車両用灯具
【課題】半導体レーザー光源を用いたときに、当該半導体レーザー光源の実用性を確保しつつ、配光パターンの色ムラを抑制する。
【解決手段】車両用灯具1は、LD11と、LD11から出射された青色光LBを受けて白色光LWを出射させる蛍光体14と、蛍光体14からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面151とを備える。LD11から出射された青色光LBのうち、蛍光体14の表面で正反射された青色光LBRが、反射面151に左右方向に沿って長尺に照射される。
【解決手段】車両用灯具1は、LD11と、LD11から出射された青色光LBを受けて白色光LWを出射させる蛍光体14と、蛍光体14からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面151とを備える。LD11から出射された青色光LBのうち、蛍光体14の表面で正反射された青色光LBRが、反射面151に左右方向に沿って長尺に照射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ヘッドライトなどの車両用灯具として、光源に半導体発光素子と蛍光体を用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の車両用灯具では、半導体発光素子から蛍光体へ励起光(例えば青色光)を照射することによって、蛍光体が励起されて発する光(例えば黄色光)と励起光とを混色させて可視光(例えば白色光)を出射させ、この可視光をリフレクタ等の光学系によって車両前方へ照射している。
【0003】
また、このような車両用灯具においては、より照度の高い照射光を得るために、半導体発光素子として、より輝度の高いレーザー光を出射可能な半導体レーザー光源を用いることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4124445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の車両用灯具において、蛍光体の光取り出し方向から当該蛍光体に励起光を入射させる場合、一部の励起光が蛍光体の表面で正反射されて、所定の色に混色されることなくそのまま灯具外へ出射されてしまうため、投影像である配光パターンに部分的な色ムラが生じてしまう。
【0006】
また、半導体発光素子として半導体レーザー光源を用いた場合、出射されたレーザー光(励起光)のうちの殆どは蛍光体で散乱されてコヒーレント性を消失するものの、上述のように蛍光体の表面で正反射された一部のレーザー光はコヒーレント性を保持したまま灯具外へ出射されてしまうため、そのパワー密度が最大許容露光量(MPE)よりも大きいなどすると、当該半導体レーザー光源の光源としての実用性が損なわれてしまう。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、半導体レーザー光源を用いたときに、当該半導体レーザー光源の実用性を確保しつつ、配光パターンの色ムラを抑制することができる車両用灯具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
半導体レーザー光源と、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を受けて可視光を出射させる蛍光体と、
前記蛍光体からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面と、
を備える車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光のうち、前記蛍光体の表面で正反射されたものが、前記反射面に左右方向に沿って長尺に照射されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を前記蛍光体へ反射させるミラーを備え、
前記反射面は、前記蛍光体の上方を覆うように配設され、
前記ミラーは、前記反射面の前方に配置され、
前記半導体レーザー光源は、
前記ミラーの下方に配置されて上方へ励起光を出射させ、
当該励起光を出射させる発光部が、長尺な形状に形成されるとともに、長手方向よりも短手方向へ大きく広がるように当該励起光を出射させ、
当該発光部の長手方向が前後方向に沿うように配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具において、
前記反射面は、前記蛍光体の上方を覆うように配設され、
前記半導体レーザー光源は、
前記蛍光体の後方に配置されて前方へ励起光を出射させ、
当該励起光を出射させる発光部が、長尺な形状に形成されるとともに、長手方向よりも短手方向へ大きく広がるように当該励起光を出射させ、
当該発光部の長手方向が上下方向に沿うように配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源は、励起光を出射させる発光部が長尺な形状に形成され、
前記半導体レーザー光源から出射される励起光は、前記発光部の長手方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で前記蛍光体に入射することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を前記蛍光体の表面に集光させる集光レンズを備え、
前記集光レンズが球面凸レンズ又は非球面凸レンズであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体レーザー光源から出射された励起光のうち、蛍光体の表面で正反射されたものが、左右方向に沿って長尺に反射面に照射されるので、この正反射された励起光は、反射面によって左右方向へ広く拡散される。したがって、励起光のコヒーレント性を低減させるとともに励起光の色(例えば青色)を薄めつつ、当該励起光を灯具外へ出射させることができるため、半導体レーザー光源の実用性を確保するとともに、配光パターンの色ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一の実施形態における車両用前照灯の正面図である。
【図2】第一の実施形態における車両用灯具の側断面図である。
【図3】第一の実施形態におけるLDの要部の斜視図である。
【図4】第一の実施形態におけるLDの要部の斜視図である。
【図5】第一の実施形態における車両用灯具での光路を説明するための図である。
【図6】第一の実施形態における車両用灯具によって形成される配光パターンを示す図である。
【図7】第一の実施形態における蛍光体の表面で反射された青色光が照射された反射面の正面図である。
【図8】第二の実施形態における車両用灯具の側断面図である。
【図9】第二の実施形態におけるLDの要部の斜視図である。
【図10】第二の実施形態における車両用灯具での光路を説明するための図である。
【図11】第三の実施形態における車両用灯具の側断面図である。
【図12】第三の実施形態における蛍光体の平面図である。
【図13】第三の実施形態における車両用灯具での光路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載を、各実施形態における車両用灯具から見た方向を指すもの、ひいては当該車両用灯具が搭載された車両から見た方向を指すものとして、図面の記載と対応させて用いることとする。
【0016】
[1 第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態における車両用灯具1を備える車両用前照灯100の正面図であり、図2は、車両用灯具1の側断面図である。
図1に示すように、車両用前照灯100は、透光カバー101で前方を覆われた灯室内に複数の車両用灯具1,…を備えており、これら複数の車両用灯具1,…から照射される光によって車両前方に所定の配光パターン(すれ違いビーム)を形成する。
【0017】
図2に示すように、車両用灯具1は、いわゆるプロジェクタ型の灯具であり、レーザーダイオード(以下、LDという)11と、集光レンズ12と、ミラー13と、蛍光体14と、リフレクタ15と、シェード16と、投影レンズ17とを備えている。
【0018】
このうち、LD11は、本発明に係る半導体レーザー光源であり、蛍光体14の励起光としての波長450nmの青色レーザー光を上方へ向けて出射する。このLD11は、図3及び図4に示すように、青色レーザー光を出射させる発光部111が上面に露出しているとともに当該発光部111が長尺な形状に形成されており、この発光部111の長手方向が前後方向に沿うように配置されている。より詳しくは、LD11は、GaN基板等を積層した積層構造となっており、その積層方向が左右方向に沿うように配置されている。このようなLD11から出射される青色レーザー光は、発光部111の長手方向(図3の前後方向)よりも短手方向(図3の左右方向)へ大きく広がるように出射され、本実施形態では、発光部111の長手方向に沿った指向角が10度、短手方向に沿った指向角が30度となっている。また、このLD11から出射される青色レーザー光は、発光部111の長手方向に沿った直線偏光成分を主に有するものとなっている。
【0019】
集光レンズ12は、図2に示すように、LD11の直上に配置され、当該LD11から上方へ出射された青色光(青色レーザー光)を、更に上方に配置されたミラー13を介して、LD11の発光部111と略同形状の集光スポットで蛍光体14の表面(上面)に等方的に集光させる。より詳しくは、集光レンズ12は、LD11からの青色光を、蛍光体14の表面を通じてその厚さ方向の略中心に集光させる。この集光レンズ12は、球面凸レンズ又は非球面凸レンズである。
【0020】
ミラー13は、集光レンズ12の上方に配置されるとともに、下面に形成された平面状の反射面131を有している。反射面131は、集光レンズ12を介してLD11から上方へ出射された青色光を30度の伏角(指向軸の角度)で後方斜め下方へ反射させるように、後方向きに傾斜している。
【0021】
蛍光体14は、ミラー13の後方斜め下方(伏角30度の方向)に位置するように、集光レンズ12の後方斜め上方に配置された金属平板18の上面に凹設されている。この蛍光体14は、YAG(Y3Al5O12:Ce3+)からなる蛍光体セラミックスであり、LD11から出射された青色光を受けることで励起されて黄色光を発する。そのため、蛍光体14が青色光を受けると、当該蛍光体14で散乱した青色光が黄色光と混色される結果、当該蛍光体14から白色光が出射される。
【0022】
また、蛍光体14は、表面(上面)が鏡面状に形成されている。この蛍光体14の表面の面積は、集光レンズ12によって集光される青色光の集光スポットの面積,つまりはLD11の発光部111の面積と略同一となっている。これにより、蛍光体14は、LD11の発光部111と略同サイズの点光源のごとく白色光を出射させる。
【0023】
また、蛍光体14は、LD11から出射されてミラー13で反射された青色光が60度の入射角で表面(上面)に入射するように配置されている。この入射角は、入射面(左右方向に直交する面)に平行なP波成分の反射率が0となるブリュースター角である。
【0024】
蛍光体14を支持する金属平板18の上面は、蛍光体14が配設された凹部の内面を含めて、アルミ蒸着が施された鏡面状に形成されており、蛍光体14から下方へ出射された白色光を上方へ反射させるように構成されている。また、金属平板18の下面には冷却フィン181,…が設けられており、この冷却フィン181,…により蛍光体14の温度上昇が抑制される結果、蛍光体14の温度消光に伴う蛍光強度の低下が抑制される。蛍光体14と金属平板18とは、無機接着剤からなる接合材によって接合されている。但し、この接合材は、熱伝導性や、光透過特性又は光反射特性に優れるものであればよく、低融点ガラスを用いてもよいし、金属ろうを用いて(ろう付で接合して)もよい。
【0025】
リフレクタ15は、下方斜め前方に開口する湾曲板状に形成されて、ミラー13の後方で蛍光体14の上方を覆うように配設されている。このリフレクタ15の下面は、蛍光体14からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面151となっている。
反射面151は、蛍光体14の位置を第1焦点とする回転楕円面が基調とされた自由曲面であり、離心率が鉛直断面から水平断面に向かって徐々に大きくなるように形成されている。この反射面151は、蛍光体14から出射された白色光を、鉛直断面ではシェード16の前端近傍に集光させ、水平断面に向かうにつれて徐々に前方に集光させるように反射させる。
【0026】
シェード16は、金属平板18の前端に一体的に形成された遮光部材である。このシェード16は、リフレクタ15の反射面151で反射された白色光の一部を遮光して、すれ違いビームPのカットオフラインCLを形成する(図6参照)。また、シェード16の上面は、金属平板18の上面と略一致する高さとされるとともに、金属平板18の上面と同様にアルミ蒸着が施された面となっており、反射面151で反射されて当該上面に入射した白色光を前方の投影レンズ17に向けて反射させる。
【0027】
投影レンズ17は、前後方向に沿った光軸Axを有するとともに前面が凸面とされた非球面平凸レンズであり、シェード16及び金属平板18の各上面と蛍光体14とが光軸Ax上に位置するように、リフレクタ15及びシェード16の前方に配置されている。この投影レンズ17は、シェード16の前端近傍に位置する物側焦点を有しており、リフレクタ15の反射面151で反射されて当該投影レンズ17に入射した白色光を車両前方へ反転投影する。
【0028】
続いて、配光パターン(すれ違いビーム)を形成する際の車両用灯具1の動作について説明する。
図5(a),(b)は、車両用灯具1での光路を説明するための図であり、図6は、車両用灯具1によって車両前方の仮想スクリーン上に形成される配光パターンを示す図であり、図7は、蛍光体14の表面で反射された青色光が照射された反射面151の正面図である。
【0029】
車両用灯具1では、LD11が発光状態とされると、図5(a)に示すように、LD11から出射された青色光(青色レーザー光)LBが、集光レンズ12で集光されつつミラー13の反射面131で反射されて、蛍光体14の表面に前方斜め上方から入射する。すると、蛍光体14に入射した青色光LBは、その殆どが白色光LWとされて上方へ放射状に出射される一方、一部の青色光LBRが白色光LWとされないまま蛍光体14の表面(上面)で正反射される。
【0030】
このうち、蛍光体14から上方へ出射された白色光LWは、図5(b)に示すように、リフレクタ15の反射面151で前方へ反射されて投影レンズ17から車両前方へ照射される。このとき、投影レンズ17の下部へ入射する白色光LWの一部がシェード16によって遮光されることにより、図6に示すように、カットオフラインCLより上方への照射光が遮られたすれ違いビームPが形成される。
【0031】
一方、白色光LWとされないまま蛍光体14の表面で正反射された一部の青色光LBRは、図5(a)に示すように、反射面151に入射する。このとき、青色光LBは、前後方向よりも左右方向へ大きく広がるようにLD11の発光部111から出射され、当該発光部111と略同形状の集光スポットとなるように蛍光体14の表面に集光されているため、蛍光体14の表面で正反射された青色光LBRも、前後方向よりも左右方向へ大きく広がりつつ反射面151に入射する。その結果、当該青色光LBRは、図7に示すように、左右方向に沿って長尺に反射面151に照射される。そして、当該青色光LBRは、反射面151により上下方向よりも左右方向へ広く拡散されつつ反射されるため、図6に示すように、すれ違いビームPのうち青色光LBRが照射される照射部分PBRは、左右方向へ広く拡散された領域となる。
【0032】
またこのとき、青色光LBは、前後方向に沿った直線偏光成分を有するものであって、ブリュースター角で蛍光体14の表面に入射するため、蛍光体14の表面での当該直線偏光成分の反射率が低減される結果、当該蛍光体14の表面で正反射される青色光LBRの光量が抑制される。
【0033】
以上のように、車両用灯具1によれば、LD11から出射された青色光LBのうち、蛍光体14の表面で正反射された青色光LBRが、左右方向に沿って長尺に反射面151に照射されるので、当該青色光LBRは反射面151によって左右方向へ広く拡散される。これにより、すれ違いビームPのうち青色光LBRが照射される照射部分PBRは、左右方向へ広く拡散された領域となる。したがって、青色光LBRのコヒーレント性を低減させるとともに青色光LBRの色を薄めつつ、当該青色光LBRを灯具外へ出射させることができるため、LD11の実用性を確保するとともに、配光パターン(すれ違いビームP)の色ムラを抑制することができる。
【0034】
また、LD11から出射される青色光LBが、前後方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で蛍光体14の表面に入射するので、蛍光体14の表面での当該直線偏光成分の反射率が低減される結果、蛍光体14の表面で正反射される青色光LBRの光量が抑制される。したがって、LD11の実用性をより確実に確保するとともに、配光パターンの色ムラを更に抑制することができる。
【0035】
また、LD11から出射された非等方的に分布する青色光LBを等方形状の集光スポットにしつつ蛍光体14の表面に集光させようとすると、集光レンズ12に代えて複数の光学レンズが必要になるところ、LD11の発光部111の形状に対応した長尺な集光スポットで足りるので、一般的な球面凸レンズ又は非球面凸レンズである集光レンズ12のみによって青色光LBを集光させることができ、コストを低減させることができる。
【0036】
[2 第二の実施形態]
続いて、本発明の第二の実施形態について説明する。
【0037】
図8は、本発明の第二の実施形態における車両用灯具2の側断面図である。
この図に示すように、車両用灯具2は、いわゆるプロジェクタ型の灯具であり、LD21と、集光レンズ22と、蛍光体24と、リフレクタ25と、シェード26と、投影レンズ27とを備えている。
【0038】
このうち、LD21は、本発明に係る半導体レーザー光源であり、蛍光体24の励起光としての青色レーザー光を、後述する投影レンズ27の光軸Axに沿って前方へ向けて出射する。このLD21は、発光部211が上記第一の実施形態における発光部111と同様に長尺な形状に形成されているものの、図9に示すように、当該発光部211の長手方向が上下方向に沿うように配置されている。そのため、LD21から出射される青色レーザー光は、上下方向よりも左右方向へ大きく広がるように出射される。また、これらの点以外のLD21の構成は、上記第一の実施形態におけるLD11の構成と同様である。
【0039】
集光レンズ22は、図8に示すように、LD21の直前に配置され、当該LD21から前方へ出射された青色光(青色レーザー光)を、更に前方に配置された蛍光体24の表面(上面)にLD21の発光部211と略同形状の集光スポットで等方的に集光させる。より詳しくは、集光レンズ22は、LD21からの青色光を、蛍光体24の表面を通じてその厚さ方向の略中心に集光させる。この集光レンズ22は、球面凸レンズ又は非球面凸レンズである。
【0040】
蛍光体24は、上記第一の実施形態における蛍光体14と同様の蛍光体セラミックスであり、集光レンズ22の前方に配置されている。この蛍光体24は、表面(上面)が後方向きに傾斜している。また、蛍光体24は、当該蛍光体24と同様に傾斜した金属平板28の上面に支持されている。この金属平板28は、上記第一の実施形態における金属平板18と同様に、上面がアルミ蒸着を施された鏡面状に形成されるとともに、下面に冷却フィン181,…が設けられている。また、これらの点以外の蛍光体24の構成は、上記第一の実施形態における蛍光体14の構成と同様である。
【0041】
リフレクタ25は、上記第一の実施形態におけるリフレクタ15と同様に構成されており、その下面が、蛍光体24からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面251となっている。反射面251は、蛍光体24の位置を第1焦点とする回転楕円面が基調とされた自由曲面であり、蛍光体24から出射された白色光を、鉛直断面ではシェード26の前端近傍に集光させ、水平断面に向かうにつれて徐々に前方に集光させるように反射させる。
【0042】
シェード26は、蛍光体24の前方に配置された遮光部材である。このシェード26は、リフレクタ25の反射面251で反射された白色光の一部を遮光して、すれ違いビームPのカットオフラインCLを形成する(図6参照)。また、シェード26の上面は、金属平板28の上面と同様にアルミ蒸着が施された面となっており、反射面251で反射されて当該上面に入射した白色光を前方の投影レンズ27に向けて反射させる。
【0043】
投影レンズ27は、前後方向に沿った光軸Axを有するとともに前面が凸面とされた非球面平凸レンズであり、シェード26の上面と蛍光体24とが光軸Ax上に位置するように、リフレクタ25及びシェード26の前方に配置されている。この投影レンズ27は、シェード26の前端近傍に位置する物側焦点を有しており、リフレクタ25の反射面251で反射されて当該投影レンズ27に入射した白色光を車両前方へ反転投影する。
【0044】
続いて、配光パターン(すれ違いビーム)を形成する際の車両用灯具2の動作について説明する。
図10(a),(b)は、車両用灯具1での光路を説明するための図である。
【0045】
車両用灯具2では、LD21が発光状態とされると、図10(a)に示すように、LD21から出射された青色光(青色レーザー光)LBが、集光レンズ22で集光されて蛍光体24の表面に後方から入射する。すると、蛍光体24に入射した青色光LBは、その殆どが白色光LWとされて上方へ放射状に出射される一方、一部の青色光LBRが白色光LWとされないまま蛍光体24の表面(上面)で正反射される。
【0046】
このうち、蛍光体24から上方へ出射された白色光LWは、図10(b)に示すように、リフレクタ25の反射面251で前方へ反射されて投影レンズ27から車両前方へ照射される。このとき、投影レンズ27の下部へ入射する白色光LWの一部がシェード26によって遮光されることにより、図6に示すように、カットオフラインCLより上方への照射光が遮られたすれ違いビームPが形成される。
【0047】
一方、白色光LWとされないまま蛍光体24の表面で正反射された一部の青色光LBRは、図10(a)に示すように、反射面251に入射する。このとき、青色光LBは、上下方向よりも左右方向へ大きく広がるようにLD21の発光部211から出射され、当該発光部211と略同形状の集光スポットとなるように蛍光体24の表面に集光されているため、傾斜した蛍光体24の表面で正反射された青色光LBRも、上下方向(前後方向)よりも左右方向へ大きく広がりつつ反射面251に入射する。その結果、当該青色光LBRは、左右方向に沿って長尺に反射面251に照射される。そして、当該青色光LBRは、反射面251により上下方向(前後方向)よりも左右方向へ広く拡散されつつ反射されるため、図6に示すように、すれ違いビームPのうち青色光LBRが照射される照射部分PBRは、左右方向へ広く拡散された領域となる。
【0048】
またこのとき、青色光LBは、発光部211の長手方向が上下方向に沿っていることにより上下方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で蛍光体24の表面に入射するため、蛍光体24の表面での当該直線偏光成分の反射率が低減される。その結果、当該蛍光体24の表面で正反射される青色光LBRの光量が抑制される。
【0049】
以上の車両用灯具2によっても、上記第一の実施形態における車両用灯具1と同様の効果を奏することができる。
【0050】
[3 第三の実施形態]
続いて、本発明の第三の実施形態について説明する。なお、上記第二の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
図11は、本発明の第三の実施形態における車両用灯具3の側断面図であり、図12は、車両用灯具3が備える蛍光体34の平面図である。
図11に示すように、車両用灯具3は、上記第二の実施形態と同様に構成されたLD21と、リフレクタ25と、シェード26と、投影レンズ27とを備える他、集光レンズ32と、2個の発光ダイオード(以下、LEDという)33,33と、蛍光体34とを備えている。
【0052】
集光レンズ32は、LD21の前方に配置され、当該LD21から前方へ出射された青色光(青色レーザー光)を、更に前方に配置された蛍光体34の表面(上面)に等方的に集光させる。より詳しくは、集光レンズ32は、LD21からの青色光を集光させて、蛍光体34の表面のうち略中央部のレーザー照射部分Sに照射させる(図12参照)。集光レンズ32は、その焦点を蛍光体34の表面から前後方向にややずらしており、レーザー照射部分Sが左右方向に長尺な領域となるように青色光を集光させる。このレーザー照射部分Sは、後述するように、蛍光体34の表面のうち、配光パターン(すれ違いビームP)内の高照度領域に白色光を出射させる部分となっている。また、集光レンズ32は、球面凸レンズ又は非球面凸レンズである。
【0053】
2個のLED33,33は、何れも蛍光体34の励起光としての青色光を出射させる1mm角のLEDチップであり、左右方向に0.1mmの間隔を空けて並設されている(図12参照)。このLED33,33は、上面の発光面を後方向きに傾斜させた状態で、集光レンズ32の前方に位置するように金属平板28の上面に配置されている。
【0054】
蛍光体34は、図12に示すように、並設された2個のLED33,33の発光面全体と略同一の大きさ(正面視形状及びその面積)に形成された表面(上面)及び裏面(下面)を有する平板状に形成され、光軸Ax上に位置しつつLED33,33の発光面全体を覆うように当該発光面上に配置されている。そのため、蛍光体34の表面は、LED33,33の発光面に倣って後方向きに傾斜している。この蛍光体34は、LD21及びLED33,33から出射された青色光を受けることで励起されて黄色光を発する蛍光体セラミックスである。また、これらの点以外の蛍光体34の構成は、上記第一の実施形態における蛍光体14の構成と同様である。
【0055】
続いて、配光パターン(すれ違いビーム)を形成する際の車両用灯具3の動作について説明する。
図13(a),(b)は、車両用灯具3での光路を説明するための図である。
【0056】
車両用灯具3では、LD21及びLED33,33が発光状態とされると、図13(a)に示すように、LD21から出射された青色光(青色レーザー光)LBが集光レンズ32で集光されて蛍光体34の表面のレーザー照射部分Sに後方から照射されるとともに、LED33,33の発光面から出射された青色光が蛍光体34の裏面に入射する。
【0057】
これらの光のうち、LED33,33からの青色光は、蛍光体34を通過する過程で白色光とされて、蛍光体34の表面全体から上方へ出射される。
また、LD21からの青色光LBは、殆どが蛍光体34で白色光とされて表面のレーザー照射部分Sから上方へ出射される一方、一部の青色光LBRが白色光とされないまま蛍光体34の表面(上面)で正反射される。
【0058】
このうち、蛍光体34から上方へ出射された全ての白色光は、図13(b)に示すように、リフレクタ25の反射面251で前方へ反射されて投影レンズ27から車両前方へ照射される。このとき、投影レンズ27の下部へ入射する白色光の一部がシェード26によって遮光されることにより、図6に示すように、カットオフラインCLより上方への照射光が遮られたすれ違いビームPが形成される。またこのときには、レーザー光である青色光LBで高輝度化されたレーザー照射部分Sからの白色光が、すれ違いビームP内のカットオフラインCL近傍に照射され、当該カットオフラインCL近傍に図示しない高照度領域が形成される。
【0059】
一方、白色光とされないまま蛍光体34の表面で正反射された一部の青色光LBRは、図13(a)に示すように、反射面251に入射する。このとき、青色光LBは、上下方向よりも左右方向へ大きく広がるようにLD21の発光部211から出射され、集光レンズ32で蛍光体34の表面に等方的に集光されているため、傾斜した蛍光体34の表面で正反射された青色光LBRも、上下方向よりも左右方向へ大きく広がりつつ反射面251に入射する。その結果、当該青色光LBRは、左右方向に沿って長尺に反射面251に照射される。そして、当該青色光LBRは、反射面251により上下方向(前後方向)よりも左右方向へ広く拡散されつつ反射されるため、図6に示すように、すれ違いビームPのうち青色光LBRが照射される照射部分PBRは、左右方向へ広く拡散された領域となる。
【0060】
またこのとき、青色光LBは、上記第二の実施形態と同様に、上下方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で蛍光体34の表面に入射するため、蛍光体34の表面での当該直線偏光成分の反射率が低減される。その結果、当該蛍光体34の表面で正反射される青色光LBRの光量が抑制される。
【0061】
以上のように、車両用灯具3によれば、上記第一の実施形態における車両用灯具1と同様の効果を奏するのは勿論のこと、LED33,33からの青色光による白色光をすれ違いビームPの主配光としつつ、LD21からの青色光LBを受けて高輝度化されたレーザー照射部分Sからの白色光によってすれ違いビームP内の高照度領域を形成することができる。したがって、遠方を照らす高照度領域の照度を高め、遠方視認性を向上させることができる。
【0062】
また、集光レンズ32は、その焦点を蛍光体34の表面からややずらすことにより、レーザー照射部分Sが左右方向に長尺な領域となるように青色光LBを集光させるので、左右方向に長尺な高照度領域を容易に形成することができる。
【0063】
なお、本発明は上記第一〜第三の実施形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【0064】
例えば、上記第一〜第三の実施形態では、車両用灯具1〜3が何れもすれ違いビームPを形成することとしたが、本発明は、走行ビームを形成する車両用灯具においても適用可能である。
【0065】
また、LD11,21及びLED33が青色光を出射し、蛍光体14〜34が当該青色光により黄色光を発することとしたが、これに限定されず、白色光が得られる他の構成(励起光と蛍光体との組合せ)であってもよい。更に、蛍光体14〜34から出射される光は白色光に限定されず、他の色の可視光であってもよい。
【0066】
また、青色光LBは、ブリュースター角である60度の入射角で蛍光体14〜34に入射することとしたが、この入射角は、ブリュースター角に限定されず、直線偏光成分の反射率が±3%の範囲内となる40〜70度の範囲内であればよい。この範囲内の入射角であれば、配光パターンの色ムラを抑制する点で十分な効果を得ることができる。
【0067】
また、青色光LBは、発光部111,211の長手方向に沿った直線偏光成分を「主に」有するものとしたが、具体的には、発光部111,211の短手方向に沿った偏光成分(入射面に垂直なS波成分)に対する当該直線偏光成分(入射面に平行なP波成分)の比率が100以上であることが好ましい。
【0068】
また、蛍光体14〜34の表面(上面)には、青色光LBの波長や入射角に応じた反射防止膜を形成してもよい。これにより、蛍光体14〜34の表面での青色光LBの反射率を更に低減させ、配光パターンの色ムラを更に抑制することができる。
更に、蛍光体14〜34の表面は、鏡面状でなく、当該表面での反射光が指向特性を維持しつつ部分的に散乱されるような凹凸面状であってもよい。このようにすれば、蛍光体14〜34の表面で正反射される青色光LBRが指向特性を維持しつつ部分的に拡散されるため、配光パターンの色ムラを更に抑制することができる。
【0069】
また、上記第一及び第二の実施形態では、集光レンズ12,22が、LD11,21の発光部111,211と略同形状の集光スポットとなるように青色光LBを蛍光体14,24の表面に集光させることとしたが、当該集光レンズ12,22は、その焦点を蛍光体14,24の表面からややずらすことにより、左右方向に長尺な集光スポットとなるように青色光LBを集光させてもよい。このように構成した場合には、左右方向に長尺な配光パターンを容易に形成することができる。
【0070】
また、上記第三の実施形態では、蛍光体34が平板状に形成されることとしたが、当該蛍光体34は、照射される青色光の強度分布によっては色ムラのある白色光を出射させてしまうため、当該青色光の強度分布に応じた厚さ分布を有することが好ましい。この場合、蛍光体34は、裏面から表面までの厚さが、当該蛍光体34に照射される青色光の強度が高い部分ほど厚くなるように形成される。したがって、レーザー照射部分Sでの蛍光体34の厚さは、他の表面部分での蛍光体34の厚さよりも厚いことが好ましい。
【符号の説明】
【0071】
1,2,3 車両用灯具
11,21 LD(半導体レーザー光源)
111,211 発光部
12,22,32 集光レンズ
13 ミラー
14,24,34 蛍光体
S レーザー照射部分
15,25 リフレクタ
151,251 反射面
16,26 シェード
17,27 投影レンズ
Ax 光軸
18,28 金属平板
181 冷却フィン
33 LED
P すれ違いビーム(配光パターン)
CL カットオフライン
PBR 照射部分
LB 青色光(半導体レーザー光源から出射された励起光)
LBR 青色光(蛍光体の表面で正反射された励起光)
LW 白色光(可視光)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ヘッドライトなどの車両用灯具として、光源に半導体発光素子と蛍光体を用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の車両用灯具では、半導体発光素子から蛍光体へ励起光(例えば青色光)を照射することによって、蛍光体が励起されて発する光(例えば黄色光)と励起光とを混色させて可視光(例えば白色光)を出射させ、この可視光をリフレクタ等の光学系によって車両前方へ照射している。
【0003】
また、このような車両用灯具においては、より照度の高い照射光を得るために、半導体発光素子として、より輝度の高いレーザー光を出射可能な半導体レーザー光源を用いることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4124445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の車両用灯具において、蛍光体の光取り出し方向から当該蛍光体に励起光を入射させる場合、一部の励起光が蛍光体の表面で正反射されて、所定の色に混色されることなくそのまま灯具外へ出射されてしまうため、投影像である配光パターンに部分的な色ムラが生じてしまう。
【0006】
また、半導体発光素子として半導体レーザー光源を用いた場合、出射されたレーザー光(励起光)のうちの殆どは蛍光体で散乱されてコヒーレント性を消失するものの、上述のように蛍光体の表面で正反射された一部のレーザー光はコヒーレント性を保持したまま灯具外へ出射されてしまうため、そのパワー密度が最大許容露光量(MPE)よりも大きいなどすると、当該半導体レーザー光源の光源としての実用性が損なわれてしまう。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、半導体レーザー光源を用いたときに、当該半導体レーザー光源の実用性を確保しつつ、配光パターンの色ムラを抑制することができる車両用灯具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
半導体レーザー光源と、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を受けて可視光を出射させる蛍光体と、
前記蛍光体からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面と、
を備える車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光のうち、前記蛍光体の表面で正反射されたものが、前記反射面に左右方向に沿って長尺に照射されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を前記蛍光体へ反射させるミラーを備え、
前記反射面は、前記蛍光体の上方を覆うように配設され、
前記ミラーは、前記反射面の前方に配置され、
前記半導体レーザー光源は、
前記ミラーの下方に配置されて上方へ励起光を出射させ、
当該励起光を出射させる発光部が、長尺な形状に形成されるとともに、長手方向よりも短手方向へ大きく広がるように当該励起光を出射させ、
当該発光部の長手方向が前後方向に沿うように配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具において、
前記反射面は、前記蛍光体の上方を覆うように配設され、
前記半導体レーザー光源は、
前記蛍光体の後方に配置されて前方へ励起光を出射させ、
当該励起光を出射させる発光部が、長尺な形状に形成されるとともに、長手方向よりも短手方向へ大きく広がるように当該励起光を出射させ、
当該発光部の長手方向が上下方向に沿うように配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源は、励起光を出射させる発光部が長尺な形状に形成され、
前記半導体レーザー光源から出射される励起光は、前記発光部の長手方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で前記蛍光体に入射することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を前記蛍光体の表面に集光させる集光レンズを備え、
前記集光レンズが球面凸レンズ又は非球面凸レンズであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体レーザー光源から出射された励起光のうち、蛍光体の表面で正反射されたものが、左右方向に沿って長尺に反射面に照射されるので、この正反射された励起光は、反射面によって左右方向へ広く拡散される。したがって、励起光のコヒーレント性を低減させるとともに励起光の色(例えば青色)を薄めつつ、当該励起光を灯具外へ出射させることができるため、半導体レーザー光源の実用性を確保するとともに、配光パターンの色ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一の実施形態における車両用前照灯の正面図である。
【図2】第一の実施形態における車両用灯具の側断面図である。
【図3】第一の実施形態におけるLDの要部の斜視図である。
【図4】第一の実施形態におけるLDの要部の斜視図である。
【図5】第一の実施形態における車両用灯具での光路を説明するための図である。
【図6】第一の実施形態における車両用灯具によって形成される配光パターンを示す図である。
【図7】第一の実施形態における蛍光体の表面で反射された青色光が照射された反射面の正面図である。
【図8】第二の実施形態における車両用灯具の側断面図である。
【図9】第二の実施形態におけるLDの要部の斜視図である。
【図10】第二の実施形態における車両用灯具での光路を説明するための図である。
【図11】第三の実施形態における車両用灯具の側断面図である。
【図12】第三の実施形態における蛍光体の平面図である。
【図13】第三の実施形態における車両用灯具での光路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載を、各実施形態における車両用灯具から見た方向を指すもの、ひいては当該車両用灯具が搭載された車両から見た方向を指すものとして、図面の記載と対応させて用いることとする。
【0016】
[1 第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態における車両用灯具1を備える車両用前照灯100の正面図であり、図2は、車両用灯具1の側断面図である。
図1に示すように、車両用前照灯100は、透光カバー101で前方を覆われた灯室内に複数の車両用灯具1,…を備えており、これら複数の車両用灯具1,…から照射される光によって車両前方に所定の配光パターン(すれ違いビーム)を形成する。
【0017】
図2に示すように、車両用灯具1は、いわゆるプロジェクタ型の灯具であり、レーザーダイオード(以下、LDという)11と、集光レンズ12と、ミラー13と、蛍光体14と、リフレクタ15と、シェード16と、投影レンズ17とを備えている。
【0018】
このうち、LD11は、本発明に係る半導体レーザー光源であり、蛍光体14の励起光としての波長450nmの青色レーザー光を上方へ向けて出射する。このLD11は、図3及び図4に示すように、青色レーザー光を出射させる発光部111が上面に露出しているとともに当該発光部111が長尺な形状に形成されており、この発光部111の長手方向が前後方向に沿うように配置されている。より詳しくは、LD11は、GaN基板等を積層した積層構造となっており、その積層方向が左右方向に沿うように配置されている。このようなLD11から出射される青色レーザー光は、発光部111の長手方向(図3の前後方向)よりも短手方向(図3の左右方向)へ大きく広がるように出射され、本実施形態では、発光部111の長手方向に沿った指向角が10度、短手方向に沿った指向角が30度となっている。また、このLD11から出射される青色レーザー光は、発光部111の長手方向に沿った直線偏光成分を主に有するものとなっている。
【0019】
集光レンズ12は、図2に示すように、LD11の直上に配置され、当該LD11から上方へ出射された青色光(青色レーザー光)を、更に上方に配置されたミラー13を介して、LD11の発光部111と略同形状の集光スポットで蛍光体14の表面(上面)に等方的に集光させる。より詳しくは、集光レンズ12は、LD11からの青色光を、蛍光体14の表面を通じてその厚さ方向の略中心に集光させる。この集光レンズ12は、球面凸レンズ又は非球面凸レンズである。
【0020】
ミラー13は、集光レンズ12の上方に配置されるとともに、下面に形成された平面状の反射面131を有している。反射面131は、集光レンズ12を介してLD11から上方へ出射された青色光を30度の伏角(指向軸の角度)で後方斜め下方へ反射させるように、後方向きに傾斜している。
【0021】
蛍光体14は、ミラー13の後方斜め下方(伏角30度の方向)に位置するように、集光レンズ12の後方斜め上方に配置された金属平板18の上面に凹設されている。この蛍光体14は、YAG(Y3Al5O12:Ce3+)からなる蛍光体セラミックスであり、LD11から出射された青色光を受けることで励起されて黄色光を発する。そのため、蛍光体14が青色光を受けると、当該蛍光体14で散乱した青色光が黄色光と混色される結果、当該蛍光体14から白色光が出射される。
【0022】
また、蛍光体14は、表面(上面)が鏡面状に形成されている。この蛍光体14の表面の面積は、集光レンズ12によって集光される青色光の集光スポットの面積,つまりはLD11の発光部111の面積と略同一となっている。これにより、蛍光体14は、LD11の発光部111と略同サイズの点光源のごとく白色光を出射させる。
【0023】
また、蛍光体14は、LD11から出射されてミラー13で反射された青色光が60度の入射角で表面(上面)に入射するように配置されている。この入射角は、入射面(左右方向に直交する面)に平行なP波成分の反射率が0となるブリュースター角である。
【0024】
蛍光体14を支持する金属平板18の上面は、蛍光体14が配設された凹部の内面を含めて、アルミ蒸着が施された鏡面状に形成されており、蛍光体14から下方へ出射された白色光を上方へ反射させるように構成されている。また、金属平板18の下面には冷却フィン181,…が設けられており、この冷却フィン181,…により蛍光体14の温度上昇が抑制される結果、蛍光体14の温度消光に伴う蛍光強度の低下が抑制される。蛍光体14と金属平板18とは、無機接着剤からなる接合材によって接合されている。但し、この接合材は、熱伝導性や、光透過特性又は光反射特性に優れるものであればよく、低融点ガラスを用いてもよいし、金属ろうを用いて(ろう付で接合して)もよい。
【0025】
リフレクタ15は、下方斜め前方に開口する湾曲板状に形成されて、ミラー13の後方で蛍光体14の上方を覆うように配設されている。このリフレクタ15の下面は、蛍光体14からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面151となっている。
反射面151は、蛍光体14の位置を第1焦点とする回転楕円面が基調とされた自由曲面であり、離心率が鉛直断面から水平断面に向かって徐々に大きくなるように形成されている。この反射面151は、蛍光体14から出射された白色光を、鉛直断面ではシェード16の前端近傍に集光させ、水平断面に向かうにつれて徐々に前方に集光させるように反射させる。
【0026】
シェード16は、金属平板18の前端に一体的に形成された遮光部材である。このシェード16は、リフレクタ15の反射面151で反射された白色光の一部を遮光して、すれ違いビームPのカットオフラインCLを形成する(図6参照)。また、シェード16の上面は、金属平板18の上面と略一致する高さとされるとともに、金属平板18の上面と同様にアルミ蒸着が施された面となっており、反射面151で反射されて当該上面に入射した白色光を前方の投影レンズ17に向けて反射させる。
【0027】
投影レンズ17は、前後方向に沿った光軸Axを有するとともに前面が凸面とされた非球面平凸レンズであり、シェード16及び金属平板18の各上面と蛍光体14とが光軸Ax上に位置するように、リフレクタ15及びシェード16の前方に配置されている。この投影レンズ17は、シェード16の前端近傍に位置する物側焦点を有しており、リフレクタ15の反射面151で反射されて当該投影レンズ17に入射した白色光を車両前方へ反転投影する。
【0028】
続いて、配光パターン(すれ違いビーム)を形成する際の車両用灯具1の動作について説明する。
図5(a),(b)は、車両用灯具1での光路を説明するための図であり、図6は、車両用灯具1によって車両前方の仮想スクリーン上に形成される配光パターンを示す図であり、図7は、蛍光体14の表面で反射された青色光が照射された反射面151の正面図である。
【0029】
車両用灯具1では、LD11が発光状態とされると、図5(a)に示すように、LD11から出射された青色光(青色レーザー光)LBが、集光レンズ12で集光されつつミラー13の反射面131で反射されて、蛍光体14の表面に前方斜め上方から入射する。すると、蛍光体14に入射した青色光LBは、その殆どが白色光LWとされて上方へ放射状に出射される一方、一部の青色光LBRが白色光LWとされないまま蛍光体14の表面(上面)で正反射される。
【0030】
このうち、蛍光体14から上方へ出射された白色光LWは、図5(b)に示すように、リフレクタ15の反射面151で前方へ反射されて投影レンズ17から車両前方へ照射される。このとき、投影レンズ17の下部へ入射する白色光LWの一部がシェード16によって遮光されることにより、図6に示すように、カットオフラインCLより上方への照射光が遮られたすれ違いビームPが形成される。
【0031】
一方、白色光LWとされないまま蛍光体14の表面で正反射された一部の青色光LBRは、図5(a)に示すように、反射面151に入射する。このとき、青色光LBは、前後方向よりも左右方向へ大きく広がるようにLD11の発光部111から出射され、当該発光部111と略同形状の集光スポットとなるように蛍光体14の表面に集光されているため、蛍光体14の表面で正反射された青色光LBRも、前後方向よりも左右方向へ大きく広がりつつ反射面151に入射する。その結果、当該青色光LBRは、図7に示すように、左右方向に沿って長尺に反射面151に照射される。そして、当該青色光LBRは、反射面151により上下方向よりも左右方向へ広く拡散されつつ反射されるため、図6に示すように、すれ違いビームPのうち青色光LBRが照射される照射部分PBRは、左右方向へ広く拡散された領域となる。
【0032】
またこのとき、青色光LBは、前後方向に沿った直線偏光成分を有するものであって、ブリュースター角で蛍光体14の表面に入射するため、蛍光体14の表面での当該直線偏光成分の反射率が低減される結果、当該蛍光体14の表面で正反射される青色光LBRの光量が抑制される。
【0033】
以上のように、車両用灯具1によれば、LD11から出射された青色光LBのうち、蛍光体14の表面で正反射された青色光LBRが、左右方向に沿って長尺に反射面151に照射されるので、当該青色光LBRは反射面151によって左右方向へ広く拡散される。これにより、すれ違いビームPのうち青色光LBRが照射される照射部分PBRは、左右方向へ広く拡散された領域となる。したがって、青色光LBRのコヒーレント性を低減させるとともに青色光LBRの色を薄めつつ、当該青色光LBRを灯具外へ出射させることができるため、LD11の実用性を確保するとともに、配光パターン(すれ違いビームP)の色ムラを抑制することができる。
【0034】
また、LD11から出射される青色光LBが、前後方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で蛍光体14の表面に入射するので、蛍光体14の表面での当該直線偏光成分の反射率が低減される結果、蛍光体14の表面で正反射される青色光LBRの光量が抑制される。したがって、LD11の実用性をより確実に確保するとともに、配光パターンの色ムラを更に抑制することができる。
【0035】
また、LD11から出射された非等方的に分布する青色光LBを等方形状の集光スポットにしつつ蛍光体14の表面に集光させようとすると、集光レンズ12に代えて複数の光学レンズが必要になるところ、LD11の発光部111の形状に対応した長尺な集光スポットで足りるので、一般的な球面凸レンズ又は非球面凸レンズである集光レンズ12のみによって青色光LBを集光させることができ、コストを低減させることができる。
【0036】
[2 第二の実施形態]
続いて、本発明の第二の実施形態について説明する。
【0037】
図8は、本発明の第二の実施形態における車両用灯具2の側断面図である。
この図に示すように、車両用灯具2は、いわゆるプロジェクタ型の灯具であり、LD21と、集光レンズ22と、蛍光体24と、リフレクタ25と、シェード26と、投影レンズ27とを備えている。
【0038】
このうち、LD21は、本発明に係る半導体レーザー光源であり、蛍光体24の励起光としての青色レーザー光を、後述する投影レンズ27の光軸Axに沿って前方へ向けて出射する。このLD21は、発光部211が上記第一の実施形態における発光部111と同様に長尺な形状に形成されているものの、図9に示すように、当該発光部211の長手方向が上下方向に沿うように配置されている。そのため、LD21から出射される青色レーザー光は、上下方向よりも左右方向へ大きく広がるように出射される。また、これらの点以外のLD21の構成は、上記第一の実施形態におけるLD11の構成と同様である。
【0039】
集光レンズ22は、図8に示すように、LD21の直前に配置され、当該LD21から前方へ出射された青色光(青色レーザー光)を、更に前方に配置された蛍光体24の表面(上面)にLD21の発光部211と略同形状の集光スポットで等方的に集光させる。より詳しくは、集光レンズ22は、LD21からの青色光を、蛍光体24の表面を通じてその厚さ方向の略中心に集光させる。この集光レンズ22は、球面凸レンズ又は非球面凸レンズである。
【0040】
蛍光体24は、上記第一の実施形態における蛍光体14と同様の蛍光体セラミックスであり、集光レンズ22の前方に配置されている。この蛍光体24は、表面(上面)が後方向きに傾斜している。また、蛍光体24は、当該蛍光体24と同様に傾斜した金属平板28の上面に支持されている。この金属平板28は、上記第一の実施形態における金属平板18と同様に、上面がアルミ蒸着を施された鏡面状に形成されるとともに、下面に冷却フィン181,…が設けられている。また、これらの点以外の蛍光体24の構成は、上記第一の実施形態における蛍光体14の構成と同様である。
【0041】
リフレクタ25は、上記第一の実施形態におけるリフレクタ15と同様に構成されており、その下面が、蛍光体24からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面251となっている。反射面251は、蛍光体24の位置を第1焦点とする回転楕円面が基調とされた自由曲面であり、蛍光体24から出射された白色光を、鉛直断面ではシェード26の前端近傍に集光させ、水平断面に向かうにつれて徐々に前方に集光させるように反射させる。
【0042】
シェード26は、蛍光体24の前方に配置された遮光部材である。このシェード26は、リフレクタ25の反射面251で反射された白色光の一部を遮光して、すれ違いビームPのカットオフラインCLを形成する(図6参照)。また、シェード26の上面は、金属平板28の上面と同様にアルミ蒸着が施された面となっており、反射面251で反射されて当該上面に入射した白色光を前方の投影レンズ27に向けて反射させる。
【0043】
投影レンズ27は、前後方向に沿った光軸Axを有するとともに前面が凸面とされた非球面平凸レンズであり、シェード26の上面と蛍光体24とが光軸Ax上に位置するように、リフレクタ25及びシェード26の前方に配置されている。この投影レンズ27は、シェード26の前端近傍に位置する物側焦点を有しており、リフレクタ25の反射面251で反射されて当該投影レンズ27に入射した白色光を車両前方へ反転投影する。
【0044】
続いて、配光パターン(すれ違いビーム)を形成する際の車両用灯具2の動作について説明する。
図10(a),(b)は、車両用灯具1での光路を説明するための図である。
【0045】
車両用灯具2では、LD21が発光状態とされると、図10(a)に示すように、LD21から出射された青色光(青色レーザー光)LBが、集光レンズ22で集光されて蛍光体24の表面に後方から入射する。すると、蛍光体24に入射した青色光LBは、その殆どが白色光LWとされて上方へ放射状に出射される一方、一部の青色光LBRが白色光LWとされないまま蛍光体24の表面(上面)で正反射される。
【0046】
このうち、蛍光体24から上方へ出射された白色光LWは、図10(b)に示すように、リフレクタ25の反射面251で前方へ反射されて投影レンズ27から車両前方へ照射される。このとき、投影レンズ27の下部へ入射する白色光LWの一部がシェード26によって遮光されることにより、図6に示すように、カットオフラインCLより上方への照射光が遮られたすれ違いビームPが形成される。
【0047】
一方、白色光LWとされないまま蛍光体24の表面で正反射された一部の青色光LBRは、図10(a)に示すように、反射面251に入射する。このとき、青色光LBは、上下方向よりも左右方向へ大きく広がるようにLD21の発光部211から出射され、当該発光部211と略同形状の集光スポットとなるように蛍光体24の表面に集光されているため、傾斜した蛍光体24の表面で正反射された青色光LBRも、上下方向(前後方向)よりも左右方向へ大きく広がりつつ反射面251に入射する。その結果、当該青色光LBRは、左右方向に沿って長尺に反射面251に照射される。そして、当該青色光LBRは、反射面251により上下方向(前後方向)よりも左右方向へ広く拡散されつつ反射されるため、図6に示すように、すれ違いビームPのうち青色光LBRが照射される照射部分PBRは、左右方向へ広く拡散された領域となる。
【0048】
またこのとき、青色光LBは、発光部211の長手方向が上下方向に沿っていることにより上下方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で蛍光体24の表面に入射するため、蛍光体24の表面での当該直線偏光成分の反射率が低減される。その結果、当該蛍光体24の表面で正反射される青色光LBRの光量が抑制される。
【0049】
以上の車両用灯具2によっても、上記第一の実施形態における車両用灯具1と同様の効果を奏することができる。
【0050】
[3 第三の実施形態]
続いて、本発明の第三の実施形態について説明する。なお、上記第二の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
図11は、本発明の第三の実施形態における車両用灯具3の側断面図であり、図12は、車両用灯具3が備える蛍光体34の平面図である。
図11に示すように、車両用灯具3は、上記第二の実施形態と同様に構成されたLD21と、リフレクタ25と、シェード26と、投影レンズ27とを備える他、集光レンズ32と、2個の発光ダイオード(以下、LEDという)33,33と、蛍光体34とを備えている。
【0052】
集光レンズ32は、LD21の前方に配置され、当該LD21から前方へ出射された青色光(青色レーザー光)を、更に前方に配置された蛍光体34の表面(上面)に等方的に集光させる。より詳しくは、集光レンズ32は、LD21からの青色光を集光させて、蛍光体34の表面のうち略中央部のレーザー照射部分Sに照射させる(図12参照)。集光レンズ32は、その焦点を蛍光体34の表面から前後方向にややずらしており、レーザー照射部分Sが左右方向に長尺な領域となるように青色光を集光させる。このレーザー照射部分Sは、後述するように、蛍光体34の表面のうち、配光パターン(すれ違いビームP)内の高照度領域に白色光を出射させる部分となっている。また、集光レンズ32は、球面凸レンズ又は非球面凸レンズである。
【0053】
2個のLED33,33は、何れも蛍光体34の励起光としての青色光を出射させる1mm角のLEDチップであり、左右方向に0.1mmの間隔を空けて並設されている(図12参照)。このLED33,33は、上面の発光面を後方向きに傾斜させた状態で、集光レンズ32の前方に位置するように金属平板28の上面に配置されている。
【0054】
蛍光体34は、図12に示すように、並設された2個のLED33,33の発光面全体と略同一の大きさ(正面視形状及びその面積)に形成された表面(上面)及び裏面(下面)を有する平板状に形成され、光軸Ax上に位置しつつLED33,33の発光面全体を覆うように当該発光面上に配置されている。そのため、蛍光体34の表面は、LED33,33の発光面に倣って後方向きに傾斜している。この蛍光体34は、LD21及びLED33,33から出射された青色光を受けることで励起されて黄色光を発する蛍光体セラミックスである。また、これらの点以外の蛍光体34の構成は、上記第一の実施形態における蛍光体14の構成と同様である。
【0055】
続いて、配光パターン(すれ違いビーム)を形成する際の車両用灯具3の動作について説明する。
図13(a),(b)は、車両用灯具3での光路を説明するための図である。
【0056】
車両用灯具3では、LD21及びLED33,33が発光状態とされると、図13(a)に示すように、LD21から出射された青色光(青色レーザー光)LBが集光レンズ32で集光されて蛍光体34の表面のレーザー照射部分Sに後方から照射されるとともに、LED33,33の発光面から出射された青色光が蛍光体34の裏面に入射する。
【0057】
これらの光のうち、LED33,33からの青色光は、蛍光体34を通過する過程で白色光とされて、蛍光体34の表面全体から上方へ出射される。
また、LD21からの青色光LBは、殆どが蛍光体34で白色光とされて表面のレーザー照射部分Sから上方へ出射される一方、一部の青色光LBRが白色光とされないまま蛍光体34の表面(上面)で正反射される。
【0058】
このうち、蛍光体34から上方へ出射された全ての白色光は、図13(b)に示すように、リフレクタ25の反射面251で前方へ反射されて投影レンズ27から車両前方へ照射される。このとき、投影レンズ27の下部へ入射する白色光の一部がシェード26によって遮光されることにより、図6に示すように、カットオフラインCLより上方への照射光が遮られたすれ違いビームPが形成される。またこのときには、レーザー光である青色光LBで高輝度化されたレーザー照射部分Sからの白色光が、すれ違いビームP内のカットオフラインCL近傍に照射され、当該カットオフラインCL近傍に図示しない高照度領域が形成される。
【0059】
一方、白色光とされないまま蛍光体34の表面で正反射された一部の青色光LBRは、図13(a)に示すように、反射面251に入射する。このとき、青色光LBは、上下方向よりも左右方向へ大きく広がるようにLD21の発光部211から出射され、集光レンズ32で蛍光体34の表面に等方的に集光されているため、傾斜した蛍光体34の表面で正反射された青色光LBRも、上下方向よりも左右方向へ大きく広がりつつ反射面251に入射する。その結果、当該青色光LBRは、左右方向に沿って長尺に反射面251に照射される。そして、当該青色光LBRは、反射面251により上下方向(前後方向)よりも左右方向へ広く拡散されつつ反射されるため、図6に示すように、すれ違いビームPのうち青色光LBRが照射される照射部分PBRは、左右方向へ広く拡散された領域となる。
【0060】
またこのとき、青色光LBは、上記第二の実施形態と同様に、上下方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で蛍光体34の表面に入射するため、蛍光体34の表面での当該直線偏光成分の反射率が低減される。その結果、当該蛍光体34の表面で正反射される青色光LBRの光量が抑制される。
【0061】
以上のように、車両用灯具3によれば、上記第一の実施形態における車両用灯具1と同様の効果を奏するのは勿論のこと、LED33,33からの青色光による白色光をすれ違いビームPの主配光としつつ、LD21からの青色光LBを受けて高輝度化されたレーザー照射部分Sからの白色光によってすれ違いビームP内の高照度領域を形成することができる。したがって、遠方を照らす高照度領域の照度を高め、遠方視認性を向上させることができる。
【0062】
また、集光レンズ32は、その焦点を蛍光体34の表面からややずらすことにより、レーザー照射部分Sが左右方向に長尺な領域となるように青色光LBを集光させるので、左右方向に長尺な高照度領域を容易に形成することができる。
【0063】
なお、本発明は上記第一〜第三の実施形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【0064】
例えば、上記第一〜第三の実施形態では、車両用灯具1〜3が何れもすれ違いビームPを形成することとしたが、本発明は、走行ビームを形成する車両用灯具においても適用可能である。
【0065】
また、LD11,21及びLED33が青色光を出射し、蛍光体14〜34が当該青色光により黄色光を発することとしたが、これに限定されず、白色光が得られる他の構成(励起光と蛍光体との組合せ)であってもよい。更に、蛍光体14〜34から出射される光は白色光に限定されず、他の色の可視光であってもよい。
【0066】
また、青色光LBは、ブリュースター角である60度の入射角で蛍光体14〜34に入射することとしたが、この入射角は、ブリュースター角に限定されず、直線偏光成分の反射率が±3%の範囲内となる40〜70度の範囲内であればよい。この範囲内の入射角であれば、配光パターンの色ムラを抑制する点で十分な効果を得ることができる。
【0067】
また、青色光LBは、発光部111,211の長手方向に沿った直線偏光成分を「主に」有するものとしたが、具体的には、発光部111,211の短手方向に沿った偏光成分(入射面に垂直なS波成分)に対する当該直線偏光成分(入射面に平行なP波成分)の比率が100以上であることが好ましい。
【0068】
また、蛍光体14〜34の表面(上面)には、青色光LBの波長や入射角に応じた反射防止膜を形成してもよい。これにより、蛍光体14〜34の表面での青色光LBの反射率を更に低減させ、配光パターンの色ムラを更に抑制することができる。
更に、蛍光体14〜34の表面は、鏡面状でなく、当該表面での反射光が指向特性を維持しつつ部分的に散乱されるような凹凸面状であってもよい。このようにすれば、蛍光体14〜34の表面で正反射される青色光LBRが指向特性を維持しつつ部分的に拡散されるため、配光パターンの色ムラを更に抑制することができる。
【0069】
また、上記第一及び第二の実施形態では、集光レンズ12,22が、LD11,21の発光部111,211と略同形状の集光スポットとなるように青色光LBを蛍光体14,24の表面に集光させることとしたが、当該集光レンズ12,22は、その焦点を蛍光体14,24の表面からややずらすことにより、左右方向に長尺な集光スポットとなるように青色光LBを集光させてもよい。このように構成した場合には、左右方向に長尺な配光パターンを容易に形成することができる。
【0070】
また、上記第三の実施形態では、蛍光体34が平板状に形成されることとしたが、当該蛍光体34は、照射される青色光の強度分布によっては色ムラのある白色光を出射させてしまうため、当該青色光の強度分布に応じた厚さ分布を有することが好ましい。この場合、蛍光体34は、裏面から表面までの厚さが、当該蛍光体34に照射される青色光の強度が高い部分ほど厚くなるように形成される。したがって、レーザー照射部分Sでの蛍光体34の厚さは、他の表面部分での蛍光体34の厚さよりも厚いことが好ましい。
【符号の説明】
【0071】
1,2,3 車両用灯具
11,21 LD(半導体レーザー光源)
111,211 発光部
12,22,32 集光レンズ
13 ミラー
14,24,34 蛍光体
S レーザー照射部分
15,25 リフレクタ
151,251 反射面
16,26 シェード
17,27 投影レンズ
Ax 光軸
18,28 金属平板
181 冷却フィン
33 LED
P すれ違いビーム(配光パターン)
CL カットオフライン
PBR 照射部分
LB 青色光(半導体レーザー光源から出射された励起光)
LBR 青色光(蛍光体の表面で正反射された励起光)
LW 白色光(可視光)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザー光源と、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を受けて可視光を出射させる蛍光体と、
前記蛍光体からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面と、
を備える車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光のうち、前記蛍光体の表面で正反射されたものが、前記反射面に左右方向に沿って長尺に照射されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を前記蛍光体へ反射させるミラーを備え、
前記反射面は、前記蛍光体の上方を覆うように配設され、
前記ミラーは、前記反射面の前方に配置され、
前記半導体レーザー光源は、
前記ミラーの下方に配置されて上方へ励起光を出射させ、
当該励起光を出射させる発光部が、長尺な形状に形成されるとともに、長手方向よりも短手方向へ大きく広がるように当該励起光を出射させ、
当該発光部の長手方向が前後方向に沿うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記反射面は、前記蛍光体の上方を覆うように配設され、
前記半導体レーザー光源は、
前記蛍光体の後方に配置されて前方へ励起光を出射させ、
当該励起光を出射させる発光部が、長尺な形状に形成されるとともに、長手方向よりも短手方向へ大きく広がるように当該励起光を出射させ、
当該発光部の長手方向が上下方向に沿うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記半導体レーザー光源は、励起光を出射させる発光部が長尺な形状に形成され、
前記半導体レーザー光源から出射される励起光は、前記発光部の長手方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で前記蛍光体に入射することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を前記蛍光体の表面に集光させる集光レンズを備え、
前記集光レンズが球面凸レンズ又は非球面凸レンズであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項1】
半導体レーザー光源と、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を受けて可視光を出射させる蛍光体と、
前記蛍光体からの光を上下方向よりも左右方向へ広く拡散させつつ前方へ反射させる反射面と、
を備える車両用灯具において、
前記半導体レーザー光源から出射された励起光のうち、前記蛍光体の表面で正反射されたものが、前記反射面に左右方向に沿って長尺に照射されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を前記蛍光体へ反射させるミラーを備え、
前記反射面は、前記蛍光体の上方を覆うように配設され、
前記ミラーは、前記反射面の前方に配置され、
前記半導体レーザー光源は、
前記ミラーの下方に配置されて上方へ励起光を出射させ、
当該励起光を出射させる発光部が、長尺な形状に形成されるとともに、長手方向よりも短手方向へ大きく広がるように当該励起光を出射させ、
当該発光部の長手方向が前後方向に沿うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記反射面は、前記蛍光体の上方を覆うように配設され、
前記半導体レーザー光源は、
前記蛍光体の後方に配置されて前方へ励起光を出射させ、
当該励起光を出射させる発光部が、長尺な形状に形成されるとともに、長手方向よりも短手方向へ大きく広がるように当該励起光を出射させ、
当該発光部の長手方向が上下方向に沿うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記半導体レーザー光源は、励起光を出射させる発光部が長尺な形状に形成され、
前記半導体レーザー光源から出射される励起光は、前記発光部の長手方向に沿った直線偏光成分を有するとともに、ブリュースター角で前記蛍光体に入射することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記半導体レーザー光源から出射された励起光を前記蛍光体の表面に集光させる集光レンズを備え、
前記集光レンズが球面凸レンズ又は非球面凸レンズであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−243538(P2012−243538A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111958(P2011−111958)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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