説明

車両用灯具

【課題】アウターレンズでバンパ側から最も負荷のかかる部分を補強でき、クラックの発生を抑制することができるヘッドランプを提供する。
【解決手段】ランプハウジング5とアウターレンズ6とで灯室10を形成するヘッドランプ1において、アウターレンズ6の下縁近傍に、バンパを保持するためのバンパ保持部62が設定され、このバンパ保持部62の後方に位置するランプハウジング5に、バンパ保持部62を下方から支持する支持ロッド60を突設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関し、さらに詳しくは、車アウターレンズにおけるバンパ端縁と重なる部分での破損の発生を抑制できる構造を持つ車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具としては、例えば図4に示すようなヘッドランプ100がある。このヘッドランプ100は、アウターレンズ101の下部(下縁近傍)に形成した凹部102が形成され、この凹部102内にバンパ103の上縁端部104を挿入して、バンパ103とアウターレンズ101との隙間105を小さく設定して意匠的外観を向上したものがある。また、このようなヘッドランプ100において、バンパ103との間に図示しないリテーナを介在させる従来技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来技術では、上記凹部102に係止されるリテーナ(図示省略する)をヘッドランプ100のランプハウジング106側に固定し、凹部102内に実質的に配置されるバンパの上縁端部104をリテーナに嵌合固定することで、ヘッドランプ100とバンパ103の間の隙間方向の動きを規制して建付精度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−162551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示したヘッドランプ100では、アウターレンズ101の凹部102にバンパ103の上縁端部を載せているため、バンパ103に必要以上の外力や荷重が加わると、凹部102の折り返し部107が押し拡げられてクラックが発生し易いという問題点がある。なお、図4に示すように、アウターレンズ101の凹部102内は狭い空間であるため、バンパ保持面102Aと、バンパ103の上縁端部104の下面(当接面)104Aとの間に隙間を確保し難い。したがって、僅かな隙間ではバンパ103に外力が加わった場合に、凹部102のバンパ保持面102Aにバンパ103の上縁端部104の下面104Aが圧接するため、上記問題は解決できない。
【0006】
上記従来技術のようにランプハウジング106に固定されたリテーナをヘッドランプ100とバンパ103との間に介在した場合は、凹部102内の狭い空間に配置される図示しないリテーナと、バンパ103の上縁端部104を固定、操作するための工具を挿入することが困難である。また、上記従来技術では、リテーナの他にバンパブラケットやそれを締結するスクリューなども必要であり、部品点数が多くなるという問題点があった。さらに、ヘッドランプ100のアウターレンズ101へのクラックの発生を防止するために、バンパ103を必要以上に堅牢に固定する対策を施すことは歩行者保護要件によりできないという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、部品点数を増やすことなく、アウターレンズで最も負荷のかかる部分を局所的に補強できてクラックの発生を抑制すると共に、歩行者保護に有利なバンパ取り付け構造の採用が可能な車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、ランプハウジングとアウターレンズとで灯室を形成する車両用灯具であって、アウターレンズの下縁近傍に、バンパを保持するためのバンパ保持部が設けられ、バンパ保持部の後方に位置するランプハウジングに、バンパ保持部を下方から支持可能な支持部材が延設されていることを要旨とする。
【0009】
ここで、バンパ保持部のバンパを受けるバンパ受け面と、支持部材におけるバンパ保持部を受ける支持部材受け面は、ランプ光軸方向と平行をなすように設けられていることが好ましい。
【0010】
また、バンパ保持部は、アウターレンズの下縁近傍が灯室内へ向けて凹むように折り返すように形成された部分であり、バンパ保持部の灯室側の端部は、支持部材の長さ方向の中央よりも支持部材の基部側へ位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アウターレンズで最も負荷のかかる部分を局所的に補強できてクラックの発生を抑制することができる車両用灯具を実現することができる。
【0012】
また、本発明によれば、歩行者保護に有利なバンパ取り付け構造を採用できる車両用灯具を実現することができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、バンパ側の取付部品の点数を増やすことがなく、コストの増加を抑制できると共に、取り付け性の良好な車両用灯具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用灯具としてのヘッドランプが取り付けられた部分を示す車両の要部を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るヘッドランプを示し、図1のA−A断面の要部断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るヘッドランプを示し、図1のA−A断面に相当する部分の要部断面図である。
【図4】従来のヘッドランプ周辺を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施の形態に係る車両用灯具としてのヘッドランプ1について図面を参照して説明する。なお、各実施の形態では車両用灯具としてヘッドランプに本発明を適用して説明するが、本発明に係る車両用灯具としては、フォグランプ、フロントコンビネーションランプなども含む。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係るヘッドランプ1を車体に取り付けた外観を示す要部斜視図、図2は図1のA−A断面図である。
【0017】
ヘッドランプ1は車両の前部両側にそれぞれ装備され、図1に示すように、バンパ2と、フード3と、フェンダ4とで囲まれた領域に配置される。図2に示すように、ヘッドランプ1は、ランプハウジング5と、アウターレンズ6と、リフレクタ7と、光源8とを備える。このヘッドランプ1では、ランプハウジング5とアウターレンズ6とで灯室10が形成される。
【0018】
ランプハウジング5は、例えば樹脂材料で形成されている。図2に示すように、このランプハウジング5の形状は、光を出射する前端部51と、光源8が装着する後端部52と、に開口が形成された中空容器形状である。
【0019】
この前端部51には、開口縁全周に亘ってシール溝部53が形成されている。このシール溝部53の溝内には、充填されたシール部材54を介して、アウターレンズ6の周縁の端縁部61が嵌合されている。なお、アウターレンズ6の構造については、後述する。
【0020】
ランプハウジング5の後端部52の開口には、光源8が装着された光源側部材81が装着されて開口を塞いでいる。この光源側部材81の前端部から前方の周囲には、周回して光源8を取り囲むような略筒形状のリフレクタ7が配置されている。なお、リフレクタ7は灯室10内において、ランプハウジング5に図示しない光軸調整機構を介して取り付けられている。なお、図2において、一点鎖線aは光源8の光軸を示す。
【0021】
ランプハウジング5の外側部には、車体側部材9に取り付け、固定される複数の取付部55が延設されている。なお、ランプハウジング5の取り付けは、車体側部材9以外に、例えばラジエータコア、ラジエータサポートなどの自動車のフロント廻りの部品に取り付けられる構成としてもよい。
【0022】
図2に示すように、ランプハウジング5の下部には、灯室10内において、支持部材としての支持ロッド(支持ボルト)60が前方へ向けて突設されている。なお、支持ロッド60における、後述するバンパ保持部62の下の面を受ける部分は、光軸a方向と平行なすように設定されている。なお、本実施の形態では、支持ロッド60の突出方向が光軸a方向と平行をなし、支持ロッド60の周面がバンパ保持部62の下の面と平行をなすように設定されている。
【0023】
この支持ロッド60は、ランプハウジング5の下部に形成された肉厚のロッド取付部56に、外側から内側へ向けて螺挿されて固定されている。支持ロッド60は、頭部60Aと雄螺子部60Bとロッド部60Cとから構成されている。支持ロッド60の頭部60Aとロッド取付部56との間には、Oリング57が介在されて水密が保たれている。なお、ヘッドランプ1の幅寸法によっては、複数の支持ロッド60を車幅方向に所定間隔で配置してもよい。なお、支持ロッド60の取り付けは、頭部60Aの無い支持ロッド60に、ワッシャ、ナットなどを用いて取り付ける構成としてもよい。
【0024】
アウターレンズ6は透明性を有する樹脂材料で形成されている。このアウターレンズ6は、車両に装備されたときに下側となる部分(下縁近傍)に灯室10の内側へ向けて凹んで(折り返すように屈曲して)前面側に凹部(凹溝)63を形成するバンパ保持部62が形成されている。このバンパ保持部62は、アウターレンズ6において、後述するバンパ2の端縁部21が重なるように形成されている。図2に示すように、凹部63の溝内における下側面(バンパ受け面)62Aは、光軸a方向と平行をなすように設定されている。したがって、この下側面62Aは、支持ロッド60の突出方向と平行をなすように設定されている。
【0025】
また、アウターレンズ6は、周縁の端縁部61が上記したランプハウジング5のシール溝部53内にシール部材54を介して嵌合された状態で固定される。
【0026】
バンパ2の上部は、図1に示される意匠面の上端部分で、車両側へ向けて斜め下方に屈曲され、かつ屈曲された部分の端縁部21が上記アウターレンズ6の凹部63の下側面62Aと平行をなすように屈曲した形状となっている。
【0027】
図2に示すように、バンパ2およびヘッドランプ1が車両側に取り付けられた状態において、バンパ2の端縁部21が、アウターレンズ6における凹部63内に入り込んで、下側面62Aの上に配置されている。通常の状態では、バンパ2側からの荷重が下側面62Aに及ばないように設定されている。
【0028】
また、バンパ保持部62の端部(屈曲した部分の端部)は、支持ロッド60の突出部分の長さ方向の中央より支持ロッド60の基部側に位置するように設定されている。
【0029】
このような構成のヘッドランプ1では、例えば障害物などがバンパ2に衝突した場合に、バンパ2の端縁部21がアウターレンズ6のバンパ保持部62の下側面62Aに圧接して負荷が及ぶが、バンパ保持部62の下側に支持ロッド60が配置されているため、多少の負荷ではバンパ保持部62の屈曲が拡げられることがなく、バンパ保持部62の端部にクラックが生じることを抑制できる。なお、バンパ2の端縁部21において、ヘッドランプ1と重なり合わない部分では、負荷に応じて変位が許容されるため、歩行者保護に有利な取り付け構造となっている。
【0030】
また、このような構成のヘッドランプ1では、支持ロッド60と、アウターレンズ6の周縁の下側面62Aと、バンパ2の端縁部21と、が平行をなすように設定されているため、バンパ2に後方成分を有する負荷が働いた場合に、これらの部材が互いに摺動して変位を許容して、歩行者保護に有利に働くと共に、部材の破損を抑制する作用がある。
【0031】
本実施の形態に係るヘッドランプ1によれば、アウターレンズ6のバンパ保持部62にクラックが発生することを抑制することができる。また、アウターレンズ6において最もクラックが発生し易いバンパ保持部62を局所的に支持ロッド60で支えるため、バンパ2の取り付け強度を必要以上に強化する必要がなく、歩行者保護に有利なバンパ取り付け構造を採用することができる。また、本実施の形態によれば、バンパ2側の取付部品の点数を増やすことがなくコストの増加を抑制できる。さらに、上記構成のヘッドランプ1では、バンパ2の取り付けを容易にするという効果がある。
【0032】
また、本実施の形態に係るヘッドランプ1では、支持ロッド60の突出長さの中央よりも基部側にバンパ保持部62の端部が位置するように設定されているため、バンパ2側からバンパ保持部62へ負荷がかかった場合に支持ロッド60の破損や撓みが発生することを抑制できる。したがって、アウターレンズ6のバンパ保持部62の端部にクラックが発生することを抑制できる。
【0033】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るヘッドランプ1Aを示す要部断面図である。本実施の形態において上記第1の実施の形態と異なる構成は、支持部材としてランプハウジング5に一体成型された支持用突部58を設けたことである。本実施の形態における他の構成は、上記第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。したがって、本実施の形態については、支持用突部58の構成のみについて説明する。
【0034】
図3に示すように、支持用突部58は、支持用突片58Aと、この支持用突片58Aを補強するためにランプハウジング5に亘って三角形状に形成された補強リブ58Bとからなる。支持用突片58Aは、ランプハウジング5の内壁より前方へ向けて延在されている。この支持用突片58Aの上面は光軸a方向と平行なすように設定されている。補強リブ58Bは、支持用突片58Aの下側に形成されるものと、上側に形成されるものを含む。下側に形成される補強リブ58Bは、支持用突片58Aの先端部分の下面からランプハウジング5に亘るように、支持用突片58Aの下面に一体成型されている。上側に形成される補強リブ58Bは、アウターレンズ6のバンパ保持部62に干渉しないように支持用突片58Aの基部側にランプハウジング5までに亘って一体的に成型されている。
【0035】
このような構成のヘッドランプ1Aでは、支持用突部58がランプハウジング5に一体成型されているため、バンパ2側とヘッドランプ1A側との部品点数を増加させることなく低コスト化ならびに取り付けの省力化を図ることができ、しかもアウターレンズ6におけるバンパ保持部62へのクラックの発生を抑えることができる。
【0036】
また、本実施の形態に係るヘッドランプ1Aにおいても、上記第1の実施の形態と同様に、アウターレンズ6において最もクラックが発生し易いバンパ保持部62を局所的に支持用突部58で支えるため、バンパ2の取り付け強度を必要以上に強化する必要がなく、歩行者保護に有利なバンパ取り付け構造を採用することができる。
(その他の実施の形態)
【0037】
以上、本発明の第1および第2の実施の形態について説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0038】
例えば、上記第1および第2の実施の形態では、車両用灯具としてヘッドランプに本発明を適用して説明したが、バンパに隣接して配置される態様のフォグランプ、フロントコンビネーションランプなどに本発明を適用してもよい。
【0039】
また、上記第2の実施の形態では、支持用突部58を複数平行に配置する構成であってもよいし、単数の支持用突片58において支持用突片58Aの幅寸法を広く設定してもよい。なお、支持用突片58Aの幅寸法を広く設定した場合は、補強リブ58Bの数や厚さなどを適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1、1A ヘッドランプ(車両用灯具)
2 バンパ
5 ランプハウジング
6 アウターレンズ
8 光源
10 灯室
21 端縁部(バンパ)
58 支持用突部
58A 支持用突片
58B 補強リブ
60 支持ロッド
62 バンパ保持部
62A 下側面
63 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングとアウターレンズとで灯室を形成する車両用灯具であって、
前記アウターレンズの下縁近傍に、バンパを保持するためのバンパ保持部が設けられ、
前記バンパ保持部の後方に位置する前記ランプハウジングに、前記バンパ保持部を下方から支持可能な支持部材が延設されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記バンパ保持部の前記バンパを受けるバンパ受け面と、前記支持部材における前記バンパ保持部を受ける支持部材受け面は、ランプ光軸方向と平行をなすように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記バンパ保持部は、前記アウターレンズの下縁近傍が前記灯室内へ向けて凹むように折り返すように形成された部分であり、
前記バンパ保持部の前記灯室側の端部は、前記支持部材の長さ方向の中央よりも当該支持部材の基部側へ位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−215080(P2010−215080A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63178(P2009−63178)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】