒸気タービンを回転させた後の作動媒体を凝縮液化させて前記リザーブタンクへ返す凝縮器とを備え、
車両内を循環する冷却液が前記蒸発器の一つの室内部を流通し得るように構成し、
車両内を循環する油が前記蒸発器の他の室内部を流通し得るように構成したことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の車両用廃熱回収システムは、請求項1に記載の車両用廃熱回収システムにおいて、
蒸発器の胴部は、一つの伝熱隔壁によって一端側の主室と他端側の後室とに区分され、
伝熱通路部材は、胴部の一端、主室内部、伝熱隔壁、後室内部、及び胴部の他端を貫通し、
冷却液が前記蒸発器の主室内部を流通し得るように、冷却液循環経路のエンジン冷却液出口とラジエータとの間に蒸発器の主室を組み込み、
潤滑油が前記蒸発器の後室内部を流通し得るように、潤滑油循環経路のエンジン潤滑油出口とオイルクーラとの間に蒸発器の後室を組み込んだものである。
【0011】
請求項2に記載の車両用廃熱回収システムでは、一つの伝熱隔壁によって胴部の内部を、冷却液が作動媒体と熱交換を行う主室と、潤滑油が作動媒体と熱交換を行う後室に区分した蒸発器を用いているので、潤滑油がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用することができ、しかも、構成機器数が増加しないため、装置の小型化を図ることが可能になる。
また、潤滑油の温度が充分に昇温されるまでの間、冷却液の熱エネルギーは潤滑油循環経路から蒸発器の後室内部に流入した潤滑油に伝熱隔壁を介して伝達され、この結果、潤滑油の温度が上昇するので、当該潤滑油の粘性に起因したエンジン各部の抵抗を減少させることができる。
【0012】
請求項3に記載の車両用廃熱回収システムは、請求項1に記載の車両用廃熱回収システムにおいて、
蒸発器の胴部は、第1、第2の伝熱隔壁によって一端側の前室と第1、第2の伝熱隔壁間の主室と他端側の後室とに区分され、
伝熱通路部材は、胴部の一端、前室内部、第1の伝熱隔壁、主室内部、第2の伝熱隔壁、及び胴部の他端を貫通し、
トランスミッションオイルが前記蒸発器の前室内部を流通し得るように、トランスミッションオイル循環経路のトランスミッション外部に位置する個所に蒸発器の前室を組み込み、
冷却液が前記蒸発器の主室内部を流通し得るように、冷却液循環経路のエンジン冷却液出口とラジエータとの間に蒸発器の主室を組み込み、
潤滑油が前記蒸発器の後室内部を流通し得るように、潤滑油循環経路のエンジン潤滑油出口とオイルクーラとの間に蒸発器の後室を組み込んだものである。
【0013】
請求項3に記載の車両用廃熱回収システムでは、第1、第2の伝熱隔壁によって胴部の内部を、トランスミッションオイルが作動媒体と熱交換を行う前室と、冷却液が作動媒体と熱交換を行う主室と、潤滑油が作動媒体と熱交換を行う後室に区分した蒸発器を用いているので、トランスミッションオイルがトランスミッション各部から得た熱エネルギー、及び潤滑油がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用することができ、しかも、構成機器数が増加しないため、装置の小型化を図ることが可能になる。
潤滑油の温度が充分に昇温されるまでの間、冷却液の熱エネルギーは潤滑油循環経路から蒸発器の後室内部に流入した潤滑油に第2の伝熱隔壁を介して伝達され、この結果、潤滑油の温度が上昇するので、当該潤滑油の粘性に起因したエンジン各部の抵抗を減少させることができる。
更に、トランスミッションオイルの温度が充分に昇温されるまでの間、冷却液の熱エネルギーはトランスミッションオイル循環経路から蒸発器の前室内部に流入したトランスミッションオイルに第1の伝熱隔壁を介して伝達され、この結果、トランスミッションオイルの温度が上昇するので、当該トランスミッションオイルの粘性に起因したトランスミッション各部の抵抗を減少させることができる。
【0014】
請求項4に記載の車両用廃熱回収システムは、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用廃熱回収装置において、
油の温度を計測する温度センサと、
該温度センサの検出値に基づいて作動媒体循環ポンプに指令信号を送るコントローラとを備え、
油の温度が予め定めておいた第1の温度に達した際に、作動媒体循環ポンプに定常回転数で運転を行う指令信号を出力し、この後、油の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度を下回った際に、作動媒体循環ポンプに定常運転時よりも低い回転数で運転を行う指令信号を出力し、更に、油の温度が前記第2の温度よりも低い第3の温度を下回った際に、作動媒体循環ポンプに運転をしない指令信号を出力し、この後、油の温度が前記第2の温度を上回った際に、作動媒体循環ポンプに定常回転数で運転を行う指令信号を出力し得るように前記コントローラを構成したものである。
【0015】
請求項4に記載した車両用廃熱回収システムでは、温度センサの検出値に基づき、潤滑油の温度が第1、第2の温度よりも低い第3の温度を下回った場合に、作動媒体循環ポンプを停止させるので、エンジンが過冷却状態にならない。
【0016】
請求項5に記載の車両用廃熱回収システムは、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用廃熱回収システムにおいて、
冷却液温度を計測する温度センサと、
該温度センサの検出値に基づいて作動媒体循環ポンプに指令信号を送るコントローラとを備え、
冷却液の温度が予め定めておいた第1の温度に達した際に、作動媒体循環ポンプに定常回転数で運転を行う指令信号を出力し、この後、冷却液の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度を下回った際に、作動媒体循環ポンプに定常運転時よりも低い回転数で運転を行う指令信号を出力し、更に、冷却液の温度が前記第2の温度よりも低い第3の温度を下回った際に、作動媒体循環ポンプに運転をしない指令信号を出力し、この後、冷却液の温度が前記第2の温度を上回った際に、作動媒体循環ポンプに定常回転数で運転を行う指令信号を出力し得るように前記コントローラを構成したものである。
【0017】
請求項5に記載した車両用廃熱回収システムでは、温度センサの検出値に基づき、冷却液の温度が第1、第2の温度よりも低い第3の温度を下回った場合に、作動媒体循環ポンプを停止させるので、エンジンが過冷却状態にならない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用廃熱回収システムによれば、下記のような優れた作用効果を奏し得る。
【0019】
(1)請求項1に記載の車両用廃熱回収システムでは、伝熱隔壁によって胴部の内部を、冷却液が作動媒体と熱交換を行う室と、油が作動媒体と熱交換を行う室に区分した蒸発器を用いているので、油がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用することができ、しかも、構成機器数が増加しないため、装置の小型化を図ることが可能になる。
【0020】
(2)また、油の温度が充分に昇温されるまでの間、冷却液の熱エネルギーは伝熱隔壁を介して潤滑油に伝達され、この結果、油の温度が上昇するので、当該油の粘性に起因したエンジン各部の抵抗を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の車両用廃熱回収システムの第1の例を示す概念図である。
【図2】本発明の車両用廃熱回収システムの第2の例を示す概念図である。
【図3】本発明の車両用廃熱回収システムの第3の例を示す概念図である。
【図4】本発明の車両用廃熱回収システムの第4の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0023】
図1は本発明の車両用廃熱回収システムの第1の例を示すもので、本発明の特徴部分は、車両用エンジンに併設されるランキンサイクル経路1に、冷却液2がエンジンの廃熱から回収した熱エネルギーを作動媒体3に授け、次いで、潤滑油4がエンジン各部から得た熱エネルギーを前記作動媒体3に授ける、という熱交換を二段階にわたって行う蒸発器5を用いた点にある。
【0024】
蒸発器5は、内部が一つの伝熱隔壁6によって一端側の主室7と他端側の後室8とに区分された胴部9に、該胴部9の一端、主室7内部、伝熱隔壁6、後室8内部、及び胴部9の他端を貫通し且つ内部に作動媒体3が流通し得る伝熱通路部材10を設けている。
【0025】
主室7は、冷却液循環経路のエンジン冷却液出口とラジエータとの間に組み込まれており、11は、主室7内部に連通するように胴部9に接続した入側の冷却液流路、12は、主室7内部に連通するように胴部9に接続した出側の冷却液流路である。よって、エンジンの定常運転状態においては、温度が100℃程度の冷却液2が主室6内部に流入することになる。
【0026】
後室8は、潤滑油循環経路のエンジン潤滑油出口とオイルクーラとの間に組み込まれており、13は、後室8内部に連通するように胴部9に接続した入側の潤滑油流路、14は、後室8内部に連通するように胴部9に接続した出側の潤滑油流路、15は、潤滑油循環ポンプ出口での潤滑油4の温度を計測する温度センサである(潤滑油4の温度は、オイルパンで計測するようにしてもよい)。よって、エンジンの定常運転状態においては、温度が110℃程度の潤滑油4が後室8内部に流入することになる。
【0027】
ランキンサイクル経路1は、上述した蒸発器5と、過熱蒸気化した作動媒体3の膨張により回転し且つ発電機16を駆動する蒸気タービン17と、当該蒸気タービン17を回転させた後の作動媒体3を外気により冷却して液化させる凝縮器18と、作動媒体3を貯留するリザーブタンク19と、モータ20によって駆動され且つリザーブタンク19に貯留されている作動媒体3を吸引して吐出する作動媒体循環ポンプ21とを備えている。
【0028】
作動媒体循環ポンプ21の吐出口は、作動媒体流路22を介して蒸発器5の胴部9一端側の伝熱通路部材10入口に接続され、当該蒸発器5の他端側の伝熱通路部材10出口は、作動媒体流路23を介して蒸気タービン17の入口に接続され、当該蒸気タービン17の出口は、作動媒体流路24を介して凝縮器18の入口に接続され、当該凝縮器18の出口は、作動媒体流路25を介してリザーブタンク19の入口に接続されている。
【0029】
作動媒体循環ポンプ21の吸引口には、リザーブタンク19に貯留されている液体状の作動媒体3を吸い込むための作動媒体流路26が接続されている。モータ20と作動媒体循環ポンプ21とは、リザーブタンク19の内部に収容されており、構成機器の外見的な体積の縮小を図っている。また、リザーブタンク19内外の気密性が確保されていれば、
作動媒体循環ポンプ21に対する作動媒体流路22,26の接続個所の気密性は特に重視しなくてもよい。
【0030】
更に、図1に示す車両用廃熱回収システムには、前記温度センサ15の検出値に基づきランキンサイクル経路1の作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20を発動停止させるコントローラ27が付帯している。ここでは、コントローラ27を独立した形で表しているが、実際には、車載のエンジン制御ユニットを利用したものである。
【0031】
コントローラ27は、エンジン始動後、温度センサ15の検出値(潤滑油循環ポンプ出口における潤滑油4の温度)が予め定めておいた第1の温度(95℃)に達した際に、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に定常回転数で運転を行う指令信号を出力する機能と、この後、エンジンの運転状態に起因して温度センサ15の検出値が前記第1の温度よりも低い第2の温度(85℃)を下回った際に、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に定常運転時よりも低い回転数で運転を行う指令信号を出力する機能と、更に、温度センサ15の検出値が前記第2の温度よりも低い第3の温度(80℃)を下回った際に、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に運転をしない指令信号を出力する機能と、この後、温度センサ15の検出値が前記第2の温度(85℃)を上回った際に、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に定常回転数で運転を行う指令信号を出力する機能とを具備している。
【0032】
図1に示す車両用廃熱回収システムでは、長時間駐車していた車両のエンジンを始動した直後は、冷却液循環経路内の冷却液2の温度及び潤滑油循環経路内の潤滑油4の温度は、いずれも外気温度位で第1の温度(95℃)には程遠いので、コントローラ27は作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に運転をしない指令信号を送信する。
【0033】
通常、冷却液循環経路では、当該経路の組み込んであるサーモスタットの機能により、冷却液2の温度が、例えば85℃を上回るまでの間は、冷却液2はラジエータを通過しないので、エンジンの廃熱は積極的に放出されず、いわゆる暖気運転が行われることになる。この結果、エンジンの廃熱から熱エネルギーを回収した冷却液2の温度が上昇する。
【0034】
熱エネルギーを回収した冷却液2は、冷却液循環経路の冷却液流路11から蒸発器5の主室7内部に流入し、潤滑油4の温度が充分に昇温されるまでの間、前記冷却液2の熱エネルギーは潤滑油循環経路の潤滑油流路13から蒸発器5の後室8内部に流入した潤滑油4に伝熱隔壁6を介して伝達される。この結果、潤滑油4の温度が上昇し、当該潤滑油4の粘性に起因したエンジン各部の抵抗が減少することになる。
【0035】
エンジンが全体的に温まり、冷却液2の温度が85℃を上回ると、サーモスタットの機能により冷却液2がラジエータを通過する状態となって、エンジンは暖気運転から定常運転に移行する。このとき、潤滑油循環経路を循環する潤滑油4は、エンジン各部を冷却して熱エネルギーを得る。
【0036】
エンジンが定常運転に移行した後、温度センサ15の検出値(潤滑油循環ポンプ出口における潤滑油4の温度)が予め定めておいた第1の温度(95℃)に達すると、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に対してコントローラ27から定常回転数で運転を行う指令信号が出力され、作動媒体3が、作動媒体循環ポンプ21、作動媒体流路22、蒸発器5の伝熱通路部材10、作動媒体流路23、蒸気タービン17、作動媒体流路24、凝縮器18、作動媒体流路25、リザーブタンク19の順で循環し始め、温度が100℃程度の冷却液2が主室6内部に流入するとともに、温度が110℃程度の潤滑油4が後室8内部に流入するようになる。
【0037】
蒸発器5では、主室7内部に流入した冷却液2の熱エネルギーが伝熱通路部材10内部を流通する液体状の作動媒体3に伝達され、当該作動媒体3が蒸気化する。更に、後室8内部に流入した潤滑油4の熱エネルギーが、伝熱通路部材10を流通する蒸気化した作動媒体3に伝達され、当該作動媒体3が過熱蒸気化する。
【0038】
そして、蒸発器5の伝熱通路部材10から送出される過熱蒸気化した作動媒体3の膨張によって回転する蒸気タービン17が発電機16を駆動し、当該蒸気タービン17を回転させた後の作動媒体3は凝縮器18で液化され、リザーブタンク19へと戻る。よって、作動媒体3が授かった熱エネルギーが電気エネルギーに変換されることになる。
【0039】
この後、エンジンの負荷が小さくなることに起因して、温度センサ15の検出値が前記第1の温度よりも低い第2の温度(85℃)を下回った場合には、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に対してコントローラ27から定常運転時よりも低い回転数で運転を行う指令信号が出力され、ランキンサイクル経路1を循環する単位時間あたりの作動媒体3の量が少なくなる。よって、電気エネルギーに変換される熱エネルギーの量は減るが、エンジンが過冷却状態になることが抑制される。
【0040】
更に、温度センサ15の検出値が前記第2の温度よりも低い第3の温度(80℃)を下回った場合には、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に対してコントローラ27から運転をしない指令信号が出力され、ランキンサイクル経路1の作動媒体3の循環が停止する。よって、電気エネルギーに変換される熱エネルギーは無くなるが、エンジン過冷却状態にならない。
【0041】
この後、エンジンの負荷が大きくなることに起因して、温度センサ15の検出値が前記第2の温度(85℃)を上回った場合には、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に対してコントローラ27から定常回転数で運転を行う指令信号が出力され、ランキンサイクル経路1を循環する単位時間あたりの作動媒体3の量が多くなる。よって、電気エネルギーに変換される熱エネルギーの量が増える。
【0042】
図1に示す車両廃熱回収システムでは、一つの伝熱隔壁6によって胴部9の内部を、冷却液2が作動媒体3と熱交換を行う主室7と、潤滑油4が作動媒体3と熱交換を行う後室8に区分した蒸発器5を用いているので、潤滑油4がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用することができ、しかも、構成機器数が増加しないため、装置の小型化を図ることが可能になる。
【0043】
また、潤滑油4の温度が充分に昇温されるまでの間、冷却液2の熱エネルギーは潤滑油循環経路の潤滑油流路13から蒸発器5の後室8内部に流入した潤滑油4に伝熱隔壁6を介して伝達され、この結果、潤滑油4の温度が上昇するので、当該潤滑油4の粘性に起因したエンジン各部の抵抗を減少させることができる。
【0044】
これに加えて、温度センサ15の検出値、すなわち、潤滑油4の温度が第1、第2の温度よりも低い第3の温度を下回った場合に、作動媒体循環ポンプ21を停止させるので、エンジンが過冷却状態にならない。
【0045】
図2は本発明の車両用廃熱回収システムの第2の例を示すもので、本発明の特徴部分は、トランスミッション内部と外部の間でトランスミッションオイル28を循環させるトランスミッションオイル循環経路を備え、車両用エンジンに併設されるランキンサイクル経路29に、まず、トランスミッションオイル28がトランスミッション内部で得た熱エネルギーを作動媒体3に授け、冷却液2がエンジンの廃熱から回収した熱エネルギーを前記作動媒体3に授け、次いで、潤滑油4がエンジン各部から得た熱エネルギーを前記作動媒体3に授ける、という熱交換を三段階にわたって行う蒸発器30を用いた点にあり、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0046】
蒸発器30は、内部が第1の伝熱隔壁31及び第2の伝熱隔壁32によって一端側の前室33と両伝熱隔壁31,32間の主室34と他端側の後室35とに区分された胴部36に、該胴部36の一端、前室33内部、第1の伝熱隔壁31、主室34内部、第2の伝熱隔壁32、後室35内部、及び胴部36の他端を貫通し且つ内部に作動媒体3が流通し得る伝熱通路部材10を設けている。
【0047】
前室33は、トランスミッションオイル潤滑経路に組み込まれており、37は、前室33内部に連通するように胴部36に接続した入側のトランスミッションオイル流路、38は、主室7内部に連通するように胴部36に接続した出側の冷却液流路である。よって、エンジンの定常運転状態においては、温度が80℃〜90℃程度のトランスミッションオイル28冷却液2が前室33内部に流入することになる。
【0048】
主室34は、冷却液循環経路のエンジン冷却液出口とラジエータとの間に組み込まれており、11は、主室34内部に連通するように胴部36に接続した入側の冷却液流路、12は、主室34内部に連通するように胴部36に接続した出側の冷却液流路である。よって、エンジンの定常運転状態においては、温度が100℃程度の冷却液2が主室34内部に流入することになる。
【0049】
後室35は、潤滑油循環経路のエンジン潤滑油出口とオイルクーラとの間に組み込まれており、13は、後室35内部に連通するように胴部36に接続した入側の潤滑油流路、14は、後室35内部に連通するように胴部36に接続した出側の潤滑油流路、15は、潤滑油循環ポンプ出口での潤滑油4の温度を計測する温度センサである(潤滑油4の温度は、オイルパンで計測するようにしてもよい)。よって、エンジンの定常運転状態においては、温度が110℃程度の潤滑油4が後室35内部に流入することになる。
【0050】
ランキンサイクル経路1は、上述した蒸発器30、発電機16を駆動する蒸気タービン17、凝縮器18、リザーブタンク19、及びモータ20によって駆動される作動媒体循環ポンプ21を備え、作動媒体循環ポンプ21の吐出口は、作動媒体流路22を介して蒸発器30の胴部36一端側の伝熱通路部材10入口に接続され、当該蒸発器30の他端側の伝熱通路部材10出口は、作動媒体流路23を介して蒸気タービン17の入口に接続されている。また、図2に示す車両用廃熱回収システムにも、前記温度センサ15の検出値に基づき作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20を発動停止させるコントローラ27が付帯している。
【0051】
図2に示す車両用廃熱回収システムでは、冷却液循環経路の組み込んであるサーモスタットの機能により、エンジン始動後の冷却液2の温度が、例えば85℃を上回るまでの間は、冷却液2はラジエータを通過しないので、エンジンの廃熱は積極的に放出されず、いわゆる暖気運転が行われることになる。この結果、エンジンの廃熱から熱エネルギーを回収した冷却液2の温度が上昇する。
【0052】
熱エネルギーを回収した冷却液2は、冷却液循環経路の冷却液流路11から蒸発器30の主室34内部に流入し、潤滑油4の温度が充分に昇温されるまでの間、前記冷却液2の熱エネルギーは潤滑油循環経路の潤滑油流路13から蒸発器30の後室35内部に流入した潤滑油4に第2の伝熱隔壁32を介して伝達される。この結果、潤滑油4の温度が上昇し、当該潤滑油4の粘性に起因したエンジン各部の抵抗が減少することになる。
【0053】
また、通常、トランスミッションオイル28自体の温度は、車両がある程度走行しないと上昇しないが、この車両用発熱回収システムにおいては、前記冷却液2の熱エネルギーが、トランスミッションオイル経路のトランスミッションオイル流路37から蒸発器30の前室33内部に流入したトランスミッションオイル28に第1の伝熱隔壁31を介して伝達される。この結果、トランスミッションオイル28の温度が上昇し、当該トランスミッションオイル28の粘性に起因したトランスミッション各部の抵抗が減少することになる。
【0054】
エンジンが全体的に温まり、エンジンが定常運転に移行した後、温度センサ15の検出値(潤滑油循環ポンプ出口における潤滑油4の温度)が予め定めておいた第1の温度(95℃)に達すると、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に対してコントローラ27から定常回転数で運転を行う指令信号が出力され、作動媒体3が、作動媒体循環ポンプ21、作動媒体流路22、蒸発器30の伝熱通路部材10、作動媒体流路23、蒸気タービン17、作動媒体流路24、凝縮器18、作動媒体流路25、リザーブタンク19の順で循環し始め、温度が80℃〜90℃程度のトランスミッションオイル28が前室33内部に流入し、温度が100℃程度の冷却液2が主室34内部に流入するとともに、温度が110℃程度の潤滑油4が後室35内部に流入するようになる。
【0055】
蒸発器30では、前室33内部に流入したトランスミッションオイル28の熱エネルギー、並びに主室34内部に流入した冷却液2の熱エネルギーが伝熱通路部材10内部を流入した液体状の作動媒体3に伝達され、当該作動媒体3が蒸気化する。更に、後室35内部に流入した潤滑油4の熱エネルギーが、伝熱通路部材10を流通する蒸気化した作動媒体3に伝達され、当該作動媒体3が過熱蒸気化する。
【0056】
そして、蒸発器30の伝熱通路部材10から送出される過熱蒸気化した作動媒体3の膨張によって回転する蒸気タービン17が発電機16を駆動し、当該蒸気タービン17を回転させた後の作動媒体3は凝縮器18で液化され、リザーブタンク19へと戻る。よって、作動媒体3が授かった熱エネルギーが電気エネルギーに変換されることになる。
【0057】
これ以降のコントローラ27の作動は、図1に示すものと同様なので説明を省く。
【0058】
図2に示す車両廃熱回収システムでは、第1、第2の伝熱隔壁31,32によって胴部36の内部を、トランスミッションオイル28が作動媒体3と熱交換を行う前室33と、冷却液2が作動媒体3と熱交換を行う主室34と、潤滑油4が作動媒体3と熱交換を行う後室35に区分した蒸発器30を用いているので、トランスミッションオイル28がトランスミッション各部から得た熱エネルギー、及び潤滑油4がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用することができ、しかも、構成機器数が増加しないため、装置の小型化を図ることが可能になる。
【0059】
また、潤滑油4の温度が充分に昇温されるまでの間、冷却液2の熱エネルギーは潤滑油循環経路の潤滑油流路13から蒸発器30の後室35内部に流入した潤滑油4に第2の伝熱隔壁32を介して伝達され、この結果、潤滑油4の温度が上昇するので、当該潤滑油4の粘性に起因したエンジン各部の抵抗を減少させることができる。
【0060】
更に、トランスミッションオイル28の温度が充分に昇温されるまでの間、冷却液2の熱エネルギーはトランスミッションオイル循環経路のトランスミッションオイル流路37から蒸発器30の前室33内部に流入したトランスミッションオイル28に第1の伝熱隔壁31を介して伝達され、この結果、トランスミッションオイル28の温度が上昇するので、当該トランスミッションオイル28の粘性に起因したトランスミッション各部の抵抗を減少させることができる。
【0061】
これに加えて、温度センサ15の検出値、すなわち、潤滑油4の温度が第1、第2の温度よりも低い第3の温度を下回った場合に、作動媒体循環ポンプ21を停止させるので、エンジンが過冷却状態にならない。
【0062】
図3は本発明の車両用廃熱回収システムの第3の例を示すもので、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0063】
この車両用廃熱回収システムでは、図1における温度センサ15及びコントローラ27に替えて、エンジン冷却液出口での冷却液2の温度を計測する温度センサ39と、該温度センサ15の検出値に基づきランキンサイクル経路1の作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20を発動停止させるコントローラ40とを用いている。ここでは、コントローラ40を独立した形で表しているが、実際には、車載のエンジン制御ユニットを利用したものである。
【0064】
コントローラ40は、エンジン始動後、温度センサ39の検出値(エンジン冷却液出口における冷却液2の温度)が予め定めておいた第1の温度(95℃)に達した際に、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に定常回転数で運転を行う指令信号を出力する機能と、この後、エンジンの運転状態に起因して温度センサ39の検出値が前記第1の温度よりも低い第2の温度(85℃)を下回った際に、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に定常運転時よりも低い回転数で運転を行う指令信号を出力する機能と、更に、温度センサ39の検出値が前記第2の温度よりも低い第3の温度(80℃)を下回った際に、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に運転をしない指令信号を出力する機能と、この後、温度センサ39の検出値が前記第2の温度(85℃)を上回った際に、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に定常回転数で運転を行う指令信号を出力する機能とを具備している。
【0065】
図3に示す車両用廃熱回収システムでは、長時間駐車していた車両のエンジンを始動した直後は、冷却液循環経路内の冷却液2の温度及び潤滑油循環経路内の潤滑油4の温度は、いずれも外気温度位で第1の温度(95℃)には程遠いので、コントローラ40は作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に運転をしない指令信号を送信する。
【0066】
エンジンが全体的に温まり、冷却液2の温度が85℃を上回ると、サーモスタットの機能により冷却液2がラジエータを通過する状態となって、エンジンは暖気運転から定常運転に移行する。このとき、潤滑油循環経路を循環する潤滑油4は、エンジン各部を冷却して熱エネルギーを得る。
【0067】
エンジンが定常運転に移行した後、温度センサ39の検出値(エンジン冷却液出口における冷却液2の温度)が予め定めておいた第1の温度(95℃)に達すると、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に対してコントローラ40から定常回転数で運転を行う指令信号が出力され、作動媒体3が、作動媒体循環ポンプ21、作動媒体流路22、蒸発器5の伝熱通路部材10、作動媒体流路23、蒸気タービン17、作動媒体流路24、凝縮器18、作動媒体流路25、リザーブタンク19の順で循環し始め、温度が100℃程度の冷却液2が主室6内部に流入するとともに、温度が110℃程度の潤滑油4が後室8内部に流入するようになる。
【0068】
蒸発器5では、主室7内部に流入した冷却液2の熱エネルギーが伝熱通路部材10内部を流通する液体状の作動媒体3に伝達され、当該作動媒体3が蒸気化する。更に、後室8内部に流入した潤滑油4の熱エネルギーが、伝熱通路部材10を流通する蒸気化した作動媒体3に伝達され、当該作動媒体3が過熱蒸気化する。
【0069】
そして、蒸発器5の伝熱通路部材10から送出される過熱蒸気化した作動媒体3の膨張によって回転する蒸気タービン17が発電機16を駆動し、当該蒸気タービン17を回転させた後の作動媒体3は凝縮器18で液化され、リザーブタンク19へと戻る。よって、作動媒体3が授かった熱エネルギーが電気エネルギーに変換されることになる。
【0070】
この後、エンジンの負荷が小さくなることに起因して、温度センサ39の検出値が前記第1の温度よりも低い第2の温度(85℃)を下回った場合には、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に対してコントローラ40から定常運転時よりも低い回転数で運転を行う指令信号が出力され、ランキンサイクル経路1を循環する単位時間あたりの作動媒体3の量が少なくなる。よって、電気エネルギーに変換される熱エネルギーの量は減るが、エンジンが過冷却状態になることが抑制される。
【0071】
更に、温度センサ39の検出値が前記第2の温度よりも低い第3の温度(80℃)を下回った場合には、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に対してコントローラ40から運転をしない指令信号が出力され、ランキンサイクル経路1の作動媒体3の循環が停止する。よって、電気エネルギーに変換される熱エネルギーは無くなるが、エンジン過冷却状態にならない。
【0072】
この後、エンジンの負荷が大きくなることに起因して、温度センサ39の検出値が前記第2の温度(85℃)を上回った場合には、作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20に対してコントローラ40から定常回転数で運転を行う指令信号が出力され、ランキンサイクル経路1を循環する単位時間あたりの作動媒体3の量が多くなる。よって、電気エネルギーに変換される熱エネルギーの量が増える。
【0073】
図3に示す車両廃熱回収システムでは、図1の車両用廃熱回収システムと同じ蒸発器5を用いているので、潤滑油4がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用することができ、しかも、構成機器数が増加しないため、装置の小型化を図ることが可能になり、潤滑油4の粘性に起因したエンジン各部の抵抗を減少させることができる。
【0074】
これに加えて、温度センサ39の検出値、すなわち、冷却液2の温度が第1、第2の温度よりも低い第3の温度を下回った場合に、作動媒体循環ポンプ21を停止させるので、エンジンが過冷却状態にならない。
【0075】
図4は本発明の車両用廃熱回収システムの第4の例を示すもので、図2、図3と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0076】
この車両用廃熱回収システムでは、図2における温度センサ15及びコントローラ27に替えて、図3の車両用廃熱回収システムで説明したエンジン冷却液出口での冷却液2の温度を計測する温度センサ39と、該温度センサ15の検出値に基づきランキンサイクル経路1の作動媒体循環ポンプ21を駆動するモータ20を発動停止させるコントローラ40とを用いている。
【0077】
図4に示す車両廃熱回収システムでは、図2の車両用廃熱回収システムと同じ蒸発器30を用いているので、トランスミッションオイル28がトランスミッション各部から得た熱エネルギー、及び潤滑油4がエンジン各部から得た熱エネルギーを有効利用することができ、しかも、構成機器数が増加しないため、装置の小型化を図ることが可能になり、トランスミッションオイル28の粘性に起因したトランスミッション各部の抵抗と、潤滑油4の粘性に起因したエンジン各部の抵抗の双方を減少させることができる。
【0078】
これに加えて、温度センサ39の検出値、すなわち、冷却液2の温度が第1、第2の温度よりも低い第3の温度を下回った場合に、作動媒体循環ポンプ21を停止させるので、エンジンが過冷却状態にならない。
【符号の説明】
【0079】
2 冷却液
3 作動媒体
4 潤滑油
5 蒸発器
6 伝熱隔壁
7 主室
8 後室
9 胴部
10 伝熱通路部材
11,12 冷却液流路(冷却液循環経路)
13,14 潤滑油流路(潤滑油循環経路)
15 温度センサ
16 発電機
17 蒸気タービン
18 凝縮器
19 リザーブタンク
20 モータ
21 作動媒体循環ポンプ
22,23,24,25,26 作動媒体流路
27 コントローラ
28 トランスミッションオイル
30 蒸発器
31 第1の伝熱隔壁
32 第2の伝熱隔壁
33 前室
34 主室
35 後室
36 胴部
37,38 トランスミッションオイル流路(トランスミッションオイル循環経路)
39 温度センサ
40 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が伝熱隔壁によって複数の室に区分された胴部に、該胴部の一端、各室内部、伝熱隔壁、及び胴部の他端を貫通し且つ内部に作動媒体が流通し得る伝熱通路部材を設けた蒸発器と、
リザーブタンクに貯留されている作動媒体を前記蒸発器の伝熱通路部材の主室側端部に送給する作動媒体循環ポンプと、
前記蒸発器の伝熱通路部材の後室側端部から送出される過熱蒸気化した作動媒体の膨張によって回転し且つ発電機を駆動する蒸気タービンと、
該蒸気タービンを回転させた後の作動媒体を凝縮液化させて前記リザーブタンクへ返す凝縮器とを備え、
車両内を循環する冷却液が前記蒸発器の一つの室内部を流通し得るように構成し、
車両内を循環する油が前記蒸発器の他の室内部を流通し得るように構成したことを特徴とする車両用廃熱回収システム。
【請求項2】
蒸発器の胴部は、一つの伝熱隔壁によって一端側の主室と他端側の後室とに区分され、
伝熱通路部材は、胴部の一端、主室内部、伝熱隔壁、後室内部、及び胴部の他端を貫通し、
冷却液が前記蒸発器の主室内部を流通し得るように、冷却液循環経路のエンジン冷却液出口とラジエータとの間に蒸発器の主室を組み込み、
潤滑油が前記蒸発器の後室内部を流通し得るように、潤滑油循環経路のエンジン潤滑油出口とオイルクーラとの間に蒸発器の後室を組み込んだ請求項1に記載の車両用廃熱回収システム。
【請求項3】
蒸発器の胴部は、第1、第2の伝熱隔壁によって一端側の前室と第1、第2の伝熱隔壁間の主室と他端側の後室とに区分され、
伝熱通路部材は、胴部の一端、前室内部、第1の伝熱隔壁、主室内部、第2の伝熱隔壁、及び胴部の他端を貫通し、
トランスミッションオイルが前記蒸発器の前室内部を流通し得るように、トランスミッションオイル循環経路のトランスミッション外部に位置する個所に蒸発器の前室を組み込み、
冷却液が前記蒸発器の主室内部を流通し得るように、冷却液循環経路のエンジン冷却液出口とラジエータとの間に蒸発器の主室を組み込み、
潤滑油が前記蒸発器の後室内部を流通し得るように、潤滑油循環経路のエンジン潤滑油出口とオイルクーラとの間に蒸発器の後室を組み込んだ請求項1に記載の車両用廃熱回収システム。
【請求項4】
油の温度を計測する温度センサと、
該温度センサの検出値に基づいて作動媒体循環ポンプに指令信号を送るコントローラとを備え、
油の温度が予め定めておいた第1の温度に達した際に、作動媒体循環ポンプに定常回転数で運転を行う指令信号を出力し、この後、油の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度を下回った際に、作動媒体循環ポンプに定常運転時よりも低い回転数で運転を行う指令信号を出力し、更に、油の温度が前記第2の温度よりも低い第3の温度を下回った際に、作動媒体循環ポンプに運転をしない指令信号を出力し、この後、油の温度が前記第2の温度を上回った際に、作動媒体循環ポンプに定常回転数で運転を行う指令信号を出力し得るように前記コントローラを構成した、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用廃熱回収システム。
【請求項5】
冷却液温度を計測する温度センサと、
該温度センサの検出値に基づいて作動媒体循環ポンプに指令信号を送るコントローラとを備え、
冷却液の温度が予め定めておいた第1の温度に達した際に、作動媒体循環ポンプに定常回転数で運転を行う指令信号を出力し、この後、冷却液の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度を下回った際に、作動媒体循環ポンプに定常運転時よりも低い回転数で運転を行う指令信号を出力し、更に、冷却液の温度が前記第2の温度よりも低い第3の温度を下回った際に、作動媒体循環ポンプに運転をしない指令信号を出力し、この後、冷却液の温度が前記第2の温度を上回った際に、作動媒体循環ポンプに定常回転数で運転を行う指令信号を出力し得るように前記コントローラを構成した、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用廃熱回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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