説明

車両用灯具におけるコード押さえ機構

【課題】従来の車両内の配線の固定機構としては、別体に用意したコードクランプなどで電球ソケットの近傍に電線を固定するものであったので、部品点数の増加と組立工数の増加とで組立作業が煩雑化する問題点を生じていた。
【解決手段】本発明により、電球ソケット1を挿着するソケットホルダ11の近傍に、電線3数に相応する間隔を有する一対のリブ13を設けると共に、電球ソケットとソケットホルダ間に挟着されるガスケット4を略矩形状にリブが設けられた方向に延接してコード押さえ部4aとし、このコード押さえ部には一対のリブに挿入するためのリブ挿入口と、リブ挿入口4bのそれぞれの外側に設けられたスリット4cとを備える車両用灯具における電線押さえ機構とすることで課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に取付けられるライトに対して給電を行う際に、車体に設けられたガイドリブなどの内側に配線(電線)を引き回す際、走行による振動などにより配線が移動したり、バラけを生じたりするのを防止するための構成に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種、車体に対して電線80を固定するときの電線ホルダ90の構成の例を示すものが、図5であり、例えば、3本の電線を車体に固定する場合であれば、樹脂など軟質で絶縁性を有する部材で、3箇所に電線挟持部91aを有し、各電線挟持部91a間には嵌入部91bが設けられたクランプ本体91と、前記嵌入部91bに嵌着する係止爪92aが設けられたストッパ92とで構成されている。
【0003】
このように、構成された電線ホルダ90を使用する際は、先ず、3箇所の電線挟持部91aのそれぞれに電線80を挿入する。このときに、前記電線挟持部91aはクランプ本体91が形成された部材の弾性により適宜な強度で電線80を挟み、仮保持を行うようにされている。
【0004】
この状態で、嵌入部91bに、前記ストッパ92の係止爪92aを嵌入部91bに挿入すると、嵌入部91bの内壁91cは拡げられ、一層に強く前記電線80を挟持するものとなるので、前記電線80は確実に固定が行われるものとなる。なお、前記電線ホルダ90には車体に取付けるための適宜な構成を有していても良いものである。
【特許文献1】特開平10−248144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来の電線ホルダ90においては、第一には、例えば、電球の交換時などにソケットホルダからソケットを抜く際に、この電線ホルダ90は比較的に灯具の近傍に設けられることが多いので、電線の長さに充分な余裕がなく、結果的には、電線ホルダ90の取り外しから行わなければならなくなるなど、作業性が低下する問題点を生じている。
【0006】
また、電線ホルダ90に電線80を取付ける際にも、例えば、ソケットなどから等距離の所で電線ホルダ90に電線80を挟み込まないと、ソケットホルダにソケットを差し込んだ際にそれぞれの電線のたるみ具合が異なるものとなり、見栄えが悪くなるなどの問題点も併せて生じるものとなる。
【0007】
また、電線ホルダ90を採用した場合には、上記したようにクランプ本体91、ストッパ92などの部品点数の増加、それに伴う加工工数の増加の問題も生じ、コストアップの要因となる問題点も生じている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題を解決するための具体的手段として、電球ソケットを挿着するソケットホルダの近傍に、前記ソケットに付属する電線数に相応する間隔を有して少なくとも一対のリブを設けると共に、車体とランプハウジングに挟着されるベースガスケットを前記リブを挿入してコード押さえ部とし、このコード押さえ部には前記一対のリブに挿入するためのリブ挿入口と、前記リブ挿入口のそれぞれの外側に設けられた側面スリットと、前記ソケットホルダ側で前記側面スリット間を接続するように設けられた接続スリットを備えることを特徴とする車両用灯具における電線押さえ機構を提供することで課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ソケットホルダの近傍に電線数に対応する間隔とした少なくとも一対のリブを設けておくと共に、車体とランプハウジングに挟着させるベースガスケットに前記リブを挿入してコード押さえ部とし、このコード押さえ部には前記一対のリブを挿入するためのリブ挿入口と、前記リブ挿入口のそれぞれの外側に設けられた側面スリットと、前記ソケットホルダ側で前記側面スリット間を接続するように設けられた接続スリットを備えることで、または、前記もソケットホルダとソケット間に挟着されるガスケットを、前記リブが設けられた位置まで延調形成し、この延長形成した部分を前記一対のリブに挿入して電線を押さえる構成としたことで、部品点数が減少すると共に、組立時の加工工数も低減し、更には、組立時にも高い精度を不要としてコストダウンを可能とするという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に示すものは、例えばヘッドライトである車両用灯具10の、ソケットホルダ11の部分を示すものであり、このソケットホルダ11には、ソケット1を付属させる電球2が挿着される。また、ここでは、前記ソケット1には、例えば、アース用、走行ビーム用、すれ違いビーム用などとした3本の電線3が取付けられているものとする。
【0011】
そして、本発明では、前記ソケットホルダ11から適宜距離、例えば10mm〜20mm離れた位置には、前記車両用灯具10のハウジング12の外側の一部を断面が角柱状、あるいは、断面が長円状などとして、適宜高さとして突出させた一対のリブ13a、13bが、前記ソケットホルダ11の径方向への中心線Xと厚み方向が平行となるように設けられている。
【0012】
なお、このときに、前記1対のリブ13a、13bとの間隔は、上記に説明したソケット1に付属している3本の電線3を並べたときに、適宜の余裕を持って通る寸法とされている。ここで、前記電線3は3本の例で説明したが、本発明は、これを限定するものではなく、1本以上の任意の数で良いものである。但し、前記1対のリブ13a、13bとの間隔は、このリブ13a、13b間を通過する電線3の本数に対応させられている。
【0013】
図2に示すものは、本発明に係るベースガスケット4を示すものであり、このベースガスケット4は車両用灯具10の背面を覆い、例えば、背面からの浸水をなどを防止するために設けられるものでありゴムなどエラストマーを用いて形成されている。そして、本発明では、前記ソケットホルダ11に対応する開口部4dが設けられると共に、前記一対のリブ13a、13bに嵌合させるための一対のリブ挿入口4bが対応する位置として設けられている。
【0014】
また、前記リブ挿入口4bのそれぞれの外側には、このリブ挿入口4bから適宜の間隔を置いて、前記ソケットホルダ11とリブ13a、13bとが設けられている方向と略平行とする側面スリット4caが設けられており、また、この側面スリット4ca同士は、前記ソケットホルダ11側で接続スリット4cbにより接続されている。なお、第一実施例では、主としてこの部分がコード押さえ部4aとして機能する。
【0015】
図3は、前記ソケットホルダ11に電球2および電線が接続されたソケット1を取付け、あるいは、取り外しを行うときの状態を示すものであり、例えば、ソケットホルダ11からソケット1を取り外すときには、電球2が前記ソケットホルダ11から完全に外部に露出するまでの距離を引き出さなければ、ソケット1と電球2の着脱は不可能である。
【0016】
本発明の構成では、このときに、前記ソケット1を引き抜くときの力が電線3を介して前記ベースガスケット4の接続スリット4cbの部分に加わり、この力により、前記接続スリット4cbと繋がっている側面スリット4caの部分を捲り上げ、前記リブ13a、13bとリブ挿入口4bと結合が解除される。
【0017】
よって、電線3は、前記リブ13a、13bとリブ挿入口4bとに挟まれ固定された状態から解放され、自由にソケット1の動きに連れて移動するものとなるので、ソケットは所望の位置まで引き出せるものとなり、電球の交換などが容易に行えるものとなる。
【0018】
また、ソケット1をソケットホルダ11に挿入するときには、上記の電線3に充分の余裕がある状態としておき、所定の位置まで挿入を行い、そして、所定の位置に達した後に電線3の弛みを電線3をベースガスケット4内に送り込むなどし、しかる後に、前記リブ13a、13bにリブ挿入口4bを嵌着させれば、電線3はベースガスケット4とハウジング12とに挟まれ固定が行われる。
【0019】
図4に示すものは、本発明に係るベースガスケット4の第二実施例を示すものであり、このベースガスケット4は基本的には前記ソケットホルダ11とソケット1との間に狭着されて、例えば、ハウジング12内への浸水を防止するために設けられるいわゆるパッキンなどと称されているものを利用したものであり、通常はリング状などとして形成されるものであるが、本発明では外径D、あるいは、それ以下の適宜の幅で一方向に延設されて、略矩形状のコード押さえ部4aが形成されている。
【0020】
前記ガスケット4は前記コード押さえ部4aを含み、ゴムなどエラストマーなど適宜の弾性を有する部材を用いて形成されており、そして、前記ガスケット4の使用に当たっては、前記コード押さえ部4aを、前記リブ13a、13bが設けられている方向に向けて取付けるものであり、このガスケット4の取付に先立っては、前記リブ13a、13b間には前記した3本の電線3が並べられているものとされている。
【0021】
また、前記コード押さえ部4aには、前記リブ13a、13bが設けられている位置に対応して1対のリブ挿入口4bが設けられており、ソケットホルダ11とソケット1との取付を行う時点で、前記リブ挿入口4bを前記リブ13a、13bに挿入することで、前記電線3はハウジング12とガスケット4のコード押さえ部4aとに挟持され、従来例のコードクランプなどと同様な作用、効果が得られるものとなる。
【0022】
なお、この第二実施例においては前記ベースガスケット4自体が小型であり、前記リブ13a、13bから引き抜いた後にもソケット1またはソケットホルダ11などにより保持可能であるので、前記ベースガスケット4の一部のみ、すなわち、コード押さえ部4aの部分を可動させるためのスリット4c(4ca、4cb)を設ける必要はないものとなる。
【0023】
以上のように、本発明により第二実施例として、ほぼコード押さえ部4aのみとして形成されたガスケット4を用いて、ソケットホルダ11にソケット1を取付けるときには、図5に示すように、前記ガスケット4の内径に電線3を通した状態でソケット1をソケットホルダ11に挿入する。このときに、前記ガスケット4はエラストマーで適宜な柔軟性と弾性を有する部材で形成されているので、電線3が通過する部分が変形し、ホルダ11へのソケット1の取付ができるものとなる。
【0024】
このとき、同時に電線3を前記リブ13a、13bの間に配置した状態としておき、そして、前記リブ13a、13bと前記リブ挿入口4bとの挿入を行えば、電線3は前記コード押さえ部4aにより、例えば、ハウジング12の表面とで挟持されるものとなり、エラストマーの弾性による圧接により固定が行われるものとなる。
【0025】
ついで、本発明における前記ソケットホルダ11とソケット1とを取り外す時の作用について説明を行えば、前記ソケットホルダ11から電球2の交換のためにソケット1を引き抜くときには、ソケット1は、このソケット1に取付けられた電球2の全長が外部に現れるまで引き出す必要を生じる。
【0026】
ここで、本発明においては、取付時に前記ソケット1を引き抜くのに充分な余裕の長さを電線3に持たせていない状態であっても、前記ソケット1を引き抜くときの力が電線3にも伝わるものとなり、この力により図6に示すように、前記リブ13a、13bに挿入されているリブ挿入口4bが、前記リブ13a、13bの先端側に移動させる。
【0027】
よって、前記ハウジング12と前記ガスケット4のコード押さえ部4aとで挟持されていた電線3は移動が自由な状態となり、引き抜くときの力によりソケット1方向に電線3は手繰り寄せられるので、ソケットホルダ11とソケット1とを引き抜くときにも、電線3を挟持しているコード押さえ部4aによる実質的な支障を生じることはない。
【0028】
また、電球2をソケット1に取付けた後には、上記したソケット1の抜き取り時の手繰り寄せにより、前記電線3には充分な長さの余裕を生じているので、そのまま、ソケットホルダ11に取付けることが可能である。そして、取付けが終了した時点で、前記ガスケット4のコード押さえ部4aの外側から電線3を引っ張り、適宜な長さに調整した時点で、前記コード押さえ部4aの部分を押圧すれば、電線3は所望の位置で固定されるものとなり、電球2の交換前の状態と同様に固定が行われるものとなる。
【0029】
すなわち、本発明によれば、例えば、車両用灯具10のハウジング12などソケットホルダ11が設けられている近傍にリブ13a、13bを設けると共に、ガスケット4にリブ挿入口4b、スリット4cを有するコード押さえ部4aを設けるのみで、従来は電線3が予定された通路からずれるのを防止するために、別部品であるクランプなどが使用され、部品点数が増加すると共に、例えば、電球2の交換時に、配線の長さの余裕のないときにはクランプも分解し、交換後には再組立が必要となるなど工数が増え、作業が煩雑化する点も解消できるものとなる。
【0030】
なお、本発明の実際の実施に当たっては、前記リブ13a、13bは、前記ハウジング12を形成するための金型に彫り込んでおき、ハウジング12の成型時に同時に形成されるものとしておけば良く、さらに、ガスケット4においても打ち抜き型、あるいは、成形型でコード押さ部4a、リブ挿入口4b、スリット4cも一体として形成可能な形状であるので、電線を保持するために部品点数が増加することは一切生じない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るコード押さえ機構における車両用灯具側に設けられるソケットホルダとリブとの位置関係を示す説明図である。
【図2】本発明に係るコード押さえ機構における第一実施例のガスケットの形状を示す平面図である。
【図3】同じく第一実施例におけるガスケットを使用したソケットホルダとソケットとを取り外すときの状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係るコード押さえ機構における第二実施例のガスケットの形状を示す平面図である。
【図5】第二実施例におけるソケットホルダととソケットとを取付けたときの状態を示す説明図である。
【図6】第二実施例におけるソケットホルダとソケットとを取り外すときの状態を示す説明図である。
【図7】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1…ソケット
2…電球
3…電線
4…ベースガスケット
4a…コード押さえ部
4b…リブ挿入口
4c…スリット
4ca…側面スリット
4cb…接続スリット
4d…開口部
10…車両用灯具
11…ソケットホルダ
12…ハウジング
13a、13b…リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電球ソケットを挿着するソケットホルダの近傍に、前記ソケットに付属する電線数に相応する間隔を有して少なくとも一対のリブを設けると共に、車体とランプハウジングに挟着されるベースガスケットを前記リブを挿入してコード押さえ部とし、このコード押さえ部には前記一対のリブに挿入するためのリブ挿入口と、前記リブ挿入口のそれぞれの外側に設けられた側面スリットと、前記ソケットホルダ側で前記側面スリット間を接続するように設けられた接続スリットを備えることを特徴とする車両用灯具における電線押さえ機構。
【請求項2】
前記コード押さえ部が前記ベースガスケットと分離可能とされ、且つ前記電球ソケットと前駆ソケットホルダに狭着される構成とされていることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具における電球押さえ機構。
【請求項3】
前記コード押さえ付きベースガスケットは適宜の弾力性と防水性とを有する絶縁性部材で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用灯具における電線押さえ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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