説明

車両用照明装置及び車両用照明装置の制御方法

【課題】信号ハーネスを削減すると共に、バッテリ上がりを防止する車両用照明装置を提供する。
【解決手段】車両用照明装置10は、バッテリ12から電力が供給され、照明のオン・オフを操作するためのスイッチ16と、外部からの制御信号を受け付けるシリアル通信回路17と、ランプ等の発光体11と、が接続されている。また、車両用照明装置10は、バッテリ電圧を測定するための電圧測定手段10と、バッテリから供給された電圧を調整して出力するスイッチング回路15と、バッテリ上がりを防止するバッテリセーバ手段14と、を含んでいる。バッテリセーバ手段14は、イグニッション信号等を用いることなく、電圧測定手段13によって測定されたバッテリ電圧に基づいてスイッチング回路15をきめ細かく制御してバッテリ上がりを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリから供給された電圧を調整して発光体に供給し、車両の照明を制御する車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、様々な照明装置が設けられている。例えば、車室内を照らすルームランプや、運転席や助手席を個別に照らすマップライト、車載機器の操作パネルの夜間照明装置、ベッドライト等がある。車両のルームランプには、DOOR/OFF/ONの三つのポジションを有するスイッチが設けられている。特に、ルームランプをDOORポジションにすると、ドアの開閉とルームランプの点灯が連動するようになっており、ドアを開ければ自動的にルームランプが点灯するようになっている。
【0003】
また、使い勝手の向上や高級感を演出するために、バッテリ電圧の変動によるルームランプの明るさが変化することが無いように明るさを一定に保つスイッチング方式の安定回路と、自動減光消灯回路と、をルームランプに組み込み、ドアを閉めた直後から数秒は点灯し、その後、徐々に減光して消灯するものもある。
【0004】
このような回路を有する車両では、暗いところで車両から降りる際、助手席に置いた荷物を取ったり、捜し物をする場合などは、ルームランプのスイッチをオンにして点灯させなくてもドアを開けさえすればルームランプが点灯し、ドアを閉めれば所定時間点灯した後に減光して消灯するなど、使い勝手が良く、便利なものとなっている。
【0005】
しかし、車内に留まり、数分程度の捜し物をする場合などは、ルームランプをオンにして点灯させなくてはならず、降車施錠後に消し忘れに気づかずにそのまま長時間放置し、バッテリ上がりを招く等の問題がある。そこで、ルームランプの消し忘れによるバッテリ上がりを防ぐ為に、イグニッション信号がオンからオフに切り替わってから一定時間経過後に自動消灯するバッテリセーバ機能を有する車両もある。
【0006】
さらに、特許文献1には、降車時に必要な照明を、わざわざ手間をかけて点灯しなくても自動的に点灯し、かつ消灯するようにしたルームランプ(室内灯)が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−127846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、車両に搭載される電子機器の数量が増大し、車両に張り巡らされた信号ハーネスの多さが問題となっている。このように信号ハーネスが増加することにより限られた車内スペースが占有されると共に、信号ハーネス作成のコスト増加と、車両の組み立てコストの増加等により車両価格を押し上げることになる。
【0009】
そこで、ルームランプに接続されるハーネスの削減が必要となるが、DOORポジションでの自動減光消灯回路の起動や、バッテリセーバ機能の起動には従来からイグニッション信号を用いており、さらなる信号ハーネスの削減は容易ではなかった。
【0010】
また、エンジンがかかっておらず、かつイグニッション信号がオンの状態では、バッテリセーバ機能は作動せず、そのまま点灯させているとバッテリが上がる可能性があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、信号ハーネスを削減すると共に、バッテリ上がりを防止する車両用照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る車両用照明装置は、バッテリから供給された電圧を調整して発光体に出力し、車両の照明を制御する車両用照明装置において、所定時間間隔でバッテリ電圧を測定する電圧測定手段と、電圧測定手段で測定されたバッテリ電圧の変動が所定の変動より小さい場合には、所定の照度となるように電圧を制御し、電圧測定手段で測定されたバッテリ電圧の変動が所定の変動以上となる場合には、測定されたバッテリ電圧に応じて発光体の照度を制御し、かつ、バッテリ電圧に応じた照度の制御が所定時間以上継続する場合には、発光体への電力供給を停止するバッテリセーバ手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る車両用照明装置において、バッテリセーバ手段は、電圧測定手段で測定されたバッテリ電圧が予め決められた下限電圧まで低下した場合には、発光体への電力供給を停止することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る車両用照明装置において、点灯指示を受け付ける受付手段はシリアル通信回線を有し、イグニッション信号等の車両信号を用いることなく、照明制御を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る制御方法は、バッテリから供給された電圧を調整して発光体に出力し、車両の照明を制御する車両用照明装置の制御方法において、所定時間間隔でバッテリ電圧を測定する電圧測定工程と、電圧測定工程で測定されたバッテリ電圧の変動が所定の変動より小さい場合には、所定の照度となるように電圧を制御し、電圧測定工程で測定されたバッテリ電圧の変動が所定の変動以上となる場合には、測定されたバッテリ電圧に応じて発光体の照度を制御し、かつ、バッテリ電圧に応じた照度の制御が所定時間以上継続する場合には、発光体への電力供給を停止するバッテリセーバ工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係る車両用照明装置の制御方法において、バッテリセーバ工程は、さらに、電圧測定工程で測定されたバッテリ電圧が予め決められた下限電圧まで低下した場合には、発光体への電力供給を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明を用いることにより、イグニッション信号を用いることなく、ランプの消し忘れに対してバッテリ電圧の電圧変動を検出することにより、バッテリ電圧の低下をユーザに報知し、自動消灯する車両用照明装置を実現することが可能となる。
【0018】
また、本発明を用いることにより、イグニッション信号を車両用照明装置に供給する必要がないため、接続する信号線の数、信号線に関する接続回路等の削減が可能となるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【実施例】
【0020】
図1には、車両用照明装置10の概要が示されている。車両用照明装置10は、バッテリ12から電力が供給され、照明のオン・オフを操作するためのスイッチ16と、図示しない車両側制御装置からの制御信号を受け付けるシリアル通信回路17と、ランプ等の発光体11と、が接続されている。また、車両用照明装置10は、バッテリ電圧を測定するための電圧測定手段13と、バッテリから供給された電圧を調整して出力するスイッチング回路15と、バッテリ上がりを防止するバッテリセーバ手段14と、を含んでいる。バッテリセーバ手段14は、電圧測定手段13によって測定されたバッテリ電圧に基づいてスイッチング回路15をきめ細かく制御してバッテリ上がりを防止する。
【0021】
図2は運転席と助手席の間の天井部に配置されているオーバヘッドモジュール40の外観図であり、図3はオーバヘッドモジュール40の内部に設けられている電子回路構成図である。
【0022】
図2に示すオーバヘッドモジュール40は、ランプ部とスイッチ部と眼鏡ケース部とを有している。ランプ部は、中央に配置されているドームランプ49(ルームランプと同じ意味として用い、以下ドームランプという。)と、その左右にマップランプ47,48が設けられている。同様に、スイッチ部は、中央にドームランプ49のポジションスイッチが設けられ、ポジションスイッチには左からドームONスイッチ44,ドームOFFスイッチ45,ドームDOORスイッチ46が配置さている。
【0023】
また、ポジションスイッチの左右にはマップランプスイッチ42,43が設けられている。これらのスイッチは押下げにより点灯と消灯をサイクリックに繰り返すモーメンタリスイッチである。
【0024】
図3に示されるオーバヘッドモジュール40のCPU26には、ポジションスイッチ(44〜46)と、マップランプスイッチ(42,43)と、駆動回路(34〜36)を介してドームランプ49及びマップランプ47,48と、CPU26を駆動するための電源回路21と、バッテリ電圧を測定するための電圧測定回路22と、シリアル通信により送信される点灯要求、消灯要求を受信するシリアル通信回路23と、が接続されている。このような構成により、スイッチ部又はシリアル通信回路23からの点灯・消灯指示を受付てランプの制御を行うことが可能である。
【0025】
また、車両に搭載された機器の負荷変化によりバッテリ電圧が変動する場合、ランプのちらつきが発生して照度が変化するので、本実施形態では電圧レベルに応じた周波数でランプをPWM制御させることにより照度を一定に制御する明滅対策制御をCPU26が実行している。
【0026】
図4には、車両用照明装置10のバッテリセーバ機能による処理の一例が示されている。図4(A)はランプとランプの照度とオルタネータの状態とを示し、図4(B)はバッテリ電圧の電圧変動を示し、図4(C)はバッテリ電圧の変化を示している。また、図5はバッテリ電圧とランプのDUTY値(%)を示している。
【0027】
本発明に係る実施例で特徴的なことは、所定時間毎に電圧変動を測定して変動判定値を上回るような減少変動を判定すると、バッテリセーバ用のカウンタをカウントアップさせると共に、明滅対策制御を停止して電圧低下をユーザに報知するためにバッテリ電圧に応じて図4(A)に示すように照度を制御することである。
【0028】
図4(C)の下限電圧レベル付近に示した丸印は、バッテリの電源電圧に応じて照度の制御中にバッテリ電源がエンジン等の起動が可能な電圧である下限電圧まで低下したため、ランプの点灯指示は出ているが、ランプへの電力供給を停止した例である。
【0029】
また、図4(B)のカウント期間付近に示した丸印は、バッテリ電圧の電圧変動が変動判定値を上回ったことにより起動されたカウンタのカウント終了タイミングにより、ランプの点灯指示は出ているものの、ランプへの電力供給を停止した例である。
【0030】
その他の電力供給を停止する手段は、図5に示すように、バッテリ電圧がゼロになる前の下限電圧に到達した時点でランプのDUTY値を0%として電力の供給を停止するものである。これらの処理により、エンジンを起動可能とし、再充電を可能としている。
【0031】
図6には、車両用照明装置の照明制御サブルーチンが示されている。以下、図6と図4を用いて具体的な照明制御の処理の流れを説明する。このサブルーチンは、所定時間毎に起動されるプログラムであり、プログラムが実行されると、最初にステップS10においてランプの点灯指示によりランプが点灯しているかを判定する。ここで、ランプが点灯していれば、所定時間間隔でバッテリ電圧を測定する(ステップS14)。もし、ランプが消灯している時は、バッテリセーバのカウンタをゼロクリア(ステップS12)後、サブルーチンを終了する。
【0032】
ステップS16において、測定した現在の電圧Vaと、下限電圧と、を比較してバッテリ電圧が低下しているかを判定する。バッテリ電圧が低下して下限電圧を下回る場合には、ランプを消灯する(ステップS18)。バッテリ電圧が下限電圧より高い場合には、メモリに記憶されている前回の電圧値Vbと、現在の電圧値Vaと、の差分から減少変動(Vb−Va)を求める(ステップS20)。ステップS22において、減少変動が変動判定値より大きい場合には、バッテリ電圧に応じてDUTY値を設定してランプを駆動し(ステップS23)、カウンタをアップする(ステップS26)。もし、減少変動が変動判定値より小さい場合には、カウンタをクリア(ステップS24)し、ステップS28に移る。
【0033】
ステップS28において、カウンタの値が基準値を超えているか判定し、カウント期間満了を検知する。もし、基準値を超えている場合には、カウント期間満了であり、ステップS30においてランプを消灯させ、サブルーチンを終了する。もし、ステップS28において、カウンタ値が基準値を下回る場合には、そのままの状態を維持してサブルーチンを終了する。以上の処理によりバッテリセーバ処理を実現することができる。
【0034】
上述したように本実施形態を用いるとイグニッション信号を用いることなく、ランプの消し忘れに対してバッテリ電圧の電圧変動を検出することにより、バッテリ電圧の低下をユーザに報知し、自動消灯する車両用照明装置を実現することが可能となる。また、イグニッション信号を車両用照明装置に供給する必要がないため、接続する信号線の数、信号線に関する接続回路等の削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用照明装置の概要構成を示す概要構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるオーバヘッドモジュールの外観を示す外観図である。
【図3】本発明の実施形態に係るオーバヘッドモジュールの回路構成を示す回路構成図である
【図4】本発明の実施形態におけるバッテリ電圧の変化と車両用照明装置の制御との関係を説明する説明図である。
【図5】本発明の実施形態におけるバッテリ電圧とランプのDUTY値の関係を示す特性図である。
【図6】本発明の実施形態における照明制御の処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0036】
10 車両用照明装置、11 発光体、12 バッテリ、13 電圧測定手段、14 バッテリセーバ手段、15 スイッチング回路、16 スイッチ、17,23 シリアル通信回路、21 電源回路、22 電圧測定回路、40 オーバヘッドモジュール、42,43 マップランプスイッチ、44,45,46 スイッチ、47,48 マップランプ、49 ドームランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから供給された電圧を調整して発光体に出力し、車両の照明を制御する車両用照明装置において、
所定時間間隔でバッテリ電圧を測定する電圧測定手段と、
電圧測定手段で測定されたバッテリ電圧の変動が所定の変動より小さい場合には、所定の照度となるように電圧を制御し、
電圧測定手段で測定されたバッテリ電圧の変動が所定の変動以上となる場合には、測定されたバッテリ電圧に応じて発光体の照度を制御し、かつ、バッテリ電圧に応じた照度の制御が所定時間以上継続する場合には、発光体への電力供給を停止するバッテリセーバ手段と、
を有することを特徴とする車両用照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用照明装置において、
バッテリセーバ手段は、さらに、
電圧測定手段で測定されたバッテリ電圧が予め決められた下限電圧まで低下した場合には、発光体への電力供給を停止することを特徴とする車両用照明装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用照明装置において、
点灯指示を受け付ける受付手段はシリアル通信回線を有し、
イグニッション信号等の車両信号を用いることなく、照明制御を行うことを特徴とする車両用照明装置。
【請求項4】
バッテリから供給された電圧を調整して発光体に出力し、車両の照明を制御する車両用照明装置の制御方法において、
所定時間間隔でバッテリ電圧を測定する電圧測定工程と、
電圧測定工程で測定されたバッテリ電圧の変動が所定の変動より小さい場合には、所定の照度となるように電圧を制御し、
電圧測定工程で測定されたバッテリ電圧の変動が所定の変動以上となる場合には、測定されたバッテリ電圧に応じて発光体の照度を制御し、かつ、バッテリ電圧に応じた照度の制御が所定時間以上継続する場合には、発光体への電力供給を停止するバッテリセーバ工程と、
を有することを特徴とする車両用照明装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用照明装置の制御方法において、
バッテリセーバ工程は、さらに、
電圧測定工程で測定されたバッテリ電圧が予め決められた下限電圧まで低下した場合には、発光体への電力供給を停止することを特徴とする車両用照明装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−143203(P2008−143203A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329249(P2006−329249)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】