車両用暖房装置
【課題】車両用暖房装置に関し、簡素な構成で車両への搭載性及び組付作業性を向上させる。
【解決手段】熱交換器1a,ブロア1b,及び固定用の取付ブラケット1dを具備するヒータユニット1と、車体に固設されヒータユニット1を内部に収納するヒータボックス2と、ヒータユニット1の取付ブラケット1dをヒータボックス2の底面2aに固定するバンド部材3とを備える。
また、バンド部材3が、底面2aに対しヒンジを介して接離方向へ回動可能に枢結支持された支持部3aと、取付ブラケット1dを底面2aとの間に挟持する挟持部3bと、支持部3aの回動を拘束して取付ブラケット1dを固定する固定部3cとを具備する。
【解決手段】熱交換器1a,ブロア1b,及び固定用の取付ブラケット1dを具備するヒータユニット1と、車体に固設されヒータユニット1を内部に収納するヒータボックス2と、ヒータユニット1の取付ブラケット1dをヒータボックス2の底面2aに固定するバンド部材3とを備える。
また、バンド部材3が、底面2aに対しヒンジを介して接離方向へ回動可能に枢結支持された支持部3aと、取付ブラケット1dを底面2aとの間に挟持する挟持部3bと、支持部3aの回動を拘束して取付ブラケット1dを固定する固定部3cとを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中型バスや大型バス等の車両に用いて好適な車両用暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的広い車室空間を有する中型バスや大型バス,ワゴン車等の車両において、複数のヒータユニットを用いて暖房制御を行うことで車室内の居住性を向上させる技術が知られている。このような技術では、ヒータユニットを車両の各所に配置して、車室内の温度差が小さくなるように配風改善がなされている。一般に、これらのヒータユニットの配設位置は、できるだけ広い車室空間を確保するべく車両の床下に設定されている。
例えば、特許文献1には、車両のクロスメンバに締結固定された車体取付用フレームに対してベースプレートを溶接固定し、ヒータ本体をベースプレートから吊下げて固定した車両用暖房装置が開示されている。この技術では、予熱式のヒータ本体のさらに下部をカバーで覆い、路面側からの水,泥等の侵入を防止している。このような吊下げ構造により、ヒータ本体の取付作業が簡素化されるとともに、保守点検の作業性が向上するとされている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された技術では、ヒータユニット(ヒータ本体)の組付や保守点検を車両の下面側から行う必要があり、良好な作業性が得られない。特に、中型バスや大型バスでは、車両の下面にエンジンルームやバッテリ,タイヤスペースといった車両走行用の各種装置が配設される場合があるため、下面側からのアクセスがしにくく、作業に多くの工数を要してしまう。また、特許文献1に記載された技術のように、ヒータユニットの取付後にその下面をカバーで覆う構造では、必要とされる防水性を確保することが難しい。
【0004】
そこで、車両の床面に開口部を設けるとともに開口部の下部にヒータユニットの収納スペースを設けて、室内側からのアクセスが容易な構造とすることが考えられる。例えば、上面のみが開放された箱状の埋め込みボックスを車室内側から床下へ突出させて固定し、その中にヒータユニットを固定した後、埋め込みボックスの上面の開口部に蓋をする構成とする。このようなヒータユニットの搭載方法を採用すれば、室内側からの組付作業,保守点検作業が可能となり、また、路面側に対する防水性能も確保することができる。
【特許文献1】特許第2629831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、中型バスや大型バスでは、車室内に多数の座席が配置されるため、必ずしもヒータユニットを配置したい位置に開口部を設けることができるとは限らない。特に、回転シート仕様の座席が採用された場合には、座席下部に回転機構を設ける必要があり、ヒータユニットの収納スペースや開口部を設けることのできる場所が大きく制限されてしまう。その結果、広い作業スペースを確保することができず、ヒータユニットの組付作業性に難が生じやすい。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、簡素な構成で車両への搭載性及び組付作業性を向上させることのできる車両用暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明の車両用暖房装置は、熱交換器,上記熱交換器によって昇温された空気を送出するブロア,及び固定用の取付ブラケットを具備するヒータユニットと、車体に固設され、上記ヒータユニットを内部に収納するヒータボックスと、上記ヒータユニットの上記取付ブラケットを上記ヒータボックスの底面に固定するバンド部材とを備え、上記バンド部材が、上記底面に対しヒンジを介して接離方向へ回動可能に枢結支持された支持部と、上記取付ブラケットを上記底面との間に挟持する挟持部と、上記支持部の回動を拘束して上記取付ブラケットを固定する固定部とを具備したことを特徴としている。
【0008】
なお、上記固定部は、ボルト締結によって上記ブラケットを固定するものとしてもよいし、あるいは、止め金具によって上記ブラケットを固定するものとしてもよい。
また、請求項2記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項1記載の構成において、上記ヒータユニットが、上記取付ブラケットとして、上面視において上記ヒータユニットの一側部に固設された第一取付ブラケットと他側部に固設された第二取付ブラケットとを具備し、上記ヒータボックスが、上記車体の床面に形成された開口部の下部に固設され、かつ、上面視において上記開口部からオフセットした取付位置に上記ヒータユニットを収容するように設けられるとともに、上記ヒータユニットが上記取付位置に収容された状態において、上記バンド部材が、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットのうち少なくとも上記開口部に対して奥側に位置する一方を固定することを特徴としている。
【0009】
上記バンド部材が上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットの両方を固定する構成としてもよい。つまり、上記バンド部材は少なくとも奥側の一方を固定するように設けられていればよい。
また、上記取付ブラケットは、上記ヒータボックスの底面に対して平行に配向されていることが好ましい。例えば、上記底面が水平である場合には、上記取付ブラケットも水平となる。
【0010】
また、請求項3記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項1又は2記載の構成において、上記挟持部が、上記支持部の底面及び上記固定部の底面よりも上方へ凹設形成されていることを特徴としている。
また、請求項4記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成において、上記バンド部材を締結固定すべく、上記ヒータボックスの底面から上方へ突出するように配設されたスタッドボルトをさらに備えたことを特徴としている。
【0011】
なお、上記スタッドボルトとは、上記支持部及び上記固定部を上記底面に固定するためのボルトである。具体的には、全ネジボルトやウェルドボルト等である。
また、請求項5記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の構成において、上記バンド部材が、上記挟持部の底面に貼付された滑り止め用のインシュレータをさらに備えたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項6記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項2記載の構成において、上記ヒータボックスが、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットのうち上記開口部に近い一方を締結固定すべく、上記底面に穿孔されたボルト孔と、上記ボルト孔の下方(すなわち、上記ボルト孔の裏側)に固設された袋ナットとを有することを特徴としている。
【0013】
また、請求項7記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項2記載の構成において、上記バンド部材が、二組設けられるとともに、上記ヒータユニットが上記取付位置に収容された状態において、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットの両方を固定することを特徴としている。
また、請求項8記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項3記載の構成において、上記挟持部が、上記の凹設形成された面内において下方へ凸設形成された凸部を有することを特徴としている。
【0014】
また、請求項9記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項2記載の構成において、上記ヒータユニットが、上記取付ブラケットとして、側面視において上記ヒータユニットの上端部に垂直に固設された第三取付ブラケットを具備するとともに、上記第三取付ブラケットを上記ヒータボックスの側面又は天井面に固定する第二バンド部材をさらに備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用暖房装置(請求項1)によれば、バンド部材を用いることにより、ヒータユニットをヒータボックス内へ容易に固定することができ、車両への搭載性及び組付作業性を向上させることができる。
また、本発明の車両用暖房装置(請求項2)によれば、開口部に対して奥側にバンド部材を配置することにより、ヒータユニットの影になる手が届きにくい部位の固定作業が容易となる。
【0016】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項3)によれば、支持部及び固定部の底面と挟持部の凹みとの段差によって隙間が形成されるため、取付ブラケットの幅及び厚みに応じて隙間の幅及び厚みを設定することで、取付ブラケットを正確な位置に固定することができる。また、取付ブラケットの隙間への挿入が容易となり、取付作業性をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項4)によれば、バンド部材がヒータボックスの底面に配設されたスタッドボルトによって締結固定されるため、車両の室内側からの一人作業が容易となる。また、バンド部材の位置合わせが容易かつ正確となり、延いてはヒータユニットの取付精度を向上させることができる。
また、本発明の車両用暖房装置(請求項5)によれば、ヒータユニットの取付ブラケットがインシュレータを介してヒータボックスの底面及び挟持部の間に挟持されるため、ヒータユニットの水平方向の滑動を抑制することができ、ヒータユニットを堅固に固定しておくことができる。
【0018】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項6)によれば、ボルト孔及び袋ナットの位置により、開口部に近い一方のブラケットの位置合わせが容易となる。また、袋ナットがボルト孔の下方(すなわち、ヒータボックスの外側)に固設されるため、ヒータボックスの底面内側から障害物となる突起物を排することができる。つまり、ヒータユニットをヒータボックスの底面の取付位置へ装着する際や取付位置の微調整時のハンドリングが容易となり、作業性をさらに向上させることができる。
【0019】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項7)によれば、二組のバンド部材を用いることで、ヒータユニットの取付作業がより容易となる。
また、本発明の車両用暖房装置(請求項8)によれば、挟持部に凸部を設けることで、バンド部材による取付ブラケットの固定力(押圧力)を増加させることができる。また、凸部が取付ブラケットの水平方向への移動に対する抵抗として作用するため、ヒータユニットの固定された状態における安定性を高めることができる。
【0020】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項9)によれば、押圧方向が異なる二個のバンド部材を用いることで、ヒータユニットの固定された状態における安定性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図8は本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置を説明するためのものであり、図1は本車両用暖房装置を搭載したバス車両の室内床板を取り外した状態を示す斜視図、図2は図1のA部を拡大して示す斜視図、図3は本車両用暖房装置の構成を示す断面図(図1のA部の縦断面図)である。
【0022】
また、図4は本車両用暖房装置におけるヒータユニットの構成を示す斜視図、図5は本車両用暖房装置におけるヒータボックスの構成を示す斜視図、図6(a)〜(c)は本車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す三面図、図7はそのバンド部材の斜視図、図8はバンド部材の動作を説明するための断面図である。
なお、図9は本発明の変形例としての車両用暖房装置の構成を示す側断面図であり、図10は本発明の変形例としての車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す斜視図である。
【0023】
[1.全体構成]
本車両用暖房装置10は、図1に示すバス車両の車体フレームに固設されている。この車体フレームは、一対のサイドフレーム16,一対のサイドレール17及びクロスメンバ9を格子状に連結して構成されている。一対のサイドフレーム16は、バス車両の左右側面に沿って前後方向に延在する車体フレームであり、一対のサイドレール17は、バス車両の略中央を前後方向に延在する車体フレームである。一方、クロスメンバ9は、これらのサイドフレーム16及びサイドレール17間を幅方向に連結するものである。
【0024】
一対のサイドレール17間には、バス車両の前端部から後端部までに及ぶ敷設通路15が形成され、その内部に各種配線,配管材が敷設されるようになっている。また、この敷設通路15は、本車両用暖房装置10の吸気用ダクトとしても機能している。本実施形態では、図1に示すように、本車両用暖房装置10が敷設通路15に隣接して合計四箇所に設けられている。なお、本車両用暖房装置10は、室内空気取入口14を介して敷設通路15側から空気を取り入れている。
【0025】
[2.車両用暖房装置の構成]
図3に示すように、本車両用暖房装置10は、ヒータユニット1,ヒータボックス2及びバンド部材3を備えて構成され、バス車両の床下に埋め込まれた状態で装着されている。
【0026】
[2−1.ヒータユニット]
ヒータユニット1は、エンジン冷却水の熱を利用して空気を暖める温水加熱式の暖房装置である。このヒータユニットは、図2〜図4に示すように、熱交換器1a,ブロア1b,取付ブラケット1c,1dを備えて構成されている。
【0027】
熱交換器1aは、薄板状の放熱フィンを多数並列に配置した空冷放熱器として構成されており、その内部にエンジン冷却水を流通させて熱を外部へ放出するように機能する。一方、ブロア1bは、熱交換器1aに隣接して設けられた送風機であり、放熱フィンを介して空気を吸い込むことで、熱交換器1aで昇温された空気を外部へ送出するように機能する。ここで送出された空気が、バス車両の室内の暖房に供されている。
【0028】
取付ブラケット1c,1dは、ヒータユニット1を車体に対して固設するための取付金具である。本実施形態では、図2〜図4に示すように、ヒータユニット1のうちのブロア1bが配された一側部の下端に第一取付ブラケット1cが固設され、熱交換器1aが配された他側部の下端に第二取付ブラケット1dが固設されている。なお、第一取付ブラケット1cには、ボルト締結用のボルト孔1eが穿孔されている。
【0029】
[2−2.ヒータボックス]
ヒータボックス2は、ヒータユニット1を内部に収容するケース部材である。図5に示すように、ヒータボックス2は上面が開放された箱状に形成され、その上面の端部には固定用のフランジ2dが屈曲形成されている。このフランジ2dが前述のサイドフレーム16,サイドレール17及びクロスメンバ9に溶接固定されるようになっている。また、ヒータボックス2の底面2aは略水平に形成されている。ヒータユニット1は底面2a上の所定位置に取り付けられるようになっている。
【0030】
図5に示すように、ヒータボックス2の内部には仕切板2bが設けられ、内部空間が二分割されている。これらの一方はヒータユニット1が取り付けられる空間となり、他方がヒータユニット1から送出された空気が流通するダクト空間となっている。仕切板2bにはブロア1bの吹き出し口に対応した大きさの送風口2cが穿孔されており、この送風口2cを通って温風が室内側へ供給されている。なお、仕切板2bと対面するヒータボックス2の一側面には、前述の室内空気取入口14をなす切欠きが形成されている。
【0031】
また、ヒータボックス2の底面2aには二種類の締結用構造が設けられている。一方はウェルドボルト(スタッドボルト)5であり、他方がボルト孔6及び袋ナット7である。
ウェルドボルト5は、前述の第二取付ブラケット1dを取り付けるためのものであり、底面2aから上方へボルト軸が突出するように複数個溶接固定されている。一方、ボルト孔6及び袋ナット7は第一取付ブラケット1cを取り付けるためのものである。図5に示すように、袋ナット7は、ボルト孔6の下方、すなわち、ヒータボックス2の底面2aの外側(裏面)に溶接固定されている。なお、このボルト孔6の配設位置は、第一取付ブラケット1cに穿孔されたボルト孔1eの配設位置と対応している。
【0032】
これにより、ヒータボックス2の内部において、第一取付ブラケット1cの取付位置にはボルト孔6のみが形成されており、取付時の障害となるものが何もない状態となっている。また、第二取付ブラケット1dの取付位置にはボルト軸が突出しているため、例えば作業者が容易に取付位置を目視確認できる状態となっている。
【0033】
[2−3.バンド部材]
バンド部材3は、ヒータユニット1の取付ブラケット1dをヒータボックス2の底面2aに固定する固定具である。このバンド部材3は、図6(a)〜(c),図7に示すように、支持部3a,挟持部3b及び固定部3cを備えて構成されている。
【0034】
支持部3aは、底面2aに対しヒンジを介して接離方向へ回動可能に枢結支持された部位であり、本実施形態では平蝶番が用いられている。また、この支持部3aの一片には、前述のウェルドボルト5を挿通する大きさの固定孔3eが穿孔されている。すなわち、固定孔3eにウェルドボルト5を挿通した状態で支持部3aの上からナット等を締結することによって、バンド部材3が回動可能な状態で底面2aに取り付けられるようになっている。
【0035】
支持部3aの他片(固定孔3eが形成されていない一片)には、プレート状の部材が溶接固定されている。本実施形態では、このプレート状の部材が挟持部3b及び固定部3cを構成している。なお、このプレート状の部材の中途には、先端側の面を板厚方向へ平行移動させるように屈曲形成された屈曲部3gが設けられている。以下、屈曲部3gよりも先端の部位を固定部3cと称し、屈曲部3gよりも基端側を挟持部3bと称す。挟持部3b及び固定部3cの底面は、互いに平行な平面となっている。
【0036】
挟持部3bは、ヒータユニット1の取付ブラケット1dをヒータボックス2の底面2aとの間に挟み込んで支持固定する部位である。図6(c),図7に示すように、挟持部3bは、支持部3aの底面及び固定部3cの底面よりも上方へ凹んだ形状に形成されている。また、図8に示すように、挟持部3bの底面にはスポンジ状のインシュレータ4が貼り付けられている。インシュレータ4は、ヒータボックス2の底面2aと挟持部3bとの間に挟装される第二取付ブラケット1dの滑り止めとして機能する。
【0037】
一方、固定部3cは、支持部3aの回動(すなわち、バンド部材3全体の回動)を拘束して取付ブラケット1dを固定する部位である。図6(b),図7に示すように、固定部3cには前述のウェルドボルト5を挿通する大きさの長孔3dが形成されている。また、この固定部3cは、底面が支持部3aの底面と同一平面上に位置するように形成されている。
【0038】
本実施形態では、屈曲部3gにおける板厚方向への屈曲長さdが、支持部3aの他片の板厚と同一寸法に設定されている。なお、支持部3aの他片の先端から屈曲部3gまでの距離は、第二取付ブラケット1dの幅よりも僅かに大きめに形成されている。
なお、図7に示すように、挟持部3b及び固定部3cの側辺には、プレート状の部材の延在方向に沿ってフランジ部3fが立設形成されており、バンド部材3全体の剛性が高められている。
【0039】
[3.周辺構成]
図1のA部の縦断面図を図3に示す。ヒータボックス1の取付位置の直上部には、回転式の座席8を支持するための固定用骨格8bが配設されている。この固定用骨格8bは、シート8cの下部に設置される回転シート脚8aを締結固定するための部材である。そのため、ヒータボックス1の取付用の開口部13は、座席8の前方側へ偏って設定されている。すなわちA部においては、図2に示すように、上面視において開口部13からオフセットした取付位置にヒータユニット2が取り付けられるように、その取付位置が設定されている。なお、図3中には、クロスメンバ9の上面にフロアボード11及びフロアトリム12が貼り付けられた状態が示されている。
【0040】
また、図2に示すように、ヒータユニット1はブロア1bの吹き出し口がバス車両の側面側(外側)に配向されるように配置されている。すなわち、ヒータユニット1がヒータボックス2内部の取付位置に収容された状態において、第一取付ブラケット1cが開口部13の手前側に位置し、第二取付ブラケット1dが奥側に位置するように、その取付位置が設定されている。したがって、本実施形態のバンド部材3は、開口部13に対して奥側(図3中の右側)に位置する第二取付ブラケット1dを固定するようになっている。
【0041】
[4.作用]
本発明に係る車両用暖房装置10は上述のように構成されて、以下のように組み付けられる。
まず、ヒータボックス2単体が組み立てられ、底面2aの予め設定された所定位置にウェルドボルト5及び袋ナット7が取り付けられる。ウェルドボルト5周りや袋ナット7と底面2aとの接触部分,ヒータボックス2の入隅接合部等、ヒータボックス2の外側の防水シールはこの段階で処理される。その後、ヒータボックス2のフランジ2dがサイドフレーム16,サイドレール17及びクロスメンバ9に溶接固定される。図1のA部においては、ヒータボックス1の取付位置の直上部に固定用骨格8bが配設されるため、ヒータボックス1の取付位置と開口部13とがオフセットした状態となる。
【0042】
次に、ヒータボックス2の底面2aに対し、バンド部材3の支持部3aが固定される。バンド部材3の取付位置はウェルドボルト5の突出位置によって容易に確認することができる。また、この時点ではまだヒータボックス2の内部に何も配置されていないため、図1のA部のように取付位置が開口部13よりも奥側であっても、工具を用いてバンド部材3を締結固定することができる。バンド部材3の固定部3cはウェルドボルト5に挿通した状態で未固定の状態にしておく。これにより挟持部3bはヒータボックス2の底面に対して接離方向へ回動自在の状態となる。
【0043】
続いて、ヒータユニット1のヒータボックス2への収容作業が実施される。まず開口部13が開放され、図3中に点線で示すようにヒータユニット1を傾斜させながらヒータボックス2の内部へと移動させる。ヒータユニット1の取付位置は開口部13からずれた位置となっているため、ヒータユニット1を図3中のC方向へ僅かに回転させながら奥側へと挿入する。このとき、ヒータユニット1の取付位置は、ボルト孔6の穿孔位置とバンド部材3とによって確認される。また、ウェルドボルト5が突出しているのは開口部13に対して奥側の取付箇所となっているため、ヒータボックス2内部でのヒータユニット1の平行移動(水平移動)の障害にはならない。
【0044】
さらに、図8中に破線で示すように、バンド部材3の固定部3c側を僅かに持ち上げ、挟持部3bの下にヒータユニット1の第二取付ブラケット1dを差し込む。その後、ボルト孔6の配設位置と第一取付ブラケット1cのボルト孔1eとを一致させながら、バンド部材3の固定部3c側を図8中のB方向へ回動させて第二取付ブラケット1dを挟み込み、固定部3cをボルトで締結固定する。
【0045】
このとき、挟持部3bの下面に貼付されたインシュレータ4は、図8中に実線で示すように、挟持部3bと第二取付ブラケット1dとの間で圧縮される。一方、第二取付ブラケット1dは、インシュレータ4によって底面2aに強く押し付けられ、その位置が固定される。また、ボルト孔1eを介してボルト孔6及び袋ナット7へボルトを締結することにより、第一取付ブラケット1cの位置も固定される。
【0046】
以上の手順でヒータユニット1がヒータボックス2に取り付けられると、ヒータボックス2の仕切板2bに穿設された送風口2cへ、ヒータユニット1の吹き出し口が当接するようになっている。ヒータユニット1の吹き出し口を送風口2cへ当接させることにより、ヒータユニット1で昇温された空気とヒータボックス2内におけるヒータユニット1が収納された空間に車室内から吸い込まれた空気とが混合しないようにして、暖房効果を上げている。
【0047】
[5.効果]
本実施形態の車両用暖房装置10によれば、バンド部材3を利用した挟み込み固定方式を採用することにより、簡素な構成でヒータユニット1をヒータボックス2内へ容易に固定することができ、バス車両への搭載性及び組付作業性を向上させることができる。
特に、本実施形態では車体の床面に形成された開口部13がヒータユニット1の取付位置に対してオフセットしているため、ヒータユニット1の影になる奥側の固定が難しいが、本発明によればこのような工具の届きにくい部位の固定作業が極めて容易となる。上述の実施形態の場合には、バンド部材3の固定部3c及び第一取付ブラケット1cの三箇所を締結固定するだけでよい。
【0048】
また、ヒータユニット1の第二取付ブラケット1dはバンド部材3と底面2aとに挟持固定されるようになっているため、穿孔加工が不要であり、生産性を高めることができる。
また、ヒータボックス2の底面2aに配設されたウェルドボルト5によってバンド部材3が固定されるため、バンド部材3の取付作業も容易であり、ヒータユニット1の取付前に予め組み付けておくことも可能である。また、バンド部材3の位置合わせが容易かつ正確となり、延いてはヒータユニット1の取付精度を向上させることができる。
【0049】
また、バンド部材3の形状に関して、挟持部3bが他の部位よりも上方へ凹んだ形状となっているため、支持部3a及び固定部3cの底面と挟持部3bの凹みとの段差によって隙間を形成することができる。つまり、取付ブラケット1dの幅や厚みに応じて隙間の幅及び厚みを設定することで、取付ブラケット1dを正確な位置に固定することができる。また、取付ブラケット1dの隙間への挿入が容易となり、取付作業性をさらに向上させることができる。なお、隙間を大きくすればインシュレータ4の厚みも大きくすることができる。
【0050】
また、ヒータユニット1の取付ブラケット1dがインシュレータ4を介してヒータボックス2の底面2a及び挟持部3bの間に挟持されるため、ヒータユニット1の水平方向の滑動を抑制することができ、ヒータユニット1を堅固に固定しておくことができる。
また、ヒータボックス2に設けられた二種類の締結用構造に関して、図3に示すように、開口部13に近い手前側の取付位置はボルト孔6及び裏面の袋ナット7から構成されているため、第一取付ブラケット1cの周辺には取付時の障害となるものが何もない。つまり、ヒータユニット1をヒータボックス2の底面2aの取付位置へ装着する際や取付位置の微調整時のハンドリングが容易となり、作業性をさらに向上させることができる。
【0051】
このように、本発明によれば、ヒータボックス2内へのヒータユニット1の取付作業をバス車両の室内側から容易に行うことができ、簡素な構成でヒータユニット1のバス車両への搭載性及び組付作業性を向上させることができるほか、製造コストを低減させることができる。
【0052】
[6.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。少なくとも、バンド部材3を用いてヒータボックス2の内部にヒータユニット1が固定される構成を備えたものであればよい。
【0053】
例えば、上述の実施形態では、図3に示すように、ヒータユニット1の取付位置が開口部13からオフセットした位置となっているが、本発明に係るバンド部材3を利用した挟み込み固定方式はこのような狭隘な空間にヒータユニット1を取り付ける場合でなくても適用可能である。
また、上述の実施形態は、ヒータユニット1に設けられた二種類の取付ブラケット1c,1dのうちの一方をバンド部材3で挟み込む構造となっているが、ヒータユニット1側の取付ブラケットが単一である場合や三個以上設けられている場合にも適用可能である。つまり、バンド部材3が単一のブラケットを挟み込んで固定する構成としてもよいし、複数のブラケットのうちの少なくとも一つを挟み込んで固定する構成としてもよい。複数のバンド部材を用いて固定すれば、ヒータユニット1の取付作業がより容易となる。
【0054】
例えば、図9に示すように、上端部に垂直に固設された第三取付ブラケット1eを備えたヒータユニット1を取り付ける場合には、奥側の第二取付ブラケット1d及び第三取付ブラケット1eの二箇所をバンド部材3で固定することが考えられる。この場合、第二取付ブラケット1dはバンド部材3から垂直下方向への押圧力を受け、第三取付ブラケット1eは水平方向への押圧力を受けることになる。つまり、押圧方向が互いに直交する二個のバンド部材3が用いられていることになる。
【0055】
このように、押圧方向が異なる二個のバンド部材3を用いることで、ヒータユニット1の固定された状態における安定性をさらに高めることができる。なお、図9中に示すように、全ての取付ブラケット1c,1d,1fをバンド部材3で固定してもよい。
また、バンド部材3の形状を工夫することでヒータユニット1を堅固に固定することも一案である。例えば、図10に示すように、挟持部3bの中央部に下方へ凸設形成された凸部3hを設けて、バンド部材3による取付ブラケット1dの挟持力を増強させることが考えられる。このように、取付ブラケット1dの水平方向への移動に対する抵抗として凸部3hを作用させることにより、ヒータユニット1の固定された状態における安定性を高めることができる。
【0056】
なお、上述の実施形態におけるインシュレータ4は、このような水平方向への滑り止めとして作用するものであって、挟持部3bの形状や摩擦抵抗等に応じて適宜の素材を用いることができ、あるいは省略することも可能である。同様に、バンド部材3の具体的な形状についても、取付ブラケット1dの挟み込み状態に応じて適宜変更することが可能である。
【0057】
例えば、屈曲部3gにおける板厚方向への屈曲長さdを、第二取付ブラケット1d及びインシュレータ4の厚みの合計と同一値に設定してやれば、バンド部材3の固定部3cを上方へ持ち上げなくとも挟持部3bの下に第二取付ブラケット1dを差し込むことが可能となる。したがって、ヒータユニット1の取付作業をさらに簡素化することができる。
また、上述の実施形態では、バンド部材3及び第二取付ブラケット1dの締結固定にウェルドボルト5を用いているが、固定方法はこれに限定されない。例えば、バンド部材3の支持部3aの一片をヒータボックス2の底面2aに溶接固定してもよいし、固定部3cの固定には貫木状の止め金具を用いる構成としてもよい。なお、第一取付ブラケット1cの締結固定に関しても同様である。
【0058】
また、上述の実施形態では、エンジン冷却水の熱を利用して空気を暖める温水加熱式のヒータユニット1が用いられているが、これの代わりに、例えば特許文献1に記載されたような予熱式のヒータや、バーナー等で空気を直接加熱する温気燃焼式のヒータを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置を搭載したバス車両において、室内床板を取り外した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置の取付状態を示す斜視図(図1のA部拡大斜視図)である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置の構成を示す断面図(図1のA部縦断面図)である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるヒータユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるヒータボックスの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す三面図であり、(a)はその側面図、(b)はその上面図、(c)はその正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるバンド部材の動作を説明するための断面図である。
【図9】本発明の変形例としての車両用暖房装置の構成を示す側断面図である。
【図10】本発明の変形例としての車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ヒータユニット
1a 熱交換器
1b ブロア
1c 取付ブラケット(第一取付ブラケット)
1d 取付ブラケット(第二取付ブラケット)
2 ヒータボックス
2a 底面
2b 仕切板
2c 送風口
2d フランジ
3 バンド部材
3a 支持部
3b 挟持部
3c 固定部
3d 長孔
3e 固定孔
3f フランジ部
4 インシュレータ
5 ウェルドボルト(スタッドボルト)
6 ボルト孔
7 袋ナット
8 座席
8a 回転シート脚
8b 固定用骨格
8c シート
9 クロスメンバ
10 車両用暖房装置
11 フロアボード
12 フロアトリム
13 開口部
14 室内空気取入口
15 敷設通路
16 サイドフレーム
17 サイドレール
【技術分野】
【0001】
本発明は、中型バスや大型バス等の車両に用いて好適な車両用暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的広い車室空間を有する中型バスや大型バス,ワゴン車等の車両において、複数のヒータユニットを用いて暖房制御を行うことで車室内の居住性を向上させる技術が知られている。このような技術では、ヒータユニットを車両の各所に配置して、車室内の温度差が小さくなるように配風改善がなされている。一般に、これらのヒータユニットの配設位置は、できるだけ広い車室空間を確保するべく車両の床下に設定されている。
例えば、特許文献1には、車両のクロスメンバに締結固定された車体取付用フレームに対してベースプレートを溶接固定し、ヒータ本体をベースプレートから吊下げて固定した車両用暖房装置が開示されている。この技術では、予熱式のヒータ本体のさらに下部をカバーで覆い、路面側からの水,泥等の侵入を防止している。このような吊下げ構造により、ヒータ本体の取付作業が簡素化されるとともに、保守点検の作業性が向上するとされている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された技術では、ヒータユニット(ヒータ本体)の組付や保守点検を車両の下面側から行う必要があり、良好な作業性が得られない。特に、中型バスや大型バスでは、車両の下面にエンジンルームやバッテリ,タイヤスペースといった車両走行用の各種装置が配設される場合があるため、下面側からのアクセスがしにくく、作業に多くの工数を要してしまう。また、特許文献1に記載された技術のように、ヒータユニットの取付後にその下面をカバーで覆う構造では、必要とされる防水性を確保することが難しい。
【0004】
そこで、車両の床面に開口部を設けるとともに開口部の下部にヒータユニットの収納スペースを設けて、室内側からのアクセスが容易な構造とすることが考えられる。例えば、上面のみが開放された箱状の埋め込みボックスを車室内側から床下へ突出させて固定し、その中にヒータユニットを固定した後、埋め込みボックスの上面の開口部に蓋をする構成とする。このようなヒータユニットの搭載方法を採用すれば、室内側からの組付作業,保守点検作業が可能となり、また、路面側に対する防水性能も確保することができる。
【特許文献1】特許第2629831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、中型バスや大型バスでは、車室内に多数の座席が配置されるため、必ずしもヒータユニットを配置したい位置に開口部を設けることができるとは限らない。特に、回転シート仕様の座席が採用された場合には、座席下部に回転機構を設ける必要があり、ヒータユニットの収納スペースや開口部を設けることのできる場所が大きく制限されてしまう。その結果、広い作業スペースを確保することができず、ヒータユニットの組付作業性に難が生じやすい。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、簡素な構成で車両への搭載性及び組付作業性を向上させることのできる車両用暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明の車両用暖房装置は、熱交換器,上記熱交換器によって昇温された空気を送出するブロア,及び固定用の取付ブラケットを具備するヒータユニットと、車体に固設され、上記ヒータユニットを内部に収納するヒータボックスと、上記ヒータユニットの上記取付ブラケットを上記ヒータボックスの底面に固定するバンド部材とを備え、上記バンド部材が、上記底面に対しヒンジを介して接離方向へ回動可能に枢結支持された支持部と、上記取付ブラケットを上記底面との間に挟持する挟持部と、上記支持部の回動を拘束して上記取付ブラケットを固定する固定部とを具備したことを特徴としている。
【0008】
なお、上記固定部は、ボルト締結によって上記ブラケットを固定するものとしてもよいし、あるいは、止め金具によって上記ブラケットを固定するものとしてもよい。
また、請求項2記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項1記載の構成において、上記ヒータユニットが、上記取付ブラケットとして、上面視において上記ヒータユニットの一側部に固設された第一取付ブラケットと他側部に固設された第二取付ブラケットとを具備し、上記ヒータボックスが、上記車体の床面に形成された開口部の下部に固設され、かつ、上面視において上記開口部からオフセットした取付位置に上記ヒータユニットを収容するように設けられるとともに、上記ヒータユニットが上記取付位置に収容された状態において、上記バンド部材が、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットのうち少なくとも上記開口部に対して奥側に位置する一方を固定することを特徴としている。
【0009】
上記バンド部材が上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットの両方を固定する構成としてもよい。つまり、上記バンド部材は少なくとも奥側の一方を固定するように設けられていればよい。
また、上記取付ブラケットは、上記ヒータボックスの底面に対して平行に配向されていることが好ましい。例えば、上記底面が水平である場合には、上記取付ブラケットも水平となる。
【0010】
また、請求項3記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項1又は2記載の構成において、上記挟持部が、上記支持部の底面及び上記固定部の底面よりも上方へ凹設形成されていることを特徴としている。
また、請求項4記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成において、上記バンド部材を締結固定すべく、上記ヒータボックスの底面から上方へ突出するように配設されたスタッドボルトをさらに備えたことを特徴としている。
【0011】
なお、上記スタッドボルトとは、上記支持部及び上記固定部を上記底面に固定するためのボルトである。具体的には、全ネジボルトやウェルドボルト等である。
また、請求項5記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の構成において、上記バンド部材が、上記挟持部の底面に貼付された滑り止め用のインシュレータをさらに備えたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項6記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項2記載の構成において、上記ヒータボックスが、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットのうち上記開口部に近い一方を締結固定すべく、上記底面に穿孔されたボルト孔と、上記ボルト孔の下方(すなわち、上記ボルト孔の裏側)に固設された袋ナットとを有することを特徴としている。
【0013】
また、請求項7記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項2記載の構成において、上記バンド部材が、二組設けられるとともに、上記ヒータユニットが上記取付位置に収容された状態において、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットの両方を固定することを特徴としている。
また、請求項8記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項3記載の構成において、上記挟持部が、上記の凹設形成された面内において下方へ凸設形成された凸部を有することを特徴としている。
【0014】
また、請求項9記載の本発明の車両用暖房装置は、請求項2記載の構成において、上記ヒータユニットが、上記取付ブラケットとして、側面視において上記ヒータユニットの上端部に垂直に固設された第三取付ブラケットを具備するとともに、上記第三取付ブラケットを上記ヒータボックスの側面又は天井面に固定する第二バンド部材をさらに備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用暖房装置(請求項1)によれば、バンド部材を用いることにより、ヒータユニットをヒータボックス内へ容易に固定することができ、車両への搭載性及び組付作業性を向上させることができる。
また、本発明の車両用暖房装置(請求項2)によれば、開口部に対して奥側にバンド部材を配置することにより、ヒータユニットの影になる手が届きにくい部位の固定作業が容易となる。
【0016】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項3)によれば、支持部及び固定部の底面と挟持部の凹みとの段差によって隙間が形成されるため、取付ブラケットの幅及び厚みに応じて隙間の幅及び厚みを設定することで、取付ブラケットを正確な位置に固定することができる。また、取付ブラケットの隙間への挿入が容易となり、取付作業性をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項4)によれば、バンド部材がヒータボックスの底面に配設されたスタッドボルトによって締結固定されるため、車両の室内側からの一人作業が容易となる。また、バンド部材の位置合わせが容易かつ正確となり、延いてはヒータユニットの取付精度を向上させることができる。
また、本発明の車両用暖房装置(請求項5)によれば、ヒータユニットの取付ブラケットがインシュレータを介してヒータボックスの底面及び挟持部の間に挟持されるため、ヒータユニットの水平方向の滑動を抑制することができ、ヒータユニットを堅固に固定しておくことができる。
【0018】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項6)によれば、ボルト孔及び袋ナットの位置により、開口部に近い一方のブラケットの位置合わせが容易となる。また、袋ナットがボルト孔の下方(すなわち、ヒータボックスの外側)に固設されるため、ヒータボックスの底面内側から障害物となる突起物を排することができる。つまり、ヒータユニットをヒータボックスの底面の取付位置へ装着する際や取付位置の微調整時のハンドリングが容易となり、作業性をさらに向上させることができる。
【0019】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項7)によれば、二組のバンド部材を用いることで、ヒータユニットの取付作業がより容易となる。
また、本発明の車両用暖房装置(請求項8)によれば、挟持部に凸部を設けることで、バンド部材による取付ブラケットの固定力(押圧力)を増加させることができる。また、凸部が取付ブラケットの水平方向への移動に対する抵抗として作用するため、ヒータユニットの固定された状態における安定性を高めることができる。
【0020】
また、本発明の車両用暖房装置(請求項9)によれば、押圧方向が異なる二個のバンド部材を用いることで、ヒータユニットの固定された状態における安定性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図8は本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置を説明するためのものであり、図1は本車両用暖房装置を搭載したバス車両の室内床板を取り外した状態を示す斜視図、図2は図1のA部を拡大して示す斜視図、図3は本車両用暖房装置の構成を示す断面図(図1のA部の縦断面図)である。
【0022】
また、図4は本車両用暖房装置におけるヒータユニットの構成を示す斜視図、図5は本車両用暖房装置におけるヒータボックスの構成を示す斜視図、図6(a)〜(c)は本車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す三面図、図7はそのバンド部材の斜視図、図8はバンド部材の動作を説明するための断面図である。
なお、図9は本発明の変形例としての車両用暖房装置の構成を示す側断面図であり、図10は本発明の変形例としての車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す斜視図である。
【0023】
[1.全体構成]
本車両用暖房装置10は、図1に示すバス車両の車体フレームに固設されている。この車体フレームは、一対のサイドフレーム16,一対のサイドレール17及びクロスメンバ9を格子状に連結して構成されている。一対のサイドフレーム16は、バス車両の左右側面に沿って前後方向に延在する車体フレームであり、一対のサイドレール17は、バス車両の略中央を前後方向に延在する車体フレームである。一方、クロスメンバ9は、これらのサイドフレーム16及びサイドレール17間を幅方向に連結するものである。
【0024】
一対のサイドレール17間には、バス車両の前端部から後端部までに及ぶ敷設通路15が形成され、その内部に各種配線,配管材が敷設されるようになっている。また、この敷設通路15は、本車両用暖房装置10の吸気用ダクトとしても機能している。本実施形態では、図1に示すように、本車両用暖房装置10が敷設通路15に隣接して合計四箇所に設けられている。なお、本車両用暖房装置10は、室内空気取入口14を介して敷設通路15側から空気を取り入れている。
【0025】
[2.車両用暖房装置の構成]
図3に示すように、本車両用暖房装置10は、ヒータユニット1,ヒータボックス2及びバンド部材3を備えて構成され、バス車両の床下に埋め込まれた状態で装着されている。
【0026】
[2−1.ヒータユニット]
ヒータユニット1は、エンジン冷却水の熱を利用して空気を暖める温水加熱式の暖房装置である。このヒータユニットは、図2〜図4に示すように、熱交換器1a,ブロア1b,取付ブラケット1c,1dを備えて構成されている。
【0027】
熱交換器1aは、薄板状の放熱フィンを多数並列に配置した空冷放熱器として構成されており、その内部にエンジン冷却水を流通させて熱を外部へ放出するように機能する。一方、ブロア1bは、熱交換器1aに隣接して設けられた送風機であり、放熱フィンを介して空気を吸い込むことで、熱交換器1aで昇温された空気を外部へ送出するように機能する。ここで送出された空気が、バス車両の室内の暖房に供されている。
【0028】
取付ブラケット1c,1dは、ヒータユニット1を車体に対して固設するための取付金具である。本実施形態では、図2〜図4に示すように、ヒータユニット1のうちのブロア1bが配された一側部の下端に第一取付ブラケット1cが固設され、熱交換器1aが配された他側部の下端に第二取付ブラケット1dが固設されている。なお、第一取付ブラケット1cには、ボルト締結用のボルト孔1eが穿孔されている。
【0029】
[2−2.ヒータボックス]
ヒータボックス2は、ヒータユニット1を内部に収容するケース部材である。図5に示すように、ヒータボックス2は上面が開放された箱状に形成され、その上面の端部には固定用のフランジ2dが屈曲形成されている。このフランジ2dが前述のサイドフレーム16,サイドレール17及びクロスメンバ9に溶接固定されるようになっている。また、ヒータボックス2の底面2aは略水平に形成されている。ヒータユニット1は底面2a上の所定位置に取り付けられるようになっている。
【0030】
図5に示すように、ヒータボックス2の内部には仕切板2bが設けられ、内部空間が二分割されている。これらの一方はヒータユニット1が取り付けられる空間となり、他方がヒータユニット1から送出された空気が流通するダクト空間となっている。仕切板2bにはブロア1bの吹き出し口に対応した大きさの送風口2cが穿孔されており、この送風口2cを通って温風が室内側へ供給されている。なお、仕切板2bと対面するヒータボックス2の一側面には、前述の室内空気取入口14をなす切欠きが形成されている。
【0031】
また、ヒータボックス2の底面2aには二種類の締結用構造が設けられている。一方はウェルドボルト(スタッドボルト)5であり、他方がボルト孔6及び袋ナット7である。
ウェルドボルト5は、前述の第二取付ブラケット1dを取り付けるためのものであり、底面2aから上方へボルト軸が突出するように複数個溶接固定されている。一方、ボルト孔6及び袋ナット7は第一取付ブラケット1cを取り付けるためのものである。図5に示すように、袋ナット7は、ボルト孔6の下方、すなわち、ヒータボックス2の底面2aの外側(裏面)に溶接固定されている。なお、このボルト孔6の配設位置は、第一取付ブラケット1cに穿孔されたボルト孔1eの配設位置と対応している。
【0032】
これにより、ヒータボックス2の内部において、第一取付ブラケット1cの取付位置にはボルト孔6のみが形成されており、取付時の障害となるものが何もない状態となっている。また、第二取付ブラケット1dの取付位置にはボルト軸が突出しているため、例えば作業者が容易に取付位置を目視確認できる状態となっている。
【0033】
[2−3.バンド部材]
バンド部材3は、ヒータユニット1の取付ブラケット1dをヒータボックス2の底面2aに固定する固定具である。このバンド部材3は、図6(a)〜(c),図7に示すように、支持部3a,挟持部3b及び固定部3cを備えて構成されている。
【0034】
支持部3aは、底面2aに対しヒンジを介して接離方向へ回動可能に枢結支持された部位であり、本実施形態では平蝶番が用いられている。また、この支持部3aの一片には、前述のウェルドボルト5を挿通する大きさの固定孔3eが穿孔されている。すなわち、固定孔3eにウェルドボルト5を挿通した状態で支持部3aの上からナット等を締結することによって、バンド部材3が回動可能な状態で底面2aに取り付けられるようになっている。
【0035】
支持部3aの他片(固定孔3eが形成されていない一片)には、プレート状の部材が溶接固定されている。本実施形態では、このプレート状の部材が挟持部3b及び固定部3cを構成している。なお、このプレート状の部材の中途には、先端側の面を板厚方向へ平行移動させるように屈曲形成された屈曲部3gが設けられている。以下、屈曲部3gよりも先端の部位を固定部3cと称し、屈曲部3gよりも基端側を挟持部3bと称す。挟持部3b及び固定部3cの底面は、互いに平行な平面となっている。
【0036】
挟持部3bは、ヒータユニット1の取付ブラケット1dをヒータボックス2の底面2aとの間に挟み込んで支持固定する部位である。図6(c),図7に示すように、挟持部3bは、支持部3aの底面及び固定部3cの底面よりも上方へ凹んだ形状に形成されている。また、図8に示すように、挟持部3bの底面にはスポンジ状のインシュレータ4が貼り付けられている。インシュレータ4は、ヒータボックス2の底面2aと挟持部3bとの間に挟装される第二取付ブラケット1dの滑り止めとして機能する。
【0037】
一方、固定部3cは、支持部3aの回動(すなわち、バンド部材3全体の回動)を拘束して取付ブラケット1dを固定する部位である。図6(b),図7に示すように、固定部3cには前述のウェルドボルト5を挿通する大きさの長孔3dが形成されている。また、この固定部3cは、底面が支持部3aの底面と同一平面上に位置するように形成されている。
【0038】
本実施形態では、屈曲部3gにおける板厚方向への屈曲長さdが、支持部3aの他片の板厚と同一寸法に設定されている。なお、支持部3aの他片の先端から屈曲部3gまでの距離は、第二取付ブラケット1dの幅よりも僅かに大きめに形成されている。
なお、図7に示すように、挟持部3b及び固定部3cの側辺には、プレート状の部材の延在方向に沿ってフランジ部3fが立設形成されており、バンド部材3全体の剛性が高められている。
【0039】
[3.周辺構成]
図1のA部の縦断面図を図3に示す。ヒータボックス1の取付位置の直上部には、回転式の座席8を支持するための固定用骨格8bが配設されている。この固定用骨格8bは、シート8cの下部に設置される回転シート脚8aを締結固定するための部材である。そのため、ヒータボックス1の取付用の開口部13は、座席8の前方側へ偏って設定されている。すなわちA部においては、図2に示すように、上面視において開口部13からオフセットした取付位置にヒータユニット2が取り付けられるように、その取付位置が設定されている。なお、図3中には、クロスメンバ9の上面にフロアボード11及びフロアトリム12が貼り付けられた状態が示されている。
【0040】
また、図2に示すように、ヒータユニット1はブロア1bの吹き出し口がバス車両の側面側(外側)に配向されるように配置されている。すなわち、ヒータユニット1がヒータボックス2内部の取付位置に収容された状態において、第一取付ブラケット1cが開口部13の手前側に位置し、第二取付ブラケット1dが奥側に位置するように、その取付位置が設定されている。したがって、本実施形態のバンド部材3は、開口部13に対して奥側(図3中の右側)に位置する第二取付ブラケット1dを固定するようになっている。
【0041】
[4.作用]
本発明に係る車両用暖房装置10は上述のように構成されて、以下のように組み付けられる。
まず、ヒータボックス2単体が組み立てられ、底面2aの予め設定された所定位置にウェルドボルト5及び袋ナット7が取り付けられる。ウェルドボルト5周りや袋ナット7と底面2aとの接触部分,ヒータボックス2の入隅接合部等、ヒータボックス2の外側の防水シールはこの段階で処理される。その後、ヒータボックス2のフランジ2dがサイドフレーム16,サイドレール17及びクロスメンバ9に溶接固定される。図1のA部においては、ヒータボックス1の取付位置の直上部に固定用骨格8bが配設されるため、ヒータボックス1の取付位置と開口部13とがオフセットした状態となる。
【0042】
次に、ヒータボックス2の底面2aに対し、バンド部材3の支持部3aが固定される。バンド部材3の取付位置はウェルドボルト5の突出位置によって容易に確認することができる。また、この時点ではまだヒータボックス2の内部に何も配置されていないため、図1のA部のように取付位置が開口部13よりも奥側であっても、工具を用いてバンド部材3を締結固定することができる。バンド部材3の固定部3cはウェルドボルト5に挿通した状態で未固定の状態にしておく。これにより挟持部3bはヒータボックス2の底面に対して接離方向へ回動自在の状態となる。
【0043】
続いて、ヒータユニット1のヒータボックス2への収容作業が実施される。まず開口部13が開放され、図3中に点線で示すようにヒータユニット1を傾斜させながらヒータボックス2の内部へと移動させる。ヒータユニット1の取付位置は開口部13からずれた位置となっているため、ヒータユニット1を図3中のC方向へ僅かに回転させながら奥側へと挿入する。このとき、ヒータユニット1の取付位置は、ボルト孔6の穿孔位置とバンド部材3とによって確認される。また、ウェルドボルト5が突出しているのは開口部13に対して奥側の取付箇所となっているため、ヒータボックス2内部でのヒータユニット1の平行移動(水平移動)の障害にはならない。
【0044】
さらに、図8中に破線で示すように、バンド部材3の固定部3c側を僅かに持ち上げ、挟持部3bの下にヒータユニット1の第二取付ブラケット1dを差し込む。その後、ボルト孔6の配設位置と第一取付ブラケット1cのボルト孔1eとを一致させながら、バンド部材3の固定部3c側を図8中のB方向へ回動させて第二取付ブラケット1dを挟み込み、固定部3cをボルトで締結固定する。
【0045】
このとき、挟持部3bの下面に貼付されたインシュレータ4は、図8中に実線で示すように、挟持部3bと第二取付ブラケット1dとの間で圧縮される。一方、第二取付ブラケット1dは、インシュレータ4によって底面2aに強く押し付けられ、その位置が固定される。また、ボルト孔1eを介してボルト孔6及び袋ナット7へボルトを締結することにより、第一取付ブラケット1cの位置も固定される。
【0046】
以上の手順でヒータユニット1がヒータボックス2に取り付けられると、ヒータボックス2の仕切板2bに穿設された送風口2cへ、ヒータユニット1の吹き出し口が当接するようになっている。ヒータユニット1の吹き出し口を送風口2cへ当接させることにより、ヒータユニット1で昇温された空気とヒータボックス2内におけるヒータユニット1が収納された空間に車室内から吸い込まれた空気とが混合しないようにして、暖房効果を上げている。
【0047】
[5.効果]
本実施形態の車両用暖房装置10によれば、バンド部材3を利用した挟み込み固定方式を採用することにより、簡素な構成でヒータユニット1をヒータボックス2内へ容易に固定することができ、バス車両への搭載性及び組付作業性を向上させることができる。
特に、本実施形態では車体の床面に形成された開口部13がヒータユニット1の取付位置に対してオフセットしているため、ヒータユニット1の影になる奥側の固定が難しいが、本発明によればこのような工具の届きにくい部位の固定作業が極めて容易となる。上述の実施形態の場合には、バンド部材3の固定部3c及び第一取付ブラケット1cの三箇所を締結固定するだけでよい。
【0048】
また、ヒータユニット1の第二取付ブラケット1dはバンド部材3と底面2aとに挟持固定されるようになっているため、穿孔加工が不要であり、生産性を高めることができる。
また、ヒータボックス2の底面2aに配設されたウェルドボルト5によってバンド部材3が固定されるため、バンド部材3の取付作業も容易であり、ヒータユニット1の取付前に予め組み付けておくことも可能である。また、バンド部材3の位置合わせが容易かつ正確となり、延いてはヒータユニット1の取付精度を向上させることができる。
【0049】
また、バンド部材3の形状に関して、挟持部3bが他の部位よりも上方へ凹んだ形状となっているため、支持部3a及び固定部3cの底面と挟持部3bの凹みとの段差によって隙間を形成することができる。つまり、取付ブラケット1dの幅や厚みに応じて隙間の幅及び厚みを設定することで、取付ブラケット1dを正確な位置に固定することができる。また、取付ブラケット1dの隙間への挿入が容易となり、取付作業性をさらに向上させることができる。なお、隙間を大きくすればインシュレータ4の厚みも大きくすることができる。
【0050】
また、ヒータユニット1の取付ブラケット1dがインシュレータ4を介してヒータボックス2の底面2a及び挟持部3bの間に挟持されるため、ヒータユニット1の水平方向の滑動を抑制することができ、ヒータユニット1を堅固に固定しておくことができる。
また、ヒータボックス2に設けられた二種類の締結用構造に関して、図3に示すように、開口部13に近い手前側の取付位置はボルト孔6及び裏面の袋ナット7から構成されているため、第一取付ブラケット1cの周辺には取付時の障害となるものが何もない。つまり、ヒータユニット1をヒータボックス2の底面2aの取付位置へ装着する際や取付位置の微調整時のハンドリングが容易となり、作業性をさらに向上させることができる。
【0051】
このように、本発明によれば、ヒータボックス2内へのヒータユニット1の取付作業をバス車両の室内側から容易に行うことができ、簡素な構成でヒータユニット1のバス車両への搭載性及び組付作業性を向上させることができるほか、製造コストを低減させることができる。
【0052】
[6.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。少なくとも、バンド部材3を用いてヒータボックス2の内部にヒータユニット1が固定される構成を備えたものであればよい。
【0053】
例えば、上述の実施形態では、図3に示すように、ヒータユニット1の取付位置が開口部13からオフセットした位置となっているが、本発明に係るバンド部材3を利用した挟み込み固定方式はこのような狭隘な空間にヒータユニット1を取り付ける場合でなくても適用可能である。
また、上述の実施形態は、ヒータユニット1に設けられた二種類の取付ブラケット1c,1dのうちの一方をバンド部材3で挟み込む構造となっているが、ヒータユニット1側の取付ブラケットが単一である場合や三個以上設けられている場合にも適用可能である。つまり、バンド部材3が単一のブラケットを挟み込んで固定する構成としてもよいし、複数のブラケットのうちの少なくとも一つを挟み込んで固定する構成としてもよい。複数のバンド部材を用いて固定すれば、ヒータユニット1の取付作業がより容易となる。
【0054】
例えば、図9に示すように、上端部に垂直に固設された第三取付ブラケット1eを備えたヒータユニット1を取り付ける場合には、奥側の第二取付ブラケット1d及び第三取付ブラケット1eの二箇所をバンド部材3で固定することが考えられる。この場合、第二取付ブラケット1dはバンド部材3から垂直下方向への押圧力を受け、第三取付ブラケット1eは水平方向への押圧力を受けることになる。つまり、押圧方向が互いに直交する二個のバンド部材3が用いられていることになる。
【0055】
このように、押圧方向が異なる二個のバンド部材3を用いることで、ヒータユニット1の固定された状態における安定性をさらに高めることができる。なお、図9中に示すように、全ての取付ブラケット1c,1d,1fをバンド部材3で固定してもよい。
また、バンド部材3の形状を工夫することでヒータユニット1を堅固に固定することも一案である。例えば、図10に示すように、挟持部3bの中央部に下方へ凸設形成された凸部3hを設けて、バンド部材3による取付ブラケット1dの挟持力を増強させることが考えられる。このように、取付ブラケット1dの水平方向への移動に対する抵抗として凸部3hを作用させることにより、ヒータユニット1の固定された状態における安定性を高めることができる。
【0056】
なお、上述の実施形態におけるインシュレータ4は、このような水平方向への滑り止めとして作用するものであって、挟持部3bの形状や摩擦抵抗等に応じて適宜の素材を用いることができ、あるいは省略することも可能である。同様に、バンド部材3の具体的な形状についても、取付ブラケット1dの挟み込み状態に応じて適宜変更することが可能である。
【0057】
例えば、屈曲部3gにおける板厚方向への屈曲長さdを、第二取付ブラケット1d及びインシュレータ4の厚みの合計と同一値に設定してやれば、バンド部材3の固定部3cを上方へ持ち上げなくとも挟持部3bの下に第二取付ブラケット1dを差し込むことが可能となる。したがって、ヒータユニット1の取付作業をさらに簡素化することができる。
また、上述の実施形態では、バンド部材3及び第二取付ブラケット1dの締結固定にウェルドボルト5を用いているが、固定方法はこれに限定されない。例えば、バンド部材3の支持部3aの一片をヒータボックス2の底面2aに溶接固定してもよいし、固定部3cの固定には貫木状の止め金具を用いる構成としてもよい。なお、第一取付ブラケット1cの締結固定に関しても同様である。
【0058】
また、上述の実施形態では、エンジン冷却水の熱を利用して空気を暖める温水加熱式のヒータユニット1が用いられているが、これの代わりに、例えば特許文献1に記載されたような予熱式のヒータや、バーナー等で空気を直接加熱する温気燃焼式のヒータを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置を搭載したバス車両において、室内床板を取り外した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置の取付状態を示す斜視図(図1のA部拡大斜視図)である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置の構成を示す断面図(図1のA部縦断面図)である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるヒータユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるヒータボックスの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す三面図であり、(a)はその側面図、(b)はその上面図、(c)はその正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置におけるバンド部材の動作を説明するための断面図である。
【図9】本発明の変形例としての車両用暖房装置の構成を示す側断面図である。
【図10】本発明の変形例としての車両用暖房装置におけるバンド部材の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ヒータユニット
1a 熱交換器
1b ブロア
1c 取付ブラケット(第一取付ブラケット)
1d 取付ブラケット(第二取付ブラケット)
2 ヒータボックス
2a 底面
2b 仕切板
2c 送風口
2d フランジ
3 バンド部材
3a 支持部
3b 挟持部
3c 固定部
3d 長孔
3e 固定孔
3f フランジ部
4 インシュレータ
5 ウェルドボルト(スタッドボルト)
6 ボルト孔
7 袋ナット
8 座席
8a 回転シート脚
8b 固定用骨格
8c シート
9 クロスメンバ
10 車両用暖房装置
11 フロアボード
12 フロアトリム
13 開口部
14 室内空気取入口
15 敷設通路
16 サイドフレーム
17 サイドレール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器,上記熱交換器によって昇温された空気を送出するブロア,及び固定用の取付ブラケットを具備するヒータユニットと、
車体に固設され、上記ヒータユニットを内部に収納するヒータボックスと、
上記ヒータユニットの上記取付ブラケットを上記ヒータボックスの底面に固定するバンド部材とを備え、
上記バンド部材が、
上記底面に対しヒンジを介して接離方向へ回動可能に枢結支持された支持部と、
上記取付ブラケットを上記底面との間に挟持する挟持部と、
上記支持部の回動を拘束して上記取付ブラケットを固定する固定部とを具備した
ことを特徴とする、車両用暖房装置。
【請求項2】
上記ヒータユニットが、上記取付ブラケットとして、上面視において上記ヒータユニットの一側部に固設された第一取付ブラケットと他側部に固設された第二取付ブラケットとを具備し、
上記ヒータボックスが、上記車体の床面に形成された開口部の下部に固設され、かつ、上面視において上記開口部からオフセットした取付位置に上記ヒータユニットを収容するように設けられるとともに、
上記ヒータユニットが上記取付位置に収容された状態において、上記バンド部材が、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットのうち少なくとも上記開口部に対して奥側に位置する一方を固定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用暖房装置。
【請求項3】
上記挟持部が、上記支持部の底面及び上記固定部の底面よりも上方へ凹設形成されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両用暖房装置。
【請求項4】
上記バンド部材を締結固定すべく、上記ヒータボックスの底面から上方へ突出するように配設されたスタッドボルトをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項5】
上記バンド部材が、上記挟持部の底面に貼付された滑り止め用のインシュレータをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項6】
上記ヒータボックスが、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットのうち上記開口部に近い一方を締結固定すべく、上記底面に穿孔されたボルト孔と、上記ボルト孔の下方に固設された袋ナットとを有する
ことを特徴とする、請求項2記載の車両用暖房装置。
【請求項7】
上記バンド部材が、二組設けられるとともに、上記ヒータユニットが上記取付位置に収容された状態において、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットの両方を固定する
ことを特徴とする、請求項2記載の車両用暖房装置。
【請求項8】
上記挟持部が、上記の凹設形成された面内において下方へ凸設形成された凸部を有する
ことを特徴とする、請求項3記載の車両用暖房装置。
【請求項9】
上記ヒータユニットが、上記取付ブラケットとして、側面視において上記ヒータユニットの上端部に垂直に固設された第三取付ブラケットを具備するとともに、
上記第三取付ブラケットを上記ヒータボックスの側面又は天井面に固定する第二バンド部材をさらに備えた
ことを特徴とする、請求項2記載の車両用暖房装置。
【請求項1】
熱交換器,上記熱交換器によって昇温された空気を送出するブロア,及び固定用の取付ブラケットを具備するヒータユニットと、
車体に固設され、上記ヒータユニットを内部に収納するヒータボックスと、
上記ヒータユニットの上記取付ブラケットを上記ヒータボックスの底面に固定するバンド部材とを備え、
上記バンド部材が、
上記底面に対しヒンジを介して接離方向へ回動可能に枢結支持された支持部と、
上記取付ブラケットを上記底面との間に挟持する挟持部と、
上記支持部の回動を拘束して上記取付ブラケットを固定する固定部とを具備した
ことを特徴とする、車両用暖房装置。
【請求項2】
上記ヒータユニットが、上記取付ブラケットとして、上面視において上記ヒータユニットの一側部に固設された第一取付ブラケットと他側部に固設された第二取付ブラケットとを具備し、
上記ヒータボックスが、上記車体の床面に形成された開口部の下部に固設され、かつ、上面視において上記開口部からオフセットした取付位置に上記ヒータユニットを収容するように設けられるとともに、
上記ヒータユニットが上記取付位置に収容された状態において、上記バンド部材が、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットのうち少なくとも上記開口部に対して奥側に位置する一方を固定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用暖房装置。
【請求項3】
上記挟持部が、上記支持部の底面及び上記固定部の底面よりも上方へ凹設形成されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両用暖房装置。
【請求項4】
上記バンド部材を締結固定すべく、上記ヒータボックスの底面から上方へ突出するように配設されたスタッドボルトをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項5】
上記バンド部材が、上記挟持部の底面に貼付された滑り止め用のインシュレータをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項6】
上記ヒータボックスが、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットのうち上記開口部に近い一方を締結固定すべく、上記底面に穿孔されたボルト孔と、上記ボルト孔の下方に固設された袋ナットとを有する
ことを特徴とする、請求項2記載の車両用暖房装置。
【請求項7】
上記バンド部材が、二組設けられるとともに、上記ヒータユニットが上記取付位置に収容された状態において、上記第一取付ブラケット及び上記第二取付ブラケットの両方を固定する
ことを特徴とする、請求項2記載の車両用暖房装置。
【請求項8】
上記挟持部が、上記の凹設形成された面内において下方へ凸設形成された凸部を有する
ことを特徴とする、請求項3記載の車両用暖房装置。
【請求項9】
上記ヒータユニットが、上記取付ブラケットとして、側面視において上記ヒータユニットの上端部に垂直に固設された第三取付ブラケットを具備するとともに、
上記第三取付ブラケットを上記ヒータボックスの側面又は天井面に固定する第二バンド部材をさらに備えた
ことを特徴とする、請求項2記載の車両用暖房装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−179073(P2009−179073A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17111(P2008−17111)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】
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