説明

車両用照明装置

【課題】自車以外の対象物に照明による情報を適切に伝達する。
【解決手段】車両用照明装置は、自車位置を検出するGPS受信機11と、対象物を検出して対象物位置を特定する対象検出装置13と、情報提供の内容を表す情報提供画像を記憶する画像格納装置14と、GPS受信機11により検出された自車位置と対象検出装置13により特定された対象物位置とに基づいて、画像格納装置14に記憶された情報提供画像の向きを、投影中心を基準に前記対象物位置の方向に回転させる画像処理を行う描画図形生成装置16と、描画図形生成装置16により画像処理された情報提供画像の光を路面に照射する照明装置17と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面に図形や文字等の情報を照射することでドライバに情報提供する照明装置が知られている。しかし、自車から見やすいように照射した図形や文字は自車以外の位置から見ると、路面上で歪んでしまうため、図形や文字の情報が伝わらない。
【0003】
例えば、出会頭警報装置は、右の交差道路から接近する車両があることを自車のドライバに伝えたい場合、右注意を示す図形(例えば、矢印マーク)を路面に描画して自車のドライバに情報を伝達できる。しかし、交差車両に対しては、視点が異なるため、図形が変形して交差車両のドライバは理解できない問題がある。
【0004】
これに対して、スクリーンに投影された画像の歪みを補正すべく、生成される画像の座標位置を変換する技術が開示されている(特許文献1を参照)。特許文献1の技術では、PCなどから入力された画像信号がフレームメモリに貯えられた状態から表示のために液晶プロジェクタに書き込まれるまでのプロセスにおいて、同文献の座標変換式(3)及び(4)を用いて画像の歪みが補正される。
【特許文献1】特開2003−29714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術は、投射機に対するスクリーン面の角度に基づいて投影画像を変形させているに過ぎず、スクリーンに対する投射画像の観察者の方向を考慮したものではない。このため、特許文献1の技術を出会頭警報装置に適用しても、相変わらず、交差車両のドライバは図形を理解できない問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、自車以外の対象物に照明による情報を適切に伝達できる車両用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明である車両用照明装置は、自車位置を検出する自車位置検出手段と、対象物を検出又は対象物の位置を示す情報を受信して対象物位置を特定する対象物位置特定手段と、情報提供の内容を表す情報提供画像を記憶する情報提供画像記憶手段と、前記自車位置検出手段により検出された自車位置と前記対象物位置特定手段により特定された対象物位置とに基づいて、前記情報提供画像記憶手段に記憶された情報提供画像の向きを、投影中心を基準に前記対象物位置の方向に回転させる画像処理を行う画像処理手段と、前記画像処理手段により画像処理された情報提供画像の光を路面に照射する照射手段と、を備えている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用照明装置であって、前記画像処理手段は、前記対象物位置特性手段により複数の対象物についての対象物位置が特定された場合、対象物毎に情報提供画像の画像処理を行い、前記照射手段は、画像処理された複数の情報提供画像の光を時分割で路面に照射する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の車両用照明装置であって、地図情報を格納する地図情報格納手段を更に備え、前記画像処理手段は、前記自車位置と前記地図情報格納手段に格納された地図情報とに基づいて決定された情報提供画像に対して画像処理を行う。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用照明装置であって、前記照射手段は、前記自車位置と前記地図情報格納手段に格納された地図情報とに基づくタイミングで、画像処理された情報提供画像の光を路面に照射する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、自車位置と対象物位置とに基づいて情報提供画像の向きを投影中心を基準に対象物位置の方向に回転させて、その画像処理された情報提供画像の光を路面に照射することにより、対象物に対して照明による情報提供を適切に行うことができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、複数の対象物が存在する場合であっても、各々の対象物に対して照明による情報提供を適切に行うことができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、自車位置に応じた最適な情報内容を提供することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、最適なタイミングで対象物に対して情報提供を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用照明装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る車両用照明装置は、車両(以下「自車」という。)に搭載され、路面に情報提供内容に応じた図形が現れた光を照射することにより、自車から他の車両(以下「他車」という。)に対して情報を提供する。
【0017】
上記車両用照明装置は、自車位置を検出するGPS(Global Positioning System)装置11、地図情報を格納する地図情報格納装置12、情報を提供すべき対象(以下、単に「対象」という。)を検出する対象検出装置13、画像を格納する画像格納装置14、画像の変形量を計算する変形量計算装置15、描画図形を生成する描画図形生成装置16、光を照射する照明装置17を備えている。
【0018】
GPS受信機11は、衛星から送信された電波を受信して、自車位置である緯度及び経度を検出する。なお、GPS受信機11は必須ではなく、自車と他車との相対的な位置関係が分かるものであれば他の装置を用いてもよい。例えば、路側のシステムから接近する車両情報を入手する装置を用いてもよい。地図情報格納装置12は、道路や建物等を表す地図情報を記憶している。
【0019】
対象検出装置13は、情報を提供すべき対象を検出し、その対象の位置を特定する。なお、対象検出装置13は、対象の位置を検出できれば特に限定されるものではなく、例えばレーザレーダであってもよいし、撮像装置であってもよい。本実施形態では、対象検出装置13は、レーザレーダであるものとし、自車位置に対する対象の相対位置(距離、向き)を検出する。
【0020】
画像格納装置14は、提供すべき情報を表す画像が記憶されている。図2(a)は、画像格納装置14に格納されている感嘆符“!”の画像を示す図である。本実施形態では、ドライバに対して注意を促すために感嘆符の画像を用いているが、その他、矢印を表す画像、文字を表す画像等を用いてもよい。
【0021】
変形量計算装置15は、GPS受信機11で検出された自車位置と、対象検出装置13で検出された相対位置と、に基づいて、変形量として図形の回転角αを計算する。
【0022】
描画図形生成装置16は、変形量計算装置15で計算された回転角αを用いて、画像格納装置14で格納された画像に対して変形処理を行うことにより描画図形を生成する。照明装置17は、自車両から進行方向に対して所定距離の位置に、描画図形生成装置16で生成された描画図形が現れるように光を照射する。
【0023】
以上のように構成された車両用照明装置は次の車両用照明制御ルーチンを実行することにより車両用照明を制御する。
【0024】
図3は、車両用照明制御ルーチンを示すフローチャートである。ここでは、次のような状況を想定して説明する。図4(A)は自車(A車)からみて左側から右側に向かって他車(B車)が走行している状況を示す図であり、同図(B)は上方からみた自車と他車の状況を示す図である。
【0025】
図3に示すステップS1では、GPS受信機11が自車位置を検出し、対象検出装置13が自車位置に対する他車までの相対位置を検出する。そして、地図情報格納装置12は、自車位置及びその周辺の地図情報を読み出し、ステップS2に移行する。
【0026】
ステップS2では、変形量計算装置15は、GPS受信機11で検出された自車位置と、対象検出装置13で検出された自車位置に対する他車の相対位置とに基づいて、画像格納装置14に格納されている図形の変化量として回転角αを計算して、ステップS4に移行する。
【0027】
図5は、同一平面の路上にある自車位置P、他車位置Qを示す図である。ここでは簡単化のため、点P及びQは同一平面上にあるものとする。
【0028】
ここで、点Pから投射された法線をL1、法線L1と路面の交点をA、法線L1と路面とのなす角をθ、点Bと点Q水平面上でのなす角をαとする。また、プロジェクタの座標系をU−V、路面前の仮想投影座標系をU’−V’、点Pからの路面座標系をX−Y、点Qからの路面座標系をX’−Y’とする。さらに、点Pにおける自車位置の投影の高さをh、点Aまでの距離をL、投影中心Pとプロジェクタ面との距離をfとする。なお、点P及びQの高さは同じとする。
【0029】
(u,v)は、倍率kで(u’,v’)に投影されるので、式(1)が成り立つ。
【0030】
【数1】

ここで、
【0031】
【数2】

であることを考慮すると、式(2)となる。
【0032】
【数3】

【0033】
さらに、前照灯の照射は縦に長く横には広がり小さく遠方に照射することを考慮して、Lはhに比べて十分大きく、投射面もLに比べて狭く、路面描画領域は台形でなく長方形と仮定すると、式(3)が成り立つ。
【0034】
【数4】

【0035】
点Qからみた座標系X’−Y’はα回転しているので、式(4)が成り立つ。
【0036】
【数5】

【0037】
したがって、式(2)〜(4)より、式(5)が導かれる。
【0038】
【数6】

【0039】
ステップS2においては、PA間、QA間は既知であり、PQ間は自車に対する他車の相対位置に相当する。そこで、変形量計算装置15は、これらの情報を用いて回転角αを計算して、ステップS4に移行する。
【0040】
ここで、式(5)において、路面と投射法線L1とのなす角θ、焦点距離f、Lはそれぞれ自車に固有の値(既知)であるが、αのみが変数になっている。
【0041】
そこで、ステップS3では、描画図形生成装置16は、ステップS2で計算されたαを用いて、u−v座標で与えられる画像に対して式(5)を適用することにより、α回転した画像、すなわち描画図形を生成して、ステップS4に移行する。
【0042】
図2(b)は、図2(a)に示す感嘆符の画像“!”をα回転した状態を示す図である。同図に示すように、u−v座標で与えられる感嘆符の画像に対して式(5)を適用すると、α回転した感嘆符の画像(描画図形)が得られる。
【0043】
ステップS5では、照明装置17は、描画図形生成装置16で生成された描画図形の光を路面に照射して、処理を終了する。ここでは、照明装置17は、GPS受信機11で検出された自車位置と、地図情報格納装置12に記憶された自車位置周辺の地図情報とに基づいて、例えば、自車と他車が接近している交差点から自車位置が所定距離内になったときに、光を照射するとよい。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る車両用照明装置は、情報提供すべき対象である他車の進行方向に応じて、「注意」を表す感嘆符の画像を回転変形して描画図形を生成し、この描画図形を路面に照射する。これにより、上記車両用照明装置は、感嘆符の描画図形を他車から見やすいようにすることができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計上の変更をされたものにも適用可能であるのは勿論である。
【0046】
例えば上述した実施形態では、自車が情報提供すべき対象物として他車を例に挙げて説明したが、そのほか、歩行者、二輪車であってもよい。
【0047】
上述した実施形態において、対象検出装置13が複数の他車を検出した場合、描画図形生成装置16は各他車についての描画図形を生成し、照明装置17は描画図形生成装置16で生成された各描画図形の光を、自車に対する他車の相対距離が近いものから順に時分割で路面に照射すればよい。
【0048】
さらに、上述した実施形態において、情報提供内容を表す画像は感嘆符の画像であったが、自車位置と地図情報とに基づいて決定されるものでもよい。例えば、情報提供内容を表す画像は、自車と他車が近付いている交差点に自車が近付くに従って、“!”、“!!”、“!!!”と変化してもよいし、自車から交差点までの距離を表す数字であってもよい。
【0049】
また、車両用照明装置は、図1に示す対象検出装置13の代わりに、他車の位置情報を受信する受信機を備えても良い。このとき、受信機は、他車の位置情報を当該他車より直接受信してもよいし、基地局を介して受信してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用照明装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は画像格納装置に格納されている感嘆符“!”の画像を示す図であり、(b)は(a)に示す感嘆符の画像“!”をα回転した状態を示す図である。
【図3】車両用照明制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】(A)は自車(A車)からみて左側から右側に向かって他車(B車)が走行している状況を示す図であり、(B)は上方からみた自車と他車の状況を示す図である。
【図5】同一平面の路上にある自車位置P、他車位置Qを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
11 GPS受信機
12 地図情報格納装置
13 対象検出装置
14 画像格納装置
15 変形量計算装置
16 描画図形生成装置
17 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
対象物を検出又は対象物の位置を示す情報を受信して対象物位置を特定する対象物位置特定手段と、
情報提供の内容を表す情報提供画像を記憶する情報提供画像記憶手段と、
前記自車位置検出手段により検出された自車位置と前記対象物位置特定手段により特定された対象物位置とに基づいて、前記情報提供画像記憶手段に記憶された情報提供画像の向きを、投影中心を基準に前記対象物位置の方向に回転させる画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段により画像処理された情報提供画像の光を路面に照射する照射手段と、
を備えた車両用照明装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記対象物位置特性手段により複数の対象物についての対象物位置が特定された場合、対象物毎に情報提供画像の画像処理を行い、
前記照射手段は、画像処理された複数の情報提供画像の光を時分割で路面に照射する
請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項3】
地図情報を格納する地図情報格納手段を更に備え、
前記画像処理手段は、前記自車位置と前記地図情報格納手段に格納された地図情報とに基づいて決定された情報提供画像に対して画像処理を行う
請求項1または請求項2に記載の車両用照明装置。
【請求項4】
前記照射手段は、前記自車位置と前記地図情報格納手段に格納された地図情報とに基づくタイミングで、画像処理された情報提供画像の光を路面に照射する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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