説明

車両用灯具

【課題】駆動回路から発生する電磁ノイズが灯具外に漏れない、LEDを光源とする小型の車両用灯具の提供。
【解決手段】少なくとも前面側が開口する金属製の灯体22と前面開口部を覆う前面カバー20により画成された灯室内に、光源であるLED16(12),LED16(12)の発光を前面開口部に向けて反射するリフレクタ44(28)およびLED16(12)を駆動する駆動回路を収容した灯具で、回路部品を搭載して駆動回路を構成する基板66を略垂直にリフレクタ44(28)の背面側に配置した。灯体22が電磁的シールドを形成し、駆動回路から発生する電磁ノイズが外部に漏れることがない。灯具の奥行きが短くなって、車両用灯具が小型となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に用いられる車両用灯具に係り、特に、半導体発光素子を光源とする車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプ等の車両用灯具としては、例えば、プロジェクタ型のものやパラボラ型のものが知られている。プロジェクタ型の車両用灯具は、光軸上に配置された光源からの光を、リフレクタにより前方に向けて光軸寄りに集光反射させ、この反射光をリフレクタの前方に設けられた投影レンズを介して灯具前方へ照射するように構成されている。一方、パラボラ型の車両用灯具は、光軸上に配置された光源と、光軸を中心とし、且つ光源近傍に焦点を有する回転放物面を基準面として形成されたリフレクタを備え、光源からの光を、リフレクタにより前方へ向けて平行光として反射させ、この反射光を灯具前方へ照射するように構成されている。
【0003】
プロジェクタ型の車両用灯具は、パラボラ型の車両用灯具に比べてレフレクタの径が小さいため、小型化を図ることができる。しかし、光源として放電バルブの放電発光部やハロゲンバルブのフィラメントを用いた場合、プロジェクタ型の車両用灯具であっても、光源からの光を適正に反射制御したり、光源を取り付けるためのスペースを確保したりするには、リフレクタとしてある程度の大きが必要である。しかも、光源の発熱量が多いので、発熱の影響を考慮してリフレクタのサイズを設定することが余儀なくされ、灯具をより小型化するのが困難である。
【0004】
そこで、光源に半導体発光素子として、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
光源をLEDで構成すると、光源を略点光源として取り扱うことができるので、リフレクタの径を小さくできる。しかも、リフレクタとして、大きな取り付けスペースを確保したり、LEDの発熱の影響を考慮したりする必要がないので、光源に放電バルブの放電発光部やハロゲンバルブのフィラメントを用いたときよりも、灯具を小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−311224号公報(第3頁から第8頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術においては、半導体発光素子を光源とする複数の灯具ユニットを車両用前照灯に用いているので、複数種類の配光パターンを形成することができるとともに、複数の灯具ユニットを、傾動可能に設けられた共通の金属製支持部材に支持させるようにしているので、半導体発光素子の温度上昇を抑制することができる。
【0008】
しかし、従来技術においては、半導体発光素子からの発熱を放熱するための金属製支持部材が灯具内に収納されているので、半導体発光素子からの発熱を放熱するには十分ではない。
【0009】
また、半導体発光素子を発光させるためには、半導体発光素子を駆動する駆動回路が必要で、この駆動回路から発生する電磁ノイズが問題となり、灯具の小型化にも限界があった。
【0010】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、光源である半導体発光素子を駆動する駆動回路から発生する電磁ノイズが外部に漏れない小型の車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係る車両用灯具においては、少なくとも前面側が開口する金属製の灯体と前記前面開口部を覆う透光性の前面カバーにより画成された灯室内に、光源である半導体発光素子,前記半導体発光素子の発光を前記前面開口部に向けて反射するリフレクタおよび前記半導体発光素子を駆動する駆動回路が収容された車両用灯具であって、
前記駆動回路は、該駆動回路を構成する複数の回路部品を搭載した回路基板を含み、
前記回路基板を略垂直に前記リフレクタの背面側に配置するように構成した。
【0012】
(作用)金属製の灯体が電磁的シールドを形成し、半導体発光素子を駆動する駆動回路から発生する電磁ノイズが外部に漏れるのを抑制する。
【0013】
また、駆動回路を構成する回路基板を略垂直にリフレクタの背面側に配置したので、灯具全体の奥行きを短くすることができ、灯具の小型化に寄与できる。
【0014】
請求項2においては、請求項1に記載の車両用灯具において、前記半導体発光素子を鉛直下方または上方に向けて配置するように構成した。
【0015】
(作用)半導体発光素子を鉛直下方または上方に向けて配置するため、半導体発光素子の下方または上方にリフレクタが配置されることとなって、灯室内における半導体発光素子とリフレクタの前後方向の収容スペースが小さくなる。
【0016】
請求項3においては、請求項1または2に記載の車両用灯具において、前記半導体発光素子と前記リフレクタは、反射型灯具ユニットとして構成され、前記反射型灯具ユニットと前記前面カバーの間に、前記反射型灯具ユニットの周囲を遮蔽する、アルミ蒸着されたエクステンションを配置するように構成した。
【0017】
(作用)エクステンションも灯体とともに電磁的シールドを形成し、半導体発光素子を駆動する駆動回路から発生する電磁ノイズが外部に漏れるのをより抑制する。
【0018】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具において、
前記半導体発光素子は、熱伝導性絶縁基板および該熱伝導性絶縁基板に搭載された半導体発光素子チップを含み、前記熱伝導性絶縁基板は、前記灯体と連係された金属製の固定部と面接触して固定されて、半導体発光素子チップの熱が前記固定部を介して前記灯体に放熱されるように構成した。
【0019】
(作用)金属製灯体の内部に前記灯体と連係された金属製の固定部を配置し、半導体発光素子の発光面の裏面側を固定部と面で接触して固定するようにしたため、半導体発光素子からの発熱を固定部から金属製灯体に効率良く放熱することができ、放熱構造が小型化になるとともに、半導体発光素子の信頼性の向上を図ることができる。
【0020】
請求項5においては、請求項1〜4のいずれかに記載の車両用灯具において、前記灯体を前面側および後面側が開口する金属製の筒体として構成するとともに、前記灯体の後面開口部を覆う金属製の後面カバーを備えるように構成した。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る車両用灯具によれば、光源である半導体発光素子を駆動する駆動回路から発生する電磁ノイズが外部に漏れることがない小型の車両用灯具を提供できる。
【0022】
請求項2によれば、灯室内における半導体発光素子とリフレクタの前後方向の収容スペースが小さくなるので、よりいっそう小型の車両用灯具を提供できる。
【0023】
請求項3によれば、光源である半導体発光素子を駆動する駆動回路から発生する電磁ノイズが外部によりいっそう漏れることがない小型の車両用灯具を提供できる。
【0024】
請求項4によれば、半導体発光素子からの発熱が固定部から金属製灯体に効率良く放熱されるので、放熱のためのヒートシンクが不要若しくは放熱構造が小型化になるとともに、半導体発光素子の信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例を示す車両用灯具の正面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す車両用灯具の底面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図1のC−C線に沿う断面図である。
【図6】LEDからの光の反射光路を説明するための要部断面図である。
【図7】(a)は、回路基板が装着された後面カバーの正面図、(b)は、(a)に示す後面カバーの要部断面図である。
【図8】LEDとアタッチメントとの関係を説明するめの分解斜視図である。
【図9】LEDをアタッチメントの下部側に配置したときの分解斜視図である。
【図10】LEDが装着されたアタッチメントを下部側から見たときの斜視図である。
【図11】LEDがアタッチメントに装着されたときの要部断面図である。
【図12】LEDが装着されたアタッチメントを固定部に固定する方法を説明するための分解斜視図である。
【図13】LEDが装着されたアタッチメントを固定部に固定したときの斜視図である。
【図14】反射鏡ユニットと投影レンズとの関係を説明するための分解斜視図である。
【図15】プロジェクタ型の灯具ユニットから前方に照射されるビームにより灯具前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるカットオフライン形成用配光パターンを、プロジェクタ型の灯具ユニットと共にその背面側から透視したときの模式図である。
【図16】反射型の灯具ユニットから前方に照射されるビームにより灯具前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを、反射型の灯具ユニットと共にその背面側から透視したときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を実施例に従って説明する。図1は、本発明の一実施例を示す車両用灯具の正面図、図2は、本発明の一実施例を示す車両用灯具の底面図、図3は、図1のA−A線に沿う断面図、図4は、図1のB−B線に沿う断面図、図5は、図1のC−C線に沿う断面図、図6は、LEDからの光の反射光路を説明するための要部断面図、図7(a)は、回路基板が装着された後面カバーの正面図、(b)は、(a)に示す後面カバーの要部断面図、図8は、LEDとアタッチメントとの関係を説明するめの分解斜視図、図9は、LEDをアタッチメントの下部側に配置したときの分解斜視図、図10は、LEDが装着されたアタッチメントを下部側から見たときの斜視図、図11は、LEDがアタッチメントに装着されたときの要部断面図、図12は、LEDが装着されたアタッチメントを固定部に固定する方法を説明するための分解斜視図、図13は、LEDが装着されたアタッチメントを固定部に固定したときの斜視図、図14は、反射鏡ユニットと投影レンズとの関係を説明するための分解斜視図、図15は、プロジェクタ型の灯具ユニットから前方に照射されるビームにより灯具前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるカットオフライン形成用配光パターンを、プロジェクタ型の灯具ユニットと共にその背面側から透視したときの模式図、図16は、反射型の灯具ユニットから前方に照射されるビームにより灯具前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを、反射型の灯具ユニットと共にその背面側から透視したときの模式図である。
【0027】
これらの図において、車両用灯具10は、図1乃至図6に示すように、例えば、車両用前照灯を構成する2種類の灯具ユニットとして、LED(半導体発光素子)12を光源(第1の光源)とするプロジェクタ型の灯具ユニット14と、LED16を光源(第2の光源)とする反射型(パラボラ型)の灯具ユニット18を備えており、プロジェクタ型の灯具ユニット14と反射型の灯具ユニット18は、前面カバー(アウターレンズ)20と灯体(ボディ)22および後面カバー(バックカバー)24によって形成される灯室26内に収納され、反射型の灯具ユニット18は、プロジェクタ型の灯具ユニット14の鉛直下側に略接するように配置されている。なお、車両用灯具10は、特定種類の車両用灯具に限定されるものではなく、例えば、ヘッドランプ、フォグランプ、ベンディングランプ等を用いることができる。また、半導体発光素子としは、LEDの他に、半導体レーザを用いることも可能である。
【0028】
プロジェクタ型の灯具ユニット14は、LED12と、リフレクタ28と、連結部材30と、投影レンズ32を備えて構成されている。LED(半導体発光素子)12は、第1の光源として、例えば、図8に示すように、1mm角程度の大きさのLEDチップ12aと、LEDチップ12aを覆う略半球状のキャップ12bと、金属ワイヤー12c、12dを有する白色LEDで構成され、熱伝導性絶縁基板(例えば、セラミックス)34上に、照射面(出射方向)をプロジェクタ型の灯具ユニット14の光軸Ax(以下、単に光軸Axを称する。)と略直角方向に向けて略光軸Ax上に配置されている。熱伝導性絶縁基板34上には、LEDチップ12aを間にしてその両側に導電性パターン(金属薄膜)34a、34bが形成されている。導電性パターン34aは金属ワイヤー12cを介してLEDチップ12aのアノードに接続され、導電性パターン34bは金属ワイヤー12dを介してLEDチップ12aのカソードに接続されている。熱伝導性絶縁基板34は、樹脂製のアタッチメント35やスプリングプレート36等に支持された状態で灯体22の固定部220に固定されている(図13参照)。
【0029】
固定部220は、アルミを主成分とする金属によるダイキャストにより、同一素材を延長して略平板状に形成されて、灯体22の内周側上部に配置されている(図12、図13参照)。すなわち、金属製の固定部220は、灯体22と連係して灯体22内部に設けられている。この固定部220には、熱伝導性絶縁基板34を設置するための設置面220a、アタッチメント35を装着するための凹部220b、220c、スプリングプレート36を支持するための凹部220d、220e、220fなどが形成されている。
【0030】
アタッチメント35は、図8に示すように、支持部35aと、給電部としてのコネクタ35bを備えている。支持部35aは、略平板状に形成されて、略中央部には開口35cが形成されており、この開口35cの両側には接続端子35d、35eが相対向して配置されている。接続端子35d、35eは、金属製の板材を用いて湾曲した形状に形成され、その一部がアタッチメント35内に埋設されてコネクタ35bに電気的に接続されている。また、アタッチメント35の下部側には、補助アタッチメント37を支持するための突起35fと凹部35g、35hが形成されている。補助アタッチメント37は、樹脂材を用いて略コ字形状に形成されており、この補助アタッチメント37には、熱伝導性絶縁基板34を支持するための突起37a、37bが形成されている。
【0031】
LED12をアタッチメント35で支持するに際しては、図9に示すように、アタッチメント35の下部側に熱伝導性絶縁基板34を配置し、この熱伝導性絶縁基板34をアタッチメント35の下部側から開口35cに向けて押し上げると、LED12が開口35cから突出した状態で熱伝導性絶縁基板34上の導電性パターン34a、34bがそれぞれ接続端子35d、35eに接触する。この後、補助アタッチメント37の先端側を凹部35g、35hに挿入すると、補助アタッチメント37の基端側が突起35fに支持される。これにより、熱伝導性絶縁基板34は、図10と図11に示すように、その下部側が補助アタッチメント37の突起37a、37bに支持された状態で接続端子35d、35e側に押し上げられ、熱伝導性絶縁基板34上の導電性パターン34a、34bがそれぞれ接続端子35d、35eに圧着される。接続端子35dは、導電性パターン34a、金属ワイヤー12cを介してLEDチップ12aのアノードに接続され、接続端子35eは、導電性パターン34b、金属ワイヤー12dを介してLEDチップ12aのカソードに接続される。
【0032】
LED12が装着されたアタッチメント35を灯体22の固定部220に固定するに際しては、図12、図13に示すように、アタッチメント35のコネクタ35bを凹部220b内に装着し、支持部35aの左側を凹部220c内に装着すると、熱伝導性絶縁基板34が設置面220aに接触する。次に、スプリングプレート36の先端側を固定部220の凹部220d、220e内に挿入し、スプリングプレート36の基端側を固定部220の凹部220f内に挿入すると、スプリングプレート36の弾性力がアタッチメント35に対して鉛直下方に作用し、アタッチメント35全体が固定部220に圧着されるとともに、熱伝導性絶縁基板34が設置面220aに圧着される。すなわち、LED12は、その発光面の裏面側が熱伝導性絶縁基板34を介して設置面220aと面で接触して固定されることになる。設置面220aは、アルミ製灯体22の固定部220と一体成形されているため、LED12からの発熱を熱伝導性絶縁基板34、設置面220a、固定部220、灯体22を介して効率良く放熱することができる。
【0033】
リフレクタ28は、第1のリフレクタとして、例えば、ポリカーボネイトを用いて略ドーム状に形成されて、LED12の上方に配置されている。リフレクタ28は、その表面にアルミ蒸着が施されており、LED12からの光を前方へ向けて光軸Ax寄りに集光反射させる第1反射面28aを有している。この第1反射面28aは、LED12(光源)より前方に配置された投影レンズ32に向けてLED12(光源)からの光を集光反射させる反射面として、光軸Axを中心軸として略楕円面状に形成されている。具体的には、第1反射面28aは、光軸Axを含む断面形状が略楕円形状に設定され、その離心率が鉛直断面から水平断面に向けて徐々に大きくなるように設定されている。そして、第1反射面28aの鉛直断面を形成する楕円の第1焦点F1にLED12が配置されている(図6参照)。これにより、第1反射面28aは、LED12からの光を前方へ向けて光軸Ax寄りに集光反射させることができる。この際、反射面28aは、光軸Axを含む鉛直断面内においては、楕円の第2焦点F2に反射光を略収束させるようになっている。
【0034】
連結部材30は、光軸Axの略下側に配置された平坦部38と半チューブ状の略樋型の意匠部40とを備え(図14参照)、リフレクタ28との一体成形品として、ポリカーボネイトを用いて形成されて、LED12と投影レンズ32との間に配置されている。平坦部38はリフレクタ28に一体となって連結されているとともに、灯体22にねじで固定されるようになっている。意匠部40の前方側端部は、外形が略半球状の投影レンズ32に超音波溶着されている。平坦部38と意匠部40の表面にはアルミ蒸着が施されており、平坦部38にはリフレクタ28の第1反射面28aからの反射光の一部を前方へ、すなわち投影レンズ32に向けて反射させる第2反射面38aが形成されている。
【0035】
意匠部40は、平坦部38の縁と投影レンズ32の下部側とを結ぶために、平坦部38との境界から、斜め下方に沿って配置されている。この意匠部40は、リフレクタ28の第1反射面28aからの反射光を投影レンズ32に導く反射光路を覆うように、すなわち、意匠部40は、第2反射面38aと投影レンズ32との間に第2反射面38aと連接して配置され、第1反射面28aからの反射光を遮蔽することなく覆うように、第1反射面28aから、略円形の投影レンズ32の外周線に向かう反射光路に隣接して沿った半チューブ状の略樋型に形成されている。このため、第1反射面28aからの反射光を有効に投影レンズ32に入れることが可能で、かつ反射光路の後方側のスペースを有効利用でき、小型化が可能になる。そして、平坦部38と意匠部40との境界近傍は、第2焦点F2に設定されている。さらに、平坦部38における第2反射面38aと意匠部40との境界部は、車両用灯具10の配光パターンにおける所定のカットオフラインを有するように形成されている。すなわち、平坦部38における第2反射面38aと意匠部40との境界部は、第1反射面28aからの反射光の一部を遮蔽するシェードとして機能しており、灯具ユニット14からのビーム照射により、例えば、図15に示すように、フォグランプ配光パターン等のようなカットオフラインCL1を有する配光パターンP1を形成することができる。
【0036】
その際、シェードの遮光端面を光軸Ax方向後方へ向けて延長して形成し、この延長して形成された遮光端面により、第1反射面28aからの反射光を所定方向側へ反射させる第3の反射面を形成すれば、本来シェードによって遮蔽されるべき光をビーム照射光として有効に活用することができ、灯具ユニット14としての利用光束をより一層増大させることができる。また、平坦部38における第2反射面38aと意匠部40との境界部は、灯具の配光パターンにおけるカットオフラインCL1が形成される形状に形成され、シェードの機能も果たしているので、シェードを別部品として備える必要がない。
【0037】
投影レンズ32は、ポリカーボネイト等の透光性樹脂を用いて、外形が略半球状(ドーム状)に形成されて、前面カバー20の背面側に配置されており、第1反射面28aからの反射光が意匠部40を伝播したときに、この反射光を前方へ透光(透過)するようになっている(図14参照)。この際、第1反射面28aからの反射光は、投影レンズ32の略下半分の領域を透光して前面カバー20に照射されるようになっている。一方、第1反射面28aからの反射光の一部は第2反射面38aで反射し、第2反射面38aで反射した反射光は投影レンズ32の略上半分の領域を透光して前面カバー20に照射されるようになっている。
【0038】
本実施例におけるプロジェクタ型の灯具ユニット14は、リフレクタ28と連結部材30が、第1反射面28a、第2反射面38a、意匠部40を有する反射鏡ユニット42として、単一部品で構成されているので、第1反射面28aと第2反射面38aの位置精度を高めることができ、配光性能の向上および部品点数の削減を図ることができる。また、この反射鏡ユニット42には、投影レンズ32が固定されているので、反射鏡ユニット42と投影レンズ32の位置精度を高めることができ、より配光性能を高めることができる。
【0039】
なお、プロジェクタ型の灯具ユニット14としては、投影レンズ32を備えていない構成としてもよい。この場合には、車両用灯具10を組み付ける際に、投影レンズ32を灯具ユニット14に対してその光軸Ax方向前方側の所定位置に配置すればよい。
【0040】
一方、反射型の灯具ユニット18は、図3〜図6に示すように、LED16と、リフレクタ44を備えて構成されている。LED(半導体発光素子)16は、第2の光源として、例えば、図8に示すように、1mm角程度の大きさのLEDチップ16aと、LEDチップ16aを覆う略半球状のキャップ16bと、金属ワイヤー16c、16dを有する白色LEDで構成され、熱伝導性絶縁基板(例えば、セラミックス)46に、照射面(出射方向)を略鉛直下方(LED12の出射方向と反対方向)に向けて、LED12より光軸Ax方向の前方(灯具前方)に配置されている。すなわち、LED16は、プロジェクタ型の灯具ユニット14における第1反射面28aからの反射光を投影レンズ32に導く反射光路から外れ、第1反射面28aからの反射光の伝播に利用されない空き領域に配置されている。熱伝導性絶縁基板46上には、LEDチップ16aを間にしてその両側に導電性パターン(金属薄膜)46a、46bが形成されている。導電性パターン46aは金属ワイヤー16cを介してLEDチップ16aのアノードに接続され、導電性パターン46bは金属ワイヤー16dを介してLEDチップ16aのカソードに接続されている。熱伝導性絶縁基板46は、樹脂製のアタッチメント35やスプリングプレート36等に支持された状態で灯体22の固定部222に固定されている(図13参照)。
【0041】
固定部222は、アルミを主成分とする金属によるダイキャストにより、同一素材を延長して略平板状に形成されて、灯体22の内周側下部に、固定部220と相対向して配置されている。この固定部222は、固定部220を上下・左右逆にした形状であって、アタッチメント35やスプリングプレート36等を支持するための凹部等が固定部220よりも灯具前方に形成されている(図6参照)他は、固定部220と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
アタッチメント35がLED16とともに灯体22の固定部222に固定されると、アタッチメント35に装着されたLED16は、その発光面の裏面側が熱伝導性絶縁基板46を介して固定部222と面で接触して固定される。このため、LED16からの発熱を熱伝導性絶縁基板46、固定部222、灯体22を介して効率良く放熱することができる。この場合、LED12とLED16は、固定部220と固定部222の両面に分かれ、水平面上で異なった位置に配置されているため、互いに発熱の影響を受けるのを少なくすることができ、より効率良く放熱することができる。
【0043】
リフレクタ44は、パラボラ型の第2のリフレクタとして、例えば、ポリカーボネイトを用いて略放物面状に形成されて、リフレクタ(第1のリフレクタ)28の後端面より灯具前方に位置し、LED16の下方に配置されている。このリフレクタ44は、LED16近傍に焦点を有する回転放物面を基準面とした反射面として形成されて、その表面にアルミ蒸着が施されており、図6に示すように、LED16からの光を前方へ向けて反射させて略平行光として照射(水平方向は拡散照射)するようになっている。また、リフレクタ44は、プロジェクタ型の灯具ユニット14と反射型の灯具ユニット18の周囲が灯具前方から見えないように遮蔽するためのエクステンション50と一体成形されて、エクステンション50の背面側に配置されている。エクステンション50は、略筒状に形成されて、その表面(前面側)にアルミ蒸着が施されている。リフレクタ44とエクステンション50を一体成形することで、両者の間に段差がなくなり、非点灯時における見映えを良くすることができるとともに、部品点数を削減できる。さらに、リフレクタ44とエクステンション50を一体成形することで、エクステンション50の前面側とリフレクタ44の反射面は一度にアルミ蒸着され、蒸着工程の簡略化を図ることができる。すなわち、蒸着等の鏡面化工程も1つの部材(一体成形されたリフレクタ44とエクステンション50)を1回で行えば良いので、従来の2つの部材を別々に行うよりも処理工程の簡略化・コスト低減が可能になる。
【0044】
本実施例における反射型の灯具ユニット18は、プロジェクタ型の灯具ユニット14における第1反射面28aからの反射光の伝播に利用されない空き領域を有効に利用して、プロジェクタ型の灯具ユニット14の鉛直下側に略接するように配置されているので、スペースを有効に利用することで、灯具の小型化に寄与することができる。また、プロジェクタ型の灯具ユニット14と反射型の灯具ユニット18は灯体22の一部を延長して形成された平板状の固定部220、222に固定されているので、相対位置精度が向上し、灯具の配光精度の向上に寄与することができる。
【0045】
本実施例における反射型の灯具ユニット18においては、灯具ユニット18からのビーム照射により、例えば、図16に示すような配光パターンP2を形成することができる。
エクステンション50の前方には前面カバー20が配置され、背面側には灯体22が配置されている。エクステンション50の側面には、環状のフランジ部52が形成され、背面には環状の突起54が形成されており、フランジ部52には、前面カバー20が超音波溶着され、突起54には灯体22が装着されている。
【0046】
前面カバー20は、例えば、ポリカーボネイトを用いて、略筒状に形成されて、灯体22の前面を覆うように灯体22に装着され、その一端側が略円盤状の照射部56で閉塞されており、各灯具ユニット14、18からの光を透光(透過)して灯具前方へ照射するようになっている。各灯具ユニット14、18からの光が前面カバー20から灯具前方へ照射されたときには、所定の配光パターンが形成されるようになっている。前面カバー20の開口側端面には環状の溶着面20aが形成されており、この溶着面20aは、エクステンション50のフランジ52に超音波溶着されている。
【0047】
一方、灯体22は、図3〜図5に示すように、アルミを主成分とする金属によるダイキャストにより、前面と後面が開口した筒体として構成されており、灯体22の前面側開口端部には環状のシール溝58が形成され、背面側には取り付け部60が形成されている。この灯体22は、組立時にエクステンション50の突起54がシール溝58内に装着され、シール溝58内に充填されたシール剤により、エクステンション50と灯体22が互いに接着するとともに、両者の間隙がシールされるようになっている。また、灯体22は、取り付け部60が、後面カバー24の取り付け部62とねじを介して連結されるようになっている。
【0048】
本実施例における灯体22は金属で構成されているので、灯体22を樹脂で構成するときよりも、耐熱性および放熱性を高めることができ、結果として灯具の小型化を図ることができる。
【0049】
後面カバー24は、図3〜図5に示すように、アルミを主成分とする金属によるダイキャストにより、前面が開口し、後面が閉塞した筒体として構成されており、灯体22の後面を覆うように灯体22に装着されている。後面カバー24の内部には凹状の空間のある凹部64が形成されている。この凹部64には、光源(LED12、16)を駆動する回路基板66が略垂直になって装着されている。回路基板66には、図4に示すように、LED12、16を駆動するための駆動回路やLED12、16と駆動回路に給電するためのソケット68などが実装されており、回路基板66の周囲は電磁シールドカバー70で覆われている。4本のピンが水平方向に沿って配列されたソケット68には、コネクタ72が着脱自在に装着されており、コネクタ72には4本のリード線74、76、78、80が接続されている。リード線74、76は、灯体22下方(灯具下方)に配置されたブッシング84内を挿通してバッテリ(図示せず)に接続されており、駆動回路には、バッテリからリード線74、76、コネクタ72を介して電力が供給されるようになっている。リード線78は、固定部220に装着されたアタッチメント35のコネクタ35bの一方の端子に接続され、このコネクタ35bの他方の端子に接続されたリード線82は、固定部222に装着されたアタッチメント35のコネクタ35bの一方の端子に接続され、このコネクタ35bの他方の端子には、リード線80が接続されている。
【0050】
すなわち、LED12、16は、リード線78、リード線82、リード線80を介して駆動回路から直列に接続され、給電されるようになっている。バッテリから駆動回路に給電するに際して、ブッシング84を灯体22下方(灯具下方)に配置することで、回路基板66に給電するためにブッシング84に内通されたリード線74、76等を伝わって水等が灯具内部に浸入するのを防止することができる。また、回路基板66を内蔵した後面カバー24内には樹脂充填ライン95以下の領域に絶縁性の樹脂96が充填されており、駆動回路を構成する各種部品(回路部品)などは樹脂96で固定されている。
【0051】
駆動回路は、例えば、図7(a)、(b)に示すように、スイッチングレギュレータ86を用いて構成されており、駆動回路を構成する各種部品(回路部品)や駆動回路に接続される部品のうち背高部品、例えば、トランス(DC/DCコンバータ用トランス)88、ソケット68等は、コネクタ72やリード線74、76、78、80等とともに、リフレクタ44の背面側の領域に集合して配置され、背高部品とは異なる部品であって背の低い部品、例えば、トランジスタ(MOSFET)90、抵抗92、表面実装型コンデンサ94等は、主として、リフレクタ28、44や固定部220、222の後部側の領域に配置されている。
【0052】
すなわち、反射型の灯具ユニット18は、プロジェクタ型の灯具ユニット14よりも奥行きが短く、リフレクタ44の背面側の領域は空き領域をなっているため、この領域に、背高部品(トランス88、ソケット68)を集合して配置することで、後面カバー24の軸方向の長さを短くすることができ、結果として、灯具全体の奥行きを短くすることができ、灯具の小型化に寄与することができる。
【0053】
また、駆動回路を構成する各種部品(トランス88、トランジスタ90、抵抗92、表面実装型コンデンサ94など)は樹脂96で固定されているので、振動によって各種部品が損傷したり、劣化したりするのを防止することができるとともに、各種部品からの発熱を樹脂96を通して後面カバー24および灯体22に効率良く放熱することができ、駆動回路の信頼性を高めることができる。
【0054】
また、金属製の後面カバー24は金属製の灯体22と一体となって連結されて電磁的シールドを形成するため、駆動回路から発生する電磁ノイズが外部に漏れるのを抑制することができる。さらに、灯体22に連結されるエクステンション50の表面にはアルミ蒸着が施されているので、エクステンション50も金属製の後面カバー24や金属製の灯体22とともに電磁的シールドを形成し、駆動回路から発生する電磁ノイズが外部に漏れるのをより抑制することができる。
【0055】
本実施例における車両用灯具10を、ヘッドランプ、フォグランプなどの前照灯として用いるに際して、例えば、図4に示すように、カウルカバー100がラバー102を介して車体フレーム104に固定されている場合、車両用灯具10は、カウルカバー100の背面側に配置される。そして、運転者の操作により駆動回路が駆動されてLED12、16が発光すると、LED12からの光はリフレクタ28の第1反射面28aで反射した後、投影レンズ32、前面カバー20を透光し、灯具前方に照射され、一方、LED16からの光は、リフレクタ44で反射した後、前面カバー20を透光し、灯具前方に照射される。このとき、灯具前方には所定の配光パターンに従った光が照射されることになる。
【0056】
本実施例によれば、第1反射面28aと第2反射面38aおよび意匠部40を、反射鏡ユニット42として単一部品で構成したため、第1反射面28aと第2反射面38aの位置精度を高めることができ、配光性能の向上および部品点数の削減に寄与することができる。
【0057】
本実施例によれば、灯具本体として露出された金属製灯体22の内部に固定部220、222を一体的に形成し、LED12、16の発光面の裏面側を固定部220、222と面で接触して固定するようにしたため、LED12、16からの発熱を固定部220、222から金属製灯体22に効率良く放熱することができ、放熱のためのヒートシンクが不要になるとともに、LED12、16の信頼性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 車両用灯具
12 LED
14 プロジェクタ型の灯具ユニット
16 LED
18 反射型の灯具ユニット
20 前面カバー
22 灯体
24 後面カバー
26 灯室
28 リフレクタ
28a 第1反射面
30 連結部材
32 投影レンズ
34 熱伝導性絶縁基板
35 アタッチメント
36 スプリングプレート
38 平坦部
38a 第2反射面
40 意匠部
42 反射鏡ユニット
44 リフレクタ
46 熱伝導性絶縁基板
50 エクステンション
66 回路基板
68 ソケット
84 ブッシング
88 トランス
90 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前面側が開口する金属製の灯体と前記前面開口部を覆う透光性の前面カバーにより画成された灯室内に、光源である半導体発光素子,前記半導体発光素子の発光を前記前面開口部に向けて反射するリフレクタおよび前記半導体発光素子を駆動する駆動回路が収容された車両用灯具であって、
前記駆動回路は、該駆動回路を構成する複数の回路部品を搭載した回路基板を含み、
前記回路基板は、略垂直に前記リフレクタの背面側に配置されたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記半導体発光素子は、鉛直下方または上方に向けて配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記半導体発光素子と前記リフレクタは、反射型灯具ユニットとして構成され、前記反射型灯具ユニットと前記前面カバーの間には、前記反射型灯具ユニットの周囲を遮蔽する、アルミ蒸着されたエクステンションが配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記半導体発光素子は、熱伝導性絶縁基板および該熱伝導性絶縁基板に搭載された半導体発光素子チップを含み、前記熱伝導性絶縁基板は、前記灯体と連係された金属製の固定部と面接触して固定されて、半導体発光素子チップの熱が前記固定部を介して前記灯体に放熱されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記灯体は、前面側および後面側が開口する金属製の筒体として構成されるとともに、前記灯体の後面開口部を覆う金属製の後面カバーを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−278029(P2010−278029A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204316(P2010−204316)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2005−124111(P2005−124111)の分割
【原出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】