説明

車両用灯具

【課題】光源からの光を導光体から照射方向に出射させるとともに、光源からの光の一部を導光体の板面上から出射させることにより、少ない光源数で発光面積を拡大することができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10は、導光体13が灯具照射方向に延び、後端部近傍にLED12からの光を入射する入射部26と、先端部に入射した光の一部を出射する出射部27と、入射した光の一部を内面反射して各リフレクタ14〜19へ向けて出射する反射部22〜25とを有している。また、リフレクタ14〜19は、反射部22〜25の反射方向に対応して配置され、反射部22〜25で反射した反射光α2〜α5を灯具照射方向へ向けて拡散照射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両における標識灯に適用する車両用灯具に関し、特にLED(発光ダイオード)を光源とした車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用灯具の一例として、例えば、特許文献1に記載のように板状の導光体の平面部が第1の光源の光軸と平行に延設され、該導光体の背面部の一部が第1の光源の前側に配置されているものが知られている。この車両用灯具は、導光体の背面部の他の一部がリフレクタの背後にまで延長配置されており、第2の光源が導光体の背面部の他の一部に対向配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−250401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示された従来の車両用灯具では、発光部が放射状に広がる導光体の照射方向側の前端部のみであり、幅狭で且つ横長の帯状であるため、導光体の上下の板面部分は発光されない。したがって、導光体の上下部分が暗くなってしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、光源からの光を導光体から照射方向に出射させるとともに、光源からの光の一部を導光体の板面上から出射させることにより、少ない光源数で発光面積を拡大することができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができる本発明に係る車両用灯具は、光源と、板状の導光体と、該導光体の少なくとも一方の板面側に配置されたリフレクタとを備える車両用灯具であって、前記導光体は、灯具照射方向に延び、後端部近傍に前記光源からの光を入射する入射部と、先端部に入射した光の一部を出射する出射部と、入射した光の一部を内面反射して前記リフレクタへ向けて出射する反射部とを有し、前記リフレクタは、前記反射部の反射方向に対応して配置され、該反射部で反射した反射光を灯具照射方向へ向けて反射させることを特徴とする。
【0007】
上記構成の車両用灯具によれば、光源の光は、導光体の出射部から灯具照射方向に出射されるとともに、導光体の反射部で内面反射してから少なくとも一方の板面側のリフレクタで反射して灯具照射方向に反射される。これにより、少ない光源数で発光面積を拡大させることができる。
【0008】
また、上記構成の車両用灯具において、前記導光体は、前記入射部から前記出射部にわたって前記板面の板幅が放射状に拡幅しており、1つの該導光体に対して複数の前記リフレクタが配置されていることが望ましい。
【0009】
このような構成の車両用灯具によれば、例えば、1つの光源が導光体の後端部近傍に配置されているので、光源自体は導光体によって隠されるとともに、光源の光が導光体の入射部から各リフレクタに対応した位置に形成された導光体内の反射部へ向けて放射状に導光される。そして、導光された光は、反射部で内面反射してから対応する各リフレクタへ向けて導光体の板面から出射されるので、反射部上に見栄えの良好な擬似発光部を形成することができる。
【0010】
また、上記構成の車両用灯具において、前記光源の出射方向は、前記灯具照射方向に向けられ、前記導光体は、前記出射部が均一発光するように前記入射部の凹面形状によって入射光を制御していることが望ましい。
【0011】
このような構成の車両用灯具によれば、入射部の凹面形状が出射部で均一発光するように、例えば、光源の光度や指向特性、導光体の諸寸法等から設定される。これにより、見栄えの良好な出射部での均一発光を実現することができる。
【0012】
また、上記構成の車両用灯具において、前記導光体は、前記反射部を2つの対向する両板面上に形成しており、前記リフレクタは、前記導光体を挟んで該導光体の両側に配置されていることが望ましい。
【0013】
このような構成の車両用灯具によれば、導光体の両板面を有効に使用することで、導光体の両側に複数のリフレクタを配置できるので、少ない光源数で発光面積を一層拡大させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用灯具によれば、光源からの光を導光体から灯具照射方向に出射させるとともに、光源からの光の一部を導光体の反射部で内面反射させてから、少なくとも一方の板面側からリフレクタへ向けて出射させ、リフレクタで灯具照射方向へ反射させる。これにより、少ない光源数で発光面積を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る一実施形態の車両用灯具10の正面図である。
【図2】図1に示した車両用灯具10の平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】図2の要部を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両用灯具の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。なお、この車両用灯具は、灯具ハウジング内に収容される、例えば、テール&ストップランプに適用される。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態である車両用灯具10は、灯具ハウジング11内に、光源である単一のLED12と、板状の導光体13と、複数のリフレクタ14〜19と、を備えている。具体的には、水平に配置された導光体13の上下に、上部第1リフレクタ14、上部第2リフレクタ15、上部第3リフレクタ16、下部第1リフレクタ17、下部第2リフレクタ18及び下部第3リフレクタ19の計6個のリフレクタが配置されている。
【0018】
LED12は、LED基板20(図2参照)上に実装されており、灯具ハウジング11の中央部で、導光体13の後端部近傍に組付けられている。導光体13は、例えば、透明、赤色、黄色、橙色等の樹脂材料を用いて略扇形状に形成されており、灯具ハウジング11の中央部に板面29(図4参照)を上下にして水平に組付けられている。
【0019】
上部第1リフレクタ14は、導光体13の上面左側に組付けられ、正面視で一枚の花弁形状の上半分の外観を有しており、前面側に複数の凹凸状の反射面を有している。また、上部第2リフレクタ15及び上部第3リフレクタ16は、前記上部第1リフレクタ14と同一形状及び同一構成の反射面を有しており、導光体13の上面中央及び上面右側に組付けられている。
【0020】
下部第1リフレクタ17は、上部第1リフレクタ14に対応した導光体13の下面左側に組付けられ、正面視で花弁形状の外観を有しており、前面側に複数の凹凸状の反射面を有している。
また、下部第2リフレクタ18及び下部第3リフレクタ19は、前記下部第1リフレクタ17と同一形状及び同一構成の反射面を有しており、上部第2リフレクタ15及び上部第3リフレクタ16に対応した導光体13の下面中央及び下面右側に組付けられている。したがって、全体的には、正面視で3個の花弁形状のリフレクタが導光体13の後方に組付けられているように観える。
【0021】
図2及び図3に示すように、導光体13は、LED11の光軸上に沿って配置され、LED11側の後端部に入射部26と、先端部に出射部27と、入射部26から出射部27に向かって放射状に拡がる板状導光部21とを有している。即ち、入射部26から出射部27にわたって導光体13の板面29の横幅が放射状に拡幅されている。
また、導光体13は、板状導光部21の後方側上面に第1反射部22及び第2反射部23と、後方側下面に第3反射部24及び第4反射部25(図4参照)とを有している。この第1反射部22、第2反射部23、第3反射部24及び第4反射部25は、板状導光部21の横幅方向に直線的に設けられている。
【0022】
導光体13の入射部26は、出射部27を均一発光させるために凹面形状の入射光制御面になっている。ここで云う凹面形状とは、例えば、略円弧面や略楕円面状や略放物面状に形成されていることである。また、出射部27には、複数の凹凸状のステップ28が光軸Axを中心に左右対称に形成されている。
【0023】
図4に示すように、第1反射部22は、板状導光部21の上面側板面29に略45度の傾斜角度を有して形成されている。第2反射部23は、同じ上面側板面29の第1反射部22の後方側に、略45度の傾斜角度を有して形成されている。
また、第3反射部24は、板状導光部21の下面側板面29で第1反射部22よりも出射部27側に、略45度の傾斜角度を有して形成されている。第4反射部25は、同じ下面側板面29の第3反射部24の後方で第1反射部22と第2反射部23との間に、約45度の傾斜角度を有して形成されている。
【0024】
したがって、前方の出射部27側から下面側の第3反射部24、上面側の第1反射部22、下面側の第4反射部25及び上面側の第2反射部23の順に上下板面29で交互に形成されている。これにより、板状導光部21の板厚は、第2反射部23部分から入射部26側が最も肉厚で、第4反射部25から第1反射部22の順に段階的に肉薄になる。そして、第3反射部24部分から出射部27側が最も肉薄になるような段々形状に形成されている。
また、入射部26は、LED12側に凸形状をしている。入射部26から入射した入射光は、凸形状によって板状導光部21内で平行光となり、各反射部22〜25で板状導光部21内側の直角方向に全反射される。
【0025】
次に、車両用灯具10の光学的特性について説明する。
図3及び図4に示すように、通電回路の駆動によりLED12が発光されると、LED12の光が導光体13の入射部26に入射される。入射部26に入射されたLED12の光の内、板状導光部21の中心部分を通る光α1は、扇形状に伴って入射部26から出射部27へ向けて徐々に拡散されながら導光され、出射部27のステップ28によって灯具照射方向へ向けて拡散照射される。このとき、入射光制御面である入射部26によって出射部27は横帯状に均一発光される。
【0026】
入射部26に入射されたLED12の光の内、入射部26で屈折されて第1反射部22へ向けて導光された光α2は、第1反射部22で内面反射してから、下部第1リフレクタ17、下部第2リフレクタ18及び下部第3リフレクタ19へ向けて反射される。
同様に、入射部26で屈折されて第2反射部23へ向けて導光された光α3は、第2反射部23で内面反射してから、下部第1リフレクタ17、下部第2リフレクタ18及び下部第3リフレクタ19へ向けて反射される。
【0027】
そして、反射光α2及び反射光α3は、下部第1リフレクタ17、下部第2リフレクタ18及び下部第3リフレクタ19で更に反射されて、灯具照射方向へ向けて拡散照射される。このとき、内面反射する第1反射部22及び第2反射部23部分で疑似発光部が形成される。
【0028】
また、入射部26に入射されたLED12の光の内、入射部26で屈折されて第3反射部24へ向けて導光された光α4は、第3反射部24で内面反射してから、上部第1リフレクタ14、上部第2リフレクタ15及び上部第3リフレクタ16へ向けて反射される。
同様に、入射部26で屈折されて第4反射部25へ向けて導光された光α5は、第4反射部25で内面反射してから、上部第1リフレクタ14、上部第2リフレクタ15及び上部第3リフレクタ16へ向けて反射される。
【0029】
そして、反射光α4及び反射光α5は、上部第1リフレクタ14、上部第2リフレクタ15及び上部第3リフレクタ16で更に反射されて、灯具照射方向へ向けて拡散照射される。このとき、内面反射する第3反射部24及び第4反射部25部分で疑似発光部が形成される。
【0030】
図5に示すように、導光体14の入射部26は、出射部27を均一発光させるために凹面形状の入射光制御面30になっている。具体的には、光軸Axを基準に外側方向に向って出射角θ1の等間隔で入射光制御面30に入射する3本の入射光α1、α2、α3を一例に挙げて説明する。
【0031】
入射光α1は、出射光量の比較的多い光軸Ax近傍の中心領域を通過する出射角θ1の入射光であり、図中破線で示した仮想入射光に対して光軸Axから離れる拡散方向に屈折角θ2だけ屈折する。入射光α2は、入射光α1を基準に出射角θ1の中間領域を通過する入射光である。
なお、LED12の種類によって異なるが、光軸Ax上の光量を100とすると、ここで云う中心領域とは、光量が約100〜70の範囲であり、中間領域とは、光量が約70〜40の範囲である。また、後述する外側領域とは、光量が約40〜10の範囲である。
【0032】
入射光α3は、入射光α2を基準に出射角θ1で、入射光α1、α2よりも出射光量の比較的少ない光軸Axから遠く離れた外側領域を通過する入射光であり、仮想入射光に対して光軸Ax方向(集光方向)に屈折角θ3だけ屈折する。これにより、導光体13内の板幅方向における10区分に区画した各々単位面積b1〜b10当りの通過光量を均一にすることができる。
【0033】
即ち、入射光α1の通過する中心領域を区分b1〜b3、入射光α2の通過する中間領域を区分b4〜b6、入射光α3の通過する外側領域を区分b7〜b10とすると、区分b1〜b10の平均光量は、(入射光α1〜α3の全光量)/10から求められる。この平均光量を基準にして、各区分b1〜b10毎の光量を測定して、各区分b1〜b10毎で平均光量に近似するように入射光制御面30を形成する。これにより、各区分b1〜b10に対応する出射部27からの出射光量を略均一にすることができる。
【0034】
上述した本実施形態の車両用灯具10によれば、導光体13は、灯具照射方向に延び、後端部近傍にLED12からの光を入射する入射部26と、先端部に入射した光の一部を出射する出射部27と、入射した光の一部を内面反射して各リフレクタ14〜19へ向けて出射する反射部22〜25とを有している。また、リフレクタ14〜19は、反射部22〜25の反射方向に対応して配置され、反射部22〜25で反射した反射光α2〜α5を灯具照射方向へ向けて拡散照射される。
したがって、LED12の光は、導光体13の出射部27から灯具照射方向に出射されるとともに、導光体13の反射部22〜25で内面反射してから対応するリフレクタ14〜19へ向けて出射される。これにより、少ない光源数で発光面積を拡大させることができる。
【0035】
また、導光体13は、入射部26から出射部27にわたって板面29の板幅が放射状に拡幅しており、1つの導光体13に対して複数のリフレクタ14〜19が配置されている。
したがって、LED12の光が導光体13の入射部26から各リフレクタ14〜19に対応した位置に形成された導光体13内の反射部22〜25へ向けて放射状に導光される。そして、導光された光α2〜α5は、反射部22〜25で内面反射してから対応する各リフレクタ14〜19へ向けて導光体13の板面29から出射される。これにより、反射部22〜25上に見栄えの良好な擬似発光部を形成することができる。
【0036】
また、LED12の出射方向は、灯具照射方向に向けられ、導光体13は、出射部27が均一発光するように入射部26の凹面形状によって入射光を制御している。
したがって、入射部26の凹面形状が出射部27で均一発光するように、例えば、LED12の光度や指向特性、導光体13の諸寸法等から設定される。これにより、見栄えの良好な出射部27での均一発光を実現することができる。
【0037】
また、導光体13は、反射部22〜25を2つの対向する両板面29上に形成しており、リフレクタ14〜19は、導光体13を挟んで該導光体13の両側に配置されている。
したがって、導光体13の両板面29を有効に使用することで、導光体13の両側に複数のリフレクタ14〜19を配置できるので、少ない光源数で発光面積を一層拡大させることができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
即ち、反射部の配置位置や形状や数、及びリフレクタの配置位置や形状や個数等は、搭載される車両のデザインに応じて適宜変更可能であり、図示したものに限定されることはない。例えば、リフレクタの形状の自由度は高く、正面視で四角形、ひし形、円形等の様々な形状を選択することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…車両用灯具
12…LED(光源)
13…導光体
14…上部第1リフレクタ
15…上部第2リフレクタ
16…上部第3リフレクタ
17…下部第1リフレクタ
18…下部第2リフレクタ
19…下部第3リフレクタ
21…板状導光部
22…第1反射部
23…第2反射部
24…第3反射部
25…第4反射部
26…入射部
27…出射部
29…板面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、板状の導光体と、該導光体の少なくとも一方の板面側に配置されたリフレクタとを備える車両用灯具であって、
前記導光体は、灯具照射方向に延び、後端部近傍に前記光源からの光を入射する入射部と、先端部に入射した光の一部を出射する出射部と、入射した光の一部を内面反射して前記リフレクタへ向けて出射する反射部とを有し、
前記リフレクタは、前記反射部の反射方向に対応して配置され、該反射部で反射した反射光を灯具照射方向へ向けて反射させることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記導光体は、前記入射部から前記出射部にわたって前記板面の板幅が放射状に拡幅しており、1つの該導光体に対して複数の前記リフレクタが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光源の出射方向は、前記灯具照射方向に向けられ、前記導光体は、前記出射部が均一発光するように前記入射部の凹面形状によって入射光を制御していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記導光体は、前記反射部を2つの対向する両板面上に形成しており、前記リフレクタは、前記導光体を挟んで該導光体の両側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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