説明

車両用燃料タンクのプロテクタ

【課題】車両用燃料タンクに強固に固定できかつ組付け性の向上を図り得る車両用燃料タンクのプロテクタを提供することを目的とする。
【解決手段】燃料タンク100の周囲に設けられたフランジ部115を挟み込む挟み込み部140を有する車両用燃料タンクのプロテクタ130において、挟み込み部140は、フランジ部115の一方の面に対して突出し当接する第1当接部150と、フランジ部115の他方の面に対して突出し当接する第2当接部152、153とを備え、第1当接部150と第2当接部152、153とは、フランジ部115に沿って交互にフランジ部115に当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用燃料タンクの周囲に設けられたフランジ部を挟み込む挟み込み部を有する、車両用燃料タンクのプロテクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料タンクのプロテクタは、燃料タンクの車体前後方向の前方側に配置され、走行時の前輪で巻き上げられた石や泥等の燃料タンクへの衝突を防止し、塗装はがれや損傷を低減するために使用される。
【0003】
このプロテクタは、ボルト等により燃料タンクの周囲に設けられたフランジ部に固定されることが多い。また、プロテクタが大型になると、燃料タンクへの固定箇所の追加が必要となるが、固定用のボルトの本数を増やすと作業性の悪化やコストの増加につながる。
【0004】
これを回避するため、例えば特許文献1には、ボルトを追加せず、プロテクタに挟み込み部を形成し、この挟み込み部で燃料タンクのフランジ部を挟み込んでプロテクタを固定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−18487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、プロテクタに形成した挟み込み部でフランジ部を挟み込むと、走行時の振動により挟み込み部と接触するフランジ部の塗装が剥がれ、錆発生の原因となるおそれがあった。
【0007】
このため、従前より、燃料タンクのフランジ部に容易に組み付けることができ、かつ車両走行時の振動によるフランジ部との間の接触面の滑りおよび擦れを抑制し、もってフランジ部の塗装の剥がれとめっきの剥がれを防止することのできる技術の開発が要望されていた。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、車両用燃料タンクに強固に固定することができかつ組付け性の向上を図り得る車両用燃料タンクのプロテクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用燃料タンクのプロテクタの代表的な構成は、車両用燃料タンクの周囲に設けられたフランジ部を挟み込む挟み込み部を有する車両用燃料タンクのプロテクタにおいて、挟み込み部は、フランジ部の一方の面に対して突出し当接する1つ以上の第1当接部と、フランジ部の他方の面に対して突出し当接する2つ以上の第2当接部とを備え、第1当接部と第2当接部とは、フランジ部に沿って交互にフランジ部に当接していることを特徴とする。
【0010】
本発明では、第1当接部と、第2当接部とが、フランジ部に沿って交互にフランジ部の上面と下面に互い違いに当接する。すなわち、第1当接部、第2当接部の対向面側には隙間があるため、挟み込み部をフランジ部に嵌入する際の組付け性の向上が図られる。
【0011】
また、挟み込み部は、少なくとも車両用燃料タンクの前部を挟み込んでいるようにするとよい。この構成により、車体走行時の風圧等に対してプロテクタはロアタンクパネルに押し付けられる方向に付勢され、燃料タンク本体からの離脱が防止される。
【0012】
さらに、第1当接部の突出している高さと第2当接部の突出している高さとをほぼ等しくするとよい。この構成により、挟み込み部をフランジ部に嵌入するときの操作をより簡単に行うことが可能となる。
【0013】
また、第2当接部がフランジ部に当接する面積は、第1当接部がフランジ部に当接する面積よりも大きくするとよい。この構成により、全体としてフランジ部と挟み込み部との当接面積の総和を大きくすることが可能となり、当接面の摩擦抵抗が増加する。こうして、車両走行時の振動によるフランジ部と挟み込み部との当接面の滑りが低減され、擦れが抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両用燃料タンクに強固に固定することができかつ組付け性の向上を図り得る車両用燃料タンクのプロテクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のプロテクタと車両用燃料タンクの分解斜視図である。
【図2】図1の車両用燃料タンクの正面図である。
【図3】図1のプロテクタの拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図2のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図4のフランジ部に代えて他のフランジ部に本実施形態を適用した場合を示す、図4に対応する断面図である。
【図8】(a)(b)は、図7を別の観点から示す、それぞれ図5および図6に対応する断面図である。
【図9】比較例1を示す図であり、本実施形態の図4に対応する断面図である。
【図10】比較例2を示す図であり、本実施形態の図7に対応する断面図である。
【図11】比較例2を示す図であり、本実施形態の図8(a)(b)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0017】
なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、本実施形態において、説明の便宜上、「上」は鉛直上方、「下」は鉛直下方とする。
【0018】
図1は、本実施形態のプロテクタと車両用燃料タンクの分解斜視図、図2は、プロテクタが取付けられた車両用燃料タンクの正面図である。
【0019】
車両用燃料タンク(以下、「燃料タンク」という)100は、金属製のアッパタンクパネル114およびロアタンクパネル116が、それぞれの周囲のフランジ部115−1、115−2にてシーム溶接等により一体接合されて形成されたものである。以下、これらフランジ部115−1、115−2が接合されて一体化したものをフランジ部115と称する。燃料タンク100の内部には、燃料貯蔵用の内部空間が形成されていて、この内部空間に燃料ポンプ112が収容されている。
【0020】
アッパタンクパネル114には、中心よりも外方寄りの位置に貫通孔118が形成されている。この貫通孔118に、燃料を吸い上げて吐出する燃料ポンプ112が挿入されている。貫通孔118に挿入された燃料ポンプ112は、上面をプレート120で覆われ、底面をロアタンクパネル116に密接されて複数のボルト122で締結固定されている。燃料タンク100の後部には、いずれも図示しないフィラーホースとブリーザホースの取付け部124、126が設けられている。
【0021】
フランジ部115には、複数のボルト挿通孔128が形成されている。燃料タンク100は、このボルト挿通孔128を用いてボルト(図示せず)により車体に取り付けられる。また、燃料タンク100の前方部分および左側方部分を回り込むようにプロテクタ130が固定されている。このプロテクタ130は、合成樹脂や金属等からなる。
【0022】
図3は、図1のプロテクタの拡大図である。本実施形態では、燃料タンク100は車体底部の左側に配置されていて、左前輪のタイヤで跳ね上げられた小石や泥等が燃料タンク100の前面と左側面前部に当たるおそれがあるため、これらの部分にプロテクタ130が装着されている。
【0023】
図3に示すように、プロテクタ130は、燃料タンク100のロアタンクパネル116(図3では図示省略)の前面および左側面に沿って湾曲して連続的に立設された前部壁面132および側部壁面134を有している。また、これら前部壁面132および側部壁面134の上部には、前面フランジ部136および側面フランジ部138がそれぞれ車体前方および側方に張り出すように形成されている。これら前面および側面フランジ部136、138は、燃料タンク100のフランジ部115に部分的に面接触可能に同一高さに形成されている。
【0024】
前部壁面132および側部壁面134は、燃料タンク100のロアタンクパネル116の前面および左側面を覆うような所定高さの範囲に形成されている。前部壁面132には、車幅方向の中央上部に挟み込み部140が形成されている。この挟み込み部140は、燃料タンク100の前部(車両前方側)のフランジ部115を挟み込むようになっている。
【0025】
このように、本実施形態によれば、挟み込み部140が燃料タンク100の前部を挟み込むようにすることで、車体走行時の風圧等に対してプロテクタ130はロアタンクパネル116に押し付けられる方向に付勢される。このため、プロテクタ130が燃料タンク100から離脱するのを防止することができる。
【0026】
また、挟み込み部140は、車幅方向の中央に断面略U字状の第1当接部150と、その左右両側に第2当接部152、153とを有している。さらに、第1および第2当接部150、152、153の後部には、上方に起立するガイド部149が形成されている。このガイド部149は、挟み込み部140にフランジ部115を挟み込む際に、当該フランジ部115をガイドする役目をなす。
【0027】
例えば、メインテナンスにより車体底部の燃料タンク100にプロテクタ130を取付ける際は、狭いスペースで作業を行うことが多く、位置合わせが困難となる。しかし、このガイド部149を有することにより、容易にフランジ部115を挟み込み部140に挟み込むことができる。
【0028】
また、プロテクタ130における前部壁面132の車両右側面側の前面フランジ部136には、ボルト締付孔(ボス)142が形成されている。さらに、前部壁面132の車両左側面側の側面フランジ部138には、ボルト締付孔(ボス)144が形成されている。
【0029】
燃料タンク100にプロテクタ130を取付けるには、挟み込み部140によって、フランジ部115の前部を挟み込む。さらに、ボルト締付孔(ボス)142、144に、燃料タンク100のフランジ部115に形成されたボルト挿通孔129を中心合わせする。次いで、ボルト(タッピングスクリュ等)154、155を挿通して(図1参照)、燃料タンク100の前部にプロテクタ130を締付け固定する。
【0030】
なお、プロテクタ130の側面フランジ部138には、前方寄りに燃料パイプおよびエバポレータホースのクランプ部146、148が形成されている。これらのクランプ部146、148は、中空の半円筒状をなしている。そして、この半円筒部にパイプおよびホースを挿入して、これらをクランプする。
【0031】
図4は、図3のIV−IV線に沿う断面図であり、図5は、図2のV−V線に沿う断面図、図6は、図2のVI−VI線に沿う断面図である。
【0032】
図4〜図6において、挟み込み部140は、第1当接部150と第2当接部152、153とを備えている。なお、第2当接部152と第2当接部153とは同一構成であるので、図6では、第2当接部152をこれらの代表として図示している。
【0033】
第1当接部150は、フランジ部115の一方の面115aに対して突出し当接する。この第1当接部150に対向する位置には、フランジ部115の他方の面115bとの間に隙間を有し第2当接部152、153を接続する対向部150bがある。これら第1当接部150と対向部150bとは、断面略U字状をなしている(図5参照)。
【0034】
また、第2当接部152、153は、フランジ部115の他方の面115bに対して突出し当接する。これら第2当接部152、153に対向する位置には、フランジ部115の一方の面115aとの間に隙間を有し第1当接部150の両側に位置する対向部152b、153bがある。これら第2当接部152、153と対向部152b、153bとは、断面略U字状をなしている(図6参照)。
【0035】
本実施形態では、フランジ部115に沿って中央に第1当接部150が、フランジ部115の一方の面115aに当接している。また、その左右側に隣接する第2当接部152、153が、それぞれフランジ部115の他方の面115bに当接している。
【0036】
このように、第1当接部150と、第2当接部152、153とが、フランジ部115に沿って交互にフランジ部115の上面(115a)と下面(115b)に互い違いに当接し、それぞれの第1当接部150、第2当接部152、153との対向面側には隙間を有しているため、挟み込み部140をフランジ部115に嵌入する際の組付け性の向上を図ることができる。また、第1当接部150の両側に位置する対向部152b、153bはフランジ部115から離間しているので、つまり、挟み込み部140の車両上方側のフランジ部115に沿う方向の両端末部はフランジ部115から離間しているので、フランジ部115への嵌入が容易となっている。これらに伴い、第1当接部150と第2当接部152、153とのフランジ部115の面に対して垂直な方向の隙間Δ1(図4参照)を小さく設定することができる。よって、挟み込み部140のフランジ部115への挟み込みをタイトにすることができ、第1当接部150および第2当接部152、153のフランジ部115への当接面(接触面)のフランジ部115に対する摩擦抵抗を増加させることができる。そのため、車両走行時の振動によるフランジ部115と挟み込み部140との当接面(接触面)の滑りが低減され、擦れが抑制される。したがって、錆防止用のゴムパッド等をフランジ部115の当接面(接触面)に貼り付ける必要がない。
【0037】
なお、第1当接部150と対向部152b、153bとは、傾斜した段差部156、157で接続されている。同様に、対向部150bと第2当接部152、153は、傾斜した段差部158、159で接続されている。
【0038】
ここで、フランジ部115には、主にシーム溶接により歪が発生しているが、この歪により、挟み込み部140をフランジ部115に嵌入するのを妨害するおそれがある。よって、この嵌入を可能とするために、フランジ部115の歪および挟み込み部140の成形精度を見込んで、フランジ部115の板厚よりも挟み込み部140の隙間寸法を若干大きく設定しているのが実情である。
【0039】
図7は、図4のフランジ部115に代えて他のフランジ部215(歪が発生しているフランジ部)に本実施形態を適用した場合を示す、図4に対応する断面図である。この図7では、フランジ部215の一方の面215aと他方の面215bとが、シーム溶接等により挟み込み部140の左右方向の中央において歪が発生し、上下に寸法H1だけ開いた状態を示している。
【0040】
図8(a)(b)は、図7を別の観点から示す、それぞれ図5および図6に対応する断面図である。この図8(a)(b)は、第1当接部150および第2当接部152に対し、それぞれフランジ部215の一方の面215aと他方の面215bとが、シーム溶接等により接合部の先端側において歪が発生し、先端が上下に寸法H1だけ開いた状態を示している。
【0041】
このような場合でも、本実施形態によれば、第1当接部150と対向部150bとの間に隙間Δ(Δ>H1)が確保されているので、フランジ部215を容易に挿入することができる。
【0042】
本実施形態によれば、図4に示したように、挟み込み部140の第1当接部150と第2当接部152、153とが、フランジ部115に沿って交互に当該フランジ部115に当接し、それぞれの当接部の対向面側にはフランジ部115との間に隙間を有している。したがって、例えばフランジ部115が歪により図7のフランジ部215や図8のフランジ部215のように変形していても、容易に嵌入することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、挟み込み部140として、1つの第1当接部150と、2つの第2当接部152、153とを有する場合について説明したが、それぞれの当接部の数はこれに限らない。これら第1当接部150と第2当接部152、153の個数は、プロテクタ130の大きさ等に応じて任意に設定してよい。
【0044】
第1当接部、第2当接部の数を増やすほどプロテクタ130は燃料タンク100を安定的に挟み込むことができる。ただし、挟み込み部140をフランジ部115に嵌入するときの位置合わせが煩雑となるため、挟み込み部140をフランジ部115に嵌入するときの組付け性は低下する。したがって、本実施形態の第1当接部、第2当接部は、組付け性の観点から言えば最も望ましい個数である。
【0045】
また、本実施形態のように、第1当接部、第2当接部の数を最小限とすれば、プロテクタ130を樹脂成形(射出成形)で製造する場合、成形型のスライド部分を少なくすることができる。これにより、成形時のスライドにより成形品が引っ張られ難くなり、製品精度が向上するとともに、寸法管理が容易となる。また、型費および製品コストを低く抑えることができる。
【0046】
また、図4に示すように、本実施形態では、第1当接部150が第2当接部152、153の対向部152b、153bに対してフランジ部115側に突出している高さh1と、第2当接部152、153が第1当接部150の対向部150bに対してフランジ部115側に突出している高さh2とはほぼ等しい。
【0047】
よって、第1当接部150と対向部150bとの隙間Δ(デルタ)と、第2当接部152、153と対向部152b、153bとの隙間Δとは、ほぼ等しくなっている。また、傾斜した段差部156、157とそれぞれに対向する傾斜した段差部158、159との距離(隙間)も、上記隙間Δとほぼ等しくなっている。
【0048】
このため、第1当接部150と第2当接部152、153におけるそれぞれの対向面間の隙間Δ、すなわち、フランジ部115に沿う挟み込み部140の隙間寸法は傾斜した段差部156〜159を含めて全体としてほぼ等しい。これにより、フランジ部115に挟み込み部140を嵌入するときの操作をより簡単に行うことができる。
【0049】
さらに、本実施形態によれば、第1当接部150と第2当接部152、153とは、フランジ部115に沿って交互にフランジ部115に当接しているため、フランジ部115の一方の面115aまたは他方の面115bのどちらか一方で、挟み込み部140とフランジ部115との隙間Δ2を確保することができる。
【0050】
このため、挟み込み部140に入り込んだ小石や泥等は車体走行時の振動等によって容易に排出される。こうして、フランジ部115と挟み込み部140との隙間Δ2に小石や泥等が留まることによって、水分が滞留したり、防錆力が低下したりするのを防止することができる。
【0051】
さらに、図4に示すように、第2当接部152、153が、フランジ部115の他方の面115bにそれぞれ当接する面積Bの和2B(Bの2倍)は、第1当接部150が、フランジ部115の一方の面115aに当接する面積Aよりも大きい。本実施形態では、第2当接部152、153の当接面積2Bは、第1当接部150の当接面積Aの略2倍となっている。また、第2当接部152、153は、フランジ部115に沿って第1当接部150とは反対側の方向に(対向部152b、153bがない部分であっても)延長して上記面積Bを拡大することが可能である。
【0052】
本実施形態によれば、全体としてフランジ部115と挟み込み部140との当接面積の総和(A+2B)を大きくすることができ、これにより、当接面の摩擦抵抗が増加する。
また、第1当接部150より第2当接部152、153の当接面積を大きくしたことで、挟み込み部140のフランジ部115への挿入しやすさと、摩擦力の確保との両立を図ることができる。こうして、車体走行時の振動によるフランジ部115と挟み込み部140との当接面の滑りが低減され、擦れを抑制することができる。このため、フランジ部115の塗装剥がれ、めっき剥がれによる錆の発生を防止することができる。
【0053】
(比較例1)
図9は、本実施形態に対する比較例を示す図であり、本実施形態の図4に対応する断面図である。
【0054】
図9では、挟み込み部160は、フランジ部115に当接する部分162とフランジ部115から離間する部分164、165とを有している。フランジ部115に当接する部分162は、フランジ部115の一方の面115aに当接する凸部162aと、他方の面115bに当接する凸部162bとを有している。また、フランジ部115から離間する部分164、165は、それぞれフランジ部115から離間する対向部164a、164b、165a、165bを有している。
【0055】
また、図9に示すように、フランジ部115の一方の面115aにゴムパッド166を貼り付けている。こうすることで、比較例では、挟み込み部160とフランジ部115との間の擦れを抑制し、フランジ部115の錆の発生を防止していた。しかし、この比較例では、フランジ部115にゴムパッド166を貼り付けているため、材料費の増加と重量の増加、および作業効率の低下をもたらす。
【0056】
これに対し、本実施形態によれば、前述したように、錆防止用のゴムパッド等が不要となり、コスト、重量の増加を抑制することができる。さらに、ゴムパッド等の貼り付け作業が不要となり、作業効率の低下を抑制することができる。
【0057】
また、比較例1では、フランジ部115に当接する部分162の当接面積は上下面を合わせても最大で2Cである。これに対し、本実施形態では、前述したように、全体としてフランジ部115と挟み込み部140との当接面積はA+2Bであり、A≒B≒Cと仮定しても、本実施形態の方が比較例よりも大きい。こうして、本実施形態によれば、フランジ部115と挟み込み部140との当接面の摩擦抵抗を比較例1よりも増加させることができる。
【0058】
なお、比較例1において、フランジ部115に当接する部分162の隙間δ(デルタ)を狭くして、フランジ部115を強く挟み込むようにすれば解決可能に思われる。しかし、この場合は、次の比較例2で示すような不都合が生じる。
【0059】
(比較例2)
図10および図11は、本実施形態に対する比較例2を示す図であり、それぞれ、本実施形態の図7、図8(a)(b)に対応する断面図である。なお、比較例2は、ゴムパッドを有していない点が比較例1と相違している。
【0060】
図10に示すように、隙間δを狭くしてしまうと、挟み込み部160の成形精度のばらつきや、フランジ部215のシーム溶接等により歪が生じ得ることから、挟み込み部160の左右方向の中央にフランジ部215の歪が発生し上下に寸法H1だけ開いた場合は、組付性が悪くなってしまう。
【0061】
これに対し、本実施形態では、前述したように(図7の説明参照)、第1当接部150における第1当接部150と対向部150bとの間に十分な隙間Δが生じているので、組付性に影響は生じない。
【0062】
さらに別の方向の断面で見ると、比較例2では、図11に示すように、フランジ部215に当接する部分162の隙間δを狭くした場合、挟み込み部160の成形精度のばらつきや、フランジ部215のシーム溶接等により歪が生じて、フランジ部215の先端部が開いて寸法H1に膨らむことにより、組付け性が悪くなる。このため、比較例2では、隙間δを大きく設定しなければならない。
【0063】
これに対し、本実施形態では、図8(a)(b)に示したように、フランジ部115の先端部が図10、図11のフランジ部215のように寸法H1に膨らんだとしても、第1当接部150等における凸部と対向部との間に十分な隙間Δが生じているので、組付性に影響は生じない。
【0064】
このように、比較例2においては、隙間δを狭くすると、挟み込み部160の当接面とフランジ部215との上下の隙間がなくなってしまい、組み付けが困難になるため、組付け性が改善されるところまで隙間δを若干大きく設定する必要がある。そうすると、挟み込み部160の当接する部分162とフランジ部215との間には狭い隙間が存在することになり、そこに小石や泥等が入り込むと外に出にくいので溜まったままとなる。これらの小石、泥等は、長期間溜まり続けることで、防錆力低下の原因になると考えられる。また、挟み込み部160のフランジ部215への挟み込みが緩くなるので、車両走行時の振動によりフランジ部215と挟み込み部160の当接面(接触面)が滑り易くなり擦れ易くなる。よって、挟み込み部160とフランジ部215との隙間を埋めるためおよび擦れを防止するために、比較例1のように錆防止用のゴムパッド等を貼り付ける必要がある。
【0065】
上記で詳述したように、本実施形態によれば、少なくとも組付性や防錆力等の点において、いずれも比較例1および比較例2に対して優っているといえる。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、車両用燃料タンクの周囲に設けられたフランジ部を挟み込む挟み込み部を有する、車両用燃料タンクのプロテクタに利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
100…燃料タンク(車両用燃料タンク)、112…燃料ポンプ、114…アッパタンクパネル、115…フランジ部、115a…一方の面、115b…他方の面、116…ロアタンクパネル、118…貫通孔、120…プレート、122…ボルト、128…ボルト挿通孔、129…ボルト挿通孔、130…プロテクタ、132…前部壁面、134…側部壁面、136…前面フランジ部、138…側面フランジ部、140…挟み込み部、142…ボルト締付孔(ボス)、144…ボルト締付孔(ボス)、149…ガイド部、150…第1当接部、150b…対向部、152…第2当接部、152b…対向部、153…第2当接部、153b…対向部、154…ボルト、155…ボルト、156〜159…段差部、160…挟み込み部、162…当接する部分、162a…凸部、162b…凸部、164…離間する部分、165…離間する部分、166…ゴムパッド、h1…第1当接部の突出している高さ、h2…第2当接部の突出している高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用燃料タンクの周囲に設けられたフランジ部を挟み込む挟み込み部を有する車両用燃料タンクのプロテクタにおいて、
前記挟み込み部は、
前記フランジ部の一方の面に対して突出し当接する1つ以上の第1当接部と、
前記フランジ部の他方の面に対して突出し当接する2つ以上の第2当接部とを備え、
前記第1当接部と前記第2当接部とは、前記フランジ部に沿って交互に該フランジ部に当接していることを特徴とする車両用燃料タンクのプロテクタ。
【請求項2】
前記挟み込み部は、少なくとも前記車両用燃料タンクの前部を挟み込んでいることを特徴とする請求項1に記載の車両用燃料タンクのプロテクタ。
【請求項3】
前記第1当接部の突出している高さと前記第2当接部の突出している高さとはほぼ等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用燃料タンクのプロテクタ。
【請求項4】
前記第2当接部が前記フランジ部に当接する面積は、前記第1当接部が前記フランジ部に当接する面積よりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用燃料タンクのプロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−126310(P2012−126310A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280931(P2010−280931)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】