説明

車両用灯具

【課題】保持部材の削り屑による投影像の乱れを防止する。
【解決手段】車両用灯具1は、基板6に搭載された光源5と、基板6を保持するとともにネジ部材10によってブラケット8に締結固定された保持部材7と、を備える。保持部材7には、ネジ部材10の頭部10aの下面が当接する座面73cの内周縁に、面取り部Rが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ヘッドライト等の車両用灯具として、LED(Light Emitting Diode)等の半導体光源を用いたものが知られている。このような車両用灯具では、半導体光源は基板に搭載された状態で保持部材に保持され、この保持部材はネジ部材によって灯具本体に締結固定されている(例えば、特許文献1参照)。保持部材を固定するネジ部材は、車両駆動時の振動等によって緩むことのないよう強固に締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−205834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車両用灯具では、ネジ部材の締結時に保持部材がネジ部材によって削られてしまう場合があった。
具体的には、図5(a)に示すように、ネジ部材101を締結する過程で保持部材102の座面102aがネジ部材101の頭部101aに押されると、座面102aの内周縁の角部102bが当該座面102aよりも突出する方向へ変形しようとするために、この角部102bが頭部101aに強く摺擦されて削られてしまう。特に、図5(b)に示すように、ネジ部材101の緩みを抑制するために保持部材102の座面102aの面積を小さくして潰し代を設けた場合には、座面102aの内外周縁の角部102bがより大きく変形しようとするために、より多くの量が削られてしまう。
そして、この保持部材102の削り屑が半導体光源の光路へ侵入し、投影像が乱れてしまうことがあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、保持部材の削り屑による投影像の乱れを防止することのできる車両用灯具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、基板に搭載された半導体光源と、前記基板を保持するとともにネジ部材によって灯具本体に締結固定された保持部材と、を備える車両用灯具において、
前記保持部材には、前記ネジ部材の頭部下面が当接する座面の内周縁に、面取り部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具において、
前記座面は隆起しており、
前記面取り部は前記座面の内周縁及び外周縁に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用灯具において、
前記面取り部は円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用灯具において、
前記保持部材は樹脂製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ネジ部材によって灯具本体に締結固定される保持部材には、ネジ部材の頭部下面が当接する座面の内周縁に面取り部が形成されているので、ネジ部材の締結時に保持部材の座面の内周縁が当該座面よりもネジ部材の頭部側へ変形することがない。これにより、保持部材がネジ部材の頭部に削られることを防止することができ、ひいては、削り屑の発生を防止することができる。したがって、削り屑が半導体光源の光路へ侵入することによる投影像の乱れを防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、面取り部は、隆起した座面の内周縁及び外周縁に形成されているので、座面を隆起させて潰し代を設けた場合であっても、ネジ部材の締結時に保持部材の座面の内周縁及び外周縁が当該座面よりもネジ部材の頭部側へ変形することがない。これにより、保持部材がネジ部材の頭部に削られることを防止することができ、ひいては、削り屑の発生を防止することができる。したがって、潰し代を設けてネジ部材の緩みを抑制しつつ、削り屑が半導体光源の光路へ侵入することによる投影像の乱れを防止することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、面取り部は円弧状に形成されているので、当該面取り部を直線上に形成した場合に比べ、座面が変形したときの面取り部での応力集中を緩和させ、当該面取り部の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態における車両用灯具の斜視図である。
【図2】車両用灯具の要部断面図である。
【図3】保持部材の斜視図である。
【図4】(a)保持部材の断面図であり、(b)(a)のA部を拡大した図である。
【図5】従来の保持部材が締結固定された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
<車両用灯具の構成>
図1は、本実施形態における車両用灯具1の斜視図であり、図2は、車両用灯具1の要部断面図である。
図1に示すように、車両用灯具1は、並設された2つの投影レンズ2を備えている。この車両用灯具1は、これら2つの投影レンズ2から投影される光が互いに異なる範囲へ照射されるプロジェクタ型の車両用前照灯であり、本実施形態においては、すれ違いビーム用の車両用前照灯である。
【0016】
図2に示すように、投影レンズ2の後方には、投影レンズ2への所定範囲の光の入射を遮るためのシェード3と、反射面4aを有するリフレクタ4とが配設されている。リフレクタ4の反射面4aは、回転楕円面を基調とした自由曲面であり、当該反射面4aの略第一焦点位置には光源5が配設されている。
このような構成により、光源5から出射された光は、リフレクタ4の反射面4aによって前方へ反射され、このうち所定範囲の光がシェード3によって遮られた後、投影レンズ2を通じて車両前方へ照射される。
【0017】
光源5は、LED(Light Emitting Diode)等の半導体型の発光素子を有する半導体光源であり、基板6に搭載されている。基板6は、保持部材7に保持されており、この保持部材7を介してブラケット8に固定されるとともに配線ケーブル9と接続されている。
【0018】
<保持部材の構成>
図3は、保持部材7の斜視図であり、図4(a)は、保持部材7の断面図であり、図4(b)は、図4(a)のA部を拡大した図である。
図3及び図4(a)に示すように、保持部材7は、左右対称形に形成された樹脂製の部材であり、左右それぞれにおいて基板6と配線ケーブル9とが保持・接続されるように構成されている。また、保持部材7は、側面視略L字状に形成されている。この保持部材7の垂直部分には、配線ケーブル9をそれぞれ保持する2つのケーブルホルダー71が左右に並設されている。一方、保持部材7の水平部分には、底板72と固定板73とが隙間を介在させて上下方向に並設されている。底板72と固定板73との間の隙間は、基板6が挿入される挿入部74となっており、この挿入部74に基板6が挿入されて固定された状態で、底板72が基板6の下面を支持し、固定板73が基板6の上面を押えるように構成されている。また、ケーブルホルダー71,71の両側部には、挿入部74に基板6が挿入されたときに基板6の係合爪61と係合する係合部75が設けられている。
【0019】
固定板73は、底板72よりも左右へ長尺に形成され、その左右両端部には、ネジ部材10が挿通される挿通孔73aが形成されている。挿通孔73aは、基板6が挿入部74に挿入されて係合部75と係合爪61とが係合したときに、基板6に形成された貫通孔6aと中心軸が略一致するように形成されている。このように固定板73の挿通孔73aと基板6の貫通孔6aとの中心軸を略一致させた状態で、ネジ部材10を挿通孔73aと貫通孔6aとに挿通させてブラケット8の雌ネジ部(図示せず)に締結することにより、基板6と保持部材7とがブラケット8に固定される。
【0020】
図4(b)に示すように、挿通孔73aの周縁部には、固定板73の上面が隆起した隆起部73bが設けられている。この隆起部73bの頂面は、ネジ部材10が締結されたときに当該ネジ部材10の頭部10aの下面と当接する座面73cとなっており、つまり、当該座面73cは、固定板73の上面の他の部分よりも隆起している。また、隆起部73bは、ネジ部材10の頭部10aと同程度の外径に形成されている。この隆起部73bは、ネジ部材10の締結時にネジ部材10の頭部10aに押されて締結方向に潰される潰し代を構成しており、座金と同様に機能してネジ部材10の緩みを抑制する。
【0021】
座面73cの内周縁及び外周縁には、面取り部Rが形成されている。この面取り部Rは、隆起部73bの内外周面と座面73cとを滑らかに連結するように、円弧状に形成されている。このような面取り部Rを設けることにより、ネジ部材10が所定のトルクで締結されたときに、当該面取り部Rが変形して座面73cよりもネジ部材10の頭部10a側へ突出することを防止することができる。なお、隆起部73bを設けない場合には、面取り部Rは座面73cの内周縁だけに形成することとしてもよい。
【0022】
<作用・効果>
以上の車両用灯具1によれば、ネジ部材10によってブラケット8に締結固定される保持部材7には、ネジ部材10の頭部10aの下面が当接する座面73cの内周縁に面取り部Rが形成されているので、ネジ部材10の締結時に保持部材7の座面73cの内周縁が当該座面73cよりもネジ部材10の頭部10a側へ変形することがない。これにより、保持部材7がネジ部材10の頭部10aに削られることを防止することができ、ひいては、削り屑の発生を防止することができる。したがって、削り屑が光源5の光路へ侵入することによる投影像の乱れを防止することができる。
【0023】
また、面取り部Rは座面73cの内周縁に加えて外周縁にも形成されているので、座面73cを隆起させて潰し代(隆起部73b)を設けた場合であっても、ネジ部材10の締結時に保持部材7の座面73cの内周縁及び外周縁が当該座面73cよりもネジ部材10の頭部10a側へ変形することがない。これにより、保持部材7がネジ部材10の頭部10aに削られることを防止することができ、ひいては、削り屑の発生を防止することができる。したがって、潰し代を設けてネジ部材10の緩みを抑制しつつ、削り屑が光源5の光路へ侵入することによる投影像の乱れを防止することができる。
【0024】
また、面取り部Rは円弧状に形成されているので、当該面取り部Rを直線上に形成した場合に比べ、座面73cが変形したときの面取り部Rでの応力集中を緩和させ、当該面取り部Rの変形を抑制することができる。
更に、面取り部Rは、隆起部73bの内外周面と座面73cとを滑らかに連結するように形成されているので、当該面取り部Rでの応力集中を一層緩和させることができ、当該面取り部Rの変形を更に抑制することができる。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【0026】
例えば、上記実施形態では、座面73cの内周縁及び外周縁に形成された面取り部Rを円弧状のものとしたが、ネジ部材10が所定のトルクで締結されたときに座面73cよりもネジ部材10の頭部10a側へ突出しない形状であれば、直線状などの他の形状のものでもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 車両用灯具
5 光源(半導体光源)
6 基板
6a 貫通孔
7 保持部材
8 ブラケット(灯具本体)
10 ネジ部材
10a 頭部
73c 座面
R 面取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載された半導体光源と、前記基板を保持するとともにネジ部材によって灯具本体に締結固定された保持部材と、を備える車両用灯具において、
前記保持部材には、前記ネジ部材の頭部下面が当接する座面の内周縁に、面取り部が形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記座面は隆起しており、
前記面取り部は前記座面の内周縁及び外周縁に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記面取り部は円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記保持部材は樹脂製であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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