車両用牽引フック取付孔開閉装置
【課題】本発明は牽引フック取付ブラケットに形成されるねじ孔を開閉する自動車用牽引フック取付部カバーに関し、牽引時の牽引フック取付部カバーの紛失の問題を生ずることがなく、かつ低コストで美観を損なうことがないようにすることを目的とする。
【解決手段】バンパフェーシア12の内側のバンパレインフォース10の下面に牽引フック取付ブラケット14が溶接され、牽引フック34はバンパフェーシア12の開口部12Bを介してブラケット14の牽引フック取付ねじ孔16に螺合装着される。ブラケット14は本体20と蓋板22とから成る樹脂製カバー18によって被覆されている。蓋板22は本体20の前面壁24にスライド式に設けられ、通常は蓋板22はねじ孔16を閉鎖するように位置する。牽引時はバンパフェーシア12の開口部12Bを介しての手動操作により蓋板22はねじ孔16を開放するようにスライドせしめられる。
【解決手段】バンパフェーシア12の内側のバンパレインフォース10の下面に牽引フック取付ブラケット14が溶接され、牽引フック34はバンパフェーシア12の開口部12Bを介してブラケット14の牽引フック取付ねじ孔16に螺合装着される。ブラケット14は本体20と蓋板22とから成る樹脂製カバー18によって被覆されている。蓋板22は本体20の前面壁24にスライド式に設けられ、通常は蓋板22はねじ孔16を閉鎖するように位置する。牽引時はバンパフェーシア12の開口部12Bを介しての手動操作により蓋板22はねじ孔16を開放するようにスライドせしめられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、牽引フックの装着のためバンパレインフォースの牽引フック取付部(ブラケット)に形成されるねじ孔としての牽引フック取付孔を開閉する車両用牽引フック取付孔開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の牽引フックとして通常は車体から外しておき、牽引時に車体に装着するタイプのものがある。樹脂製バンパフェーシアの内側における金属製のバンパレインフォースにブラケットとしての牽引フック取付部が設けられ、牽引フックは、車外よりバンパフェーシアの開口部を介してブラケットの牽引フック取付ねじ孔に螺合装着される。従って、牽引フックは通常時(非牽引時)は外されており、そのままであるとねじ孔及びその周囲の金属地肌部分が外部から丸見えとなって意匠上好ましくないため、バンパフェーシアと同色の樹脂製等の牽引フック取付孔カバーをバンパフェーシアに装着したものが提案されている(特許文献1〜3参照)。また、樹脂製カバーを牽引フック取付ブラケットのねじ孔に係脱可能とし、通常時は樹脂製カバーによってブラケットの牽引フック用ねじ孔を被覆させるが、牽引時に樹脂製カバーを外すようにしたものも提案されている。更に、樹脂製カバーを採用せずに牽引フック取付ブラケットを含めたバンパレインフォース全体を黒色又はバンパフェーシアと同色に塗装することでバンパレインフォースの地金部分が外部から直接見えないようにして意匠性を確保するようにすることも提案されている。
【特許文献1】特開2000−185608号公報
【特許文献2】特開2004−175190号公報
【特許文献3】特開2005−271626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術では樹脂製カバーは通常時は牽引フック用のねじ孔を閉鎖しており、牽引時に取り外すことにより牽引フック用のねじ孔を開放し、牽引フックをバンパフェーシアより車体の牽引フック用のねじ孔に螺合装着し、牽引を行うようにしている。即ち、牽引時に樹脂製カバーは車体から完全に外されてしまうため紛失の畏れがあった。また、バンパレインフォースの牽引フック取付ブラケットに牽引フック取付孔を穿設し、この牽引フック取付孔に樹脂製カバーを装着するようにしたタイプのものでも、樹脂製カバーは牽引操作時は開閉部材は完全に離脱されてしまうため、樹脂製カバーの紛失の恐れが多分にあることは同様であった。そして、樹脂製カバーを使用する代わりに牽引フック取付ブラケットも含めてバンパレインフォースをバンパフェーシアと同一色で塗装する対策は樹脂製カバーとの比較では塗装費用が嵩むためコスト的に不利という問題点があった。地金部分が見えてしまうのを防止する観点ではブラケットの部位のみの塗装で足りるが、局部塗装の実施は技術的にはより煩瑣であり、コスト的にはかえって嵩んでしまうことになり、解決にはならなかった。
【0004】
この発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、牽引時の牽引フック取付カバーの紛失の問題を生ずることがなく、かつ低コストで美観を損なうことがないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明になる牽引フック用開口被覆装置にあっては、車体端部における牽引フック取付孔を開閉する樹脂製等のカバーが車体端部に設けられ、前記カバーはスライド若しくは回動運動等により牽引フック取付孔を選択的に開閉する開閉部材を備え、前記開閉部材は車体端部には離脱不能に連結されている。
【0006】
また、樹脂製バンパフェーシアの内側における金属堰バンパレインフォースに牽引フック取付部(ブラケット)を設け、車外よりバンパフェーシアを介して牽引フックを前記牽引フック取付部の牽引フック取付孔に離脱可能に装着し、牽引フック取付部に牽引フック取付孔カバーを装着するタイプのものでは、牽引フック取付孔カバーを樹脂製とし、該カバーを牽引フック取付部に被覆せしめられる箱状等の本体と、該本体に対し離脱に連結されると共に牽引フック取付孔を選択的に開閉可能である開閉部材とから構成し、開閉部材をスライド若しくは回動により開閉させている。
【発明の効果】
【0007】
開閉部材をスライド若しくは回動により選択的に開閉可能とし、かつ離脱不能に連結しているため、牽引操作中に開閉部材が紛失してしまう恐れは完全に解消することができる。
【0008】
また、バンパレインフォースに設けたブラケットを被覆する合成樹脂牽引フック取付孔カバーを設けたものでは、牽引フック取付孔を選択的に開閉可能とする開閉部材を備えると共に、開閉部材をカバー本体に対して離脱不能に連結しているため、牽引操作中に開閉部材が紛失してしまう恐れは同様に完全に解消することができ、また、金属製のブラケットを合成樹脂牽引フック取付孔カバーにて被覆しているため、外部からバンパレインフォースの金属の地金部分が見えてしまうことがなく美観を確保することができ、かつバンパレインフォースの塗装の必要がないためコスト減を実現することができる。
【0009】
また、開閉部材をスライド若しくは回動式とすることで、車体デザイン上、バンパフェーシアとの間隔が狭い場合にもバンパフェーシアの外側からの確実な開閉操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はこの実施形態における車体の端部(前部若しくは後部)の構造を示し、10はバンパレインフォースであり、車体前部又は後部において実質的に全幅方向に延び、図示しない車体両側を長手方向に延びるサイドメンバの前端又は後端に取り付けられている。バンパレインフォースはアルミニューム材や鋼材等の金属素材にて形成され、アルミニューム素材の場合は押し出し加工にて形成された中空矩形断面をなしている。12はバンパフェーシアであり、合成樹脂等の樹脂素材の成型品であり、バンパレインフォース10はバンパフェーシア12の内側に位置しており、換言すれば、バンパフェーシア12はバンパレインフォース10の前方に位置することで、バンパレインフォース10の全体をカバーしている。バンパレインフォース10とバンパフェーシア12の位置関係は図4及び図5にも示されている。
【0011】
図1に示すように、バンパフェーシア12は通風用の開口部12A, 12Bを穿設しており、第1の開口部12Aはバンパフェーシア12の最下部に位置し、実質的に全幅に延びている。第2の開口部12Bはバンパレインフォースの高さ位置の下側に位置しており、車体両側(右側のみ図示)に設けられるが、この右側の通風用の開口部12Bは後述のように牽引フック装着のための開口としても機能する。
【0012】
バンパレインフォース10の片側(図1の右側)における下面から前記牽引フック取付部としてのブラケット14が下向きに延設される(図2参照)。ブラケット14は金属製であり、この実施形態ではバンパレインフォース10と同等の金属素材にて形成され、溶接等によりバンパレインフォース10とブラケット14とは一体化されている。即ち、ブラケット14は図6に示すように上部にフランジ部14-1を備え、このフランジ部14-1の上面がバンパレインフォース10の下面に溶接されることによりブラケット14はバンパレインフォース10の一体部分を構成している。ブラケット14はねじ孔16を備え、ねじ孔(牽引フック取付孔)16は車体の前後方向に実質的に水平に延びかつで貫通している(図4及び図5)。
【0013】
図2において、18は合成樹脂等の樹脂製の牽引フック取付孔カバー(以下単にカバー)であり、この実施形態ではバンパレインフォース10の金属地金部分が外部から視認されないようにバンパレインフォース10の牽引フック取付部としてのブラケット14を被覆する。カバー18はポリプロピレンやポリエチレンなどの合成樹脂の成形品であり、図1に示す様にカバー18はブラケット14を被覆した状態においてバンパフェーシア12の開口部12Bを通して視認できるが、カバー18は黒色又はバンパフェーシア12と同一色を呈しており、ブラケット14の地金部分が見えてしまうことを防止する役目を果たすことができる。カバー18はブラケット14に装着される箱状本体20と蓋板22とから構成される。箱状本体20はブラケット14の断面形状と双方的なU断面形状をなしており、箱状本体20はブラケット14に実質的な遊びなく被着することができる(図6)。箱状本体20は背面壁20-1に筒状の突起部23を形成しており、この突起部23は図4及び図5に示す様にブラケット14のねじ孔16の後端部に嵌合され、そのため、箱状本体20をブラケットに脱落することなく保持することができる。箱状本体20は別体の前面壁24を備えており、前面壁24が箱状本体20に嵌着される構造となっている。即ち、箱状本体20はその前縁における上部両側に係止突起20-2、下部中央に係止突起 20-3(図3及び図4及び図8)を備え、これらの係止突起20-2, 20-3に前面壁24に形成された対応の係止孔24-1, 24-2が嵌着され、箱状本体20に対する前面壁24の取り付けが行われる。また、前面壁24は牽引フックの導入用の開口26を形成している。尚、成形上可能であれば本体20と前面壁24とは1ピースでも良い。
【0014】
図7に示すように前面壁24は裏面側(箱状本体20との対向面側)において上下に水平ガイド溝28を備え、このガイド溝28に蓋板22の端部における係合突起部22-1が嵌合される。他方、前面壁24は側面にガイドスロット30を備えており(図3及び図4)、蓋板22はガイドスロット30に挿通されており、そのため、蓋板22は図2(イ)に示すようにブラケット14のねじ孔16を外部に対して閉鎖する(牽引フックの導入用の開口26とねじ孔16とが遮断される)閉鎖状態と、図2(ロ)に示すようにブラケット14のねじ孔16が解放される(牽引フックの導入用の開口26とねじ孔16とが連通される)開放状態との間で左右に移動可能である。蓋板22は外側端縁が前方に90°曲折されており、蓋板22の開閉操作のための摘み部32を構成している(図5)。蓋板22による閉鎖状態を保持(ロック)するため周知の適宜の機構を設けることができるが、例えば、前面壁24の裏面に係止突起24-3 (図7)を形成し、蓋板22の閉鎖状態(図2(イ))において、この係止突起24-3にスナップ式に嵌合する溝部22-2(図7)を蓋板22の対向面側に形成することができる。
【0015】
この発明のカバー18をバンパレインフォース10のブラケット14に装着した状態(図2(イ))ではブラケット14は実質的全体がカバー18の箱状本体20及び前面壁24により被覆され、また、牽引フックの導入用の開口26は蓋板22にて閉鎖される。バンパフェーシア12の通気孔12Bからはカバー18が視認し得るが、カバー18は黒色又はバンパフェーシア12と同一色の合成樹脂製品であるため金属の地色部分はカバー18により遮蔽されるため、意匠性を維持することができる。
【0016】
牽引作業時は通気孔12Bより外部からの手操作により蓋板22を図2(イ)の閉鎖状態から右にスライドさせ(ロ)の開放状態とする。図5も蓋板22の開放状態を示し、牽引フック34はそのねじ部が通気孔12Bより開口26を介してブラケット14のねじ孔16に螺合され、牽引操作が行われる。この際、蓋板22のスライド操作による開閉のためバンパフェーシア12との車体前後方向の間隔が狭くても干渉することなく開閉操作に支障をきたすことがない。牽引操作後に蓋板22のスライド操作により図2の閉鎖状態に戻すことは言うまでもない。
【0017】
図9〜図11は第2の実施形態のカバー118を示し、カバー118は箱状本体120を備える。箱状本体120はブラケット14の実質的全面を外部から包被すべく実質的にU字断面形状の側面形状を呈しており(図9(ロ)参照)、また箱状本体120の後面壁120-1はブラケット14のねじ孔16に挿入される筒状の突起部123を備え(図11)、これにより箱状本体120がブラケット14に離脱しないように保持される。箱状本体120の前面壁124はこの実施形態においては通常時においてブラケット14のねじ孔16を閉鎖する蓋板の機能(第1の実施形態の蓋板12の機能に相当)も兼ねている。即ち、前面壁124は箱状本体120の前面上端部における片側(図9の左側)において枢支ピン140により図9(イ)の閉鎖状態と図9(ロ)の開放状態との間で回動自在に設けられている。前面壁124は全面で閉じており、図9(イ)の閉鎖状態にあってはブラケット14のねじ孔16を閉鎖を閉鎖し(図11も参照)、図9(ロ)の開放状態にあってはブラケット14のねじ孔16は開放される。
【0018】
図9(イ)の閉鎖状態において前面壁124を閉鎖位置にロックするための適宜の機構が設けられ、このロック機構はこの実施形態では前面壁124の一体成形部分であるコの字断面形状の弾性係合部142として構成され、この係合部142は図9(イ)の閉鎖状態においては箱状本体120の前面上端部におけるピン140と反対側(図9の右側)における一体成形部分である係止突起部146と包囲係合し、前面壁124を離脱しないように上下方向に保持する。また前後方向の保持のため、係合部142より一体の係止片148が突起部146の裏面側に延びている。
【0019】
この第2実施形態の装置の動作を説明すると、通常時は、前面壁124は図9(イ)の閉鎖位置にロックされ、ブラケット14のねじ孔16はカバーされる。牽引時は外部(図1の通気孔12B)からの手操作により弾性係合部142を係止突起部146から弾性に抗して外すことで、前面壁124をピン140の回りで図9(ロ)の位置まで回動させることが可能となり、ブラケット14のねじ孔16は解放され、外部からねじ孔16への牽引フックの導入及び螺合装着が可能となる。
【0020】
この第2の実施形態においては前面壁124は回動可能であるが、分離不能であるため第1の実施形態と同様、前面壁124が紛失する等のおそれはなく、また、前面壁124の回動は車軸と直交方向であり前後ではないためバンパフェーシアバンパレインフォースとが近接位置していても動作に支障がない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1はこの発明の第1の実施形態の牽引フック用開口被覆装置を備えた車体端部の部分的概略正面図である。
【図2】図2は図1の牽引フック用開口被覆装置の正面図であり、(イ)は閉鎖状態、(ロ)は開放状態を示す。
【図3】図3は図2のIII方向より見たこの発明の牽引フック用開口被覆装置の側面図である。
【図4】図4は図2のIV−IV線に沿って表されるこの発明の牽引フック用開口被覆装置の断面図であり、蓋板は閉鎖状態(図2(イ))にて表される。
【図5】図5は図4のV−V線に沿って表されるこの発明の牽引フック用開口被覆装置の断面図であ、蓋板は開放状態(図2(ロ))にて表される。
【図6】図6は図4のVI−VI線に沿って表されるこの発明の牽引フック用開口被覆装置の断面図である。
【図7】図7は図5のVII−VII線に沿って表される矢視図であるが、前面板及び蓋板のみが示され、かつ蓋板は開放状態(図2(ロ))にて表される。
【図8】図8は図2のVIII−VIII線に沿って表される矢視断面図である。
【図9】図9はこの発明の第2の実施形態の牽引フック用開口被覆装置の正面図であり、(イ)は閉鎖状態、(ロ)は開放状態を示す。
【図10】図10は図9(イ)の閉鎖状態における牽引フック用開口被覆装置の背面図である。
【図11】図11は図9のXI−XI線に沿って表される矢視図である。
【符号の説明】
【0022】
10…バンパレインフォース
12…バンパフェーシア
14…牽引フック取付ブラケット
16…牽引フック取付ねじ孔
18, 118…牽引フック取付孔カバー
20, 120…箱状本体
22…蓋板
24, 124…前面壁
26…牽引フック導入開口
28…水平ガイド溝
30…ガイドスロット
32…摘み部
140…ピン
【技術分野】
【0001】
この発明は、牽引フックの装着のためバンパレインフォースの牽引フック取付部(ブラケット)に形成されるねじ孔としての牽引フック取付孔を開閉する車両用牽引フック取付孔開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の牽引フックとして通常は車体から外しておき、牽引時に車体に装着するタイプのものがある。樹脂製バンパフェーシアの内側における金属製のバンパレインフォースにブラケットとしての牽引フック取付部が設けられ、牽引フックは、車外よりバンパフェーシアの開口部を介してブラケットの牽引フック取付ねじ孔に螺合装着される。従って、牽引フックは通常時(非牽引時)は外されており、そのままであるとねじ孔及びその周囲の金属地肌部分が外部から丸見えとなって意匠上好ましくないため、バンパフェーシアと同色の樹脂製等の牽引フック取付孔カバーをバンパフェーシアに装着したものが提案されている(特許文献1〜3参照)。また、樹脂製カバーを牽引フック取付ブラケットのねじ孔に係脱可能とし、通常時は樹脂製カバーによってブラケットの牽引フック用ねじ孔を被覆させるが、牽引時に樹脂製カバーを外すようにしたものも提案されている。更に、樹脂製カバーを採用せずに牽引フック取付ブラケットを含めたバンパレインフォース全体を黒色又はバンパフェーシアと同色に塗装することでバンパレインフォースの地金部分が外部から直接見えないようにして意匠性を確保するようにすることも提案されている。
【特許文献1】特開2000−185608号公報
【特許文献2】特開2004−175190号公報
【特許文献3】特開2005−271626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術では樹脂製カバーは通常時は牽引フック用のねじ孔を閉鎖しており、牽引時に取り外すことにより牽引フック用のねじ孔を開放し、牽引フックをバンパフェーシアより車体の牽引フック用のねじ孔に螺合装着し、牽引を行うようにしている。即ち、牽引時に樹脂製カバーは車体から完全に外されてしまうため紛失の畏れがあった。また、バンパレインフォースの牽引フック取付ブラケットに牽引フック取付孔を穿設し、この牽引フック取付孔に樹脂製カバーを装着するようにしたタイプのものでも、樹脂製カバーは牽引操作時は開閉部材は完全に離脱されてしまうため、樹脂製カバーの紛失の恐れが多分にあることは同様であった。そして、樹脂製カバーを使用する代わりに牽引フック取付ブラケットも含めてバンパレインフォースをバンパフェーシアと同一色で塗装する対策は樹脂製カバーとの比較では塗装費用が嵩むためコスト的に不利という問題点があった。地金部分が見えてしまうのを防止する観点ではブラケットの部位のみの塗装で足りるが、局部塗装の実施は技術的にはより煩瑣であり、コスト的にはかえって嵩んでしまうことになり、解決にはならなかった。
【0004】
この発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、牽引時の牽引フック取付カバーの紛失の問題を生ずることがなく、かつ低コストで美観を損なうことがないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明になる牽引フック用開口被覆装置にあっては、車体端部における牽引フック取付孔を開閉する樹脂製等のカバーが車体端部に設けられ、前記カバーはスライド若しくは回動運動等により牽引フック取付孔を選択的に開閉する開閉部材を備え、前記開閉部材は車体端部には離脱不能に連結されている。
【0006】
また、樹脂製バンパフェーシアの内側における金属堰バンパレインフォースに牽引フック取付部(ブラケット)を設け、車外よりバンパフェーシアを介して牽引フックを前記牽引フック取付部の牽引フック取付孔に離脱可能に装着し、牽引フック取付部に牽引フック取付孔カバーを装着するタイプのものでは、牽引フック取付孔カバーを樹脂製とし、該カバーを牽引フック取付部に被覆せしめられる箱状等の本体と、該本体に対し離脱に連結されると共に牽引フック取付孔を選択的に開閉可能である開閉部材とから構成し、開閉部材をスライド若しくは回動により開閉させている。
【発明の効果】
【0007】
開閉部材をスライド若しくは回動により選択的に開閉可能とし、かつ離脱不能に連結しているため、牽引操作中に開閉部材が紛失してしまう恐れは完全に解消することができる。
【0008】
また、バンパレインフォースに設けたブラケットを被覆する合成樹脂牽引フック取付孔カバーを設けたものでは、牽引フック取付孔を選択的に開閉可能とする開閉部材を備えると共に、開閉部材をカバー本体に対して離脱不能に連結しているため、牽引操作中に開閉部材が紛失してしまう恐れは同様に完全に解消することができ、また、金属製のブラケットを合成樹脂牽引フック取付孔カバーにて被覆しているため、外部からバンパレインフォースの金属の地金部分が見えてしまうことがなく美観を確保することができ、かつバンパレインフォースの塗装の必要がないためコスト減を実現することができる。
【0009】
また、開閉部材をスライド若しくは回動式とすることで、車体デザイン上、バンパフェーシアとの間隔が狭い場合にもバンパフェーシアの外側からの確実な開閉操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はこの実施形態における車体の端部(前部若しくは後部)の構造を示し、10はバンパレインフォースであり、車体前部又は後部において実質的に全幅方向に延び、図示しない車体両側を長手方向に延びるサイドメンバの前端又は後端に取り付けられている。バンパレインフォースはアルミニューム材や鋼材等の金属素材にて形成され、アルミニューム素材の場合は押し出し加工にて形成された中空矩形断面をなしている。12はバンパフェーシアであり、合成樹脂等の樹脂素材の成型品であり、バンパレインフォース10はバンパフェーシア12の内側に位置しており、換言すれば、バンパフェーシア12はバンパレインフォース10の前方に位置することで、バンパレインフォース10の全体をカバーしている。バンパレインフォース10とバンパフェーシア12の位置関係は図4及び図5にも示されている。
【0011】
図1に示すように、バンパフェーシア12は通風用の開口部12A, 12Bを穿設しており、第1の開口部12Aはバンパフェーシア12の最下部に位置し、実質的に全幅に延びている。第2の開口部12Bはバンパレインフォースの高さ位置の下側に位置しており、車体両側(右側のみ図示)に設けられるが、この右側の通風用の開口部12Bは後述のように牽引フック装着のための開口としても機能する。
【0012】
バンパレインフォース10の片側(図1の右側)における下面から前記牽引フック取付部としてのブラケット14が下向きに延設される(図2参照)。ブラケット14は金属製であり、この実施形態ではバンパレインフォース10と同等の金属素材にて形成され、溶接等によりバンパレインフォース10とブラケット14とは一体化されている。即ち、ブラケット14は図6に示すように上部にフランジ部14-1を備え、このフランジ部14-1の上面がバンパレインフォース10の下面に溶接されることによりブラケット14はバンパレインフォース10の一体部分を構成している。ブラケット14はねじ孔16を備え、ねじ孔(牽引フック取付孔)16は車体の前後方向に実質的に水平に延びかつで貫通している(図4及び図5)。
【0013】
図2において、18は合成樹脂等の樹脂製の牽引フック取付孔カバー(以下単にカバー)であり、この実施形態ではバンパレインフォース10の金属地金部分が外部から視認されないようにバンパレインフォース10の牽引フック取付部としてのブラケット14を被覆する。カバー18はポリプロピレンやポリエチレンなどの合成樹脂の成形品であり、図1に示す様にカバー18はブラケット14を被覆した状態においてバンパフェーシア12の開口部12Bを通して視認できるが、カバー18は黒色又はバンパフェーシア12と同一色を呈しており、ブラケット14の地金部分が見えてしまうことを防止する役目を果たすことができる。カバー18はブラケット14に装着される箱状本体20と蓋板22とから構成される。箱状本体20はブラケット14の断面形状と双方的なU断面形状をなしており、箱状本体20はブラケット14に実質的な遊びなく被着することができる(図6)。箱状本体20は背面壁20-1に筒状の突起部23を形成しており、この突起部23は図4及び図5に示す様にブラケット14のねじ孔16の後端部に嵌合され、そのため、箱状本体20をブラケットに脱落することなく保持することができる。箱状本体20は別体の前面壁24を備えており、前面壁24が箱状本体20に嵌着される構造となっている。即ち、箱状本体20はその前縁における上部両側に係止突起20-2、下部中央に係止突起 20-3(図3及び図4及び図8)を備え、これらの係止突起20-2, 20-3に前面壁24に形成された対応の係止孔24-1, 24-2が嵌着され、箱状本体20に対する前面壁24の取り付けが行われる。また、前面壁24は牽引フックの導入用の開口26を形成している。尚、成形上可能であれば本体20と前面壁24とは1ピースでも良い。
【0014】
図7に示すように前面壁24は裏面側(箱状本体20との対向面側)において上下に水平ガイド溝28を備え、このガイド溝28に蓋板22の端部における係合突起部22-1が嵌合される。他方、前面壁24は側面にガイドスロット30を備えており(図3及び図4)、蓋板22はガイドスロット30に挿通されており、そのため、蓋板22は図2(イ)に示すようにブラケット14のねじ孔16を外部に対して閉鎖する(牽引フックの導入用の開口26とねじ孔16とが遮断される)閉鎖状態と、図2(ロ)に示すようにブラケット14のねじ孔16が解放される(牽引フックの導入用の開口26とねじ孔16とが連通される)開放状態との間で左右に移動可能である。蓋板22は外側端縁が前方に90°曲折されており、蓋板22の開閉操作のための摘み部32を構成している(図5)。蓋板22による閉鎖状態を保持(ロック)するため周知の適宜の機構を設けることができるが、例えば、前面壁24の裏面に係止突起24-3 (図7)を形成し、蓋板22の閉鎖状態(図2(イ))において、この係止突起24-3にスナップ式に嵌合する溝部22-2(図7)を蓋板22の対向面側に形成することができる。
【0015】
この発明のカバー18をバンパレインフォース10のブラケット14に装着した状態(図2(イ))ではブラケット14は実質的全体がカバー18の箱状本体20及び前面壁24により被覆され、また、牽引フックの導入用の開口26は蓋板22にて閉鎖される。バンパフェーシア12の通気孔12Bからはカバー18が視認し得るが、カバー18は黒色又はバンパフェーシア12と同一色の合成樹脂製品であるため金属の地色部分はカバー18により遮蔽されるため、意匠性を維持することができる。
【0016】
牽引作業時は通気孔12Bより外部からの手操作により蓋板22を図2(イ)の閉鎖状態から右にスライドさせ(ロ)の開放状態とする。図5も蓋板22の開放状態を示し、牽引フック34はそのねじ部が通気孔12Bより開口26を介してブラケット14のねじ孔16に螺合され、牽引操作が行われる。この際、蓋板22のスライド操作による開閉のためバンパフェーシア12との車体前後方向の間隔が狭くても干渉することなく開閉操作に支障をきたすことがない。牽引操作後に蓋板22のスライド操作により図2の閉鎖状態に戻すことは言うまでもない。
【0017】
図9〜図11は第2の実施形態のカバー118を示し、カバー118は箱状本体120を備える。箱状本体120はブラケット14の実質的全面を外部から包被すべく実質的にU字断面形状の側面形状を呈しており(図9(ロ)参照)、また箱状本体120の後面壁120-1はブラケット14のねじ孔16に挿入される筒状の突起部123を備え(図11)、これにより箱状本体120がブラケット14に離脱しないように保持される。箱状本体120の前面壁124はこの実施形態においては通常時においてブラケット14のねじ孔16を閉鎖する蓋板の機能(第1の実施形態の蓋板12の機能に相当)も兼ねている。即ち、前面壁124は箱状本体120の前面上端部における片側(図9の左側)において枢支ピン140により図9(イ)の閉鎖状態と図9(ロ)の開放状態との間で回動自在に設けられている。前面壁124は全面で閉じており、図9(イ)の閉鎖状態にあってはブラケット14のねじ孔16を閉鎖を閉鎖し(図11も参照)、図9(ロ)の開放状態にあってはブラケット14のねじ孔16は開放される。
【0018】
図9(イ)の閉鎖状態において前面壁124を閉鎖位置にロックするための適宜の機構が設けられ、このロック機構はこの実施形態では前面壁124の一体成形部分であるコの字断面形状の弾性係合部142として構成され、この係合部142は図9(イ)の閉鎖状態においては箱状本体120の前面上端部におけるピン140と反対側(図9の右側)における一体成形部分である係止突起部146と包囲係合し、前面壁124を離脱しないように上下方向に保持する。また前後方向の保持のため、係合部142より一体の係止片148が突起部146の裏面側に延びている。
【0019】
この第2実施形態の装置の動作を説明すると、通常時は、前面壁124は図9(イ)の閉鎖位置にロックされ、ブラケット14のねじ孔16はカバーされる。牽引時は外部(図1の通気孔12B)からの手操作により弾性係合部142を係止突起部146から弾性に抗して外すことで、前面壁124をピン140の回りで図9(ロ)の位置まで回動させることが可能となり、ブラケット14のねじ孔16は解放され、外部からねじ孔16への牽引フックの導入及び螺合装着が可能となる。
【0020】
この第2の実施形態においては前面壁124は回動可能であるが、分離不能であるため第1の実施形態と同様、前面壁124が紛失する等のおそれはなく、また、前面壁124の回動は車軸と直交方向であり前後ではないためバンパフェーシアバンパレインフォースとが近接位置していても動作に支障がない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1はこの発明の第1の実施形態の牽引フック用開口被覆装置を備えた車体端部の部分的概略正面図である。
【図2】図2は図1の牽引フック用開口被覆装置の正面図であり、(イ)は閉鎖状態、(ロ)は開放状態を示す。
【図3】図3は図2のIII方向より見たこの発明の牽引フック用開口被覆装置の側面図である。
【図4】図4は図2のIV−IV線に沿って表されるこの発明の牽引フック用開口被覆装置の断面図であり、蓋板は閉鎖状態(図2(イ))にて表される。
【図5】図5は図4のV−V線に沿って表されるこの発明の牽引フック用開口被覆装置の断面図であ、蓋板は開放状態(図2(ロ))にて表される。
【図6】図6は図4のVI−VI線に沿って表されるこの発明の牽引フック用開口被覆装置の断面図である。
【図7】図7は図5のVII−VII線に沿って表される矢視図であるが、前面板及び蓋板のみが示され、かつ蓋板は開放状態(図2(ロ))にて表される。
【図8】図8は図2のVIII−VIII線に沿って表される矢視断面図である。
【図9】図9はこの発明の第2の実施形態の牽引フック用開口被覆装置の正面図であり、(イ)は閉鎖状態、(ロ)は開放状態を示す。
【図10】図10は図9(イ)の閉鎖状態における牽引フック用開口被覆装置の背面図である。
【図11】図11は図9のXI−XI線に沿って表される矢視図である。
【符号の説明】
【0022】
10…バンパレインフォース
12…バンパフェーシア
14…牽引フック取付ブラケット
16…牽引フック取付ねじ孔
18, 118…牽引フック取付孔カバー
20, 120…箱状本体
22…蓋板
24, 124…前面壁
26…牽引フック導入開口
28…水平ガイド溝
30…ガイドスロット
32…摘み部
140…ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体端部に牽引フック取付部を設け、車外より車体端部を介して牽引フックが前記牽引フック取付部に形成した牽引フック取付孔に離脱可能に装着可能であり、前記牽引フック取付孔を牽引フック装着状態では開放し、牽引フック離脱状態においては閉鎖する牽引フック取付孔カバーを備えた車両用牽引フック取付孔開閉装置において、前記牽引フック取付孔カバーはスライド若しくは回動等により前記牽引フック取付孔を選択的に開閉する開閉部材を備え、かつ前記開閉部材は車体に離脱不能に連結されていることを特徴とする車両用牽引フック取付孔開閉装置。
【請求項2】
車体端部に樹脂製のバンパフェーシアとその内側における金属製のバンパレインフォースを設け、バンパレインフォースは牽引フック取付部を備え、車外よりバンパフェーシアを介して牽引フックが前記牽引フック取付部に形成される牽引フック取付孔に離脱可能に装着可能であり、バンパレインフォースの牽引フック取付部に装着され、前記牽引フック取付孔を牽引フック装着状態では開放し、牽引フック離脱状態においては閉鎖するる牽引フック取付孔カバーを備えた車両用牽引フック取付孔開閉装置において、前記牽引フック取付孔カバーは樹脂製であり、牽引フック取付部に被覆装着される本体と、牽引フック取付孔を選択的に開閉しかつ本前記体に対し離脱不能に連結された開閉部材とから構成される車両用牽引フック取付孔開閉装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、開閉部材は本体に対してスライドすることにより牽引フック取付孔を開閉する車両用牽引フック取付孔開閉装置。
【請求項4】
請求項2に記載の発明において、開閉部材は本体に対して回動することにより牽引フック取付孔を開閉する車両用牽引フック取付孔開閉装置。
【請求項1】
車体端部に牽引フック取付部を設け、車外より車体端部を介して牽引フックが前記牽引フック取付部に形成した牽引フック取付孔に離脱可能に装着可能であり、前記牽引フック取付孔を牽引フック装着状態では開放し、牽引フック離脱状態においては閉鎖する牽引フック取付孔カバーを備えた車両用牽引フック取付孔開閉装置において、前記牽引フック取付孔カバーはスライド若しくは回動等により前記牽引フック取付孔を選択的に開閉する開閉部材を備え、かつ前記開閉部材は車体に離脱不能に連結されていることを特徴とする車両用牽引フック取付孔開閉装置。
【請求項2】
車体端部に樹脂製のバンパフェーシアとその内側における金属製のバンパレインフォースを設け、バンパレインフォースは牽引フック取付部を備え、車外よりバンパフェーシアを介して牽引フックが前記牽引フック取付部に形成される牽引フック取付孔に離脱可能に装着可能であり、バンパレインフォースの牽引フック取付部に装着され、前記牽引フック取付孔を牽引フック装着状態では開放し、牽引フック離脱状態においては閉鎖するる牽引フック取付孔カバーを備えた車両用牽引フック取付孔開閉装置において、前記牽引フック取付孔カバーは樹脂製であり、牽引フック取付部に被覆装着される本体と、牽引フック取付孔を選択的に開閉しかつ本前記体に対し離脱不能に連結された開閉部材とから構成される車両用牽引フック取付孔開閉装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、開閉部材は本体に対してスライドすることにより牽引フック取付孔を開閉する車両用牽引フック取付孔開閉装置。
【請求項4】
請求項2に記載の発明において、開閉部材は本体に対して回動することにより牽引フック取付孔を開閉する車両用牽引フック取付孔開閉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−173238(P2009−173238A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16395(P2008−16395)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)
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