説明

車両用灯具

【課題】 ヒートパイプを用いる場合にも、ヒートパイプの固定用部品を不要とし、振動や衝撃に強く、ヒートシンクまで熱が移動する間にも熱を効果的に分散(放熱)することの可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】 LED光源11と、LED光源11からの光を反射する反射面12aを備えたリフレクタ12と、LED光源11からの熱を放熱するヒートパイプ13とを有しており、ヒートパイプ13は、リフレクタ12内(樹脂からなるリフレクタ本体内)に埋設されて固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両における、ヘッドランプ(ロウビームランプ、ハイビームランプ、スモールランプ(ポジションランプ)、ターンシグナルランプ)、リアコンビネーションランプ、フォグランプなどの車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
LED光源と、LED光源からの光を反射する反射面を備えたリフレクタと、LED光源からの熱を放熱する熱伝導性部材とを有する車両用灯具として、従来、例えば特許文献1、特許文献2に示されているようなものが知られている。
【0003】
図1は特許文献1、特許文献2に示されているような従来の車両用灯具の一例を示す正面図である。図1の車両用灯具は、ヘッドランプの例であって、ロウビームL1,L2用灯具と、ハイビームH用灯具とを有している。
【0004】
図2は図1のA−A線における断面図であり(すなわち、図1のロウビームL1用灯具の断面図であり)、図2を参照すると、この車両用灯具(図1のロウビームL1用灯具)は、LED光源1と、LED光源1からの光を反射する反射面2aを備えたリフレクタ2と、LED光源1からの熱を放熱する熱伝導性部材としてのヒートパイプ3とを有している。なお、図1、図2において、符号7はハウジング、符号4、5は、それぞれ、リフレクタ2で反射されたLED光源1からの光を外部へ出射するための(ロウビームL1として出射するための)インナーレンズ(inner lens)、アウターレンズ(outer lens)、符号6はヒートシンクである。ヒートシンク6は、一般に、ベース板と、放熱フィンとから構成されている。また、図2において、符号XはLED光源1からの光である。
【0005】
ここで、ヒートパイプ3は、例えば銅などの金属で形成されており、一般に図3に示すように、所定の長さLGを有し、内部3aに毛細管構造を備えて所定の液体(例えば水や代替フロンなど)が封入されている。そして、図2のような構成では、ヒートパイプ3は、LED光源1で発生した熱を、内部3aに封入されている所定の液体の気化によって、ヒートシンク6まで伝え、ヒートシンク6では、ヒートパイプ3によって伝えられた熱を外部に放熱するようになっている。これにより、LED光源1で発生した熱がLED光源1の周辺に蓄積されることなく、LED光源1を適切な温度環境下で使用することが可能となる。
【0006】
ところで、従来では、ヒートパイプ3は、リフレクタ2やブラケット部品(支持用の部品)などの部品にネジで取り付けられていた(固定されていた)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−127782号公報
【特許文献2】特開2006−164967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来では、ヒートパイプ3の取り付け(固定)には、ネジなどの固定用部品を使用していたので、部品数、重量ともに多く、コストも多くなるという問題があった。特に、LED光源1からヒートシンク6までの距離が遠い場合、ブラケット部品も大きくなり、ランプサイズが大型化したり、重量やコストが増大する要因となっていた。
【0009】
また、ヒートパイプ3は、リフレクタ2やブラケット部品(支持用の部品)などの部品にネジで取り付けられていた(固定されていた)ので、車両の揺れなどに伴い、ヒートパイプ3が振動したり、衝撃を受けたりし、ヒートパイプ3やヒートシンク6が破損しやすいなどの問題もあった。
【0010】
さらに、従来では、ヒートパイプ3は、熱伝導率が低い空気層に覆われているため、放熱性が低くなるという問題もあった。
【0011】
本発明は、LED光源と、LED光源からの光を反射する反射面を備えたリフレクタと、LED光源からの熱を放熱する熱伝導性部材(例えばヒートパイプ)とを有する車両用灯具において、熱伝導性部材(例えばヒートパイプ)を用いる場合にも、熱伝導性部材の固定用部品を不要とし、振動や衝撃に強く、ヒートシンクまで熱が移動する間にも熱を効果的に分散(放熱)することの可能な車両用灯具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、LED光源と、LED光源からの光を反射する反射面を備えたリフレクタと、LED光源からの熱を放熱する熱伝導性部材とを有する車両用灯具であって、前記熱伝導性部材の少なくとも一部は、前記リフレクタ自体に直接支持されていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用灯具において、前記熱伝導性部材の少なくとも一部は、前記リフレクタ内に埋設されて固定されていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の車両用灯具において、前記リフレクタの前記反射面とは反対側の背面には、前記熱伝導性部材が埋設されている前記リフレクタの部分と最も近接した箇所に、放熱を促す構造が形成されていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の車両用灯具において、前記熱伝導性部材の少なくとも一部は、前記リフレクタの前記反射面とは反対側の背面に密着されて固定されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用灯具において、前記熱伝導性部材は、前記LED光源から上方に延びていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の車両用灯具において、前記熱伝導性部材は、ヒートパイプであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1乃至請求項6記載の発明によれば、LED光源と、LED光源からの光を反射する反射面を備えたリフレクタと、LED光源からの熱を放熱する熱伝導性部材とを有する車両用灯具であって、前記熱伝導性部材の少なくとも一部は、前記リフレクタ自体に直接支持されているので、熱伝導性部材(例えばヒートパイプ)を用いる場合にも、熱伝導性部材の固定用部品(ネジなど)を不要とし、振動や衝撃に強く、ヒートシンクまで熱が移動する間にも熱を効果的に分散(放熱)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の車両用灯具の一例を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】ヒートパイプを説明するための図である。
【図4】本発明の車両用灯具の一例を示す正面図である。
【図5】図4のA−A線における断面図である。
【図6】図5のB−B線における(図4の紙面と平行な)車両用灯具の断面(部分概略断面)の一例を示す図である。
【図7】分岐のないヒートパイプの例を示す図である。
【図8】分岐のあるヒートパイプの例を示す図である。
【図9】図8に示すような分岐のあるヒートパイプを用いたときの、図5のB−B線における(図4の紙面と平行な)車両用灯具の断面(部分概略断面)の一例を示す図である。
【図10】ヒートパイプがリフレクタの反射面とは反対側の背面に密着されて固定されている場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図4は本発明の車両用灯具の一例を示す正面図である。図4の車両用灯具は、ヘッドランプの例であって、ロウビームL1,L2用灯具と、ハイビームH用灯具とを有している。
【0022】
図5は図4のA−A線における断面図であり(すなわち、図4のロウビームL1用灯具の断面図であり)、図5を参照すると、この車両用灯具(図4のロウビームL1用灯具)は、LED光源11と、LED光源11からの光を反射する反射面12aを備えたリフレクタ12と、LED光源11からの熱を放熱する熱伝導性部材13とを有している。なお、図5において、符号17はハウジング、符号14、15は、それぞれ、リフレクタ12で反射されたLED光源11からの光を外部へ出射するための(ロウビームL1として出射するための)インナーレンズ(inner lens)、アウターレンズ(outer lens)、符号16はヒートシンクである。ヒートシンク16は、一般に、ベース板と、放熱フィンとから構成されている。また、図5において、符号XはLED光源11からの光である。
【0023】
ここで、熱伝導性部材13には、前述したヒートパイプを用いることができる。以下では、熱伝導性部材13がヒートパイプであるとして説明する。ここで、ヒートパイプは、例えば銅などの金属で形成されており、一般に図3に示したように、所定の長さLGを有し、内部に毛細管構造を備えて所定の液体(例えば水や代替フロンなど)が封入されている。
【0024】
また、リフレクタ12は、リフレクタ本体が樹脂(例えば、ABS、PP、PC、PBT、PEI、PESなどの樹脂)で成形されており、リフレクタ本体の一方の表面に例えばアルミニウム(Al)などが蒸着されて反射面12aが形成されている。
【0025】
ところで、本発明では、ヒートパイプ13は、ネジなどの部品を用いてリフレクタ12などに支持されてはおらず、リフレクタ12自体に直接支持されている。
【0026】
具体的に、図5の例では、ヒートパイプ13は、リフレクタ12内(樹脂からなるリフレクタ本体内)に埋設されて固定されている。なお、ヒートパイプ13のリフレクタ12内への埋設(固定)は、リフレクタ12を形成する際に、リフレクタ12を構成する樹脂をインサート成形することによって行うことができる。
【0027】
図6には、図5のB−B線における(図4の紙面と平行な)車両用灯具の断面(部分概略断面)の一例が示されている。図6を参照すると、図6の例では、ヒートパイプ13には図7に示すような分岐のないヒートパイプ(図3に示したようなヒートパイプ)が用いられている。そして、図6の例では、リフレクタ12の反射面12aとは反対側の背面12bには、ヒートパイプ13が埋設されているリフレクタ12の部分と最も近接した箇所(ヒートパイプ13の真後ろ)に、放熱を促す構造(具体的には、放熱用フィン)18が形成されている。なお、この放熱を促す構造(具体的には、放熱用フィン)18は、リフレクタ本体と同じ樹脂で、リフレクタ本体と一体に形成されている。
【0028】
このような構成では、ヒートパイプ13は、LED光源11で発生した熱を、内部に封入されている所定の液体の気化によって、ヒートシンク16まで伝え、ヒートシンク16では、ヒートパイプ13によって伝えられた熱を外部に放熱するようになっている。そして、上記構成では、ヒートパイプ13は、リフレクタ12内(樹脂からなるリフレクタ本体内)に埋設されて固定されているので、LED光源11で発生した熱を、樹脂からなるリフレクタ本体に放熱しながら、ヒートシンク16まで伝えることができ、これにより、従来に比べて(空気中に放熱しながらヒートシンクまで伝える場合に比べて)、外部への放熱の度合いを高めることができる。すなわち、リフレクタ12自体でも放熱できるので、ヒートシンク16まで熱が移動する間にも、熱を効果的に分散(放熱)することができる。そして、上記構成では、さらに、リフレクタ12の反射面12aとは反対側の背面12bには、ヒートパイプ13が埋設されているリフレクタ12の部分と最も近接した箇所(ヒートパイプ13の真後ろ)に、放熱を促す構造(具体的には、放熱用フィン)18が形成されているので、より一層、外部への放熱を促進することができる。これにより、LED光源11で発生した熱がLED光源11の周辺に蓄積されることなく、LED光源11をより一層適切な温度環境下で使用することが可能となる。
【0029】
また、上記構成では、ヒートパイプ13は、リフレクタ12内(樹脂からなるリフレクタ本体内)に埋設されて固定されているので、ヒートパイプ13の固定用部品(ネジなど)を不要とし、小型化(小スペース化)が可能となる。また、樹脂からなるリフレクタ本体内にヒートパイプ13が包まれているので、振動や衝撃に強く、リフレクタ12の振動だけを気にすれば良い。
【0030】
なお、上述の例では、図7に示すような分岐のないヒートパイプを用い、図6に示すようなリフレクタ12内への埋設を行ったが、ヒートパイプ13として、図8に示すような分岐(図8の例では、3つの分岐13a,13b,13c)のあるヒートパイプを用い、図5のB−B線における(図4のC−C線における)車両用灯具の断面(部分概略断面)として図9に示すようなリフレクタ12内への埋設を行うこともできる。また、この場合、図9に示すように、リフレクタ12の反射面12aとは反対側の背面12bには、各分岐13a,13b,13cの真後ろに、放熱を促す構造(具体的には、放熱用フィン)18a,18b,18cを形成することができる。なお、この放熱を促す構造(具体的には、放熱用フィン)18a,18b,18cは、リフレクタ本体と同じ樹脂で、リフレクタ本体と一体に形成できる。
【0031】
このように、分岐(図8の例では、3つの分岐13a,13b,13c)のあるヒートパイプを用い、また、各分岐13a,13b,13cの真後ろに、放熱を促す構造(具体的には、放熱用フィン)18a,18b,18cを形成する場合には、より一層放熱を促進することができる。
【0032】
また、上述の各例では、ヒートパイプ13は、リフレクタ12内(樹脂からなるリフレクタ本体内)に埋設されて固定されているとしたが、リフレクタ12自体に直接支持されていれば良く、例えば図10に示すように、リフレクタ12の反射面12aとは反対側の背面12bに密着されて固定されていてもよい。ただし、強度や放熱の観点から、ヒートパイプ13は、リフレクタ12内(樹脂からなるリフレクタ本体内)に埋設されて固定されているのが最も望ましい。
【0033】
また、上述の各例では、ヒートパイプ13のほぼ全部がリフレクタ12自体に直接支持されている(例えば、リフレクタ12内に埋設されて固定されている)としたが、ヒートパイプ13が部分的にリフレクタ12自体に直接支持されていてもよい(例えば、ヒートパイプ13が部分的にリフレクタ12内に埋設されて固定されていてもよい)。すなわち、ヒートパイプ13の少なくとも一部がリフレクタ12自体に直接支持されていればよい(例えば、ヒートパイプ13の少なくとも一部がリフレクタ12内に埋設されて固定されていればよい)。ただし、強度や放熱の観点から、ヒートパイプ13は、そのほぼ全部がリフレクタ12自体に直接支持されているのが好ましい(例えば、ヒートパイプ13のほぼ全部がリフレクタ12内に埋設されて固定されているのが好ましい)。
【0034】
また、上述の各例では、熱伝導性部材13がヒートパイプであるとしたが、LED光源11で発生した熱をヒートシンク16まで伝える熱伝導機能を有するものであれば、ヒートパイプ以外のものを用いることもできる。
【0035】
また、上述の各例では、例えば図5に示すように、LED光源11から熱伝導性部材(上述の各例では、ヒートパイプ)13が上方に延びているが(LED光源11がヒートシンク16よりも下方に配置されているが)、これとは逆に、LED光源11から熱伝導性部材(上述の各例では、ヒートパイプ)13が下方に延びていてもよい(LED光源11がヒートシンク16よりも上方に配置されていてもよい)。ただし、熱が下から上に移動することを考慮すると、例えば図5に示すように、LED光源11から熱伝導性部材(上述の各例では、ヒートパイプ)13が上方に延びているのが好ましい(LED光源11がヒートシンク16よりも下方に配置されているのが好ましい)。
【0036】
また、上述の各例では、図4の車両用灯具において、ロウビームL1用灯具に着目して説明したが、ロウビームL1用灯具以外の灯具、例えばロウビームL2用灯具やハイビームH用灯具、さらには、LED光源を使用する任意の車両用灯具(例えば、スモールランプ(ポジションランプ)、ターンシグナルランプ、リアコンビネーションランプ、フォグランプなど)にも、同様に、本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、LED光源を使用する車両用灯具に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
11 LED光源
12 リフレクタ
12a リフレクタの反射面
12b リフレクタの背面
13 熱伝導性部材(ヒートパイプ)
14 インナーレンズ(inner lens)
15 アウターレンズ(outer lens)
16 ヒートシンク
18 放熱を促す構造(放熱用フィン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED光源と、LED光源からの光を反射する反射面を備えたリフレクタと、LED光源からの熱を放熱する熱伝導性部材とを有する車両用灯具であって、前記熱伝導性部材の少なくとも一部は、前記リフレクタ自体に直接支持されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1記載の車両用灯具において、前記熱伝導性部材の少なくとも一部は、前記リフレクタ内に埋設されて固定されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項2記載の車両用灯具において、前記リフレクタの前記反射面とは反対側の背面には、前記熱伝導性部材が埋設されている前記リフレクタの部分と最も近接した箇所に、放熱を促す構造が形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
請求項1記載の車両用灯具において、前記熱伝導性部材の少なくとも一部は、前記リフレクタの前記反射面とは反対側の背面に密着されて固定されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用灯具において、前記熱伝導性部材は、前記LED光源から上方に延びていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の車両用灯具において、前記熱伝導性部材は、ヒートパイプであることを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−81937(P2011−81937A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231251(P2009−231251)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】