説明

車両用灯具のプリント基板への端子固定構造

【課題】端子をプリント基板に作業性良く簡単に取り付けることができるとともに、端子とプリント基板の配設パターンとの確実な導通を実現することができる車両用灯具のプリント基板への端子固定構造を提供すること。
【解決手段】プリント基板6への端子1の固定構造として、端子1の接続子1Cの固定端にコの字状部1Aとこれに連なる折り返し部1Bを形成し、該コの字状部1Aと折り返し部1Bの各一方の面に接点3,3をそれぞれ突設するとともに、コの字状部1Aの他方の面に孔2を形成し、端子1のコの字状部1Aと折り返し部1Bをプリント基板6の係合孔(係合部)6aに係合させた後にコの字状部1Aの孔2に充填されるハンダ10によって端子1をプリント基板6に固定するとともに、該端子1のコの字状部1Aと折り返し部1Bにそれぞれ形成された接点3,4をプリント基板6の配線パターン8,9にそれぞれ接触させる構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具のハウジング内に収容されたプリント基板への端子の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線パターンがプリントされたプリント基板をハウジング内に収容して成る車両用灯具の前記プリント基板には、これにプリントされた配線パターンに車体側から電源を供給するための端子が固定され、この端子に対して車体側から延びるハーネスの端部に取り付けられたカプラーが挿脱される。
【0003】
ここで、プリント基板への端子の固定構造の従来例を図9及び図10に示す(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
即ち、図9はプリント基板への端子の固定構造の従来例を示す断面図、図10は図9のD−D線断面図であり、図示の固定構造においては、車両用灯具のハウジング105の内部に収容されたプリント基板106に金属製の端子101の固定端がハンダ111によって固定されている。具体的には、端子101の固定端に形成された挿入部101aの基部には位置決め部101bが形成され、同端子101の固定端から直線状に延びる接続子101cの中間部には切り起こしによってフック101dが形成されており、プリント基板106に形成された挿入孔106aに端子101の挿入部101aを差し込み、その差し込み部をハンダ付けによってプリント基板106に固定する構造が採用されている。
【0005】
そして、上述のようなプリント基板106に固定された端子101をハウジング105に形成された挿通孔105aに図9及び図10の上方から差し込めば、これに形成されたフック101dが撓んで折り畳まれた状態でハウジング105の挿通孔105aを通過し、このフック101dがハウジング105の挿通孔105aを通過すると図10に示すように該フック101dが弾性によって元の状態に復元してハウジング105の下面に係止されるとともに、端子101の位置決め部101bがハウジング105の上面に係合する。
【0006】
而して、端子101のハウジング105から突出する接続子101cには、車体側から延びる不図示のハーネスの端部に取り付けられたカプラー110が挿脱されるが、該カプラー110を端子101に差し込むときに端子101に掛かる力はフック101dを介してハウジング105によって受けられ、カプラー110を端子101から引き抜くときに端子101に掛かる力は位置決め部101bを介してハウジング105によって受けられるため、端子101のプリント基板106への固定部(ハンダ付け部)に過大な力が作用しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−197383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図9及び図10に示した従来の取付構造では、プリント基板106に取り付けられた端子101をハウジング105に組み付ける際にフック101dを撓ませながらハウジング105の挿通孔105aに差し込む必要があるために組立性が悪いという問題がある。そして、端子101に形成されたフック101dと位置決め部101bには高い寸法精度が要求され、これらの寸法精度が悪い場合には端子101がハウジング105に対してがたつき、該端子101をプリント基板106に固定するハンダ111に応力が掛かり、ハンダ111にクラックが発生してしまう。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、端子をプリント基板に作業性良く簡単に取り付けることができるとともに、端子とプリント基板の配設パターンとの確実な導通を実現することができる車両用灯具のプリント基板への端子固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、配線パターンがプリントされたプリント基板をハウジング内に収容して成る車両用灯具の前記プリント基板への端子の固定構造であって、
前記端子の接続子の固定端にコの字状部とこれに連なる折り返し部を形成し、該コの字状部と折り返し部の各一方の面に接点をそれぞれ突設するとともに、コの字状部の他方の面に孔を形成し、
前記端子のコの字状部と折り返し部を前記プリント基板の係合部に係合させた後にコの字状部の前記孔に充填されるハンダによって端子をプリント基板に固定するとともに、該端子のコの字状部と折り返し部にそれぞれ形成された接点を前記プリント基板の配線パターンにそれぞれ接触させることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記プリント基板の係合部として係合孔を形成し、該係合孔に前記端子の折り返し部を差し込んだ状態で端子全体を回転させることによって該端子を前記プリント基板に係合させて固定することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記プリント基板の係合部として係合溝を形成し、該係合溝に前記端子のコの字状部を嵌め込むことによって該端子を前記プリント基板に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、端子のコの字状部と折り返し部をプリント基板の係合部に係合させた後、コの字状部の孔に充填されるハンダによって端子をプリント基板に接着(ハンダ付け)することによって端子をプリント基板に簡単且つ確実に固定することができるため、組付時間の短縮と低コスト化を図ることができる。
【0014】
又、端子のコの字状部の一方の面に形成された孔に充填されるハンダを介して端子とプリント基板の配線パターンとの電気的な導通がなされるとともに、コの字状部と折り返し部の各他方の面にそれぞれ突設した端子をプリント基板にプリントされた配線パターンにそれぞれ接触させるようにしたため、端子に対してカプラーを挿脱する際に該端子に互いに異なる方向の力が作用しても、端子とプリント基板の配設パターンとを確実に導通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る固定構造によってプリント基板に固定される端子の側面図である。
【図2】本発明に係る固定構造によってプリント基板に固定される端子の正面図(図1の矢視A方向の図)である。
【図3】本発明の実施の形態1における端子の固定要領を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る端子固定構造を示す平面図である。
【図5】図4のB−B線断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における端子の固定要領を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る端子固定構造を示す平面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】プリント基板への端子の固定構造の従来例を示す断面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る固定構造によってプリント基板に固定される端子の側面図、図2は同端子の正面図(図1の矢視A方向の図)であり、図示の端子1は真鍮や黄銅等の金属板を折曲成形することによって構成されており、その固定端にはコの字状部1Aとこれに連なる折り返し部1Bが形成されている。そして、端子1のコの字状部1Aからは接続子1Cが図1及び図2の下方へと直線状に延びており、この接続子1Cは、金属板の幅方向両端を内側へ折り返して重ねることによってその剛性が高められている。
【0018】
又、端子1のコの字状部1Aの相対向する上下の面の水平方向(何れも図1において)に互いにずれた位置には孔2と接点3がそれぞれ形成され、折り返し部1Bの上面(図1において)には接点4が突設されている。
【0019】
次に、以上のように構成された端子1の固定構造の実施の形態について説明する。
【0020】
<実施の形態1>
図3は本発明の実施の形態1における端子の固定要領を示す斜視図、図4は本発明の実施の形態1に係る端子固定構造を示す平面図、図5は図4のB−B線断面図であり、図5に示すように、車両用灯具の樹脂製のハウジング5の内部にはプリント基板6が収容されており、ハウジング5には端子1の接続子1Cが通過するための挿通孔5aが形成されている。又、プリント基板6には矩形の係合孔6aが形成されており、プリント基板6の上下面には配線パターン7,8,9がプリントされている。
【0021】
而して、端子1は、そのコの字状部1Aと折り返し部1Bをプリント基板6の係合孔6aに係合させるとともに、コの字状部1Aの上面に形成された孔2に充填されるハンダ10による接着(ハンダ付け)によってプリント基板6に固定される。即ち、端子1の固定端に形成された折り返し部1Bをプリント基板6の係合孔6aに上方から差し込んで係合させ、その係合部を支点として端子1の全体を図3の矢印方向に回転させれば、図4及び図5に示すように、端子1のコの字状部1Aもプリント基板6に係合され、端子1は、コの字状部1Aと折り返し部1Bによってプリント基板6の上下面を挟持するようにしてプリント基板6に保持される。そして、このようにして端子1がプリント基板6に保持されると、図5に示すように、該端子1のコの字状部1Aに形成された孔2に充填されるハンダ10によって端子1と配線パターン7とハンダ付けすれば、端子1がプリント基板6に簡単且つ確実に固定される。
【0022】
上述のように端子1がプリント基板6に取り付けられると、該端子1とプリント基板6の配線パターン7との電気的な導通がハンダ10によって確実になされるとともに、端子1のコの字状部1Aと折り返し部1Bにそれぞれ突設された2つの接点3,4がプリント基板6の下面にプリントされた配線パターン8,9に接触するため、端子1と配線パターン8,9との導通が確保される。
【0023】
上述のように端子1がプリント基板6に固定されると、図5に示すように、端子1の接続子1Cがハウジング5の挿通孔5aに通されることによって該接続子1Cがハウジング5の外(下方)へ突出し、その状態でプリント基板6がハウジング5に固定される。そして、ハウジング5の外部に突出する端子1の接続子1Cには車体側から延びる不図示のハーネスの端部に取り付けられたカプラー11が挿脱される。
【0024】
以上のように本実施の形態に係る端子1のプリント基板6への固定構造においては、端子1の固定端に形成された折り返し部1Bをプリント基板6の係合孔6aに上方から差し込んで係合させた後、コの字状部1Aに形成された孔2に充填されるハンダ10によって端子1をプリント基板6に接着(ハンダ付け)することによって、端子1を簡単且つ確実にプリント基板6に固定することができ、組付時間の短縮と低コスト化を図ることができる。
【0025】
又、端子1のコの字状部1Aの上面に形成された孔2に充填されるハンダ10を介して端子1とプリント基板6の配線パターン7との電気的な導通がなされるとともに、コの字状部1Aと折り返し部1Bの各下面にそれぞれ突設した接点3,4をプリント基板6にプリントされた配線パターン8,9にそれぞれ接触させることによって接点3,4と配線パターン8,9との電気的な導通がなされるため、端子1に対してカプラー11を挿脱する際に該端子1に互いに異なる上下方向の力が作用しても、端子1とプリント基板6の配設パターン7〜9とを確実に導通させることができる。即ち、カプラー11を端子1の接続子1Cに挿着する際には、端子1の接点3,4がプリント基板6の下面にプリントされた配線パターン8,9にそれぞれ押圧されて接触し、カプラー11を端子1の接続子1Cから引き抜く際には端子1の孔2に充填されたハンダ10がプリント基板6の上面にプリントされた配設パターン7に押圧されて接触するため、端子1とプリント基板6との導通が常に確実に確保される。
【0026】
<実施の形態2>
次に、本発明に係る端子固定構造の実施の形態2を図6〜図8に基づいて説明する。
【0027】
図6は本発明の実施の形態2における端子の固定要領を示す斜視図、図7は本発明の実施の形態2に係る端子固定構造を示す平面図、図8は図7のC−C線断面図であり、これらの図においては図1〜図5において示したものと同一要素にと同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0028】
本実施の形態では、図6及び図7に示すように、プリント基板6の端縁に各端子1に対して2つの矩形状の係合溝6bが形成されており、端子1を図6の矢印方向にスライドさせてコの字状部1Aと折り返し部1Bをプリント基板6の各係合溝6bにそれぞれ嵌め込むことによって、図8に示すように、端子1がコの字状部1Aと折り返し部1Bによってプリント基板6の上下面を挟持するようにしてプリント基板6に保持される。そして、端子1のコの字状部1Aに形成された孔2に充填されるハンダ10による接着(ハンダ付け)によって端子1がプリント基板6に簡単且つ確実に固定され、このように端子1がプリント基板6に取り付けられると、図8に示すように、該端子1のコの字状部1Aに突設された接点3と折り返し部1Bに突設された接点4がプリント基板5の下面にプリントされた配線パターン8,9に接触するため、端子1と配線パターン7〜9との電気的な導通が確保される。
【0029】
上述のように端子1がプリント基板6に取り付けられると、図8に示すように、端子1の接続子1Cがハウジング5の挿通孔5aに通されることによって該接続子1Cがハウジング5の外へ突出し、その状態でプリント基板6がハウジング5に固定される。そして、ハウジング5の外部に突出する端子1の接続子1Cには車体側から延びる不図示のハーネスの端部に取り付けられたカプラー11が挿脱される。
【0030】
以上のように本実施の形態に係る端子1のプリント基板へ6の固定構造においては、端子1を図6の矢印方向にスライドさせてコの字状部1Aと折り返し部1Bをプリント基板6の各係合溝6bにそれぞれ嵌め込んだ後、端子1のコの字状部1Aに形成された孔2に充填されるハンダ10によって端子1とプリント基板6とを接着(ハンダ付け)するだけの簡単な作業によって該端子1をプリント基板6に簡単且つ確実に取り付けることができるため、前記実施の形態1と同様に組付時間の短縮と低コスト化を図ることができる。
【0031】
又、端子1のコの字状部1Aの上面に形成された孔2に充填されるハンダ10を介して端子1とプリント基板6の配線パターン7との電気的な導通がなされるとともに、コの字状部1Aと折り返し部1Bの各下面にそれぞれ突設した接点3,4をプリント基板6にプリントされた配線パターン8,9にそれぞれ接触させることによって接点3,4と配線パターン8,9との電気的な導通がなされるため、端子1に対してカプラー11を挿脱する際に該端子1に互いに異なる上下方向の力が作用しても、端子1とプリント基板6の配設パターン7〜9とを確実に導通させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、ヘッドランプ、リヤコンビネーションランプ、ストップランプ等を含む任意の車両用灯具のプリント基板への端子の固定構造に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 端子
1A 端子のコの字状部
1B 端子の折り返し部
1C 端子の接続子
2 端子の孔
3,4 端子の接点
5 ハウジング
5a ハウジングの挿通孔
6 プリント基板
6a プリント基板の係合孔(係合部)
6b プリント基板の係合溝(係合部)
7〜9 プリント基板の配線パターン
10 ハンダ
11 カプラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンがプリントされたプリント基板をハウジング内に収容して成る車両用灯具の前記プリント基板への端子の固定構造であって、
前記端子の接続子の固定端にコの字状部とこれに連なる折り返し部を形成し、該コの字状部と折り返し部の各一方の面に接点をそれぞれ突設するとともに、コの字状部の他方の面に孔を形成し、
前記端子のコの字状部と折り返し部を前記プリント基板の係合部に係合させた後にコの字状部の前記孔に充填されるハンダによって端子をプリント基板に固定するとともに、該端子のコの字状部と折り返し部にそれぞれ形成された接点を前記プリント基板の配線パターンにそれぞれ接触させることを特徴とする車両用灯具のプリント基板への端子固定構造。
【請求項2】
前記プリント基板の係合部として係合孔を形成し、該係合孔に前記端子の折り返し部を差し込んだ状態で端子全体を回転させることによって該端子を前記プリント基板に係合させて固定することを特徴とする請求項1記載の車両用灯具のプリント基板への端子固定構造。
【請求項3】
前記プリント基板の係合部として係合溝を形成し、該係合溝に前記端子のコの字状部を嵌め込むことによって該端子を前記プリント基板に固定することを特徴とする請求項1記載の車両用灯具のプリント基板への端子固定構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−37821(P2013−37821A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171397(P2011−171397)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】