説明

車両用手摺り

【課題】手摺り棒を自動的に揺動可能にすると共に、該手摺り棒を揺動操作する駆動ボックスを偏平化してピラーに取付けても邪魔にならない様にする。
【解決手段】乗降口Gを構成するピラーPの内側面上部に取付けた駆動ボックス1と、該駆動ボックス1においてピラー内側面Pに平行に水平軸支された回動軸2に連繋して、乗降口閉鎖時に車内でピラーPの乗降口G側の側縁Paに沿って垂下し、乗降口開放時に下端を乗降口Gより車外へ斜め下向きに突出して傾倒する様に揺動可能に取付けた手摺り棒3とから成り、駆動ボックス1は、回動軸2に直交するピラーPの厚み方向Tに駆動軸9を有する駆動歯車9aと、回動軸2に軸着した回動歯車2aと、該回動歯車2a及び駆動歯車9aの夫々に噛合するラック11、11aを直角に一体形成したL型ラック11とを内蔵し、ピラーPの厚み方向Tに扁平に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの開閉に応じ乗降口より出没する車両用手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示される様に、上記車両等における後部乗降口の一構成部材であるピラーには略コ字状のアシストグリップが設置されている。
このアシストグリップは、ピラーの内側面上部に設置されているため、乗降時に子ども、高齢者、或いは身障者にとっては手が届かずに乗り込み難いといった課題を有していた。
【0003】
そこで、上記課題を解決すべく、特許文献2に開示される様に、手摺り取り付けバーなどを介して車体側に固定されるケースに支持されて車両の室内側に配置された回転軸に手摺り棒の上部を連結して、手摺り棒全部が室内に位置する格納位置と、手摺り棒の下部が乗降口から室外へ延びる角度の展開位置の間で回転可能とするとともに、ケースの壁から突出するプランジャを回転軸の周面に設けた位置設定穴に嵌合させることにより上記格納位置および展開位置にそれぞれ対応する回転位置に回転軸を保持するものとした車両用手摺りが開発された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−114072号公報
【特許文献2】特開2009−227205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成の車両用手摺りは、乗降口の一構成部材である前方ピラーの近傍において、運転席及び助手席とその後方空間とを分離する隔壁と、車両左右の前方ピラー間に架設した横バーの間に設けた手摺り取り付けバーに設置するものであり、車両内部構造が限定される。
仮に、上記隔壁や横バーを装備しない車両において、車両用手摺りにおけるケースを上記前方ピラーに設置したとしても、ケースがピラー内側面より突き出ることになるので、助手席のリクライニングに支障を来す欠点を有している。
【0006】
更に、手摺り棒の揺動操作は、ケース下部から垂下する操作紐を下方に引くことで、格納位置と展開位置との中間位置へ回動させ、該中間位置 ら手動で格納又は展開位置へ回動させねばならず、その操作が甚だ面倒であるなどの課題を有している。
【0007】
そこで、本発明では、手摺り棒を自動的に揺動可能にすると共に、該手摺り棒を揺動操作する駆動ボックスを偏平化してピラーに取付けても邪魔にならない様にした車両用手摺りを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明の車両用手摺りは、乗降口を構成するピラーの内側面上部に取付けた駆動ボックスと、該駆動ボックスにおいて前記ピラー内側面に平行に水平軸支された回動軸に連繋して、乗降口閉鎖時に車内でピラーの乗降口側の側縁に沿って垂下し、乗降口開放時に下端を乗降口より車外へ斜め下向きに突出して傾倒する様に揺動可能に取付けた手摺り棒とから成り、駆動ボックスは、前記回動軸に直交するピラーの厚み方向に駆動軸を有する駆動歯車と、回動軸に軸着した回動歯車と、該回動歯車及び駆動歯車の夫々に噛合するラックを直角に一体形成したL型ラックとを内蔵し、ピラーの厚み方向に扁平に形成したことを特徴とする。
又、手摺り棒は、上部が駆動ボックスの側部より乗降口側へ水平突設した回転自在な支軸の先端に固定され、かかる固定部位より下方部位と、基端を回動軸に固定したクランクの先端とを、連杆を介して枢着連結し、手摺り棒の上記傾倒状態で伸長するクランクと連杆の枢軸が、該枢軸の軌道上の死点を越えて位置する様に設定すると共に、この時にクランクの回転を抑止する傾倒維持ストッパーを設けたことを特徴とする。
更に、クランク先端側に設けた突片の軌道上に手摺り棒と揺動動作が同期する受け片を配置し、該受け片は前記突片に手摺り棒の垂下状態の直前から垂下状態へ至るまで押圧され、手摺り棒の垂下状態で受け片を継続して押圧する突片の回転を抑止する垂下維持ストッパーを設けたことを特徴とする。
そして、手摺り棒は、乗降口を開閉するドアの開閉動作に連動して揺動する様に設定するのがより望ましい。
【発明の効果】
【0009】
要するに本発明の車両用手摺りは、上記の様に駆動ボックスと手摺り棒とから成り、駆動ボックスは、ピラー内側面に平行な回動軸に直交するピラーの厚み方向に駆動軸を有する駆動歯車と、回動軸に軸着した回動歯車と、該回動歯車及び駆動歯車の夫々に噛合するラックを直角に一体形成したL型ラックとを内蔵したので、駆動歯車の作動によりL型ラック及び回動歯車を介して回動軸を正逆回転させられるので、手摺り棒の揺動を自動化でき、従来の様な手間隙を省くことができる。
しかも、駆動軸はピラーの厚み方向に指向しているので、これに軸着している駆動歯車をピラー内側面に対面配置でき、駆動歯車が大径であってもこれが駆動ボックスの偏平化に支障を来すことがなく、この駆動歯車の回転は、ピラーの丈方向に長く駆動ボックスの偏平化に支障を来すことのないL型ラックを介することにより、駆動歯車に軸が直交関係にある回動歯車に伝動でき、手摺り棒を揺動操作でき、このため駆動ボックスはピラーの厚み方向に扁平に形成でき、これにより駆動ボックスをピラーに取付けても、該ピラー前方の座席のリクライニングや後方移動に際し、その座席に干渉することがなく、その座席を支障なく操作できる。
【0010】
手摺り棒は、上部が駆動ボックスの側部より乗降口側へ水平突設した回転自在な支軸の先端に固定され、かかる固定部位より下方部位と、基端を回動軸に固定したクランクの先端とを、連杆を介して枢着連結し、手摺り棒の上記傾倒状態でクランクの回動によって伸長するクランクと連杆の枢軸が、該枢軸の軌道上の死点を越えて位置する様に設定したので、屈曲状態から伸長するクランクと連杆に倍力作用を具有させられ、かかる状態のクランクは、傾倒維持ストッパーによりそれ以上先の同一方向への回転が抑止されるため、クランク及び連杆に支えられる手摺り棒の傾倒状態を強固に保持でき、車両乗降に際して手摺り棒を伝い歩きの安全な支えとして利用できると共に、回動歯車、L型ラック及び駆動歯車の各噛合部位に過大な負荷がかからず、これらの破損や故障を低減できる。
【0011】
クランク先端側に設けた突片の軌道上に手摺り棒と揺動動作が同期する受け片を配置し、該受け片は前記突片に手摺り棒の垂下状態の直前から垂下状態へ至るまで押圧されるので、クランクの回動で伸長状態のクランクと連杆とが屈曲することにより、傾倒状態から垂下状態へ揺動する手摺り棒は、その垂下状態の直前位置からクランクの突片に押圧される受け片によって垂下状態へ至る定位置へきっちりと確実に変位させられると共に、かかる手摺り棒の垂下状態では垂下維持ストッパーにより受け片を継続して押圧する突片(クランク)のそれ以上先の同一方向への回転が抑止されるため、屈曲するクランクと連杆により手摺り棒の垂下状態をガタつきやぶらつきなく強固に保持でき、これにより車両走行時等においては、従前のアシストグリップと同様なる握りとしての役割を果たすことができる。
【0012】
手摺り棒は、乗降口を開閉するドアの開閉動作に連動して揺動する様に設定したので、ドアによる乗降口の開放時には、手摺り棒はその下端が乗降口より車外へ斜め下向きに突出して傾倒する様に自動的に揺動でき、ドアによる乗降口の閉鎖時には、前記傾倒状態の手摺り棒を車内へ垂下状態で格納される様に自動的に揺動でき、従来の様な面倒な手動操作を要しない等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車内から見た車両用手摺りの取付け状態を示す正面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】手摺り棒の垂下状態における車両用手摺りの一部省略左側面図である。
【図4】同上一部省略正面図である。
【図5】手摺り棒の傾倒状態における車両用手摺りの一部省略左側面図である。
【図6】同上一部省略正面図である。
【図7】手摺り棒の垂下及び傾倒状態における垂下及び傾倒維持ストッパーの各状態を示す駆動ボックス内部の要部右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
本発明に係る車両用手摺りは、スライドドア(図示せず)を装備した乗用車等の車両において、そのスライドドアが開閉する乗降口Gの一構成部材であるピラーPの内側面(以下、ピラー内側面Pとも称する。)上部に取付けられる駆動ボックス1と、該駆動ボックス1においてピラー内側面Pに平行に水平に軸支した回動軸2に連繋して、スライドドアによる乗降口Gの閉鎖時に車内IDでピラーPの乗降口G側の側縁(図示例では左側縁Pa)に沿って垂下し、スライドドアによる乗降口Gの開放時に下端を乗降口Gより車外ODへ斜め下向きに突出して傾倒する様に揺動可能に取付けた手摺り棒3とから主に構成されている。
【0015】
駆動ボックス1は、ピラーPの丈に沿って縦長でピラーPの厚み方向Tに扁平に形成され、ピラーPの左側縁Paより乗降口G側(左側)へ駆動ボックス1の左側部1aが張り出す様に取付けられている。
具体的には、ピラー内側面Pに固定されるベース4と、これを被覆するカバー5とから成り、ベース4の左側部は、上部のみピラー左側縁Paより張り出す様に形成され、このため駆動ボックス1において、ピラー左側縁Paから張り出す左側の背面下部には、乗降口Gへと連通する開口部6が形成されている。
尚、ピラー内側面Pにおいて、駆動ボックス1の右側(前席側)には、前席用シートベルトSが既設されている。
【0016】
駆動ボックス1内において、ベース4の下部には、回動軸2に直交するピラーPの厚み方向Tに原動軸を有する正逆回転可能な電動のモータ7を固定し、該モータ7の左側には、ピラー左側縁Paに沿って立設したベース4の下部立壁4aに回動軸2の基端側が挿通して軸受け支持され、該回動軸2の基端に軸着した回動歯車2aがモータ7より上方のベース4上に配置した一連の伝動機構8を介してモータ7の原動軸に軸着した原動歯車7aに連繋されている。
【0017】
駆動ボックス1にモータ7と共に内蔵される伝動機構8は、原動歯車7aと同様に、回動軸2に直交するピラーPの厚み方向Tに駆動軸9を有すると共に、左半周側にのみ歯部を有する駆動歯車9aと、駆動軸9と同軸にして原動歯車7aより大径でこれに噛合される下向き扇状の従動歯車10と、回動歯車2a及び駆動歯車9aの夫々に噛合する一対のラック11a、11bを直角に一体形成したL型ラック11とから構成されている。
【0018】
ラック11aは、上下に長い帯板状に形成され、その右側縁に駆動歯車9aに噛合する歯部を設けると共に、同一軸線上の上下に所定間隔を置いて長穴12、12aを貫設し、各長穴12、12aは、ベース4上面左側の上下に突設したピン13、13aに上下摺動自在に装着され、駆動歯車9aの正逆回動を上下往復動に変換する様に成している。
尚、ピン13、13aはラック11aの厚み分ほどベース4上面より突出すると共に、その突端には、長穴12、12aより大径な抜止め鍔片14、14aを形成している。
【0019】
ラック11bは、ベース4の下部立壁4aの右側に平行に隣接する様に、ラック11aの左側縁正面へ垂直立設した上下に長い帯板から成り、正面に指向する長手側縁に回動歯車2aに噛合する歯部を設け、上記上下往復動を回動歯車2aの正逆回動に変換する様に成している。
【0020】
手摺り棒3は、上部が駆動ボックス1の左側部1a上方より乗降口G側へ水平突設した回転自在な支軸15の先端に固定されている。
支軸15は、ピラー左側縁Paより張り出して該左側縁Paに平行立設したベース4の左上部立壁4bと、該左上部立壁4bの右側で平行立設したベース4の右上部立壁4cとに挿通して軸受け支持されている。
【0021】
そして、手摺り棒3において支軸15の固定部位(上部)より下方部位と、基端を回動軸2に固定したクランク16の先端とを、連杆17を介して枢着連結し、手摺り棒3の上記傾倒状態で伸長するクランク16と連杆17の枢軸18が、該枢軸18の軌道Q上の死点Xを越えて位置する様に設定する(図5参照)と共に、この時にクランク16の回転を抑止する傾倒維持ストッパー19を設けている。
尚、クランク16と連杆17とは、屈曲状態で開口部6に通ずる駆動ボックス1内の左側下部空間に格納され、伸長状態で開口部6より乗降口Gへ外方突出する様に成しており、このためカバー5の左側壁5a下部には手摺り棒3における連杆17との枢軸20が挿脱可能な円弧溝21を枢軸20の軌道に沿って形成している。
【0022】
又、図示例において、手摺り棒3は、ピラーPに沿ってその下方が車内側へ屈曲形成したものを示したが、かかる形状に何ら限定されず、例えば所定長さを有する真っ直ぐな棒体であっても良い。
【0023】
傾倒維持ストッパー19は、右上部立壁4cより右側へ突出する支軸15の基端に上方突設した凸部22と、右上部立壁4cの右側面の支軸15正面側にベース4に対向配置して成る正面板23に接着したゴム板製の正面当止め片24とから成り、手摺り棒3の上記傾倒状態で凸部22の正面辺22aが正面当止め片24に触突する様に成している。
【0024】
又、駆動ボックス1内において、手摺り棒3に固定した枢軸20と支軸15とには、左上部立壁4b及び連杆17とカバー5の左側壁5aとの間隙に挿脱自在にして、且つ、手摺り棒3と揺動動作が同期する同期プレート25を架設している。
そして、同期プレート25の正面長手側縁の右側において、クランク16先端側に設けた突片16aの軌道上には、方形板状の受け片25aを突設配置し、該受け片25aは突片16aに手摺り棒3の垂下状態の直前から垂下状態へ至るまで押圧され、手摺り棒3の垂下状態では受け片25aを継続して押圧する突片16aに対しその回転を抑止する垂下維持ストッパー26が設けられている。
【0025】
垂下維持ストッパー26は、上記凸部22と、右上部立壁4cの右側面の支軸15背面側にベース4と同一平面上に突設して成る背面板27に接着したゴム板製の背面当止め片28とから成り、手摺り棒3の上記垂下状態で凸部22の背面辺22bが背面当止め片28に触突する様に成している。
【0026】
上記の様に構成された車両用手摺りにおいて、手摺り棒3は、スライドドアの開閉動作に連動して揺動する様に設定している。
即ち、スライドドアが開放される時にモータ7が作動し、手摺り棒3を垂下状態から傾倒状態へ揺動する様に成し、スライドドアが閉鎖される時にモータ7が作動し、傾倒状態の手摺り棒3を垂下状態へ揺動する様に成している。
【0027】
又、L型ラック11において、ラック11a上端には、モータ7の停止用ドッグ11cを突設すると共に、該ドッグの左右には、各スイッチレバー29a、30aの先端がドッグ11cに指向するモータ7の停止用マイクロスイッチ29、30をベース4の上部に固定している。
左側のマイクロスイッチ29は、手摺り棒3の垂下状態で上限に位置するドッグ11cが、そのスイッチレバー29aを押圧してモータ7の作動を停止する様に成している。
又、右側のマイクロスイッチ30は、手摺り棒3の傾倒状態で下限に位置するドッグ11cが、そのスイッチレバー30aを押圧してモータ7の作動を停止する様に成している。
【0028】
次に、本発明に係る車両用手摺りの作動について詳述する。
先ず、スライドドアの閉鎖状態では、図1〜図4、7に示す様に、L型ラック11はその上限位置で停止し、ラック11bに噛合している回動歯車2aの回動軸2に基端が固定されたクランク16は駆動ボックス1内で連杆17と共に直立して重合屈曲し、その突片16aが同期プレート25を介して揺動動作が手摺り棒3に同期する受け片25aを押圧しており、又凸部22の背面辺22bが背面当止め片28に触突することで支軸15の回転を抑止し、手摺り棒3の垂下状態を堅固にしてガタつきなく保持している。
【0029】
この様に、車内IDでピラー左側縁Paに沿って垂下している手摺り棒3は、従前のアシストグリップと同様なる握りとして利用される。
【0030】
そして、閉鎖状態のスライドドアが開放される時に、モータ7が作動して原動歯車7aを右回りに回転させ、これにより従動歯車10と共に駆動歯車9aを左回りに減速回転させ、L型ラック11が降下する。
すると、回動歯車2aが図3において左回りに回転し、これと回動軸2を以て同軸のクランク16を同一方向へ回転させ、その突片16aによる受け片25aに対する押圧を解除し、駆動ボックス1内に屈曲状態で格納されている連杆17と共にクランク16は伸長し、これにより支軸15を支点として手摺り棒3は、その下端を乗降口Gより車外ODへ斜め下向きに突出して傾倒する様に揺動する(図5、6参照)。
【0031】
L型ラック11が下限位置へ到達すると、その上端のドッグ11cがマイクロスイッチ30のスイッチレバー30aを押圧し、モータ7を停止させる。
この時、伸長したクランク16と連杆17の枢軸18が、該枢軸18の軌道Q上の死点Xを越えて位置するため、かかる伸長状態のクランク16と連杆17に倍力作用を具有させられ、かかる状態のクランク16は、図7で2点鎖線で示す傾倒維持ストッパー19により、即ち支軸15における凸部22の正面辺22aが正面当止め片24に触突することにより、それ以上先の同一方向への回転が抑止されるため、クランク16と連杆17に支えられる手摺り棒3の傾倒状態を強固に保持する。
【0032】
かかる傾倒状態の手摺り棒3は、車両乗降に際しての伝い歩きの安全な支えとして利用される。
又、モータ7の停止状態において、手摺り棒3の傾倒状態を保持するのは、伸長状態のクランク16及び連杆17と、傾倒維持ストッパー19が主に担うので、伝動機構8における各噛合部位に過大な負荷がかかることがない。
【0033】
次に、開放状態のスライドドアが閉鎖される時に、モータ7が作動して上記と逆方向に原動歯車7aを回転させ、従動歯車10、駆動歯車9aを介してL型ラック11は下限位置から上昇する。
すると、回動歯車2aが図5において右回りに回転し、これと回動軸2を以て同軸のクランク16を同一方向へ回転させ、これによりクランク16と連杆17は屈曲し、支軸15を支点として手摺り棒3を車内IDへの垂下状態へと揺動させる。
【0034】
そして、手摺り棒3の垂下状態の直前でクランク16は、これの突片16aが受け片25aを押圧しながら回動する。
突片16aによる受け片25aの押圧は、手摺り棒3が垂下状態へ至る車内IDの定位置へ配置されるまで成され、かかる状態では、垂下維持ストッパー26により、即ち支軸15における凸部22の背面辺22bが背面当止め片28に触突することにより、受け片25aを継続して押圧する突片16a(クランク16)のそれ以上先の同一方向への回転が抑止される。
これと同時にL型ラック11は上限位置へ到達するため、その上端のドッグ11cがマイクロスイッチ29のスイッチレバー29aを押圧してモータ7は停止し、手摺り棒3は、上記垂下状態に復帰する。
【0035】
尚、本実施例にあっては、運転席又は助手席等の前席の前方乗降口の後方にピラーを介して隣接する後方乗降口をスライドドアが開閉する車両において、その後方乗降口から手摺り棒を出没する様に、後方乗降口を構成する前方ピラーに車両用手摺りを設置したものを示したが、特許文献2に開示される様に、後方乗降口を構成する後方ピラーにも設置可能である。
又、本発明に係る車両用手摺りは、スライドドアが開閉する乗降口に限らず、スイングドアが開閉する乗降口や、主にバスなどに装備される折戸が開閉する乗降口にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 駆動ボックス
1a 側部
2 回動軸
2a 回動歯車
3 手摺り棒
9 駆動軸
9a 駆動歯車
11 L型ラック
11a ラック
11b ラック
15 支軸
16 クランク
16a 突片
17 連杆
18 枢軸
19 傾倒維持ストッパー
25a 受け片
26 垂下維持ストッパー
G 乗降口
P ピラー
Pa 側縁
Q 軌道
T 厚み方向
X 死点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口を構成するピラーの内側面上部に取付けた駆動ボックスと、該駆動ボックスにおいて前記ピラー内側面に平行に水平軸支された回動軸に連繋して、乗降口閉鎖時に車内でピラーの乗降口側の側縁に沿って垂下し、乗降口開放時に下端を乗降口より車外へ斜め下向きに突出して傾倒する様に揺動可能に取付けた手摺り棒とから成る車両用手摺りであって、駆動ボックスは、前記回動軸に直交するピラーの厚み方向に駆動軸を有する駆動歯車と、回動軸に軸着した回動歯車と、該回動歯車及び駆動歯車の夫々に噛合するラックを直角に一体形成したL型ラックとを内蔵し、ピラーの厚み方向に扁平に形成したことを特徴とする車両用手摺り。
【請求項2】
手摺り棒は、上部が駆動ボックスの側部より乗降口側へ水平突設した回転自在な支軸の先端に固定され、かかる固定部位より下方部位と、基端を回動軸に固定したクランクの先端とを、連杆を介して枢着連結し、手摺り棒の上記傾倒状態で伸長するクランクと連杆の枢軸が、該枢軸の軌道上の死点を越えて位置する様に設定すると共に、この時にクランクの回転を抑止する傾倒維持ストッパーを設けたことを特徴とする請求項1記載の車両用手摺り。
【請求項3】
クランク先端側に設けた突片の軌道上に手摺り棒と揺動動作が同期する受け片を配置し、該受け片は前記突片に手摺り棒の垂下状態の直前から垂下状態へ至るまで押圧され、手摺り棒の垂下状態で受け片を継続して押圧する突片の回転を抑止する垂下維持ストッパーを設けたことを特徴とする請求項2記載の車両用手摺り。
【請求項4】
手摺り棒は、乗降口を開閉するドアの開閉動作に連動して揺動する様に設定したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の車両用手摺り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−91756(P2012−91756A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243002(P2010−243002)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(393020122)トーシンテック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】