説明

車両用照明灯具

【課題】ハイビーム用配光パターンを形成する際、ロービーム用配光パターンに対して付加される付加配光パターンを形成するための車両用照明灯具において、その奥行寸法を小さくした上で付加配光パターンの中心光度を十分高める。
【解決手段】投影レンズ12の後側焦点F近傍における光軸Axの左右両側に、左右1対の発光素子14を前向きに配置し、その発光面14a相互間にミラー部材16を配置する。このミラー部材16は、各発光面14a近傍から前方へ向けて光軸Axと平行な鉛直面に沿って延びる左右1対の反射面16aを有する構成とする。これにより、各発光面14aから投影レンズ12へ向かう光の一部を、各反射面16aで反射させ、両発光面14a間に生成される仮想発光面からの出射光として投影レンズ12に入射させる構成とする。そして、上記付加配光パターンを、左右1対の配光パターンが部分的に重複した配光パターンとして形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ハイビーム用配光パターンを形成する際、ロービーム用配光パターンに対して付加される付加配光パターンを形成するように構成された車両用照明灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、付加配光パターンを形成するための車両用照明灯具として、複数の発光素子を備えた車両用照明灯具が知られている。
【0003】
例えば「特許文献1」には、前向きに配置された複数の発光素子からの直射光を、投影レンズを介して前方へ照射することにより、付加配光パターンを形成するように構成された車両用照明灯具が記載されている。
【0004】
すなわち、この「特許文献1」に記載された車両用照明灯具は、複数の発光素子が、投影レンズの後側焦点面近傍において水平方向に互いに隣接するように配置された構成となっており、これら各発光素子の発光面の反転投影像として形成されるスポット状の配光パターンの合成配光パターンとして付加配光パターンを形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−179969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記「特許文献1」に記載された車両用照明灯具は、複数の発光素子からの直射光を投影レンズを介して前方へ照射するように構成された、いわゆる直射型の灯具として構成されているので、その奥行寸法を小さくすることができる。
【0007】
しかしながら、このような直射型の車両用照明灯具において、複数の発光素子を互いに密着させて配置したとしても、その発光面については、これらを互いに密着させて配置することはできない。したがって、このような車両用照明灯具において、投影レンズの後側焦点面上に左右1対の発光面を配置したとしても、これら左右1対の発光面の反転投影像として形成される左右1対の配光パターンは互いに離間した状態で形成されてしまい、その合成配光パターンとして形成される付加配光パターンには、その左右方向の中央位置に暗部が形成されてしまうこととなる。
【0008】
これに対し、左右1対の発光面を、投影レンズの後側焦点面から前後方向に大きく変位させた状態で配置すれば、各発光面の反転投影像は、その輪郭がぼやけてしまうものの、そのサイズは大きくなるので、このとき形成される左右1対の配光パターンを互いに離間しない状態で形成することが可能となる。
【0009】
しかしながら、このようにした場合には、これら各発光面の反転投影像として形成される各配光パターンは、その中心光度が著しく低下してしまうこととなる。したがって、これら左右1対の配光パターンの合成配光パターンとして形成される付加配光パターンについても、その中心光度を十分高めることはできない、という問題がある。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ハイビーム用配光パターンを形成する際、ロービーム用配光パターンに対して付加される付加配光パターンを形成するように構成された車両用照明灯具において、その奥行寸法を小さくした上で、付加配光パターンの中心光度を十分高めることができる車両用照明灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、左右1対の発光素子を備えた直射型の灯具構成を採用した上で、所定のミラー部材を備えた構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る車両用照明灯具は、
ハイビーム用配光パターンを形成する際、ロービーム用配光パターンに対して付加される付加配光パターンを形成するように構成された車両用照明灯具において、
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、この投影レンズの後側焦点近傍における上記光軸の左右両側に、前向きに配置された左右1対の発光素子と、これら左右1対の発光素子の発光面相互間に配置された状態で、これら各発光面から上記投影レンズへ向かう光の一部を反射させるミラー部材と、を備えてなり、
上記ミラー部材が、上記各発光面近傍から前方へ向けて上記光軸と平行な鉛直面に略沿って延びる左右1対の反射面を有している、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「左右1対の発光素子」は、投影レンズの後側焦点近傍における光軸の左右両側に配置された構成となっているが、これら左右1対の発光素子の発光面相互の間隔の具体的な値は特に限定されるものではない。
【0014】
上記「投影レンズの後側焦点近傍」とは、後側焦点からの前後方向の距離が、投影レンズの焦点距離に対して1/10以下の範囲内にあることを意味するものである。
【0015】
上記各発光素子の「発光面」は、投影レンズの後側焦点面上に位置するように配置されていてもよいし、この後側焦点面から多少前後方向に変位した位置に配置されていてもよく、また、その具体的な大きさや形状は特に限定されるものではない。
【0016】
上記「ミラー部材」は、左右1対の反射面を有する単一の部材として構成されたものであってもよいし、左側の反射面を構成する部分と右側の反射面を構成する部分とが別部材で構成されたものであってもよい。
【0017】
上記「左右1対の反射面」は、それぞれ各発光面近傍から前方へ向けて光軸と平行な鉛直面に略沿って延びるように形成されていれば、両反射面相互間の間隔の具体的な値や、各反射面の具体的な大きさ等は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用照明灯具は、ハイビーム用配光パターンを形成する際、ロービーム用配光パターンに対して付加される付加配光パターンを形成するように構成されているが、この車両用照明灯具は、左右1対の発光素子からの直射光を投影レンズを介して前方へ照射するように構成された直射型の灯具として構成されているので、その奥行寸法を小さくすることができる。
【0019】
その上で、本願発明に係る車両用照明灯具は、投影レンズの後側焦点近傍における光軸の左右両側に、左右1対の発光素子が前向きに配置されるとともに、これら左右1対の発光素子の発光面相互間に、これら各発光面から投影レンズへ向かう光の一部を反射させるミラー部材が配置されており、そして、このミラー部材は、各発光面近傍から前方へ向けて光軸と平行な鉛直面に略沿って延びる左右1対の反射面を有しているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0020】
すなわち、左右1対の発光素子は、その発光面が左右方向に互いに離間した状態で配置されることとなるが、これら各発光面から投影レンズへ向かう光の一部は、ミラー部材の各反射面で反射するので、両反射面相互間に配置された仮想発光面からの出射光として、投影レンズに入射することとなる。
【0021】
その際、この仮想発光面は各発光面毎に生成されることとなるので、これら左右1対の仮想発光面が互いに重複するように、ミラー部材の左右幅および各発光面の左右幅を設定しておくことにより、両発光面および両仮想発光面の反転投影像として形成される左右1対の配光パターンを、互いに部分的に重複した状態で形成することができる。そしてこれにより、これら左右1対の配光パターンの合成配光パターンとして形成される付加配光パターンを、その左右方向の中央位置が最も明るい配光パターンとして形成することができる。
【0022】
しかも、この付加配光パターンを、その中心光度が十分高い配光パターンとして形成することができる。この点について詳述すると以下のとおりである。
【0023】
すなわち、左右1対の発光面は、投影レンズの後側焦点面から前後方向に大きく変位した状態で配置されているわけではないので、仮にミラー部材が存在しないとした場合において、これら各発光面の反転投影像として形成される各配光パターンの中心光度が著しく低下してしまうことはない。
【0024】
実際には、ミラー部材が存在しているので、これら各発光面の反転投影像として形成されるべき各配光パターンは、その一部が左右方向に折り返された新たな配光パターンとして形成されることとなる。したがって、その合成配光パターンとして形成される付加配光パターンは、これら左右1対の新たな配光パターンの一部が互いに重複した配光パターンとして形成されることとなり、これにより付加配光パターンの中心光度を十分高めることができる。
【0025】
このように本願発明によれば、ハイビーム用配光パターンを形成する際、ロービーム用配光パターンに対して付加される付加配光パターンを形成するように構成された車両用照明灯具において、その奥行寸法を小さくした上で、付加配光パターンの中心光度を十分高めることができる。しかも、このような作用効果を、各発光素子からの出射光の光束を無駄にすることなく得ることができる。
【0026】
上記構成において、ミラー部材を、各発光面から投影レンズへ向かう光が該ミラー部材の各反射面に入射しなくなる光非入射位置へ移動し得る構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0027】
すなわち、ミラー部材が光非入射位置へ移動したときには、各発光面からの出射光は、そのまま投影レンズに入射することとなるので、これら左右1対の発光面の反転投影像として形成される左右1対の配光パターンは、左右方向に互いに離間した状態で形成されることとなる。
【0028】
したがって、ミラー部材を初期位置と光非入射位置との間で適宜移動させることにより、付加配光パターンと左右1対の配光パターンとを選択的に形成することができる。すなわち、ハイビームでの走行時には、ミラー部材を初期位置に保持して、付加配光パターンをロービーム用配光パターンに付加することにより、ハイビーム用配光パターンを形成する一方、ロービームでの高速走行時等には、ミラー部材を光非入射位置に移動させて、ロービーム用配光パターンに左右1対の配光パターンを付加することにより、前走車ドライバにグレアを与えてしまうことなく、車両遠方路面の左右両側部分の視認性を高めることができる。
【0029】
その際、さらに、左右1対の発光素子のうちの一方のみを点灯させる制御を組み合わせることも可能である。そして、このようにすることにより、配光可変のバリエーションを増やすことができる。
【0030】
また、この場合において、左右1対の発光面が、投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された構成とした上で、これら左右1対の発光面相互間に、ミラー部材が光非入射位置に移動したとき、各発光面から投影レンズへ向かう光の一部を反射させる第1補助ミラーが配置された構成とし、そして、この第1補助ミラーの構成として、ミラー部材が光非入射位置に移動したとき、各発光面近傍から投影レンズの後側焦点面近傍まで光軸と平行な鉛直面に略沿って延びるように配置される左右1対の反射面を有する構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0031】
すなわち、左右1対の発光面が、投影レンズの後側焦点近傍という範囲内で、この後側焦点よりも後方側に配置されている場合には、これらが投影レンズの後側焦点面上に配置されている場合よりも、各発光面の反転投影像として形成される各配光パターンは、その中心光度が若干低下するものの、そのサイズは大きくなる。ただし、これら各配光パターンの外周縁の明暗比は低下することとなる。
【0032】
このため、ミラー部材が初期位置にあるときに形成される付加配光パターンについても、その中心光度は若干低下するものの、そのサイズを大きめに設定することができる。
【0033】
この点は、ミラー部材が光非入射位置に移動したときに形成される左右1対の配光パターンについても同様であるが、このときには第1補助ミラーが両発光面相互間に配置された状態にあるので、各配光パターンの内側端縁の明暗比が低下してしまわないようにすることができる。
【0034】
すなわち、ミラー部材が光非入射位置へ移動したときであっても、各発光面からの出射光の一部を、第1補助ミラーの各反射面で反射させてから投影レンズに入射させることができるので、各発光面の反転投影像として形成される各配光パターンにおいて、その内側端縁の明暗比を高めることができる。
【0035】
そしてこれにより、左右1対の配光パターンを大きめのサイズで形成した場合においても、前走車ドライバにグレアを与えてしまうことなく、車両遠方路面の左右両側部分の視認性を高めることができる、という作用効果を維持することができる。
【0036】
この場合において、第1補助ミラーは、ミラー部材とは別部材として構成されたものとしてもよいし、ミラー部材と一体的に形成され、このミラー部材が光非入射位置に移動したときに、第1補助ミラーとして機能する位置に出現するように構成されたものとしてもよい。また、この第1補助ミラーは、左右1対の反射面を有する単一の部材として構成されたものとしてもよいし、左側の反射面を構成する部分と右側の反射面を構成する部分とが別部材で構成されたものとしてもよい。
【0037】
上記構成において、各発光面の上方近傍に、下壁面が反射面として形成された第2補助ミラーが配置された構成とした上で、その反射面が、各発光面近傍から投影レンズの後側焦点面近傍まで光軸と平行な水平面に略沿って延びるように形成された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0038】
すなわち、各発光面から上向きに出射する光は、第2補助ミラーの反射面で下向きに反射した後に投影レンズに入射することとなるので、付加配光パターンおよび左右1対の配光パターンのいずれにおいても、その下端縁の位置があまり低くならないようにすることができ、かつ、その下端縁の明暗比を高めることができる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域が明るくなりすぎてしまうのを防止した上で、その遠距離領域の視認性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る車両用照明灯具を示す斜視図
【図2】上記車両用照明灯具の光学的要素のみを取り出して示す平面図
【図3】図2のIII−III線断面図
【図4】上記車両用照明灯具から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示す図であって、そのミラー部材が(a)は初期位置(b)は光非入射位置にあるときの図
【図5】本願発明の第2実施形態に係る車両用照明灯具を示す斜視図
【図6】上記第2実施形態に係る車両用照明灯具の光学的要素のみを取り出して示す平面図
【図7】図6のVII−VII線断面図
【図8】上記第2実施形態の作用を示す、図4と同様の図
【図9】上記第2実施形態の作用を示す図であって、6種類の配光パターンを示す図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0041】
まず、本願発明の第1実施形態について説明する。
【0042】
図1は、本実施形態に係る車両用照明灯具10を示す斜視図である。また、図2は、この車両用照明灯具10の光学的要素のみを取り出して示す平面図であり、図3は、図2のIII−III線断面図である。
【0043】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置された投影レンズ12と、この投影レンズ12の後側焦点F近傍における光軸Axの左右両側に、前向きに配置された左右1対の発光素子14と、これら左右1対の発光素子14の発光面14a相互間に配置された状態で、これら各発光面14aから投影レンズ12へ向かう光の一部を反射させるミラー部材16と、左右1対の第3補助ミラー18と、これらを支持するホルダ20とを備えた構成となっている。
【0044】
そして、この車両用照明灯具10は、ハイビーム用配光パターンを形成する際、ロービーム用配光パターンに対して付加される付加配光パターンを形成するように構成されている。
【0045】
投影レンズ12は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置されている。そして、この投影レンズ12は、その後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。この投影レンズ12の焦点距離は65mm程度に設定されており、そのバックフォーカル長は55mm程度に設定されている。なお、この投影レンズ12は、リテーニングリング22を介してホルダ20に支持されている。
【0046】
左右1対の発光素子14は、いずれも白色発光ダイオードであって同様の構成を有している。これら各発光素子14の発光面14aは、その発光チップの前面により1×4mm程度の横長矩形状に形成されている。
【0047】
これら左右1対の発光素子14は、光軸Axに関して左右対称の位置関係で配置されている。その際、これら各発光素子14は、その発光面14aを投影レンズ12の後側焦点面上に位置させるとともに、その発光中心Oを投影レンズ12の後側焦点Fから真横にそれぞれ5mm程度離れた点に位置させるようにして配置されている。なお、左右1対の発光素子14は、その発光チップを支持する基板14bの側端縁を互いに当接させた状態で配置されている。
【0048】
ミラー部材16は、各発光素子14における発光面14a近傍から前方へ向けて光軸Axと平行な鉛直面に沿って延びる左右1対の側壁面を有しており、これら各側壁面が反射面16aとして形成されている。
【0049】
これら左右1対の反射面16aは、光軸Axに関して左右対称の位置関係で形成されている。その際、これら各反射面16aは、その後端縁が各発光面14aの内側端縁(すなわち光軸Ax側の端縁)から0.3〜0.5mm程度前方に位置するように形成されている。また、これら各反射面16a前端縁は、各発光面14aと投影レンズ12の後方側表面との前後方向の中点よりもやや前方側に位置している。
【0050】
そして、このミラー部材16は、各発光素子14の発光面14aから出射した光の一部を、その各反射面16aにおいて左右方向に正反射させるようになっている。
【0051】
図2においては、右側の発光素子14については、その発光面14aの発光中心Oからの出射光の光路を示しており、左側の発光素子14については、その発光面14aの各位置から出射して、ミラー部材16の左側の反射面16aの一箇所に入射した光の光路を示している。
【0052】
同図において、2点鎖線で示すように、ミラー部材16が配置されていることにより、各発光素子14の発光面14aから出射した光の一部は、これら左右1対の発光面14a相互間の領域から出射した光として投影レンズ12に入射することとなる。すなわち、左右1対の発光面14a相互間の領域が仮想発光面を構成している。その際、この仮想発光面は各発光面14a毎に生成され、投影レンズ12の後側焦点Fを中心にして部分的に重複した状態となっている。
【0053】
左右1対の第3補助ミラー18は、ミラー部材16の左右両側に、左右対称の位置関係で配置されている。
【0054】
これら各第3補助ミラー18は、L字状の鉛直断面形状で前後方向に延びるように形成されており、その際、その鉛直断面形状が前方へ向けて徐々に大きくなるように形成されている。
【0055】
これら各第3補助ミラー18は、その側壁部の内側面が、前方へ向けて光軸Axから離れる方向へ向けて平面状に延びる側部反射面18aとして形成されるとともに、その底壁部の上面が、前方へ向けて光軸Axから離れる方向へ向けて平面状に延びる底部反射面18bとして形成されている。その際、各第3補助ミラー18の側部反射面18aは、その後端縁が、各発光面14aの外側端縁(すなわち光軸Axとは反対側の端縁)よりもやや外側に位置している。また、各第3補助ミラー18の底部反射面18bは、その後端縁が、各発光面14aの下端縁よりもやや下側に位置している。
【0056】
そして、これら各第3補助ミラー18は、各発光素子14の発光面14aから投影レンズ12の周縁部へ向かう光を、その側部反射面18aおよび底部反射面18bにおいて前方寄りの方向に正反射させるようになっている。
【0057】
ミラー部材16は、図3において実線で示す初期位置から、同図において2点鎖線で示す光非入射位置(すなわち、各発光面14aから投影レンズ12へ向かう光が、ミラー部材16の各反射面16aに入射しなくなる位置)へ移動し得るように構成されている。
【0058】
この光非入射位置は、ミラー部材16の各反射面16aの上端縁が、各第3補助ミラー18の底部反射面18bよりもやや下方側において該底部反射面18bと略平行に延びる位置に設定されている。
【0059】
これを実現するため、ミラー部材16の初期位置から光非入射位置外への移動は、投影レンズ12の後側焦点Fよりも後方側において、光軸Ax近傍を通るようにして左右方向に延びる水平軸線を中心とする回動運動によって行われるようになっている。また、ミラー部材16は、側面視において、その各発光面14aが前方へ向けて略台形状に拡がるように形成されており、その後端部には下方へ突出する突起部16bが形成されている。
【0060】
ミラー部材16の回動運動は、図1に示す回動機構24によって行われるようになっている。この回動機構24は、ホルダ20に支持されたソレノイドをミラー部材16の突起部16bに連結することによって構成されている。
【0061】
この回動機構24は、図示しないコントロールユニットにより駆動制御されるようになっている。その際、このコントロールユニットは、ハイビームのときには、ミラー部材16を初期位置に保持した状態で、左右1対の発光素子14を点灯させる一方、ロービームでの高速走行時等には、回動機構24を駆動して、ミラー部材16を初期位置から光非入射位置に回動させた状態で、左右1対の発光素子14を点灯させるるようになっている。
【0062】
図4は、本実施形態に係る車両用照明灯具10から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図である。
【0063】
図4(a)に示す配光パターンは、ミラー部材16が初期位置にあるとき(すなわちハイビームのとき)に形成される付加配光パターンPAであって、ハイビーム用配光パターンPH1を形成する際、2点鎖線で示すロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成されるようになっている。
【0064】
図4(b)に示す配光パターンは、ミラー部材16が光非入射位置にあるとき(すなわちロービームでの高速走行時等)に形成される左右1対の配光パターンPBL、PBRであって、ロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成されるようになっている。そしてこれにより、ハイビーム用配光パターンPH1とロービーム用配光パターンPLとの間の中間的配光パターンPM1を形成するようになっている。
【0065】
まず、ロービーム用配光パターンPLについて説明する。
【0066】
このロービーム用配光パターンPLは、図示しない他の車両用照明灯具からの照射光によって形成される配光パターンであって、上端縁に左右段違いの水平カットオフラインCL1、CL2を有する左配光のロービーム用配光パターンとして形成されている。
【0067】
水平カットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを通る鉛直線であるV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側が、対向車線側の水平カットオフラインCL1として水平方向に延びるようにして形成されるとともに、V−V線よりも左側が、自車線側の水平カットオフラインCL2として水平カットオフラインCL1よりも段上がりで水平方向に延びるようにして形成されている。ただし、この水平カットオフラインCL2におけるV−V線寄りの端部は、水平カットオフラインCL1とV−V線との交点から左斜め上方へ15°の傾斜角で延びる斜めカットオフラインとして形成されている。
【0068】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、水平カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点は、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。
【0069】
次に、付加配光パターンPAについて説明する。
【0070】
図4(a)に示すように、この付加配光パターンPAは、V−V線を中心にして左右両側に細長く延びる横長の配光パターンであって、ロービーム用配光パターンPLに対して、その左右段違いの水平カットオフラインCL1、CL2を上下方向に跨ぐようにして形成されている。この付加配光パターンPAは、上下方向に関しては、H−Vを通る水平線であるH−H線に対して、その下方側へはほとんど拡散していないが、その上方側へは多少拡散している。
【0071】
この付加配光パターンPAにおいて、高光度領域であるホットゾーンHZは、H−V近傍に位置している。なお、この付加配光パターンPAにおいて、多重で示す閉曲線は、等光度曲線であって、その外周縁から中心へ向かうほど明るくなることを示している。
【0072】
この付加配光パターンPAが、ロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成されることにより、ハイビーム用配光パターンPH1を車両前方の遠方視認性に優れた配光パターンとするようになっている。
【0073】
なお、この付加配光パターンPAの生成過程については後述する。
【0074】
次に、左右1対の配光パターンPBL、PBRについて説明する。
【0075】
図4(b)に示すように、これら左右1対の配光パターンPBL、PBRは、V−V線に関して左右対称の位置関係で、互いに離れた位置に形成されている。
【0076】
左側に位置する配光パターンPBLは、左右1対の発光素子14のうち、右側に位置する発光素子14の発光面14aからの出射光により形成される配光パターンであり、右側に位置する配光パターンPBRは、左側に位置する発光素子14の発光面14aからの出射光により形成される配光パターンである。
【0077】
その際、ミラー部材16は光非入射位置にあるので、各発光素子14の発光面14aからの出射光は、ミラー部材16の反射面16aに入射することなく、そのまま投影レンズ12に入射することとなる。
【0078】
これら各配光パターンPBL、PBRは、各発光素子14の発光面14aの反転投影像として形成されるが、各発光面14aは、横長矩形状に形成されており、かつ、投影レンズ12の後側焦点面上に配置されているので、これら各配光パターンPBL、PBRは、小さくて明るい横長の配光パターンとして形成されている。
【0079】
これら左右1対の配光パターンPBL、PBRが、V−V線に関して左右対称の位置関係で、互いに離れた位置に形成されるのは、左右1対の発光面14aが、光軸Axに関して左右対称の位置関係で、互いに離れた位置に配置されていることによるものである。
【0080】
その際、これら各配光パターンPBL、PBRは、その内側端縁(すなわちV−V線側の端縁)が比較的高い明暗比で形成されるのに対し、その外側端縁は内側端縁よりもやや低い明暗比でやや大きく拡がるように形成され、また、その上端縁は下端縁よりもやや低い明暗比でやや大きく拡がるように形成されている。これは、各発光面14aから投影レンズ12の周縁部へ向かう光の一部が、各第3補助ミラー18の側部反射面18aおよび底部反射面18bで正反射することによるものである。
【0081】
次に、図4(a)に示す付加配光パターンPAの生成過程について説明する。
【0082】
この付加配光パターンPAは、左右1対の配光パターンPBL、PBRを形成している左右1対の発光面14aからの出射光の一部がV−V線寄りの方向に照射されることにより、一連の配光パターンとして形成されている。
【0083】
すなわち、ミラー部材16が初期位置にある状態では、右側に位置する発光面14aからの出射光は、その一部がミラー部材16における右側の反射面16aで正反射するので、左側の配光パターンPBLは右側へ拡大するように形成される。一方、左側に位置する発光面14aからの出射光は、その一部がミラー部材16における左側の反射面16aで正反射するので、右側の配光パターンPBRは左側へ拡大するように形成される。
【0084】
その際、ミラー部材16の各反射面16aで正反射した各発光面14aからの出射光は、投影レンズ12の後側焦点面において後側焦点Fを含むようにして生成された仮想発光面からの出射光として投影レンズ12に入射するので、左側の配光パターンPBLにおいて右側へ拡大した部分と、右側の配光パターンPBRにおいて左側へ拡大した部分とがH−V近傍において重複することとなる。そしてこれにより、H−V近傍にホットゾーンHZを有する付加配光パターンPAが形成されることとなる。
【0085】
なお、この付加配光パターンPAにおいても、各第3補助ミラー18の作用により、その左右両端縁がやや大きく拡がるように形成されるとともに、その上端縁が下端縁よりもやや大きく拡がるように形成されることとなる。
【0086】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0087】
本実施形態に係る車両用照明灯具10は、ハイビーム用配光パターンPH1を形成する際、ロービーム用配光パターンPLに対して付加される付加配光パターンPAを形成するように構成されているが、この車両用照明灯具10は、左右1対の発光素子14からの直射光を投影レンズ12を介して前方へ照射するように構成された直射型の灯具として構成されているので、その奥行寸法を小さくすることができる。
【0088】
その上で、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、投影レンズ12の後側焦点F近傍における光軸Axの左右両側に、左右1対の発光素子14が前向きに配置されるとともに、これら左右1対の発光素子14の発光面14a相互間に、これら各発光面14aから投影レンズ12へ向かう光の一部を反射させるミラー部材16が配置されており、そして、このミラー部材16は、各発光面14a近傍から前方へ向けて光軸Axと平行な鉛直面に沿って延びる左右1対の反射面16aを有しているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0089】
すなわち、左右1対の発光素子14は、その発光面14aが左右方向に互いに離間した状態で配置されることとなるが、これら各発光面14aから投影レンズ12へ向かう光の一部は、ミラー部材16の各反射面16aで正反射するので、両反射面16a相互間に配置された仮想発光面からの出射光として、投影レンズ12に入射することとなる。
【0090】
その際、この仮想発光面14aは各発光面14a毎に生成されることとなるので、これら左右1対の仮想発光面が互いに重複するように、ミラー部材16の左右幅および各発光面14aの左右幅を設定しておくことにより、両発光面14aおよび両仮想発光面の反転投影像として形成される左右1対の配光パターンを、互いに部分的に重複した状態で形成することができる。そしてこれにより、これら左右1対の配光パターンの合成配光パターンとして形成される付加配光パターンPAを、その左右方向の中央位置が最も明るい配光パターンとして形成することができる。
【0091】
しかも、この付加配光パターンPAを、その中心光度が十分高い配光パターンとして形成することができる。この点について詳述すると以下のとおりである。
【0092】
すなわち、左右1対の発光面14aは、投影レンズ12の後側焦点面上に配置されているので、ミラー部材16が光非入射位置にあるときには、これら各発光面14aの反転投影像として形成される各配光パターンPBL、PBRは、その中心光度が最大限に高められたものとなっている。
【0093】
そして、ミラー部材16が初期位置にあるときには、これら各発光面14aの反転投影像として形成されるべき各配光パターンは、各配光パターンPBL、PBRの一部が左右方向に折り返された新たな配光パターンとして形成され、その一部が互いに重複した合成配光パターンとして付加配光パターンPAが形成されるので、この付加配光パターンPAについても、その中心光度を十分高めることができる。
【0094】
このように本実施形態によれば、ハイビーム用配光パターンPH1を形成する際、ロービーム用配光パターンPLに対して付加される付加配光パターンPAを形成するように構成された車両用照明灯具10において、その奥行寸法を小さくした上で、付加配光パターンPAの中心光度を十分高めることができる。しかも、このような作用効果を、各発光素子14からの出射光の光束を無駄にすることなく得ることができる。
【0095】
また本実施形態においては、ミラー部材16が初期位置と光非入射位置との間で移動し得るように構成されているので、付加配光パターンPAと左右1対の配光パターンPBL、PBRとを選択的に形成することができる。すなわち、ハイビームでの走行時には、ミラー部材16を初期位置に保持して、付加配光パターンPAをロービーム用配光パターンPLに付加することにより、ハイビーム用配光パターンPH1を形成する一方、ロービームでの高速走行時等には、ミラー部材16を光非入射位置に移動させて、ロービーム用配光パターンPLに左右1対の配光パターンPBL、PBRを付加することにより、前走車2のドライバにグレアを与えてしまうことなく、車両遠方路面の左右両側部分の視認性を高めることができる。
【0096】
しかも本実施形態においては、左右1対の発光素子14の発光面14aから投影レンズ12の周縁部へ向かう光が、左右1対の第3補助ミラー18の側部反射面18aおよび底部反射面18bの各々で正反射するように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0097】
すなわち、各発光素子14は、その発光面14aが投影レンズ12の後側焦点面上に配置されているので、各配光パターンPBL、PBRは小さくて明るい横長の配光パターンとして形成されることとなるが、各第3補助ミラー18の作用により、これら各配光パターンPBL、PBRを、その外側端縁が内側端縁よりもやや大きく拡がるとともに、その上端縁が下端縁よりもやや大きく拡がるように形成することができるので、その照射範囲を拡大することができる。また、付加配光パターンPAについても、その左右両端縁がやや大きく拡がるとともに、その上端縁が下端縁よりもやや大きく拡がるように形成することができるので、その照射範囲を拡大することができる。
【0098】
次に、本願発明の第2実施形態について説明する。
【0099】
図5は、本実施形態に係る車両用照明灯具110を示す斜視図である。また、図6は、この車両用照明灯具110の光学的要素のみを取り出して示す平面図であり、図7は、図6のVII−VII線断面図である。
【0100】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用照明灯具110は、その基本的な構成は、上記第1実施形態に係る車両用照明灯具10と同様であるが、左右1対の発光素子14が、投影レンズ12の後側焦点F近傍ではなく、その棒後側焦点Fよりも後方側において、光軸Axの左右両側に配置されている点、および、第1補助ミラー132および第2補助ミラー134を備えている点で、上記第1実施形態の場合と異なっている。
【0101】
すなわち、本実施形態においては、各発光素子14の発光面14aが、投影レンズ12の後側焦点面から3〜4mm程度後方側に位置している。
【0102】
また、本実施形態においては、左右1対の発光素子14の発光面14a相互間に第1補助ミラー132が配置されている。
【0103】
この第1補助ミラー132は、各発光面14a近傍から投影レンズ12の後側焦点面まで光軸Axと平行な鉛直面に沿って延びる左右1対の側壁面を有しており、これら各側壁面が反射面132aとして形成されている。その際、この第1補助ミラー132は、ミラー部材16とは別部材として構成されており、その各反射面132aを、ミラー部材16の各反射面16aの後端位置において該反射面16aよりも僅かに光軸Ax寄りに位置させるようにして配置されている。
【0104】
そしてこれにより、この第1補助ミラー132は、ミラー部材16が光非入射位置に移動したとき、各発光面14aから投影レンズ12へ向かう光の一部を、その各反射面132aにおいて正反射させるように構成されている。なお、この第1補助ミラー132は、ミラー部材16が初期位置にあるときには、その各反射面132aの大半がミラー部材16に隠れるため、各発光面14aから投影レンズ12へ向かう光がほとんど入射せず、また、これら各反射面132aに入射した光もミラー部材16の後端部で遮蔽されて投影レンズ12に到達しない構成となっている。
【0105】
さらに、本実施形態においては、この第1補助ミラー132の両側に左右1対の第2補助ミラー134が配置されている。
【0106】
これら各第2補助ミラー134は、各発光面14aの上方近傍に配置されており、その下壁面が反射面134aとして形成されている。
【0107】
これら各第2補助ミラー134の反射面134aは、各発光面14a近傍から投影レンズ12の後側焦点面まで光軸Axと平行な水平面に沿って延びるように形成されている。
【0108】
そしてこれにより、これら各第2補助ミラー134は、各発光面14aから上向きに出射する光を、その反射面134aで下向きに正反射させてから投影レンズ12に入射させるようになっている。
【0109】
図8は、本実施形態の作用を示す、図4と同様の図である。
【0110】
図8(a)に示す付加配光パターンPCは、ミラー部材16が光非入射位置にあるときに形成される配光パターンである。
【0111】
この付加配光パターンPCは、図4(a)に示す付加配光パターンPAと同様、V−V線を中心にして左右両側に細長く延びる横長の配光パターンとして形成されているが、付加配光パターンPAよりも全体的に大きい配光パターンとして形成されている。そして、この付加配光パターンPCのホットゾーンHZは、付加配光パターンPAのホットゾーンHZよりも大きめに形成されるが、その中心光度は付加配光パターンPAよりもやや低くなっている。
【0112】
ただし、この付加配光パターンPCは、付加配光パターンPAよりも全体的に大きい配光パターンとして形成されているにもかかわらず、その下端縁は、付加配光パターンPAの場合と略同じ高さに位置しており、かつ、高い明暗比で形成されている。これは、各発光面14aから上向きに出射する光が、第2補助ミラー134の反射面134aで下向きに正反射した後に投影レンズ12に入射するようになっており、その際、その反射面134aの前端縁が投影レンズ12の後側焦点面に位置していることによるものである。
【0113】
この付加配光パターンPCをロービーム用配光パターンPLに付加してハイビーム用配光パターンPH2を形成することにより、車両前方の遠方領域を幅広く照射することができる。しかもその際、付加配光パターンPCの下端縁は、その位置があまり低くならず、かつ明暗比が高いので、車両前方路面の近距離領域が明るくなりすぎてしまわないようにすることができる。
【0114】
図8(b)に示す左右1対の配光パターンPDL、PDRは、ミラー部材16が光非入射位置にあるときに形成される配光パターンであって、ロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成されるようになっている。そしてこれにより、ハイビーム用配光パターンPH2とロービーム用配光パターンPLとの間の中間的配光パターンPM2を形成するようになっている。
【0115】
これら左右1対の配光パターンPDL、PDRは、図4(b)に示す左右1対の配光パターンPBL、PBRと同様、V−V線に関して左右対称の位置関係で、互いに離れた位置に形成されているが、これら各配光パターンPDL、PDRは、各配光パターンPBL、PBRよりも全体的に大きい配光パターンとして形成されている。そして、これら各配光パターンPDL、PDRのホットゾーンは、各配光パターンPBL、PBRのホットゾーンよりも大きめに形成されるが、その中心光度は各配光パターンPBL、PBRよりもやや低くなっている。
【0116】
ただし、これら各配光パターンPDL、PDRは、各配光パターンPBL、PBRよりも全体的に大きい配光パターンとして形成されているにもかかわらず、その下端縁は、各配光パターンPBL、PBRの場合と略同じ高さに位置しており、かつ、高い明暗比で形成されている。これは、付加配光パターンPCの場合と同様、第2補助ミラー134の作用によるものである。
【0117】
また、これら各配光パターンPDL、PDRは、各配光パターンPBL、PBRよりも全体的に大きい配光パターンとして形成されているにもかかわらず、その内側端縁は、各配光パターンPBL、PBRの場合よりも僅かにV−V線寄りに変位しているだけであり、しかも、比較的高い明暗比で形成されている。これは、各発光面14aから光軸Ax寄りの方向へ出射する光の一部が、第1補助ミラー132の反射面132aで正反射した後に投影レンズ12に入射するようになっており、その際、その反射面134aの前端縁が投影レンズ12の後側焦点面に位置していることによるものである。
【0118】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0119】
本実施形態に係る車両用照明灯具110は、左右1対の発光面14aが、投影レンズ12の後側焦点Fよりも後方側に配置されているので、左右1対の発光面14aが投影レンズ12の後側焦点面上に配置されている第1実施形態に係る車両用照明灯具10の場合よりも、各発光面14aの反転投影像として形成される各配光パターンは、その中心光度が若干低下するものの、そのサイズは大きくなる。ただし、これら各配光パターンの外周縁の明暗比は低下することとなる。
【0120】
このため、ミラー部材16が初期位置にあるときに形成される付加配光パターンPCについても、その中心光度は若干低下するものの、そのサイズを大きめに設定することができる。
【0121】
一方、ミラー部材16が光非入射位置に移動したときに形成される左右1対の配光パターンPDL、PDRについても同様であるが、このときには第1補助ミラー132が両発光面14a相互間に配置された状態にあるので、各配光パターンPDL、PDRの内側端縁の明暗比が低下してしまわないようにすることができる。
【0122】
すなわち、ミラー部材が光非入射位置へ移動したときであっても、各発光面14aからの出射光の一部を、第1補助ミラー132の各反射面132aで反射させてから投影レンズ12に入射させることができるので、各発光面14aの反転投影像として形成される各配光パターンPDL、PDRにおいて、その内側端縁の明暗比を高めることができる。
【0123】
そしてこれにより、左右1対の配光パターンPDL、PDRを大きめのサイズで形成した場合においても、前走車2のドライバにグレアを与えてしまうことなく、車両遠方路面の左右両側部分の視認性を高めることができる、という作用効果を維持することができる。
【0124】
さらに本実施形態においては、各発光面14aの上方近傍に、下壁面が反射面134aとして形成された第2補助ミラー134が配置されており、そして、その反射面134aが、各発光面14a近傍から投影レンズ12の後側焦点面まで光軸Axと平行な水平面に沿って延びるように形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0125】
すなわち、各発光面14aから上向きに出射する光は、第2補助ミラー134の反射面134aで下向きに正反射した後に投影レンズ12に入射することとなるので、付加配光パターンPCおよび左右1対の配光パターンPDL、PDRのいずれにおいても、その下端縁の位置があまり低くならないようにすることができ、かつ、その下端縁の明暗比を高めることができる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域が明るくなりすぎてしまうのを防止した上で、その遠距離領域の視認性をより高めることができる。
【0126】
図9は、本実施形態に係る車両用照明灯具110において、ミラー部材16の回動制御と、左右1対の発光素子14の点消灯制御とを組み合わせた場合に形成される6種類の配光パターンを示す図である。
【0127】
同図(a)〜(c)は、ミラー部材16が初期位置にあるときに形成される配光パターンである。その際、同図(a)は、付加配光パターンPCであり、同図(b)は、左側の発光素子14のみを点灯したときに、V−V線のやや左側から右方向へ細長く延びるように形成される配光パターンPERであり、同図(c)は、右側の発光素子14のみを点灯したときに、V−V線のやや右側から左方向へ細長く延びるように形成される配光パターンPELである。
【0128】
また、同図(d)〜(f)は、ミラー部材16が光非入射位置に移動したときに形成される配光パターンである。その際、同図(d)は、左右1対の配光パターンPDL、PDRであり、同図(e)は、左側の発光素子14のみを点灯したときにV−V線の右側に形成される配光パターンPDRであり、同図(f)は、右側の発光素子14のみを点灯したときにV−V線の左側に形成される配光パターンPDLである。
【0129】
このように、ミラー部材16の回動制御と、左右1対の発光素子14の点消灯制御とを適宜組み合わせることにより、照射態様の異なる6種類の配光パターンを形成することができ、これにより配光可変のバリエーションを増やすことができる。なお、このような制御を、上記第1実施形態に係る車両用照明灯具10において行うようにすることももちろん可能である。
【0130】
上記第2実施形態においては、第1補助ミラー132が、ミラー部材16とは別部材として構成されているものとして説明したが、ミラー部材16の後端部において上方側へ突出するようにして該ミラー部材16と一体的に形成された構成とすることも可能である。このようにした場合においても、このミラー部材16が光非入射位置に移動したときに、その一体的に形成された部分を第1補助ミラーとして機能する位置に出現させることができ、これにより上記第2実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0131】
上記各実施形態においては、ミラー部材16の各反射面16aが、光軸Axと平行な鉛直面に沿って延びるように形成されているものとして説明したが、光軸Axと平行な鉛直面に対して多少傾斜したり多少湾曲して延びるように形成されている場合であっても、上記各実施形態と略同様の作用効果を得ることができる。この点、上記第1実施形態の第3補助ミラー18や上記第2実施形態の第1補助ミラー132および第2補助ミラー134に関しても同様である。
【0132】
上記各実施形態においては、車両用照明灯具10、110からの照射光により形成される配光パターンが、左配光のロービーム用配光パターンPLに対して付加される場合について説明したが、右配光のロービーム用配光パターンに対して付加される場合においても、上記各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0133】
なお、上記各実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0134】
2 歩行者
10、110 車両用照明灯具
12 投影レンズ
14 発光素子
14a 発光面
14b 基板
16 ミラー部材
16a、132a、134a 反射面
16b 突起部
18 第3補助ミラー
18a 側部反射面
18b 底部反射面
20 ホルダ
22 リテーニングリング
24 回動機構
132 第1補助ミラー
134 第2補助ミラー
Ax 光軸
CL1、CL2 水平カットオフライン
F 後側焦点
HZ ホットゾーン
O 発光中心
PA、PC 付加配光パターン
PBL、PBR、PDL、PDR、PEL、PER 配光パターン
PH1、PH2 ハイビーム用配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
PM1、PM2 中間的配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイビーム用配光パターンを形成する際、ロービーム用配光パターンに対して付加される付加配光パターンを形成するように構成された車両用照明灯具において、
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、この投影レンズの後側焦点近傍における上記光軸の左右両側に、前向きに配置された左右1対の発光素子と、これら左右1対の発光素子の発光面相互間に配置された状態で、これら各発光面から上記投影レンズへ向かう光の一部を反射させるミラー部材と、を備えてなり、
上記ミラー部材が、上記各発光面近傍から前方へ向けて上記光軸と平行な鉛直面に略沿って延びる左右1対の反射面を有している、ことを特徴とする車両用照明灯具。
【請求項2】
上記ミラー部材が、上記各発光面から上記投影レンズへ向かう光が該ミラー部材の各反射面に入射しなくなる光非入射位置へ移動し得るように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用照明灯具。
【請求項3】
上記左右1対の発光面が、上記後側焦点よりも後方側に配置されており、
これら左右1対の発光面相互間に、上記ミラー部材が上記光非入射位置に移動したとき、上記各発光面から上記投影レンズへ向かう光の一部を反射させる第1補助ミラーが配置されており、
この第1補助ミラーが、上記ミラー部材が上記光非入射位置に移動したとき、上記各発光面近傍から上記投影レンズの後側焦点面近傍まで上記光軸と平行な鉛直面に略沿って延びるように配置される左右1対の反射面を有している、ことを特徴とする請求項2記載の車両用照明灯具。
【請求項4】
上記各発光面の上方近傍に、下壁面が反射面として形成された第2補助ミラーが配置されており、
この第2補助ミラーの反射面が、上記各発光面近傍から上記後側焦点面近傍まで上記光軸と平行な水平面に略沿って延びるように形成されている、ことを特徴とする請求項3記載の車両用照明灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−238434(P2011−238434A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108062(P2010−108062)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】