説明

車両用情報処理装置

【課題】車載ネットワークの通信状況を考慮して外部機器との通信を可能とする車両用情報処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ゲートウェイを介して通信する複数のネットワークを有する車載システムにおいて1つ又は複数のネットワークに繋がる車両用情報処理装置であって、ネットワークに繋がるノードに外部機器が接続された場合、各ネットワークの通信負荷情報及び外部機器の通信先ネットワークとの通信情報に基づいて外部機器との通信可否を判定するとともに通信可能な場合には通信方法を決定することを特徴とし、特に、ネットワーク毎に外部機器と通信を行った場合に増加する通信負荷を算出し、その増加分の通信負荷とネットワークの余裕分の通信負荷とを比較することによって外部機器との通信可否を判定すると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートウェイを介して通信する複数のネットワークを有する車載システムにおいて1つ又は複数のネットワークに繋がる車両用情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載のネットワークシステムとして複数のネットワークを有するシステムがあり、各ネットワークに複数のECU[Electronic Control Unit](ノード)が繋がる。このシステムでは、いくつかのECUが複数のネットワークと繋がる場合があるが、大部分のECUは1つのネットワークに繋がる。複数のネットワークに繋がるECUは、ネットワーク間を跨ぐ通信ができるようにゲートウェイとしての機能も担っている。特許文献1に記載の車載通信システムでは、複数のネットワークを有し、ゲートウェイを介して複数のネットワーク間で通信を行う場合、ゲートウェイにて各ネットワークの通信負荷を監視し、通信負荷が変化した場合には通信速度を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−211644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のユーザによって外部機器がネットワークに繋がるECUに接続され、ネットワークを介して外部機器と通信を行う場合がある。この場合、外部機器からの要求に応じて、外部機器と接続するECUに繋がらない他のネットワークに流れるデータをゲートウェイを介して外部機器に送信する場合、外部機器と接続するECUに繋がるネットワークには設計時に想定していないデータが流れ、ネットワークの通信負荷が増加する。また、外部機器からネットワークにデータを流す場合も、ネットワークには設計時に想定していないデータが流れるので、ネットワークの通信負荷が増加する。このような場合、増加した通信負荷によって設計保証されているネットワークの許容通信負荷を超えると、ネットワークにおけるECU間の通常の通信に影響を及ぼす(例えば、データロス、通信遅延)。特許文献1には外部機器が接続されることは記載されていないので、外部機器が接続した場合の通信負荷については考慮されていない。
【0005】
そこで、本発明は、車載ネットワークの通信状況を考慮して外部機器との通信を可能とする車両用情報処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用情報処理装置は、ゲートウェイを介して通信する複数のネットワークを有する車載システムにおいて1つ又は複数のネットワークに繋がる車両用情報処理装置であって、ネットワークに繋がるノードに外部機器が接続された場合、各ネットワークの通信負荷情報及び外部機器の通信先ネットワークとの通信情報に基づいて、外部機器との通信可否を判定するとともに通信可能な場合には通信方法を決定することを特徴とする。
【0007】
この車両用情報処理装置は、ゲートウェイを介して通信する複数のネットワークを有する車載システムにおいて、1つ又は複数のネットワークに繋がる情報処理装置である。車両用情報処理装置は、例えば、ゲートウェイ、外部機器が接続されるノード、それ以外のネットワークに繋がるノードである。任意のネットワークに繋がるノードに外部機器が接続された場合、車両用情報処理装置では、各ネットワークの通信負荷情報及び外部機器の通信先ネットワークとの通信情報に基づいて外部機器との通信が可能か否かを判定し、通信可能と判定した場合には通信方法を決定する。外部機器は、例えば、スマートフォン(特に、ナビゲーション機能等)、路車間用の通信装置、車車間用の通信装置、センタとの通信用の通信装置である。外部機器の通信先ネットワークとの通信情報は、外部機器が要求するデータ通信の情報であり、例えば、データの種類(ネットワークに流れているデータの他にも、ネットワークに流れていないデータの場合もある)、データの通信精度(ビット数又はバイト数、物理単位/分解能、更新タイミング等)の情報である。これらの情報に基づいて、外部機器と通信した場合に各ネットワークにおいて増加する通信負荷(データ量)が判る。また、ネットワークの通信負荷情報は、ネットワークにおけるノード間の通常の通信を行った場合の通信負荷の情報であり、例えば、ネットワークにおける通常の通信を行った場合の余裕分の通信負荷(データ量)、ネットワークにおける通常の通信を行った場合の最大通信負荷、ネットワークにおける許容通信負荷等である。これらのネットワークの通信負荷情報と外部機器と通信した場合に増加する通信負荷とに基づいて、外部機器と通信を行った場合に通信負荷がネットワークにおける許容通信負荷を超えるか否か、どの程度超えるかあるいはどの程度余るか等が判る。したがって、外部機器の通信が可能か否かを判定でき、通信可能な場合には通信方法(例えば、外部機器からの要求通りの通信、外部機器からの要求を下げて通信、外部機器の通信の優先度を下げて通信)も決定できる。ネットワークにおける許容通信負荷を超える場合にはネットワークの通常の通信に影響(データロス、通信遅延等)を及ぼすので、ネットワークの通常の通信に影響を及ぼさないように通信可否の判定や通信方法の決定を行う必要がある。このように、車両用情報処理装置では、ネットワークの通信状況を考慮して、外部機器との通信によって通信負荷が増加した場合の外部機器との通信可否の判定や通信可能なときの通信方法の決定を行うことにより、外部機器が接続された場合にネットワークでの通常の通信に影響を与えずに外部機器と通信を行うことができる。
【0008】
本発明の上記車両用情報処理装置では、ネットワーク毎に、外部機器の通信先ネットワークとの通信情報に基づいて外部機器と通信を行った場合に増加する通信負荷を算出し、該算出した増加分の通信負荷とネットワークの余裕分の通信負荷とを比較することによって外部機器との通信可否を判定すると好適である。
【0009】
この車両用情報処理装置では、外部機器との通信で増加する通信負荷を算出し、その増加分の通信負荷とネットワークの余裕分の通信負荷(ネットワークにおけるノード間の通常の通信を行っているときの通信負荷(特に、最大通信負荷)とネットワークにおける許容通信負荷との差)とを比較することより、ネットワークにおける通常の通信に影響を与えることなく外部機器との通信が可能か否かを高精度に判定できる。
【0010】
本発明の上記車両用情報処理装置では、ネットワーク毎に、外部機器との通信の優先度以上の優先度を有する通信によってネットワークが使用されている各時間についての確率分布に基づいて外部機器との通信可否の判定及び/又は通信方法の決定を行うと好適である。
【0011】
この車両用情報処理装置では、ネットワーク毎に、ネットワークにおけるノード間の通常の通信において外部機器との通信の優先度以上の優先度を有する通信によってネットワークが使用されている各時間についての確率をそれぞれ求める。例えば、ある時間の確率が80%の場合、その時間において外部機器との通信を1度行える可能性が80%である。したがって、各時間についての確率と外部機器が要求している更新タイミングとを比較することによって、外部機器が要求している更新タイミングでの通信がどの程度可能かが判る。そこで、車両用情報処理装置では、各時間についての確率分布と外部機器が要求する通信先ネットワークとの通信情報(更新タイミング、更新タイミングを長くしてもよい許容量等)に基づいて外部機器との通信可否の判定や通信方法の決定を高精度に行うことができる。
【0012】
本発明の上記車両用情報処理装置では、外部機器との通信がネットワークでの通常の通信に影響を及ぼす可能性がある場合、通信精度又は優先度を下げて外部機器との通信を行う構成としてもよい。
【0013】
外部機器が要求する通信精度に基づいて通信を行うと、ネットワークにおける通常の通信に影響を及ぼす可能性がある場合、外部機器が要求する通信精度又は外部機器の現在の優先度での通信はできない。そこで、車両用情報処理装置では、外部機器との通信がネットワークでの通常の通信に影響を及ぼす可能性がある場合、外部機器との通信精度(更新タイミングを長くする等)又は外部機器の通信の優先度を下げることによって外部機器との通信の負荷を少なくし、外部機器との通信を可能とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ネットワークの通信状況を考慮して、外部機器との通信によって通信負荷が増加した場合の外部機器との通信可否の判定や通信可能なときの通信方法の決定を行うことにより、外部機器が接続された場合にネットワークでの通常の通信に影響を与えずに外部機器と通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係る車載ネットワークシステムの構成図である。
【図2】車両のモード毎のネットワークにおける余裕分のデータ量の閾値の一例である。
【図3】車両の任意のモードでの外部機器との通信の優先度以上の優先度の通信によってネットワークが使用される時間(通信に隙間のない時間)の確率分布(ヒストグラム)の一例である。
【図4】外部機器へ送信するデータの流れの一例である。
【図5】本実施の形態に係る外部機器と通信を行う場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態に係る外部機器の通信可否判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態に係る外部機器との通信中に動的に切り替える場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】他の形態の車載ネットワークシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用情報処理装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
本実施の形態に係る車載ネットワークシステムは、少なくとも2つのネットワークを有し、各ネットワークに複数のECU(ノード)が繋がり、ネットワーク間にゲートウェイが設けられる。特に、本実施の形態に係る車載ネットワークシステムには、車両のユーザによって後付けで外部機器が接続される。本実施の形態に係る車載ネットワークシステムでは、本発明に係る車両用情報処理装置の機能を主にゲートウェイで担い、一部の機能をネットワークに繋がるECUで担う場合もある。なお、各ネットワークでは、各データ通信に対して優先度(優先順位)がそれぞれ設定されており、優先度が高いデータ通信を優先して通信を行っている。外部機器との通信の優先度は、通常は低い優先度である(最下位の優先度でない場合もある)。
【0018】
図1〜図4を参照して、本実施の形態に係る車載ネットワークシステム1について説明する。図1は、本実施の形態に係る車載ネットワークシステムの構成図である。図2は、車両のモード毎のネットワークにおける余裕分のデータ量の閾値の一例である。図3は、車両の任意のモードでの外部機器との通信の優先度以上の優先度の通信によってネットワークが使用される時間(通信に隙間のない時間)の確率分布(ヒストグラム)の一例である。図4は、外部機器へ送信するデータの流れの一例である。
【0019】
車載ネットワークシステム1は、車両内に、少なくとも第1ネットワーク11及び第2ネットワーク12が構成される。第1ネットワーク11には第1ECU21、第2ECU22等が接続され、第2ネットワーク12には第3ECU23等が接続される。第1ネットワーク11と第2ネットワーク12との間にはゲートウェイ30が設けられる。特に、車載ネットワークシステム1には、第1ECU21に外部機器40が接続され、システム1での通常のECU間の通信に影響を及ぼさない範囲で外部機器40との通信を可能とする。なお、説明を判り易くするために、図1には2つのネットワーク11,12と3つのECU21,22,23のみを示しているが、ネットワークの数や各ネットワークに接続されるECUの数については任意である。
【0020】
外部機器40は、車両内の既存の機器ではなく、車両のユーザが持ち込む機器である。外部機器40としては、車両内のデータを必要としたり、車両にデータを提供する機器であり、例えば、スマートフォン(特に、ナビゲーション機能等)、路車間用の通信装置、車車間用の通信装置、センタとの通信用の通信装置がある。外部機器40は、その都度接続されて通信を行う場合、常時接続されて通信条件を満たしたときに通信を行う場合等がある。例えば、ユーザがスマートフォンのナビゲーション機能を利用したいときに接続し、その接続中に通信を行う場合、ユーザが路車間通信装置を常時接続しておき、車両が路車間通信エリア内に進入したときに通信を行う場合がある。
【0021】
外部機器40では、第1ECU21に接続されると、車両内に欲しいデータがある場合には、そのデータを要求するためのデータ要求信号を第1ECU21を送信する。データ要求信号には、要求するデータの種類の他に通信精度の情報が含まれる。また、外部機器40では、車載ネットワークシステム1に接続されると、外部機器40から送信するデータがある場合には、そのデータを送信するためのデータ送信信号を第1ECU21を送信する。データ送信信号には、送信するデータの種類の他に通信精度の情報が含まれる。
【0022】
なお、通信精度情報は、例えば、一定期間毎にデータ通信を行うタイム・トリガ型通信の場合にはデータのビット数、物理単位/分解能、更新タイミングがあり、データに変更があった場合に通信を行うイベント・ドリブン型通信の場合にはデータのビット数、物理単位/分解能、最小イベント発生時間がある。最小イベント発生時間は、更新タイミングとほぼ同等であるが、必ず更新されるわけではない点が異なる。最小イベント発生時間を定めなければならない理由は、この時間を設定していないと外部機器40との通信によってネットワーク11,12で増加する通信負荷を見積もることができないからである。通信精度情報には、外部機器40で本来欲しい精度の他に、最低限欲しい精度を含むようにしてもよい。最低限欲しい精度としては、例えば、更新タイミングをどの程度まで長くしてもよいか、データのビット数をどの程度まで少なくしてもよいか、物理単位/分解能をどの程度まで落としてもよいかの情報である。このような最低限欲しい精度を設定しておくことにより、外部機器40が本来欲しい精度での通信を行うとネットワーク11,12における通信の通信に影響を及ぼす可能性がある場合に、通信精度を下げて通信を可能とするためである。
【0023】
ネットワーク11,12は、CAN(イベント・ドリブン型)、FlexRay(タイム・トリガ型)等の車載LAN[Local Area Network]であり、第1ネットワーク11と第2ネットワーク12とは通信プロトコルが異なる。第1ネットワーク11には、第1ECU21、第2ECU22を含む複数のECUが接続される。第2ネットワーク12には、第3ECU23を含む複数のECUが接続される。第1ネットワーク11と第2ネットワーク12とは、ゲートウェイ30を介して通信可能である。
【0024】
ECU21,22,23・・・は、車両での各種制御を行うためのECUである。第1ネットワーク11に接続されるECU21,22・・・は、第1ネットワーク11を介してECU間のデータの送受信を行う。第2ネットワーク12に接続されるECU23・・・は、第2ネットワーク12を介してECU間のデータの送受信を行う。さらに、第1ネットワーク11に接続されるECU21,22・・・と第2ネットワーク12に接続されるECU23・・・とは、ゲートウェイ30を介して第1ネットワーク11と第2ネットワーク12間とが繋がり、データの送受信が可能である。
【0025】
特に、第1ECU21は、外部との通信機能を有するECUであり、外部機器40との通信を担うECUである。この外部機器40との通信を行うために、第1ECU21は、通常保持している第1ネットワーク11に流れるデータのリストの他に、第2ネットワーク12に流れるデータのリスト、第2ネットワーク12に接続するECU23が持っているデータのリスト、第1ネットワーク11に接続する他のECU22が持っているデータのリストを予め保持している。これらの各リストは、第1ECU21が保持していなくてもよく、ゲートウェイ30が保持していてもよいし、各ECU22,23に対して外部機器40が要求するデータを持っているか否かを問い合わせるようにしてもよい。なお、車両内のデータは殆どが静的に定まると考えられるので、上記のようなデータのリストを初めから用意できる。
【0026】
第1ECU21は、外部機器40が接続された場合に、以下の処理を行う。第1ECU21では、外部機器40での通信開始セッションで(外部機器40が接続され、外部機器40との通信開始時に)、外部機器40からデータ要求信号を受信する(外部機器40からデータを送信する場合にはデータ送信信号を受信する)。第1ECU21では、各データのリストを参照し、データ要求信号に含まれる外部機器40が要求するデータがどのネットワークに流れるデータかあるいはどのECUが持っているデータかを判定する。
【0027】
第2ネットワーク12に流れるデータを要求された場合、第1ECU21では、そのデータの種類と通信精度情報を用いてゲートウェイ30に対して要求し、外部機器40との通信を開始する。また、第2ネットワーク12に流れていないが、第3ECU23が持っているデータを要求された場合、第1ECU21では、そのデータの種類と通信精度情報を用いてゲートウェイ30に対して要求し、外部機器40との通信を開始する。第1ネットワーク11に流れていないが、第2ECU22が持っているデータを要求された場合、第1ECU21では、そのデータの種類と通信精度情報を用いて第2ECU22に対して要求し、外部機器40との通信を開始する。なお、第1ネットワーク11に流れるデータを要求された場合、第1ECU21自身でその要求に応じる。
【0028】
なお、第1ネットワーク11や第2ネットワーク12に流れていないデータには、ネットワーク11,12に流れている同じ種類のデータではあるが、流れているデータと通信精度情報が異なる場合、あるいは、ネットワーク11,12に流れている通信パケッ内に含まれる1つのデータの場合も含まれる。また、ネットワーク11,12に流れていないデータは、ECU22,23が持っている複数個のデータあるいはネットワーク11,12に流れる複数個のデータから加工して得られるデータの場合もある。
【0029】
ゲートウェイ30は、第1ネットワーク11と第2ネットワークとの間に設けられ、第1ネットワーク11と第2ネットワーク12とを接続する。ゲートウェイ30は、プロトコルの異なるネットワーク11,12間のデータ通信を行うために、一方のネットワークから受信したデータに対してプロトコル変換を行い、プロトコル変換したデータを他方のネットワークに転送する。特に、ゲートウェイ30は、第1ECU21に外部機器40が接続された場合に、以下の処理も行う。
【0030】
ゲートウェイ30では、外部機器40での通信開始セッションで、第1ECU21を介して外部機器40からの要求を受けた場合、各ネットワーク11,12での通信負荷を考慮し、外部機器40との通信が可能か否かを判定し、通信が可能な場合には通信方法(外部機器40からの要求の通信精度での通信、要求の通信精度を下げた通信、通信の優先度を下げた通信等)を決定し、データの通信精度情報やデータの加工方法等に応じて外部機器40と通信を行うためのパラメータを取り決める。外部機器40との通信が可能な場合、ゲートウェイ30では、決定した通信方法やパラメータに基づいてゲートウェイ30での設定を変更したり、第3ECU23での設定を変更させ、外部機器40との通信を開始する。外部機器40との通信中、車両でのモード変更に応じて、各ネットワーク11,12での通信負荷が変化するので、動的にゲートウェイ30での設定や第3ECU23での設定を変更する場合がある。そして、ゲートウェイ30では、外部機器40での通信終了セッションで、ゲートウェイ30での設定を元に戻したり、第3ECU23での設定を元に戻させ、外部機器40との通信を終了する。
【0031】
外部機器40との通信の可能性の判定について具体的に説明する。ゲートウェイ30は、車両のモード毎に、各ネットワーク11,12についてECU間の通常の通信における余裕分(空き)のデータ量の閾値の情報を保持している。車両のモードは、車両状態や動作機能等で分けられ、モードが変わると各ネットワーク11,12に流れるデータ量(通信負荷)が変わる。車両状態としては、例えば、車速、変速ギアがある。これらの車両状態が変わることによって、車両内で動作するアプリケーションが変わる。また、動作機能としては、例えば、レーンキープアシスト、駐車支援等のアプリケーションがある。これらのアプリケーションが変わることによって、各ネットワーク11,12に流れるデータが変わり、流れるデータ量が変わる。各モードは、動作するアプリケーションの組み合わせからなる。
【0032】
余裕分のデータ量(通信負荷)の閾値は、ネットワーク11,12毎に各モードについて設計段階で予め求められ、第1閾値と第2閾値がある。第1閾値は、外部機器40が要求の通信精度で通信を行っても、ネットワークにおける通常の通信に対して影響を与えないことを設計保証できる上限のデータ量である。第2閾値(>第1閾値)は、外部機器40の要求の通信精度で通信を行うとネットワークにおける通常の通信に対して影響を与えるが、外部機器40との通信の優先度を下げるかあるいは通信精度を下げることによって、ネットワークにおける通常の通信に対して影響を与えないようにすることができる上限のデータ量である。したがって、この第2閾値を超える場合には、外部機器40との通信を行うと、ネットワークにおける通常の通信に対して確実に影響を与える。
【0033】
図2には、各モードにおけるネットワークにおける余裕分のデータ量の閾値の例を示している。各モード(モードA、モードB・・・)には、第1閾値S1,S1・・・と第2閾値S2,S2・・・が設けられている。例えば、モードAやモードBの場合、このモードでの各アプリケーションが実行されるとネットワークに流れるデータ量が多いので、ネットワークにおける余裕分(空き)のデータ量が少なく、第1閾値S1,S1と第2閾値S2,S2は小さい値となっている。モードEの場合、このモードEでの各アプリケーションが実行されるとネットワークに流れるデータ量が少ないので、ネットワークにおける余裕分のデータ量が多く、第1閾値S1と第2閾値S2は大きい値となっている。
【0034】
ゲートウェイ30では、ネットワーク11,12毎に、外部機器40が要求の通信精度で通信を行った場合に増加するデータ量(通信負荷)を見積もる(算出する)。見積もる増分のデータ量は、外部機器40がデータ送信を要求している場合には外部機器40に送信するためのデータの通信によって増加するデータ量であり、外部機器40からデータを送信する場合には外部機器40から送信されるデータの通信によって増加するデータ量がある。そして、ゲートウェイ30では、ネットワーク11,12毎に、車両で現在動作しているモードについて、その見積もった増分のデータ量が第1閾値以下か否かを判定する。増分のデータ量が第1閾値以下の場合、ゲートウェイ30では、外部機器40との通信が可能と判定し、通信方法も外部機器40が要求の通信精度での通信と決定する(通信の優先度も変えない)。増分のデータ量が第1閾値より多い場合、ゲートウェイ30では、増分のデータ量が第2閾値以下か否かを判定する。増分のデータ量が第2閾値以下の場合、ゲートウェイ30では、ネットワークにおける通信負荷を詳細に見積もる。増分のデータ量が第2閾値より多い場合、ゲートウェイ30では、外部機器40との通信が不可と判定し、外部機器40との通信を終了する。
【0035】
ネットワーク11,12における通信負荷を詳細に見積もるために、ゲートウェイ30では、ネットワーク11,12毎に、各モードについてのネットワークが使用されている状況を監視しておく。そして、詳細に見積もる場合、ゲートウェイ30では、現在動作しているモードについて、ネットワーク11,12毎に、外部機器40との通信の優先度以上の優先度を有する通信によってネットワークが連続して使用される各時間とその時間の確率を示す確率分布(ヒストグラフム)を生成する。この各時間は、外部機器40との通信の優先度以上の優先度を有する各データ通信の要求が出されている場合に優先度順にデータ通信が行われてネットワークが使用されており、その間はそれより低い優先度のデータ通信ができない時間であり、通信に隙間のない時間である。この時間が短いほど、外部機器40との通信の優先度以上の優先度を有するデータ通信によってネットワークが使用されている時間が短く、ネットワークが空いている時間が長い。
【0036】
図3には、横軸を通信に隙間のない時間とし、縦軸をその各時間の確率としたヒストグラムであり、あるモードでの一例を示している。図3に示される20%、40%、・・・は、各%を示す破線より左側の確率を積算した値である。したがって、例えば、図3では、0.3msのところで80%となっているが、これは、外部機器40との通信の優先度以上の優先度を有するデータ通信がネットワークを連続して使用する時間が0.3ms以下である確率が80%であり、このモードでは外部機器40の優先度の場合には0.3msに一度通信が行える可能性が80%である。なお、外部機器40との通信の優先度は最下位の優先度とは限らないので、上記のヒストグラムを各優先度以上のものを生成してもよい。
【0037】
ゲートウェイ30では、ネットワーク11,12毎に、現在動作しているモードの上記のヒストグラムに基づいて、外部機器40が要求の通信精度で通信が可能か否かを判定する。例えば、外部機器40が要求の通信精度や優先度を変えることが不可の場合、外部機器40が要求する更新タイミング(時間)がヒストグラムにおいて100%となる時間より長くなければ、外部機器40との通信が不能である。外部機器40が要求の通信精度や優先度を下げることが可能な場合、外部機器40が要求する更新タイミング(時間)がヒストグラムにおいて100%となる時間より長くなくても、外部機器40との通信が可能である。外部機器40との通信が可能と判定した場合、ゲートウェイ30では、外部機器40とベストエフォードでも通信を行う価値があるか否かを判断し、価値がある場合には外部機器40が許容可能な範囲まで通信精度を下げるかあるいは優先度を下げる。通信精度を下げる場合、例えば、更新タイミングを長くしたり、データのビット数を少なくしたり、データの分解能を落とす。この際、外部機器40に対して、通信精度や優先度を下げてまで通信を行うか否かを問い合わせてもよい。
【0038】
なお、外部機器40と通信を行うことによって、上記に見積もったヒストグラフで示す確率よりも更に確率が低下するので、外部機器40との通信の優先度(最下位の優先度でない場合)よりも低い優先度を有する通信に影響を与える。この場合、外部機器40との通信の優先度を下げて、その低い優先度を有する通信に影響を与えないようにしてもよい。また、複数のネットワーク11,12で通信の空きの時間が揃わない場合、ゲートウェイ30では空き時間を揃えるためにデータをバッファする必要がある。
【0039】
外部機器40との通信は、一回だけでなく、実際には複数回行われることが考えられる。そこで、外部機器40と通信を行った場合、ゲートウェイ30では、その外部機器40との通信も含めた各モードにおけるネットワークの通信状況の情報、通信の際に通常の通信に影響を与えた情報や外部機器40との通信が途絶えた情報等及び見積もった情報(外部機器40との通信の増分のデータ量、ヒストグラフ等)を蓄積しておく。そして、ゲートウェイ30では、外部機器40との2度目以降の通信の際に、蓄積している見積もった情報や外部機器40との通信分も加えたネットワークの通信状況の情報等を用いて、上記の通信可否の判定や通信方法の決定を行う。
【0040】
外部機器40との通信を行うと判定した場合、ゲートウェイ30では、外部機器40が要求の通信精度で通信を行うと決定した場合にはその要求の通信精度や優先度に従ってデータ通信のパラメータを取り決め、要求の通信精度又は優先度よりも下げて通信を行うと決定した場合には下げた通信精度や優先度に従ってパラメータを取り決める。そして、ゲートウェイ30では、取り決めたパラメータに従ってデータ通信の設定を変更し、変更した設定で外部機器40に対するデータ通信を行う。
【0041】
例えば、図4に示す例の場合、外部機器40から第2ネットワーク12に流れる通信パケットP1に含まれる1つのデータ(位置データ)が要求され、要求の通信精度がデータのビット数が16bitであり、物理単位(LSB)が1mmまでの分解能であり、更新タイミングが0.5msに一回であり、実際に第2ネットワーク12に流れる通信パケットP1に含まれるデータのビット数が32bitであり、物理単位が0.1mmまでの分解能であり、更新タイミングが0.1msに一回である。図4に示すように、第2ネットワーク12を流れる通信パケットP1には、ヘッドに加えて、データとして32bitの位置データとその他にもデータが含まれている。ゲートウェイ30では、この通信パケットP1を0.1ms毎に受信し、バッファリングする。そして、ゲートウェイ30では、タイマTによって0.5msを計測し、0.5m毎にバッファリングしている通信パケットP1に含まれる32bitの位置データ(最新データでもよいし、0.5msの間にバッファリングした位置データの平均値でもよい)の少数点以下を四捨五入し(データの分解能を落とす)、その四捨五入後の位置データを16bitのデータをとして格納した通信パケットP2を生成し、その通信パケットP2を第1ネットワーク11を介して第1ECU21に送信する。第1ECU21では、その通信パケットP2を受信する毎に、通信パケットP2から16bitの位置データを取り出して、外部機器40に送信する。この例の場合、第2ネットワーク11に流れたいたときよりも更新タイミングが長くなっており、分解能を落としてビット数も少なくなっているので、第1ネットワーク11での通信負荷は抑制できる。
【0042】
ゲートウェイ30では、外部機器40がネットワークに流れていないデータを要求した場合(第3ECU23が持っている複数個のデータから生成することが可能なデータを要求した場合)、第3ECU23で複数個のデータを用いて要求するデータに加工させ、加工したデータを第2ネットワーク12を介して第3ECU23から受信する。第3ECU23では、ゲートウェイ30からの指示に応じて、データ送信の設定を変更する。そして、第3ECU23では、変更した設定で複数個のデータを加工し、その加工したデータを第2ネットワーク12に流す。この際、ゲートウェイ30では、加工可能なデータとその加工処理を行うECUを予め定めておき、その加工対象のデータのリストや加工方法(加工処理関数等)をそのECU(例えば、第3ECU23)に送信して、加工処理を依頼する。このように、第3ECU23等で加工処理によって1つのデータにしてネットワークに流すことによって、第2ネットワーク12及び第1ネットワーク11での通信負荷を抑制できる。なお、ゲートウェイ30でも加工処理はできるが、第2ネットワーク12には第3ECU23から複数個のデータが流れることになる。
【0043】
なお、モードによって各ECUの動作機能、処理負荷、各ネットワーク11,12の通信負荷が変わる場合、モード毎に加工処理を行うECUを定めて、モード毎に定めたECUで動的に加工処理を行ってもよい。また、外部機器40において要求データを車両内のECUが持ってい複数個のデータを加工して生成できると判断した場合、外部機器40からその複数個のデータのリストと加工方法を車両側に伝え、ゲートウェイ30で加工処理を行うECUを定めて、そのECUに外部機器40からの伝えられたデータのリストと加工方法を送るようにしてもよい。
【0044】
なお、ゲートウェイ30では、外部機器40との通信中、車両のモードが変更された否かを検出しており、モードが変更された場合には変更されたモードについて上記の各処理を行い、必要に応じてデータ通信の設定の変更を行う。
【0045】
ゲートウェイ30では、外部機器40での通信終了セッションで、外部機器40との通信での設定を元に戻すとともに、第3ECU23において設定を変更している場合にはその設定を元に戻させる。
【0046】
なお、外部機器40からゲートウェイ30を経由しないデータが要求されている場合、上記で説明したゲートウェイ30での各処理を、第1ECU21あるいは第2ECU22において行う。
【0047】
図1〜図4を参照して、外部機器40が第1ECU21に接続され、通信を行う場合の車載ネットワークシステム1における動作を図5〜図7のフローチャートに沿って説明する。図5は、本実施の形態に係る外部機器と通信を行う場合の処理の流れを示すフローチャートである。図6は、本実施の形態に係る外部機器の通信可否判定処理の流れを示すフローチャートである。図7は、本実施の形態に係る外部機器との通信中に動的に切り替える場合の処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、外部機器40が第2ネットワーク12に流れるデータを要求した場合についての動作を説明する。
【0048】
ユーザによって、外部機器40が第1ECU21に接続される(S10)。外部機器40では第1ECU21にデータ要求信号を送信し、第1ECU21ではそのデータ要求信号を受信する(S10)。外部機器40との通信の開始セッションにおいて、第1ECU21では、各データベース11,12や各ECU22,23のデータのリストを参照し、データ要求信号において外部機器40が要求するデータがどのネットワークに流れるデータかあるいはどのECUが持っているデータかを判定する(S11)。第2ネットワーク12に流れるデータを要求された場合、第1ECU21では、そのデータの種類と通信精度情報を用いてゲートウェイ30に対して要求する(S11)。
【0049】
ゲートウェイ30では、外部機器40が要求の通信精度に基づいて、外部機器40と通信を行った場合の増分のデータ量(通信負荷)を見積もる(S20)。そして、外部機器40では、ネットワーク11,12毎に、現在動作しているモードについて、その増分のデータ量がネットワークにおける余裕分のデータ量の第1閾値以下か否かを判定する(S21)。S21にて増分のデータ量が第1閾値以下と判定した場合(両方のネットワーク11,12について)、ゲートウェイ30では、外部機器40が要求の通信精度及び現在の優先度で、外部機器40との通信が可能と判定する(S22)。
【0050】
S21にて増部分のデータ量が第1閾値より大きいと判定した場合、ゲートウェイ30では、ネットワーク11,12毎に、現在動作しているモードについて、増分のデータ量がネットワークにおける余裕分のデータ量の第2閾値以下か否かを判定する(S23)。S23にて増分のデータ量が第2閾値より大きいと判定した場合(少なくとも一方のネットワークについて)、ゲートウェイ30では、外部機器40との通信が不可と判定し(S24)、通信不可情報を第1ECU21に送信する。第1ECU21では、外部機器40との通信を終了する。
【0051】
S23にて増分のデータ量が第2閾値以下と判定した場合(両方のネットワーク11,12について)、ゲートウェイ30では、ネットワーク11,12毎に、現在動作しているモードについての通信負荷を詳細に見積もる(外部機器40との通信の優先度以上の優先度を有する通信によって通信に隙間のない各時間とその確率からなるヒストグラフを生成する)(S25)。そして、ゲートウェイ30では、ネットワーク11,12毎に、生成したヒストグラフと外部機器40の通信精度情報に基づいて、外部機器40との通信の優先度又は通信精度を下げれば通信可能か否かを判定する(S26)。この際、外部機器40に対して通信の優先度又は通信精度を下げても通信を行うか否かを問い合わせてもよい。S26にて外部機器40との通信の優先度又は通信精度を下げれば通信可能と判定した場合、ゲートウェイ30では、優先度又は通信精度を下げて外部機器40との通信が可能と判定する(S27)。
【0052】
通信可能と判定した場合、ゲートウェイ30では、S22で外部機器40が要求の通信精度で通信を行うと決定した場合には要求の通信精度及び現在の優先度に従ってデータ通信のパラメータを取り決め、S27で要求の通信精度又は現在の優先度よりも下げて通信を行うと決定した場合には下げた通信精度又は優先度に従ってデータ通信のパラメータを取り決める(S11)。そして、ゲートウェイ30では、取り決めたパラメータに従ってデータ送信の設定を変更する(S11)。
【0053】
なお、外部機器40が第3ECU23が持っている複数個のデータからなるデータを要求している場合、第3ECU23では送信データを加工するために設定の変更を行う(S11)。また、外部機器40が第2ECU22が持っている複数個のデータからなるデータを要求している場合、第2ECU22では送信データを加工するために設定の変更を行う(S11)。また、外部機器40が第1ネットワーク11に流れているデータ又は第2ECU22が持っているデータを要求している場合、ゲートウェイ30を介さないので、第1ECU21が上記のゲートウェイ30と同様の処理を行い、第1ECU21において必要な設定の変更を行う(S11)。
【0054】
そして、ゲートウェイ30では、第2ネットワーク12に流れている外部機器40が要求しているデータを受信する毎に変更した設定に従って処理を行い、更新タイミング毎に外部機器40が要求しているデータからなる通信パケットを第1ECU21に送信する(S12)。第1ECU21では、その通信パケットを受信すると、通信パケットに含まれる外部機器40が要求するデータを取り出し、そのデータを外部機器40に送信する(S12)。外部機器40では、そのデータを受信する。
【0055】
外部機器との通信中、車両のモードが変更する場合があるので、ゲートウェイ30では、一定時間毎に、車両のモードが変更しているかを検出する(S30)。S30にてモードが変更していない場合、ゲートウェイ30では、変更している設定を継続する。S30にてモードの変更を検出した場合、モードの変更に応じて各ネットワーク11,12に流れるデータが変化し、通信負荷が変わるので(S31)、ゲートウェイ30では、その変更したモードについて上記のS20〜S27と同様の処理を行う。そして、ゲートウェイ30では、上記と同様に、取り決めたパラメータに従って設定を再度変更する(S32)。なお、各ECU21,22,23において、設定を変更する必要がある場合も設定を再度変更する。
【0056】
外部機器40が第1ECU21から接続が切り離された場合あるいは外部機器40の通信条件を満たさなくなった場合(例えば、路車間通信装置が接続されており、車両が路車間通信エリアから出た場合)、通信の終了セッションにおいて、ゲートウェイ30では、変更した設定を元に戻す(S13)。なお、第3ECU23や第2ECU22が送信データを加工するために設定の変更している場合には設定を元に戻し、第1ECU21が設定を変更している場合には設定を元に戻す(S13)。そして、外部機器40との通信を終了する。
【0057】
この車載ネットワークシステム1によれば、ネットワーク11,12の通信状況を考慮して、外部機器40との通信によって通信負荷が増加した場合の外部機器40との通信可否の判定や通信可能なときの通信方法の決定を行うことにより、外部機器40が接続された場合にネットワーク11,12での通常の通信に影響を与えずに外部機器40と通信を行うことができる。特に、車載ネットワークシステム1では、車両のモードに応じて処理を行うことにより(車両のモードに応じてネットワーク11,12における通信負荷が変化するので)、車両のモードに応じて外部機器40との通信可否の判定や通信方法の決定を高精度に行うことができる。そのため、外部機器40との通信中に車両のモードが変更しても動的に対応でき、車両のモードが変化した場合でもネットワーク11,12での通常の通信に影響を与えずに外部機器40と通信を行うことができる。
【0058】
また、車載ネットワークシステム1によれば、外部機器40との通信で増加するデータ量(通信負荷)を見積もり、その増加分のデータ量と各ネットワーク11,12における余裕分のデータ量の閾値とを比較することより、外部機器40との通信が可能か否かを高精度に判定できる。特に、車載ネットワークシステム1では、2つの第1閾値と第2閾値を設定しているので、外部機器40と通信が可能か否かを詳細に判定できる。
【0059】
また、車載ネットワークシステム1によれば、外部機器40との通信の優先度以上の優先度を有する通信によってネットワークが連続して使用されている各時間とその確率からなるヒストグラムを求めることにより、そのヒストグラムと外部機器が要求の通信精度に基づいて外部機器との通信可否の判定や通信方法の決定を高精度に行うことができる。
【0060】
また、車載ネットワークシステム1によれば、外部機器40と通信を行った場合にはそのときの見積もり情報や通信中の外部機器40との通信も含めた通信負荷情報等を蓄積しておき、外部機器40と次回通信を行うときにその蓄積している情報(過去データ)を用いて見積もりや判定等を行うことにより、処理負荷(処理時間)を低減できるとともに見積もりや判定の精度も向上できる。
【0061】
また、車載ネットワークシステム1によれば、外部機器40との通信がネットワーク11,12での通常の通信に影響を及ぼす可能性がある場合、外部機器40との通信精度又は優先度を下げることによって、外部機器40との通信の負荷を少なくして、外部機器40との通信を可能とすることができる。
【0062】
また、車載ネットワークシステム1によれば、第1ECU21で各ECU22,23のデータのリストを持つことにより、外部機器40の要求に応じてネットワーク11,12に流れていないデータも外部機器40に送信できる。また、車載ネットワークシステム1によれば、外部機器40の要求に応じて任意のECUが持っている複数のデータをそのECU内(あるいは、ゲートウェイ30内)で加工し、1つのデータとしてネットワーク11,12に流すので、ネットワーク11,12の通信負荷を抑制できる。
【0063】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0064】
例えば、本実施の形態では2つのネットワークを有し、ネットワーク間にゲートウェイが設けられる車載ネットワークシステムに適用したが、他の構成のネットワークシステムでもよい。図8には、他の形態の車載ネットワークシステムの一例を示しており、車載ネットワークシステム2は、第1ECU21が第1ネットワーク11及び第2ネットワーク12に接続され、第1ECU21がゲートウェイとしても機能する。この場合、ゲートウェイ単体は必要ないが、ゲートウェイ機能を担う第1ECU21に高い性能が望まれる。
【0065】
また、本実施の形態では車両用情報処理装置の機能を主にゲートウェイが担う構成としたが、他の構成でもよく、例えば、外部機器が接続されるECUが車両用情報処理装置の機能を主に担う構成としてもよいし、それ以外のネットワークに繋がるECUが車両用情報処理装置の機能を主に担う構成としてもよい。
【0066】
また、本実施の形態では外部機器が1台接続される場合について説明したが、外部機器が複数台接続される場合にも適用可能である。複数台の外部機器を接続する場合、外部機器間の優先度も設定する必要がある。
【0067】
また、本実施の形態ではネットワークの通信負荷情報として各モードでのネットワークにおける余裕分のデータ量の閾値としたが、ネットワークの通信負荷情報として、各モードでネットワークに流れる最大のデータ量とネットワークの許容最大データ量等の他の情報でもよい。閾値としては、2つの第1閾値と第2閾値を設けたが、1つだけでもよい(第1閾値相当する閾値かあるいは第2閾値に相当する閾値)。
【0068】
また、本実施の形態ではネットワークにおける通信負荷を詳細に見積もる方法として通信に隙間のない各時間とその確率からなるヒストグラフを用いた方法を示したが、他の方法でネットワークにおける通信負荷を詳細に見積もってもよい。
【0069】
また、車両がセンタとの通信が可能であり、センタにおいて各車両から情報を収集し、センタから各車両に情報を提供するシステムが構築されている場合には以下のようなこともできる。センタにおいて、外部機器と通信を行うときの増分のデータ量(通信負荷)やヒストグラム、外部機器と通信を行った場合にはその外部機器との通信分も加えた各モードにおけるネットワークの通信状況の情報、通常の通信に影響を与えた情報や外部機器との通信で途絶えた情報等を、各車両から収集する。そして、センタにおいて、同じ車載ネットワークシステムを持つ車両から収集した情報を集計し、その集計した情報を解析し、集計情報や解析情報を各車両に提供する。各車両では、このようなセンタからの情報を用いて見積もったり、通信可否の判定等を行う。これによって、処理負荷を軽減できたり、判定等の精度を向上でき、特に、外部機器と通信を一度も行っていない場合でも処理負荷の軽減や精度向上の効果が得られる。
【符号の説明】
【0070】
1…車載ネットワークシステム、11…第1ネットワーク、12…第2ネットワーク、21…第1ECU、22…第2ECU、23…第3ECU、30…ゲートウェイ、40…外部機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートウェイを介して通信する複数のネットワークを有する車載システムにおいて1つ又は複数のネットワークに繋がる車両用情報処理装置であって、
ネットワークに繋がるノードに外部機器が接続された場合、各ネットワークの通信負荷情報及び外部機器の通信先ネットワークとの通信情報に基づいて、外部機器との通信可否を判定するとともに通信可能な場合には通信方法を決定することを特徴とする車両用情報処理装置。
【請求項2】
ネットワーク毎に、外部機器の通信先ネットワークとの通信情報に基づいて外部機器と通信を行った場合に増加する通信負荷を算出し、該算出した増加分の通信負荷とネットワークの余裕分の通信負荷とを比較することによって外部機器との通信可否を判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用情報処理装置。
【請求項3】
ネットワーク毎に、外部機器との通信の優先度以上の優先度を有する通信によってネットワークが使用されている各時間についての確率分布に基づいて外部機器との通信可否の判定及び/又は通信方法の決定を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用情報処理装置。
【請求項4】
外部機器との通信がネットワークでの通常の通信に影響を及ぼす可能性がある場合、通信精度又は優先度を下げて外部機器との通信を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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