説明

車両用成形カーペット、車両用成形カーペットの製造方法

【課題】ダクトに一体に並設されたクッションスペーサの弾性によって、カーペット本体の上部から加わる力によるダクトの変形又は破損を防ぐ車両用成形カーペットと、この車両用成形カーペットの製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】車両用成形カーペット11は、車体のフロアパネル12の上面の形状に沿って成形されたカーペット本体17aと、空調用のダクト14と、クッションスペーサ15等とを有している。
このカーペット本体17aの裏面側には、熱可塑性樹脂の樹脂層17bが形成されていて、この樹脂層17bの加熱加圧成形の際の溶融によって、ダクト14が接合されると共に、このダクト14が接合されていない残余部に、クッションスペーサ15が一体に接合される。
従って、このカーペット本体17aを敷設することによって、フロアパネル12上に、ダクト14とクッションスペーサ15とが並べられて配設されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のフロアパネルの上面の形状に沿った形状に成形された車両用成形カーペットと、この車両用成形カーペットの製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から図16に示されるような自動車用カーペット1が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
まず、図16及び図17に基づいて、この自動車用カーペット1の構成について説明する。
【0004】
図16に示されるように、車体のフロアパネル2は、車幅方向中央に上方に突設形成されたフロアトンネル2aと、このフロアトンネル2aの左右に平坦部2b,2bと、フロアトンネル2a及び平坦部2b,2bの各境界に境界部2c,2c等とを有している。
【0005】
また、自動車用カーペット1は、予め車体のフロアパネル2の上面形状に、ほぼ沿った形状に成形された成形フェルト3と、境界部2c,2c近傍の成形フェルト3上に配設されたヒータダクト4,4と、この成形フェルト3及びヒータダクト4,4の上面の形状に沿って成形されたカーペット5等とで構成されている。
【0006】
このカーペット5は、カーペット本体5aと、カーペット本体5aの裏面側に予め被覆された樹脂層5bとを有して形成されている。
【0007】
しかも、カーペット5の樹脂層5bの溶融によって、このカーペット5が、成形フェルト3及びヒータダクト4,4の上面に熱溶着されている。
【0008】
このため、自動車用カーペット1は、裏面に樹脂層5bが設けられたカーペット5と、この樹脂層5bに溶着された成形フェルト3と、このカーペット5及び成形フェルト3の間に介装されたヒータダクト4、4等とが一体に形成されている。
【0009】
次に、この従来の自動車用カーペット1の製造方法と作用について説明する。
【0010】
図17に示されるように、プレス装置の下型6の上面形状は、図16に示されるような車体のフロアパネル2の上面形状にほぼ沿った形状に形成されている。
【0011】
この下型6には、下型6の中央に上方に突設した突設部6aと、この突設部6aの左右に平面部6b,6bと、突設部6a及び平面部6b,6bの各境界に境界部6c,6c等とが設けられている。
【0012】
まず、このプレス装置の下型6の上面に、この下型6の上面形状に予め成形された成形フェルト3を敷設する。
【0013】
そして、境界部6c,6c近傍の成形フェルト3上にヒータダクト4、4を配置して、この成形フェルト3及びヒータダクト4、4の上面と上型7との間に、裏面の樹脂層5bを加熱溶融したカーペット5を挿入する。
【0014】
更に、図17に示されるように、上型7を下降させて、カーペット5を加圧成形すると共に、カーペット5の裏面の溶融された樹脂層5bによって、カーペット5と、ヒータダクト4,4と、成形フェルト3とを溶着する。
【0015】
このため、図16に示されるように、自動車用カーペット1は、カーペット5と、ヒータダクト4、4と、成形フェルト3等とが一体に形成されて、この車体のフロアパネル2の上面形状に沿った形状に成形される。
【0016】
従って、この自動車用カーペット1を車体のフロアパネル2上に敷設すると、このフロアパネル2上の境界部2c,2c近傍に、ヒータダクト4、4を配設することができる。
【特許文献1】実公昭64−7040号公報(第2頁乃至第6頁、図1又は図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来の自動車用カーペット1では、ヒータダクト4に周設された成形フェルト3は薄くて弾性が弱いために、カーペット本体5aの上側から加わる力によって、ヒータダクト4が、変形又は破損する恐れがあった。
【0018】
そこで本発明では、ダクトの変形又は破損を防ぐために、フロアパネル上にカーペット本体が敷設される際に、ダクトと、このダクトの高さより高さが高いクッションスペーサとが並べて配設されるように、カーペット本体の裏面側にダクトを接合すると共に、このダクトを接合しない残余部にクッションスペーサを一体に接合する。
【0019】
このようにダクトに一体に並設されたクッションスペーサによって、カーペット本体の上部から加わる力によるダクトの変形又は破損を防ぐことができる車両用成形カーペットと、この車両用成形カーペットの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、車体のフロアパネル上に、該フロアパネルの上面の形状に沿って成形されたカーペット本体を敷設し、前記フロアパネルとの間に、ダクト及びクッションスペーサを介装するカーペット本体を有する車両用成形カーペットであって、
前記カーペット本体の裏面側に、予め前記ダクトが接合されると共に、該ダクトが接合されていない残余部に、前記ダクトの高さより高さが高い前記クッションスペーサが一体に接合されて、前記カーペット本体を敷設する際に、前記フロアパネル上に、前記ダクトと前記クッションスペーサとが、並べられて配設される車両用成形カーペットを特徴としている。
【0021】
そして、請求項2に記載された発明は、前記カーペット本体の裏面側に、前記ダクト及び前記クッションスペーサが加熱加圧成形によって溶着される熱可塑性樹脂の樹脂層が形成されている請求項1記載の車両用成形カーペットを特徴としている。
【0022】
また、請求項3に記載された発明は、前記ダクトは上側部材及び下側部材に分割されて、少なくとも前記下側部材には、前記上側部材と接合されるフランジ部が、側縁部に外側方向に向けて形成されている請求項1又は2記載の車両用成形カーペットを特徴としている。
【0023】
更に、請求項4に記載された発明は、前記上側部材のフランジ部、又は、前記上側部材の裏面側の一部は、前記下側部材のフランジ部と接合されて、前記上側部材が所定の面剛性を有している請求項3記載の車両用成形カーペットを特徴としている。
【0024】
そして、請求項5に記載された発明は、前記クッションスペーサの側縁部上面に、前記下側部材のフランジ部が係止される請求項1乃至4のうち何れか一項記載の車両用成形カーペットを特徴としている。
【0025】
また、請求項6に記載された発明は、前記上側部材の上面と、前記クッションスペーサの上面とが車両上下方向で、略面一となる請求項3乃至5のうち何れか一項記載の車両用成形カーペットを特徴としている。
【0026】
更に、請求項7に記載された発明は、前記下側部材のフランジ部及び該フランジ部と接合された前記上側部材が、前記クッションスペーサの側縁部上面と、前記カーペット本体の裏面との間に挟持されている請求項1乃至6のうち何れか一項記載の車両用成形カーペットを特徴としている。
【0027】
そして、請求項8に記載された発明は、前記カーペット本体の車室内側に、前記ダクトの端部に形成された吹出口部を、該車室内の空間に露出させるカーペット開口部が開口形成されると共に、該カーペット開口部の周縁が、前記ダクトに密着されている請求項1乃至7記載の車両用成形カーペットを特徴としている。
【0028】
また、請求項9に記載された発明は、前記ダクトの端部に形成された吹出口部の下側に、前記下側部材に設けられた段差によって、車両用のオプションマットの車両前方の前端部が係止される請求項8記載の車両用成形カーペットを特徴としている。
【0029】
更に、請求項10に記載された発明は、前記ダクトと前記フロアパネルとの間に、スペーサ部材が配設されている請求項1乃至9のうち何れか一項記載の車両用成形カーペットを特徴としている。
【0030】
そして、請求項11に記載された発明は、前記フロアパネルに対応した形状の下型の所定位置に、前記クッションスペーサ及び前記ダクトを配置する工程と、前記下型の上側に加熱した前記カーペット本体を配置する工程と、
前記下型に対応した上型と前記下型とで加圧して、前記カーペット本体の裏面側に、前記ダクト及び前記クッションスペーサを各々接合すると共に、該カーペット本体を前記フロアパネルの形状に沿った形状に成形する工程とを有する請求項1乃至10記載の車両用成形カーペットの製造方法を特徴としている。
【0031】
また、請求項12に記載された発明は、前記ダクトが有する前記下側部材の接合されたフランジ部を、前記クッションスペーサによって係止して、前記下側部材の下側と、プレス装置の下型との間に間隙を設けて、前記上側部材の上面と、前記クッションスペーサの上面とが、上下方向で略面一になるようにして、前記樹脂層の表面に溶着することによって、該上側部材の上面と、該クッションスペーサの上面とに、加熱加圧成形による圧力が、略均一に加わる請求項11記載の車両用成形カーペットの製造方法を特徴としている。
【0032】
更に、請求項13に記載された発明は、前記ダクトを前記上側部材及び前記下側部材に分割して成形することによって、該ダクトの成形が、前記上側部材と、前記下側部材とで各々個別に行えるために、前記ダクトに一定の強度を与えることが可能になる請求項11又は12記載の車両用成形カーペットの製造方法を特徴としている。
【0033】
そして、請求項14に記載された発明は、前記ダクトは前記上側部材及び前記下側部材に分割されて、前記フロアパネルに対応した形状の下型の所定位置に、前記クッションスペーサ及び前記上側部材を配置する工程と、前記下型の上側に加熱した前記カーペット本体を配置する工程と、
前記下型に対応した上型と前記下型とで加圧して、前記カーペット本体に、前記上側部材及び前記クッションスペーサを各々接合すると共に、該カーペット本体を前記フロアパネルの形状に沿った形状に成形する工程と、
前記カーペット本体の裏面側に接合された前記上側部材に前記下側部材を接合する工程とを有する請求項11記載の車両用成形カーペットの製造方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0034】
このように構成された本願発明の請求項1記載のものは、前記カーペット本体が、車体の前記フロアパネルの上面の形状に沿って成形されると共に、前記カーペット本体の裏面側に、前記ダクトと前記ダクトの高さより高さが高い前記クッションスペーサとが一体に接合されるために、
前記カーペット本体を前記フロアパネル上に敷設する際に、前記ダクトと前記クッションスペーサとが、所定の位置に並べられて配設される。
【0035】
従って、この車両用成形カーペットを、車体の前記フロアパネル上へ設置する1工程で、前記カーペット本体と、前記クッションスペーサと、前記ダクトとを共に配置することができる。
【0036】
このため、製造工程の工程数が削減でき、製造コストの上昇が抑制できる。
【0037】
そして、前記ダクトは、前記カーペット本体を介して、前記ダクトの高さより高さが高い前記クッションスペーサに支持された状態で配設されるので、このダクトを、安定した状態で配設することができる。
【0038】
また、前記ダクトが配設されている位置の上側から加わる力に対して、前記ダクトの高さより高さが高い前記クッションスペーサの弾性が作用して力が分散するために、前記ダクトに加わる力が緩和されて、このダクトが変形又は破損しにくくなる。
【0039】
更に、前記ダクトと前記カーペット本体の間に空間がないために、共振等による空調の雑音の発生が抑制できる。
【0040】
そして、前記カーペット本体の裏面は、前記ダクトの上面と面状に接合しているので、このダクトの上面と接合している部分の前記カーペット本体の表面は均一になり、このカーペット本体表面に波打が発生しない。
【0041】
また、本願発明の請求項2記載のものは、前記カーペット本体の成形のために設けられた熱可塑性樹脂の樹脂層が、前記ダクト及び前記クッションスペーサを、このカーペット本体の裏面側に溶着するために用いられるので、このカーペット本体の成形剤と、前記ダクト及び前記クッションスペーサの溶着剤が共用になり、製造に用いる部材の数が減少して、製造コストの上昇が抑制できる。
【0042】
更に、本願発明の請求項3記載のものは、前記ダクトを上側部材及び下側部材に分割して、少なくとも前記下側部材にはフランジ部を設けて、この下側部材と、前記上側部材を接合して、前記ダクトを形成するため、
従来の筒状のダクトに比べて、前記ダクトの上側部材及び下側部材の成形形状が単純になり、プレス加工等の成形が可能になるため、このダクトの材質等の設定の自由度が増加する。
【0043】
そして、プレス加工が可能になることにより、プレス装置の型の水冷化が可能になり、成形加工工程の時間短縮を図ることができる。
【0044】
更に、ダクトの部材の板厚をブロー成形に比べて、部材ごとに任意の材料・厚さが選定できるので、前記ダクトの上側部材及び下側部材の強度を所望の強度に設定することが可能になる。
【0045】
このように、強度の設定に自由度があるために、前記上側部材を車室の床の補強部材として用いることが可能になる。
【0046】
更に、このため、前記カーペット本体と、前記ダクトと、前記クッションスペーサとが一体に成形する際に、加熱加圧成形の圧力に対する、このダクトの強度を所望の強度に設定することができる。
【0047】
また、本願発明の請求項4記載のものは、前記上側部材に所定の面剛性を持たせた前記ダクトを形成することによって、
このダクトが配設されている位置の上側から加わる力に対して、このダクトが変形又は破損しにくくできる。
【0048】
そして、本願発明の請求項5記載のものは、前記クッションスペーサの側縁部上面に、前記下側部材のフランジ部を係止しているために、
前記ダクトが配設されている位置の上側から加わる力に対して、このダクトが配設されていない部分と略同様に、前記クッションスペーサの弾性が作用する。
【0049】
また、前記ダクトが配設されている位置の上側から加わる力に対して、クッションスペーサの弾性が作用して力が分散するために、このダクトに加わる力が緩和されて、このダクトが変形又は破損しにくくできる。
【0050】
そして、本願発明の請求項6記載のものは、前記上側部材の上面と、前記クッションスペーサの上面とを車両上下方向で略面一としているために、
前記ダクトの配設されている部分と、配設されていない部分とで、前記カーペット本体の上面の均一性が保たれて、このカーペット本体に波打が無く、見栄えが良い。
【0051】
また、本願発明の請求項7記載のものは、前記下側部材のフランジ部及び、このフランジ部と接合された前記上側部材を、前記クッションスペーサの側縁部上面と、前記カーペット本体の裏面との間に挟持しているために、
前記ダクトが安定な状態で挟着されて、更に、このダクトの上側部材と下側部材との接合部からの空気漏れを低減することができる。
【0052】
更に、本願発明の請求項8記載のものは、前記カーペット開口部の周縁が前記ダクトの端部と密着しているために、
前記吹出口部にパネル等を取り付けて仕上げをする際に、取付け作業が容易になり、また、仕上がりの見栄えが良い。
【0053】
そして、本願発明の請求項9記載のものは、前記ダクトの端部に形成された吹出口部の下側に、前記下側部材に設けられた段差によって、車両用の前記オプションマットの車両前方の前端部が係止されるために、
このオプションマットを車室内に敷設する際に、このオプションマットの定位性が良い。
【0054】
また、本願発明の請求項10記載のものは、前記ダクトと前記フロアパネルとの間に、前記スペーサ部材を配設するために、
前記ダクトと、前記フロアパネルとの接触による雑音の発生を阻止できる。
【0055】
更に、前記ダクトが配設されている位置の上側から加わる力に対して、このダクトと前記フロアパネルとが直接接触しないため、このダクトが変形又は破損しにくくなる。
【0056】
そして、金属等で形成された熱伝導性の高い前記フロアパネルと、前記ダクトとの間に、断熱性を有する前記スペーサ部材が介装されるため、このダクトの断熱性が向上する。
【0057】
また、本願発明の請求項11記載のものは、前記カーペット本体の成形工程と、このカーペット本体への前記ダクト及び前記クッションスペーサの接合工程が1工程で行われるため、
作業工程が少なくなり、作業効率が上昇し、製造コストの上昇が抑えられる。
【0058】
また、予め前記クッションスペーサを前記下型上に配置するため、前記ダクトを配置する際に、前記下型上で、このダクトの定位性が良い。
【0059】
更に、本願発明の請求項12記載のものは、前記ダクトの下側部材のフランジ部を、前記クッションスペーサによって係止して、更に、前記下側部材の下側と、プレス装置の下型との間に間隙を設けて、前記上側部材の上面と、前記クッションスペーサの上面とが、上下方向で略面一になるようにして前記樹脂層の表面に溶着するために、
前記カーペット本体が、前記上側部材の上面及び前記クッションスペーサの上面に、均等の圧力で、圧接されるので、この上側部材の上面及び、このクッションスペーサの上面と、カーペット本体とが均一に溶着できる。
【0060】
しかも、前記下側部材の下側と、プレス装置の前記下型との間に間隙を設けてあるために、プレス装置による加圧の際に、前記ダクトの両側の前記クッションスペーサが弾性的に変形して、このダクトの下側部材がプレス装置の前記下型と接触しないために、加熱加圧成形の圧力によって、このダクトが変形又は破損するのを防ぐことができる。
【0061】
更に、本願発明の請求項13記載のものは、前記ダクトを前記上側部材及び前記下側部材に分割して成形することによって、このダクトの成形が、前記上側部材と、前記下側部材とで各々個別に行うことができる。
【0062】
このため、従来の筒状のダクトに比べて、前記ダクトの上側部材及び下側部材の成形形状が単純になるために、プレス加工等の成形が可能になり、このダクトの部材の材質等の設定の自由度が増える。
【0063】
そして、プレス加工が可能になることにより、プレス装置の型の水冷化が可能になり、成形加工工程の時間短縮を図ることができる。
【0064】
更に、前記ダクトの部材の板厚をブロー成形に比べて、部材ごとに任意の材料・厚さが選定できるので、このダクトの上側部材及び下側部材の強度を所望の強度に設定することが可能になる。
【0065】
このため、前記上側部材を車室の床の補強部材として用いることができる。
【0066】
更に、このため、前記カーペット本体と、前記ダクト及び前記クッションスペーサを一体に成形する際に、加熱加圧成形の圧力に対して、このダクトの変形又は、破損を防ぐために、このダクトの強度を所望の強度に設定することができる。
【0067】
そして、本願発明の請求項14記載のものは、前記カーペット本体の成形工程と、このカーペット本体への前記上側部材及び前記クッションスペーサの接合工程が1工程で行われ、その後に前記カーペット本体の裏面に接合された前記上側部材に、前記下側部材を接合するために、
この上側部材及び下側部材の材質の設定の自由度が増大する。このため、例えば、この上側部材に鉄材等を用いることにより、コストの上昇が抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
次に、図1乃至図15に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の車両用成形カーペット及び、その製造方法を説明する。
【実施例1】
【0069】
(実施例1の車両用成形カーペットの構成)
まず、この発明の実施例1の車両用成形カーペットについて説明する。
【0070】
図1及び図2に示されるように、車両用成形カーペット11は、車体のフロアパネル12上に敷設される。
【0071】
この車体のフロアパネル12には、車幅方向の中央に、上方に突設形成されたフロアトンネル部13が設けられ、このフロアトンネル部13は、上面部13aと、側面部13b,13bとを有している。
【0072】
更に、フロアパネル12は、フロアトンネル部13の左右に、平坦部13c,13cを有して形成されている。
【0073】
また、図3及び図4に示されるように、車両用成形カーペット11は、カーペット本体17aと、このカーペット本体17aの裏面側に予め形成された熱可塑性樹脂の樹脂層17bと、加熱加圧成形の際に、この樹脂層17bに溶着されるダクト14及びクッションスペーサ15等とで構成されている。
【0074】
このダクト14は、図2に示されるように、上側部材27と下側部材19とに分割されて形成されて、この上側部材27は、平板状部材18と、補強部材21等とで形成されている。
【0075】
この車両用成形カーペット11には、カーペット本体17aの裏面側に、予めダクト14が溶着されると共に、このダクト14が溶着されていない残余部に、ダクト14の高さより高さが高いクッションスペーサ15が一体に溶着されて、カーペット本体17aを敷設する際に、フロアパネル12上に、ダクト14とクッションスペーサ15とが並べられて配設される。
【0076】
また、図1乃至図8に示されるように、フロアパネル12とダクト14との間にスペーサ部材16が配設されている。
【0077】
そして、図3及び図4に示されるように、ダクト14は平板状部材18及び下側部材19に分割されて、下側部材19には、平板状部材18と接合されるフランジ部19a,19aが、下側部材19の側縁部の上端に外側方向に向けて形成されている。
【0078】
更に、図1の平坦部13c,13cに配設されるダクト14は、図3及び図4に示されるように、平板状の平板状部材18の各側端部18a,18aと、断面が略逆ハット状の下側部材19の各フランジ部19a,19aとが予め接合されて形成されている。
【0079】
これらの各側端部18a,18aと各フランジ部19a,19aとが接合されたダクト14の各接合部20a,20aが、ダクト14の両側に近接して並設されたクッションスペーサ15,15の各側縁部上面15b,15bによって係止された状態で、平板状部材18の上面18bと、クッションスペーサ15、15の各々の上面15a,15aとが、車両上下方向で略面一の高さで、カーペット本体17aの裏面側の樹脂層17bに溶着されている。
【0080】
このため、ダクト14の接合部20a,20aは、カーペット本体17aの裏面側の樹脂層17bと、クッションスペーサ15,15の各々の側縁部上面15b,15bとの間に挟持される。
【0081】
このように、車両用成形カーペット11は、カーペット本体17aと、ダクト14及びクッションスペーサ15とが、このカーペット本体17aの裏面側に溶着されて一体形成されている。
【0082】
また、図1及び図2に示されるフロアトンネル部13の側面部13b,13bに配設されるダクト14は、図7及び図8に示されるように、所定の面剛性を有した平板状の補強部材21の各接合面21a,21aと、断面が略逆ハット状の下側部材19の各フランジ部19a,19aとが予め接合されて形成されている。
【0083】
これら下側部材19のフランジ部19a,19aと、平板状の補強部材21の側部21c,21cとが、ダクト14の両側に近接して並設されたクッションスペーサ15、15の各々の側縁部上面15b,15bで係止された状態で、補強部材21の上面21bと、クッションスペーサ15、15の各々の上面15a,15aとが、略面一の高さで、カーペット本体17aの裏面側の樹脂層17bに溶着されている。
【0084】
このため、下側部材19のフランジ部19a,19aと、平板状の補強部材21の側部21c,21cとは、カーペット本体17aの裏面側の樹脂層17bとクッションスペーサ15,15の各側縁部上面15b,15bとの間に挟持されている。
【0085】
また、図9及び図10に示されるように、ダクト14の端部14aに設けられた吹出口部14bには、下側部材19の端部14aから下方に外側に延設された延設部19bが設けられ、ダクト14の端部14aの上側から、吹出口部14bを覆って、この延設部19bの上面19cにカーペット本体17aの裏面側の樹脂層17bが溶着されている。
【0086】
しかも、この延設部19bには、吹出口部14bの下側に段差19dが設けられている。
【0087】
例えば、ウォーターカッター等を用いて、図10に示す吹出口部14bを覆っているカーペット本体17a及び裏面側の樹脂層17bを、図9に示す延設部19bの上面に溶着されたカーペット本体17aを残して切断して、図11に示されるように、カーペット本体17aの車室内側にカーペット開口部17cを開口形成する。
【0088】
このため、このカーペット開口部17cの周縁がダクト14及び図9に示す延設部19bの上面に密着されている。
【0089】
また、図11に示されるように、形成された吹出口部14bの下方には、図9に示す延設部19bの段差19dが設けられているため、この段差19dによってオプションマット22の車両前方の前端部22aが係止される。
(実施例1の車両用成形カーペットの製造方法及び、この製造方法の作用)
次に、図12及び図13に基づいて、車両用成形カーペット11の製造方法及び、この製造方法の作用を説明する。
【0090】
図12及び図13に示されるように、図1及び図2に示す車体のフロアパネル12の形状に対応した上面形状の下型23を有するプレス装置を用いて、
この下型23の上面の所定位置にクッションスペーサ15を配置して、予め下側部材19と上側部材27とを接合して組み上げた各ダクト14,14をそれぞれ、このクッションスペーサ15、15の各側縁部上面15b,15bで係止されるように配置する。
【0091】
このように、予めクッションスペーサ15を下型23上に配置して、ダクト14をクッションスペーサ15に並設して配置するため、ダクト14の位置決めのために、別途ジグ等を用いなくても、ダクト14は、所望の位置に位置させることができる。
【0092】
次に、図12に示されるように、カーペット本体17aの裏面に設けられた熱可塑性樹脂の樹脂層17bを予め加熱溶融して、このカーペット本体17aを下型23と上型24との間に介在させて、ダクト14及びクッションスペーサ15が配置された下型23の上側に載置して、下型23に対応した上型24を下降させて、上型24と下型23とによって加圧する。
【0093】
このため、カーペット本体17aは、フロアパネル12に、ほぼ沿った形状の所望の形状に形成されると共に、カーペット本体17aの裏面の樹脂層17bに、ダクト14の上側部材27の上面と、クッションスペーサ15の上面15aとを各々溶着する。
【0094】
このように、カーペット本体17aの成形工程と、このカーペット本体17aへのダクト14及びクッションスペーサ15の接合工程とが1工程で行われるため、
作業工程が少なくなり、作業効率が上がり、製造コストの上昇が抑えられる。
【0095】
この際、図12に示されるように、ダクト14,14が有する下側部材19の各フランジ部19a,19aをそれぞれクッションスペーサ15の各側縁部上面15b,15bによって係止して、
ダクト14の下側部材19の下側と、プレス装置の下型23の上面との間に間隙25,25を設けて、
上側部材27の上面と、クッションスペーサ15の上面とが、上下方向で略面一になるようにして、上型24と下型23とで加圧成形して、ダクト14とクッションスペーサ15とを樹脂層17bの表面に溶着することによって、
カーペット本体17aが、この上側部材27の上面と、このクッションスペーサ15の上面とに、均等の圧力で圧接されるので、この上側部材27の上面及び、このクッションスペーサ15の上面と、前記カーペット本体17aの裏面とが均一に溶着できる。
【0096】
しかも、下側部材19,19の下側と、プレス装置の下型との間に間隙25,25を設けてあるために、プレス装置による加圧の際に、ダクト14,14のそれぞれの両側の各クッションスペーサ15,15が弾性的に変形して、このダクト14,14の下側部材19,19がプレス装置の下型と接触しないために、加熱加圧成形の圧力によって、このダクト14,14が変形又は破損するのを防ぐことができる。
【0097】
ここで用いられる上側部材27と下側部材19とは、予めプレス成形等によって所望の形状に成形されている。
【0098】
このように、ダクト14を上側部材27と下側部材19とに分割して成形することによって、このダクト14の成形が、上側部材27と、下側部材19とで各々個別に行えるために、ダクト14に一定の強度を与えることが可能になる。
【0099】
更に、従来の筒状のダクトに比べて、ダクト14の上側部材27及び下側部材19の成形形状が単純になるために、プレス加工等の成形が可能になり、このダクト14の部材の材質等の設定の自由度が増える。
【0100】
また、ダクト14を上側部材27及び下側部材19に分割して成形することによって、上側部材27及び下側部材19のプレス加工等が可能になるため、プレス装置の型の水冷化が可能になり、成形加工工程の時間短縮を図ることができる。
【0101】
しかも、ダクト14の上側部材27及び下側部材19の板厚をブロー成形に比べて、部材ごとに任意の材料・厚さが選定できるので、このダクト14の上側部材27及び下側部材19の強度を所望の強度に設定することが可能になる。
【0102】
このため、上側部材27を車室の床の補強部材として用いることができる。
【0103】
また、カーペット本体17aと、ダクト14及びクッションスペーサ15を一体に成形する際の加熱加圧成形の圧力に対して、このダクト14の変形又は、破損を防ぐためのダクト14の強度を所望の強度に設定することができる。
(実施例1の車両用成形カーペットの作用)
この実施例1の作用について述べる。
【0104】
図1及び図2に示されるように、カーペット本体17aが、車体のフロアパネル12の上面の形状に沿って成形されると共に、カーペット本体17aの裏面側に、ダクト14とクッションスペーサ15とが一体に接合されるために、
カーペット本体17aをフロアパネル12上に敷設すると、ダクト14とクッションスペーサ15とを所定の位置に並べて配設することができる。
【0105】
そして、ダクト14は、カーペット本体17aを介してクッションスペーサ15に支持された状態で配設されるので、このダクト14を安定した状態で配設することができる。
【0106】
また、図3に示すように、クッションスペーサ15の高さがダクト14の高さより高くなっているために、例えば、ダクト14を配設している位置の上側から力Fを加えると、
ダクト14の下部に力が加わるより先に、この力Fに抗して、クッションスペーサ15,15の弾性が作用する。
【0107】
このクッションスペーサ15,15の弾性力f1,f2が下側から作用して、力Fに対する抗力が分散され、ダクト14に下側から加わる力fが緩和されて、このダクト14が変形又は破損しにくくなる。
【0108】
そして、図3乃至図8に示されるように、ダクト14とカーペット本体17aの裏面側が溶着されて、ダクト14とカーペット本体17aの間に空間がないために、共振等による空調の雑音の発生が抑制できる。
【0109】
しかも、カーペット本体17aの裏面側は、ダクト14の上面と面状に溶着しているので、このダクト14の上面と溶着している部分のカーペット本体17aの表面は均一になり、このカーペット本体17a表面に波打が発生しない。
【0110】
また、カーペット本体17aの成形のために設けられた熱可塑性樹脂の樹脂層17bが、ダクト14及びクッションスペーサ15を、このカーペット本体17aの裏面側に溶着するために用いられるので、
このカーペット本体17aの形状を所望の形状に成形するための成形剤と、ダクト14及びクッションスペーサ15の溶着剤が共用になり、製造に用いる部材の数が減少して、製造コストの上昇が抑制できる。
【0111】
そして、図3乃至図8に示されるように、ダクト14を上側部材27及び下側部材19に分割して形成して、下側部材19にはフランジ部19a,19aを設けて、この下側部材19と上側部材27とを接合してダクト14を形成するため、
従来の筒状のダクトに比べて、ダクト14の上側部材27及び下側部材19の成形形状が単純になり、プレス加工等の成形が可能になるため、このダクト14の材質や強度等の設定の自由度が増加する。
【0112】
更に、ダクト14の上側部材27及び下側部材19の板厚をブロー成形に比べて、部材ごとに任意の材料・厚さが選定できるので、ダクト14の上側部材27及び下側部材19の強度を所望の強度に設定することが可能になる。
【0113】
このように、強度の設定に自由度があるために、上側部材27を車室内の床の補強部材として用いることが可能になる。
【0114】
また、上側部材27に所定の面剛性を持たせたダクト14を形成することによって、このダクト14を配設している位置のカーペット本体17aの上側から加わる力に対して、このダクト14が変形又は破損しにくくできると共に、このダクト14近傍の床面を補強することができる。
【0115】
そして、クッションスペーサ15の側縁部上面15bに、下側部材19のフランジ部19a,19aを係止しているために、
ダクト14を配設している位置にカーペット本体17aの上方から力を加えた際に、このダクト14の上面に加わった力が、クッションスペーサ15に側縁部上面15b,15bを介して、クッションスペーサ15に伝達されて、このクッションスペーサ15の弾性が、ダクト14を配設している位置のカーペット本体17aにも作用する。
【0116】
このため、この力が分散してダクト14に加わる力が緩和されて、このダクト14が変形又は破損しにくくなる。
【0117】
そして、上側部材27の上面とクッションスペーサ15の上面15aを車両上下方向で略面一としているために、
ダクト14の配設されている部分と配設されていない部分とで、カーペット本体17aの上面の均一性が保たれて、このカーペット本体17aの表面に波打が生じることなく見栄えが良い。
【0118】
また、図4の接合部20a,20a及び図8の接合部20c,20cを、クッションスペーサ15の側縁部上面15b,15bと、カーペット本体17aの裏面との間に挟持しているために、ダクト14が安定な状態で挟着される。
【0119】
更に、図4の接合部20a,20a及び図8の接合部20c,20cからの空気漏れを低減することができる。
【0120】
また、図11に示されるように、カーペット開口部17cの周縁がダクト14の端部14aと、図9の延設部19bとに密着しているために、
吹出口部14bにパネル等を取り付けて仕上げをする際に、取付け作業が容易になり、仕上がりの見栄えが良い。
【0121】
そして、図11に示されるように、ダクト14の端部14aに形成された吹出口部14bの下側に、下側部材19に設けられた段差19dによって、車両用のオプションマット22の車両前方の前端部22aが係止されるために、
このオプションマット22を車室内に敷設する際に、このオプションマット22の定位性が良い。
【0122】
また、図1乃至図8に示されるように、ダクト14とフロアパネル12との間に、スペーサ部材16が配設されるために、ダクト14とフロアパネル12との接触による雑音の発生を阻止できる。
【0123】
更に、このため、ダクト14を配設している位置の上側から力が加わっても、このダクト14とフロアパネル12とが直接接触しないために、このダクト14の変形又は破損が生じにくくなる。
【0124】
しかも、金属等で形成された熱伝導性の高いフロアパネル12と、ダクト14との間に、断熱性を有するスペーサ部材が介装されるため、このダクト14の断熱性が向上する。
【実施例2】
【0125】
次に、この発明の実施例2の車両用成形カーペット11の製造方法について、実施例1と異なる部分を中心として説明し、実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0126】
図14及び図15は、実施例2の車両用成形カーペット11の製造方法を示したものである。
【0127】
(実施例2の車両用成形カーペットの製造方法)
図14及び図15に示されるように、図1及び図2に示す車体のフロアパネル12の形状に対応した上面形状の下型23を有するプレス装置を用いて、
この下型23の上面の所定位置にクッションスペーサ15を配置して、上側部材27を、このクッションスペーサ15、15の各側縁部上面15b,15bで係止されるように配置する。
【0128】
このように、予めクッションスペーサ15を下型23上に配置して、上側部材27をクッションスペーサ15に並設して配置するため、ダクト14の位置決めのために、別途ジグ等を用いなくても、上側部材27は、所望の位置に位置させることができる。
【0129】
次に、カーペット本体17aの裏面に設けられた熱可塑性樹脂の樹脂層17bを予め加熱溶融して、このカーペット本体17aを下型23と上型24との間に介在させて、上側部材27及びクッションスペーサ15が配置された下型23の上側に載置して、下型23に対応した上型24を下降させて、上型24と下型23とによって加圧する。
【0130】
このため、カーペット本体17aは、フロアパネル12に、ほぼ沿った形状の所望の形状に形成されると共に、カーペット本体17aの裏面の樹脂層17bに、上側部材27と、クッションスペーサ15の上面15aとを各々溶着する。
【0131】
このように、カーペット本体17aの成形工程と、このカーペット本体17aへの平板状部材18及びクッションスペーサ15の接合工程とが1工程で行われるため、
作業工程が少なくなり、作業効率が上昇し、製造コストの上昇が抑えられる。
【0132】
この際、図14に示されるように、上側部材27の両側端をクッションスペーサ15の各側縁部上面15b,15bによって係止するようにして、
上側部材27の上面と、クッションスペーサ15の上面とが、上下方向で略面一になるように上型24と下型23とで加圧成形して、ダクト14とクッションスペーサ15とを樹脂層17bの表面に溶着することによって、
カーペット本体17aが、この上側部材27の上面と、このクッションスペーサ15の上面とに、均等の圧力で圧接されるので、この上側部材27の上面及び、このクッションスペーサ15の上面と、前記カーペット本体17aとが均一に溶着できる。
【0133】
更に、カーペット本体17aの裏面の樹脂層17bに、上側部材27と、クッションスペーサ15とを溶着した後、図15に示されるように、下側部材19を平板状部材18の下面に接合する。
【0134】
このように、カーペット本体17aの成形工程と、このカーペット本体17aへの上側部材27及びクッションスペーサ15の接合工程が1工程で行われ、その後に別工程によって、前記カーペット本体17aの裏面に接合された上側部材27に、下側部材19を接合する。
【0135】
このため、この上側部材27及び下側部材19の材質の設定の自由度が増大する。
【0136】
従って、例えば、上側部材27と下側部材19が別の材質であっても良く、製造工程の簡素化やコストの削減等が可能になるような材質の部材を用いることができる。
【実施例3】
【0137】
次に、この発明の実施例3の車両用成形カーペットについて、図5及び図6に基づいて、車両用成形カーペットの構成を説明する。
【0138】
ここでは、実施例1及び実施例2と異なる部分を中心として説明し、実施例1及び実施例2と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0139】
(実施例3の車両用成形カーペットの構成)
図5及び図6は、実施例3における図1のA−A断面を示したものである。
【0140】
図5及び図6に示されるように、図1及び図2に示されるフロアトンネル部13の平坦部13c,13cに配設されるダクト14は、所定の面剛性を有したハット状部材26のフランジ部26b,26bと、断面が略逆ハット状の下側部材19のフランジ部19a,19aとが予め接合されて形成されている。
【0141】
これらのフランジ部26b,26bとフランジ部19a,19aとが接合されたダクト14の接合部20b,20bと、ハット状部材26のフランジ部26b,26bとが、ダクト14の両側に近接して並設されたクッションスペーサ15、15の各々の側縁部上面15b,15bで係止された状態で、ダクト14のハット状部材26の上面26aと、クッションスペーサ15、15の各々の上面15a,15aとが、略面一の高さで、カーペット本体17aの裏面側の樹脂層17bに溶着されている。
(実施例3の車両用成形カーペットの作用)
この実施例3の作用について述べる。
【0142】
図5及び図6に示されるように、ハット状部材26に所定の面剛性を持たせたダクト14を形成することによって、このダクト14を配設している位置のカーペット本体17aの上側から加わる力に対して、このダクト14が変形又は破損しにくくできると共に、このダクト14近傍の床面を補強することができる。
【0143】
そして、クッションスペーサ15,15の各側縁部上面15b,15bに、接合部20b,20bを係止しているために、
ダクト14を配設している位置にカーペット本体17aの上方から力を加えた際に、このダクト14の上面に加わった力が、クッションスペーサ15に側縁部上面15b,15bを介して、クッションスペーサ15に伝達されて、このクッションスペーサ15の弾性が、ダクト14を配設している位置のカーペット本体17aにも作用する。
【0144】
このため、この力が分散して、ダクト14に加わる力が緩和されて、このダクト14が変形又は破損しにくくなる。
【0145】
そして、ハット状部材26の上面26bとクッションスペーサ15の上面15a,15aを車両上下方向で略面一としているために、
ダクト14の配設されている部分と配設されていない部分とで、カーペット本体17aの上面の均一性が保たれて、このカーペット本体17aの表面に波打が生じることなく見栄えが良い。
【0146】
なお、他の構成及び作用効果については、実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0147】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0148】
この実施例1の車両用成形カーペット11では、カーペット本体17aの裏面側に、ダクト14及びクッションスペーサ15が溶着されているが、これらの接合方法は、どのような方法であっても良い。例えば、接着剤による接着であっても良い。
【0149】
また、実施例1の車両用成形カーペット11では、フロアパネル12とダクト14との間にスペーサ部材16が配設されているが、このスペーサ部材16は必ずしも配設されなくても良い。
【0150】
このスペーサ部材16を配設する場合には、車両用成形カーペット11を製造後に裏面からダクト14の裏面に貼設しても良いし、或いは、予め車体のフロアパネル12上に敷設しても良い。
【0151】
そして、この実施例1又は実施例3では、ダクト14の上側部材は、平板状か又は断面が略逆ハット上であるが、ダクトがカーペット本体17aの裏面に接合されていれば、ダクトの形状は、どんな形状であっても良い。必ずしも、フランジ部を有する必要もない。
【0152】
例えば、ダクトの断面がロの字状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットを説明する車体のフロアパネル及び、このフロアパネルに敷設された車両用成形カーペットの一部分の断面斜視
【図2】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットを説明する図1の車両上下方向にダクトと、カーペット本体とを分解して描いた分解斜視図である。
【図3】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットを説明する図1のA−A断面図である。
【図4】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットを説明する図3の上下方向の分解図である。
【図5】この発明の最良の実施の形態の実施例3の車両用成形カーペットを説明する図1のA−A断面図であり、略ハット状の上側部材を有するダクトを用いた場合の図である。
【図6】この発明の最良の実施の形態の実施例3の車両用成形カーペットを説明する図5のA−A断面図の上下方向の分解図である。
【図7】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットを説明する図1のB−B断面図である。
【図8】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットを説明する図7の上下方向の分解図である。
【図9】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットを説明する図1のC−C断面図の上下方向の分解断面図である。
【図10】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットを説明する図1のC−C断面図であり、カーペット開口部形成前の断面図である。なお、図の二点鎖線は開口部の切断面の一部を示している。
【図11】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットを説明する図1のC−C断面図であり、オプションマットが敷設されている場合の図である。
【図12】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットの製造方法を説明する、プレス装置の下型と、プレス装置の下型の所定位置に配置されるクッションスペーサと、このクッションスペーサによって係止されて配置されるダクトと、下型に対応した上型との断面図であり、プレス装置による加圧前の図である。
【図13】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用成形カーペットの製造方法を説明する、プレス装置の下型と、プレス装置の下型の所定位置に配置されるクッションスペーサと、このクッションスペーサによって係止されて配置されるダクトと、下型に対応した上型との断面図であり、プレス装置による加圧中の図である。
【図14】この発明の最良の実施の形態の実施例2の車両用成形カーペットの製造方法を説明する、プレス装置の下型と、プレス装置の下型の所定位置に配置されるクッションスペーサと、このクッションスペーサによって係止されて配置されるダクトの上側部材と、下型に対応した上型との断面図であり、プレス装置による加圧中の図である。
【図15】この発明の最良の実施の形態の実施例2の車両用成形カーペットの製造方法を説明する上側部材と下側部材を接合する前の断面図である。
【図16】一従来例の自動車用カーペットを説明する断面図であり、この自動車用カーペットと、この自動車用カーペットが敷設される車体のフロアパネルとの断面図である。
【図17】一従来例の自動車用カーペットの製造方法を説明する、プレス装置の下型と、プレス装置の下型に敷設される成形フェルトと、この成形フェルト上に配置されるヒータダクトと、成形前の成形カーペットと、下型に対応した上型の断面図であり、プレス装置による加圧前の図である。
【符号の説明】
【0154】
11 車両用成形カーペット
12 フロアパネル
14 ダクト
14a 端部
14b 吹出口部
15 クッションスペーサ
15a 上面
15b 側縁部上面
16 スペーサ部材
17a カーペット本体
17b 樹脂層
17c カーペット開口部
18 平板状部材
18a 側端部
18b 上面
19 下側部材
19a フランジ部
19d 段差
21 補強部材
21a 接合面
21b 上面
21c 側部
22 オプションマット
22a 前端部
23 下型
24 上型
25 間隙
26 ハット状部材
26a 上面
26b フランジ部
27 上側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロアパネル上に、該フロアパネルの上面の形状に沿って成形されたカーペット本体を敷設し、前記フロアパネルとの間に、ダクト及びクッションスペーサを介装するカーペット本体を有する車両用成形カーペットであって、
前記カーペット本体の裏面側に、予め前記ダクトが接合されると共に、該ダクトが接合されていない残余部に、前記ダクトの高さより高さが高い前記クッションスペーサが一体に接合されて、前記カーペット本体を敷設する際に、前記フロアパネル上に、前記ダクトと前記クッションスペーサとが、並べられて配設されることを特徴とする車両用成形カーペット。
【請求項2】
前記カーペット本体の裏面側に、前記ダクト及び前記クッションスペーサが加熱加圧成形によって溶着される熱可塑性樹脂の樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用成形カーペット。
【請求項3】
前記ダクトは上側部材及び下側部材に分割されて、少なくとも前記下側部材には、前記上側部材と接合されるフランジ部が、側縁部に外側方向に向けて形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用成形カーペット。
【請求項4】
前記上側部材のフランジ部、又は、前記上側部材の裏面側の一部は、前記下側部材のフランジ部と接合されて、前記上側部材が所定の面剛性を有していることを特徴とする請求項3記載の車両用成形カーペット。
【請求項5】
前記クッションスペーサの側縁部上面に、前記下側部材のフランジ部が係止されることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか一項記載の車両用成形カーペット。
【請求項6】
前記上側部材の上面と、前記クッションスペーサの上面とが車両上下方向で、略面一となることを特徴とする請求項3乃至5のうち何れか一項記載の車両用成形カーペット。
【請求項7】
前記下側部材のフランジ部及び該フランジ部と接合された前記上側部材が、前記クッションスペーサの側縁部上面と、前記カーペット本体の裏面との間に挟持されていることを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか一項記載の車両用成形カーペット。
【請求項8】
前記カーペット本体の車室内側に、前記ダクトの端部に形成された吹出口部を、該車室内の空間に露出させるカーペット開口部が開口形成されると共に、該カーペット開口部の周縁が、前記ダクトに密着されていることを特徴とする請求項1乃至7記載の車両用成形カーペット。
【請求項9】
前記ダクトの端部に形成された吹出口部の下側に、前記下側部材に設けられた段差によって、車両用のオプションマットの車両前方の前端部が係止されることを特徴とする請求項8記載の車両用成形カーペット。
【請求項10】
前記ダクトと前記フロアパネルとの間に、スペーサ部材が配設されていることを特徴とする請求項1乃至9のうち何れか一項記載の車両用成形カーペット。
【請求項11】
前記フロアパネルに対応した形状の下型の所定位置に、前記クッションスペーサ及び前記ダクトを配置する工程と、前記下型の上側に加熱した前記カーペット本体を配置する工程と、
前記下型に対応した上型と前記下型とで加圧して、前記カーペット本体の裏面側に、前記ダクト及び前記クッションスペーサを各々接合すると共に、該カーペット本体を前記フロアパネルの形状に沿った形状に成形する工程とを有することを特徴とする請求項1乃至10記載の車両用成形カーペットの製造方法。
【請求項12】
前記ダクトが有する前記下側部材の接合されたフランジ部を、前記クッションスペーサによって係止して、前記下側部材の下側と、プレス装置の下型との間に間隙を設けて、前記上側部材の上面と、前記クッションスペーサの上面とが、上下方向で略面一になるようにして、前記樹脂層の表面に溶着することによって、該上側部材の上面と、該クッションスペーサの上面とに、加熱加圧成形による圧力が、略均一に加わることを特徴とする請求項11記載の車両用成形カーペットの製造方法。
【請求項13】
前記ダクトを前記上側部材及び前記下側部材に分割して成形することによって、該ダクトの成形が、前記上側部材と、前記下側部材とで各々個別に行えるために、前記ダクトに一定の強度を与えることが可能になることを特徴とする請求項11又は12記載の車両用成形カーペットの製造方法。
【請求項14】
前記ダクトは前記上側部材及び前記下側部材に分割されて、前記フロアパネルに対応した形状の下型の所定位置に、前記クッションスペーサ及び前記上側部材を配置する工程と、前記下型の上側に加熱した前記カーペット本体を配置する工程と、
前記下型に対応した上型と前記下型とで加圧して、前記カーペット本体に、前記上側部材及び前記クッションスペーサを各々接合すると共に、該カーペット本体を前記フロアパネルの形状に沿った形状に成形する工程と、
前記カーペット本体の裏面側に接合された前記上側部材に前記下側部材を接合する工程とを有することを特徴とする請求項11記載の車両用成形カーペットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−90919(P2007−90919A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279111(P2005−279111)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000182454)寿屋フロンテ株式会社 (18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】